Motor Fan's YEAR 2016

三栄書房

サンプル

モトチャンプ

木と金属への徹底したこだわり ─ トヨタ「SETSUNA」画像ギャラリー

木製コンセプトカー・トヨタ「SETSUNA」の木へのこだわりは、前回も紹介しましたが、今回はもう少し細かい部分を紹介します。

SETSUNA_013_s

「SETSUNA」のボディサイズは、全長3030×全幅1480×全高970mm。ホイールベースは1700mmで、見たとおり2シーターで、パワートレーンは電動モーターと公表されています。

ホンダS660が全長3395×全幅1475×全高1180mmですから、衝突安全や居住性などを加味しないでいいコンセプトカーとはいえ、かなり短め。

さて、取り替え可能な外板に杉、フレームに樺(かば)、フロアに欅(けやき)、シートに栓(せん)など、用途に応じた木材を使い、日本古来の伝統技法により組み付けられている「SETSUNA」ですが、細部にまでこだわりが貫かれています。

SETSUNA_010_s

まず、木を使っているのに滑らかさを感じさせるサイドビューが象徴的ですが、材料の木は、時間をかけゆっくりとしならせることで、ボディラインは船のような美しいカーブを、フロントからの眺めは七角形を、側面や上方からでは紡錘形を描いています。

SETSUNA_025_s

人が手間暇を掛けて塗った漆である「拭き漆」という技法もそのひとつで、木目を生かすため、ドアミラーやシート、ステアリングホイール、ボディの帯状のラインなどに拭き漆を採用。

一般的に知られている「塗って重ねていく」本漆ではなく、塗っては表面を拭くことを繰り返し、木目に沿って漆が定着し、木目と漆のコンビネーションが際立つ技法だそう。

「拭き漆」により、初期の美しさもさることながら、時を経て使い込まれることで濃淡や色合いが変わり、世界にひとつだけの味わいを醸し出すそうですから、年月を経た「SETSUNA」を見てみたいところ。

SETSUNA_028_s

見た目も印象的なシートは、木で作られた公園のベンチのように「誰をも優しく迎え、包み込むような、そんな柔らかな表情を持つシートを」という想いを具現化。「栓(せん)」の木に漆が塗られていて、身体が主に触れるところには革が貼られています。

SETSUNA_027_sSETSUNA_021_s

こだわりは「木」だけではありません。アルミ製メーターは、アルミケースの中の短針は時間(1周=24時間)、長針は月日(1周=365日)を表し、「年」を刻む設計となっています。「家族と時を刻む100年メーター」という想いが込められているそうですが、まさに同コンセプトカーに合っています。

SETSUNA_022_s

エンブレムは「刹那エンブレム」と命名され、「刹那の積み重ね」を円と放射状のデザインにより表現されていて、一秒一秒を刻む時計のようでもあり、刹那に咲く花のようでもあるデザインを採用。

SETSUNA_026_sSETSUNA_029_sSETSUNA_030_s

アルミはメーターだけでなく、木と木の間に効果的に配置されています。ホイールキャップやステアリングホイール、シートなどにアルミニウムが使用されていて、木々との調和を図り、美しいコントラストを表現しているそうです。

さらに、「様々な材料とその組み合わせから創出される美しさ、それらが変わることを愛でる経年美を味わえる」と、木や革だけではなく、金属も傷がつき愛着を持てる材料ではないか、ということから金属も採用されているそうです。

(塚田勝弘)

【関連記事】

■「木のクルマ」トヨタ「SETSUNA」のこだわりとは?
http://clicccar.com/?p=363655

「木のクルマ」トヨタ・SETSUNAのこだわりとは?

4月11日のプレスプレビューを皮切りに4月17日まで、イタリアで開催される「ミラノデザインウィーク2016」。トヨタ「SETSUNA」が「木のクルマ」として注目を集めていますが、ショーを前にその全容が明らかにされました。

SETSUNA_009_s

最大の疑問は「なぜ木なの?」という点ではないでしょうか。

トヨタ「SETSUNA」のコンセプトは「歳月を経て変わることを愛でる」だそうで、確かに金属などでも年月を経れば味わいも出そうです。

このコンセプトを具現化するため、

「木は、手を掛けいたわることで色や風合いが変化し、愛情を注いだ分だけ家族へ応えてくれる。これを積み重ね幾世代も受け継いでいくことで、その家族だけのクルマへと変化する。その変化は家族との絆そのものであり、あらゆる思い出を封じ込めたものでもある」

と開発責任者である辻 賢治氏達の思いが木に込められています。

SETSUNA_013_s

しかし、単に木を切り貼りし、積み木のように組み立てた1/1スケールの玩具ではなく、トヨタがコンセプトカーとして作ったわけですから、こだわりが詰まっています。

その心は「走る・曲がる・止まる」といった性能を装備し、構成部品でもある木材も適材適所の樹種の選択。

SETSUNA_011_s

木目の鮮やかさや趣き、材質の柔らかさから、外板は「杉」が採用されているほか、フレームは高い剛性を保つ「樺(かば)」、フロアは強度が高く耐久性に優れた「欅(けやき)」、シートには木肌がなめらかな「栓(せん)」が使用されています。

SETSUNA_029_s

さらに木目の美しさまで表現されています。

「杉」の外板は、丸太の中心に向かって切断した柾目(まさめ)、丸太の中心から適度にずらして切断した板目 (いため)の2パターンを製作。

柾目はほぼ平行に、木目が均等にはっきりと並ぶフォーマルな印象を演出する一方で、板目は木目が柔らかで、1本の木でも同じ木目はなく、趣きのあるフレンドリーな印象を狙っているそう。

また、木の接合には、釘やネジを使用しない日本古来の伝統技法である「送り蟻」「くさび」などが採用されています。

SETSUNA_024_s SETSUNA_023_s

外板の着脱は、釘などを使わずにできる「送り蟻」を活用。まるで宮大工による伝統的な建築物のようですが、接合部の強度を高めるだけでなく、締結部がすり減ったとしても「蟻ほぞ」、「ほぞ穴」を部分的に取り換えることが可能で、本体を加工することなく使い続けることができます。

ほかにも、フレームの接合部には部品と部品を貫通させた「通しほぞ」に「割りくさび」を用いて締結。このように手間を掛けて木と木だけで組付ける「匠の技」も魅力。

SETSUNA_019_s

取り替え可能な外板はダイハツ・コペンのようですが、86枚のパネルで構成されたボディは、どうしても修理しなければならなくなった時には全体を交換するのではなく、1枚だけを交換することができるなど、今までのコンセプトカーになかったこだわりが満載されています。

(塚田勝弘)