Motor Fan's YEAR 2016

三栄書房

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モトチャンプ

パンダ・トレノといえば榛名山、ダウンヒルではヒール&トゥ三昧でした!(その3)【等身大インプレ】

関越道を降りて、いよいよ榛名山へ向かいます。上りのワインディングに入ると、やはりエンジン回転を引っ張ってシフトアップしていくのは楽しいですネ。

ただ高速ではどっしりと落ち着いていたステアリングが、ワインディングでは重ステに変貌。しかもヘアピンカーブ(昭和ワードです)がきつくなるほど、ステアリングが重くなっていきます。つまり速度が遅くなるほど、重さが増していくのです。

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パワステに慣れ切った我が身に重ステはきつく、上りの急コーナーで速度が落ちると「おもっ、おもっ、おもっ、」とひとりで叫んでいました。考えてみれば、フロントタイヤには500kg近い重量がかかっているのですから、重いのは当然といえば当然なのですが……

パワステのクルマなら、シフトノブに左手をおきながら右手でステアリングをクイッと曲げるところを、パンダトレノでは、両手でステアリングをよいしょとばかり回転させる感じでした。

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運転しながら、そういえば頭文字Dの藤原拓海君が「腕力には自信がある!」って言っていたのを思い出しましたヨ。パンダトレノのスマートな外観と1t前後の軽量ボディとは裏腹に、ステアリングだけはやたら重いというギャップを感じながらドライブしておりました。

次はいよいよ聖地・榛名山の駐車広場から、ステアリングとアクセルに力を込めて、ダウンヒルへ突入です。ようやく重ステにも慣れてきたので、ヒール&トゥをぎこちなくかましながら、気分だけは藤原拓海君になりきります。

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下りでは、エンジンブレーキが良く効くため、スピードのコントロールがしやすいですネ。 コーナー手前でヒール&トゥを仕掛けて、減速とエンジン回転とギアがバッチリ決まった時は、クルマがコーナーに吸い込まれていくような感覚が味わえます。個人的には、これがマニュアルを運転していて一番幸せを感じる瞬間です。

またトレノは本当に運転しやすく、ヒール&トゥも決まりやすいことに気づきました。FRらしく真正面に配置されたペダルやスポーツカーとしては高めの着座位置、回転に応じたパワーを発揮する1.6Lエンジンなどの総合バランスが、山坂道で絶妙にマッチしているのです。

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もちろん筆者は、頭文字Dで繰り出されるような走りは到底無理。でもFRがもたらすナチュラルなハンドリングや己の四肢に力を込めてクルマを操る一体感、そしてダウンヒルで高回転型のNAエンジンをあおる感覚は、まさしく昭和のパッションそのものでした。

ただこれらは、FFベースで操作性と快適性、更にエコを重視する現在のクルマが失ってしまったもの。そんなトレンドの中で、FRでNAエンジンと四肢を駆使する楽しさを大切にするトヨタ86&スバルBRZやマツダロードスターには、心底敬意を表したいと思います。

今回は高速走行が多く、421km走ってハイオクガソリン指定の燃費は12.1km/l。昭和のクルマの遠乗り燃費は、これくらいが相場でした。レンタカー代は9時間で約1万円でしたが、パンダトレノに何を求めるかによって、評価が別れるかな?

レンタカーだからといって純粋に走りの性能を求めるには、さすがに昭和58年デビューの車種には酷というもの。旧車をレンタカーで借りる際は、事前に店舗へコンディションを確認した方が良いでしょう。

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個人的には今回レンタルして、①昭和の青春時代に浸りたい ②エンジンをブン回して走り回りたい ③ワインディングでヒール&トゥを決めたい ④重ステ&半クラが醸し出す昭和のロマンとやらを感じたい ⑤頭文字Dワールドでリア充したい等々と思う方々にオススメしたいですネ。

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筆者はパンダトレノをドライブして、昭和の青春カーライフをこんなに濃厚に再現してくれるクルマは他にないと実感した次第です。

(星崎 俊浩)

【関連記事】

パンダ・トレノに見る、「昭和のクルマ」の6つの特徴とは!?(その1)【等身大インプレ】
http://clicccar.com/2016/12/21/427485/

パンダ・トレノで高速を走りながら、昭和のクルマ好き男子はモテたことを思い出した!(その2)【等身大インプレ】
http://clicccar.com/2016/12/24/427487/

【関連リンク】

第23弾 新型カローラ&スプリンターのすべて(電子版)
http://3a.as-books.jp/books/info.php?no=NMS19830627

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パンダ・トレノで高速を走りながら、昭和のクルマ好き男子はモテたことを思い出した!(その2)【等身大インプレ】

■重ステとクラッチ操作を感じさせないクルマ好き男子はモテた!?

