Motor Fan's YEAR 2016

三栄書房

サンプル

モトチャンプ

ポルシェ・718ケイマンを初公開! さらにポルシェ流「3本の矢」も表明

7月10日に予定されている参議院選挙に向けて、街中で候補者が演説する姿をチラホラと見かけるようになってきました。そんななか、虎ノ門ヒルズで行なわれた演説には思わず足が止まってしまいました。

写真 2016-07-01 13 14 25

多くの人々が注目する中、登壇したポルシェ ジャパン株式会社 代表取締役社長である七五三木 敏幸氏は冒頭で「7月から本社が虎ノ門ヒルズへ移転し、ポルシェ ジャパンは新たな幕開けを迎えた」と挨拶。さらに「期待を越えた歓びを提供するために挑戦を続ける」と決意を新たにし、その実現に向けた3本の矢を表明しました。

写真 2016-07-01 13 32 52

まず第一が「欲しい!」と思わせる魅力的なモデルの投入。

ポルシェにとって日本は世界で5番目の規模をもつ重要なマーケットであり、基幹モデルの「911」をはじめ、SUVの「カイエン」や「マカン」、サルーンの「パナメーラ」など多彩なジャンルへの展開もあって、20年で販売台数は約3倍へ。今後もその勢いを絶やさないために、新モデルの投入には積極的に取り組んでいくとのこと。

第二が「環境への取り組」み。

これは過去と現在そして未来のポルシェを含めた取り組みであり、例えば2015年11月からクラシックポルシェのための最適なサポートを提供するポルシェクラシックパートナーを認定し、既存のポルシェを長く大切に乗り続けるための地盤を固めています。

また、現在販売中のモデルでは、「カイエン」と「パナメーラ」へのプラグインハイブリッドの設定に加えて、「911」「718ボクスター」で採用したターボエンジンによる高効率化も環境対策の一環のひとつ。将来的にはEVを投入していくことが明かされました。

そして、ここに新たなモデル「718ケイマン」が、いよいよ日本で初めてその姿を現しました。

写真 2016-07-01 14 08 17

「718ケイマン」をひと言で言うなら、「718ボクスター」の屋根固定バージョン。

写真 2016-07-01 14 20 39

両者はメカニズムも共通で、車両の中央に置かれるエンジンには「718ボクスター」と同じく水平対向4気筒ターボが採用され、2.0Lの「718ケイマン」が最高出力:300ps/最大トルク:380Nm、2.5Lの「718ケイマンS」は350ps/420Nmと、その性能も共通となっています。

しかし車両価格に違いがあり、「718」を冠する新型の車両本体価格では「ケイマン」が619万円〜、「ケイマンS」が813万円〜と、「ボクスター(658万円〜)」および「ボクスターS(852万円〜)」と逆転し、「ケイマン」がポルシェのラインナップの中でも最もリーズナブルなモデルとなりました。ちなみに、導入はヨーロッパを皮切りに2016年9月24日から順次開始されます。

このようにハード面を充実させる一方で「ソフト面も充実する」のが3本目の矢。

ドライバーの技能に合わせたスポーツ走行を楽しめるポルシェドライビングエクスペリエンスやモータースポーツへのサポート継続など、ポルシェの掲げる運転の楽しさを知ってもらう取り組みを引き続き行ない、そこで得た知見は次の市販車へフィードバックしていくと言います。

ハードとソフトによる好循環の構築。すでにその成果が実態として表れているだけに、街中で叫ばれている絵空事とは違って説得力があり、期待もあります。今後の展開から目が離せません。

写真 2016-07-01 14 19 52

(今 総一郎)

【ゆとり世代のチョイ乗り報告】最後の6気筒!?「ポルシェ・ケイマンS」を試す(後篇)

先代モデルとなったポルシェ・ケイマンS、無事にドライバーズシートの権利を獲得し、いよいよ試乗です。

カエルに例えられる顔つきや滑らかな曲線のボディラインなど、車体を構成するすべての要素に只ならぬ雰囲気が感じられ、思わずニヤニヤ。

納車手続きの予行演習っぽく、必要書類を記入し、キーを受領。「911」のボディを象ったキーもお洒落で所有欲をくすぐります。

02

低めの着座位置や素早く6速MTを操るために底上げされたセンターコンソールなど、ギュッとタイトなコックピットに収まると、自然と身が引き締まります。

ソワソワとした高揚感を抑えるために、目をつぶり、大きく息を吸い、静かに吐き出す。レザーが醸す香りや外の喧騒を感じさせない静謐など、カチリ…カチリ…と徐々に自分と「ケイマン」がシンクロしていく感覚が心地よいです。

