Motor Fan's YEAR 2016

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パンダ・トレノといえば榛名山、ダウンヒルではヒール&トゥ三昧でした!(その3)【等身大インプレ】

関越道を降りて、いよいよ榛名山へ向かいます。上りのワインディングに入ると、やはりエンジン回転を引っ張ってシフトアップしていくのは楽しいですネ。

ただ高速ではどっしりと落ち着いていたステアリングが、ワインディングでは重ステに変貌。しかもヘアピンカーブ(昭和ワードです)がきつくなるほど、ステアリングが重くなっていきます。つまり速度が遅くなるほど、重さが増していくのです。

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パワステに慣れ切った我が身に重ステはきつく、上りの急コーナーで速度が落ちると「おもっ、おもっ、おもっ、」とひとりで叫んでいました。考えてみれば、フロントタイヤには500kg近い重量がかかっているのですから、重いのは当然といえば当然なのですが……

パワステのクルマなら、シフトノブに左手をおきながら右手でステアリングをクイッと曲げるところを、パンダトレノでは、両手でステアリングをよいしょとばかり回転させる感じでした。

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運転しながら、そういえば頭文字Dの藤原拓海君が「腕力には自信がある!」って言っていたのを思い出しましたヨ。パンダトレノのスマートな外観と1t前後の軽量ボディとは裏腹に、ステアリングだけはやたら重いというギャップを感じながらドライブしておりました。

次はいよいよ聖地・榛名山の駐車広場から、ステアリングとアクセルに力を込めて、ダウンヒルへ突入です。ようやく重ステにも慣れてきたので、ヒール&トゥをぎこちなくかましながら、気分だけは藤原拓海君になりきります。

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下りでは、エンジンブレーキが良く効くため、スピードのコントロールがしやすいですネ。 コーナー手前でヒール&トゥを仕掛けて、減速とエンジン回転とギアがバッチリ決まった時は、クルマがコーナーに吸い込まれていくような感覚が味わえます。個人的には、これがマニュアルを運転していて一番幸せを感じる瞬間です。

またトレノは本当に運転しやすく、ヒール&トゥも決まりやすいことに気づきました。FRらしく真正面に配置されたペダルやスポーツカーとしては高めの着座位置、回転に応じたパワーを発揮する1.6Lエンジンなどの総合バランスが、山坂道で絶妙にマッチしているのです。

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もちろん筆者は、頭文字Dで繰り出されるような走りは到底無理。でもFRがもたらすナチュラルなハンドリングや己の四肢に力を込めてクルマを操る一体感、そしてダウンヒルで高回転型のNAエンジンをあおる感覚は、まさしく昭和のパッションそのものでした。

ただこれらは、FFベースで操作性と快適性、更にエコを重視する現在のクルマが失ってしまったもの。そんなトレンドの中で、FRでNAエンジンと四肢を駆使する楽しさを大切にするトヨタ86&スバルBRZやマツダロードスターには、心底敬意を表したいと思います。

今回は高速走行が多く、421km走ってハイオクガソリン指定の燃費は12.1km/l。昭和のクルマの遠乗り燃費は、これくらいが相場でした。レンタカー代は9時間で約1万円でしたが、パンダトレノに何を求めるかによって、評価が別れるかな?

レンタカーだからといって純粋に走りの性能を求めるには、さすがに昭和58年デビューの車種には酷というもの。旧車をレンタカーで借りる際は、事前に店舗へコンディションを確認した方が良いでしょう。

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個人的には今回レンタルして、①昭和の青春時代に浸りたい ②エンジンをブン回して走り回りたい ③ワインディングでヒール&トゥを決めたい ④重ステ&半クラが醸し出す昭和のロマンとやらを感じたい ⑤頭文字Dワールドでリア充したい等々と思う方々にオススメしたいですネ。

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筆者はパンダトレノをドライブして、昭和の青春カーライフをこんなに濃厚に再現してくれるクルマは他にないと実感した次第です。

(星崎 俊浩)

【関連記事】

パンダ・トレノに見る、「昭和のクルマ」の6つの特徴とは!?(その1)【等身大インプレ】
http://clicccar.com/2016/12/21/427485/

パンダ・トレノで高速を走りながら、昭和のクルマ好き男子はモテたことを思い出した!(その2)【等身大インプレ】
http://clicccar.com/2016/12/24/427487/

【関連リンク】

第23弾 新型カローラ&スプリンターのすべて(電子版)
http://3a.as-books.jp/books/info.php?no=NMS19830627

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マツダ・デミオの内装は「大人の上質さ」がテーマ

2016年10月に商品改良を受けたマツダ・デミオ。内装も基本的な造形は同じですが、質感やメーター類の視認性向上が図られています。

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まず、機能、表示系からご紹介すると、ヘッドアップディスプレイの「アクティブ・ドライビング・ディスプレイ」の表示画面を変更。

上部に走行環境情報、下部に車両情報と分けることで、一瞬で情報が把握しやすくなっています。さらに、一部グレードをのぞき、フルカラー(高輝度、高精細、高コントラスト)化することで視認性を向上。インパネではヘッドアップディスプレイの違いが新旧との違いで最も分かりやすい点になっています。

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また、メーターも表示の字体を見直し、高コントラスト化することで読みやすさを質感を向上。

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操作系では、新型ステアリングを採用。ステアリングの全周で一貫した握り心地を実現するのが狙いとのこと。最近流行している上下のリムを水平にカットする、玩具のような形状にしていないのは、さすが走りにこだわるマツダ。実際に大きな舵角を与えたでも路面からのインフォメーションを正確に把握することができます。

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内装にはデザイン変更はありませんが、コーディネイトを「大人」を感じさせる色使い、仕立てに変更しています。

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上の写真は「L Package」の「ピュアホワイトレザー」。白黒ツートンだったシートを背面まで白一色で統一させ、さらに色味もピュアホワイトを採用しています。印象的な赤も細身の仕立てと、左右に配置された4本のステッチで立体感を強調。また、ショルダー部に黒のアクセントを加えることで全体を引き締める効果も狙っているそう。

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また、「13S Touring L Package」、「XD Touring Package」には黒内装を設定し、ブラックに深みのあるディープレッドのコーディネイト、スエード調人工皮革でセーレン製の「グランリュクス」が採用されています。

モノトーンでまとめられているのが「13S Touring」、「XD Touring」で、クールな印象を受ける内装が特徴。「13S」、「XD」はブラック基調で、インパネ、コンソール、ドアに千鳥格子パターンのパネルを採用することにより、深みと遊び心を与えたとしています。

(文/塚田勝弘 写真/塚田勝弘、マツダ)

ニスモのブランドネームが付けられた「ノートe-POWER NISMO」は速くて快適!

ノートe-POWERのカスタマイズドモデル「ノートe-POWER・ニスモ」は、内外装をドレスアップしたうえで、エンジンや足まわりなどをチューニングしたモデル。ニスモの名が付くが、開発はオーテックジャパンが担当した。

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エクステリアでは、ほかのニスモ仕様と同様の赤いアクセントを使ったエアロパーツが目をひく。エクステリアでおもしろいのは、グリルには電動モデルを象徴する青のアクセントがあるなかで、各所に赤のアクセントを入れたこと。静と動が共存しているような印象を与えてくれる。

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インテリアで好感度が持てたのはステアリング。2時〜4時、8時〜10時の部分にアルカンターラを使っていてグリップ感がいい。また、ステアリング操作に慣れていないドライバーは、間違った位置を握ってしまったときに気づくという効果もある。

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モーター出力はノーマルモデルと同一ながら、少ないアクセル踏み込み量で速度が上がるセッティングとしたことで発進加速が鋭くなり、スポーティな加速フィールを獲得している。

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サスペンションはフロント・ショックの減衰力アップとスタビのバネレートアップ。リヤはスプリングのバネレートアップとショックの減衰力アップを行い、さらにフロントキャンバー角のネガティブ化を行った。

タイヤも185/70R14→195/55R16に変更。キャンバーのネガティブ化によって、直進安定性が向上、タイヤのセルフアライニングトルクが増し、剛性感も向上している。

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また、ボディ剛性を向上するパーツを取り付けたことで、乗り心地や静粛性もアップ。比較試乗としてメダリストに乗ったのだが、メダリストよりもいい。メダリストは標準のノートe-POWERよりも静粛性を向上しているのに、その上を行くのだから大したもの。

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実は走りに影響する部分は同じくオーテックジャパン扱いのモードプレミアも同一。ニスモの走りは欲しいけど、ラグジュアリーな内外装がいいという方は、モードプレミアを選ぶというのもひとつの方向性だ。

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(文/諸星陽一 写真/小林和久)

大きく手を入れる必要のない完成度。新型デミオの外観デザインはどう変わった?

クルマのエクステリアデザインと、良好な視界を両立するのは容易ではありません。ミニバンのように視界の良さが商品性を左右するひとつのポイントであれば、ウインドウスクリーンの大きなモデルは成り立ちます。

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マツダ・デミオは国産コンパクトカーの中でもデザイン性の高さに定評があり、CX-3ほどではないにしても「デザインに惚れて買った」という人もいるかもしれません。個人的には、スマートかつ存在感のあるリヤビューが見どころのような気がしています。

一方でデザインとのトレードオフで、斜め後方の視界があまり良くありません。確かにあれだけベルトラインを右肩上がりの線として、テールウインドウの天地高も抑制したとなると必然といえる結果かもしれません。

気になる方は試乗車などで後方視界の確認、ディーラーオプションのリヤビューカメラなどを検討する手もありそうです。

さて、2016年11月から販売されている大幅改良後モデルのデミオは、好評なスタイリングもあって最小限になっています。

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ディーゼル車のフロントグリルガーニッシュに、グレーメタリックが新たに採用(XD、XD Touring、XD Touring L Package、特別仕様車Tailored Brown)されたほか、ガソリン車の上級仕様(13S、13S Touring、13S Touring L Package、特別仕様車Tailored Brown)にピアノブラックを新たに採用。

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さらに、アダプティブLEDヘッドライト(ALH)装着車のLEDヘッドランプに、ハイ/ロービーム兼用の単眼ユニットが搭載され、すっきりとした目つきに変わっています。

サイドでは、ドアミラーのターンランプをミラー前方に回り込むように設計し、右左折時の非視認性を向上。また、シャークフィンアンテナを設定。

アルミホイールのデザインは従来と変わっていませんが、16インチアルミホイールはよりニュートラルな色合いとしたガンメタリック塗装(XD Touringに標準、15MBにメーカーオプション)になっています。

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また、革内装との組み合わされる15インチ、16インチのアルミホイールは、グレーメタリック塗装(上の写真)が新たに採用されています。

p1j13322sボディカラーでは、特別塗装色の「マシーングレープレミアムメタリック」の設定をはじめ、デミオ専用開発となる新色「ディープクリムゾンマイカ」、下の写真の「ソウルレッドプレミアムメタリック」など全11色を展開。

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さらに、クロームメッキベゼル加飾が施されたLEDフォグランプを「XD Touring」、「XD Touring L Package」に標準装備されています。

(文/塚田勝弘 写真/塚田勝弘、マツダ)

パンダ・トレノで高速を走りながら、昭和のクルマ好き男子はモテたことを思い出した!(その2)【等身大インプレ】

■重ステとクラッチ操作を感じさせないクルマ好き男子はモテた!?

街中でパンダトレノの重ステとクラッチを操作しながら「やっぱり、パンダトレノといえば頭文字D。頭文字Dと言えば秋名でしょう!」と思い定めました。当日は天候にも恵まれたので、外環道から関越道に入って、頭文字Dの聖地・群馬県の榛名山へ向かうことにしました。

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外環道を走りながら、パンダトレノが登場した昭和50年代のクルマ事情を思い出しました。

オイルショックと環境破壊が社会問題となる中、日本車は昭和50年代前半の排ガス規制対策を最優先した結果、軒並み性能ダウン。エンジンは回らないしパワーも出ない状態で、高性能エンジンも廃盤に追い込まれていきました。クルマのデザインも鈍重で、クルマ好きには暗黒の時代のようでしたヨ。

そしてようやく昭和56年、その名のとおりソアラが太陽のように登場し、暗黒の時代に終止符を打ちました。「第1弾ソアラのすべて」は、こんな時代背景の中で出版されたのですネ。その後新世代の日本車が続々と登場し、昭和58年にAE86が若者の喝采を浴びて登場したのです。

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そういえば昭和の頃は、クルマは男子が運転するもので、運転の上手い男子がカッコいいと言われていたことを思い出しました。平成世代の方々には信じられないと思いますが、ホントにそうだったんですヨ。

特に女子からは、坂道発進やバック駐車等をさりげなく決める仕草が神って見えたでしょうし、当時良いクルマを颯爽と乗りこなす男子は、確かにもてる確率が高かったデス。

もっとも、当時エアコンなしのオンボロ軽をこよなく愛していた貧乏学生の筆者は、その恩恵に預かることができませんでしたが……

■チューンを受けた名機4A-Gは、純正以上の性能を発揮!

ひとしきり昭和のロマンに浸った後、あらためてクルマのコンディションをチェックしてみましょう。AE86は既に30年近く経過しているため、レンタカーのパンダトレノも間近に見ると、内外装ともに相応にくたびれているのは仕方のないところ。

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ただエンジンの4A-Gは、レンタカー店の説明によるとチューンを受けており、AE101の腰下を使って圧縮比をアップするとともに、軽量コンロッドやピストンを組んでトルクを厚くしているとのこと。

それでも現在の水準でいえば排気量相応のパワー感ではありますが、淀みなくレッドゾーンまで回るのが4A-Gらしいところです。

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ボディは前後タワーバーで固め、足回りも硬めのダウンサスを装着していました。嬉しいことにボディ剛性は経年劣化に負けておらず、高速巡航や追い越しでも直進性が高いのは立派。クラッチジャダーや駆動系の振動等もなく、エンジンと駆動系のメカはとてもしっかりしていました。

■アクセル全開で4A-Gを7000回転でシフトアップ!

ボディやパワーユニットがしっかりしている一方で、ブッシュやマウント等のゴム類は経年劣化でへたっているせいか、高速巡航では常に微振動を感じます。また固い足回りのせいで、段差等でクルマがバンバン跳ねました。筆者は腰痛持ちなのですが、このクルマにはシートにレカロが入っていたので、大いに助かりました。

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関越道の料金所を抜けて、アクセルを思い切り踏み込んで全開ダッシュをかけると、エンジン回転にパワーと加速がリニアについてきます。燃費とか気にしないで、遠慮なくレッドゾーン手前まで回しながら、シフトアップを繰り返していくのが昭和の流儀。今回は7000回転まで回しましたが、やはりアクセル全開でシフトアップを重ねていくNAエンジンは、人もクルマも一生懸命で、本能的に楽しいですネ。

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またこのクルマはギア比も弄ってあるようで、5速100km/hで3700回転も回っていました。おかげで関越道では、追い越しでもシフトダウンして、高回転型までブン回す走りを堪能することができた次第です。

その3では、榛名山ワインディング編に続きます。

(星崎 俊浩)【関連記事】

パンダ・トレノに見る、「昭和のクルマ」の6つの特徴とは!?(その1)【等身大インプレ】
http://clicccar.com/2016/12/21/427485/

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第23弾 新型カローラ&スプリンターのすべて(電子版)
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新型プリウスPHVの「EVモード」は一度経験するとやみつきになる楽しさ!

トヨタ自動車が12月17日(土)、千葉県の袖ヶ浦フォレスト・レースウェイで、来年2月中旬発売予定とされる「新型プリウスPHV 先行特別試乗会」を開催しました。

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同試乗会には約3,800名の応募があったそうで、抽選で選ばれた48組の幸運な参加者がサーキットに集合。インストラクターから事前に試乗に関する説明を受けた後、ズラリと用意された試乗車に向かいます。

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各試乗車にはそれぞれインストラクターが付いており、車両の操作方法やサーキットコースのライン取り、走行速度等に関するアドバイスを受けながら、参加者自身がステアリングを握り、同車の走りを確認します。

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今回の試乗会では日産のEV「リーフ」が参考車両として用意され、同車と乗り比べる形がとられました。

と言うのも、今回のプリウスPHVは駆動用バッテリーの搭載量が増え、モーターによる航続距離が拡大されたことで、よりEVに近付いていることが背景にあるようです。

まず1周目は、高負荷時にエンジンを併用する「HVモード」で走行。続いて2周目はエンジンや減速時の回生エネルギーで充電しながら走行する「チャージモード」、3・4周目はモーターのみで走行する「EVモード」と、周回ごとに順次走行モードを切替え、フィーリングの違いを体感します。

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ちなみに筆者が最も印象に残ったのは、新型のウリでもある「EVモード」でした。

カタログ値で60km以上(現行モデルは26.4km)のEV走行が可能で、エンジンを使わずにモーターのみで走行出来るというのが謳い文句ですが、それよりも驚いたのは発進時や巡航状態からの加速性能が予想を上回っていたこと。

アクセルを踏んだ瞬間から高トルクが発生するモーター車特有の加速感は実に痛快で、アクセルの踏み込み量に合わせてリニアにクルマが反応します。

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ガソリン車やHVに乗り慣れた人でも、長く力強く続く加速感に驚かされるのではないでしょうか。 実際、それだけの実力を有しています。

また「EVモード」では、アクセルを全開にした際もエンジンがかかることが無く、ジェネレーター(発電機)を活用した「デュアルモータードライブ」システムにより、トルクフルで胸のすく加速感が得られます。

サーキット走行における高速コーナリングや、パイロン・スラロームにおいても、車両姿勢が安定しており、「TNGA」開発で造り込まれたプラットフォームの素性の良さを窺がわせます。

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駆動用バッテリーを車両後部に搭載することで、前後の荷重バランスがとれているからか、ブレーキング時のノーズダイブが穏やかで前のめりにならず、全体に沈み込むようなイメージでした。

そして最終5周目は、助手席でインストラクターのドライブによる結構攻めた走りを体感しましたが、エコタイヤにもかかわらず、ほとんどスキール音が発生する場面はありませんでした。それが何よりも、新型「プリウスPHV」のポテンシャルを物語っているかもしれません。

低重心とダブルウィッシュボーン式リヤサスペンションに裏付けられた新型「プリウスPHV」の走りは一度経験するとやみつきになりそうです。

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新型トヨタプリウスPHV
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新型マツダ・デミオはついに「キビキビした走り」を超越!?

