Motor Fan's YEAR 2016

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米・Time誌が2016年ベスト発明品に選定したグッドイヤーの球形タイヤ「Eagle-360」とは?

グッドイヤーは、同社の球形タイヤ「Eagle-360(イーグル・サンロクマル)」が米Time誌の2016年「ベスト発明品」の25品目のひとつに選定されたと発表しました。

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Time誌ベスト発明品とは、同誌の技術分野担当編集者が「世界をより良く、よりスマートに、時としてより楽しくしてくれる発明品」を毎年選出しているもの。

「Eagle-360」はグッドイヤーが 今年のジュネーブモーターショー2016で自動運転車向けの次世代コンセプトタイヤとして公開したもので、いままで見たこともないような、まん丸の球形をしている点にビックリです。

グッドイヤーでは「Eagle-360」の特徴は「機動性」・「通信接続性」・「バイオミミクリー(生態模倣性)」の3点であるとしており、それにより将来の自動運転の安全性の向上に寄与することができるとしています。

まず、第1の特徴である機動性については、球形タイヤであることから、すべての方向に移動できる多方向性を備えており、安全性が向上するだけではなく、さらに隙間のない駐車場や街中の狭い道路など狭いスペースにも対応できます。

次に、第2の特徴の通信接続性については、埋め込まれたセンサーが車両制御システム及び周りの車両に対して、路面状況や気象状況を伝達して安全性を高めています。さらに、空気圧&トレッド監視システムが備えられており、タイヤの摩耗状態を管理できます。

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そして、第3の特徴のバイオミミクリー(生物模倣性)とは、自然界からヒントを得た形状をトレッド設計に取り入れているということです。具体的には、トレッドパターンにブレインコーラル(脳サンゴ)という、見た目が脳みそのような形のサンゴを模倣したパターンを採用しています。

このパターンを採用したことで、トレッドが天然のスポンジのように作用し、路面がドライな状態ではトレッドが硬く、ウェットな状態では柔らかくなる特性を持っており、優れた運転性能を発揮するだけでなく、ハイドロプレーニング現象の防止にも寄与することができます。

このブレインコーラルを模倣したトレッドパターンは、球形ではない通常のタイヤにも応用可能なアイデアであると思われます。「Eagle-360」から生まれたアイデア・技術が近い将来の一般タイヤに取り入れられることを期待しましょう。

(山内 博・画像:グッドイヤー)

軽量コンパクトな「eアクセル」が、新しいハイブリッドAWDを生み出す【GKNドライブライン試乗会】

ボルボXC90のプラグインハイブリッド仕様に採用されている「eAxle(eアクセル)」は、GKNが注力しているAWDシステムになります。

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このシステムは、ボルボXC90 T8 Twin Engine AWDをはじめ、BMW 225xe アクティブツアラーなど、PHVやEVなどに最適。

PHVであるボルボXC90 T8 Twin Engine AWDの場合、ベースとなるFF駆動に後輪アクスルを追加され、回生機能をもつEV走行では航続可能距離40kmを達成し、最高速は125km/hに到達。もちろん、AWD走行も可能にしています。

xc90_t8なお、ボルボXC90 T8 Twin Engine AWDの「Twin Engine」のひとつを示すモーターの出力は60kW、トルクは240Nm。

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GKNの「eアクセル」の特徴は、ギヤボックスとモーターを部分的に統合している点。電動モーター用の共通のアルミハウジング化やトランスミッションの同軸配置、中間シャフトとデファレンシャルにギヤを一体化することで約15kgと軽量かつコンパクト化を果たしています。

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また、特許技術であるディスコネクトシステム(EDD)の採用により、高速走行時にはFFに切り替わることで損失を最小限に抑え、燃費向上などにも寄与します。

GKNのプルービンググラウンドの周回路では125km/h以上に達しないため、FFに切り替わる瞬間は確認できませんでした。担当者によると、125km/h以上に達するシーンがあってもドライバーは察知できないはずとのこと。

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ボルボ・カー・ジャパンによる試乗会を含めて何度かXC90 T8 Twin Engine AWDのステアリングを握る機会がありましたが、駆動輪の切り替わりなどが感じられたことは皆無といえるほどスムーズだったのを思い出しました。

今回のGKNプルービンググラウンドの周回路を走る試乗でも、運転席と後席に座り、走行状態によりFF、FR、AWDが切り替わる様子をインパネのディスプレイで確認しながらテスト。駆動状態が切り替わる様子はディスプレイで確認しない限り、ドライバーが運転しながら感じることはないことが確認できました。

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「eアクセル」は、ほかの自動車メーカーへの提案もされているそうで、今後は同システムを搭載したハイブリッド、PHVのe-アクセルAWDモデルが増えていくかもしれません。

(文/塚田勝弘・写真/小林和久、塚田勝弘、GKNドライブラインジャパン)

ハンドリングを変える、2輪駆動向け電子制御式トルクマネージャー【GKNドライブライン試乗会】

GKNドライブラインの最新技術説明会の試乗会で用意されたETM2(電子制御式トルクマネージャー)をご紹介します。

ETMは「Electronic Torque Manager」の略で、別の言い方をすると電子制御式LSD(リミテッドスリップデフ)ということになります。

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FF向けとしては、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIに搭載されている電子制御式LSDである「電子制御式ディファレンシャルロック(XDS)」がすでに世に出ています。機械式と遜色のない締結力を誇り、またその介入ぶりも自然で、FFとは思えないコーナーワークを披露します。

現行GTI投入時のフォルクスワーゲンによるプレス向け試乗会では、富士スピードウェイにパイロンを置いた特設コースを設置。アンダーステアやコーナリングスピード低下の抑制を防ぐ同機能の効果を体感することができました。

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ゴルフGTIの電子制御式LSDは、オープンデフとLSDカップリング(差動制限機構)で構成されています。LSDカップリングはトランスミッションの外に配置されているため、トランスミッションの設計変更が必要になるのと同時に、LSDカップリングを置くスペースも要求されます。

また、LSDカップリングは油圧で作動するのでオイルポンプの駆動用モーターも必要となり、NVHと耐久性、制御装置のために特殊なオイルが必要になります。

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そこでGKNは、デフと作動制限装置を統合することでトランスミッション内に統合し、モーターによる直接駆動を目標と掲げ開発を推進。

小型化するには、LSD機能、アクチュエータと減速機構、作動ギヤ機構などの要素技術を採用し、制御ロジックの設定や台上試験、実車試験などでクラッチトルクの確認や応答性、異音や振動の確認、静的強度、フェイルセーフ機構の作動確認などが行なわれています。

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実車試験では左右スプリットμ路発進性、旋回性などが確認されたほか、ハンドリング路(プルービンググラウンド内)においてテストドライバーにより1.1秒という短縮データを得ているそう。

試乗車は先代マツダ・アクセラ(SPEED AXELA)で、試作車としてFWD(前輪駆動)用のETM2(電子制御式トルクマネージャー)が搭載されていました。

ETM2の制御「あり」、「なし」で試乗すると効果が絶大なのが分かります。作動させると、ノーズがインに向きやすくハンドリングの軽快感も高まっているように感じます。

さらに、アンダーステアが抑制され、姿勢を保ちやすくコーナリングスピードを維持しやすくなります。多少オーバースピードでコーナーに入っても切り増しすることでさらに曲がっていく感じは驚きでした。

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今回の2輪駆動向け「ETM2」は試作品で、量産は2018年から2019年あたりになりそうとのこと。省スペース化によりコンパクトモデルにも搭載できるそうですから、FFホットハッチなどに採用されればハンドリングの向上に寄与するのは間違いないでしょう。

(文/塚田勝弘・写真/小林和久、塚田勝弘、GKNドライブラインジャパン)

冬場のAWD車の応答性を向上させる、電磁式全輪駆動カップリング【GKNドライブライン試乗会】

ジョイントやサイドシャフト、AWDシステムなど、自動車駆動系システムの世界的なサプライヤーとして知られているGKNドライブライン。

10月末にGKNドライブラインジャパンによる技術説明会と、同社技術を搭載した車両の試乗会が栃木市のプルービンググラウンドで開催されましたのでご報告します。

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日本の自動車メーカーをはじめ、世界中に顧客をもつGKNドライブライン。技術説明は同社の概要にはじまり、CVJドライブシャフト(CVJ:等速ジョイント)、AWDシステム、eDriveシステム(ボルボXC90)などについて行なわれました。

用意されていた試乗車は、ETM2(電子制御式トルクマネージャー)を搭載したマツダ・アクセラ(先代のSPEED AXELA/6MT/試作車)、EMCD(電子制御式トルクカップリング)を搭載したマツダCX-5 AWD(試作車)、ボルボXC90 T8 Twin Engine AWD Inscription(eAxle搭載の市販車)。

いずれも顧客は自動車メーカーなどであり、我々ユーザーに直接届けられる商品ではありません。しかし、走行性能や安全性などの面で間接的に恩恵を受けていて、駆動系システムやソリューション(CVJシステム、AWDシステム、トランスアクスル、eDrive)などに欠かせない存在となっています。

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GKNは世界の90%というほぼすべての自動車メーカーと協業し、世界の自動車の50%が何らかの技術を採用しています。CVJ(等速ジョイント)とAWD、eDriveシステムにおいてシェアナンバー1を獲得。

まずは、今回発表された冬期におけるAWDの応答性向上から見ていきます。これはGKNが開発している、SUVやクロスオーバー車用の電磁式全輪駆動(AWD)カップリングによるもので、低温時における低ミュー路での応答性をさらに向上させる技術です。生産開始は2018年中に予定されているそうです。

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試乗車は「EMCD(電子制御式トルクカップリング)」を搭載したマツダCX-5(試作車)。低ミュー路(ミュー=0.3)に前輪を停車させ発進させてみると、何事もなかったかのようにスムーズにスタートし、ステアリングを取られることも皆無。数回試しただけでしたが、信頼性の高さをうかがわせるものでした。

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GKNのEMCD(電子制御式トルクカップリング)は、瞬時にAWD特性をコントロールすることができます。通常時は燃費向上のため前輪駆動の高効率を提供。最大500Nmまでのトルク出力に対応する技術で、後輪駆動プラットフォームでも高い人気を得ているそうです。

GKNでは車両センサーを分析し、発進時やコーナリング時、悪路走行時に前輪と後輪の間で効率的なパワーデリバリーに注力。後輪にトルクが必要になると瞬時に対応できるため、トランクション向上に貢献します。また、小型化されたEMCD(電子制御式トルクカップリング)は高精度な電磁制御を使い、走行状態に応じてカップリングのクラッチトルクを継続的に調整可能となっています。

(文/塚田勝弘・写真/小林和久、塚田勝弘、GKNドライブラインジャパン)

電解液中のリチウムイオンの挙動を観察する手法をトヨタが世界で初めて開発

トヨタは、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)に搭載されているリチウムイオン電池内部で、充放電する際に電解液中で移動するリチウムイオンの挙動を観察する手法を世界で初めて開発したと発表しました。

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トヨタでは、今回開発された手法を使えば、リチウムイオン電池の性能を低下させる電解液中のリチウムイオンの偏りをリアルタイムで観察することが可能になり、「EV・PHVなどの航続距離や電池寿命を向上させる研究の有効なツールとなる」としています。

リチウムイオン電池は、正極の金属酸化物と負極の炭素材料との間を、リチウムイオンを通過させる樹脂薄膜製のセパレーターで隔離・絶縁した状態で有機電解液中に漬した構造になっています。

リチウムイオン電池の充放電時には、電解液中のリチウムイオンが正極と負極との間を移動することで両極間に電流が流れるようになっているので、電解液中でリチウムイオンに偏りが発生すると電池の性能を低下させてしまいます。

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ところが、従来では電解液中のリチウムイオンの動きを観察することができなかったために、電解駅中のリチウムイオンの偏りを防止する研究が進まないという事情がありました。

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そこで、リチウムイオンの挙動を観察するために、豊田中央研究所が理研と高輝度光科学研究センター(JASRI)の協力を得て、大型放射光施設「SPring-8」に専用の豊田ビームラインを設置して、通常のレントゲン装置の約10億倍という大強度X線を用いて、リチウムイオンの動きを高解像度かつ高速に計測できる施設を準備しました。

見えない電解液中のリチウムイオンの挙動を観察するために開発した方法は、電解液を重元素を含有したものに変更するという方法。通常のリンを含む電解液から今回の重元素を含む電解液に変更すると、リチウムイオンが電解液中を移動する際に結合する「リン含有イオン」が「重元素含有イオン」に置き換わります。

このとき、重元素はリンに比べX線を透過させにくいという性質を持っているため、X線を透過させた撮影画像では「重元素含有イオン」が影の濃淡となって現れることで、電解液中で重元素と結合しているリチウムイオンが偏る動きを観察することが可能となります。

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この新開発の観察手法を使用して、車載されている製品と同等のラミネートセル型のリチウムイオン電池を実際に使用される環境・条件と同一の状態で、充放電の過程で電解液中のリチウムイオンの偏りが発生するプロセスをリアルタイムで観察することが可能になりました。

トヨタでは今後、正負極やセパレーター、電解液の材料や構造、電池の制御方法を変えてリチウムイオンの挙動を観察し、電池の性能が低下するメカニズムを解析することで、リチウムイオン電池の性能・耐久性向上につなげたいとしています。

(山内 博・画像:トヨタ)

トヨタが「つながるクルマ」によってライドシェアやカーシェアで「稼ぐ」方法とは?