03

キーを挿してひねると、座席直後に搭載された3.4L水平対向6気筒自然吸気エンジン(325ps/370Nm)が、猛々しいサウンドを耳に、エンジンのピストン運動が刻む振動をシート越しに身体へ届けてきます。

ボディが強固な上にシートが肉厚なため不快感はなく、ドライバーはエンジンの確かな存在感を堪能できます。底知れない実力を漂わせるエンジンと自らの手中にあると感じる一体感に、ワタクシは勝利を確信しました。

しかし、誤算が。クラッチペダルが重すぎるほど重いのです。「フンッ!!」と気合いを込めるほど押し返そうとする力が強く、信号が多い都内では10分足らずで足はプルプル。

「せっかくのポルシェだからMT!」と意気込んでいたのですが、余計な手間を掛けずに完璧かつスピーディに変速をこなしてくれる7速PDKにしておけば……。

シフトノブ

01

さらにいいますと、街中での乗り心地は決して穏やかではありません。

タイヤ(ピレリ P ZERO)が、フロントは235/35ZR20、リヤは265/35ZR20と横幅が広くそして薄い上に、車高が低いため、タイヤが接地する路面の凹凸がもたらすショックを和らげる余裕が少なく、路面の粗さで乗り心地は大きく左右されます。

ホイール&ブレーキ

しかし、ポルシェのスゴイ所は、そういった外乱を受けた際にボディとステアリングがビクともしないことです。

街中でも高速道路でも、強めのショックを後々まで残さない。たとえ路面が酷くてもステアリングは1mmの動きさえ見逃さずにたちまちクルマの向きを変えるため、第一声に「しっかりしている」という感想を挙げたくなるのも頷けます。

搭載する水平対向6気筒自然吸気エンジンは、アクセルを緩やかに踏み込めば、それに呼応するようにモリモリとパワーとサウンドは高まり、1370kgの車体を突き抜けるように加速させていきます。

370Nmの最大トルクは4500〜5800rpmと高めの回転域で発生させますが、かといって低回転域で加速が弱い心配は無用。

新型「ケイマン」の2.0L水平対向4気筒ターボは380Nmを1950〜4500rpmで、2.5L水平対向4気筒ターボの「ケイマンS」は420Nmを1900〜4500rpmで発揮させると聞くと、その走りへの期待は高まるばかりです。

ただし、あと一歩踏み込んで欲しいのが安全装備です。

自動ブレーキはなく、後ろ側方の死角に入り込んだクルマの存在を警告する機能もありません。この点については競合モデルに劣っていると言わざるを得ません。

それに真っ赤なインテリアはフロントウィンドウへの反射が強く、トンネルの出口などの明暗が切り替わる場面では危ないなとも感じました。

多少の欠点はあるものの、それらを上回る美点には抗えないです。

街中では人目を引くデザインとブランドが、一歩離れた郊外では人目に触れない代わりに爽快な走りがオーナーを満たしてくれるのですから。

今回試乗した「ケイマンS」の自動車税は5万8000円と決して安くなく、その他の維持費は想像もつきません。

でも、どうせ払うなら気持良く払えるクルマが欲しくなりませんか? それはスポーツカーでも、ミニバンでも、軽自動車でも変わらないはず。そして「ケイマン」は間違いなくその1台であると断言できます。

04

(今 総一郎)

【関連記事】

【ゆとり世代のチョイ乗り報告】最後の6気筒!?「ポルシェ・ケイマンS」を試す(前篇)
http://clicccar.com/2016/06/19/379143

【ゆとり世代のチョイ乗り報告】最後の6気筒!?「ポルシェ・ケイマンS」を試す(前篇)