現行マツダ・デミオの成功はデザイン、ディーゼルの存在、ハンドリングなどの走りにあることは間違いないでしょう。

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走り関係でどうしても気になるのは、後方視界がやや狭い(デザイン優先)というくらいで、細部を見ていくとディーゼルエンジン車の音・振動面も気になりましたが、すでに手当てされていて躊躇なくディーゼルも選べる状態になっています。

新型デミオでは、ハンドリング、乗り心地の改善も図られています。

前後ダンパーおよびブッシュの仕様変更に加えて、「やや軽い」と指摘されていた電動パワステ(EPS)の特性を最適化したそうです。EPSに関しては、すぐに手応えが増し、よりリニアになったのが街中から首都高速までシーンを問わず感じることができます。

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実施されたメニューは、フロントダンパーの減衰力特性、フロントスタビライザーマウントブッシュの仕様、EPSの制御特性、フロントロアアームブッシュ(リヤ側)の仕様、リヤダンパーの減衰力特性、トーションビームアクスルブッシュの侵入角を変更。

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フロントブッシュを柔らかくすることで、旋回初期にスタビが効果を発揮する前にブッシュが変形。フロントサスペンションの動きがリニアになり、ロールがスムーズに立ち上がるそうです。

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確かに、多様なコーナーが多い首都高速でもシーンを問わず、ロールの出方が自然で唐突感がなく、改良前よりも乗りやすくなっているのは明らか。G-ベクタリング・コントロールによる効果もあるのでしょう。荷重移動を意識しなくてもスムーズに曲がれるのは、新型デミオの動的質感向上にも大きく寄与しています。

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さらに、コーナーを曲がっていって荷重が大きくなると、ブッシュの変形が終わってスタビの効果によりロールを制御。

新構造のブッシュにより、スムーズなストローク、初期応答性を得ているデミオ。「キビキビした走り」からよりナチュラルで上質なハンドリングを得ていますから、シーンを問わず疲れにくく、運転がより楽に楽しくなっているのは間違いありません。

(文/写真 塚田勝弘)【関連記事】

より静かに上質になったマツダ・デミオは国産コンパクトカーでナンバー1の完成度!?http://clicccar.com/2016/12/22/429034/

パンダ・トレノに見る、「昭和のクルマ」の6つの特徴とは!?(その1)【等身大インプレ】

等身大インプレの第4弾は、AE86こと、ハチロクこと、パンダトレノこと、スプリンタートレノです。

東京近郊にあるスポーツカー専門のレンタカー店にあり、以前から気になっていました。レンタカーを借りた当日は、懐かしさのあまり昭和のカーライフがよみがえってきました。

そこで最初に、昭和のクルマが持っている6つの特徴を紹介したいと思います。まずは内装にある2つの特徴から見てみましょう。

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・手動開閉のウィンドウ

ドアを開けて乗り込んで思い出したのが、窓の開閉がくるくる回す手動式であること。この頃大変だったのは、有料道路の料金所での支払いでした。お金の用意と窓を開ける動作を同時にやらなくてはいけませんから、結構面倒でした。

今はほとんどのクルマにパワーウィンドウが装備されていますし、なによりETCが普及しましたから、こういう面倒から解放されましたネ。

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・ドアロックも手動

ドアといえば、ドアロックも手動でした。昭和の頃はほとんどのクルマで、運転席も助手席もドアロックが手動式なので、人を乗せる時には助手席まで体を伸ばして、ドアロックを解除したものです。

デートで迎えに行った時、シートベルトを装着したままでやると、体が引っ掛かったりしてカッコ悪かった〜っ。

・ロッド式のアンテナ

また懐かしいのが、ラジオのアンテナです。当時は、運転席側のAピラー付近に備え付けられており、窓を開けて外に手を伸ばしてアンテナをにょきにょきと伸ばしていました。

アンテナを伸ばしたまま駐車していると、悪戯で折られたりして腹を立てたものでした。

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・スポーティイメージの象徴だったリトラクタブルヘッドライト

当時のクルマで最も特徴的なのが、リトラクタブルヘッドライトでしょう。AE86でも、固定式ライトのレビンに対して、トレノはリトラクタブルヘッドライトで個性を主張していました。

あの頃は各メーカーとも、スポーティなクルマでは軒並み採用していました。ホンダに至っては、セダンのアコードまでリトラクタブルでしたヨ。

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ライトをつけるとヘッドライトが立ち上がり、精悍なフロントマスクがカエルのようなファニーフェイスになるギャップが魅力的でした。運転席から立ち上がったライトユニットが見えるので、車両感覚も掴みやすいですネ。

ただリトラクタブルヘッドライトは、人身事故での傷害が大きいことや海外での常時点灯の規制等のために、惜しまれつつも絶滅してしまいました。

・坂道アシスト機能のないミッション

操作面では「坂道発進」も特徴的でした。AT車にはクリープ現象が、また最近のCVTやMTには坂道で滑り落ちないアシスト機能がついているので安心です。

しかしアシスト機能のない当時のMTでは、サイドブレーキと半クラッチとアクセルの3操作を駆使して、坂道にとどまりながら発進していました。「坂道発進」は、当時の女性が一番恐れていましたよネ。

筆者も免許取立ての頃、先輩から「坂道発進がスムーズにできたら一人前」なんて冷やかされたものでした。

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・「重ステ」って知ってる?

最後の特徴が「重ステ」です。最近のクルマではほとんど見られなくなった、パワーアシストのないステアリング、つまりパワーステアリング「ではない」ハンドルのことです。

パンダトレノのステアリングは、微速時には壊れてるかと思うくらい重かったのでビックリしました。特に、駐車場にバックで停める操作は、次の連続アクションになるので結構大変でした。

①半身で後ろを向きながら、②片手で重ステをすえきりしながら、③左足で半クラッチを操作しながら、④右足でアクセルを小さく煽りながら、⑤バックミラーとサイドミラーを確認しながら駐車場におさめる訳です。特に②③④の連係動作は、当時の女性にとって罰ゲームと思えるくらい辛い行為だったとあらためて実感しました。

その2では、関越の高速巡行編に続きます。

(星崎 俊浩)【関連リンク】

第23弾 新型カローラ&スプリンターのすべて(電子版)
http://3a.as-books.jp/books/info.php?no=NMS19830627

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より静かに上質になったマツダ・デミオは国産コンパクトカーでナンバー1の完成度!?

マツダ・デミオが商品改良を受け、11月17日から販売が開始されています。

内・外装の高いクオリティ、動的質感といわれる走りの面で、C/Dセグメントと同じ考え方を適用するというのがデミオ、そしてCX-3に共通するコンセプトになります。

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今回試乗したのは、1.3Lのガソリンエンジンモデル。現行デミオを牽引したのは確かにディーゼルモデルかもしれません。しかし、ガソリン仕様の仕上がりも非常に高く、街中のちょい乗り中心であれば、イニシャルコストを考慮しても積極的に選びたくなります。

同じガソリンエンジン車で改良前、改良後モデルを乗り比べて驚いたのは、車格が1ランク上に感じられるほど静かになったこと。

「ナチュラル・サウンド・周波数コントロール」など、ディーゼルエンジンの改良点に注目が集まりがちですが、今回のデミオの改良点は、エンジンと車両後方からの高周波ノイズの低減が大きなテーマのひとつ。

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エンジンの高周波音対策として、ボンネットインシュレーター、エンジンルームのインジケーター、ダッシュインシュレーターに吸音材が追加されています。さらに、ガソリンエンジン仕様には、2015年にディーゼル車に採用されたフロントの遮音ガラスも用意。

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また、ハッチバックはリヤにバルクヘッドを持たないため、後方から高周波のノイズが侵入しやすいですが、リフトゲームトリムとトランクサイドトリムに吸音材を追加。さらに、リヤパッケージトレイやFF車にはスペアタイヤパンに制振材も新たに設定されるといった入念な対策が施されています。

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新旧デミオを乗り比べるまでは、正直旧型でも十分では? と思っていました。しかし、同じコースで試乗すると、静粛性の高さやより自然なハンドリングなどにより、新型は明らかに洗練され、上質になっています。

さらに、新型デミオはドアの閉まり音にもこだわり、リヤドアを閉めた際の音のしっかり感を強調するなど、細部にまで徹底されています。

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ガソリン車のみ、また同条件下で乗り比べたわけではない、という多くの前提付きではあるものの、静粛性の高さは国産のライバルだけでなく、輸入Bセグメントを含めてもデミオが頭ひとつ抜きんでていると言えるのはでないでしょうか。

(文/写真 塚田勝弘)

ダイハツ・トール、トヨタ・ルーミー/タンクに搭載される新開発1.0L直列3気筒ターボの実力は?

ダイハツ・トール、トヨタ・ルーミー/タンク、そしてスバル・ジャスティの走行性能で注目なのが、新開発された1.0Lの直列3気筒DOHCターボでしょう。

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売り文句は、1.5Lクラスの最大トルク140Nm(最高出力は98ps/6000rpm)を2400-4000rpmという幅広い回転域で発揮する点。なお、JC08モード燃費は、21.8km/Lとなっています。

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NAエンジンも1.0Lの直列3気筒DOHCが搭載されています。こちらは最高出力69ps/6000rpm、最大トルク92Nm/4400rpmというエンジンスペックで、カタログ燃費は24.6km/LとNAエンジンの方が2.8km/Lよくなっています。組み合わされるトランスミッションは全車CVTで、4WDモデルはNAエンジンのみ。

注目の「1KR-VET」型の1.0Lターボは、低イナーシャターボ、カムタイミング・作用角最適化で高出力化が果たされているほか、高熱負荷対応として、エキマニフランジやブロックボアの冷却強化などが盛り込まれているそう。また、高乱流エネルギー変換、浅皿ピストンの採用などで燃費対策が施されています。

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CVTも専用チューン済みで、最終減速比のローギヤード化により軽快な加速フィールを引き出しているほか、電子制御スロットルの制御を見直すことで力強い走りが必要なシーンに対応したとしています。

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確かにターボモデルは、過給ラグも比較的抑えられていて、中・低速域の力強さを感じさせます。ただ「平坦な街中で2人乗車」という条件下であればNAエンジンでも流れに乗るのはそれほど難しくありません。

軽自動車よりも重いといっても車両重量は1.1t程度なので、1.0L NAエンジンでもこうしたシーンでは力不足と断ずる状況には遭遇しませんでした。

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しかし、流れが速い郊外路や高速道路を走ったり、勾配の多い地域に住んでいるのならターボの過給は心強いはずで、4人乗車が多かったり、荷物をたくさん乗せて遠出するのであれば、2.8km/Lのカタログ燃費の差に目をつぶっても選ぶ価値は高そう。

また、同じような速度フィールを引き出すにしても、過給が始まればアクセルもNAエンジンほど強く踏み続ける必要もなく、運転の仕方によってはカタログ燃費の差も縮まる可能性があります。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

BRZ GTが証明した、高い走行性能と乗り心地の良さの両立【BRZ GT試乗】

2016年7月にデビューして以来、初めて大幅な改良を行ったスバルBRZ。数あるトピックスの中で最も注目されたのは、最上級グレードGTの追加でしょう。

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GTはBRZの進化の象徴として走りのパフォーマンスと上質感を追求し、ZF製のザックスダンパーやブレンボ製ブレーキ、そして専用アルミホイールを装備することで、操縦安定性を向上させています。

発売開始は11月7日、今回機会を得て試乗することができました。

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BRZ GTのエクステリアには、スーパーブラックハイラスター塗装された専用デザインの17インチアルミホイールをはじめ、フロント4ポッド、リア2ポッドのブレンボ製ブレーキシステム。そしてフローティングタイプのアルミ製リアスポイラーが標準装備されます。

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インテリアには、メイン部分のアルカンターラにBRZのロゴをあしらい、質感の高さとスポーティさを表現したアルカンターラ/本革のコンビシートが標準装備されています。

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GTという名称から硬めの足回りを想像していましたが、試乗のため公道に出ようと駐車場の段差を乗り越えた時の入力が小さく、そして収束が速いことに早速驚かされました。

荒れた路面を走行しても前後方向のピッチングは抑えられていますので、乗り心地も良いです。特にリアからの入力を抑えてくれるので、安心してアクセルを踏み込むことができます。

走り出して間もないブレーキが冷えた状態では独特の感覚があるブレンボ製のブレーキですが、走り出してしまえば、踏みはじめからグッとブレーキが利くので、スピードのコントロールが非常にしやすいです。

タイトなコーナーの進入でブレーキを遅らせても、グッと効いてスピードは落ちますし、姿勢も乱れないので素早くアクセルを踏み込むことができます。

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ザックスのダンパーを装着した足回りはしなやかさが増したことで、路面からの入力を抑えつつ路面追従性を高めているので乗り心地の良さとコントロール性が高まっています。Sグレードと乗り比べてみるとGTは無駄な動きが少なく、ドライバーの意のままに動かすことができます。

ザックスのダンパーやブレンボ製のブレーキなどを装着して走りの質感を高めた結果、優れた乗り心地と高い操縦安定性を両立したのがGTグレードといえます。

価格は6MTが331万5600円、6AT車が337万5000円で、充実した装備を考えると割安に感じます。なお、7月7日より予約を受け付けていた100台限定のBRZ GTイエローエディションはすでに完売とのこと。こちらは、コレクターズアイテムの1台となりそうです。

(文・萩原文博、撮影・小林和久)

アクセラ・ディーゼルターボは、爽快なハンドリングマシンだ!(その3)【等身大インプレ】

■最大トルクを活かした中速域での加速が魅力

もう一度、千葉から湾岸線を戻って首都高環状線に入ります。今度はマニュアルモードはやめて、ドライブモードのままで乗り入れたところ、前回とは全く違う特性が待っていました。

首都高環状線の流れに乗っている限り、ドライブモードでのエンジン回転は、1600〜2000回転強に終始します。これがじれったいと思いきや、とても快適なのですネ。低回転でも欲しい時に欲しいだけのトルクを発揮してくれるので、余裕で流れに乗っていけます。

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また走行ペースを上げても、ドライブモードでは2000〜3000回転位しか使いません。この時6ATは頻繁に自動変速を繰り返しており、この最大トルクを発揮する回転域をフルに使おうとしているのがよくわかります。しかも「これがさっきと同じクルマか?」と思うほど、加速が楽しいのです。コーナーを抜けてからの加速は力強いですし、追い抜きも期待以上でした。

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さらにディーゼルとは思えないほど、レスポンスに優れています。新技術の「DE精密過給制御」による緻密な燃料噴射が効いているのだと思います。1.5Lはさすがにアウトバーンでは物足りないでしょうが、日本の公道なら必要にして充分な性能だと実感。エンジンを回して最大出力に頼って走ろうとした午前の自分に反省しつつ、午後は最大トルクを活かした走りを大いに楽しみました。

■ええい、マツダのGベクタリングは化物か!?

またエンジン回転が低いと、ハンドリングの素性もよくわかります。街中と高速巡行で体験した直進安定性に加えて、コーナーリング性能も見極めるべく、ステアリングを握り直しました。

コーナーが連続する首都高環状線で、アクセラはステアリングを切った分だけ綺麗に旋回していきます。ハンドリングに、FF車の鼻先を引っ張られるような雑味が感じられないのです。

なにより凄いのは、ステアリングの舵角が嘘のように一発で決まることでした。首都高環状線で、切り増しや切り戻しがこんなに少なくて済むクルマは、他に体験したことがありません。「ええい、マツダのGベクタリングは化物か!」と本当に思いました。

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アクセラは、ドイツ車のようにボディ剛性が高く、逞しい足回りとしなやかな乗り心地とを備えています。これにレスポンスに優れたダウンサイジングディーゼルターボと荷重制御のGベクタリングが加わるのですから、まさに鬼に金棒!「ディーゼルなのに爽快なハンドリングマシン」という、いかにもディーゼルにネガティブな印象を持つ昭和のおっさん(筆者です)らしい感想を抱いた次第です。

■カタログ値に肉薄する実燃費と安い軽油代にビックリ

今回の試乗は、街中と千葉往復、そして首都高環状線の周回で約250kmを走りました。

実燃費は、カタログ値の21.6km/lに対して驚きの19.1km/l。軽油が91円/lでしたから、燃料代は約1200円で済みました。当日はレギュラーガソリンが115円/lでしたから、ハイブリッド車が24km/lで走ったのと同じ燃料代になることを意味しています。

アクセラでは、2000ccのガソリン仕様がカタログから外れましたが、あらためてダウンサイジングディーゼルターボのトルクに乗った走りとハイブリッドに匹敵する経済性に納得した次第です!

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今回の試乗で感じたのは、エコカーとして比較されるハイブリッドとは特性が全く異なることでした。ハイブリッドの強みは、静粛性と渋滞での燃費が良いことで街中向き。ちなみにアクセラには、トヨタ由来のハイブリッドもラインナップされています。

一方ディーゼルターボの強みは、低回転での力強い走りと遠乗り燃費でロングドライブ向き。ガソリン車とも特性が違いますから、本当に眼から鱗の試乗体験となりました。

またアクセラは、1.5Lと2.2Lのディーゼルターボをラインアップしています。今回試乗した1.5Lは、公道での性能には充分余裕がありますし経済性も抜群。またエンジンが軽い分、ハンドリングでも爽快な走りを楽しめます。まさに日本のために開発した仕様といっても過言ではないと実感しました。

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アクセラの1.5Lディーゼルターボは、国産ガソリン車の物差しでは測りきれない多くの特性を備えていました。残念なのはこれらの特性は、実際に様々なシーンを運転してみないと分からないこと。特にディーラーの回りを一周する試乗だけではわからない良さがたくさんありますから、是非関東マツダのキャンペーンのような機会があったら、ロングドライブをおすすめします。

(星崎 俊浩)

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ダイハツ・トール、トヨタ・ルーミー/タンクの軽自動車に対する利点とは?

車名の「トール」、「ルーミー」からして室内が高くて広そうですし、「タンク」もいかにも力強さを感じさせるネーミングといえそうです。

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なお、ダイハツ・トール(THOR)は、「力強く頼りがいのある相棒」という意味がある北欧神話の雷神であるThor(トール)、そして背が高い「TALL」から命名されたそう。

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トヨタ・ルーミーは、「広々した」という意味の「ROOMY」から、タンクは、水槽やタンクを意味する「TANK」からで、多くの荷物を積み込める空間をイメージさせることから命名されています。

ダイハツ・トール、トヨタ・ルーミー/タンク、スバル・ジャスティは、全長3715×全幅1670×全高1735mm(カスタム)というスリーサイズ。1335mmという室内高で、子どもなら立てるほど高い空間が広がっています。

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前後席ともに見上げるほど高い天井により開放感は抜群で、後席の足元も広々。前席を最も後まで下げても、後席も一番後までスライドさせれば足を組めるほど広く、逆に後席のスライド位置を前寄りにしても前席下に足が入りますから窮屈感は抱かせません。

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床下格納式の後席は、座面と背もたれの厚みがやや薄く、座面自体も水平で後継角(トルソー角)が小さいため、シートアレンジ優先のように感じさせます。

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一方の前席は、この全幅で前後ウォークスルーを実現していますから、シートの横幅に限界があるのでしょう。やや小ぶりなので、体型によっては窮屈というかシートの小ささを実感させられるかもしれません。

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最近の軽自動車が大きくなっているいま、こうしたリッターカークラスのハイト系2BOXは、維持費の面も含めて軽自動車とも競合するでしょう。

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それでもダイハツ・トール、トヨタ・ルーミー/タンク、スズキ・ソリオなどの強みは、軽自動車よりも前後、横方向に広いく、前席左右間だけでなく、前後席間のウォークスルーができる点などにあります。ほかにも、乗車定員や排気量の余裕(エンジンパワーとトルク)からもファーストカー向きといえます。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

ダイハツ・トール、トヨタ・ルーミー/タンクの後席と荷室の実用性は?