トヨタのコネクティッドカンパニーが発表した「Connected戦略」のひとつに、「モビリティ」関連サービスがあります。クルマを「作って売る」という従来のビジネスに加えて、ライドシェアやカーシェア事業者との提携を強化するというもの。

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こうしたサービスに進出すると、肝心の新車が売れなくなるのでは? という疑問が浮かびますが、そうしたニーズもある以上は手をこまねいているワケにはいかないのでしょう。

日本では「白タク」行為として道路運送法違反になるほか、タクシー事業者から反発を受けているライドシェア。アメリカでは一般向けにパイロットサービスとして、2016年12月から開始されます。

ライドシェア事業者との提携では、トヨタとトヨタファイナンシャルサービスが手を組み、ユーザーがライドシェアのドライバー(運転手)として得た収入から月々のリース料金を回収するという「フレキシブルリースプログラム」と命名されたビジネスモデルを構築しました。

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一方、日本でも急速に普及しているカーシェア。北米では個人のカーシェア会員が増えていますが、課題となっているのが安全かつ便利なクルマのキーの受け渡し。日本よりも車両盗難が多いアメリカだけに、確かに課題となりそうです。

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従来は、キーをコンソールボックス内で受け渡す(キーが持ち去られるリスクがある)、特殊な通信装置をクルマのCANにつなぐ(外部からハッキングされる恐れがある)などの方法が採られることがあったそうです。

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そこで、トヨタが開発したのがスマートキーボックス(SKB)。車両を改造する必要がなく、車内にこの箱を設置するだけでカーシェアのユーザーが手持ちのスマホでドアロック、エンジン始動が可能になるというもの。

安全性の確保は、SKBにアクセスする暗号キーをユーザーのスマホに送信し、スマホを近づけるとSKBが反応。暗号キーが承認されてキー操作が可能になります。つまり、1台ずつに割り振られたスマートキーのような機能を果たします。

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具体的には、北米のGetaround社と2017年1月にSKBを使ったパイロットサービスを開始。先述したように、トヨタファイナンシャルサービスからユーザーに車両をリースし、ユーザーがカーシェアで得た収入を回収するというリースプログラムも併せて提供されます。

このSKBのシステムは、アメリカだけでなく日本、中国でも特許出願済みとのことで、日本でも同様のサービスが開始されるかもしれません。

(文/写真 塚田勝弘)

従来の約2倍「形状が復元しやすいゴム」を作り出す材料技術を豊田合成が確立

豊田合成は、車載用電池のシール材に最適な、高温で長時間の力を加えても形状が復元しやすいゴムを作り出す材料技術を確立したと発表しました。

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このゴム材料の新技術によって、長期にわたって安定した耐久性が求められる次世代自動車(EV、PHV、FCVなど)用の車載バッテリーユニット等に用いられるシール部品の薄型化、軽量化、長寿命化を達成することができます。

一般に、ゴムは高温で長時間にわたって圧縮し続けると弾性が衰え、「永久ひずみ」が生じるという性質があります。この「永久ひずみ」が発生すると、ゴムのシール性能が低下します。

「永久ひずみ」を防止するためにゴムの弾性を強くした場合、伸びにくい硬いゴムになってしまい、組み立てが難しくなるなど、ゴムのシール部品として不具合が発生します。

そこで同社は、ゴムに配合する複数の薬品に熱に対する耐久性を向上させる薬品を新たに選定。ゴムの配合設計を最適化することで、元の形状から4倍以上伸びる大きな弾性を持ちながら、圧縮永久ひずみが従来比で約2分の1(同社調べ)となる材料配合技術を確立することに成功しました。

これにより、従来品と比較して形状が約2倍復元しやすいゴムを製造することができます。

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この技術は日本ゴム協会の「第71回ゴム技術進歩賞」を受賞しています。同社では、このゴム材料の新技術を利用して、次世代車の車載電池用シール部品のグローバルサプライヤーとして展開することを目指しています。

(山内 博・画像:豊田合成)

ガラスコーティング材が進化する!?「キズがついても元に戻る」透明で曇らない膜を産総研が開発

愛車のフロントガラスに残るワイパーの拭き跡は憂鬱なものですが、こんな悩みの解消につながりそうな、新しい防曇処理技術を産業技術総合研究所(産総研)が開発しました。

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今回、産総研が開発した防曇処理技術のポイントは、自動車のフロントガラスなどの透明な基材に簡単に処理でき、処理膜にキズがついても元に戻る自己修復性のある透明な膜が開発された点です。

従来の防曇膜は、ガラスの表面に親水性素材を膜状に塗布するというものでしたが、その防曇膜は表面が物理的に傷つけられるとガラス基材から剥がれてしまい、防曇機能を失ってしまうという問題がありました。

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新開発の防曇技術は、水溶性ポリマーの一種のポリビニルピロリドン(PVP)と、AMP-ナノクレイ というナノメートルサイズの粘土粒子とからなるゲルを皮膜として、ガラスなどの透明な基材の表面にコーティングすることが特徴です。

AMP-ナノクレイとは、アミノプロピル基を表面に付けたタルクに似たフィロケイ酸塩を基本組成とする、粒子の大きさがナノメートルサイズに微細化された粘土のこと。

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新開発の防曇皮膜は、光線を曲げずに直進させる光学特性に優れ、表面の曇りを防ぐ防曇性が高く、皮膜にキズがついてもAMP-ナノクレイとPVPが空気中の水分を吸収して膨張し、キズを埋めるように移動するので、表面が元に戻る自己修復性を備えていることが確認されました。

しかも、基材に対する密着性が高く、水がついても性質が変わらず安定性に富み、水中で油をはじく性質(はつ油性)にも優れているので、処理した表面には油が付着しなくなるという利点もあります。

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今回、産総研が開発した新防曇技術を自動車のフロントガラスに使用できるようになれば、従来ドライバーを悩ませていたフロントガラスにつくワイパーの拭き跡や曇りなどの解消につながりそうです。

しかも、ガラスに限らず様々な基材表面にも容易にコーティングすることができるので、自動車のフロントガラス以外にも、メガネ・ゴーグル・建物用ガラス・太陽光パネル・各種産業機器などいろいろな分野への活用することが可能で、早期の実用化が期待されています。

(山内 博・画像:産総研)

トヨタの「つながるクルマ」で何ができるようになる?

クルマのキーワードとして最近注目を浴びている「自動運転」は、日本語なので分かりやすい反面、「何でも自動でやってくれそう」という誤解を受ける可能性もあります。

一方で「Connected Car(つながるクルマ)」と聞くと、具体的に何を意味するのか判然としない気もしますが、自動運転とともにこれから頻繁に聞くことになりそうなキーワードです。

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2016年11月1日、トヨタ自動車 コネクティッドカンパニー プレジデントである友山茂樹氏が発表した「トヨタのConnected戦略」は、トヨタのこれまでの取り組みと、コネクティッドカンパニーによる今後の事業展開、そして具体的なサービス内容まで多岐にわたっていますが、ここでは概要をお届けします。

クルマとインターネット(サーバーやクラウド)を接続するには、いくつかの方法があり、トヨタでは2002年に車載通信機DCMを実用化しています。

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携帯電話(スマホ)や通信会社による通信機器を使うよりも車両のイニシャルコストが嵩む傾向があるため、高級車中心のラインナップでしたが、その時点でベストといえるセキュリティを確保。

現在は、トヨタ独自のTプローブ交通情報を活用した渋滞回避ルートの提供をはじめ、緊急通報サービス、盗難追跡サービス、先読み情報サービスなどがビッグデータから提供されています。

DCM搭載車(コネクティッドカー)からは、位置や速度情報をはじめ、エンジン、センサー、制御系情報が収集されビッグデータになるわけです。

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今回発表された重要なポイントとして、まず2020年までに車載通信機DCMをグローバルで共通化し、日米でほぼすべての乗用車に標準搭載。さらに順次主要なマーケットに拡大していくという計画。

さらにKDDIと共同で、車両の位置情報から国・地域ごとに選定された通信事業者に自動接続し、グローバルな通信プラットフォームを構築するとしています。

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これにより、世界中を走るトヨタ車(レクサス車)の情報を集めるだけでなく、マイクロソフトと共同で北米に設立された「Toyota Connected」により、ビッグデータとしての集約と活用が図られることになります。

こうしたビッグデータは、渋滞回避など現状のサービスだけでなく、将来的には自動運転につながる高度な地図や車両制御などに活用されるでしょう。

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もちろん、「つながるクルマ」個々の故障や整備の発見だけでなく、メンテナンスの予知にもつながるほか、車両データの遠隔操作まで広がります。

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ほかにも、保険会社への情報提供やライドシェア事業者との提携、カーシェア事業者との提携と課題(スマートキーボックスで解決)、アメリカのGetaround社との提携、国内タクシー事業者との連携強化、新型プリウスPHVの国内向けサービスなど多岐にわたっていますので、別記事でご紹介します。

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「つながるクルマ」により、将来は各ユーザーにAIも活用したエージェントが付き、車載ディスプレイやスマホなどの端末を媒体にして自動運転車両を動かすだけでなく、ドライブや移動のサポート、家庭の家電操作などを完璧にこなしてくれる付き人のようなサービスも実現しそうです。

(文/写真 塚田勝弘)

2024年末に「自動車IT」の世界市場が6兆円規模へ拡大

世界の交通IT市場における収益が2015年末時点で2兆円を超えたそうです。

米調査会社トランスペアレンシーマーケットリサーチによると、最先端の輸送管理システムが41%のシェアを占めたそうで、都市間や都市内を繋ぐ次世代交通管理ネットワークシステムへの需要が高まっているとしています。

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このペースで行くと、2024年末までに年平均成長率は12.9%に達し、その市場規模は約5.9兆円にのぼる見込みとか。

アプリケーション別でみると、待ち時間や移動を最小化する「ITS」(高度道路交通システム)が大きなシェアを占めており、2024年末まではその座を維持し続けるとしています。

地域別では北米(米国・カナダ・メキシコ)が41.2%のシェアを占めるとの予想。

社会的・経済的成長を支える交通システムが麻痺すると、燃料消費、移動時間、コストが絡む大きな問題に発展するだけに、「交通IT」はそれらに対処するための重要な役割を担っています。

自動車IT業界ではこうした背景から、「ITS」によりアフターサービス市場が活発になり、目覚ましい成長を遂げると予測しているようです。

Avanti Yasunori

【関連リンク】

トランスペアレンシーマーケットリサーチ
http://www.transparencymarketresearch.com/

国土交通省 国土技術政策総合研究所
http://www.nilim.go.jp/lab/qcg/index.htm

エアコンダクトで燃費向上? 断熱性能による燃費向上効果を計測したデータが公開

プラスチック製品企業のキョーラクが、自社製の「発泡ダクト」をインパネダクトに使用したときの燃費向上効果を、実車での測定データを公開してアピールしました。

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今回の測定データは日本自動車輸送技術協会(JATA)で測定されたもので、実際の走行車両でインパネダクトに発泡ダクトを使用することで燃費向上効果が実証されたのは初めて(キョーラク調べ)ということです。

インパネダクトは、エンジンルームに配置されているカーエアコンから送られてくる冷風(冷房の場合)を、インパネの空気出口まで導く空調用の空気通路のことです。

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従来、インパネダクトにはポリエチレン(PE)樹脂を0.8ミリの板厚で単に筒状に成形したものが一般的に使われていましたが、キョーラクではポリプロピレン(PP)樹脂を発泡させた材料でインパネダクトを成形することに成功し、発泡ダクトを製品化しています。

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キョーラク製の発泡ダクトは、PP樹脂を板厚2.5ミリに発泡させてインパネダクトを成形したもので、今回の測定では市販の軽自動車でエアコンを稼動させて、JC08モードの走行条件で燃費を測定しました。

この測定で得られたデータによると、板厚2.5ミリの発泡ダクトを使用した場合には、従来の板厚0.8ミリのPE製インパネダクト(発泡なし)と比べて、リッター当りの走行距離が発泡率2.8倍の発泡ダクトで180メートル延長され、発泡率4.0倍の発泡ダクトでは255メートル延長させることが実証されたということです。

この測定結果は、発泡ダクトの断熱効果でエアコンの負荷が少なくなったことによるもので、車両を15kg以上軽量化したときに得られる燃費向上に相当するということです。

近年、地球温暖化による気温上昇でエアコンを使う期間が延びており、エアコン負荷の低減は実走行燃費の向上に大きく寄与するはずです。

従来、インパネダクトに発泡ダクトを採用する目的は、車体の軽量化ニーズに応えるという理由からでした。今回、燃費向上効果が実証されたことで、キョーラクでは発泡ダクトの燃費向上効果を完成車メーカーに強くアピールする計画です。

同社では、ドイツで開催されるK2016 国際プラスチック・ゴム産業展で測定データを公開、広く世界の自動車業界に展開することを目指しています。

(山内 博・画像:キョーラク)

マツダの「マシーングレープレミアムメタリック」は、塗装プロセスにもさまざまな工夫を凝縮

リアルな金属質感を目指して開発されたマツダの「マシーングレープレミアムメタリック(以下、マシーングレー)」は、かなり難しいチャレンジだったそうで、当然ながら塗装プロセスにおいても新しい試みがなされています。

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通常のボディカラー開発は、デザインがある程度ターゲットユニットとして決まり、設計、性能要件、生産と工場(単位)にシフトしていく流れの中で進んでいきますが、こうした流れだとどうしてもそれぞれの要件に壁があるそうです。

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そこで「マシーングレー」では、デザインのイメージ段階からデザイン、設計、生産、サプライヤーが集まった「共創」活動でアイディアを出しながら開発。この活動が、「マシーングレー」を商品化できた大きなポイントになっています。

