Motor Fan's YEAR 2016

三栄書房

NEWS

2016.9.17

日産デザインをもう一歩先に! ─ 新型セレナのチャレンジ(後編)

スタイリングを一新した新型セレナのデザイン・インタビュー。後半はボディサイドからインテリアに迫ります。

[語る人]
日産自動車株式会社
グローバルデザイン本部プロダクトデザイン部
プログラム・デザイン・ダイレクター
入江 慎一郎

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──  ボディサイドの話を続けます。屋根を浮かす『フローティングルーフ』は比較的コンパクトなクルマで有効とされますが、このサイズであっても必要ですか?

「これは日産車のグローバル・デザイン言語ですが、今回は国内専用であるセレナでも同等の表現にしたかった。また、新型は重厚さやボクシーさよりも、スポーティさや開放感を優先させたかったと」

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──  ブラックアウトしたAピラーについて2点。まず、ピラーはすべて黒いのではなく、ルーフの手前からボディ色になっていて、若干中途半端に見えますが

「たとえば、GT-Rのようにルーフラインでスッと色を切ってしまうと、ボディとルーフが完全に断絶してしまって弱さを感じてしまう。ミニバンはモノフォルムに近くノーズも短いので、それが強調されてしまうのです。その点を試行錯誤し、ここに落ち着きました」

ツートンアップ

──  もう1点はAピラーの付け根で、フェンダーとの段差が大きく、クルマとしては異例に強い鋭角表現になってしまいました

「はい、機能的な制約もありそうなっていますね。ただ、それよりもフロントランプからショルダーへの流れを強調したかった。そのためにピラーの下端はわざわざ別パーツとして作って横へのラインを入れているんです。本来はひとつのパーツでも可能なんですが」

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──  途中で止まったリアピラーと縦長のリアランプの組み合わせですが、リアガラスが上下に広く、支えるパネル面がないので少々不安定に見えます

「リアガラスは、後方の広い視界を表現するためにこれ以上ボディパネルで狭くしたくない。不安定さについては、リアピラーをしっかり太くすることで支えられていると認識しています」

リア

──  次にボディカラーです。先代までは水色などソリッドな表現が特徴でしたが、一転メタリック基調になりました

「デザイン自体が品格を上げ、より上質な方向に振っていますので、カラーもリッチな表現にしています。とくに『カシミアグレージュ』というベージュは角度によって色が変化し、質感を上げています」

──  青系と茶系が2色ずつありますが、その分もっと他の色は考えなかった?

「青のうち濃い方は、先代までの紫に近い青を引き継ぐという位置づけです。もうひとつの青は、実は若干グリーンを加えているんですよ。茶系はデザインテーマの上質感とともに、暖かみや親しみも同時に感じる色として2色を用意しました」

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──  インテリアに移ります。インパネは翼を表現し『グライディングウィング』と呼ばれていますが、それにしてはドライバー側が大きく凹んでいますね

「最初は左右とも真っ直ぐだったんですが、実はステアリン越しに平行線ばかりが見えると鬱陶しいんです(笑) また、視認性の面でも、横方向だけでなく前方への開放感が必要なんですね」

──  パッド調のセンターパネルはマーチやノートと似ていますが、これは日産車の決めごとなんですか?

「それはないですね。セレナでやりたかったのはフローティング感です。シルバー加飾で囲み、インパネに埋め込まれない独立した面で、同時に視認性も上げたかった」

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──  そのシルバー加飾は一種の流行で、本当に金属のようなメッキから安っぽいものまで各社で多用されていますが、セレナではどのように考えましたか?

「セレナというよりブランドで考えていて、日産は『マットクローム』を全車で展開したいと。メッキもあまりピカピカしているとかえって安っぽくなるし、逆にプラスティッキーなものじゃいけません。下地のクロームを大切にしつつマット感を出したい」

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──  インテリアカラーでも茶系をプッシュしているのは、ボディカラーとの絡みですか?

「ボディと同様上質感を狙っていますが、濃い茶色のプレミアムカラーは社内でもかなり評判がいいんです。また、ハイコントラストの淡いグレージュは欧州ハッチバックなどで見られる表現ですが、ミニバンでは例がない試みだと思います。これもチャレンジですね」

──  なるほど。本日はありがとうございました。

(すぎもと たかよし)

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