Motor Fan's YEAR 2016

三栄書房

NEWS

2016.7.18

ホンダが新型フリード ハイブリッドに採用する「重希土類フリー」ネオジム磁石の利点とは?

2016年秋にホンダがフルモデルチェンジを予定している新型フリード ハイブリッド。

技術面で注目を集めているのが、重希土類完全フリー(不使用)熱間加工ネオジム磁石を世界で初めて実用化する点です。

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「重希土類=レアアース」とされることが多いですが、あくまで希土類(レアアース)の区分のひとつであり、レアアース17元素は軽希土類、中希土類、重希土類の3つに分類されるそうです。

ホンダが大同特殊鋼とともに、重希土類フリー(不使用)熱間加工ネオジム磁石を開発したのは、ハイブリッド車など電動車の駆動モーターに使用されているネオジム磁石は、今後、急激な需要拡大が見込まれているから。

ハイブリッド車用駆動モーターにおいて、ネオジム磁石は高温環境下で使用されるため、高い耐熱性が要求されます。耐熱性を確保するために、従来は重希土類元素(ジスプロシウム、テルビウム)が添加されていました。

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レアアースというと、「中国にしかないのでは?」と誤解している方も多いと思いますが、重希土類元素は世界的に有力鉱床が偏在しているそうです。しかし、生産量の約97%が中国算ということで、価格の変動はもちろん、地政学的なリスクを抱えているという面もあります。

ホンダも重希土類完全フリーの熱間加工ネオジム磁石を開発した背景として、重希土類は希少金属(レアメタル)にも分類されるため、安定調達、材料コストの観点でリスクを抱えていると認めており、重希土類元素の使用量を低減することが、ハイブリッド車駆動モーター用にネオジム磁石を使用する上で、大きな課題のひとつでした。

新型フリード ハイブリッド向けに生産を受け持つのは、大同特殊鋼の完全子会社であるダイドー電子。ネオジム磁石を一般的な製造工法である焼結工法とは異なる熱間加工法によって量産するそうです。

なお、熱間加工法とは、ナノレベルの結晶粒を高度に配向させることができる技術で、一般的な焼結磁石の10分の1程度の微細な結晶粒組織を得ることで、より耐熱性が高い磁石が製造可能。

今回、大同特殊鋼が熱間加工法の技術をさらに進化させるとともに、ホンダによる駆動モーター開発の経験を活かし、磁石形状を見直すなどして共同で開発を推進。

そして、重希土類元素をまったく使用せずに、ハイブリッド車用駆動モーターに適用可能な高耐熱性、高磁力を実現したネオジム磁石を世界で初めて実用化することができたそうです。

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さらに、ホンダはこの磁石に対応した新しいモーターを設計。

磁石形状に加えてローター形状も見直し、磁石にかかる磁束の流れを最適化することで、重希土類完全フリー熱間加工ネオジム磁石をハイブリッド車用駆動モーターに採用が可能に。

気になる性能面ですが、トルク、出力、耐熱性において従来の磁石を用いたモーターと同等の性能を達成しているそうです。また、同技術の利点は、ネオジム磁石の適用拡大に際して課題であった重希土類元素の制約から脱却したことで、先述したように資源リスクを回避、調達ルートの多様化も図ることが可能になった点です。

今後の重希土類完全フリー熱間加工ネオジム磁石の採用は、今秋発表予定の新型フリードに搭載するハイブリッドシステム「SPORT HYBRID(スポーツハイブリッド) i-DCD」を皮切りとして、順次、新型車に適用を拡大していくとのこと。

多くの台数そして車種に採用されれば、コスト削減が実現し、さらにハイブリッドが身近な存在になるかもしれません。

(塚田勝弘)

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