環境や燃費への意識の高まりを受け、小排気量化(ダウンサイジング)とターボもしくはモーターによる補強は、全世界的なトレンドになっています。

911

高性能スポーツカーも例に漏れず、ポルシェも2016年にその動きを加速させており、「911」は従来の3.4Lと3.8Lを3.0Lへ統一。最高出力は20ps、最大トルクは60Nm向上させながら、燃費を約12%も改善させました。

911エンジン

さらに、今年6月にはオープンカーの「ボクスター」では、エンジンを2.0Lまたは2.5Lへ小型化してターボが取り付けられただけでなく、6気筒から4気筒へ気筒数が削減されています。

porsche-718-image

その一方で、最高出力はいずれも35psアップしています。これを受けて、「ボクスター」の屋根をガッチリと固定したクーペモデルの「ケイマン」も同様の改良を実施。新型の受注がスタートしています。

porsche-718cayman-image

この変化に期待の声もあれば、戸惑いや失望を覚えている人もいるようです。

「俺たちが愛したポルシェは死んだ」と嘆く彼らにとって、エンジンの冷却形式が空冷から水冷に変わったことは言語道断で、「911」以外のポルシェは邪道。最新の「911」もサイズが大きく重くそして価格が高過ぎる、らしい……です。小排気量&ターボ化は、ワタクシが想像するよりも深刻なことなのでしょう。

しかし、昔からの「あれこれ」を知らない立場から見ると、今回の改良は前向きなものばかり。性能があらゆる方面で上がり、おまけに維持費のうち自動車税が下がったのですから。

00

とはいえ、ボクスター&ケイマンも新車だとオプションも含めて最終的に総額は700〜800万円になるはず。

となると「ゆとり世代」のワタクシに限らず、ポルシェに憧れつつも予算が……という方々にとって、2013〜2015年式の「ケイマン」を中古で買うという選択が現実的なのではないでしょうか?

それに空冷ポルシェの中古市場での高騰ぶりを見ると、水平対向6気筒の自然吸気モデルもいずれはプレミアが付くのかもしれません。

そんな折り、とある取材の顔ぶれにモデル末期の「ケイマン」の名が。これを逃してしまったら!? と思い、すかさず立候補。無事にドライバーズシートを奪取し、滑り込みで試乗のチャンスを獲得。その魅力や如何に?

【後篇】へ続く……

(今 総一郎)

おや……ボクスターとケイマンの馬の数が同じに!

先日の記事「『4気筒になった新型ボクスターは興味ない』と強がる初代オーナーの戯言」では言いたい放題書いちゃったわけですが、何だかんだ言ってもマイナーチェンジで「718」というサブネームが付いて心機一転した新型ボクスターの最大のトピックはダウンサイジングで4気筒化されたエンジンだし、ポルシェ好きとしては気になるポイント。

ですよね?

標準車は265馬力から300馬力へ、「S」は315馬力から350馬力へパワーアップしているので文句ないだろ!という人もいますしその気持ちも分かりますが、6気筒じゃなくなったのはなんとなくさみしい気持ちがあるは僕だけですかね。

ちなみに理由を「軽量化のため」という人もいますが、ターボを装着したことにより新型は6気筒時代よりも重量が増しているので誤解なきよう。最大の理由は燃費向上です。まあ気持ちよく走れれば文句ないんで、早く乗れる機会が訪れるといいなあ。

S_20160601Porsche Boxter 718_055

そんな話はともかく、「718ボクスター」と「718ケイマン」を比べてみると従来とは上限関係が逆転した価格のほかにも、気になるポイントを見つけちゃたので問題提起。いや、ご報告。

それはエンジンパワー。

マイナーチェンジ前である981型のエンジン最高出力はボクスターよりもケイマンのほうが上だった。

ボクスター:265ps ボクスターS:315ps
ケイマン:278ps ケイマンS:329ps

ところが718となった新型は、ボクスターもケイマンも

標準車:300ps S:350ps

見事に同じになっている……。

S_20160601Porsche Boxter 718_023 S_20160601Porsche Boxter 718_073

この理由がどこにあるのか?

推測ですが、ポジショニングの変更でしょうね。

これまでは「価格も含めケイマンのほうが上級ポジションだったから、ボクスターよりハイパワーで」だったのが、新型は「ボクスターのほうが高い価格になったんだからケイマンのほうがハイパワーなのはちょっとね」といったとこでしょう。

おい、ますますボクスターの魅力がアップしちゃったじゃないか! どうしてくれるんだ! 欲しくなっちゃうぞ!(価格も上がったけど!)

