Motor Fan's YEAR 2016

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産総研が電気分解で水素を大量に製造できる酸化物ナノ複合化陽極材料を開発

産業技術総合研究所(産総研)は、電気分解で従来より水素を大量に製造できる酸化物ナノ複合化陽極材料を開発したと発表しました。

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この新しい陽極材料を開発したのは、産総研の 島田 寛之 主任研究員と山口 十志明 主任研究員で、水素社会の実現を促進する技術になると注目されています。

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今回開発された新陽極材料は、サマリウムストロンチウムコバルタイト(SSC)とサマリウム添加セリア(SDC)という二種類の10 nmレベルの酸化物ナノ微粒子を均質に複合化したナノ複合粒子(二次粒子)で作られれていることが特徴で、ナノ複合粒子内にイオンの伝導経路を形成し、電極反応点数を飛躍的に増加させて、従来より大量の水素を電気分解で製造できるようになりました。

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新陽極材料を使用した固体酸化物形電解セル(SOEC)の電流密度は、既存の水電気分解技術と比較して2〜10倍に達する2.3 A/cm2(750 ℃、電解電圧1.3 V)を実現しました。

このことは既存の電気分解技術より大量の水素を製造できることを表しており、水素ステーション用などの水素製造装置に新陽極材料を使用すれば、電気分解装置をコンパクト化することが期待でき、太陽光パネルで発電した電力で水素を製造できるエコ水素ステーションの実現・普及に近づくことができます。

(山内 博・画像:産総研)

バイオ合成ゴムをトヨタが世界で初めてエンジン・駆動系ホースに採用

トヨタは、高い耐油性、耐熱性が必要な特殊ゴム製部品であるエンジン・駆動系ホースに、バイオ合成ゴムを世界で初めて採用すると発表しました。

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トヨタでは、国内生産車種のバキュームセンシングホースに2016年5月から順次適用し、年内には国内生産の全車種に採用する予定です。今後、ブレーキ系ホース、燃料系ホースなど、より厳しい条件で使用される特殊ゴム部品にも採用拡大を目指しているようです。

バキュームセンシングホースとは、エンジンの吸気マニホールドと圧力センサーを接続するホースで、吸気系の負圧を圧力センサーに伝える役目を果たしています。

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今回のバキュームセンシングホースは、トヨタと日本ゼオンおよび住友理工の共同開発でバイオ合成ゴムのバイオヒドリンゴムを原料として完成しました。

バイオヒドリンゴムは大気中のCO2を吸収しながら生長した植物を原料としているので、従来の石油系ヒドリンゴムに比べて製造から廃棄までのライフサイクルでCO2排出量を約20%減らすことができる、ということです。

同時に、バキュームセンシングホースに求められる耐油性、耐熱性、耐久性は同等レベルを確保しています。

エンジン・駆動系のゴム製部品には、一般のゴム製品より高い耐油性や耐熱性が要求されるので、バキュームセンシングホースにバイオ合成ゴムを採用するには、植物由来原料を分子レベルで石油由来原料と結合させて合成ゴムへ変換する技術など、様々な複合化技術を駆使することで可能になりました。

トヨタは2015年10月に、持続可能な社会の実現に貢献するための新たなチャレンジとして「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表しています。今回はこのチャレンジの一つとして、バイオヒドリンゴムを原料とした環境適応型のバキュームセンシングホースを採用した模様です。

今後は自動車用ゴム製部品の性能を維持したうえで、いかに環境性能を向上させるかに開発の重点が移行するものと見られます。

(山内 博・画像:トヨタ)