「マシーングレー」が目指したのは「金属質感」、「鉄の黒光り感」、「みずみずしいツヤ感」。

まず、「金属質感」をどうやって出したかというと、一番下に鉄、錆防止などの下塗り、カラー層、その上にアルミフレーク(ラメ)の入った薄いカラー層(メタリック層)、一番上がクリア層になっています。

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通常と異なるのは、カラー層が1色ではなく別々の塗料で2層に分けている点で、「金属質感」をどう「捉えるか」に注力。

そのため、新潟県燕市の金属加工の職人に協力してもらい、金属プレートの磨き度合いの異なるサンプルをいくつも出してもらったそうです。燕市の金属加工といえば、iPodの研磨で世界的な話題になったこともありました。

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磨き方によっては鏡のような状態までになりますが、表面に若干研いだ後が残るような研磨状態が今回マツダの考えた「マシーン感」と決定し、さらに分析すると、表面にごく僅かな凹凸が残っているために、光が反射した時に「マシーン感」を醸し出すことが分かったとのこと。

しかし、その質感を塗装で表現するのが課題。そこで、メタリックを入れたアルミフレーク層に「段差」をわざと付けることで、金属の凹凸のようにならないかと考え、「マシーン感」が得られる「段差」を試行錯誤しながら決定されました。

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つぎの「鉄の表現(黒光り感)」は、鉄そのものを使えれば表現しやすいものの、錆の原因になるため塗装の中には使用できません。そこで、アルミフレークを使いながら鉄を表現するという、相反する課題にチャレンジ。

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まず、「黒光り感」は何かを分析すると、光を当てたときアルミは90%以上を反射させ、鉄は50〜60%以上反射させる点に着目。鉄は光を半分くらい吸収することで「黒光り感」が出ていると考え、10ミクロンくらいのアルミフレークとアルミフレークの間に隙間を設けることで、その隙間に入った光が黒のカラー層に吸収させています。その隙間の比率を調整することで、鉄と感じる(鉄の反射率に近づく)ように設計されています。

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「マシーングレー」の塗装は、噴霧(塗装の小さな粒)の大きさが20〜30ミクロンで従来よりも小さくなっていて、この粒子の中にアルミニウムが1つ入っているそうです(厳密には1つは究極の理想で、時々2つ入ることもある)。

ボディ全体に噴霧した時は、アルミニウムがばらばらな方向を向いていて、その後塗装が蒸発(水分やシンナーが蒸発)していくと、塗装の厚みが薄くなり、体積の圧縮とともにアルミフレークを並行にして、最終的には0.5ミクロンという普通の塗装の1/6くらいまで薄くなるそうです。そこまで薄くすることでアルミを綺麗に並べられます。

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そして、塗装表面の滑らかさもポイント。厚く塗れば可能になりますが、生産台数に制約が出てくるため、鋼鈑の表面から平滑にしていくという挑戦もなされています。下塗り、カラー層(ブラック)も塗装そのものが真っ平らになるように開発されていて、反射層を塗る頃にはかなり平滑になっていて、アルミフレークを並べ、最後にクリア層が塗られています。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

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新型NSXの走りを支えるテクノロージを3つのプロモーション映像からチェック!

1990年に“ニュースポーツ・エクスペリメンタル(実験的な新しいスポーツカー)”として登場した初代「NSX」。

2016年に販売が始まった新型は“ニュースポーツ・エクスペリエンス(新しいスポーツカー体験)”と掲げています。

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そんな新しいスポーツカーらしさを感じさせる最大の特徴として、車両の前後に合計3つのモーターを搭載する点が挙げられます。

3.5L V6ツインターボにモーターを組み合わせたハイブリッドシステムは、最高出力で581ps、最大トルクは646Nmを誇ります。

しかし、「NSX」の走りを支えるための技術はこれだけではありません。

今回はパワートレーン以外にもNSXの走りを支えるテクノロジーを、動画とともにご紹介いたします。

■運動性能と居住性の両立を果たしたパッケージ

スポーツカーにとってパワートレーンの性能と同じく、重要なのがパッケージです。

エンジンやトランスミッションなどの駆動系はもちろん居住空間も考慮し、さらに車両の重量バランスや小型&軽量化など、様々な要素を高いレベルで両立させなければなりません。さらに新型「NSX」の場合はハイブリッドシステムの搭載も必要。

そこで、まずは車両のバランスを良くするためにミッドシップレイアウトを採用。V6ツインターボエンジンはドライサンプ化し、さらに低い位置に置かれています。

その上で、バッテリーなど重量のあるハイブリッドシステムは居住空間とエンジンの間に立てかけるように置かれています。その結果、前後重量バランスは42対58を達成。ドライバーの操作に対する素直な挙動変化に繋がっています。

■パワーを的確に伝えるための強靭なボディとしなやかなサスペンション

強大なパワーを生む心臓を優れたバランスで配置した新型「NSX」ですが、それをフルに路面へ伝えるための強靭な肉体としなやかな足腰が重要となります。

一般的に肉体の強度を高めるには筋トレが有効です。クルマの場合では使用する素材を増やし、弱いところの補強を増やしていくことが必要です。ただ、それでは重量が増えるばかりでせっかくのパワーが無駄に使われることになってしまいます。

そこで「NSX」のような超高性能モデルの場合、ボディには量が少なくても強固な素材が用いられます。初代「NSX」ではオールアルミ製モノコックが話題となりましたが、新型はアルミだけでなく、Aピラーには視界確保と強度を両立するために3次元熱間曲げ焼き入れ超高張力鋼管が使用されています。

また、タイヤを介して路面にパワーを伝えるためには、一瞬ごとに異なる路面の凹凸を正確無比にいなす足腰も重要。四輪のストロークやボディの上下加速度をセンシングしてミリ秒単位で減衰力を制御するアクティブダンパーシステム(内蔵する電磁石に電流を流してオイル粘度を調整)を採用しています。

■持続的な高性能に欠かせないエアロダイナミクス

パワフルな心臓、強靭なボディ、優れた体幹。一流アスリートにとって必要な最後の要素はスタミナです。

とくにハイブリッドシステムを搭載する新型「NSX」では、ダウンフォースだけでなく、システムのパフォーマンスをいつでも引き出すための冷却効率をいかに高めるかも課題でした。

そこで、フロントマスクの大開口グリルから取り入れた空気をボンネット上の穴から抜くことでダウンフォースを稼ぎつつフロントルーム内のデバイスの冷却も遂行。新型「NSX」の外観の特徴でもある横長のサイドミラーは、ここから抜けてきた風を邪魔することなく後方へ導くための工夫でもあります。

さらに、低いフロントノーズは車体前から後ろにかけて流れる空気の配分を調整し、後方のデバイスも効率よく冷却。結果として、高いパフォーマンスを持続的に発揮することへ貢献しています。

(今 総一郎)

独・コンチネンタルがアジア地域での先進運転支援システム(ADAS)の強化を発表

ドイツの自動車部品大手コンチネンタルは、アジア地域で先進運転支援システム(ADAS)を強化すると発表しました。

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今回のコンチネンタルの強化策は、

 1) 日本とインドでの開発能力を向上させる
2)フィリピンと中国でレーダーセンサーの生産能力を向上させる

ことの2点を柱としています。

同社はアジア地域の自動車業界について、全世界で生産される車両の半数以上をアジアの自動車メーカーが生産する車両であり、日本の自動車メーカーの生産台数が世界全体の約30%を占めており、アジアが世界の自動車業界で成長センターとなっているとしています。

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さらに2020年の東京オリンピック開催を契機に、 日本の自動車メーカーを含む世界中の自動車メーカーが自動運転を含むADASという革新技術の開発にしのぎを削っています。

コンチネンタルでは、すでにカメラ、レーダーシステム、高解像度のレーザーセンサー、電子制御ユニットやソフトウェアなどの自動運転やADASに関する主要な要素技術を持っています。

コンチネンタルのADAS事業部の責任者、カール・ハウプト(Karl Haupt)氏は

「先進運転支援システムは、成長が最も著しい分野です。今年は周囲をモニタリングする環境センサーのおかげで、10億ユーロ以上の売上を達成する見込みであり、2020年には20億ユーロ以上への拡大を見込んでいます。つまり、わずか5年でさらに倍増することになります。」

とADAS分野の急成長を予測しています。

今回のADAS強化策のひとつ、日本とインドでの開発能力向上については、日本でADAS機器のハード部分の開発を行い、インドでソフトウェアとアルゴリズムの開発を行うことを計画しています。

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実際に、トヨタ自動車の衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense C」向けのカメラ・レーザーレーダー一体型センサーモジュール(MFL)で、コンチネンタルのADAS事業部が二度目となるトヨタ自動車の技術開発賞を受賞しているように、日本でコンチネンタルのADAS機器は高く評価されています。

もうひとつの強化策、フィリピンと中国でのレーダーセンサーの生産能力向上については、コンチネンタルの「in the market for the market(その市場で、その市場のために)」というスローガンに応じた現地化施策ということができます。

コンチネンタルは、2015年、短距離レーダーセンサーの製造をフィリピンのカランバで開始。この短距離レーダーセンサーは、死角検出、車線変更支援、後退時のトラフィックアシストなどの機能を自動車に提供しています。

同社では、将来的にはカランバ工場で1000万台以上の短距離レーダーセンサーと、100万台以上のカメラシステムを製造する計画で、多機能カメラ一体型レーザーセンサーも今年秋には生産を開始する予定としています。

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自動運転・ADASというこれからの自動車の鍵を握るキーテクロジー分野で、日本を含むアジア地域でのコンチネンタルの動向に注目が集まっています。

(山内 博・画像:コンチネンタル)

規格化が進む48Vマイルドハイブリッド向け双方向降圧/昇圧コントローラICが販売開始

米国のアナログICメーカー リニアテクノロジーは、48V/12V の自動車用デュアル・バッテリ・システムに対応できる双方向降圧/昇圧コントローラIC「LTC3871」の販売を開始したと発表しました。

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現状の12V自動車電源システムでは、最近の電気装備の増加で、供給可能な電力量の限界である3KWに近づいており、より大電力を供給できる電源システムが要望されています。

一方、欧州の自動車メーカー・部品メーカーでは、48Vマイルド・ハイブリッドの規格化が進み、日本勢が先行する200Vストロング・ハイブリッドに対抗する動きがあります。

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今回のリニアテクノロジー社による新IC「LTC3871」は、このような最近の自動車電源システムの動向をにらんで、利用可能な電力を増やす自動車用 48V/12V電源に対応した双方向同期整流式降圧/昇圧 DC/DC コントローラを実現するものです。

新ICは、48V/12Vシステム向けに提案されている新規格 LV148 に対応して、既存の12V システムに48Vバスを補助的に組み合わせて、最大10KWの電力を供給する能力があり、48V電源システムには、48Vマイルド・ハイブリッド向けにベルト駆動スタータジェネレータ(BSG) またはモーター機能付きジェネレータ (ISG)、48V リチウムイオン・バッテリ、双方向 DC/DC コンバータが用意されています。

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新IC「LTC3871」の耐圧限度は100V/30V で、3つの温度グレードが設定されており、高温車載グレードは-40℃〜150℃の動作温度範囲が保証されています。

リニアテクノロジー社の新IC担当副社長である Don Paulus 氏によると、

「自動車の電気システ ムの一部を48Vで駆動することは、利用可能なエネルギーを増やすと同時にワイヤーハーネスの軽量化や損失低減を行う上で中心的な役割を果たすでしょう。このようにしてエネルギー容量を増やすことにより、新しい技術への道 が開けるので、性能を落とすことなく、より安全で、より効率的な車を実現することができます」

と新ICのメリットを説明しています。

欧州勢の48Vマイルド・ハイブリッド車登場が近づく中で、日本勢が優勢の200Vストロング・ハイブリッド・システムがどう進化してゆくのか、すでにマイルド・ハイブリッド車を販売しているスズキが欧州の新規格にどう対応するのかが、今後注目される点になります。

(山内 博・画像:リニアテクノロジー)

先進運転支援システムに! アラウンドビュー向け4chデコーダーICを米インターシル社が発表

米国の半導体メーカーIntersil(インターシル)社は、クルマのアラウンドビュー向けに最適な4チャネル・アナログ・ビデオ・デコーダーIC「ISL79985/ISL79986」を発表しました。

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このICの特長は、4つの差動入力端子を備え、4つのアナログカメラCVBS入力を同時にサポートできる点です。さらに処理可能な入力データは差動入力に加えて、疑似差動入力やシングルエンド入力にも対応できます。

このICが車両の周囲360°のイメージを処理するアラウンドビューに最適である理由は、車体の4隅に配置されるカメラの入力データを同時に処理できる4チャンネルのデータ処理能力を備えているからです。

車両の上方から俯瞰した車両の周囲360°の連続画像を鮮明に表示するには、4つのカメラから入力される輝度やコントラストの異なるデータを一連のデータに合成する能力が要求されます。

たとえば車両の右側から日射を受けている場合には、右側のカメラから入力されるイメージデータは明るくて、左側のカメラから入力されるイメージデータは車両の影で暗くなります。

このように、それぞれ輝度やコントラストなどの条件が異なる4つのカメラからのイメージデータを処理して一連の360°画像を形成するには4チャンネルのデータ処理能力が欠かせないというわけなのです。

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そのために、新ICの4つの入力端子の後段には、4つのAFE(Analog Front End)が設けられており、各AFEの後段にはアナログ・ビデオ・デコーダーに相当するNTSC/PAL/SECAMが構成され、Y/C分離用4Hアダプティブ・コム・フィルターと、色相エラー補正のためのPALディレーラインを備えています。