両側スライドドアに、背高系のミニバン的なスタイル。ウォースルーが可能な2列シートをコンパクトなボディサイズにパッケージする──

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初代ラウムもこんなコンセプトでした。ただし、背高系ではなくセミトールといえる全高(1535〜1590mm)で、両側スライドドアやコラムシフトにより左右、前後ウォークスルーも可能。私事ですが親が乗っていたこともあり、その利便性の高さ(スライドドアのアウタードアハンドルが重く、スライドさせるのが大変でしたが)を実感したことがあります。

さて、現役のモデルでコンセプトをもつ背高系コンパクト(2列車)といえばスズキ・ソリオ。そこに対抗馬としてぶつけてきたのがダイハツ・トール、トヨタ・ルーミー/タンク、スバル・ジャスティ。

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ここでは肝心要の使い勝手についてご紹介します。

乗り降りは低床設計により「楽ちん」そのもので、フロアももちろんフラット。ミニバンのような乗降性になっています。後席にはチャイルドグリップ付きの乗降用アシストグリップもあり、小さな子どもからお年寄りまで楽に乗り降りできるように配慮されています。

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低床設計なのはキャビン側だけでなく、荷室側も下から大きく開く大開口部を備えていて、まるでダイハツ・ウェイクやホンダN-BOX+のような低さ。「軽自動車で培った技術をコンパクトカーにも投入する」とアナウンスしているとおり、ノウハウが活かされています。

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後席は床下に2段階で格納する方式。前席を一番後まで下げていると干渉してしまうため、その場合は前席を少し前にスライドさせておきます。

後席の背もたれを前に倒し、座面横下にあるストラップを引いてロックを解除させ、背もたれ座面にあるストラップを持ちながら床下に引き下げます。

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この床下格納式の長所は、低い位置にフラットに格納できる点で、低床設計により自転車なども容易に積載可能。防汚デッキボードを反転させれば、タイヤに泥が付いた自転車なども積みやすく、アウトドア派なども重宝しそうです。

一方の欠点は、シートのロックを解除するストラップがシート横にしかないため、荷室側からは後席を倒せないのと、シングルフォールドダウン式よりも二度手間になる点でしょう。

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シートを起こす際もシンプルに前倒しする方式よりも手間も力も多少かかります。もちろん、後席の背もたれを前倒しするだけでも荷室を拡大できますが、その際は写真のように段差が残ってしまいます。荷物が自転車のように「大きい」のではなく、「多い」というだけならこちらで対応できるので、わざわざ格納しない人もいそうです。

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ライバルのスズキ・ソリオ(上の写真)は、後席バックレストの上部に前倒し用(リクライニング用)とスライド用のレバーが付いていますから、荷室側からもスライドドア側からも倒すことができます。イージーに操作できるのはソリオの方で、自転車などの大物を積まないのであればこちらの方が使いやすいでしょう。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

1.5Lディーゼルターボの最高出力を活かしたアクセラの走りに何が!?(その2)【等身大インプレ】

■首都高環状線で最高出力を引き出すも、走りは不発でした

街中でGベクトリングの直進安定性を実感してから、中速のワインディング走行が試せる首都高環状線に入りました。料金所に向かって急な勾配の急カーブを上がっていくと、力強いトルクと滑るようなハンドリングに好感。期待が大いに高まります。

早速シフトをマニュアルモードに切り替え、パドルシフトを手元で操作して最高出力を活かした走りを試みたのですが、そこには予想外の事態が待っていました。

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エンジンは、ディーゼルとは思えないほど軽やかに回ります。さすがは、マツダ独創の低圧縮比を採用したスカイアクティブディーゼル! そこで最高出力を活かすべく、4000回転を越える位まで回してシフトアップしてみました。

ところが、クルマが期待ほど加速してくれません。エンジン回転と音の高まりほど、パワーがついてこないのです。

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またコーナー手前でパドルシフトでシフトダウンすると、今度はエンジンブレーキが効きません。ダウンサイジングターボは、エンジン排気量が小さいため、抵抗も小さいのです。

更にコーナーを抜けて、低いギアからアクセルを踏みこんでシフトアップしても、やはり勇ましい音をたてるわりには思うような加速が得られません。最高出力を活かすべく回転を上げてドライブしたのですが、全然面白味がなく正直しょんぼりしてしまいました。

■高速巡航でディーゼルターボの強みを実感

気を取り直して、ディーゼルターボが得意とする高速巡航を試そうと思い、シフトモードをドライブモードに切り替えて、首都高環状線から湾岸線、そして東関東自動車道へ乗り入れて千葉方面に向かいました。

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湾岸線に合流する際に流れに乗ろうと軽くアクセルを踏むと、グイッと押し出されるように加速して行きます。この時6速100km/hで、エンジンは2000回転を少し超えるくらいしか回っていません。エンジンを回してしょんぼりした直後だったので、低回転での力強い加速はちょっとしたカルチャーショックでした。

次に、前方車を抜こうと追い越し車線に入りながらアクセルを踏むと、2000回転前後をキープしながら力強く加速して、軽々と追い抜きをかけることができました。高速道路を巡航してようやく低回転トルクに乗った走りというか、欧州のアウトバーンで育まれたディーゼルターボの持ち味がわかってきました。

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1.5Lのディーゼルターボが最大トルク27.5kgmを1600〜2500回転で発揮することは、頭では分かっていました。でもエンジンは小排気量だし良く回るから、低回転だけでは物足りないと感じて最高出力を引き出そうとしたのですが、それが逆効果だったのです。

そもそも最高出力は105psなので、フルパワーでも大柄なアクセラのボディをグイッと引っ張り上げることはできません。それより小排気量の1.5Lでも27.5kgmの野太いトルクを発揮する低回転こそが美味しい走りの領域なのです。

しかもGベクタリングコントロールのおかげで直進安定性は抜群ですから、アクセラディーゼルターボは、ロングツーリングが得意中の得意ということをようやく実感することができたのです。

■リベンジ、首都高速環状線へ

続いて房総の海岸線と山坂道に向かおうと思いましたが、紅葉シーズン最後の土曜日でしかも晴天でしたから、道路はどこも行楽のクルマで混雑しています。渋滞での時間ロスや返却時間を勘案すると、房総を走った後にもう一度首都高環状線を走る時間はありません。

むしろ土日の午後1時〜4時の時間帯なら都心の首都高は比較的空いています。そこでリベンジではありませんが、首都高環状線に戻ってC1とC2を何度も周回して、ダウンサイジングディーゼルターボとGベクタリングで武装したアクセラの実力を掘り下げることにしました。

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ちなみに首都高環状線へ向かう東関道の高速巡行では、ダウンサイジングディーゼルターボが1600回転から発揮する粘り強い加速感と、Gベクタリングがもたらす車線変更での滑らかな走行安定性をしっかり味わうことができました。

その3では、首都高速リベンジ編に続きます。

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オープンにするだけで楽しさが倍増するイヴォーク・コンバーチブル

ルーフをオープンにできるSUVは、日本では発売されなかった日産ムラーノ・クロスコンバーチブルくらいでしょうか。ジープ・ラングラー(アンリミテッド)も脱着が可能で、私も撮影で数回外したことがありますが、こちらは大人2人、いや3人は欲しい大仕事になります。

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48km/h以下であれば21秒で開閉するイヴォーク・コンバーチブルのソフトトップ。やや時間はかかる印象ですが、4シーターで全長4385×全幅1900×全高1650mmというサイズを考えると十分に実用的といえます。

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運転席に収まってルーフを開けると、Aピラーが近くに感じますが、SUVらしくフロアが高いため見晴らしがよく、しかもセダンなどを見下ろすような視界で周囲から丸裸になったような気恥ずかしさもありません。

さらにウェストラインが高くバスタブに潜り込んだような着座感というのもあって、屋根を開けても思いのほかプライバシーが保たれるような気がします(もちろん、そのスタイリングとSUVの4座オープンという希少性から周囲の目を惹きますが)。

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240ps/340Nmの2.0L直列4気筒ターボと9ATの組み合わせは、首都高速の上り坂でも力強くてスムーズで、スペックに恥じない走りを披露してくれます。

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屋根を開けた状態でもサイドウインドウを上げた前席なら風の巻き込みも抑制され、開放感を味わいながらの走りは思わず笑ってしまうほど楽しいものがあります。

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屋根を閉めれば防音対策が施されたソフトトップにより、キャビンは十分に静か。快適な移動もこなしてくれそう。

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もちろん安全性にも配慮されていて、リヤクォーターパネルに展開式のロールオーバーバーを内蔵。こちらは2本のアルミ製バーが90ミリ秒で作動するもの。ほかにも、自動緊急ブレーキやレーンディパーチャーウォーニングなども設定されています。

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価格は765万円と安いとは言えない価格設定、さらに嗜好性もあって誰もが手を出せるモデルではないものの、悪路走破性も高く、「実用的で文句なく楽しいSUVは?」と聞かれると最初に名前が挙がる存在になりそうです。

(文/写真 塚田勝弘)

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アクセラ恐るべし!これがマツダのGベクタリングの威力なのか!?(その1)【等身大インプレ】

■正しい姿勢に矯正する2つのメーター

等身大インプレの第3弾は、マツダのアクセラスポーツです。

今夏、マイナーチェンジとともに追加された直4・1.5Lのダウンサイジングディーゼルターボと、エンジンのトルク制御で走行安定性を向上するGベクタリングコントロールをぜひ試したいと思い、関東マツダの一日試乗キャンペーンにエントリーしました。

試乗当日は、最上級グレードの15XD Lパッケージを借りることができました。

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まずは運転席に座り、ステアリングの内側にあるインパネのメーターとステアリングの上越しから見るアクティブ・ドライビング・ディスプレイの両方が見えるように、シートとステアリングの位置決めをします。すると、自然と理想的なシートポジションが取れるから不思議。これは見事な姿勢矯正法だと、感心した次第です。

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カーナビは工場作り付けの専用タイプで、手元のコマンダーコントロールで操作します。画面をタッチするために身を乗り出す必要はありませんし、操作手順が理詰めで整理されているので、とても使いやすく感じました。

ただしナビの性能は、標準レベルにとどまります。これしか選べないのですから、もっともっと頑張って欲しいところです。

■1.5Lでも静かで野太いトルクのディーゼルターボ

支度を整えてスタートボタンを押すと、105ps/27.5kgmを発揮する直4ディーゼルターボが始動を開始します。車外にいるとガソリン車よりも音や振動が目立ちますが、室内ではアイドリングが少し気になるくらいで、慣れてしまうとほとんど意識しなくなりました。

ピストンピンに仕込んだマツダ独創のナチュラル・サウンド・スムーサーや、3本のボルトで固定する巨大なエンジンマウントなどの様々な技術の合わせ技で、静粛性を向上させているのでしょう。

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ハンドリングを試したかったので運転支援システムをOFFにして街中に乗り出すと、1.5Lディーゼルターボがアクセラスポーツのボディを力強く押し出していきます。

NA2.5L級の野太いトルクを発揮するエンジンは、街中では2000回転まで回さなくても充分でレスポンスも良いですネ。1.5Lディーゼルターボが新設された代わりに、2Lガソリンエンジンが廃止になりましたが、なるほど納得です。

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ボディは剛性感が非常に高く、街中での走りの挙動も滑らか。タイヤは太くて薄い215/45R18ですが、乗り心地は少し固めながらしなやかで筆者好み。6速ATのシフトモードは、オートのDモードに入れておけば、街中や国道を快適にドライブできます。

また、アイドリングストップはブレーキを深く踏み込むと作動するタイプで、ドライバーの意思で調整できるようになっています。

■これが、マツダのGベクタリングコントロールの威力なのか!?

国道を運転して気づいたのが、ステアリングの動きです。試乗車にはステアリングの上部中央にマークが入っているので、ステアリングの位置が一目でわかるのですが、直進時には中央でロックしているかのようにピタッと固定して動きません。

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実際の国道は、直線でも路面は凸凹だらけですし、クルマも太いタイヤを履いていますから、轍などでクルマが左右に振られるのは自明の理。なのに微修正すらなく、整備されたテストコースを走るかのように、ステアリングのマークが中央に留まり続けるのです!

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まるでマジックのようで、「これが、マツダのGベクタリングの威力なのか!?」とひとり叫んでしまったのは本当です。

その2では、首都高環状線に乗り入れてマニュアルシフトを試します。

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トヨタ「C-HR」に83人が同時試乗!お薦めモデルはどれだ?

11月からWebによる先行受注が始まっているトヨタ自動車の新型SUV「C-HR」。

正式発売を目前に控えるなか、11月末に富士スピードウェイで「C-HR特別先行プロト試乗会」が開催されました。

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会場となったショートサーキットには、Web上で9月末から10月下旬にかけてトヨタ自動車が募集した試乗希望者83名が、同社の謳う「我が意の走り」をいち早く体感しようと、早朝から続々と集合。

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試乗会と平行して、同車の開発責任者を務める古場主査による座談会が設けられ、熱心に聞き入る参加者の様子が印象的でした。

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サーキットには「C-HR」のHV仕様とターボ仕様がグレード別にずらりと用意されており、参加者は簡単な事前説明のあと、次々に試乗車を乗換えながら3周ずつ周回を繰り返して乗り味をチェック。

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試乗参加者の多くからは、同車の乗り心地の良さやコーナーでのハンドリングの良さ、高速走行時の安定感などに対する感想が聞かれました。

そうした中、筆者も1.8Lエンジンを積むHVと、1.2Lターボモデルに試乗。両車の走行フィーリングを比較してみることに。

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日頃からプライベートでレース活動を行っている古場主査自身がニュルブルクリンクで造り込んだというだけあって、両モデルともにサスペンションの動きが非常に滑らかでストロークに余裕があり、SUVなのに高級感のある乗り心地に仕上がっています。

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サーキットのストレートから一気に減速してコーナーに侵入する際も、姿勢変化が少なく挙動が安定しており、海外向けに2.0Lモデルが用意されていることからも、シャシー性能にはまだ十分余裕が有りそうです。

アクセルを踏み込んだ際の出足や加速感は、1.8Lエンジン(98ps/14.5kgm)にモーターアシスト(72ps/16.6kgm)が加わり、システム出力で122psを発生するHVモデルの方が好印象。

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一方の1.2Lターボモデルには現行オーリス用のエンジン(116ps/18.9kgm)が搭載されています。

試乗会で公開された両モデルの車両重量を比較すると、FFの1.8L HVが1,450kg(現行プリウス+80kg)、1.2Lターボ(4WD)が1,470kgとなっていることから、ある意味で当然の結果といえるかもしれません。

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現行プリウスと同じTNGAによるプラットフォームを使う「C-HR」ですが、HV・ターボモデルともに「E-Four(電気式4WD)」の設定は無く、寒冷地等でのニーズから1.2Lモデルのみに通常の4WD仕様が用意されています。

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最新情報によれば、HVと1.2Lターボの価格差は13万円。

試乗した感想としては、発売直後の「C-HR」選択肢として、雪道や悪路での走破性を求めないのであればFF仕様のHVモデルがお薦め。

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ただ、今後1.2LターボにFF仕様が追加された場合、約80kg程度軽くなると予想され、動力性能の指標となるパワーウエイトレシオが12.7から12.0に向上。

HVの「11.9」に限りなく近付くことから、動力性能がイーブンとなり、燃費や車両価格面での嬉しさが増しそうです。

将来、バリエーションが増える可能性も予想される「C-HR」ですが、いずれにしても受注状況が好評なことから長めの納車待ちが予想されます。

「HV」と「ターボ」モデルの間に、車両価格を含め、体感性能的にも極端な差が存在する訳ではありませんが、最終的にどちらをチョイスするかの判断については、やはり発売され次第、店頭に出向いて実際に試乗されることをお薦めします。

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【XVハイブリッドtS試乗】XVハイブリッドtSは新しいカスタマイズの方向性を示したSTIの意欲作

スバルXVハイブリッドtSを目の前にして、心の中でつぶやいたのは「やっちまったなSTI……」でした。私の中でSTIのコンプリートカーというとアスリートのような機能美を追求したエクステリアが特徴と思っていました。

しかし、XVハイブリッドエアロパーツは装着されているものの、オレンジに塗られたホイールなどがポップな印象を強く感じたからです。

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標準車のXVハイブリッドはSUVらしい、ロールがやや大きめのソフトな乗り味が特徴です。エンジンのフィーリングも穏やかでステアリングフィールも良い意味で緩さがあり、全体的に穏やかな乗り味に仕立てています。

しかしXVハイブリッドtSに試乗してみるとポップな見た目とは裏腹に「おぉ!これぞSTIの乗り味!」すぐに納得することができました。

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XVハイブリッドtSのサスペンションは、ピンク色に塗られたノーマルと同じスプリングに専用チューニングされたダンパーを組み合わせます。さらにフレキシブルダンパーをはじめとしたボディ補強を施してしているので、SUVらしいソフトな乗り味は損なっていないのに、ピッチングやロール量は抑えられているのでフラットな乗り味となっています。

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ステアリング操作もリニアな味付けです。ノーマルに比べて、ハンドルを切り始めてからのクルマの動きが素早くなっていますので、クルマと一体感を感じられます。全体的には揺れの少ないフラットな乗り味を実現し、クルマは無駄な動きをしなくなったためシャープさが増しています。これにより、ノーマルのXVの特徴を消すことなく、さらに乗り心地が良くなっています。

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モーターのトルクアップによるエンジンのフィーリングは発進時や追い越し加速を掛けるときなど、アクセルをグッと踏み込んだときに感じられます。それはオプションで設定されているスポーツマフラーのサウンドとの相乗効果もあるでしょう。

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インテリアでは、シート表皮にSTIロゴ入りの本革とウルトラスエードのコンビシートを採用し、ドアトリムにもオレンジとアイボリーを採用したカジュアルな雰囲気を演出しています。

エクテリアのオレンジのピンストライプをはじめとしたXVハイブリッドtSに漂うカジュアルな雰囲気。これに最初戸惑いを感じていましたが、試乗して納得できました。

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XVハイブリッドtSはこれまでのSTIが販売したモデルとは異なり、たとえ、STIを知らない人が試乗して、乗り心地も良くカジュアルな雰囲気が良いと選んでくれることを願って開発されているのです。

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従来のtSのターゲットユーザーはSTIというブランドに惚れ込み、走行性能を高める様々なチューニングメニューを見て満足そして納得して購入してくれる人たちです。しかし、このXVハイブリッドtSは、STIを知らない人でもtSの乗り心地を気に入って、運転しやすいと感じて購入して満足してもらえればいいということなのです。すなわちSTIがターゲットユーザーの拡大を狙った意欲作と呼べるクルマなのです。

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STIの掲げる「強靱でしなやかな走り」は一見、スポーティな走りをイメージしがちですが、ドライバーのスキルに関わらず、意のままに操れるという点では従来のSTIファン以外にも受け入れられるでしょう。

なぜなら、ダンパーとボディの強化キットだけでも市販化してほしいとXVオーナーが思うほどの優れたパーツだったからです。これまでのtSモデルのリセールバリューの高さを考えたら、332万6400円はお値打ち価格といえます。

(文・萩原文博、撮影・小林和久)

独ニュルで鍛えた「C-HR」は、開発主査の思い入れが満載!