というわけで、新型「718」はボクスターもケイマンの同じ最高出力になったんですよ、というお知らせでした。

S_20160601Porsche Boxter 718_062

あと、気がついたらポルシェ公式ウェブサイトの車名選択メニューが「ボクスター」とか「ケイマン」がまとめて「718」になってるよ。これって……今後は「911シリーズ」みたいにボクスターとケイマンをまとめて「718」にする伏線に違いない!

S_718WEB

(工藤貴宏)

【関連記事】

『4気筒になった新型ボクスターは興味ない』と強がる初代オーナーの戯言http://clicccar.com/2016/06/02/375964/

「4気筒になった新型ボクスターは興味ない」と強がる初代オーナーの戯言

言っておくけど全然興味ないからね。欲しくもないからね。6気筒じゃなくて4気筒ターボのポルシェ・ボクスターなんて。

S_IMG_9260

だいたい、昔はともかく今どきのポルシェのスポーツカーといえば6気筒というのはお約束。なのに、『718ボクスター』とネーミングまで変更した新型ボクスターのエンジンは全車4気筒ターボ。

いや別にいいんですよ4気筒ターボでも、SUVとかセダンなら。だけど燃費対策だかなんだか知らないけど、ポルシェのスポーツカーに6気筒じゃなくて4気筒っていうのはどうなんですかね。

効率がいい? 昔はポルシェにも4気筒のスポーツカーがあった? 今じゃWECのマシン(昨年はル・マン24耐で1-2フィニッシュ!)もエンジンは4気筒? 何を言っているんだかさっぱりわからないなあ(本当はわかるけど)。

わかってますよー。6気筒から4気筒になって排気量が落ちてもターボのドーピングでパワーが上がっているのは。

S_IMG_9240 S_IMG_9242

「ボクスター」は先代比35ps/100Nmアップの300ps/380Nm、「ボクスターS」は先代比35ps/60Nmアップで350ps/420Nm。

ちなみに僕が持っている14年落ちの986型は……「ボクスターS」なのに252ps/305Nm。あれれれれ……でもボクスターといえばやっぱり6気筒でしょ。ターボが付いているからってねぇ。

S_IMG_9263 S_IMG_9269

さて、話をデザインに移しましょうかね。最新の「718ボクスター」は、パッと見たところ先代と前後バンパーやライトなど細部しか変わっていないように見えるけど、実はボンネットフードとフロントウインドウ、そしてソフトトップ以外はすべて新設計なのだとか。これは心の底からカッコいいと思うから許す!

S_IMG_9287

またナビ関係はオプションで通信機能付きにも発展できる「ポルシェ・コミュニケーションマネージメントシステム(PCM)」を採用。iPhoneとの連携も便利そうだから文句ないや。

価格は、ベーシックな「718ボクスター」の6速MT車が658万円、7速PDKだと710万4000円。高性能版「718ボクスターS」はそれぞれ852万円/904万4000円。

ちなみにクローズド版である「718ケイマン」の価格も発表されているけれど、新型からボクスターとケイマンの相対的な価格が逆転したことには驚かずにはいられない。

これまでケイマンは「ボクスターより高価」だったけど、新型は約40万円安いんだからね。まあ、買うにしても(無理しても)中古にしか手が届かない僕にはあんまり関係ないか。

S_IMG_9279 S_IMG_9270

というわけで、独断と偏見でチェックしてみた新型「718ボクスター」。

新車は買えない初代ボクスターオーナーとして確実に言えるのは「4気筒ターボなんて興味ないさ!悔しくなんかないよ」と強がるしかないってこと。

だって、乗れば「これ、イイ!」って感じることが、乗らなくたって想像できるんだから。

そもそもポルシェはスペックではなく、そのドライブフィーリングが大事。気筒数じゃなくて、その仕上がりが重要なんですから。懸念の4気筒エンジンだって、マカンの仕上がりを見ればスポーティ感が失われているはずないし。

ああ、はやく乗ってみたい!

S_IMG_9290

以上、初代ボクスターオーナーの戯言でした。

(工藤貴宏)