Motor Fan's YEAR 2016

三栄書房

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モトチャンプ

世界各地のレーシングカーに採用されている、レース用電動パワーステアリングのメーカーは?

最近のレース用車両では、一般の乗用車と同様に電動パワーステアリング(EPS)が普及しています。

このレース用EPSの分野で圧倒的なシャアを誇っているのが日本の自動車部品メーカー KYB(カヤバ)であることをご存知でしょうか。

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KYBがレース用EPSに進出したのは、1994年の全日本ツーリングカー選手権車両向けにEPSを供給したのがはじまりでした。その後、2001年にはル・マン24時間レースのレース車両向けにEPSの供給を開始しました。

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近年では同社の独自設計によるモーターとECUを開発し、2013年以降は標準型化されたコラムEPSをレース市場にリリースするほど、同社のレース用EPSはレース業界に浸透しています。

実際に世界各地のレースで同社のレース用EPSの採用実績が高くなっています。

たとえばル・マン24時間レースでは、2016年度全出場車中45%の採用率を確保しており、中でもトップカテゴリー のLe Mans Prototype(LMP)クラスに至っては32台中23台、採用率にして72%に達しています。

また、デイトナ24時間レースでも、Prototypeクラスで88%のシェアを誇っています。

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その他、世界各地のモータースポーツではFIA(国際自動車連盟)主催のWorld Rally Cross(WRX)参加車両へもEPSの供給を開始し、国内のスーパーGT、スーパーフォミュラーなど世界中のレースシーンで同社のEPSが活躍しています。

さらに今後の取り組みとして、2016年には無人EVレース「ROBORACE」車両など新たなカテゴリーの車両にEPSの供給を開始しました。

自動車部品メーカーは、目立たない縁の下の力持ち的存在ではありますが、いろいろな分野での活躍が期待されます。

(山内 博・画像:KYB)

自動運転を見据えたデンソーの2系統電動パワステとは?【人とくるまのテクノロジー展16】

デンソーが「人とくるまのテクノロジー展」で展示していた2系統EPS(EPS=電動パワーステアリング)は、電子回路もモーター巻線も文字どおり2系統持っていて、たとえば自動運転の際に何らかのトラブルが起きても1系統生きていることで、パワーアシストが失われることなくステアリング操作が可能というもの。

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じつは、すでにトヨタ・アルファード/ヴェルファイアなどに搭載され、2015年から量産化しています。

自動運転車両でなくても万一、EPSに問題があり「重ステ」になると、たいていの人はパニックになるはずで、速度域が高かったり、交差点だったりすると重大な事故に直面する可能性があります。

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自動運転のシーンでは、従来の1系統EPSだとステアリング操作ができず「自動運転停止」となってしまい、しかも手動運転に切り替えできたとしても「重ステ」状態ですから先述した状況に陥るかもしれません。

2系統ならハーフアシストで自動運転が継続できるほか、アシスト力50%のハーフアシスト状態で手動運転に切り替えることができます。たとえ異常があっても一定期間機能が失われない、「フェイルオペレーション」が用意されているわけです。

私も体験してみましたが、アシストがゼロになると急に重くなり、ハーフアシストでもアリ、ナシには大きな差があります。自動運転というとセンシングの面などに注目が集まりがちですが、すでに採用されている技術の底上げも不可欠なのが分かります。

(文/写真 塚田勝弘)

電動パワーステアリング世界市場調査、燃費規制で新興国中心に今後も拡大が続く見込み

市場調査の矢野経済研究所が電動パワーステアリング(EPS:Electronic Power Steering)の世界市場調査の結果を発表しました。

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まず、ステアリングの操舵力を電気モーターでアシストするEPSの構造的な分類を説明します。

EPSには、電気モーターによるアシスト力を付加する部分に応じて、コラムタイプ、ラックタイプ、ピニオンタイプの3種類があります。さらに、EPSの1種として、従来の油圧式パワステの油圧発生源を電気モーターで電動化した電動油圧パワーステアリング(EHPS:Electronic Hydraulic Power Steering)も調査に含まれています。

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調査結果によると、世界市場規模は、2015年の出荷ベースでEPSが4700万台で、EHPSの400万台を加えて5100万台となりました。

EPSは油圧式と比較して3〜5%の燃費向上が見込めるとして、今後2020 年には合計で 6,890万台、2025年には 8,610万台に新興国中心に拡大すると予測しています。

EPSタイプ別の増減では、小型車が多いアジア中心にコラムタイプの増加が続き、大型車が多い北米中心にラックタイプの拡大が見込まれるとしています。

ピニオンタイプは、コスト面とアシスト力で限界があり、大幅な拡大は見込めないとしています。

またEHPSについては、EPSの出力が向上しており、燃費の改善幅や制御性で限界があり、今後縮小する傾向にあると予測しています。

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地域別では大型車が多い北米や燃費規制が厳しくなった中国で、今後EPSの搭載が急増することが見込まれています。さらに、南米やアジア地域を含むその他地域でも、EPS 市場はさらに拡大していくと予測しています。

一方、日本のEPSとEHPSの地域別需要構成比をみると、2015年の14.8%から2020年には10.9%まで低下すると見込まれており、搭載数は増加するものの自動車生産台数の減少にしたがって需要数量は頭打ちになると、予測しています。

欧州も2015年の30.9%から2020年には27.4%まで低下する見込みで、既に普及が進んでいる日本と欧州では、今後は自動車生産台数と連動した成長にとどまると予測しています。

中国では18.4%から22.6%に増加し、その他地域が 15.3%から18.4%に拡大する見込みで、今後は北米や新興国が主な拡大市場になると予測しています。

今回の調査は、2015年10月〜2016年3月にわたって、EPSシステムメーカーや、EPS構成部品メーカーを調査対象として、矢野経済研究所の専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査を併用して実施されました。

(山内 博・画像:矢野経済研究所)