11月26日(土)、前日までに降った雪が残る富士スピードウェイで、「C-HR特別先行プロト試乗会」が開催されました。

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会場となったショートサーキットでは、試乗会と平行して、レーシングドライバーの三浦健光(けんこう)氏、柴田 愛さんのMCにより、「C-HR」開発責任者である古場博之主査との座談会が開催され、同車に関する開発秘話など、興味深いお話を聞くことができました。

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今回はそうした中から、古場主査が「C-HR」開発を通して経験した事や、開発エピソードの数々を掻い摘んでご紹介したいと思います。

「C-HR」の開発スタートは2010年だったそうで、コンパクトSUV開発に際し、欧米、東南アジアなど世界各国を回ってSUVに関するリサーチを行ったそうです。

そこから見えて来たのは、SUVを買う顧客は格好良さを重視しており、不満点は車高が高いため、走りが不安定との意見が多いことだったとか。

そこで「C-HR」では格好が良く、走りの良いSUVに特化することにしたそうです。

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またトヨタ自動車では通常、開発車両に○○○A等の開発コードネームを付けるのですが、同車は新規モデルのため、それだけでは社内で認知され難いことから、クルマの特徴を言い表す「C-HR」をコードネーム代わりにしていたそうです。

「C-HR」は、外観面では「コンパクト・ハイ・ライダー」、走りの面では「クロス・ハッチ・ランナバウト」を表しており、ランナバウトは「キビキビ走る」を表現。

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世界中、同一車名にすることは登録商標上、非常に難しいそうですが、調査した結果、「C-HR」で問題が無かったことから、そのまま正式名として採用したという、珍しいケースだったそうです。

デザイン面では他のSUVに比べ、車高に対するタイヤ径の割合が大きい(44.5%)のが特徴で、プロポーション的に下半身の力強さに寄与しているといいます。

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また古場主査によれば、SUVとしての格好良さを追求すべく、ラッゲージスペースや後方視界等は、あえて割り切っており、中途半端なデザインにはしたくなかったとか。

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全高を低くしてバックドアの角度を水平に対して25度まで寝かすことで、スピード感のあるボディシルエットを実現。同社の「ハリアー」が35度で、他のクロスオーバーSUV系を含めてもココまで寝かせたクルマは見当たらないそうです。

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フロントバンパーについても、近年ではタイヤ周りの気流を整流すべく、側面に立壁を設けるのが主流となっていますが、同車では見た目が重々しくなるのを避けるため、あえてそれはせず、床下に設けたスパッツなどで整流することで空力性能をカバー。

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バックドアを寝かせたことによる空力悪化への配慮としては、風洞で試験を繰り返し、ルーフスポイラーに空気整流用の穴を設けて補完しており、スポーティな印象に寄与。

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さらに細かなところでは、ニュルブルクリンク耐久レースで得られたノウハウとして、床下スパッツにブレーキ冷却に寄与する小さな穴を設けるなどの工夫もみられます。

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古場主査は自身でも「レース」に本格的に取組んでいるだけに、「走り」へのこだわりはハンパ無く、「C-HR」の開発では2013年以降、ニュルブルクリンクのサーキットに毎年試験車を持ち込んで足廻りを造りこむなど、SUVの開発ではこれまでに無い位に手間がかけられており、その成果が市販車に活かされているという訳です。

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細い峠道のサーキットコースを300km/h近い速度で走るクルマ達の中で鍛えられた今回のトヨタ「C-HR」。その走りはかなり期待できそうです。

次回は筆者による試乗レポートも含めてお届けしたいと思います。

Avanti Yasunori

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新型ホンダ・フリードの使い勝手をチェック。2列目、3列目シートの広さ、快適性は?

全長4265×全幅1695×全高1710mmという新型ホンダ・フリードは、先代よりも全長が50mm伸び、ライバルのトヨタ・シエンタよりも30mm長くなっています。

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最小回転半径は、先代と同値の5.2mに抑えて取り回しに配慮。先代フリードで駐車場がなんとかギリギリに収まっていたというケースをのぞき、コンパクトミニバンとしての機動性は確保されているといえそう。

全長を伸ばした恩恵は、1列目と3列目間の前後席距離間が90mm延長されたことと、2列目の120mmロングスライドに現れています。

とくにガソリン仕様であれば前席下に足がすっぽりと入りますから、フロアが高く、座面が低いという欠点を抱えつつも足を伸ばすことで2列目の快適な乗車姿勢を取ることができます。

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ハイブリッドもフロアの高さそのものはガソリン車と同じですが、前席下にIPU(インテリジェント・パワーユニット)が鎮座するため、ガソリン仕様ならすっぽりと足の甲まで入ったのに対し、ハイブリッドはつま先がかろうじて入る程度。

こうなると、身長171cmの私の場合、高めの床に低い位置に配置された2列目の設計が気になってきます。

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さらに、3列目は先代と同じヒール段差(フロアからヒップポイントまでの高さ)とのことで、2列目よりもさらに膝を抱える姿勢に「近く」なりますが、短時間であれば許容範囲。

実際に3列目に座って首都高速でも乗り心地を試しましたが、快適性と静粛性の面から言ってもやはり街中中心のエマージェンシーシートとして割り切りたいところ。3列目はあくまで非常用で、後席を最後端にスライドさせてリラックスして座る、という使い方なら十分な広さを実感できます。

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サードシートが不要な場合はもちろん、ほとんど使わないかも、というのであればフリード+をチョイスする手もあるでしょう。

大きな荷物やボードで上下に仕切られた荷室は用途を満たせば使いやすい一方で、大開口を実現するためテールゲートは大きく重めに感じられますので、この点もチェックしておきたいところです。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

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新型ホンダ・フリードを買うならハイブリッドかガソリン仕様、どちらがベスト?
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新型ホンダ・フリードの走りは「街乗り重視」のセッティング!?
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新型ホンダ・フリードの走りは「街乗り重視」のセッティング!?

新型ホンダ・フリード(フリード+)のカタログの表紙には「意外にスポーティ。」、「ハイブリッドで、4WDも!?」などのコピーがズラリと並んでいます。

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新型フリードのハイライトのひとつは、ハイブリッドにも4WDが設定された点でしょう。

4WDの25.2km/Lという燃費は、コンパクトミニバンでハイブリッドの4WDを望んでいた人にとっては待望の新型といえそう。電子制御式リアルタイム4WDを謳うハイブリッドの4WDは、電制で瞬時に前後輪のトルク配分を行い、旋回性と安定性を両立するとしています。

「意外にスポーティ」かどうかは人によって感じ方が異なるでしょう。個人的にまず美点に思えたのは、ガソリンもハイブリッドの出だしがスムーズで、前席は減衰の収束もよく、とくに乗り心地も良好。

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131ps/6600rpm、155Nm/4600rpmを発揮するガソリン、110ps/6000rpm、134Nm/5000rpmの1.5Lエンジンに22kW/160Nmのモーターを組み合わせるハイブリッドを用意する新型フリード。

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両仕様ともに先代よりも加速性能も変速フィールも大きく向上していて、リヤの追従性や直進安定性、直進ブレーキスタビリティを大きく改善させたというホンダの主張を十分に感じ取ることができます。

コーナーが続く首都高速でもボディの動きは比較的フラットに保たれていて、短めの全長に高めの全高というディメンションの割にロールの制御も好ましく感じます。

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一方で課題に感じられるのは、かなり軽めのパワステのセッティング。こちらは希薄な接地感にもつながっている印象を受けます。街中でも高速道路でももう少し手応えのある操舵感が欲しいところ。

ステアリング関連では、レシオのクイック化(10%)、ロックtoロックは従来の3.33から2.9回転に減らしているそうで、取り回しのしやすさは向上しているでしょうが、ライバルのシエンタの方がパワステと接地感の手応えがあります。

もう少しダイレクト感のある電動パワステのセッティング、そして後席の乗り心地も前席に近づけば走りの完成度が高まりそうです。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

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新型ホンダ・フリードを買うならハイブリッドかガソリン仕様、どちらがベスト?
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新型ホンダ・フリードを買うならハイブリッドかガソリン仕様、どちらがベスト?

待望のフルモデルチェンジを受けたホンダ・フリード。発売前の「先行予約」も含めた発売1カ月での受注台数は2万7000台。10月単体での登録では9153台となっています。

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ライバルであるトヨタ・シエンタが先代から大胆なデザイン変更を受けたのに対し、フリードは新しさを感じさせながらもひと目でフリードと分かるもので、デザイン面ではキープコンセプトに写ります。こうした戦略がどう出るかはこれからの販売台数で答えが出るでしょう。

フリードには、1.5L直噴DOHCのNAエンジン車、1.5LアトキンソンサイクルのDOHCエンジンを積むハイブリッドの「i-DCD」があります。ハイブリッドにも4WDが設定されたことで選択肢が広がったのも朗報。

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ガソリン仕様とハイブリッド車は、同じ名称のグレードで見ると単純に40万円の差がありますが、同じグレード同士の比較でもハイブリッドの方が装備は充実しています。

たとえば、「G ホンダ・センシング」で比べると、ハイブリッドはLEDヘッドライト+LEDアクティブコーナリングライト、ナビ装着用スペシャルパッケージ+ETCが標準装備で、ガソリンはオプション。ほかにもハイブリッド専用エクステリアで先進感が強調されているのもハイブリッドの特徴です。

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さらに、ハイブリッドはエコカー減税が「免税」になり、税制面の差も見逃せません。装備差と税制面を考慮すると40万円の差が少なくても25万円程度にはなりそう。

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燃費だけで元を取るのは難しいかもしれませんが、ハイブリッドの利点である滑らかな走りや静粛性の高さも魅力に感じる人も多そうです。

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ただし、ハイブリッド仕様はタウンユースが中心で、毎日の通勤などある程度距離も乗る人こそお得感が強まるのも事実。サンデードライバーで近所に出かける程度であればガソリン仕様で十分といえます。

(文/塚田勝弘・写真/小林和久)

カワイイ顔して本格派でした!MINIクロスオーバー ジョンクーパーワークス【夏江紘実ちゃんの次のクルマ選び Vo.02】

自らハンドルを握って、ぶらぶらとドライブするのが趣味という、タレントの夏江紘実さん。いまどき珍しい、真性クルマ好き女子です。最近、中古のトヨタ・プレミオ(渋い……)をゲットして、ますます自動車にのめり込んでいるカエちゃんが、次の愛車にしたいのは……!?

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今回、カエちゃんがチェックするのは、MINIクロスオーバー。MINIファミリー初の5ドアモデルとして2011年にデビューした、CセグメントのプレミアムSUVです。

外観では、張り出したフェンダーアーチやヘッドライト、六角形グリルなど、MINIのアイコンをしっかり継承。前席はもちろん、後席の居住性やラゲッジユーティリティにも優れています。FF(前輪駆動)のほか、走破性を高める4輪駆動システム「MINI ALL4」をMINIシリーズで初搭載。2014年のマイナーチェンジでクリーンディーゼルエンジン搭載モデルが追加されました。

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試乗車は、専用チューンが施された1.6Lターボエンジンを積む、ジョンクーパーワークス・バージョンです。価格は477万円。

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生粋のクルマ好き女子の夏江紘実さん。目下、次の愛車を物色中。MINIクロスオーバーに関しては……「名前はMINIだけど、サイズはちょっぴり大きめ。MINIらしさを残しつつ、アウトドアが似合いそう! ワイルドなスタイリングや荷物をたくさん載せられる実用性の高さが気になります」。

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試乗したジョンクーパーワークスには、1.6Lターボの強大なパワーを、路面状態に応じてそれぞれのタイヤに最適に配分するフルタイム4駆機構「MINI ALL4」が採用されました。あらゆるシーンで、優れた走行安定性を披露します!

5ドアハッチバックと比べて、少しワイドなボディサイズ(5ドアクーパー比で全長+105㎜、全幅+65㎜、全高+105㎜)を持つクロスオーバー。サイドスカートにも、パフォーマンスSUVらしいアクセントが付けられます。

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「じゃ、ドライブ行ってみる?」の言葉に、顔をほころばせるカエちゃん。試乗車のボディカラーは、チリ・レッド。オプションのブラック・スポーツ・ストライプがスポーティなイメージを盛り上げます。

「以前試乗した3ドアハッチバックと比べると、シートポジションが高いですね。乗り降りがしやすいです! 分厚いドアを開け閉めした時に〝ドスッ〞という音がして、いかにもボディの建て付けが良さそう。安心感があります」。

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サイドシルにも、さりげなく「JOHN COOPER WROKS」のプレートが貼られます。

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「体全体がスッポリ包み込まれる感じで、まるでスポーツカーのシートみたい! 私が普段運転しているセダンより視点が高くなるので、見切りがいいですね」。

JCWのシートはサイドサポートの張り出しを強めることでコーナリング中のホールド性を高めています。「天気もいいし、ちょっと高速に乗って遠出しちゃおうかな」と想像を膨らませるカエちゃん。

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「世界一過酷なレース」と称され、南米大陸を2週間で9000㎞を走破するダカールラリーに、クロスオーバーベースの「MINI ALL 4RACING」で参戦! 実戦の場で、卓越したオフロード性能を証明しました。

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「もしもMINIクロスオーバーが自分の愛車だったら……」。そんなことを考えてしまうカエちゃんです。

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ステアリングホイール、エアコンルーバー、センターメーター、ドアノブに至るまで、「丸」型にこだわっています。

さらに、太いグリップのレザーステアリングに巻かれた赤いステッチが、さり気なくハイパフォーマンスモデルであることをアピール。ペダル類も滑り止めが付いたアルミ製。気合が入っています。

使い勝手の面では、冬のドライブを快適にするシートヒーターを標準装備。小物入れやドリンクホルダーを一体化した「センターレール」が室内を貫きます

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試乗車は6速ATですが、6速MTも選べます。ATでもマニュアルモードにしてステアリングのパドルでシフト操作を行なえば、MT並みのスポーティな走りを堪能できます。

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遊び心たっぷりのインテリアにマッチした、特徴的なパーキングブレーキ。バーを握りながら下ろすとサイドブレーキが解除されます。

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「ゴーカートフィーリング」を謳うMINIのスポーティな走りを際立たせたJCW(ジョンクーパーワークス)。大幅にパワーアップされたエンジンに合わせて、シャシーやブレーキが強化されます。外観も、大径ホイールやエアロパーツを纏ってスポーティ! MINIシリーズ屈指のハイパフォーマンスモデルです

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「背もたれが寝ているのでゆったり座れます。頭の上や足元にも余裕がありますね。ロングドライブでも快適に過ごせそう。移動中にリヤシートに座らせてもらいましたが、あまりの心地よさに熟睡しちゃった……」。

4mを超える全長のおかげで、後席は居住性に優れます。座面を前後に13cmスライドできるので、足元スペースも調整可能!

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JCWに搭載されている1.6L直4ターボエンジン。最高出力は160kw(218ps)/6000回転、最大トルクは280Nm/1900〜5000回転。ノーマルの(!?)「クーパーSクロスオーバー・オール4」と比較すると、28馬力のアップを果たしました。

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アクセルを強く踏み込まなくても、スッと加速するJCWクロスオーバー。高速道路での追い越しもラクラクです。「エンジン音が静か。乗り心地もいいのでドライブが楽しくなりますね。車高が高いのにカーブでも車体がフラつかず、路面にピッタリ吸い付くのには驚きました」とカエちゃん。

JCWチューンが施されたターボエンジンのおかげで、大柄なボディはスムーズに加速します。抜群のトラクション性能を誇る4WDを備えるので、ワインディングも安心して駆け抜けられるはず(確信)。使用燃料はプレミアムガソリン。JC08モード燃費は、12.0km/Lです。

JCWクロスオーバーのスリーサイズは、全長4145×全幅1790×全高1550㎜。ちなみにMINIファミリーでは、5ドアハッチバックとクラブマン、ペースマンが全長4m超えです。全高はハッチバックモデルより120㎜高いですが、ルーフアンテナのマウント形状を見直して、立体駐車場に対応させました。

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「こんなクルマが愛車になる日が来るのかな〜」。すっかりオーナー気分のカエちゃん。レンガ造りの建物が、MINIクロスオーバーによく似合う、横浜のみなとみらい周辺をドライブしてみました。

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後席、ラゲッジルームと、使い勝手のよさがジマンのMINIクロスオーバー。ラゲッジ容量は350Lと、MINIシリーズ最大です! 後席バックレストは、両サイドとセンターを、それぞれ単独で折り畳めます。すべて折り畳むと、荷室容量は1170Lに増大します。

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座面の前後スライドとバックレストの角度を個別に調整できるMINIクロスオーバー。後席でも最適なシートポジションが得られほか、荷室を「ちょっぴり拡大したい」微調整のときにも、重宝します。

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スキー板やスノーボードなどの長モノを車内に積む場合、真ん中のバックレストのみを倒します。乗車人数や積載物に合わせて自由にアレンジ可能。

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荷室フロアを開けると、床下収納にアクセスできます。バッグや貴重品を入れておけば、外から見られないので、防犯対策にも効果的。三角表示板やスノーチェーンなど普段使わないものを入れておくのにも便利です。

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後席のシートバックを畳むとフラット床面の、広大なスペースが出現。奥行きもあるので、市販のエアマットを敷けば車中泊もこなせそう。「毛布を常備しておいてドライブに疲れたら道の駅や高速のSAやPAで仮眠できますね」。

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ラゲッジスペースですっかりくつろぐカエちゃん。「ホームセンターで組み立て家具を買っても、これだけ荷室が広ければ余裕でお持ち帰りできそう。オシャレなのに使い勝手は、ミニバンやワゴン並み!」。

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ホイールは18インチが標準。タイヤサイズは225/45R18。オプションで、クロススポークの19インチも選べます。真っ赤なブレーキキャリパーにも「John Cooper Works」のロゴが入っています。

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元町商店街でショッピング。「アウトドアも似合うけれど、都会にも違和感なく溶け込んでくれます。アウトドアシューズを街中で履く感覚かな」。

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サイズのわりに見切りがいいので、街なかでの縦列駐車や狭い道も、思いのほか苦労しないMINIクロスオーバー。「イギリス生まれのMINIには石畳の道が似合いますね!」

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「MINIって、運転している人がみんなオシャレさんに見える。こんなに濃いキャラクターって輸入車の中でも珍しいですよね。5ドアのクロスオーバーなら人も荷物もたくさん載せられる。次期愛車候補の筆頭になりそうです!」。

すっかり好印象の夏江紘実さんでした。

■夏江紘実(かえ ひろみ)グラビアやイベントのほか、ラジオでも大活躍中の紘実チャン。FM NACK5「The Nutty Radio Showおに魂(毎週水曜20:00〜23:00)」では話題沸騰の古坂大魔王の相方を務める。ラジオ日本「Hello! I,Radio(毎週金曜9:00〜11:00)」も好評オンエアー中。木目パネルが似合う国産4ドアセダンをこよなく愛し、愛車は中古の先代トヨタプレミオをチョイス。購入後9ヶ月で走行距離が2万㎞を超えるほどのドライブ好きで、道の駅巡りにもハマっている。

(文:湯目由明/モデル:夏江紘実/ヘア&メイク:東なつみ/写真:ダン・アオキ)【関連リンク】

MINI
https://www.mini.jp/

夏江紘実
http://ameblo.jp/6363117/

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思わず「ジャケ買い」したくなる、イヴォーク・コンバーチブル
【夏江紘実ちゃんの次のクルマ選び Vo.01】
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Cセグメント随一のコスパモデル!? シトロエンC4ディーゼル搭載車の価格は279万円

プジョー、シトロエン、DSの各モデルに順次設定されているクリーンディーゼルエンジン車。ディーゼル大国フランス生まれだけにその実力が気になるところです。

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シトロエンでは、C4に加えてグランドC4ピカソ/C4ピカソにも2.0Lディーゼルターボが設定されるなど、PSAグループでのラインナップを拡充しています。

ここでは、C4のディーゼルエンジン搭載モデル「C4 FEEL BlueHDi」をご紹介します。

citroen_c4_02最大の注目点は車両価格です。高コストといわれる尿素水溶液のアドブルー式SCR(Selective Catalytic Reduction)を使っているのにもかかわらず、279万円というのが驚き。

メルセデス・ベンツなども採用しているアドブルー式SCRは高級車中心でしたので、Cセグメント車に搭載したことは他メーカーのディーゼルエンジン戦略に影響を与えるかもしれません。

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120ps/300Nmを発揮する1.6Lディーゼルターボは、コモンレール式高圧噴射システム、可変ジオメトリーターボ、約4kgの軽量化を実現したアルミ製シリンダーヘッド&ブロックなど、様々な燃費向上対策が施されています。JC08モード燃費は20.2km/Lです。

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プジョー308や508SWなどと同様、シトロエンC4の1.6Lディーゼルターボもトルクフルで、ディーゼルらしい力強さが市街地走行から高速道路まで感じられます。

ディーゼルならではの音や振動はそれなりに車内に伝えてくるものの、停車時はアイドリングストップ機構が作動すればもちろん無音になります。ただし、アイドリングストップの作動時間は少し短めの印象で、信号待ちの間にも再始動することが度々ありました。

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また、40〜50km/hの速度域でこもり音、ドラミングが車内に侵入してくるのが「C4 FEEL BlueHDi」で最も気になる点でした。こうした症状は3日間の試乗時どんなシーンでもこの速度域で感じられました。タイヤや車両の個体差によるものかもしれませんので、ディーラーなどで試乗する機会がありました確認したいところです。

