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2016.4.1
モトGPマシンは前輪を上げたまま6速まで全開加速!タミヤ「レプソル HONDA RC213V発売記念トークショー」
2016.4.1
モトGPマシンは前輪を上げたまま6速まで全開加速!タミヤ「レプソル HONDA RC213V発売記念トークショー」
タミヤから1/12 オートバイシリーズの新製品「レプソル Honda RC213V ’14」が3月26日(土)に発売されました。それを記念して東京・新橋のタミヤ プラモデルファクトリー新橋店で「スペシャルトークショー Moto GPチャンピオンマシンの秘密に迫る!」が開催されました。
ゲストには元HRC契約ライダーで実車のRC213Vに乗車経験のある宮城光氏。全日本GP500ccでの優勝経験もある、日本テレビ系で放送中のモトGPの解説者です。
タミヤからはRC213V設計を担当された企画開発部の古谷氏、広報の山本氏が進行として参加されました。
RC雑誌に連載を持つ宮城氏はホビー関係にも精通しています。その造詣の深さは、自身のプロフィール紹介で使われた写真がNS500を始め、全てタミヤでプラモデル化されている物だという事を見抜くほど。
山本:まずRC213Vというマシンについて教えて下さい。
宮城:RC213Vをはじめ、最近のモトGPのマシンは馬力がとにかく凄く(200ps以上)、エンジンが圧倒的に速くなりました。それを制御するために電気を上手く使う。ワンメイクですがタイヤのグリップが高い。それを補うためのシャシーをはじめ、私の現役時代と比べ、いろんな要素が高次元で融合して圧倒的なタイム差となっています。
一方で何か一つの要因がずれてもタイムやリザルトに繋がらない難しい時代になっています。
現役時代は「フロントが沈むから、もうちょっとスプリングを…」とか「車体がグニャグニャ動くのでダンパーを…」など、アナログ的な話・作業をしましたが、現在はマシンの電子化が進みシェイクダウンの時などを除いてはサーキットのピットではマシンを分解してセッティングを行う事はほとんどありません。ほとんどが電気(コンピュータ上のパラメータ変更)です。
ライダーには速さだけでなく、セットアップ能力・マシンへの理解とともに「自己表現力」が無いと速いマシンは作れない時代です。エンジニアは何でも対応してくれる。
明確に言葉で伝えるか、コース上で起きた事例を言葉に置き換えて「文章」にできないとダメです。
つまり、コース上のどこで何が起こったか、どうして欲しいのかを伝えられないとダメです。
「何所のコーナで」
「どういうターンインをした時」
「どういう減速をして」
「どういうブレーキの掛け方をして」
「フロントとリアのブレーキバランスがどの位で」
「自分がどこを向いていて」
「バンク角がどの位で」
「どのポイントで急激に舵角が変化したのを感じた」
「その時、身体を前に入れたのか・抜いたのか」(前後荷重が変わる)
「その時ロール方向について身体をどう動かしたのか」(バンク角が変わる)
…全部言葉で伝えた結果、エンジニアがテレメトリーと検証して、対応策を提案してきます。
優秀なエンジニアは5枚くらいのカード(提案)を出しますが、残念なエンジニアだとその枚数が少ない。
ライダーとしては「…これしかないんですか?」という気分になります。5枚のカードの中から、初見で3枚になり、話し合いの中で2枚…1枚へと絞り込んでいきます。その結果、セッティング変更されたマシンでライダーは安全にラップタイムを0.1秒上げて走る事ができます。
山本:マルケス選手は最近肘を擦って走る程、深いバンク角で走っているようですが。
宮城:僕がRC213Vに乗って膝は擦っても、こんな深いバンク角には到底なりませんでしたよね。
山本:こういう乗り方が出来るようになったのは、ライダーのスタイルだけではなくバイクも変わってきていますか。
宮城:圧倒的にブリヂストンによるタイヤの性能向上によるものです。
