Motor Fan's YEAR 2016

三栄書房

NEWS

2016.4.6

まるでUFO。日産の電動トラックe-NT400の走りの衝撃は異次元の世界だった

これは素晴らしい! まるでプロペラ機からUFOに乗り換えたみたいな異次元感。

軽トラックからマイクロバスまでたくさんの商用車を集めて開催された日産の商用車大試乗会。

とっかえひっかえいろんな商用車に触れた後、帰りがけに広報スタッフから聞かれたのが「いちばんよかったのはどれですか?」という質問。

「e-NT400に決まっているじゃないですか」とボクは即答しました。

だって凄いんです、e-NT400。ここまで異次元感を味わえるのは、年間200台以上の車に乗る僕だってそう経験できることじゃありません。まるで脳天を貫かれたようなレベルです。

20160317Nissan LCV e-NT400_09

e-NT400のどこが素晴らしいか。走りが凄いんです。

エンジンをかけるとガラガラガラと荒々しい音を立ててアイドリングする、振動も乗員にたくさん伝わってくる。加速は鈍くてかったるい。

ディーゼルエンジンを積む商用トラックはだいだいそういう感じ。ドライバビリティとか快適と言う言葉は本当に本当に縁遠い。

だけど、e-NT400はそんなトラックらしさがすべてない。「影を潜めている」とか「緩和されている」なんてレベルじゃなくて一切ないんです。これを大革命といわずしてなんと表現したらよいものか。

……なんて書くと大げさだと思うでしょ? でもこれでも控えめに書いているくらいの衝撃だったのです。

20160317Nissan LCV e-NT400_02 20160317Nissan LCV e-NT400_04

ところで「e-NT200」ってなにか。実はエンジンを取り外してかわりにリーフ譲りの電動ユニットを組み込んだモーターで走る電気トラック。

まだ試作車レベルで発売はしていないけれど、量産化を目指して宅配会社や生協が日産のパートナーとなりモニターで使用しています。

その走りが凄い。見た目が普通のトラックだから動きが鈍いと思うじゃないですか。だけどアクセルを踏み込むとヒューンという甲高いインバーター音(だけどうるさくはない)を発しながら滑るように加速。

それが滑らかなだけじゃなく俊足なのだから最初に見たときは目を疑いましたワタクシ。そのうえ加速感だって伸びやかで爽快。なんだこの見た目のギャップの大きさは。

その様子は言うなれば目を疑う速さで疾走するカバ。その見た目の想像を裏切る感覚が痛快です。もはや異次元の世界。道路を走るUFOですこれは。

そのうえ、メリットは加速感だけじゃないのだからまた素敵。

「EVだから環境にやさしい」なんて優等生的なことを言うつもりはないけれど、アイドリングがないから閑静な住宅街でも音が迷惑にならないし、エンジンの振動がないから乗り心地だっていい。

ドライバーにとってはいかにもトラック的な加減速のクセが少なくて運転しやすい。そして振動がないから精密機械などの荷物がシェイクされずにだってすむ(かもしれない)。

もちろん通常のEV同様に長距離は無理だけど、担当地区を回る宅配会社の集配業務など狭い範囲での使い方には最適です。

20160317Nissan LCV e-NT400_06

だけどすぐに実用化できないネックがやっぱりあって、そのひとつが航続距離の短さ。いまの仕様(リーフ用24kWバッテリーを搭載)だと実質30キロくらいしか走行距離が持たないのだそうで。

「この倍くらい走れば広く活用できると思うのですが」と開発者は言ってました。まずはリーフ上級仕様用の30kWバッテリー搭載かな。ポテンシャルは高いと思います。

それから高価なバッテリーを積むので価格も安くはない。これも事業者にとっては難しい問題。バッテリー搭載の都合で荷物スペースも狭くなってしまう。

とはいえ、個人的にはこの電気トラックにはとても将来性を感じるし期待したいところ。だって、ガラガラうるさいエンジン音で近所迷惑にならないし、とっても運転しやすいんだから。乗用車よりも電動化のメリットがあるんじゃない?と思っているくらい。

それにしても、あの加速の爽快感は思わず顔がにやけちゃった。トラックなのに。

(工藤貴宏)

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