一方、ガソリン車を含めてC4そのものの美点として乗り心地の良さが挙げられます。C4は本国では2010年6月、日本には2011年に導入されたため、最新世代にスイッチしたプジョー308と比べると、ハンドリングにキレは感じさせないものの、逆に言えば素直な特性で運転しやすいのが長所といえそう。

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走りに目を見張るようなスポーティ感があるわけではなくても、機械を操って「運転をしている」という感覚がステアリングやペダルフィールから伝わって来るのが不思議。

280万円を切る欧州CセグメントであるシトロエンC4ディーゼル車は、フランス車の良さを知り尽くした人にオススメできます。

(文/写真 塚田勝弘)

フォルクスワーゲン ゴルフ・ヴァリアントの魅力を再確認する

2014年1月に日本で発売されたフォルクスワーゲンのゴルフ・ヴァリアント。2015年にはTSI Comfortlineの装備を向上し、2015年5月にはゴルフRヴァリアントも追加されています。

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現在のラインナップは、TSI ComfortlineとTSI Highline、R-Line、そしてR Variantとなっています。

ゴルフ・ヴァリアント最大の魅力は、グレードを問わずフォルクスワーゲンらしいしっかり感のある走りと荷室の使い勝手の高さ。

試乗車であるTSI Comfortlineに搭載されている1.2Lの直列4気筒DOHCターボ(105ps/175Nm)でも意外に軽快に走ります。乗り心地もTSI Highline以上になるとやや硬めに感じさせるゴルフ・ヴァリアントですが、205/55R16というタイヤサイズもあって比較的平和な印象を受けます。取り回ししやすいサイズで使いやすい荷室を望むなら294万9000円という価格はお買い得かもしれません。

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また、上級グレードのTSI Highlineは、17インチアルミホイールやシルバーのルーフレールを装着し、上質感を演出。1.4L 直列4気筒DOHCターボにより140ps/250Nmを発揮。荷物を満載した状態でもモアパワーを抱かせるシーンは少ないはず。

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荷室容量は通常時でも605Lと十分な広さが確保されていて、60:40分割可倒式の後席の背もたれを前倒しするだけで最大1620Lまで拡大されます。開口部も大きく、路面から開口部下端までの距離も低めですから、大きな荷物でも容易に積載できます。また、トノカバーは荷物のサイズや量に応じて3段階でスライド位置の調整が可能で、外したトノカバーを荷室下に収納できるなど、使い勝手は良好そのもの。

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ハッチバックのゴルフでは積載スペースが足りないという方に最適なゴルフ・ヴァリアント。走りの面では、ハッチバックと比べるとボディ剛性や乗り心地の面で不利になります。それでも積載性というニーズがあるなら積極的に指名したいモデルといえそうです。

(文/塚田勝弘、写真/小林和久)

【公道試乗】税込価格2370万円のホンダNSXはエブリデイスーパーカーなのか?

ホンダブランドの中で最も高価なプライスタグを掲げている新型NSXを、ついに動かすことができました。

日本ではホンダ・ブランドで売られているNSXは、北米などではACURA(アキュラ)ブランドで販売され、生産はアメリカ・オハイオにある専用工場で生み出されるれっきとしたアメリカ車。ホンダブランドですが、輸入車ということになります。

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そのお値段は車両本体価格(税込)で2370万円。現時点では113万4000円〜のカーボンセラミックローター装着車のオーダーが先行している状況で、実際の車両価格は2500万円を超える高価格車なのです。

しかも、専用工場での生産能力は一日8台と限られたもので、そこから世界中にデリバリーされています。日本への割当は初年度100台程度で、すでに2年待ちという状況。販売店も限られ、試乗車が用意されることもないでしょう。まさに貴重な機会となりました。

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さて、フロントに2つのモーター、リヤに3.5リッターV6ツインターボとワンモーターという構成のパワートレインを持つNSX、そのシステム最高出力は581馬力と発表されていますが、いつでもそれだけのパワーを出すわけではありません。

ダイナミックモードと呼ばれる機能で選択できる4つのドライブモードの中で、もっともハードな「トラック」モードを選んで、なおかつブレーキペダルを踏んだまま、アクセルペダルを踏み込む「ローンチモード」にして初めて581馬力を発生することになるのです。

つまり実質的に公道でフルパワーを発揮するという機会はないといえます。それではスーパースポーツらしいカタログスペックは飾りなのかといえば、そうとは言えないのがNSXの魅力です。

そもそもNSXのハイブリッドシステムはハイパワーを第一義としているものではないからです。フロントのツインモーターユニットは駆動力の上乗せにも使われますが、左右のトルクベクタリング(駆動力移動)によるハンドリングの向上がメインの役割。そして、そのハンドリング性能は低速域でも味わえるのがNSXの魅力というわけです。

そのフロントモーターは、左右合わせて74馬力ものポテンシャルがあり、エンジンを使わずにフロントだけでEV走行することも可能。ダイナミックモードで「クワイエット」と呼ばれるモードを選ぶと、積極的にEV走行をしてくれるので、早朝深夜の住宅街などでも気を遣わうことなく、出入りできるようになっています。

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そして、このEV走行時にはエンジンが停止しているので、スーパースポーツの緊張感から解放されるのもNSXの特徴。とくにファーストタッチの段階で、このEV的スムースさに触れるとスーパースポーツへ対峙する緊張感が和らぎます。

思えば初代NSXでは「エブリデイスーパーカー」といったコンセプトもありました。ドライブテクニックの要求度、耐久性、取り回し性などでハードルを下げ、毎日乗れるスーパーカーというキャラクターを世界に新提案したのです。そのスピリットは、新型NSXにもしっかり受け継がれているのでした。

とくに高張力鋼板を3次元熱間曲げ焼き入れすることで生み出された細いAピラーは視界を広くし、そのボディサイズを感じさせない市街地での取り回しの良さを実感させます。

フルパフォーマンスを発揮できないようなシチュエーションでも我慢がないどころか、走りを楽しもうという気になるスーパーカーなのです。

乗りやすいといっても、特別さがスポイルされているわけではありません。フロントのトルクベクタリングにより鍛えられたシャシーは低速域からシャープで、遊びのないハンドリングを味わうことができます。切り増すことなく、ピシッと思い通りに曲がっていく様は、速度域にかかわらず特別なクルマであることを実感させるのです。

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さらに、ナビ画面の車両設定・メーター表示を見ていくと「スピードリミッター機能」という項目が用意されているのに気付きます。これは、場所を問わずに180km/hのスピードリミッターをオフにできるというもので、位置情報に影響されることなく、クローズドコースであればそのポテンシャルを引き出せることが期待できる機能。

そこまでのスピードを出す当てがなくとも、リミッター機能をオフにするだけで特別なスーパーカーに乗っているという気分が味わえます。

ちなみに、NSXの最高速度は308km/h。その領域でもフロントのツインモーターはベクタリングを行なうことで、ハンドリングの精度を上げてくれるということです。

●ホンダNSX 主要スペック
車両型式:CAA-NC1
全長:4490mm
全幅:1940mm
全高:1215mm
ホイールベース:2630mm
車両重量:1780kg
乗車定員:2名
エンジン形式:V型6気筒ツインターボ
総排気量:3492cc
システム最高出力:427kW(581PS)
システム最大トルク:646Nm(65.9kg-m)
変速装置:9速DCT
燃料消費率:12.4km/L (JC08モード)
タイヤサイズ:前245/35ZR19 後305/30ZR20
メーカー希望小売価格(税込):2370万円

(写真と文 山本晋也)

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スポーティな内・外装と使い勝手の良さが美点のVWゴルフ トゥーラン「TSI R-Line」

2016年6月にフォルクスワーゲン・ゴルフ トゥーランに追加された「TSI R-Line」。今秋開催されたオールラインナップ試乗会で乗る機会がありましたのでご報告します。

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フロントグリル「R」のバッヂがスポーティミニバンであることを主張するゴルフ トゥーラン TSI R-Lineは、試乗車が鮮やかな色合いの「ハバネロオレンジメタリック」をまとっていることもあり、数あるフォルクスワーゲン車の中でも存在感は際立っていました。

同モデルは、上級仕様の「TSI Highline」をベースに、フォルクスワーゲンR GmbH社が手がけたスポーティモデル。

なお、フォルクスワーゲンR GmbH社は、日本で販売されているゴルフRをはじめ、世界ラリー選手権で参入初年度に総合優勝という快挙を達成したポロR WRCといったレーシングマシンの企画、開発などを担当するフォルクスワーゲンのインハウスチューニングメーカーです。

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フォルクスワーゲンR GmbH社が手がけただけあって、内・外装ともにかなりスポーティな仕上がりが印象的。

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外観は、専用フロントバンパーやサイドスカートのほか、リヤバンパーにクロームパッケージを装備することで、11年ぶりにフルモデルチェンジを受けたトゥーランのスタイリングを際立たせています。

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一方の内装も、R-Line専用のファブリックシートやドアシルプレート、アルミ調ペダルクラスターなどでスポーティかつ洗練されたムードに仕立てられています。

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ミニバン大国日本には数多くの選択肢があります。その中で輸入ミニバンを選ぶということは単に使い勝手だけでなく、走りやスタイルにもこだわりを持ちたいというニーズがあるはず。

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ゴルフ トゥーランは、両側スライドドアではなく通常のヒンジ式ドアになりますが、それ以外のシートアレンジや3列目の乗降性、最大1857Lという広大な荷室容量など日本製ミニバンに負けない使い勝手が美点。

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助手席まで完全にフラットに倒せるシートや、外したトノカバーを荷室床下に収納できるなど、非常に使いやすく実用性の面でも満足できるはず。なお、今回紹介したゴルフ トゥーランTSI R-Lineの価格は397万4000円です。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

ボルボS60/60ポールスターに加わった「Sport+」モードとスポーティな内外装

ボルボS60/V60ポールスターの最新モデルが100台限定で日本に上陸しました。6気筒から4気筒にシリンダーレス化された2.0Lの直列4気筒DOHCターボ+スーパーチャージャーエンジンを新たに搭載。

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最大トルクは30Nm減っていますが、16psの向上と、S60で-50kg、V60で-20kg減っていることもあり、加速の鋭さ、高回転域のパンチ力は増している印象です。

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今回のアップデートにより、新パワートレーンの魅力を最大限引き出す「Sport+(プラス)」モードも用意されています。

シフトポイントが2速以上で4000rpm以上となり、シフトスピードが高まるほか、エキゾーストバルブが解放されることで迫力あるサウンドも満喫できます。

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「スポーツ・プラス」モードにするには、車両を停止させ、ギヤレバーをSモードに入れ、パドルシフトの「+(プラス)」を引いたままギヤレバーを「-(マイナス)」方向に2度倒すと、メーターにSマークが点灯し、「スポーツ・プラス」になるという手間が必要。

公道で使う必要性は皆無ですし、サーキットで走りを楽しむ際に踏む手順と考えれば、こうした仕掛けも心躍る儀式となりそう。

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今後はポールスター部門がより市販車に関わってくるはずなので、フルモデルチェンジなどを機にもっとスマートな操作性が用意されるのではないでしょうか。

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走りだけでなく外観やエアロダイナミクスも見どころ。フロントスプリッターコーナーによりRデザインよりも21kgダウンフォースを増し、専用大型リヤスポイラーや大型ルーフスポイラーもボディを路面に押しつける役割を果たしています。

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ハイパワー化によりブレーキも強化されていて、ポールスター/ブレンボによる6ピストンキャリパー、371×32mmベンチレーテッドディスクなどのほか、新しいブレーキブースター、新メインシリンダー、ESCやABSもチューニングされています。

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高級感のある内装は、専用となるヌバック/本革スポーツシートやヌバック/本革ステアリングホイール、カーボンファイバー製パネル、スカッフプレートなどによるもので、スカンジナビアンデザインにセンスのいいスポーティなスパイスが加えられています。

価格はS60ポールスターが839万円、V60ポールスターが859万円。2016年11月中旬時点で販売店に在庫がどれくらいあるか分かりませんが、気になる方は問い合わせてみてはいかがでしょうか。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

ボルボ S60/V60ポールスターは「日常使いからサーキットまで」乗れる快速モデル

メルセデスのAMG、BMWのM社、アウディのAudi Sportなど欧州勢がスポーツ性能とプレミアム性を誇示するには欠かせないのがサブブランド。ボルボも例に漏れず、2015年に長年に渡ってビジネスパートナーだったポールスター社のパフォーマンス部門を買収したました。

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WTCCに参戦し、スウェーデンのチームとして初のワールド・チャンピオンを目指しているポールスター。「ポールスター・シアン・レーシング」という車名からも分かるように、市販化されたポールスターもシアン(青)のボディカラーが訴求カラーとなっています。

2016年に導入されたS60/V60は、S60が35台、V60が65台の計100台。11月16日時点で在庫状況は分かりませんが、台数の多いV60はまだディーラーにあるかもしれません。

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最新S60/V60ポールスターの見どころは、エンジンの刷新。直列4気筒2.0ターボ+スーパーチャージャーのダブル過給器になり、従来の6気筒からボルボ自前の4気筒にダウンサイジングされたことになります。

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気筒数が減っても16ps向上(最大トルクは30Nm減)し、367ps/470Nmというスペックを獲得していて、0-100km/h加速はS60が4.7秒、V60が4.8秒。従来型から0.2秒短縮されています。

また、エンジンだけでなく、トランスミッションも6ATから8ATに多段化され、ハイスペックモデルでも命題となっている燃費は、S60が12.2km/L(+2.6km/L)、V60が11.2km/L(+1.6km/L)に向上。ほかにも、新デザインアルミホイール(20インチ)の採用や「Sport+」モードも新たに用意。

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足まわりは、ポールスターとオーリンズによるダンパーのほか、オーリンズの特許であるデュアルフローバルブを搭載。また、スポーティグレードの「Rデザイン」よりも80%強化されたスプリング、スタビライザーも15%強化されているほか、カウント類やブッシュも強化。

走り出すと、ポールスターによるチューニングが施された電動パワーステアリングによる適度に手応えのあるフィーリングからもスポーツモデルであることが伝わってきます。

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強化されたサスペンションに加えて、245/35ZR20サイズのミシュラン「パイロット・スーパー・スポーツ」を履く乗り味も引き締まっていますが、路面が荒れていたり、目地段差が続いていたりと条件が悪い場所でも思ったより不快ではなく、日常使いでも十分に許容できる快適性が確保されているのが収穫。

動力性能はトルク減の影響をまったく感じさせず、高回転域の伸びは一般道では確認できないほど頭打ち感を抱かせません。

しかも、高速域のエンジンサウンドはなかなか迫力があり、DレンジからSレンジに入れるだけで加速感が増します。さらに停車時に先述した「Sport+」モードにすると鋭さが倍増します。

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6気筒から4気筒に減ったこともあり、車両重量がS60で-50kg、V60で-20kgとなり、感覚としては主にフロントノーズの重さが軽減された印象。

それが旋回性能の高さや軽快感に現れていて、ダイナミックなパワートレーン、そして軽快感のあるフットワークという美点を生み出しています。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

Cセグメントのクルマをコスパで選ぶなら「素のゴルフ」TSI TrendlineとシトロエンC4でキマリ?

フォルクスワーゲンの美点がしっかり感のあるボディや、軽快でよく回るパワートレーン、直進安定性の高さなどの走りに加えて、そして何より長年付き合える飽きのこない内・外装やしつらえの良さとすると、それは素のグレードでも味わえるはず。

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今回、素のゴルフである「TSI Trendline」に乗る機会がありましたが、もちろん例に漏れないものでした。

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エンジンは直列4気筒ターボの1.2L TSI。最高出力105ps/4500-5500rpm、最大トルク175Nm/1400-4000rpmで、JC08モード燃費は21.0km/L。デュアルクラッチトランスミッションの7速DCTとの組み合わせになっています。

見た目こそハロゲンヘッドライトにスチールホイール(16J×15)など、華やかさとは言いがたいものがありますが、乗ってみると相棒として「これで十分!!」と思わせるものがあります。

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乗り味はリヤサスペンションがトレーリングアーム(最上級のHighlineは4リンク)ということもあってか、微細な揺れを少し伝えてきます。

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また、1.4L車と比べると、速度を上げていくペースは当然遅くなりますが、7速DSGの素早い変速もあってパーシャル域から強めに踏み込むとターボの助けにより「1.2Lなのによく走る!」と思わせる力強さもあり、街中中心であれば流れをリードするのも難しくありません。

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最大のインパクトは国産車が青くなりそうな249万9000円という価格。Cセグメントでは今年日本に上陸したばかりの1.6Lディーゼルターボを積むシトロエンC4がアドブルーを採用するのにも関わらず279万円という値付けとなっています。この2台がCセグメントのコスパの高いモデルといえそうです。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

【トヨタC-HR試乗】リヤドアのアウターハンドルを「横」に配置したわけは?

スタイリングに最も力を注いだトヨタC-HR。最大の見どころはまさにエクステリアにあり、大人っぽさを表現し、官能的なという意味の「Sensual」、コンパクトキャビンや躍動感による「Speed」、大径タイヤやボディのリフトアップによるたくましい足まわりの「Cross」という3つのキーワードを掲げています。

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キャビンの天地方向を低くし、さらに内側に絞り込み、ボディ四隅に大径タイヤを置くという手法は、日産ジュークに似ています。

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C-HRは後発だけあってさらに先鋭化させるとともに、ピラーに埋め込まれたようなリヤのアウタードアハンドルを「縦ではなく横」に配置。

このデザイン処理、日産ジュークやアルファ ロメオのジュリエッタなど「縦」が多いだけに疑問でした。デザイン担当者に話をうかがうと、開閉操作を吟味したところ通常のドアハンドルのように「横」の方がやりやすいという結論に達したとのこと。

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また、フロントのドアハンドルよりもかなり高い位置にありますが、身長100cmの子どもでも操作できるように配慮されているそうです。

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フロントマスクを印象づけるフロントライトには、オプションのLEDタイプと標準タイプがあります。LEDは中央にハイビーム&ロービーム(Bi-Beam LED)を配し、その上に中央側に向かってターンLEDを配置、下側にアイライン風にクリアランス&デイライト(LED多灯)が備えられています。

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標準ライトは、Bi-Halogen(ハロゲン)のハイビーム&ロービーム、中央寄りにクリアランス&デイライト(LED3灯)、一番中央にターンライト(バルブ)を配置。

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一方のリヤランプは、オプションのLEDが中央上にバックアップランプ、真ん中にターン、その下にテール&ストップ、一番下にもテールを配置。なお、標準も配置はLEDと同様で、リヤフォグランプはオプションです。

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また、アルミホイールは18インチが切削光輝と艶有りブラック塗装が施された細身のスポークでスタイリッシュな仕上がりになっています。17インチアルミホールはシルバーメタリック塗装で、こちらは力強い造形になっています。

(文/塚田勝弘 写真/前田惠介、塚田勝弘)

【トヨタC-HR試乗】デザイン重視ながら後席はなかなかの座り心地。取り回し、使い勝手をチェック!