さらに、4つの入力回路には自動コントラスト調整(ACA)回路を備えており、車両と日射の向きで各カメラの輝度やコントラストが変動しても、自動的に画像の最適化が可能になり、光量が少ない条件下や太陽光でまぶしい条件下の視認性と安全性を向上させることができます。

なお、新製品のIC1チップで最大9個のディスクリート部品を代替し、基板スペースを有効に利用できるようになっています。

今回発表された2種類のIC、ISL79985とISL79986の違いは、出力インターフェースにあります。

ISL79985にはMIPI-CSI2出力インターフェースを備えており、MIPI標準仮想チャネル識別機能を備えています。MIPI-CSI2は端子数が少ないため、先進運転支援システム(ADAS)向けアプリケーションプロセッサーに接続するのに好適です。

一方、ISL79986は、108MHz時分割多重ITU-R IT.656出力インターフェースを備えており、8ビット・データ・バス上での4チャネルの出力が必要な場合に最適です。

インターシルでは、今回の新ICは車両の周囲の対象物を検知するとともに、後進時と駐車時のドライバー支援のために、360度アラウンド・ビュー画像を生成する4チャネル・アナログ・デコーディング性能を発揮できるとしています。

ADASや自動運転向けに今後自動車にはアラウンドビュー・カメラ・システムが装備されることが増加すると予想されており、インターシルの新ICの動向に注目が集まっています。
(山内 博・画像:インターシル)

台車も自動運転!? カルガモのように追随する物流支援ロボット「キャリロ」

ロボット・自動運転のZMPは、物流支援ロボット「CarriRo(キャリロ)」 を8月31日から出荷開始すると発表しました。

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台車型の物流支援ロボット・キャリロの特徴は、

①ドライブモードでは、ハンドルにあるジョイスティックを操作して、キャリロを前後左右に走行させて、ほとんど力を使わずに荷物を運ぶことができる、

②カルガモモードでは、キャリロに付属しているビーコンを使用して、作業者や親機となるキャリロに追従することができる

点です。

アシスト機能

まず①のドライブモードでは、重い荷物でもほとんど力を使わずに運ぶことができ、作業負荷が大幅に軽減されることになります。

これまで重労働であった運搬作業を女性や高齢者でも行うことができ、人手不足の解消、雇用の促進にもつながります。

カルガモ機能

②のカルガモモードでは、キャリロの追従機能を活用することで、運搬の生産性を最大 3 倍まで引き上げることができます。

キャリロの本体重量は55kgで、最大積載荷重は100kg、1回の充電で8時間稼働できます。

キャリロのデザインについては、東京芸術大学教授の長濱雅彦氏の監修を受けたということです。

同社では、倉庫や物流センター内のピッキング業務や工場内の工程間搬送にキャリロを利用することで、ベルトコンベアや AGV(無人搬送車)を代替することも可能になるとしています。

(山内 博・画像、動画:ZMP)

アウディの「eROT」システムは後輪だけか?、前輪への適用の可能性は?

アウディは、現在の油圧ショックアブソーバーに代えて、サスペンションの上下動で発電し、エネルギー回生を可能にするエレクトロメカニカルロータリーダンパーを備えた「eROTシステム」を開発中であることを発表しました。

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公開されたeROTシステムの画像によれば、ホイールの上下動をレバーアームとギァ・ユニットを介して発電機の役目をする電気モーター(エレクトロメカニカルロータリーダンパー)を回転させて、電気モーターで発電された電力を48Vのバッテリーに回生する仕組みになっています。

当面アウディは、このeROTシステムを後輪サスペンションへ適用することを目指しているようです。

そこで、気になるのはアウディのeROTシステムが後輪のみへの適用にとどまるのか、前輪にも採用することができるのかという点です。

前輪にも同システムを採用できれば、単純にエネルギーの回生効果を倍増できるわけです。

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歴史的には、1935年にシトロエンが前輪サスペンションにトーションバー・スプリングを採用した例があります。上の画像はウィキペディア上に掲載されているシトロエンの前輪サスの例ですが、この前輪サスのトーションバー・スプリングをギア・ユニットと電気モーターに置き換えれば、基本的にはeROTシステムを前輪サスにも適用できそうです。

前輪サスにeROTシステムを適用できれば、エンジン・ルームにフロント・ストラットを配置する必要がなくなり、サスペンションの配置自由度の面では後輪より効果が大きいと思われます。

eROTシステムと48Vマイルド・ハイブリッド・システムが採用されるアウディの次世代モデルの登場がますます楽しみになりそうです。

(山内 博・画像:アウディ、ウィキペディア)

米・フォードCEOが2021年「完全自動運転」実現を宣言!

米フォードが8月16日、人が運転に関与せず、ハンドルやアクセル、ブレーキペダルが無い自動運転車を2021年までに実用化する計画を発表しました。

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同社が目指しているのは最も難易度が高い「レベル4」(完全自動運転)で、マーク・フィールズCEOはこのチャレンジについて「フォードが100年前に実現した自動車の大量生産方式と同様、社会に大きな影響を与えるだろう」としています。

同社は「完全自動運転」の実現に向け、米カリフォルニア州シリコンバレーの研究所を拡充。自動運転に必要なセンサーやAI(人工知能)、地図情報などのベンチャー企業への出資や提携を発表しています。

2021年時点では「ライドシェア」など、配車サービス事業用途を考えているようで、一般向けには2020年代後半の実現を想定している模様。

新聞報道などによると、同社はこの分野で先行するGoogleとの提携を模索していたそうですが、合意に至らず自社開発することにしたそうです。

FORD

自動運転技術をめぐっては、交通事故の減少や渋滞の緩和につながることから、BMWが今年7月に2021年までの完全自動運転技術導入に向けて米インテルと提携するなど、世界の大手自動車メーカーが開発に鎬ぎを削っており、IT企業からの参入も相まって、開発競争は業種の壁を越えて激しさを増しています。

そうしたなか、日本政府は2020年をめどに「レベル3」(非常時ドライバー介入)、2025年に「レベル4」の実現を目指しており、世界レベルでの技術競争の行方が注目されます。

Avanti Yasunori・画像:FORD MOTOR)

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圧縮比が8から14まで可変する日産の次世代ターボエンジンはパリサロンで発表

日産の上級ブランド「インフィニティ」のモデルに搭載される『VC-T(バリアブル・コンプレッション・ターボチャージド)』・2.0リッター4気筒エンジンの単体画像が公開されています。

2016年9月のパリサロン(パリ・モーターショー)にて世界初公開される予定のVC-Tエンジン。日産が20年以上も開発を続けてきた「可変圧縮比エンジン」がついに実現するのです。

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10年以上前にリンク式コンロッドを用いた可変圧縮比エンジンの技術発表をしている日産ですが、今度のVC-Tエンジンについては、圧縮比が8から14の間で可変できるという数値が公開されているくらいで、具体的な機構についてはパリサロンでプレゼンテーションする予定となっています。

なお、圧縮比の低い状態はハイパフォーマンスを発揮するため、高い状態は高効率を可能にするためと、可変圧縮比のメリットを説明しています。

環境と動力性能を両立できる新世代エンジンは、まさにインフィニティという上級ブランドにふさわしいパワートレインとなるということなのでしょう。

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(山本晋也)

ジャガー・ランドローバーが100台以上のコネクテッド自律運転車両を投入して目指す世界とは?

オンロードだけでなく、オフロードでの自動運転技術の開発を推進しているジャガー・ランドローバー。

今後4年間、「コネクテッド自律運転車両(CAV:Connected Autonomous Vehicle)」の技術開発とテストに、100台を超える研究用車両を活用する計画を明らかにしました。

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2016年後半にも本社コベントリーとソリハル周辺の高速道路と市街地に設けられた41マイル(約65km)の新しいテスト用ルートを、研究用車両で走行させる予定だそうです。

初期段階では、車車間通信と、車両とインフラ間の路車間通信を使い、車両間の相互通信はもちろん、道路沿いの標識、道路情報掲示板、信号との通信を可能にするというもの。

将来的には車両間のデータを共有し、複数のコネクテッド・カーが連携し合うことで、車線変更や交差点の通行をより容易に、安全にするとしています。

具体的な技術として「ROADWORK ASSIST(ロードワーク・アシスト)」を搭載。

前向きに設置されたステレオカメラを使い、前方道路の3Dビューを生成し、高度な画像処理ソフトウエアと連携させることで、コーンや障害物を認識することが可能。

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同システムにより、車両が道路工事の開始地点に接近していることを検知し、込み入った建設現場や一方通行道路があることを知らせます。わずかな力でステアリング操作をアシストし、ドライバーが車線中央を走行し続けることができるようにサポートするものです。

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また、無線信号を使用し、車両間で関連データを送受信するデバイスをテストする研究プロジェクトの一環である「OVER THE HORIZON WARNING(視野外警告)」も実施されます。

車両が独立して通信し、ドライバーと自律運転車両に見通しが悪く、目視できない場所にある危険や障害物を警告。

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ほかにも、車両を減速か停止させることで、ほかの車両に危険が生じる場合、付近の車両に「Hazard Ahead(前方危険)」警告を送信する機能も搭載されます。

また、コネクテッド技術を搭載した緊急車両が周囲の車両と通信し、ドライバーが警告灯やサイレンに気が付くよりも先に、緊急車両に搭載されたデバイスがその接近を配信する機能なども開発項目に入っています。

これらが実現すると完全自動運転車両も現実味を帯びてくるように感じさせますが、手動運転車両、部分自動運転車両、完全自動運転車両の混在期間をどう運用していくかなど、課題は山積しているのは間違いないでしょう。

(塚田勝弘)

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ハイブリッド車に貢献する世界初の大電流動作可能な高耐圧GaNパワー半導体を豊田合成が開発

豊田合成は、青色LEDの主要材料であり、高い電圧にも耐えられるなどの優れた物理特性を有する窒化ガリウム(GaN)を用いて、20Aを超える大電流動作が可能な1.2kV級パワー半導体デバイス チップを世界で初めて開発したと発表しました。

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開発した技術は、大電力を扱うハイブリッド車などの電力制御装置や太陽光発電などの電力変換装置の回路に使うことができ、機器の小型化・高効率化に大きく貢献できます。

パワー半導体デバイスとは、電力用の整流ダイオード、スイッチング用トランジスタなどの半導体素子の総称です。

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同社は、1986年から行っている青色LEDの結晶成長技術を活用して、2010年からGaNを用いたパワー半導体向けデバイス技術の研究開発に着手。

これまでにGaN基板上に耐圧1.2kV級の低損失MOSFET(パワーデバイスなどに用いられるトランジスタの一種)を作製し、動作実証を行ってきました。

このたび、素子を並列動作させる配線技術を確立し、1.5mm角のチップサイズで縦型GaNトランジスタとして世界で初めて20Aを超える電流を流すことに成功しました(豊田合成調べ)。

同社では、今後2018〜20年頃の実用化を目指し、開発を進めています。

(山内 博・画像:豊田合成)

「燃えにくい電解液」で高電圧と安全性を両立したリチウムイオン電池

東大・大学院の山田淳夫教授らの研究グループは、燃えにくい電解液を使用して高電圧と安全性を両立した4.6V リチウムイオン電池を開発したと発表しました。

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現状のリチウムイオン電池は作動電圧が3.7Vですが、高電圧化されることでさらに高密度なエネルギー貯蔵が可能になり、EVの航続距離を伸ばすことができます。

しかし、作動電圧を高くすると既存の有機電解液では副反応・劣化が発生してしまい、安定した充放電が難しくなるという問題がありました。

そこで、研究グループでは、リチウムイオン電池の高電圧作動を可能にする新規な難燃性電解液、すなわち「燃えにくい電解液」を開発しました。

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この電解液は、同研究グループが2014 年に発表した「濃い電解液(高濃度電解液)」のアイデアに基づき、リチウムイオンの濃度を極限まで高めることによってリチウムイオ ン、アニオン(マイナスイオン)、有機溶媒分子が相互に結び付いたネットワーク構造を実現。有機溶媒に起因する燃焼性が格段に低下するとともに、高電圧作動時に発生する副反応を抑制することができ、既存電解液では不可能だった平均電圧4.6Vのリチウムイオン電池で100サイクルの安定した充放電に成功しました。

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今回の新しい燃えにくい電解液のネットワーク構造は、理化学研究所のスーパーコンピュータ「京」(神戸市)を用いたシミュレーションで明らかになりました。

先日もマツダが、大型放射光施設「SPring-8」を使用して新素材の開発に乗り出すことが発表されたばかりで、自動車の技術開発も「京」や「SPring-8」のような世界的規模のツールを使用する段階に入ったことが注目されます。

(山内 博・画像:東京大学)

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産総研がイオンを見分けるセパレーターで次世代蓄電池のリチウム硫黄電池を開発

産業技術総合研究所(産総研)の研究グループは、イオンを見分けるセパレーターを使用して次世代蓄電池のリチウム硫黄電池を開発したと発表しました。

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今回、開発されたリチウム硫黄電池は、セパレーターに金属有機構造体を複合材料にして利用している点がポイントです。

新開発のセパレーターでは、リチウムイオンを通して、多硫化物イオンは通さない「イオンふるい」効果が確認されました。開発されたリチウム硫黄電池は、1,500回充放電を繰り返しても安定に動作しました。

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リチウム硫黄電池は、リチウム空気電池、ナトリウムイオン電池とともに現状のリチウムイオン電池に代わる次世代蓄電池として開発が進められています。

リチウムイオン電池の正極に硫黄を用いるリチウム硫黄電池は、正極容量が高く次世代蓄電池として期待されています。

しかし、放電反応の中間で生成するリチウム多硫化物が電解液に溶け出して、充放電サイクルを繰り返すと、溶け出した多硫化物イオンが原因でリチウム硫黄電池の容量が劣化するという問題がありました。