昨年、マルケスが14年の最終戦バレンシアで優勝した仕様のままでツインリンクもてぎを走りました。もてぎにはギアもサスペンションも合っていない訳ですが、タイヤに関しては考えられない位グリップしていました。
逆に言えばグランプリライダーが現代のモトGPのバイクのタイヤをあれほどスライドさせて走るというのは驚異的です。
ほとんどのモーターサイクルのタイヤを使った経験がありますし、(クルマの)F1を含めて○○のグリップを経験しましたが、これほど何事も起きず・ピクリともしない。掴みどころがありません。伝える表現が見つからない位です。
通常、グランプリバイクに乗っていない人が、レース経験があるからといってカウンターを当てながらコーナーを抜け、出口でリアをスライドさせられる…そんなところまでは到底行きません。
たまたま、ミスで荷重が抜けて滑ってしまう事はあるでしょうけど、グランプリライダーは全員意図的に向きを変える為にスライドをコントロールしています。
そういう高負荷をタイヤへ与えることついて、窺い知ることのできないグリップの高さです。
高いグリップのタイヤがあり、それを支える高剛性のシャシー、深いバンク角でもハンドリングが破綻しない設計・デザイン、そういった物を徹底的に研究しているのが現代のグランプリバイクです。
山本:RC213Vはクラッチ操作をしなくてもシフトチェンジがスムーズに行える、市販のバイクとは別物の様ですが。
宮城:搭載されているシームレスシフトは各メーカーこぞって研究開発しています。
1速から6速までスロットル全開、チェーンを張った状態の負荷を掛けていると、全く振動がありません。オートマチックかと思うほど、スムーズな加速をしてくれます。
減速の場合もクラッチは使いません。減速方向にペダルを操作すると、フライバイワイヤでポンポンとエンジン回転が自動で上がり、バックトルクリミッター(リアホイル内のトルクを逃がすクラッチ機構)が効いて、リアがホッピングが1回もする事もなく減速をします…僕が乗ってる分には。マルケスが乗っているとエゲツないホッピングをしています(笑
とんでもない突っ込みをしています。僕が1秒掛ける作業をGPライダーは0.3秒でこなします。そこでタイムラグが出て機械がついて来ない時に、リアのブレーキバランス、サスペンションの伸縮、エンジンブレーキ、チェーンの遊び、こういった状況が重なった時リアが暴れ出します。テストライダーも再現できていないと思います。
テストライダーはこうなったらこの先に(何か起きる)可能性があるな…というマシン作りをしていると思います。
だから、ケイシー・ストーナーは残留して欲しかったですね(笑
(注:ケイシー・ストーナー 元世界チャンピオン。今年ドゥカディにテストライダーとして移籍。開幕前の合同テストで現役ライダーよりも速いタイムを叩き出した)
マシンの前輪が浮いたまんまで加速していきますよね。考えられないと思いますが、RC213Vは前輪を10cm程浮かせたまま、6速までずっとシフトアップしていきます。だから実際には1輪で走っています。
電子制御が入るとエンジンをマネージメントし始めます。しかし、それではエンジン性能を100%引き出せていない。車速に対してアクセルを開け過ぎているので速くない。荷重が後ろ寄りになり過ぎ、前輪が浮いている。ライダーはアクセルを開けてるつもりでも、スロットルは閉じる方向に電子制御されています。
その条件下では最高の加速をしているが、グランプリライダーはもう一つ上のレベルで制御を行っています。前輪が浮かないよう、電子制御が入らないようにスロットルを開けてエンジン性能を使い切るように走ります。
前輪が浮いていると一見速そうに見えますが、実は速くないのです。
バイクに乗らない人には前輪を浮かせた──という状況は判り難いでしょう、バイクに乗る人には状況もニュアンスも伝わり易いです。解説は事態をとても噛み砕かれており、伝わりやすいです。
次はタミヤの古谷氏がプラモデルについて熱く語ります。
(川崎BASE)
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