Motor Fan's YEAR 2016

三栄書房

サンプル

モトチャンプ

排ガス触媒に必須の希少物質・ロジウム(Rh)の代替物質を日本の研究チームが開発

大分大学工学部の永岡勝俊 准教授らの研究チームは、パラジウム(Pd)とルテニウム(Ru)からなる合金ナノ粒子で、自動車排ガス触媒のロジウム(Rh)を代替できることを明らかにしたと、発表しました。

srep28265-f1

ロジウムは産業上重要な貴金属で、自動車の排ガス浄化用触媒に大部分が使用されていますが、希少で高価なため、ロジウムと置き換えることのできる新しい物質の開発が求められていました。

研究チームはRhよりも資源量が豊富なPdとRuに注目し、ナノサイズ化と化学的還元の手法を駆使することで,PdとRuが原子レベルで混合した固溶型合金ナノ粒子を合成、自動車排ガス中の窒素酸化物(NOx)の浄化に対する触媒活性を調べました。

その結果、開発したPd-Ru固溶型合金ナノ粒子がRhをしのぐ触媒性能を持つことを発見したということです。

srep28265-f2

さらに、PdRu固溶型合金がRhに非常によく似た電子的特徴を持っており、PdRu固溶型合金が「擬似ロジウム」として振る舞うことを明らかにしました。

開発したPdRu固溶型合金ナノ粒子は、触媒化学のみならず様々な分野で擬似ロジウムとしての応用が期待できます。さらに、今回の研究成果のコンセプトをさまざまな元素の組み合わせに拡張することで、さらなる新物質の開発、機能の発現が期待できます。

今回の研究成果は,2016年6月24日にNature Publishing Groupの電子ジャーナル「Scientific Reports」で公開されました。

今回の研究チームには、他に九州大学稲盛フロンティア研究センターの古山通久 教授、九州大学大学院工学研究院の松村晶 教授、京都大学大学院理学研究科の北川宏 教授らが参加しています。

(山内 博・画像:Scientific Reports)

マツダと兵庫県立大学が大型放射光施設SPring-8を活用して触媒材料を研究

マツダと兵庫県立大学は、世界最大級の大型放射光施設SPring-8(兵庫県佐用郡)を活用した材料開発研究に関する、共同研究契約を締結したと発表しました。

160607a

マツダでは、この共同研究で自動車触媒における貴金属材料の使用量低減や新規高分子材料の開発などの成果が期待できるとしています。

共同研究のテーマは「微細複合材料の放射光分析法の研究」で、放射光による分析手法を活用し、自動車の実走行に近い状態の温度下において、材料のナノスケールレベルの構造分析を行うなどの取り組みによって、これまで解明されていなかった材料物性発現のメカニズムの解明を目指すということです。

160607aa

研究期間は平成28年度から平成37年度までの10年間で、マツダ 技術研究所と兵庫県立大学産学連携・研究推進機構放射光ナノテク センター及び同大学高度産業科学技術研究所が共同で研究を実施します。

この研究により、自動車触媒における貴金属材料の使用量低減や新規高分子材料の開発などの成果が期待できます。

SPring-8は世界一明るい放射光を利用して、物質を原子レベルで見るためのいわばスーパー顕微鏡で、自動車メーカーではトヨタが燃料電池関連でSPring-8を活用したことが知られています

(山内 博・画像:マツダ)