そこで研究グループでは、従来から知られている金属有機構造体の「分子ふるい」機能が、イオンの種類を分別できる「イオンふるい」としても機能すると考え、金属有機構造体をリチウム硫黄電池のセパレーターとして使用することに成功しました。

新開発のセパレーターは、充放電に必要なリチウムイオンを通す一方で、電解液に溶け出した多硫化物イオンが負極側へ移動することを防ぐため、新型のリチウム硫黄電池で長期間の安定した充放電サイクルを実現できました。

金属有機構造体(MOF:Metal Organic Frameworks)とは、金属と有機物の配位子が多孔質の三次元配位ネットワーク構造を形成する新素材で、センサーや触媒など多方面への応用が期待されています。

今回のリチウム硫黄電池を含む次世代蓄電池が実用化されると、EVやHV・PHVの性能が大幅に向上することが期待できます。

(山内 博・画像:産総研)

「つながる」サービスの「BMWコネクテッド・ドライブ」搭載車が10万台を突破

BMWの「つながる」サービスである「BMWコネクテッド・ドライブ」には、現在Z4をのぞき全車に標準装備されている無料サービスと有料サービスがあります。

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通信料も無料となる「BMWコネクテッド・ドライブ・スタンダード」は、主に「BMW SOSコール」と「BMWテレサービス」からなります。2016年4月末時点で10万台を突破したのはこの無料サービス。

無料といってもその内容はオーナーにとって安心感を与えてくれるものになっています。

「BMW SOSコール」は、エアバッグが展開するような深刻な事故が発生した際、車両が自動的にSOSコールセンターに接続。

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コールセンターへの音声接続とともに、車両情報や位置情報、衝突状況、エアバッグの展開状況などの情報もデータとして同時に送信されます。

万一、ドライバーが事故の衝撃で意識を失っているような場合でも、的確かつスピーディな救急対応を可能とするものです。

「BMWテレサービス」は、コントロール・ディスプレイに表示される「コンディション・ベーズド・サービス(CBS)」と呼ばれるアイテムが黄色のステータスに変わると、車両が自動的に整備関連のすべてのCBSデータが指定された正規ディーラーに送信されます。

販売店では、送られてきたメインテナンス情報に基づき、準備を効率的に進められるためサービス予約が容易になり、より正確かつスピーディなサービスを受けることができます。

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ほかにも、ルームランプやハザードの消し忘れなどにより、車両のバッテリー電圧が規定より低下すると、車両からバッテリー異常を自動的にオーナー(Eメールで送信)と正規ディーラーに通知され、エンジンを始動した際にバッテリー電圧がさらに低下し、異常を検知した場合にも、BMW正規ディーラーに通知が行われる「バッテリーガード」も用意。

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「エマージェンシー・サービス」も無料サービスに含まれています。

路上故障などのトラブルが発生した際、車載コントロール・ディスプレイのメニューから「BMWエマージェンシー・サービス」に連絡をすることができるもので、オペレーターとの音声通話に加えて、車両の位置情報や車両ステータス(ガゾリン残量、走行状況など)のデータもコールセンターに送信されるため、より迅速なエマージェンシー・サービスの手配が可能になります。

なお、有料サービスには、オペレーターが24時間365日対応してくれる「BMWドライバー・サポート・デスク」をはじめ、スマホからキーロック/アンロックなどが可能な「BMWリモート・サービス」、オンラインでニュースや天気予報が分かる「BMWコネクテッド・ドライブ・サービス」などさらに多彩なサービスが提供されます。

(塚田勝弘)

アウディの2.5 TFSIが「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー」のクラス最高点を獲得

「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー」は、世界各国のモータージャーナリストにより投票が行われ、大賞の「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー」を筆頭に、「ベスト・ニュー・エンジン」や「ベスト・パフォーマンス・エンジン」のほか、排気量別(1.0L以下、1、1.4L〜1.8L、1.8L〜2.0Lなど、大排気量は4.0L以上)に賞が与えられます。

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大賞といえる「インターナショナル・エンジン オブ・ザ・イヤー」に輝いたのは、フェラーリ488 GTB/スパイダーに搭載されている3.9L V8ターボ(669Pps)で、「3.0〜4.0L」、「4.0L以上」、「パフォーマンス・エンジン」でも受賞するなど圧倒的な強さを見せたのがフェラーリです。

そして、2.0〜2.5Lカテゴリーでは、アウディの2.5 TFSIエンジンが受賞しました。なお、アウディは2.0〜2.5Lカテゴリーにおいて7年連続で受賞しています。

AUDI AG技術開発担当取締役のDr.ステファン クニゥシュは「この5気筒エンジンは、アウディでもっとも長い伝統を持つエンジンのひとつで、今後も開発を継続してゆきます」と語っています。

さらに「2.5 TFSIは、Audi RS Q3 performanceにおいて、圧倒的な牽引力、強化されたレスポンス、特徴的なサウンドによって人々を魅了しています。さらに、新型Audi TT RSには、新開発されたアルミ合金製の5気筒エンジンを搭載する予定です」と、さらに今後に期待を抱かせるコメントも残しています。

私もSUV離れしたRS3 スポーツバックやRS Q3の圧倒的なトルク感と速さには、驚かされましたが、審査員は「これほど力強い特性を備えたエンジンは、世界に数えるほどしか存在しません。しかも、この5気筒パワーユニットは、1980年代のグループBラリーカーの独特なエンジンサウンドを思い起こさせます。アウディの2.5 TFSIは、優れたパフォーマンスが印象的なだけでなく、その個性でも際立っています。この5気筒エンジンを通してアウディは1980年代の夢を現代へ と受け継ぐことに成功しています」と高く評価しています。

(塚田勝弘)

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トヨタ、KDDIと共同で日米の全車両をネット常時接続化!

トヨタ自動車とKDDIが6月2日、「グローバル通信プラットフォーム」の構築を共同で推進すると発表しました。

両社はクルマをネットワークに常時接続するための「DCM(車載通信機)」とクラウド間の通信を高品質、かつ安定的に供給すべく、国や地域で仕様が異なっているDCMを2019年までにグローバルで共通化していくそうです。

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トヨタは2020年までに日本・米国市場で販売されるほぼ全ての乗用車にDCMを搭載し、その他の主要市場においても順次搭載を進めていく考え。

今回のグローバル通信プラットフォームでは、国境を越えた際にローミングではなく、コネクテッドカーに最適化された通信事業者を自動的に選定、DCMに内蔵されたSIMの設定情報を通信により書き換えることで、ユーザーはより低価格で高品質な通信が可能になるそうです。

トヨタとKDDIが共同で企画・設計し、開発・運用は600社以上の海外通信事業者との関係を有するKDDIが担当。

トヨタでは今回の「グローバル通信プラットフォーム」の構築を、クルマの「つながる化」に向けた重要技術に位置付けているそうです。

Avanti Yasunori

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経済効果43兆円! 自律走行車普及で事故90%減による米試算
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シェフラーが日産と協業して電動可変バルブタイミング機構を開発

欧州自動車部品大手のシェフラーは、日産自動車と共同で、ガソリンエンジン向け電動可変バルブタイミングコントロール(Electric Cam Phaser、以下ECP)機構を開発したと発表しました。

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両社は、この技術で加速レスポンスを向上させながら、CO2削減および排気性能向上にも対応することを狙っています。

従来の可変バルブタイミング機構の多くは、エンジンの油圧を駆動源とした油圧制御であったため、その作動範囲(エンジン回転数/温度)および応答速度に制限があり、エンジン冷機始動後ではある程度潤滑油が暖まるまでは作動できないという課題がありました。

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今回シェフラーが開発したECPは電動モータとギアボックスによってバルブの開閉タイミングを制御させるので、すべての条件下における応答時間の向上や変換角度を拡大することができ、油圧制御と比較して高度で繊細な制御を行うことが可能になる利点があります。

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また、アイドリングストップなどのストップスタートエンジンアプリケーションでは、最適なバルブタイミングをエンジンの再始動前に設定することができ、排気エミッションの低減、燃費の向上、加速レスポンスの向上などをもたらすことができます。

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シェフラージャパンの代表取締役社長 四元伸三氏は

「今回、日産との協業によりシェフラー初となるECPを提供できることを大変光栄に感じています。ECPは単体の部品開発とは異なり、エンジンの一部となるシステム開発になるため、精緻なすり合わせが必要になります。今回の開発は、シェフラージャパンの技術者が日産の開発チームと緊密に連携をとり、さらにドイツ本社の開発チームも日本を訪れて日産とともにワークショップを開くなど、シェフラーのローカルとグローバルR&Dの機能が融合した成果と考えています。(今後)さらに日本のR&D体制を強化しながら、日本メーカーの開発に貢献していく考えです。」

とコメントしています。

今回、欧州自動車部品大手のシェフラーが日産と協業してECPを開発したことで、国内の自動車メーカーと外国の部品メーカーとの取引が増加すれば、国内の自動車部品業界が影響を受けることになり、今後の動向が注目されます。

(山内 博・画像:シャフラージャパン)

欧州自動車部品大手が48Vマイルドハイブリッドをフォード・フォーカスに搭載

欧州の自動車部品大手のシェフラーとコンチネンタルは、第37回ウィーンモーターシンポジウム(オーストリア、2016年4月28、29日)で、48Vマイルドハイブリッドシステムによる第2世代のガソリン技術車(Gasoline Technology Car、以下GTC II)を世界で初めて公開したと発表しました。

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このGTCⅡは、2014年に公開された第1世代のガソリン技術車(GTC I)を発展させたもので、 シェフラーとコンチネンタルの共同開発による48V P2ハイブリッドアーキテクチャを採用しています。

GTC IIとGTC Iの大きな相違点は、第2世代モデルでは、電気モーターをエンジンとトランスミッションの間に配置したことで、この全体構成を両社はP2アーキテクチャと呼んでいます。

GTC IIによるフォード・フォーカスには、3気筒1リッターのターボエンジン(GTDI)と、48Vシステムとは別の12Vスタート・ストップシステムが併設されています。

NEDC(新欧州燃費基準のドライビングサイクル)においてGTCⅠと比較してGTCⅡの燃料効率は約13%向上し、標準のガソリン車と比較するとトータルで25%も燃費が向上している、ということです。

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GTC IIでは、電気モーターを駆動するエンジンとトランスミッションの間のベルトに上流側と下流側の2つのクラッチが配置されていることにより、運転状態に応じてエンジンから完全に切り離すことができ、電気モーターを独立して使用できることが特徴です。

これによりGTC IIは、低負荷かつ一定速度での電気走行およびアイドリングストップ時の電気モーターによる発進の両方が可能なシステムになっています。

最近48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載した欧州勢の新型車の登場が話題にのぼっています。今回のシェフラー・コンチネンタル・欧州フォードの3社によるGTCⅡの公開は、48Vマイルドハイブリッドシステムの実現が近づいていることを示しています。

注目されるのは、従来は中型・大型乗用車に適していると言われていた48Vマイルドハイブリッドシステムをコンパクトカーのフォード・フォーカスに搭載した点です。

フォード・フォーカスは、先日世界累計販売500万台を達成したスズキ・スイフトの欧州市場での有力コンペティターであるだけに、スズキが48Vマイルドハイブリッドシステムに対して、どう対応するのかに注目が集まっています。

(山内 博・画像:シェフラージャパン)

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日本でのFCV向け炭素繊維強化高圧水素タンクの合弁事業が進行中

最近、燃料電池自動車(FCV)関連の話題が増えていますが、今回はFCVの燃料である水素を入れる車載用炭素繊維強化高圧水素タンク(高圧水素タンク)を製造・販売する合弁事業についての話題です。

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三井物産、東レ、並びにHexagon Lincoln Inc.(本社:米国ネブラスカ州リンカーン、以下「ヘキサゴンリンカーン」) の3社は、2016年4月25日に日本での車載用炭素繊維強化高圧水素タンク製造・販売事業(以下「高圧水素タンク事業」)を行う合弁会社設立の共同開発契約書を締結した、と発表しました。

今回の高圧水素タンク事業は、世界最大の樹脂ライナー製炭素繊維強化圧力タンク(以下「コンポジットタンク」)メーカーであるヘキサゴンリンカーンの高圧水素タンク製造技術、三井物産の総合力、東レの炭素繊維という各社の長所を活かして、FCV量産車が市販されている日本市場で、FCVの重要部品の一つである炭素繊維を使用した高圧水素タンクを2020年頃から製造することを企図している、ということです。

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ヘキサゴンリンカーンは、天然ガス(CNG)の車載向けタンクや輸送・貯蔵向けコンポジットタンクの豊富な量産実績を活かして、FCVの高圧水素タンクを開発してきました。

一方、FCV市販で先行する日系自動車メーカー各社は、東京五輪開催の2020年には数万台規模でのFCV量産を計画しており、FCV向けの主要部品である高圧水素タンクは今後の市場拡大が見込まれています。

今回の3社による高圧水素タンク事業の合弁計画は、このようなFCVをめぐる動きに対応して、FCV市販で先行している日本市場を狙ったものと考えられます。

(山内 博・画像:ヘキサゴンリンカーン)

日立グループ、自動運転システム向け無線通信でECUのソフトウェア更新を可能に

日立製作所(以下、日立)、日立オートモティブシステムズ(以下、日立オートモティブ)、クラリオンの日立グループ3社は、無線通信により電子コントロールユニット(ECU)のソフトウェア更新を行う「OTA(Over the Air)ソフトウェア更新ソリューション」を開発した、と発表しました。