街中でパンダトレノの重ステとクラッチを操作しながら「やっぱり、パンダトレノといえば頭文字D。頭文字Dと言えば秋名でしょう!」と思い定めました。当日は天候にも恵まれたので、外環道から関越道に入って、頭文字Dの聖地・群馬県の榛名山へ向かうことにしました。

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外環道を走りながら、パンダトレノが登場した昭和50年代のクルマ事情を思い出しました。

オイルショックと環境破壊が社会問題となる中、日本車は昭和50年代前半の排ガス規制対策を最優先した結果、軒並み性能ダウン。エンジンは回らないしパワーも出ない状態で、高性能エンジンも廃盤に追い込まれていきました。クルマのデザインも鈍重で、クルマ好きには暗黒の時代のようでしたヨ。

そしてようやく昭和56年、その名のとおりソアラが太陽のように登場し、暗黒の時代に終止符を打ちました。「第1弾ソアラのすべて」は、こんな時代背景の中で出版されたのですネ。その後新世代の日本車が続々と登場し、昭和58年にAE86が若者の喝采を浴びて登場したのです。

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そういえば昭和の頃は、クルマは男子が運転するもので、運転の上手い男子がカッコいいと言われていたことを思い出しました。平成世代の方々には信じられないと思いますが、ホントにそうだったんですヨ。

特に女子からは、坂道発進やバック駐車等をさりげなく決める仕草が神って見えたでしょうし、当時良いクルマを颯爽と乗りこなす男子は、確かにもてる確率が高かったデス。

もっとも、当時エアコンなしのオンボロ軽をこよなく愛していた貧乏学生の筆者は、その恩恵に預かることができませんでしたが……

■チューンを受けた名機4A-Gは、純正以上の性能を発揮!

ひとしきり昭和のロマンに浸った後、あらためてクルマのコンディションをチェックしてみましょう。AE86は既に30年近く経過しているため、レンタカーのパンダトレノも間近に見ると、内外装ともに相応にくたびれているのは仕方のないところ。

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ただエンジンの4A-Gは、レンタカー店の説明によるとチューンを受けており、AE101の腰下を使って圧縮比をアップするとともに、軽量コンロッドやピストンを組んでトルクを厚くしているとのこと。

それでも現在の水準でいえば排気量相応のパワー感ではありますが、淀みなくレッドゾーンまで回るのが4A-Gらしいところです。

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ボディは前後タワーバーで固め、足回りも硬めのダウンサスを装着していました。嬉しいことにボディ剛性は経年劣化に負けておらず、高速巡航や追い越しでも直進性が高いのは立派。クラッチジャダーや駆動系の振動等もなく、エンジンと駆動系のメカはとてもしっかりしていました。

■アクセル全開で4A-Gを7000回転でシフトアップ!

ボディやパワーユニットがしっかりしている一方で、ブッシュやマウント等のゴム類は経年劣化でへたっているせいか、高速巡航では常に微振動を感じます。また固い足回りのせいで、段差等でクルマがバンバン跳ねました。筆者は腰痛持ちなのですが、このクルマにはシートにレカロが入っていたので、大いに助かりました。

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関越道の料金所を抜けて、アクセルを思い切り踏み込んで全開ダッシュをかけると、エンジン回転にパワーと加速がリニアについてきます。燃費とか気にしないで、遠慮なくレッドゾーン手前まで回しながら、シフトアップを繰り返していくのが昭和の流儀。今回は7000回転まで回しましたが、やはりアクセル全開でシフトアップを重ねていくNAエンジンは、人もクルマも一生懸命で、本能的に楽しいですネ。

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またこのクルマはギア比も弄ってあるようで、5速100km/hで3700回転も回っていました。おかげで関越道では、追い越しでもシフトダウンして、高回転型までブン回す走りを堪能することができた次第です。

その3では、榛名山ワインディング編に続きます。

(星崎 俊浩)【関連記事】

パンダ・トレノに見る、「昭和のクルマ」の6つの特徴とは!?(その1)【等身大インプレ】
http://clicccar.com/2016/12/21/427485/