トヨタC-HRのボディサイズは、ハイブリッド(FFのみ)が全長4360×全幅1795×全高1550mmで、4WDのみとなる1.2Lの直噴ガソリンターボの全高が1565mmとなっています。ホイールベースは2640mmで、最小回転半径は5.2m。

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同じ「TNGA」を使うプリウスは、全長4540×全幅1760×全高1470mmで、ホイールベースは2700mm。C-HRの方が180mmも全長が短く、全幅は35mmワイドになっています。

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全長からするとロングホイールベースといえるC-HRは、ダイナミックな外観が特徴で、キャビンを小さく見せることにこだわったということで、室内の広さがどうなっているか気になるところ。

ハッチバック車などよりも高めの前席に乗り込むと、スタイリングの割に前方と左右の視界は良好。ただし、シートアジャスターを最も高く上げてもボンネットの先まで見通せるようなコマンドポジションにはなりません。

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逆に後方視界は外観デザインの影響を大きく受けています。テールゲートのウインドウがかなり寝かされているのに加えて、斜め後方も大きな死角が出現。車線変更時や後退時の取り回しには気を使いそう。

安全性を重視するならリヤビューカメラや「ブラインドスポットモニター」や「リヤクロストラフィックアラート」、「クリアランスソナー&バックソナー」などの選択は必須。

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後席に座ると、まず感じるのが閉塞感、よくいえば包まれ感の高さ。サイドウインドウが小さいうえに、窓の下側であるベルトラインが高めの位置になっているのに加えて、後方に行くほどラインが上がっていますから、左右方向の視界が限定されます。

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さらに、バケットシートをイメージしたという前席のバックレストが大きいため、前席シートスライド位置を後側にするとフロントシートからの圧迫感も大きく、前方視界も必然的に制約されます。

とはいえ、後席はその視界以外は気になる点はさほどありません。「座る」ということに関してはよく練られています。ロングホイールベースの恩恵で足元が広く、ハイブリッド車もガソリン仕様も前席下に足がすっぽりと余裕で入りますから、足を伸ばしてもいいですし、膝を立てるように深めに腰掛けても膝前に余裕が残ります。

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シート自体は座面の前後長、厚みともに十分に確保されているうえに、背もたれも長くゆったりと身体を預けられます。私は身長171cmですが、深めに座っても頭上には10cm程度の空間が残ります。ホンダ・ヴェゼルには開放感や広さでは及ばないものの、ジュークはもちろんCX-3よりも広くて座り心地も良好です。

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荷室容量は318Lで、荷室の奥行きは後席を立てた状態で770mmを確保。地面から開口部下側までの高さはFFが775mm、4WDが790mm。ちなみに、ホンダ・ヴェゼルが393L、マツダCX-3がサブトランクを含めて350L、コンパクトな日産ジュークが251Lとなっています。

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ヴェゼルのように低い位置から大きく開くテールゲートや大容量のスペースは持ち得ていませんが、C-HRはハイブリッドもガソリン仕様も同じ容量で、とくにハイブリッドは駆動用バッテリーを積むことを考えると納得できるのではないでしょうか。なお、後席は6:4分割可倒式で、シンプルに背もたれを前に倒して拡大するタイプになっています。

(文/塚田勝弘 写真/前田惠介)

公道で使い切れる性能! S660は日本人のためのスポーツカーだ【等身大インプレ】

■S660のターボエンジンは中回転トルク型

首都高速から続いて東関東自動車道を抜け、千葉県の房総半島に向かいました。高速を降りてもう一度ルーフを外し、ウィンドウを下げたフルオープンで房総の里山を走り出すと、これがまた気持ち良い〜っ!

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ステアリングを切るとフロントが切れ味よく反応して、クルマがドライバーを中心に旋回しながら、コーナーをクリアしていきます。ホイールベースが長く前後オーバーハングが短いパッケージングなので、体感的には少し薄いものの、重量物のエンジンが運転席の後方にあるミッドシップならではのハンドリングを味わうことができます。

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コーナー入口では、手首だけで操作できる6速マニュアルのシフトダウンが、カチッと決まります。またコーナー出口でエンジンの一番美味しい4千〜5千回転を使うと、気持ち良い加速で立ち上がることができます。右足でアクセルを踏み込み、左足で駆動伝達を感じながら、俊敏で力強いマニュアルドライビングを堪能することができました。

ただ意外だったのは、エンジンパワーの特性です。5千回転から上も軽く回るのですが、回してもパワーがついてこないのですネ。「ホンダはNA&高回転」というイメージとは随分違う特性なので、正直最初は戸惑いました。でも4千〜5千回転域の太いトルクを活かした走りも新鮮で大いに楽しめました。

■お楽しみは、プシュープシュー音

それからS660には、もう一つお楽しみがありました。シート背面にある小振りなリアウィンドウは開閉式なのですが、最初は空調用だと思っていました。実際に開けると風通しが良くなるのですが、加えてシフトアップの度に遠くで聞こえていた「プシュー」音が、間近で聞こえるようになるのですネ。

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これはターボエンジンがアクセルオフ時にブローオフバルブから発する音ですが、山坂道でシフトアップしながらスポーティに走っていると、「プシュー、プシュー」と威勢のいい音がキャビンに飛び込んでくるのです。これがとてもリズミカルで心地良く、クルマ好きにはたまりませんでした。標準仕様で、こういう遊び心は大大、大歓迎デス!

■日本人による日本人のためのスポーツカー

そしてなにより嬉しかったのは、軽規格の小さいボディと自主規制パワーのおかげで、狭い農道や山道でも道幅やスピードの出し過ぎをあまり気にせず、ドライブできることでした。

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細い農道では田畑が織りなす日本らしい田園風景を、また写真のような狭くてうねった山道では森林浴とハンドリングを、それぞれ楽しむことができるのですネ。もちろん海岸線や山坂道では、アクセルを踏み込んだドライビングもOK〜っ!

つまりS660なら、日本中どんな場所でも四季折々の景色の中で爽快な走りが楽しめるのです。今もまさに、オープンカー・シーズンですよネ。S660はまさしく「日本人による日本人のためのスポーツカー」だと強く実感しました。

■燃費も疲れもミニマムな軽オープンスポーツ

今回のレンタル費は、9時間で約1万円。日曜日だったため首都高や国道で何度か渋滞に会ってしまいましたが、燃費は約270km走って18.6km/lでした。これだけ爽快な走りを楽しんでこの燃費なら、全く言うことありません。ちなみにトランクは、ルーフ収納専用で実質的には無いに等しいため、積載性への期待は禁物デス。

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かつて90年代の軽オープンカーは、公道のゴーカートのようなやんちゃさがありましたが、S660では高剛性ボディと思い通りのハンドリング、そして必要十分なパワーと快適なキャビンのおかげで安心してドライブできました。9時間乗り続けましたが、疲労感が少ないことも本当に素晴らしいと思います。

筆者は、将来子どもたちが全員独立したら、是非ともS660を手元に置こうと自分の将来に固く誓った次第です!

(星崎  俊浩)

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ホントに軽オープン!?  S660は、ボディ剛性と安定感が半端じゃない!【等身大インプレ】
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ホントに軽オープン!?  S660は、ボディ剛性と安定感が半端じゃない!【等身大インプレ】

■くるくる脱着ルーフと極低シートがS660の特徴

東京近郊にあるマニュアル車専門のレンタカー店で、ホンダS660の6MT仕様を見つけました。そこで日産GT-Rの「等身大インプレ」に続く第2弾は、ヘビー級ハイパワー4WDマシンのGT-Rとは対極にありながら、本格オープンスポーツとの呼び声の高い軽自動車のS660にすることにしました。

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当日のレンタカー店では、最初にキャンバスルーフのくるくる脱着とボンネット内にあるトランクへの収納の方法について、説明を受けました。実際に自分でやってみると、キャンパスルーフは骨組が太くて多少重いとか、いちいちボンネットを開けて腰を曲げて作業するのはおっくうだとか、思わなくはありません。でも何やら出発の儀式めいていて、クルマ好きの心がくすぐられますから、筆者は割と好きだったりします。

早速オープンのままS660に乗り込みました。まずは、着座位置が低いことにビックリ。乗り込む際にドシンと腰を落としてしまうほどでした。オープン状態の運転席は狭からず広からず。かまぼこ型のステアリングのおかげで足元にも余裕があり、173cm/75kgの中年体型がいい具合に収まりました。

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インパネのメーターは、アナログ式タコメーターの中にデジタルスピードメーターが収まるデザインで、80年代のシティターボを思い出します。ただインパネにナビの搭載スペースを設けないのは、さすがにやりすぎ感もありますが、ここまで徹底するといかにもホンダらしい割り切りだと清々しささえ感じるから不思議です。

■大型トラックも怖くない、軽を全く感じさせない剛性感みなぎる走り

当日は天気に恵まれたので、日焼け止めを顔と手に塗りたくって準備完了!  ウインドウを下げて早速街中を走り出すと、見た目はゴーカートのような軽オープンカーなのに、安定感が抜群に高いことに気づきました。右折レーン待ちで前方から大型ミニバンがカッとんで来てすれ違っても、国道で大型トラックが妙に近くで並走しても、軽のひ弱さやオープンの怖さを感じることがありませんでした。

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運転を始めて、すぐにクルマ好きの血がワクワクしてきました。交差点を左折する時には、いちいちヒール&トゥでブリッピングしてシフトダウンをかましたいし、信号待ちではアクセル全開のスタートダッシュが待ち遠しいのですネ。運転してから10分余りで、いつでもどこでもオープンの爽やかさを堪能していたいと強く感じました。

またそう感じる要因は、①軽オープンを超越した高剛性ボディ、②中回転域で力強く走るトルク&パワー、③オープンでもウィンドウを上げれば、エアコンとオーディオがしっかり届くキャビン、の3点だと思います。

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S660は街中を走るだけでも、スポーティなオープンの楽しさに加えて、軽オープンのレベルを越えた快適さ&頼もしさが実感できました。

■高速道路ではキャンバスルーフが効果的

続いて、首都高速に乗り入れました。料金所からアクセルを踏み込むと、軽ではありますが、気持ちよく加速していきます。アクセル全開でのシフトアップは、やっぱり理屈抜きで楽しいですヨ。中回転トルクが太いので加速や追い越しも楽々。高速道路でも日本の法定速度以上のパフォーマンスを有していると実感しました。

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ただ小さいボディの哀しさなのでしょう。高速でのオープン走行は、速度に比例して風の抵抗でボーボー音が高まるため、高速巡行中はあまりオープンにする必要性を感じませんでした。

そこでPAに入って、ボンネット内からルーフを取り上げて、ルーフにくるくると装着すると、仕立ての良いキャビンに早変わり。ルーフはキャンバス仕様ながら骨組みがガッシリしているため、室内は予想以上に静かで、高速クルージングが快適になりました。これにはリアに隔壁を備えたタルガトップ形状が、相当効いていると思います。

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ちなみにルーフの有無で、乗降性は全く異なります。ルーフ付きのキャビンになると、当然体が通るスペースが激減する訳でして、体の固い中年オヤジにとって乗り降り動作はちょっこし苦行になっちゃいましたネ。

次は、房総ドライブ編に続きます。

(星崎 俊浩)

1.4L TSIエンジンを搭載したVW「The Beetle R-Line」は力強い走りが魅力

2016年9月にマイナーチェンジを受けたフォルクスワーゲンのThe Beetle(ザ・ビートル)に、1.4L直列4気筒DOHCターボを搭載した「R-Line」が加わりました。

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フォルクスワーゲン・ザ・ビートルには、105ps/175Nmの1.2L 直列4気筒SOHCターボを搭載する「The Beetle Base」、「The Beetle Design」のほか、211ps/280Nmの2.0L 直列4気筒DOHCターボを積む「The Beetle 2.0 R-Line」が用意されています。

2016年11月9日に設定された「The Beetle R-Line」に搭載される1.4L TSIエンジンは、150ps/5000-6000rpm、250Nm/1500-3500rpmというスペックで、デュアルクラッチトランスミッションの7速DSGとの組み合わせ。

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1.2Lと2.0Lの間を埋める「The Beetle R-Line」は、2.0Lターボまでは要らないけれど、1.2Lではモノ足らないというニーズに応える新グレードといえます。なお、ゴルフのTSI Highlineに搭載されている1.4L TSIの140ps/4500-6000rpm、250Nm/1500-3500rpmと比べると、最大トルクは同値ですが、ゴルフよりも10ps向上。

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17インチタイヤを履く「The Beetle R-Line」は、1.2L搭載車よりもやや硬めの乗り味で、「R-Line」の名に恥じないスポーティな走りが堪能できます。

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中・低速域のトルク感は必要十分で、ターボが過給を始めると力強さがグッと増し、スムーズなだけでなく変速フィールもスポーティな7速DSGの恩恵も最も感じられるのが50〜60km/hから踏んだ時の加速感。

逆に言えばストップ&ゴーが続く街中であれば1.2Lでも不足はなく、ワインディングや高速道路などで1.4Lの効果が分かりやすく伝わってきます。

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もちろん「The Beetle R-Line」の魅力はパワフルなエンジンだけでなく、「R-Line」のバッジやリヤスポイラー、アルミ調ペダルクラスターなど専用装備によるスポーティな佇まいも見逃せません。294万5000円という価格設定で新たなファンの獲得を託された新グレードとなっています。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

【新型スバル・インプレッサ公道試乗】最新アイサイトの完成度は?

スバルの「安心・安全」という考え方は、「アイサイト」の「ぶつからないクルマ?」という積極的なプロモーションもあって、「走り」と並んで同社の大きな強みになっています。

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「SUBARU GLOBAL PLATFORM」採用第一弾となる新型インプレッサには、歩行者用エアバッグが採用されるなど、最新の安全装備が満載されています。

今回試乗した車両には、メーカーオプションの「スバルリヤビークルディテクション(後側方警戒支援システム)」とハイビームアシストからなる「アドバンスドセイフティパッケージ」も装備されていました。

車線移動の際に重宝したのが、「スバルリヤビークルディテクション(後側方警戒支援システム)」。ドアミラーとルームミラー、斜め後方の直接目視はドライバーの責任なのは当然としても、ドライバーの「うっかり」を防いでくれる安全装備は助かるシーンがありそうです。

新型インプレッサに搭載されている最新の「アイサイト3」そのものは、既存の搭載車で定評あるものと同様のシステムです。

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プリクラッシュブレーキ、アクティブレーンキープ(車線中央維持/車線逸脱抑制)、AT誤発進抑制制御、AT誤後進抑制制御、車線逸脱警報/ふらつき警報という多彩な安全装備。それに加え、全車速追従機能付クルーズコントロール、定速クルーズコントロール、先行車発進お知らせ機能、電動パーキングブレーキ(ヒルホールド機能付)の運転支援系からなります。

今回、名古屋から東京まで移動しましたが、とくに高速道路で重宝するのがアクティブレーンキープ(車線中央維持/車線逸脱抑制)、ACC(全車速追従機能付クルーズコントロール、定速クルーズコントロール)です。

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「アイサイト」は長年培われてきたスバル自慢の技術だけあって、トータルでの性能に不満はありません。精度や安心感は追従メーカーに比べ先頭を走っている感はあります。

ただし、部分自動運転技術が浸透し、積極的にステアリングやブレーキに介入させてくるメーカーが増えてきた欧州勢などと比べると、相対的にアクティブレーンキープ(車線中央維持/車線逸脱抑制)の介入が弱めに感じます。

これは、ドライバーがあくまで主体という考え方と、完全自動運転をにらんで積極的に介入するのかという、メーカーの哲学の違いにもよるでしょう。いずれにしても、高度なシステムの精度は必要です。

しかし、アクティブレーンキープ(車線中央維持/車線逸脱抑制)の効果があるのも確かで、新型インプレッサで長距離走らせても疲れにくかったのは間違いありません。もう少しコーナーで介入してくれればよりラクなのかな? というのはドライバーの堕落かもしれません…

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一方のACCは、高めの速度域でのブレーキングが「わかってて走ってる人」くらいに丁度いいというか、他社のものよりゆっくりめに感じます。もちろん認識率が悪いとか前走車に近寄りすぎるというわけではありません。逆に前走者がいなくなった時の加速はもう少しアクセルを踏んで先行車に追いついて欲しいという印象。そのほうがドライバーの感覚もしくは交通の流れに沿ったものになるでしょうが、これは安全方向に振ったセッティングと思われます。

なお、新型インプレッサのマルチファンクションディスプレイには、先行車キャッチの有無、車間距離がイラストで表示され、アイサイトがちゃんと働いていることがわかり、安心感も増します。

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停止時までサポートし、ストップ&ゴーもラクな「アイサイト3」(最近こうしたACCも増えましたが、依然として輸入車、国産車ともに低速域は解除されるACCが多いのも確か)、トータル性能は依然トップクラス。

シンプルなシステムにより比較的安価で、スバル車のコアモデルであるインプレッサにも用意されているのはもちろん大歓迎。「アイサイト3」の装備がインプレッサを高く評価すべきひとつの大きなポイントなのは、新型でももちろん変わりません。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久、塚田勝弘)

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エントリーグレード「TSI Trendline」から見えるパサートの実力とは?

プレス向けに用意される試乗車(広報車両)は、最上級グレードにオプション全部のせのハイスペックであることが多く、その下の中間グレードがその次に続くというのが一般的。ただし、エントリーグレードが用意されることも(たまに)あります。

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あまりトッピングされていない素の味を知るには、最廉価仕様を乗りたいところ。2016年秋に開催されたフォルクスワーゲンのオールラインナップ試乗会には、エントリーグレードも用意されていました。

パサート セダンの「TSI Trendline」は、後から追加された「2.0TSI R-Line」をのぞく全車に搭載される1.4Lの直列4気筒DOHCターボを積み、デュアルクラッチトランスミッションの7速DSGが組み合わされています。

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150ps/5000-6000rpm、250Nm/1500-3500rpmというスペックは、1.4Lという排気量から想像するよりもとくに高速域のパンチ力があります。

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ターボが過給するまでの「間」は多少感じさせますが、7速DSGのスムーズな変速もあって速度が乗ってしまえば不満はありません。ただ、極〜低速域の変速にデュアルクラッチトランスミッションならではのクセを感じさせます。

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全長4775×全幅1830×全高1485mmという大きめのサイズでも1.4Lターボで過給ダウンサイジングターボとして実用上、成立しているのは間違いなく、同じ日に「2.0TSI R-Line」の余裕ある走りとGT的な性能を堪能すると、素の「TSI Trendline」はどうなるか気になるところ。

最も感心したのは乗り心地の良さで、「2.0TSI R-Line」ほど芯の硬さはなく、荒れた路面でも快適性が保たれています。さらに、1460kgという適度な車重もあって狭い山道でも運転がしやすく、「2.0TSI R-Line」の1560kg(ヴァリアント)より100kg軽い車重の恩恵は予想以上でした。なお、装着されていたタイヤはハンコックの「KINERGY ECO(215/60R16)」。

また「2.0TSI R-Line」がヴァリアント、「TSI Trendline」がセダンということもあってか、ボディの剛性感も後者が一段と高く、後輪由来の揺れがすぐに収まってくれますし、旋回時の安定感も街中や郊外路に限って言えば高く感じるほど。

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高負荷時や高速走行時は「2.0TSI R-Line」の方が当然上回るでしょうが、普通に乗る分には、やや地味な内・外装を許容できる(あるいは好みであれば)329万円のパサート セダン「TSI Trendline」も検討範囲に入るのではないでしょうか。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

VWパサートに追加された「2.0TSI R-Line」は、ゴルフGTI同様220ps/350Nmを誇る

フォルクスワーゲン・パサートのセダン、ワゴンに新たに設定された「2.0TSI R-Line」は、2.0Lの直列4気筒DOHCターボを搭載。最高出力220ps/4500-6200rpm、最大トルク350Nm/1500-4400rpmを誇るパサート・シリーズ最速モデルになります。

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ローンチ時から搭載されている1.4L TSIエンジン車でもシーンを問わず力不足を感じさせることはほとんどなく、ダウンサイジングターボとして十分に成り立っています。