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このOTAソフトウェア更新ソリューション(以下、OTAソリューション)は、自動運転車両やコネクティッドカー向け中核技術の一つとして開発されたもので、高い信頼性とセキュリティを備え、従来比1/10の短時間でソフトウェア更新が可能になります。

従来比1/10の短時間とは、OTAソリューションを使う方式と車両を自動車ディーラーに持ち込みソフトウェアを更新する従来方式との更新時間の比較です。

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OTAソリューションでは、更新ソフトウェアの送信を行うデータセンター(以下、OTAセンター)から車両側のシステムまでをワンストップで構築しており、日立グループでは2018年の提供開始を予定しています。

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自動運転車両やコネクティッドカーなど次世代車両では、車両を制御するECUソフトウェアを車両製造後もタイムリーに更新していくことが必要になります。

そこで新開発のOTAソリューションを使えば、車両が市場に投入された後の車載ソフトウェアの保守・更新が、車両をディーラーへ持ち込まなくても遠隔アップデートによって対策することを可能になります。

今回開発したOTAソリューションは、更新ソフトウェアの生成や配信を行うOTAセンター側のシステムと車両側のシステムで構成されており、日立グループの3社が分担して開発しました。

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まず日立が担当したOTAセンター側のシステムでは、OTAセンター側で新プログラムと旧プログラムの差分を抽出・暗号化し、差分データのみを車両に配信します。

次に日立オートモティブが担当した車両側のシステムでは、クラリオンの無線通信機(TCU:Telematics Communication Unit)で受信したデータセンターからの差分データを、セントラルゲートウェイを介して自動運転ECUやエンジンECUなどの更新対象のECUに送信。

更新対象のECUは、上記差分生成サービスに対応する高信頼な差分復元・更新ソフトウェアを用いて、差分データと旧プログラムから新プログラムを復元し、メモリ上のプログラムの書換えを実行することで、ソフトウェアを更新します。

データセンターと車両のセントラルゲートウェイ間では、配信データの暗号化や相互認証を行うことで、情報漏えい、改ざん、成りすましを防止し、セキュリティが確保されます。

自動車の電子化が進んで、一般ユーザーが愛車をディーラーへ持ち込んで車載ソフトウェァを更新してもらう作業を経験されたことも多いと思います。

今回のOTAソリューションがあれば、車載ソフトウェアの保守・更新を遠隔で自動化することが可能になりユーザーの利便性が向上するため、早期の実用化が期待されます。

(山内 博・画像:日立オートモティブシステムズ)

バイオ合成ゴムをトヨタが世界で初めてエンジン・駆動系ホースに採用

トヨタは、高い耐油性、耐熱性が必要な特殊ゴム製部品であるエンジン・駆動系ホースに、バイオ合成ゴムを世界で初めて採用すると発表しました。

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トヨタでは、国内生産車種のバキュームセンシングホースに2016年5月から順次適用し、年内には国内生産の全車種に採用する予定です。今後、ブレーキ系ホース、燃料系ホースなど、より厳しい条件で使用される特殊ゴム部品にも採用拡大を目指しているようです。

バキュームセンシングホースとは、エンジンの吸気マニホールドと圧力センサーを接続するホースで、吸気系の負圧を圧力センサーに伝える役目を果たしています。

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今回のバキュームセンシングホースは、トヨタと日本ゼオンおよび住友理工の共同開発でバイオ合成ゴムのバイオヒドリンゴムを原料として完成しました。

バイオヒドリンゴムは大気中のCO2を吸収しながら生長した植物を原料としているので、従来の石油系ヒドリンゴムに比べて製造から廃棄までのライフサイクルでCO2排出量を約20%減らすことができる、ということです。

同時に、バキュームセンシングホースに求められる耐油性、耐熱性、耐久性は同等レベルを確保しています。

エンジン・駆動系のゴム製部品には、一般のゴム製品より高い耐油性や耐熱性が要求されるので、バキュームセンシングホースにバイオ合成ゴムを採用するには、植物由来原料を分子レベルで石油由来原料と結合させて合成ゴムへ変換する技術など、様々な複合化技術を駆使することで可能になりました。

トヨタは2015年10月に、持続可能な社会の実現に貢献するための新たなチャレンジとして「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表しています。今回はこのチャレンジの一つとして、バイオヒドリンゴムを原料とした環境適応型のバキュームセンシングホースを採用した模様です。

今後は自動車用ゴム製部品の性能を維持したうえで、いかに環境性能を向上させるかに開発の重点が移行するものと見られます。

(山内 博・画像:トヨタ)

高速道路・橋の安全を産業用ドローンで守る!パナソニックも産業用ドローンに進出

パナソニック、は、高速道路の橋梁などを点検する産業用ドローンを利用したインフラ点検ソリューションシステムの開発を開始する、と発表しました。

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同システムの開発にあたり、両社は名古屋市で産業用ドローンの製造販売を行うプロドローンとの共同開発契約も締結したということです。

国土交通省では、今後増大するインフラ点検を効率化するとともに、人が近づくことが困難な災害現場の調査を実施するための「次世代社会インフラ用ロボット」の開発・導入を促進しています。

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このような中、パナソニックとAVCネットワークス社が産業用ドローンの開発を検討した結果、次の2点の課題が明確になりました。

1. 安定した飛行と異常時の安全確保に対するプロの操作スキル
2. 用途に応じたドローンのカスタマイズ

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これらの課題に対応するために、両社はパナソニックが保有するカメラ技術や映像解析技術を応用して、姿勢制御、障害物回避、対象物追跡等の技術を強化していくことで、ドローン操作のスキルに依存しなくても安定操作を可能にするシステムを開発することを目指しています。

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また、ドローン本体については、業界のリーディングカンパニーであるプロドローン社との共同開発契約により、用途別のカスタマイズや同社の機体設計のノウハウを利用しながら、業務用途のドローンで必須となる統合安全装置の開発を共同で行っていく、としています。

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産業用ドローンに関しては、先日、自動車部品大手のデンソーが開発していることが明らかになったばかりで、いろいろな業界からの参入が続いています。

(山内 博・動画、画像:プロドローン社)

安川電機、中国で車載電気駆動システム事業の拡大を図る

安川電機は、中国で車載電気駆動システム事業の拡大を図るために、合弁で奇瑞安川電駆動系統有限公司を設立すると発表しました。

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今回の合弁は、中国・安徽省蕪湖市政府、現地でEV車を製造・販売する奇瑞新能源、安川電機の3者の合意によって成立しました。

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これで安川電機は同社のモータ、インバータ技術を応用したEV車の電気駆動システムを中国で拡販する足掛かりを得たことになります。

安川電機は、奇瑞新能源で使用する電気駆動システムに限らず、中国市場のEV車に最適な電気駆動システムを提供したいとしています。

中国では大気汚染対策のためにEV車の拡大が国策で推進されており、今回の合弁事業が今後どのように発展していくかに注目が集まっています。

(山内 博・画像:安川電機)

デンソー、道路・橋などインフラ点検に活用できる産業用ドローンを開発

自動車部品大手のデンソーは、広島県のラジコンメーカー・ヒロボーと協力して、道路・橋などの社会インフラの点検に使用する産業用UAV(無人航空機 Unmanned Aerial Vehicleの略:ドローン)を開発した、と発表しました。

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今後、道路や橋などの老朽化が進むと予測される中、インフラの点検の効率化に向けたドローンなどのロボットの活用が求められています。

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今回開発した産業用ドローンは、インフラ点検で求められる次の3つの性能を兼ね備えているのが特徴です。

1.強風や雨中でも飛行できる対候性
2.構造物に近接して定位の姿勢に制御できる安定性
3.安全制御システムで運用できる安全性

これらの性能は、デンソーがこれまで培ってきたセンサーおよび制御のエレクトロニクス技術と、無人ヘリコプターの開発・製造で長年の実績があるヒロボーの機体開発力を結集して実現した、ということです。

今後は、実証実験を重ねて、インフラ点検などの サービス開発を関連事業者と共同で進めていき、インフラ 点検の本格運用に合わせて、実用可能なシステムを構築する計画のようです。

デンソーのような自動車部品メーカーが、保有する自動車のエレクトロニクス技術やロボットシステム技術を活用して、今回の産業用ドローンのような社会に貢献できるシステムに進出することに注目が集まっています。

(山内 博・画像:デンソー)

「新インホイールモータ」で「伊勢志摩サミット」を応援~自治体にコンバートEVを貸与

ベアリングのNTNは、「伊勢志摩サミット」応援の一環として新型の「インホイールモータシステム」を搭載した改造電気自動車(コンバートEV)を、三重県と桑名市へそれぞれ貸与すると発表しました。

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今回、NTNは新システムを搭載したコンバートEVを三重県に3台、桑名市に2台を貸与。これらの車両は伊勢志摩サミットのPRも兼ねて、三重県と桑名市の公用車として使用されます。

車両の外装にはジオラマアーティスト田村映二氏による「エコで次世代につなぐ地球-NTN製品と合体させた未来の街」をコンセプトに、三重県をイメージしたデザインを採用し、伊勢志摩サミット、ジュニア・サミットのロゴも施しています。

新開発した「新インホイールモータ」は、平行軸歯車式減速機と外輪回転ハブを組み合わせて、従来型よりも小型・軽量化を実現したのが特徴です。

車輪軸に対してモータ軸をオフセットする構造を採用したことで、インホイールモータ部分の厚みを削り、ホイール幅に収めることに成功しました。

これにより、車両の懸架・転蛇構造を変更することなく搭載可能になり、コンバートEVの開発コストの削減や期間の短縮が期待できるということです。

また、今回の貸与車両に搭載されているインホイールモータは次の2点が注目です。

1.17インチホイール内に搭載
2.冷却方式:空冷(水冷で必要となる配管などが不要)この構造により「新インホイールモータ」には、次の特長があります。

1.平行軸歯車式減速機の採用により、小型・軽量化を実現
2.ベース車両にある従来の懸架・転舵構造が利用可能

これまで、NTNは独自開発したインホイールモータシステムを搭載EVをモーターショーに出展し、同システムを利用したコンバートEVを自治体などに貸与し、実証実験を行ってきました。

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モータをホイール内に配置するインホイールモータは、車内空間の有効活用と、車輪ごとのトルク制御が可能で走行性能が向上するという利点がある新しい駆動方式です。

一方で、NTNの従来型インホイールモータは軽量であるものの、搭載車両の懸架装置(サスペンション)の仕様変更が必要であるという課題がありました。

今回の貸与車両に搭載された「新インホイールモータ」は、従来の課題を解決することができることから今後の発展が期待されています。

(山内 博・画像:NTN)

「童夢-零」「ジオット・キャスピタ」幻のスーパーカーが2台も来る!【4/24 モーターファンフェスタ】

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シルバーが童夢-零、後方2台が北米での認証のために開発されたP-2。今回展示されるのは零。

この週末(4月24日)に富士スピードウエイで開催される、モーターファンフェスタ。そこにはお宝もののクルマが沢山展示されるのですが、なんとあんなクルマも登場する予定なのです。

それは「童夢-零」そして「ジオット・キャスピタ」です。どちらも写真のとおり、まさにレーシングカーやスポーツカーといった出で立ちです。

 

これはいずれも童夢が開発したクルマですが、単なるコンセプトカーというのではなく、市販を前提していてクルマだったのです。”零”は1978年に日本初のスーパーカーとして大注目されました。また、”キャスピタ”は1989年にふたたび市販化の夢を掲げて開発されたモデルで、まさにグループCカーのスタイルでした。

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こちらがジオット・キャスピタ。エンジンはもともとは、水平対向12気筒でした。

 

いずれも市販化は実現されませんでしたが、スーパーカーの夢を実現しようとした2台として、非常に注目されるクルマです。なかなか一般に公開されることも少ないので、この週末この週末、4月24日はぜひとも富士スピードウエイに見に行ってみませんか。入場無料(駐車料金別途)です。

(MATSUNAGA, Hironobu)

トヨタ、マイクロソフトと共同で自動車のビッグデータを扱う新会社「Toyota Connected, Inc.」を米国に設立

トヨタは、IT界の巨人マイクロソフトと共同で、自動車のビッグデータを扱う新会社「Toyota Connected, Inc.(トヨタ コネクテッド)」(以下、TC)を、米国テキサス州プレイノに設立した、と発表しました。

新会社は、トヨタのIT事業会社であるトヨタメディアサービスとマイクロソフトの合弁会社の形で、ザック・ヒックス氏を社長として設立されました。

今後は、車載通信機(DCM : データ・コミュニケーション・モジュール)が装着されたトヨタ車、レクサス車から得られる様々な情報を集約するトヨタ・ビッグデータ・センター(TBDC)の運用と、もっといいクルマづくりに向けたビッグデータの研究、活用を行っていくとしています。

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TCは、マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Azure」を採用して、マイクロソフトとの協働で、車載サービスやテレマティクス、クルマと家やIoTの接続、パーソナライズ化、健康と安全、クルマのスマートシティへの統合、関係会社への様々なサービス、フリートサービスなど広範なIT分野に業務を広げることを目指しているようです。

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TCのヒックス社長は「TCは、お客様個人の習慣や思考に応じたテレマティクスサービスから、実際の運転パターンに合わせた保険料率モデルの構築、『つながる』技術を搭載した車両への道路状況や交通情報の提供にいたるまで、様々な面でお客様の生活を豊かにしていきたい」とコメントしました。

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昨年からトヨタはIT関連で色々な動きを見せています。トヨタのニュースリリースを探してみると、

2015/6/3 スマートデバイスリンク導入
2015/12/11 法人向けデレマティックサービスを導入
2016/1/4 スマートデバイスリンクの車載システムを商品化

など、トヨタがIT分野で活発な動きをしていることが分かります。そこへ今回のTC設立で、トヨタのIT分野への本気度が推し量れるようで、IT分野でもトヨタから目を離せません。

(山内 博・画像:トヨタ)

トヨタ、2015年特許登録件数でトップに~HV・自動運転関連で増加

特許庁は2015年の特許登録件数上位10社を発表しました。この発表でトヨタは前年4位からトップに躍進しました。HV、自動運転の分野でトヨタの特許登録件数が増加した模様です。

発表によるとトヨタは4,614件で、第2位のキヤノンは3,717件、第3位は三菱電機で3,364件となっています。自動車メーカーではホンダが1,934件で10位に入っています。

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以前は特許登録件数のトップは電機メーカーが常連になっていましたが、近年電機メーカーは経営不振で登録件数を減らしています。一方、トヨタは活発な技術開発を反映して登録件数がトップになったものと見られます。

日本の特許出願件数は2001年を頂点にして減少傾向が続いています。

そのなかでトヨタが特許登録件数でトップになったのは、トヨタの技術開発が活発であることを表していると言えます。

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それでも20・30年前には特許登録件数のトップは2万件を越えていたものです。それと比べれば、今年のトヨタの4,614件という件数は1/4程度にしか過ぎません。

その理由は、最近の特許出願は多項制を利用してひとつの出願に複数の発明を記載することが主流になっていることも一因だと思われます。つまり、ひとつの特許出願の中身が濃くなっているのです。

不振がつづく電機メーカーに代わり、今後のトヨタをはじめとした自動車メーカーの特許登録件数の動向に注目が集まっています。

(山内 博・画像:特許庁)

マツダが4月に組織改革へ!新車開発はどう変わる?

