Motor Fan's YEAR 2016

三栄書房

NEWS

2016.10.22

マツダデザインの歴史とデザイナーとエンジニアの共創【戦後から1980年代まで】

マツダにとって5年連続の出展となる「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2016」では、開発者トークセッションも開催されています。プレス向けに開催されたトークセッションは、同期間中と同じ「マツダデザインの歴史」、「デザイナーとエンジニアの共創」がテーマ。

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ここでは、マツダのデザイン本部 ブランドスタイル統括部 主幹の田中秀昭氏による戦後から1980年代までのトークの概要をお届けします。

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現在、クルマ以外のマツダのデザインを担当している田中氏は、マーチャンダイジングなどのほか「デザインタッチ」などのイベントにも携わっています。以前は世田谷にあったエムツー(M2)でロードスターの「1001」、「1028」なども担当していたそうです。

マツダの歴史は戦後の焼け野原からスタート。戦後、三輪トラックを作っていた頃からインダストリアルデザイン(工業デザイン)を採り入れていて、当時、インダストリアルデザイナーの第一人者であった小杉二郎氏に三輪トラックのデザインを依頼。

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三輪トラックからスタートしたマツダのデザインは、1960年代のモータリゼーションを迎えると「ピラミッドビジョン」を掲げます。

同ビジョンは、一番下に軽自動車があるという需要構造を見立て、マツダのクルマも小さな軽自動車から段階を踏んで大きなクルマへと行く考え方。つまり、乗用車需要の底辺を支えようという意図です。

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1959年12月、デザインルームである機構構造型課 造型係が発足。なお、上の写真はキャロルのドアを開発、設計している様子です。

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1960年、マツダが初めて販売した乗用車「R360 Coupe」は、戦後初めて車名にクーペの名が付いたモデル。メインのデザイナーは先述の小杉二郎氏ですが、1958年に入社したマツダ初のデザイナーである小林平治氏(1年後にはコスモスポーツをデザイン)も一緒にデザインしていました。

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「R360」は、ドアやボンネット、トランクなどにアルミを使うなど徹底した軽量化が図られているほか、薄い鉄板に強度を持たせるためビードが入れられています。これが、寸詰まり感のある軽自動車を伸びやかに見せ、あえて「2+2」になりきることでキャビンを小さくすることで、当時の軽の中で、最も全長が短く、全高が低くても存在感を放つことができました。

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さて、今回の「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2016」に展示されている「ルーチェ ロータリー クーペ」に話が飛びます。三角ウインドウもBピラーもないハードトップは日本初の試みで、マツダ初のFFでもあります。当時、ベルトーネに在籍していたジウジアーロのデザインであることは広く知られていますが、実際は異なるそうです。

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まず、ベルトーネ(ジウジアーロ)のデザインモデルを元に、マツダ社内で4ドアセダンを試作。さらに、これをベースにルーチェのセダンが生まれ、さらにセダンをベースに社内のデザイナーがクーペ化を図ったという流れ。

同車のオーバーハングが短くできたのは、「13A」型ロータリーエンジンの高さ方向を大きくし、全長を短く(厚さ)を薄くすることで実現。エンジニアとデザイナーが一緒になっていい物を作り上げるというのは、現在の魂動デザインと同じような考え方といえます。

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そのほか、北米への輸出の時代を迎え、マスキー法を逆手に取った経営戦略を採り、「サバンナ」が登場。世界唯一のロータリーエンジンは力強さが特徴であり、それを積む「サバンナ」は、百獣の王であるライオンを表現。もちろん、サバンナが持つ誇りや力強さが込められています。

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オイルショック後、エコなモデルにシフトしていき、1980年代に入って5代目ファミリアが登場。フォードからデザイナーが多く来日し、フォード・レーザーをデザインする彼らの仕事ぶりを隣で見て刺激を得ていたそうです。

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「コスモAP」はオペルに一度移ってから再度マツダに戻ってきた河岡徳彦氏による仕事で、ヨーロピアンな香りが漂っています。しかもCd値は0.32で世界屈指の空力性能を誇ったボディでもありました。

(文/写真 塚田勝弘)

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