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第23弾 新型カローラ&スプリンターのすべて(電子版)
http://3a.as-books.jp/books/info.php?no=NMS19830627

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パンダ・トレノに見る、「昭和のクルマ」の6つの特徴とは!?(その1)【等身大インプレ】

等身大インプレの第4弾は、AE86こと、ハチロクこと、パンダトレノこと、スプリンタートレノです。

東京近郊にあるスポーツカー専門のレンタカー店にあり、以前から気になっていました。レンタカーを借りた当日は、懐かしさのあまり昭和のカーライフがよみがえってきました。

そこで最初に、昭和のクルマが持っている6つの特徴を紹介したいと思います。まずは内装にある2つの特徴から見てみましょう。

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・手動開閉のウィンドウ

ドアを開けて乗り込んで思い出したのが、窓の開閉がくるくる回す手動式であること。この頃大変だったのは、有料道路の料金所での支払いでした。お金の用意と窓を開ける動作を同時にやらなくてはいけませんから、結構面倒でした。

今はほとんどのクルマにパワーウィンドウが装備されていますし、なによりETCが普及しましたから、こういう面倒から解放されましたネ。

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・ドアロックも手動

ドアといえば、ドアロックも手動でした。昭和の頃はほとんどのクルマで、運転席も助手席もドアロックが手動式なので、人を乗せる時には助手席まで体を伸ばして、ドアロックを解除したものです。

デートで迎えに行った時、シートベルトを装着したままでやると、体が引っ掛かったりしてカッコ悪かった〜っ。

・ロッド式のアンテナ

また懐かしいのが、ラジオのアンテナです。当時は、運転席側のAピラー付近に備え付けられており、窓を開けて外に手を伸ばしてアンテナをにょきにょきと伸ばしていました。

アンテナを伸ばしたまま駐車していると、悪戯で折られたりして腹を立てたものでした。

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・スポーティイメージの象徴だったリトラクタブルヘッドライト

当時のクルマで最も特徴的なのが、リトラクタブルヘッドライトでしょう。AE86でも、固定式ライトのレビンに対して、トレノはリトラクタブルヘッドライトで個性を主張していました。

あの頃は各メーカーとも、スポーティなクルマでは軒並み採用していました。ホンダに至っては、セダンのアコードまでリトラクタブルでしたヨ。

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ライトをつけるとヘッドライトが立ち上がり、精悍なフロントマスクがカエルのようなファニーフェイスになるギャップが魅力的でした。運転席から立ち上がったライトユニットが見えるので、車両感覚も掴みやすいですネ。

ただリトラクタブルヘッドライトは、人身事故での傷害が大きいことや海外での常時点灯の規制等のために、惜しまれつつも絶滅してしまいました。

・坂道アシスト機能のないミッション

操作面では「坂道発進」も特徴的でした。AT車にはクリープ現象が、また最近のCVTやMTには坂道で滑り落ちないアシスト機能がついているので安心です。

しかしアシスト機能のない当時のMTでは、サイドブレーキと半クラッチとアクセルの3操作を駆使して、坂道にとどまりながら発進していました。「坂道発進」は、当時の女性が一番恐れていましたよネ。

筆者も免許取立ての頃、先輩から「坂道発進がスムーズにできたら一人前」なんて冷やかされたものでした。

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・「重ステ」って知ってる?

最後の特徴が「重ステ」です。最近のクルマではほとんど見られなくなった、パワーアシストのないステアリング、つまりパワーステアリング「ではない」ハンドルのことです。

パンダトレノのステアリングは、微速時には壊れてるかと思うくらい重かったのでビックリしました。特に、駐車場にバックで停める操作は、次の連続アクションになるので結構大変でした。

①半身で後ろを向きながら、②片手で重ステをすえきりしながら、③左足で半クラッチを操作しながら、④右足でアクセルを小さく煽りながら、⑤バックミラーとサイドミラーを確認しながら駐車場におさめる訳です。特に②③④の連係動作は、当時の女性にとって罰ゲームと思えるくらい辛い行為だったとあらためて実感しました。

その2では、関越の高速巡行編に続きます。

(星崎 俊浩)【関連リンク】

第23弾 新型カローラ&スプリンターのすべて(電子版)
http://3a.as-books.jp/books/info.php?no=NMS19830627

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