マツダが4月1日付けで組織改革と役員人事の変更を実施しました。

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この組織改革はMDIプロジェクト領域、デザイン領域、国内営業領域、中国事業領域、R&Dリエゾン領域の5つの事業領域に及んでいます。

MDIプロジェクト領域では、ITの進化や顧客ニーズの多様化に備え、「MDI」の新たなステージに取り組むべく「MDI プロジェクト室」を新設しているのが目を引きます。

「MDI」は“マツダデジタルイノベーション”の略で、他社に先駆けて新車開発をデジタル化、3D設計データを軸に金型加工までを一気通貫させるべく3次元CADをいち早く導入したのは自動車業界では有名な話。

同社は開発効率や製品の品質向上を目的に1995年に初代「デミオ」の開発でデジタル化の有効性を検証、翌1996年から新車開発に「MDI」を導入しています。

設計部門で作成するCADデータの品質が向上したことで、部品間の干渉等に起因する生産技術部門の“やり直し”作業が低減、新車の開発効率向上に寄与することから、現在では他の自動車メーカーでも3Dデータによるデジタル開発が普通に行われるようになりました。

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同社がエンジン、トランスミッション、プラットフォームなどを対象に展開している「SKYACTIV」において、今後は「MDI プロジェクト室」がさらなる開発効率の向上やコストセーブの役割を担うものと予想されます。

ちなみにMDIプロジェクト領域では藤原常務執行役員が4月以降、専務執行役員として研究開発・MDI統括、コスト革新など、MDI全体を統括。

またデザイン領域では、デザイン本部に「ブランドスタイル統括部」を新設、前田執行役員が常務執行役員となりデザイン・ブランドスタイルを統括。

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さらに中国事業領域では中国第1事業部と中国第2事業部を統合して「中国ビジネス推進部」を新設、ブランドの確立とさらなるビジネス基盤の強化を図るとしています。

一方、トヨタ自動車も4月1日付けでカンパニー制の導入など、大掛かりな組織変更とそれに伴う役員人事の変更を行いました。

将来の技術/ビジネスを“長期視点”、“社会視点”で創造していく「未来創生センター」と、長期視点に立った経営の方向性策定と経営資源の最適化を図る「コーポレート戦略部」を新設しています。

今回のマツダの組織改革も顧客ニーズの多様化や世界情勢の変化に迅速に対応するための体制作りに主眼が置かれている点では共通する部分も多いようです。

このように自動車各社では環境対応を含め、持続可能なサステイナブル・モビリティ社会の実現を目指しており、それに伴い、従来にも増して大掛かりな組織改革が目立つようになっているのが特徴です。

Avanti Yasunori

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豊橋技術科学大学、世界初のバッテリーレスEV・電化道路の走行実験を公開

豊橋技術科学大学は大成建設との共同研究で、バッテリーレス電気自動車(EV)での有人走行実験に世界で初めて成功した、と発表しました。

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走行実験は、一般アスファルト舗装に近い構造で舗装の中に2 本のレール電極板を埋め込んだ電化道路上で、バッテリーを外したEVを電化道路からの電力で走行させる形で行われました。

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同大学は3月18日に、バッテリーレスEVと電化道路の走行実験を報道機関に公開し、
当日は同大学の大平孝教授による説明の後に、約30メートルのテストコースでドライバーが乗車して走行実験を行った、ということです。

実験では、電化道路に埋設した2 本のレール電極板からタイヤを通じて バッテリーレスEV へ走行に必要な高周波電力を送電 することに成功しました。

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今回の実験は、バッテリーレスEVを走行させるという形で行われましたが、この送電技術を利用すれば、走行中のEVやHV・PHVに電化道路から充電することが可能になり、走行中充電への道を拓くものとなります。

(山内 博・画像:豊橋科学技術大学)

いまさら聞けない、日産の4WDシステムの違いとは?

「4WD」を聞いたことがないクリッカー読者はいないと思いますが、いまやそのシステムは多岐にわたります。同じメーカーでさえ、複数のシステムを用意していることは珍しくありません。

今回は、駆動方式や車種により異なる複数のシステムを用意している日産の4WDシステムの違いを見ていきましょう。

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■ALL MODE 4×4

エクストレイルに搭載されている4WDシステム「ALL MODE 4×4」。大きな特徴はアクセルを踏むとセンサーが路面状況を感知し4WDコンピューターが走行状態を判断することでしょう。

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走行状況に応じて前後トルク配分を燃料消費が少ない(フロント)100:(リア)0から、悪路などで走破性を高める約50:50に切り替えることで、滑りやすい路面でも安定した走りを可能とします。

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また「ALL MODE 4×4」搭載車に標準装備される「ヨーモーメントコントロール」は、自動的にきめ細かい前後トルク配分を行う機構。さらに「VDC(ビークルダイナミクスコントロール)」などとの組み合わせで、あらゆる路面で安心して走行できる4WDシステムと言えるでしょう。

■ALL MODE 4×4-i(トルクベクトル付)

ジュークに搭載されている4WDシステム「ALL MODE 4×4-i(トルクベクトル付)」をひと言でいうと「曲がる4WD」。

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新開発のリヤファイナルドライブユニットは、左右に電子制御カップリングを搭載していて、旋回時に後輪外輪側により大きな駆動力を配分するのが特徴です。

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このユニットにより左右の駆動力に差が出て車両ヨーモーメント(車を旋回させようとする力)をダイレクトにコントロールします。言ってみれば機敏なハンドリングでコーナリング時にクルマを思い通りに操ることができるシステムと言えるでしょう。

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また舗装時にスポーティなハンドリングが楽しめるだけでなく、滑りやすい路面でのより安定した走行が可能な4WDモードを選択することも可能です。

■ATTESA E-TS

GT-Rが搭載している4WDシステムが「ATTESA E-TS」。

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この4WDシステムはリヤタイヤに必要なグリップ力をもたらしつつ、ブレーキング時などで車両姿勢を保つために必要なフロントタイヤのグリップ力と荷重を割り出し、4輪にいかに荷重をかけるかという考え方のもと開発されたシステムです。

「あらゆる路面で旋回ライントレース性と加速性を高い次元で両立させた」と、日産は説明していますが、ハイパフォーマンスカーのGT-Rにふさわしい4WDシステムであることは間違いありません。

■パートタイム4WD

NV350キャラバンなどに搭載されている4WDシステムが「パートタイム4WD」。

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「パートタイム4WD」とは、基本は二輪駆動で走行しますが、路面状況などに応じてスイッチひとつで2WDから4WDの切り替えが可能なシステムです。

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NV350キャラバンのような商用車にとって、市街地などでは二輪駆動(FR)、悪路や雪道では4WDと切り替えることができるこのシステムは燃費などを考えたときメリットがある4WDシステムといえますね。

(テヅカ・ツヨシ)

神戸製鋼所、水素ステーション向け熱交換器「DCHE」がステンレス協会賞「最優秀賞」を受賞

神戸製鋼所は、同社の「水素ステーション向け拡散接合型コンパクト熱交換器(製品名:DCHE)」が、ステンレス協会賞の機能性部材のカテゴリーで最優秀賞を受賞した、と発表しました。同社のステンレス協会賞の受賞は初となります。

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同社のDCHEは、2013年に初めて国内商用水素ステーション向けに採用されて以来、国内の水素ステーション向けに累計100基以上の採用実績を有しており、同社は今後国内の水素ステーション向けに50%以上のシェア獲得を目指しています。

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(DCHE外観)

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(水素圧縮機内のDCHE)

今回受賞したDCHE(Diffusion bonded Compact Heat Exchanger)は、主に水素ステーション向け熱交換器として同社が2012年に開発したものです。

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(ディスペンサー内のDCHE)

水素ステーション向け熱交換器とは、水素ステーションの主要機器である水素圧縮機やプレクーラー、ディスペンサー内において水素を目的の温度に冷却するために設けられている熱交換器のことで、小型化が要求されています。

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同社製DCHEの特長は、ステンレスのプレートに幅1~2㎜の微細な流路を加工、積層し拡散接合をすることで、一般的な熱交換器である2重管式と比較し、広い伝熱面積(約5倍の1,000m2/m3)、コンパクト性(約1/100サイズ)と超高圧への耐性(100MPa)を実現した点です。

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開発における主なポイントは以下2点です。

1.熱交換の対象となる水素は、金属組織の中に入ると材料を脆くする性質(水素脆化)があることから、ステンレス板に添加するニッケルなどの合金成分を最適化。

2.拡散接合の様に金属を高温、加圧して接合すると一般的に強度が低下する傾向があるため、強度を維持するために接合時の最適な温度などの条件を選定。

なお開発においては、素材はステンレス・特殊鋼メーカーである日本冶金工業からの供給を受けるとともに、ステンレス関係の知見提供を受けた、ということです。

(山内 博・画像:神戸製鋼所)

トヨタ紡織、シリコンバレーオフィスを新設~自動運転や移動空間に関する先進技術の調査活動を強化~

トヨタ紡織は、2016年4月にアメリカのシリコンバレーに「トヨタ紡織アメリカ シリコンバレーオフィス」を新設し、自動運転や移動空間に関する先進技術の情報調査・分析活動を強化する、と発表しました。

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シリコンバレーオフィスは、トヨタ紡織アメリカのR&Dセンター組織として、 トヨタ紡織 日本本社の基礎研究所や、世界各地域に設けるR&Dセンターとも連携する、ということです。

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シリコンバレーオフィスの所在地は米国カリフォルニア州 サンノゼ市で、当面は3名の人員でスタートします。

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自動運転に関しては、グーグルが最高レベルのレベル4の実験車を公開して、世間の注目を集めました。

日本でも、トヨタが昨年10月に首都高速でレベル2に相当する自動運転実験の様子を公開し、また産官学の「自動運転ビジネス検討会」が発足するなど、活発な動きを見せています。

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このような中で、トヨタ紡織のシリコンバレーオフィスからどのような自動運転に関する新しい技術やアイテムが登場するかに興味がつきません。

(山内 博・画像:トヨタ)

曲の特徴に合わせてイコライザーを自動調整するカーオーディオ

米国の音楽データ提供会社グレースノートは、曲の特徴に合わせてカーオーディオのイコライザーを自動調節する自動車メーカー向けのデータ駆動型テクノロジーを開発した、と発表しました。

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Gracenote Dynamic EQ(登録商標)は、同社の楽曲認識技術と楽曲データセットを活用して、どんな曲でも特定しその曲の特性に応じてイコライザーを自動調整する技術です。

運転中に聴くことのできる音楽はあらゆる時代のあらゆるジャンルに渡っています。しかしながら、ほとんどのドライバーは同一のオーディオ設定状態でさまざまなアーティストの曲、さまざまなジャンルの曲を聴いているのが現状です。

このため、オリジナルレコーディングのサウンドに比べて音の深さやインパクトを欠いた状態で音楽を聴いていることになります。

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グレースノート自動車部門ゼネラルマネージャーのブライアン・ハミルトン氏は

「一般的な音楽ファンにとってイコライザー設定を変えることはかなり複雑な作業で、運転中前方注視の状態でそれを行うことは事実上不可能です。Gracenote Dynamic EQ は、楽曲単位の記述メタデータを活用して音楽聴取のクオリティを高める技術で、当社以外今までどこもやったことのない世界初の技術です。」

と、コメントしています。

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Gracenote Dynamic EQは、例えるならグレースノートがあなたの代わりに曲に合わせてオーディオシステムをその都度調節してくれるようなものです。

TupacやBiggieを聴く時には、曲独自のヒップホップ特性を加味してベース(低音域)を上げトレブル(高音域)を下げる設定、それとは対照的にTaylor Swiftの曲を聴く時には、ボーカルを活かすミッドレンジ(中音域)を強調しくっきりキラキラしたサウンドを得る為にHigh-endを上げるなど、ポップ・ボーカルの曲の特性に合わせた全く違うEQを自動的に設定することができます。

グレースノートは数千万の曲に対し最良なエコライザー設定のDynamic EQプロファイルを作成。分類アルゴリズムを活用して曲全体を解析し、ベース、トレブル、ミッドレンジ等のレベルと周波数帯域変化等の音響プロファイルを抽出。

これらを同社が数千万曲に対しすでに付与しているジャンル、年代、ムード等の属性データと融合して楽曲にマッチする最良なDynamic EQプロファイル特定し、車載オーディオの設定を自動的に調節するようにしているのです。

この技術が普及したら、あなたのカーオディオの音がケタ違いに向上するかもしれません。

(山内 博・画像:グレースノート)

豪ドミノピザ、世界初の自動運転デリバリーロボット:ドリューを試用開始

豪クイーンズランド州に本社があるドミノ・ピザ・エンタープライズは、自動運転デリバリーロボット(Domino’s Robotic Unit)、通称「DRU(ドリュー)」を発表しました。

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すでに一部で試運転を開始しており、今後は世界中のドミノピザに展開を予定しています。このような自動運転でピザを配達するデリバリーロボットは世界初ということです。

ドリューのサイズは、高さ922mm(最大約1185mm)、車幅740mm、奥行き1030mm、重量約190kgで、低部に四輪を持ち、上部にキャリーボックスが備えられています。充電バッテリーで動く電動車で、スタート地点から目的地まで最適なルートを自律的に選び、主に歩道を走行します。

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約20kmの距離を配達できる走行距離を備えており、スピードを周囲の状況に応じて自動制御することができます。車体に備えられたセンサーで障害物を認識し、障害物を回避することもできます。

ドリューのキャリーボックスには、出来立てのピザと冷たいドリンクを収納する棚が設けられており、目的地で顧客が商品注文時にメールで受け取ったコードを入力すると、ドリューのキャリーボックスが自動で持ち上がり、商品を取り出すようになっています。

近い将来、日本国内のドミノピザでもドリューによるピザの配達が始まるかもしれません。

(山内 博・画像:ドミノピザ)

トヨタが開発するウェアラブルデバイス「BLAID」とは?