それでも、よりパワフルな走りを期待する声もあるそうで、ゴルフGTIと同じ2.0Lの直列4気筒DOHCターボエンジンを搭載することで走りを強化。組み合わされるトランスミッションは、デュアルクラッチトランスミッションで湿式の6速DSG。なお、最終減速比は同一ですが、2〜5速のギヤ比はパサート向けに調整されています。

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ゴルフGTIよりもセダンは120kg、試乗車のワゴンは170kg重く、全長やホイールベースも長くなっていることもあって、ゴルフGTIのような軽快感、切れ味鋭い走りとはいえませんが、大きめのボディを軽々と加速させるパンチ力、そして下からのトルク感は1.4TSI(150ps/250Nm)とは明らかに次元が異なります。

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235/40R19タイヤを履く足まわりは、フロントがマクファーソンストラット、リヤが4リンクと1.4L TSIと同じですが、アダプティブシャーシコントロールの「DCC」、電子制御ディファレンシャルロックの「XDS」が用意されています。

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足まわりはパサートの1.4L TSIモデル同様に硬めで、「DCC」で走行モードを「コンフォート」にすればいくらか当たりが柔らかくなりますが、良くも悪くもフォルクスワーゲンらしい硬質な乗り味。

なお、パサートのベーシック仕様「TSI Trendline」にも今回試乗する機会がありましたが、乗り心地のバランスが最も良かったのは「TSI Trendline」でした。

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日本では大型セダン、ワゴンに分類できるパサートに加わった「2.0TSI RLine」は、ワインディングや高速道路を走る機会が多い人の相棒に向くGT的なキャラとなっています。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

 

シトロエンC4の乗り心地に惚れた!? ─ 注目のCセグメント・ディーゼル車3モデルを比較

VWゴルフがベンチマークとなる、欧州Cセグメントに属するマツダアクセラスポーツ、シトロエンC4、BMW1シリーズにディーゼルエンジンが追加設定され、注目が高まっています。

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マツダアクセラスポーツが2016年7月14日にマイナーチェンジを行い、従来の2.2Lに加えて、デミオに搭載されている1.5Lディーゼルエンジンを追加設定しました。一方の輸入車ブランドでは、いち早くクリーンディーゼルエンジンを導入したBMWが、2016年5月21日にエントリーモデルとなる1シリーズに新世代直列4気筒ディーゼルターボエンジンを搭載した118dを追加しました。

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さらに2016年7月12日にプジョー、シトロエン、DS AUTOMOBILESの3ブランドを展開しているPSAグループがディーゼル車導入を発表。シトロエンブランドの中核となるC4のディーゼルエンジンを搭載するフィールブルーHDiは輸入車ディーゼル車の最安価格となる279万円という戦略的な価格設定で登場しています。

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それでは注目のCセグメントのディーゼル車3モデルをボディサイズや価格など様々な面で比較してみましょう。

今回比較する3モデルはマツダアクセラ15XD L パッケージ、BMW118dスタイル、シトロエンC4 フィール ブルーHDiです。

まずはボディサイズ。アクセラスポーツは全長4470mm×全幅1795mm×全高1470mm、ホイールベースは2700mmで車両重量は1360kgです。BMW118dは全長4340mm×全幅1765mm×全高1440mm、ホイールベース2690mmで車両重量1480kgです。

そしてシトロエンC4は全長4330mm×全幅1790mm×全高1490mm、ホイールベース2610mmで車両重量1380kgです。

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アクセラは最もボディサイズは大きいですが、車両重量が軽いのが特徴です。シトロエンC4は一般的な立体駐車場を利用できる大きさをキープしながら、全高を1490mmと3台中最も高くすることで、室内空間を広く確保しています。この3台の中ではBMW118dが最もコンパクトで、FR(後輪駆動)を活かした取り回しの良さがポイントです。

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続いて、パワートレインです。アクセラスポーツに搭載されているのは1.5L直列4気筒ディーゼルターボエンジンで組み合わされるミッションは6ATです。最高出力は77kW(105ps)、最大トルクは270Nmを発生し、JC08モード燃費は21.6km/Lを実現しています。

シトロエンC4は1.6L直列4気筒SOHCディーゼルターボエンジンに6ATが組み合わされます。最高出力は88kW(120ps)、最大トルクは300Nmを発生し、JC08モード燃費は20.2km/Lを実現しています。そしてBMW118dは2L直列4気筒DOHCディーゼルターボエンジンに8ATが組み合わされます。最高出力は110kW(150ps)、最大トルクは320Nmを発生し、JC08モード燃費は22.2km/Lを実現しています。

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排気量が最も大きなBMW118dが最高出力、最大トルクと共にカタログ燃費が最も優れているのには驚きです。やはり多段化した8速ATの効果は大きいようです。しかし最高出力の発生回転数を見ると、唯一SOHCのシトロエンC4の方が低回転域で発生。そして最大トルクもわずか250回転差とパフォーマンスは互角です。

アクセラスポーツのエンジンはパワーと燃費性能のバランスが非常に良いと感じます。排気量が最も小さいため、パワーではリードされていますが、燃費性能でリカバリーしています。

3つ目は安全装備と価格です。

マツダアクセラスポーツ15XD L パッケージの車両価格は268万9200円。衝突回避軽減ブレーキをはじめ、レーダークルーズコントロール、レーンキープアシストといった先進安全装備はすべて標準装備となっています。

シトロエンC4 フィール ブルーHDiの車両価格は279万円とアクセラスポーツと約12万円差です。しかし、先進安全装備がほとんど装着されていないというのが少々残念です。

そしてBMW118dスタイルの車両価格は378万円と、他の2台より約100万円高です。しかし衝突回避・被害軽減ブレーキや車線逸脱警報システムなどがセットになったドライビングアシストが用意され、万が一の時に役立つBMWコネクテッドドライブスタンダードなどが標準装備となっています。

安全装備の充実度と価格的な魅力はアクセラが一番です。

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最後はインプレッションです。BMW118dスタイルはスポーティさを前面に出していないため、やや柔らかめの乗り心地にビックリしてしまいました。しかし、高速走行時やコーナリング時の安定感はやはりBMWらしく、駆け抜ける歓びは健在です。

アクセラスポーツ15XDLパッケージは新機能であるGベクタリングを搭載し、コーナリングや高速走行の安定性に磨きを掛けています。ただ、3台の中で最もパワーがないため、走行中のエンジン音が大きいのが気になります。

最後にシトロエンC4 フィール ブルーHDi。このクルマは東京から仙台を往復するロングツーリングを行いました。シトロエンC4 フィール ブルーHDiのJC08モード燃費は20.2km/Lでタンク容量は60Lなので、単純に計算すると満タンで1200kmは走行できることになります。

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シトロエンC4の乗り心地は本当にソフトです。母国の首都、パリでもまだ石畳の道も残っているので、サスペンションを良く動かして路面からの衝撃を吸収してくれます。サスペンションのストローク量を大きくさせ、ゆったりとした味付けが特徴です。その効果はロングドライブでも大きく、非常に疲れづらいです。

直進安定性も高く、日帰りで仙台を往復した約850kmも一人でラクラクこなせました。しかも854km走行しても燃料計はまだ残量がタップリで平均燃費は17.2km/L。満タンで1000kmは余裕でこなせるという計算です。

仕事柄、遠くまでクルマで行くことが多いため、シトロエンC4の疲労感の少なさと財布に優しいディーゼルに心が奪われてしまいました。ただ、安全装備がもう少し充実してくれるとさらに魅力が増すと思います。

(萩原文博)

新型スバル・インプレッサを350km走らせて分かった「走り」の長所と短所は?

「SUBARU GLOBAL PLATFORM」を初めて採用した新型インプレッサ。10年、15年単位で一新されるプラットフォームですから走りに期待が高まるのは当然でしょう。

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プロトタイプを限られた条件下(日本サイクルスポーツセンターの自転車専用コース)で味見したのと、量産車を一般道で走らせての相違点、あるいは同じ点などをご報告したいと思います。

プロトタイプ試乗会が開催された日本サイクルスポーツセンターは、自転車競技用コースということもあって路面の状態は良好。上り下りや多様なコーナーがあってもボディが大きく揺すられることはあまりありませんでした。

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今回の試乗では、量産仕様の5ドアハッチバックである「IMPREZA SPORT 2.0i-S EyeSight」を借り出し、愛知県半田市にある半田工場(航空宇宙カンパニー)を出発。トレーラーやトラックが数多く走る工業地帯ということもあって路面には多様なアンジュレーションがあり、乗り心地を感じるには格好のスタート。

路面状態を考えると、225/40R18タイヤ(ヨコハマ・アドバンスポーツ)の割に乗り心地の良さが伝わってきます。路面の凹凸を乗り越える際は、18インチなのでそれなりに当たりは大きめですが、ボディのしっかり感があるため、不快とはいえません。

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しかし、距離を重ねて一般道や高速道路を走っていると熟成不足と感じさせるシーンもあります。概ね「よく動く足」という美点がある一方で、ボディ(上屋)の動きが一発、二発で収束せずに、揺れの余韻が残ってしまう点です。

100km/h巡航時の高速道路で路面のアンジュレーションがきついと特に顔を出す悪癖で、「リヤスタビの車体直止め」という工場(ライン)での工程数を増やすという手間を踏んだ割には……というのが正直なところ。

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プロトタイプ試乗会でも感じた点ではありますが、おそらく量産車も17インチの方が(セダンのG4ならなおさら)乗り心地、ボディの揺れなどは抑制されるのではないでしょうか。

また、高速道路の直進安定性、スタビリティはもう少し向上して欲しいところです。

ステアリングのセンター付近が不感気味であるのに加えて、路面が良くて風が弱いシーンでもアクティブレーンキープ(車線中央維持/車線逸脱抑制)が助けになっているものの、フォルスワーゲン・ゴルフやプジョー308、メルセデス・ベンツAクラスのように矢のようにピタッと巡航するというところまではいっていません。

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154ps/196Nmという2.0Lの動力性能は「I」モードだとややトルクが細い印象。「S」モードにすれば元気にスタートダッシュを決めてくれますし、「I」モードでも流れに乗ってしまえば不足はありません。ただし、デフォルトの「I」モード時にもう少しトルク感があった方がアクセルをそれほど深く踏まなくなる分、実燃費が改善する気もします。

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一方、新型インプレッサの明らかな美点は静粛性の高さ。中・低速域のこもり音などはほとんど感じさせず、高速道路で流れに乗って走るようなシーンでも静かな車内が保たれるため、長距離移動でも疲れを誘いません。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久、塚田勝弘)

約350kmを走破した新型スバル・インプレッサの実燃費は?

ディーラーにも試乗車が配備され、新型インプレッサが公道を走り出しました。

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プレス向けには、プロトタイプ試乗会と題して日本サイクルスポーツセンターを試乗ステージにステアリングを握る機会があり、当サイトも含めて多くのメディアに取り上げられていますが、ナンバーが付いたばかりの新車(オドメーターで約1342km)名古屋から東京まで走らせる機会がありましたので、ここでは気になる実燃費についてお届けします。

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試乗車は「FB20」型の2.0L水平対向エンジンを搭載した「IMPREZA SPORT 2.0i-S EyeSight」で、トランスミッションはCVTのリニアトロニック。ボディサイズは全長4460×全幅1775×全高1480mmで車両重量は1350kg。タイヤは225/40R18サイズ。

154ps/6000rpm、196Nm/4000rpmという2.0Lエンジンは、本体や動弁まわり、クランクシャフトなどの主運動系、吸排気系など積み重ねることで質量を12kg低減させ、CVTも7.8kg軽量化するなどパワートレーンも念入りに改良が施されています。

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レギュラーガソリンを指定する2.0L車のJC08モード燃費は、15.8km/L(CO2排出量は147g/km)となっています。

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名古屋から東京への移動は新東名と東名高速道路が主体で、名古屋市内、都内も走行しましたが、名古屋高速道路に乗る前に給油したため、約9割強が高速道路。トータルの走行距離は352.4kmで、給油時のメーター(車載)の平均燃費計は13.8km/Lを指していました。

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同距離を走った後の給油量は28.35Lで、一般的には誤差の多い満タン法では12.43km/L。平均燃費計とは1.34km/Lの差が出ています。

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なお、瞬間燃費計は高速道路の平坦地(見た目)で100km/L巡航時(ACC使用)で2.0km/Lを超えることもある一方、上り坂や一般道のストップ&ゴーでは10km/L程度のこともあり妥当でしょうか。

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15.8km/LのJC08モード燃費からすると、瞬間燃費計の13.8km/Lはカタログ燃費の約87%、満タン法の12.34km/Lは約78%に達していますので、高速道路主体であることを感じさせる良好な燃費といえるかもしれません。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久、塚田勝弘)

Cセグメントの新ベンチマークとなり得る、新型スバル・インプレッサの居住性、使い勝手

いよいよ新型インプレッサが公道を走り始めました。全長4460×全幅1775×全高1480mmのボディサイズで、先代よりもひと回り大きくなっています。

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ボディサイズ拡大の恩恵は、前後席のワイド感のある横方向、そして後席フットスペースで顕著に感じられます。

身長171cmの私がドラポジを決めて後席に座ると、膝前にこぶし3つ分、頭上に1つ分強のスペースがあり、前席下に足先が入るため、足を伸ばして座ってリラックスできますし、小柄な方であれば足を組んで座れそうです。

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身長171cmの私の場合、後席の座面高(フロアから座面までの高さ)は少し低めに感じるもの、横方向、タンデム(前後席間の距離)が明らかに拡大しているため、先代よりもリラックスできますし、開放感を抱くレベルにまで広くなっています。

最小回転半径は先代と同じ5.3mに抑制されているとはいえ、大きくなったということは狭い道での取り回しが気になります。実際、狭くて入り組んだ道が多い住宅街(東京杉並区)ではすれ違いなどで気を使うシーンもありました。

しかし、前方、左右ともに視界が良好で1775mmという全幅の割には取り回ししやすいといえそう。

また、疲れにくいシートも長所といえそうです。ホールド性と座り心地の「良いとこ取り」したような前席は一見普通に見えますが、腰痛持ちの私が約350km走ってもほとんど痛み、疲れを感じさせませんでした。

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低めのフロア開口部と大きな開口部をもつラゲッジは、重い荷物でもラクに乗せ降ろししやすそうですし、小柄な女性でも特に閉める際に苦労することはないでしょう。リヤゲートの開閉操作も力要らずでラクにできるため、重いドアの開閉が苦手な人でも気にならないはず。

また、385Lの荷室容量も350L〜360L程度が多いCセグメントモデルの中にあって広め。後席は6:4分割式でほぼフラットに可倒できるほか、荷室下に小さめですが工具や洗車用品などが少し入りそうなサブトランクが備わっています。

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静粛性の高さ、快適なシート、広いキャビン、そして質感の高さを抱かせる内装は欧州Cセグメント車と比べてもトップクラスであり、新たなベンチマークになりえる実力の持ち主といえそうです。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久、塚田勝弘)

ホンダ・フリードはハイブリッドよりガソリン車の方が速い!?

発売1か月で2万7000台ものオーダーを集めたというホンダのコンパクトミニバン「フリード」に、横浜みなとみらいの街中で試乗することができました。

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初期受注では、ミリ波レーダーと単眼カメラを使った先進安全技術「ホンダセンシング」の装着率が82%を超えているというのも注目ですが、それだけ安全・安心を求めているユーザーが選んでいるということでしょう。

実際、運転してみても市街地走行であっても、リヤタイヤがどっしりと落ち着いた印象があり、車高の高いミニバンにありがちな不安は感じません。それでいて、ハンドル操作への反応がダルというわけではなく、むしろリニアに向きを変え始めるという印象。

1.5リッターのハイブリッドとガソリン直噴のパワーユニットを積むことから同社のコンパクトカー「フィット」派生のミニバンと思われているフリードですが、今回のフルモデルチェンジでは実質的に専用設計といえるプラットフォームを与えられているのです。その成果は、安心感のあるシャシー性能につながっているといえるでしょう。

ところで、ハイブリッドとガソリンエンジンが設定されるクルマでは、モーターによるひと押しがある分だけハイブリッドのほうがパフォーマンスに有利という印象もありますが、意外にもフリードについてはガソリン車のほうが速いのだとか。

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環境負荷も抑えるレアアースフリーのネオジム磁石を世界で初めて使ったハイブリッドパワートレインは、ファイナルギヤだけでなく7速DCTの変速比もフリード専用に仕立てるほど力の入ったものですが、その変更は燃費と加速性能をバランスさせるというのが大きな狙い。

そのため、1.5リッターエンジンは、ヴェゼルハイブリッドなどが使う直噴タイプではなく、効率重視のアトキンソンサイクル(ポート噴射)仕様となっています。

一方、ガソリン車に与えられたi-VTECガソリン直噴エンジンは、最高出力131馬力もあるパフォーマンス重視のキャラクター。

実際、アクセルを踏んでみてもグッと出ていく印象が強いものとなっています。また最高出力発生回転が6600rpmという、いまどきのエンジンとしては高回転寄りなキャラクターも、CVTならではの伸びやかな加速とも相性がいいのかもしれません。

その辺りの印象について開発者に理由を訊くと、「ガソリン仕様のほうがハイブリッドよりも少しだけ加速は鋭いのは事実です。社内測定による0-100km/h加速ではコンマ数秒ほどガソリン車が速くなっています」と言います。

とはいえ、パワートレインの性格差だけではなく「車重が違う(ハイブリッドのほうが60kgほど重い)のが一番効いているかもしれません」と物理的な違いが大きいことも、エンジニア氏は教えてくれたのでした。

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●ホンダ・フリード ハイブリッドB(FWD)
車両型式:DAA-GB7
全長:4265mm
全幅:1695mm
全高:1710mm
ホイールベース:2740mm
車両重量:1400kg
乗車定員:6名
エンジン型式:LEB
エンジン形式:直列4気筒DOHC(アトキンソンサイクル)
総排気量:1496cc
最高出力:81kW(110PS)/6000rpm
最大トルク:134Nm(13.7kg-m)/5000rpm
変速装置:7速DCT
モーター型式:H1
モーター形式:交流同期発電機
モーター最高出力:22kW(29.5PS)/1313-2000rpm
最大トルク:160Nm(16.3kg-m)/0-1313rpm
燃料消費率:27.2km/L (JC08モード)
タイヤサイズ:185/65R15
メーカー希望小売価格(税込):227万6000円

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●ホンダ・フリードB(FWD)
車両型式:DBA-GB5
全長:4265mm
全幅:1695mm
全高:1710mm
ホイールベース:2740mm
車両重量:1340kg
乗車定員:6名
エンジン型式:L15B
エンジン形式:直列4気筒ガソリン直噴
総排気量:1496cc
最高出力:96kW(131PS)/6600rpm
最大トルク:155Nm(15.8kg-m)/4600rpm
変速装置:CVT
燃料消費率:19.0km/L (JC08モード)
タイヤサイズ:185/65R15
メーカー希望小売価格(税込):190万円

(写真:門真 俊 文:山本晋也)

思わず「ジャケ買い」したくなる、イヴォーク・コンバーチブル【夏江紘実ちゃんの次のクルマ選び Vo.01】

自らハンドルを握ってドライブするのが趣味という、タレントの夏江紘実さん。

いまどき珍しい、真性のクルマ好き女子です。最近、中古のトヨタ・プレミオ(渋い……)をゲットして、ますます自動車にのめり込んでいるカエちゃんが、次の愛車にしたいのは……!?

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横浜某所に並ぶ2台のランドローバー。向かって右が、スタイリッシュかつ存在感のあるダイナミックなフォルムで「ラグジュアリー・コンパクトSUV」という独自のジャンルを確立したレンジローバー・イヴォーク。向かって左が、今回の注目モデル、イヴォークコンバーチブルです!

