Motor Fan's YEAR 2016

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来年1月のトランプ大統領誕生で自動車産業はどう変わる!?

第45代アメリカ合衆国大統領選挙の結果、民主党候補のヒラリー・クリントン氏を破って共和党候補のドナルド・トランプ氏が勝利。来年1月20日にはトランプ政権が誕生します。

Donald_j._Trump

CNNによると、トランプ氏は政権発足直後に「NAFTA※」(北米自由貿易協定)などの「貿易政策改革」に着手すると報じており、トランプ氏の方針には以下の5つの基本原則があるといいます。

・NAFTAの再交渉、または撤退
・TPP環太平洋経済連携協定中止
・不公平な輸入を停止
・不公平な貿易行動を終結
・米国での雇用機会拡大

「強いアメリカの復活」、「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ氏は、「NAFTA」による米国経済への影響を商務省や国際貿易委員会に再評価させる考えのようで、米国に不利だと判断した場合、「NAFTA」から離脱することも辞さないそうです。

※NAFTAは1994年に発効されたカナダ(資源)、メキシコ(労働力)、アメリカ(資本)の3ヶ国を結び付ける貿易協定

メキシコはアメリカより人件費が安く、日本を含む世界の主要自動車メーカーは「NAFTA」の恩恵により、米国にクルマを関税無しで輸出できることから、メキシコに組立工場を建設しており、付随する関連部品メーカーも相次いで進出しています。

HONDA

トランプ氏は、こうした状況が自国労働者の雇用を奪っているとして協定を見直し、メキシコからの輸入に高い関税を課すことを訴えてきました。

しかし、「NAFTA」の活用においては、GM、フォード、クライスラーも近年メキシコでの生産を強化しています。

米フォードのマーク・フィールズCEOは「高い関税が自動車産業全体にかけられればアメリカ経済は大きな影響を受けるだろう」と懸念を示しており、トランプ氏に政策の修正を働きかけていく考えを示しているそうです。

トランプ氏が選挙戦を勝ち抜くために主張してきた数々の持論を政権発足後にそのまま行使するかどうかは大いに疑問が残るところ。

また、自国の国益を最優先する方針に変わりが無いとすれば、米国に進出した日本の自動車メーカーが、現地で多大な雇用を生み出し、現地の材料を使って、アメリカ人の手で製造、販売している状況では、かつてのような日本車バッシングのような事態は起きないものと予想されます。

むしろ、懸念されるのはトランプ政権が保護主義を強め、米国内での「クルマの地産地消」を促進することで現地生産化がさらに進み、日本からの輸出が減少することで国内生産が減り、国内の雇用に影響が出ることかもしれません。

いずれにしても、こうした状況を踏まえ、引き続き来年の米国新政権発足後の動きを注視する必要がありそうです。

Avanti Yasunori

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アウディがメキシコ新工場で新型「Audi Q5」の生産を開始

北米市場への輸出に有利なメキシコに自動車メーカーが次々に進出していますが、アウディも北米初の自動車組み立て工場を開設しました。

Audi Mexiko: Guests of the inauguration event in the Audi plant in San José Chiapa at the finish line in Assembly. © AUDI AG

アウディはプエブラ州サンホセ チアパスに立地するメキシコ新工場に10億ドル以上を投資して、従業員数4,200名、生産能力年15万台の生産拠点を持つことになります。

アウディの取締役会会長のルパート・シュタートラー氏は「メキシコ工場の開設は、我々の会社の歴史におけるマイルストーンであり、国際化を推進するアウディにとって、大きなステップといえます。これは、アメリカ大陸におけるもっとも近代的な工場のひとつです。アウディは、この生産設備により、世界中のお客様に製品を供給する重要な拠点を確立することができました」と述べて、50ヶ国以上の国々と合計12の自由貿易協定を結んでいるメキシコに新工場を開設する意義を強調しました。

JIS Park at the Audi site in San José Chiapa.

アウディは工場の建設でバーチャル・テクノロジーを駆使したことも注目されます。

同社はバーチャル・テクノロジーによって様々な分野の設計者が工場の設計段階で、完成後の工場の様子を検討して工期を短縮できたとしています。実際、アウディは敷地面積400ヘクタールの規模のプレス工場、ボディ工場、塗装工場、及び組み立てラインを完備した自動車工場を、わずか3年半という短期間で建設し、従来と比べて30パーセントも早く工場の操業を開始できたということです。

In the body shop at the Audi plant in San José Chiapa, robots of the latest generation assemble the bodies of the Audi Q5 with the most modern technology available.

もうひとつの新工場の特長は、工場敷地に隣接して、同社がサプライヤーパークと呼ぶ、協力メーカーの施設を集めたエリアを設けていることです。

このサプライヤーパークでは、部品メーカーと物流会社の7社が、Audi Q5の生産スタートに合わせてすでに操業を開始しています。

同社では、このような新工場の生産環境を「JIS(ジャスト イン シーケンス)パーク」と名付けて、部品メーカーの工場と完成車の組み立てラインが短い距離で結ばれていることを強調しています。

The Audi site in San José Chiapa is located at 2,400 meters above sea level and is the most modern plant in the Audi world. The plant has an annual production capacity of 150,000 Audi Q5 vehicles.

アウディは新工場が生産を開始の時点で、すでに新型Q5の部品の70パーセント以上をNAFTA(北米自由貿易協定)地域から調達して高い現地調達比率を達成していますが、さらにその比率を増やしていくことを計画しています。

Workers on the occasion of the internal inauguration of the body shop.

メキシコ新工場で生産される「Audi Q5」は、現在までに世界中で160万台が販売され、中国とインドでもそれぞれ現地での生産が継続されているアウディの世界戦略車で、今後の「Audi Q5」の販売動向が注目されます。

(山内 博・画像:アウディ)