トヨタ自動車の米国法人・トヨタUSAが「Project BLAID」と称するプロジェクトで、視覚障害者向けのウェアラブルデバイスの開発に取組んでいることを明らかにしました。

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同プロジェクトでは、移動する自由を誰もが享受できるようにすべく、都市交通のインフラの使用などで不自由を強いられている世界中の人々に向けて、パートナーロボットの開発を担うエンジニアが視覚障害者の協力を得ながら、4年間に渡って研究を継続。

肩から掛けるハンズフリーのウェアラブルデバイスを開発しているそうです。

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滑らかな手触りの材料により、体にフィットするように設計されており、音声や振動を介してユーザーと対話する方式のデバイスとなっています。

カメラを装備しており、ユーザーが身に付けることで、電子掲示板や店頭ロゴを認識可能となり、トイレやエレベーター、エスカレーター、階段、ドア、誘導灯など周囲の状況を把握することで、空港やオフィス、ショッピングモール内での移動に役立つとしています。

将来的には顔認識機能を搭載予定で、廻りにいる人の特定も可能になるとか。

同社では「Project BLAID」はまだ始まったばかりとしていますが、今後の展開が大いに注目されます。

Avanti Yasunori

最もスバルらしい「DCCD」方式AWDの真価とは?

6MTのみのWRX STIに搭載されているセンターデフ式、電磁クラッチを採用するDCCD(ドライバーズコントロールデフ)方式のシンメトリカルAWDは、最もスバルらしいスポーツ4WDの代表例といえるでしょう。

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プラネタリーギヤ式センターデフを採用しているのはAT(CVT)系の「VTD-AWD」と同じですが、「DCCD」は前後基本トルク配分をよりリヤ寄りの「41:59」とし、前後重量配分がフロント寄り(重くなる)となるFFベースとのバランスが取られています。

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センターデフに多板クラッチによる差動制限を組み合わせ、前後輪への駆動配分がされていますが、トルク配分を緻密に制御できる電磁式LSD(電磁ソレノイド)と、素早くしかもリニアな制御が可能なカムによる機械式LSDが組み合わせているのが特徴。

低ミュー路での走りはフロントヘビーを忘れさせるほどで、FFベースとは思えずFR的な挙動が印象的です。

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同乗走行の機会のあったラリードラーバー・鎌田卓磨選手の手に掛かると、アクセルコントロールでテールを滑らせ、自在に曲がれるワケですが、ハンドブレーキ形状のサイドブレーキを採用しているのもスバルらしいこだわりを感じさせる瞬間。

現行モデルには、先代WRX STIと同様に電磁式LSD(電子制御LSD)のデフロック率をロックからフリーまで6段階で設定できるマニュアルモード、走りに併せて電子制御される3種類のオートモードが用意され、「マルチモードDCCD」と呼ばれています。

こちらは、センターデフをマイナス側にするとテールスライドしやすく、より旋回しやすく、プラス側にすると安定感を抱く一方で曲がりにくくなる、という傾向。AUTOモードにすると、舵角やヨーレート、スロットル開度などを検出することでコーナリング時でもセンターを維持しやすく、マイナスにするとよりノーズがインに向きやすく、プラスにするとトラクションがより確保されます。

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「マルチモードVDC」は、挙動の限界付近で4輪個別のブレーキ制御、エンジン出力制御により車両を安定化させるもの。

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曲がりやすいFR的な挙動ですが、横滑り防止装置をオンにしておけば低ミュー路でも安全に走破できるのはもちろん、そこから先の真価はオフにして積極的にきっかけを作りながらテールスライドさせながら曲がっていくという、スポーツ系AWDらしい設定で、WRCなどラリーを主戦場としてきたスバルの真骨頂を感じさせてくれます。

(塚田勝弘)

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高い旋回性能とトラクションを誇るスバル・シンメトリカルAWD「VTD-AWD」の利点とは?

レヴォーグの2.0Lモデル、WRX S4といったAT系(リニアトロニックCVT)に採用されているのが「VTD-AWD(不等&可変トルク配分電子制御AWD)」方式。

センターデフに複合遊星歯車(プラネタリーギヤ)を採用し、電子制御LSD(油圧多板クラッチ)を搭載。前後基本トルク配分は「45:55」で、高出力車に対応した電子制御式AWDになっています。

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簡単にいうと、センターデフを持っていてリヤ側にトルクを多く出していくシステム。通常時はデフフリーの状態で、前輪への駆動時の負担(縦方向)を減らすことで横方向へのグリップを増しているのが特徴であり、高い旋回性能を実現しているとのこと。

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高速走行が可能な雪上コースには、氷上に近い路面や高速コーナリング、入り組んだインフィールドコースなどが用意されていましたが、速度を上げるとリヤが出やすく、コンディションによってはかなり滑りやすいです。
回頭性がひとつの特徴で、腕のある人にとってはクラッチ操作の要らないCVTということもあって、かなり速いペースで周回できそうな仕上がりになっています。

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電子制御LSDの仕事は、スロットル開度、エンジン回転、車速、そして前後輪回転比などを監視し、走行状態の変化に応じて差動を制限することによりトルク配分を最適化するというもの。

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それにより、氷上などの低ミュー路やコーナリング中の加減速時、発進や再加速時などは直結状態に近い特性にすることで駆動力を確保。

AT系の主力は、レヴォーグの1.6Lモデルやレガシィ、インプレッサ、XV、フォレスターなどに採用されているアクティブトルクスプリット式ですが、より積極的にハンドリングを楽しむならレヴォーグの2.0L、WRX S4を選択するという手も非常に魅力的といえそうです。
(塚田勝弘)

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アクティブトルクスプリット式を採用するスバル「シンメトリカルAWD」の走りは?

スバルではシンメトリカルAWD(4WD)の利点として、トラクション(発進性や走破性)の高さや、高速安定性や旋回性能などに加えて、低ミュー時も全輪が駆動輪であるためブレーキを深くかける(ABS)ことが可能なこと、ロック時も車輪の復帰に素早く駆動力を使えることが可能なことを挙げています。

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ここでは、レヴォーグ(1.6L)、レガシィ、インプレッサ(ハイブリッド含む)、スバルXV(ハイブリッド含む)、フォレスター、クロスオーバー7に搭載されているアクティブトルクスプリット方式のAWDをご紹介します。

油圧多板クラッチを採用するアクティブトルクスプリット方式は、前後基本トルク配分を「60:40」に設定し、エンジントルクと車輪速センサーにより駆動状況をモニタリングするシステム。

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さらには、VDCからステアリングの舵角、ヨーレート、横加速度信号などもモニターされていて、通常時は駆動ロスを抑え、突然滑りやすい路面に遭遇しても素早く対応することが可能です。

制御はトランスファー内の多板クラッチにより行われ、ほぼ直結状態からほぼ前輪駆動まで可変させることができます。

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さらに、インプレッサ(スポーツ)とXVのハイブリッド車は、アクティブトルクスプリット式をベースに、専用設計となるコンパクトなモーターがミッションケースに内蔵されていて、AWDの基本構造を変えることなくハイブリッド化がされているのも特徴。

アクティブトルクスプリット式では、レヴォーグ(1.6)、レガシィ・アウトバック、インプレッサ(スポーツ)、XV、フォレスターに雪上コースや公道で試乗する機会がありました。

どのモデルでも印象的なのがAWDとは思えない素直なハンドリング特性。なお、試乗車全車にブリヂストンの「ブリザック(VRXやDM-V2)」が装着されていました。

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圧雪路や氷上に近いコンディション、坂道やコーナーなどでも横滑り防止装置のVDCをオフにしなければ高い安定性が得られます。走るごとに路面が磨かれるコースでは、非常に滑りやすい路面もありましたが、慣れてくるとコントロールしやすく、横滑り防止装置をオフにしてその違いも楽しむことができます。

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フォレスターとアウトバックには「X-MODE」が装備されていることもあり、よりイージーに特設コースを走破できるのが印象的でした。オフにしても特設コースをクリアできましたが、楽なのはやはり「X-MODE」のオンで、余計にスリップするシーンが激変します。

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また、フォレスターはインパネ中央に「X-MODE」などの作動状況が分かるディスプレイが配置されていて、メーターで確認するアウトバックよりも「X-MODE」の仕事ぶりをチェックしやすく感じました。

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インプレッサやXVは、フォレスターやアウトバックよりもひと回り小さく感じさせるほど全体の動きが軽く、滑り出したときの対処もしやすいのが美点。

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ただし、パワステもやや軽く感じるため、雪道やほぼ凍結した路面ではステアリングのインフォメーションに物足りなさも抱かせますが、普通に走る分には先述したように軽快感につながっているのでしょう。

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また、レヴォーグ(1.6)とフォレスターのターボで公道(林道)を走る機会もあり、先の路面が読みにくい林道ではフォレスターのアイポイントやロードクリアランスの高さが頼もしさに感じられ、雪上や除雪された冬道ではレヴォーグの乗り味の良さが伝わってきました。

(塚田勝弘)

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■スバル「シンメトリカルAWD」の強みとは何か?
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スバル・シンメトリカルAWDの「強み」とは何か?

スバルの世界生産のうち94%がAWD(4WD)、2015年暦年の世界販売ではじつに98%がAWDといいますから、当たり前過ぎて「あえてAWDを意識していない」というスバル技術本部の藤貫哲郎さんの言葉は本音だろうと思いました。常夏のハワイ向けにもAWDを投入しているそうです。

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同氏によると、2代目レガシィの頃、北米に工場を作った際にFF(FFもあった)のレガシィが工場にあふれる事態になり、アメリカの販社と「スバルの特徴とは何か?」と話し合ったことがあるそうです。そこで世界一シンプルなAWDに注力することでブランドの特徴を出す契機になったとのこと。

この発言は、プレス向けに開催された雪上試乗会でのブリーフィングの場で聞けたもので、試乗会ではスバルのシンメトリカルAWDの実力を存分味わえるステージとして、2種類のクローズドコースと林道を含む公道試乗が用意されました。

FRのBRZ、インプレッサのFF、そして軽自動車(OEM)をのぞく主力モデルが一堂に会し、たっぷり1日試乗することができました。

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スバルの「シンメトリカルAWD」にはAT車とMT車向けがあり、AT向けは「VTD-AWD(VTD/バリアブル・トルク・ディストリビューション)」、アクティブトルクスプリット式。MT向けは、DCCD(ドライバーズ・コントロール・センターデフ)式、ビスカスLSD付センターデフ式が用意されています。

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全部で4タイプあるわけですが、シンメトリカルAWDの特徴として、車両の挙動やドライバーの意思をセンシングした電子制御による駆動配分でAWDの高い走行安定性を引き出しているほか、「止まる」という性能に関しても4輪すべてが駆動輪ということで、AWDが有利というのもポイント。

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また、シンプルかつ軽量なシンメトリカルAWDと他メーカーの4WDを比べると、他メーカーのものはトランスファーを経由するため重量増につながる、流行の電動AWDはモーターの出力が小さいため発進アシストタイプが多い、というのが違いになっています(高速では基本的にFFになるのが多い)。

他メーカーにも横置きの4WDで軽量なものもありますが、リヤデフの容量が小さいことが多く、大きな駆動力が必要な時や高速走行時はトルクが伝えきれないものもあり、スバルのAWDは発進時だけでなくフルパワーでも直結できるのも特徴になっています。

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AWD(4WD)というと燃費が不利になりがちですが、スバルでは「ライバルのFFに負けない」という点を開発目標に掲げているそうです。たとえば、SUV同士で比べてもライバルのFFに「AWDでも負けていない」と胸を張っています。

(塚田勝弘)