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手前がデビューしたばかりのイヴォークコンバーチブル。4シーターのSUVにして、オープンカーという、異色のクルマ。奥には、同朋ジャガーのSUV、F-PACEが見えます。

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イヴォークコンバーチブルは、オリジナルモデルの特長であるSUVとクーペの要素を融合させた流麗なデザインはそのままに、スイッチ操作ひとつでスピーディにルーフを開閉できるソフトトップを採用しました。

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じゃーん! タレントの夏江紘実さんです。現在ラジオパーソナリティとしても活躍中の、クルマ大好き女子です!!

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イヴォークコンバーチブルの内装を見て「ダイヤル式のシフトセレクターやタッチ式のインフォメーションなど、スイッチの凹凸が少なくて外観同様にとても洗練されていますね。シートやステアリングもレザー張りでセレブ感がプンプン漂っています」とのこと。

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リアシートにも座ってみました。

「あくまでフロントシート優先で、後ろは〝オマケ〞程度。……そう思っていたけれど、体全体がしっかり包まれる感じで安心感があります。これなら女子会ドライブでどのシートに座っても快適に過ごせそう」。

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トランクスペースもしっかり確保されます。

「ルーフが開閉する代わりに、トランクが狭くて使い物にならない……かと思いきや、意外と奥行きがある。これならゴルフバックもしっかり入れられます!」。

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イヴォークコンバーチブルのエンジンは、オールアルミの2L直4ターボ。軽量化されたボディと相まって力強い加速を堪能できます。9速ATの変速フィーリングもとても滑らかで、操縦安定性を高める4WDシステムとともにエンジンのパフォーマンスを引き出します。

※編集部注:エンジンスペックは最高出力177kW(240PS)/5500回転、最大トルク340Nm/1750回転です。

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イヴォークコンバーチブル、日本でのラインナップは、HSEダイナミック(765万円)の1グレードのみ。滑りやすい路面や下り坂でもステアリング操作のみで一定速度で低速走行できるオールテレイン・プログレス・コントロール・システムを標準装備。ステレオデジタルカメラを使った自動緊急ブレーキ、レーンデパーチャー・ウォーニング(車線逸脱警告)機能など安全装備も充実。展開式のロールオーバー・バーは万一車両が転倒した際に90㎜/秒で2本のアルミバーが飛び出し、乗員の頭部を保護します。

「夏江ちゃ〜ん、試乗車の準備ができましたよ」

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夏江ちゃんチームに割り当てられたイヴォークコンバーチブル。ブラックアウトされたグリルやフェンダー、ホイールとのコントラストがカッコいい、フェニックス・オレンジのボディカラーです。

※編集部注:撮影車のシートは「エボニー」、インテリアトリムは「グロスブラックストラータ」です。

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ちゃっかりドライバーズシートに座る夏江ちゃん。

「シートヒーター付きだから冬でも快適ですね。ステアリングはグリップが太めでスポーティな印象。メーターも見やすくスイッチは直感的に操作できます」。

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「シフトレバーが見当たらなくて一瞬焦りましたが、ダイヤル式なんですね。ダイヤルをクリックしながらシフトを操作するのって、とっても新鮮。停車時には、収納されるので、コクピットまわりがとてもスッキリとした印象を受けます」。

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エンジンは、スターターボタンを押してスタート。

「主張し過ぎず、ステアリングの脇に〝遠慮気味に〞付いているのが奥ゆかしくて好感を持てます。ちなみに、私の愛車、先代プレミオは昔ながらのキーを回してエンジンをかけるタイプです」。

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すばらしい開放感。「ルーフを閉じると〝背の高い2ドアクーペ〞といった雰囲気なのに、スイッチ操作ひとつで開放感たっぷりのオープンカーに変身するというギャップがたまりません。これってTPOに合わせてファッションをコーディネートするのと同じ感覚じゃないですか?」

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すっかりアゲアゲな夏江ちゃん。

「まだドライブしていないのに、スタイリングとインテリアの雰囲気にすっかり魅せられちゃいました。レコードやCDをパッケージのデザインだけで〝ジャケ買い〞する感じ!?」

では、ドライブに行きますか。

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助手席で試乗を楽しむ夏江ちゃん。

「オープンカーって、スピードを上げると盛大に風が車内に入り込んで、せっかくセットした髪がボサボサになる! ……と思ったけど、想像以上に髪が乱れないのにビックリ!」。

どうやらウィンド・ディフレクター(オプション)が効果を発揮しているみたいです。

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クローズド状態でも、スタイリッシュなイヴォークコンバーチブル。

「たとえば海沿いやワインディング、高原のリゾート地ではオープンにして、高速に乗ったら音楽や会話を楽しむためにルーフを閉じる。そんなふうに、ドライブするシチュエーションに合わせてスタイルを選べるのは魅力的。思わず振り返っちゃうほど、リヤビューもセクシーです」。

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あらゆる部分が電動仕掛けなのにルーフ開閉だけは手動で……なんて訳がありません。センターコンソールにあるスイッチを長押しすると、ウインドウが下がり、幌が自動で格納されます。

48km/h以下なら走行中でも21秒でフルオープンになり、一方、18秒でルーフを格納することもできます。

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オープン状態のイヴォークコンバーチブル。「カラッとした秋晴れの中、高原や海沿いをドライブしたら気持ちよさそう。でも、すれ違う対向車のドライバーや歩行者の注目度が半端ないので、ヘアスタイルやファッションにも気を遣わなきゃ」と、いつの間にか、オーナー気分の夏江ちゃん。

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「ワタシのクルマ〜」と、すっかり気に入った様子。「もう、このまま乗って帰りたい」。

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「こんなクルマが自分のものだったらなぁ……」短い逢瀬は終わり、帰路に就きます。

「イヴォークコンバーチブルって、ルーフを開けるだけで別世界に連れて行ってくれるクルマだね」と夏江ちゃん

いつか、オーナーになる日を夢見るのでした……。

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■夏江紘実(かえ ひろみ)

グラビアやイベントのほか、ラジオでも大活躍中の紘実チャン。FM NACK5「The Nutty Radio Showおに魂(毎週水曜20:00〜23:00)」では話題沸騰の古坂大魔王の相方を務める。ラジオ日本「Hello! I,Radio(毎週金曜9:00〜11:00)」も好評オンエアー中。木目パネルが似合う国産4ドアセダンをこよなく愛し、愛車は中古の先代トヨタプレミオをチョイス。購入後9ヶ月で走行距離が2万㎞を超えるほどのドライブ好きで、道の駅巡りにもハマっている。

(文:湯目由明/モデル:夏江紘実/ヘア&メイク:東なつみ/写真:ダン・アオキ)

【関連リンク】

ランドローバー
http://www.landrover.co.jp/

夏江紘実

http://ameblo.jp/6363117/

母娘の日常用途だけでなくファミリーユースにも応えられるムーヴ・キャンバスのパッケージング

ムーヴ・キャンバスは、「母娘」の同居親子をメインターゲットに据えて開発されたそうですが、車名に「bus(バス)」を付けたことからも分かるように、軽ミニバン的な広さ、両側スライドドアというファミリーユースにも十分応えてくれるパッケージングを備えています。

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スライドドアの開口幅は運転席、助手席ともに595mm(タントは運転席側が595mm、助手席側が605mm)。チャイルドシートへの子どもの乗せ降ろし、ベビーカーの出し入れなども容易にできそうです。

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室内長は、タントの2200mmからわずか5mm少ない2115mm、室内幅もタントから-5mmとなる1345mmと、ほぼ変わらない寸法になっています。前後席間のタンデム距離、シート左右間の広さともに大人が4人座っても窮屈さは感じさせないはず。

タントとの大きな違いは室内高で、タントの1365mmという見上げるほど高い天井までは至っていませんが、ムーヴよりも5mm高い1285mmで、ヘッドクリアランス、開放感ともに十分に確保されています。

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使い勝手の面では、国産車初採用の「置きラクボックス」が「ありそうでなかった」といえる装備。後席の座面下に引き出し式のボックスが用意されています。なお、助手席下にも大型シートアンダートレイが標準装備されています。

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高さ30mmの「ケースモード」時は、折り畳み傘やエコバッグ、ブランケットなどの嵩張らない荷物がスマートに収納可能。ボックスを立ち上げると高さが130mmまで増す「バスケットモード」になり、荷物の入った買い物袋や小さめのバッグ、観葉植物など倒したくないモノの積載に対応します。

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積載性も十分に合格点を与えられます。後席は左右分割式のシングルフォールディングで、後席座面を前倒しすると斜めに倒れてやや段差が残ってしまいますが、こちらは後席座面下収納の「置きラクボックス」を採用したことによるもの。

フロアボードの下に大容量のアンダーボックスもありますし、日常の買い物に加えて、週末などに少し長い荷物や大きめの荷物を積む程度であれば十分に使えるでしょう。

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安全面では、軽自動車初の「AFS(Adaptive Front-lighting System)」がトピックス(「G」グレードに標準)。ステアリングの操作に反応して、ヘッドライトの照射方向を的確に照らします。コーナーや交差点などでも進行方向をしっかりと照らしてくれます。

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ダイハツ初となる「パノラマモニター」はメーカーオプション。ボディ前後とドアミラー下に計4つのカメラが配置され、トップ&リヤビューをはじめ、トップ&フロントビュー、両サイド下側を映し出すなど全6パターンの表示が可能。

こちらは、駐車時こそ最も役立つ装備ですが、狭い道でのすれ違いや見通しの悪い交差点などでも重宝します。

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ただし、後退時に自動的にトップ&リヤビューが表示されるのに、「切り返し」するため前進させると、カメラ画像からナビ画像などに切り替わってしまいます。そのため、切り返しのため前進する際、引き続き映像が必要な場合はカメラ用スイッチを押す必要があります。

現在では、前進時に速度が上がると自動的に映像からナビに切り替わる速度感応式が主流になっているだけに少し気になりました。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

誰でも履きこなせるように誂えられた「ビンテージスニーカー」のような2台のコンパクト

オーテックジャパンが、創立30周年を記念して30台限定で販売したマーチボレロA30。

価格は356万4000円で 、高い走行性能を実現するため、エンジンをはじめとして足回り、ブレーキをチューニング。高級感を演出するため、インテリアまで手を加えられたコンプリートカーです。

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コンパクトカーのマーチが支払総額約400万円というのにはビックリするかもしれませんが、同価格帯のコンパクトカーが他にもありました。

それは「アバルト595コンペティオーネ」です。5速MT車が353万1600円、ATモード付きの5速シーケンシャルミッションが369万3600円。

価格だけでなく、ボディサイズなどもライバルといえそうな、マーチボレロA30とアバルト595コンペティオーネを比較してみました。

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まずボディサイズです。マーチボレロA30は全長3865mm×全幅1810mm×全高1510mmでホイールベースは2450mmとなっています。対してアバルト595は全長3655mm×全幅1625mm×全高1500mm、ホイールベースは2300mmです。

5ドア車であり、リアの居住性は圧倒的にマーチボレロA30が優勢ですが、全幅1810mmというのは、若干取り回しに気を遣うのは間違いありません。その点、アバルト595コンペティオーネは室内空間の広さは一歩譲りますが、取り回しという点ではリードしています。

続いてインテリアです。マーチボレロA30はフロントシートにレカロ社製のバケットシートを装備しています。そしてハンドルもシルバーステッチをあしらった専用の革巻きステアリングを採用しています。

対してアバルト595コンペティオーネは、フロントシートにサベルト製のスポーツシートを採用。アルカンターラとレザーのコンビシートがスポーティさを際立たせますし、リクライニングを調整するダイヤルにもアバルトのサソリのエンブレムが彫られています。

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装着されるタイヤサイズはマーチボレロA30が205/45ZR16に対して、アバルト595コンペティオーネは205/40ZR17と1インチ上回り、ホイールの中には赤いブレンボ社製のブレーキキャリパーが収まっています。サスペンションはマーチボレロA30がカヤバ製、アバルト595コンペティオーネはKONI製です。

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搭載されるエンジンは、マーチボレロA30は高回転仕様にチューニングを施された1.6L直列4気筒DOHCエンジン。最高出力は110kW(150ps)を7000回転で発生し、最大トルクは160N・mを4800回転で発生します。組み合わされるミッションは5速MTのみ。

一方のアバルト595コンペティオーネは、1.4L直列4気筒DOHCターボエンジンを搭載。最高出力は132kW(180ps)を5500回転で、最大トルクは230N・mを2000回転で発生します。組み合われるミッションは5MTと5速セミATの2種類となります。

両車ともに使用燃料はハイオクです。

車格も価格もコンセプトも似ているマーチボレロA30とアバルト595コンペティオーネですが、乗り味は全く異なります。

アバルト595コンペティオーネはサーキット走行を見据えて徹底的に締め上げたサスペンションのセッティング。路面からの衝撃はダイレクトにドライバーに伝わりますし、バンピーな路面では跳ねることもあります。

一方のマーチボレロA30はサーキットではなく、普段の街乗りで楽しめる走行性能を目指しており、アンジュレーションやバンピーな路面でも衝撃を吸収して、上質な乗り味を実現しています。

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マーチボレロA30とアバルト595コンペティオーネ、2台の乗り味は異なるものの、誰でも運転する楽しさを味わえるという点では非常に似ています。

コンパクトカーは日常のアシとしてカジュアルで機能的なスニーカーに例えられますが、今回紹介した2台のコンパクトカーは、価格は高いけれども誰もが履きこなせるように誂えられたビンテージのスニーカーのようでした。

(萩原文博)

【関連記事】

マーチ ボレロA30の楽しい乗り味に、プリンスのDNAを感じた
http://clicccar.com/2016/10/25/410298/

マーチ ボレロA30の楽しい乗り味に、プリンスのDNAを感じた

オーテックジャパンは、エルグランドやセレナのライダーやマーチボレロなどのメーカー純正のカスタムカーを手がける日産の特装車メーカー。1986年に設立され、今年で30周年を迎えました。

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創立30周年記念してリリースされた「マーチボレロA30」は、限定30台、356万4000円で発売。即完売となりました。

今回、この限定30台というレアなモデルに試乗できることができました。

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これまでオーテックジャパンは技術継承を目的として、創立10周年にA10、創立25周年にはA25や、マーチをベースにエンジンをミッドシップに搭載したMID-11というクルマを課外活動にて製作しました。

しかし、これらのクルマは販売を目的としたものではなく、あくまでも社内活動の一環による“まかないクルマ”でした。

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こうしたクルマたちは年に一度大磯プリンスホテルで開催され、全国のオーテック車ユーザーが終結するオーテックジャパン主催のAOG(オーテック・オーナーズ・グループ)湘南里帰りミーティングでなどで展示され、ユーザーからは販売を望む声が多く聞かれました。

そこで、今回の30周年記念車は販売を前提としてプロジェクトが発足。アンケートを行った結果ベース車はマーチに決まったのです。

ノーマルのマーチ・ボレロは158万6520円、最高グレードのNISMO Sでも184万2480円のマーチ。A30の356万4000円という価格に驚くかもしれませんが、細部に至るまで徹底的に手が加えられています。

搭載する1.6L直列4気筒DOHCエンジンのHR16DEは、ノーマル比+1000回転の7000回転まで最高出力が発生するように高回転化が図られています。

専用のカムや強化バルブスプリング、バランスを向上したクランクシャフトなどを使用。コンロッドやピストンは重さの誤差がわずか0.1gという精密さを誇ります。そして職人の手によるシリンダーヘッドのポート研磨を施したうえ、一基ずつ手組されています。

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パワーアップしたエンジンを十二分に楽しめるよう、約90mmワイドトレッド化されたボディは、リアフロアのフラット化&メンバーの追加をはじめとして5点の剛性強化パーツを追加することでボディ剛性を向上。

足まわりには、専用のサスペンション、サイズアップしたスタビライザーを装着。さらにエンケイと共同開発した専用の16インチ鍛造アルミホイールには、30周年記念車の刻印が施されています。専用ホイールに組み合わされる205/45R16インチのタイヤは、優れたハンドリングとロングドライブの直進安定性を両立させたミシュランパイロットスポーツ3チョイス。

そのほかにもブレーキの大径化や、VDCのリセッティングなど、ここでは書ききれないほどのチューニングが施されています。

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筆者はマーチボレロA30のプロトタイプを追浜のグランドライブで試乗していますが、完成車の大きく張り出したブリースターフェンダーから、ただならぬポテンシャルを期待させます。

ドライバーの体をしっかりとホールドしてくれるレカロシートに腰掛け、触り心地のより革巻きステアリングを握ると、ワクワク度が一気に上昇します。

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今回の試乗は、アンジュレーションや段差のある一般道で行いました。乗ってまず感じるのが、乗り心地の良さ。ボディ剛性の向上やストリートでの使用を重視したサスペンションシステムによって抜群の乗り心地を実現しています。

試乗コースの西湘バイパスは、路面のつなぎ目などがありバンピーなうえ、路面もガタガタで乗り心地が悪い部分があります。しかし、マーチボレロA30はそんな路面状況でも路面からの入力をいなしてくれ、非常にフラットな乗り味となっています。

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そしてエンジンですが、「本当に気持ちイイ!」の一言につきます。アクセルを踏んでいくと、高回転までパワーの落ち込む部分がなく、気持ち良くレッドゾーンまで回ります。ただ、エンジンの回りが気持ち良すぎるため、ミッションがもう一段欲しくなるシーンもありました……。

最近では国産車でも最高出力600psというハイパワーなクルマもありますが、このマーチボレロA30の150psはドライバーが楽しく使い切るベストなパワーだと思います。誰が乗っても扱えるようにボディやサスペンションがセッティングされており「思わずにやけてしまう走行性能」に偽りはありませんでした。

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2016年は日産とプリンスが合併して50周年を迎えます。航空機系の企業だったプリンスはスカイラインなどがモータースポーツシーンで活躍した自動車メーカーでした。そして今年創立30周年を迎えるオーテックジャパンの初代社長はプリンス出身でスカイラインの父を呼ばれた櫻井眞一郎さんです。

30台の限定車であるマーチボレロA30には、メイドイン茅ヶ崎の職人の誇りと高い技術力というプリンスのDNAが息づいているのを感じました。

(萩原文博)

想定ユーザー・用途に特化? ダイハツ ムーヴ・キャンバスの「走り」をチェック

ムーヴ・キャンバスにはターボエンジンの設定はなく、52ps/60NmというNAエンジンのみが用意されています。

キャンバスの車両重量は、最も軽いのが最廉価グレード「L/2WD」の910kgで、売れ筋の2WDモデルは920kg。最も重いのは4WDの「X」、「G」系で970kgとなっています。

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実際に試乗してみると、この車重とNAエンジンの組み合わせでは、動力性能に不安が残ります。街中であってもNAエンジンには荷が重く、発進・加速時ともにモアパワーの印象を抱かせます。

日産デイズ、三菱eKワゴン系の初期型(登場時)のNAエンジン仕様ほど「遅い!!」と驚かされるほどではありませんが、流れに乗るにはアクセルも深く踏み込む必要がありました。

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そうなるとエンジン音も高まり、加速感と音がシンクロせずに、CVTを含むパワートレーンの音ばかり高くなるという課題も顔を出します。とくに、首都高速を走らせてみると、やはりターボ車は必須だと実感。

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ターゲット層を考えるとNAエンジンで不足はないだろう、という判断でしょう。しかし実際には、郊外などでは一般道でも結構な速度になることが多々あり、ターボの設定を望む声も出てきそうです。

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操縦安定性では、パワステの設定が妙に軽すぎることなく、直進安定性も高速道路での流れ程度なら十分に確保されているのが確認できました。また、静粛性も最新の軽自動車にふさわしいレベルで、とくに前席は国産スモールカーと比べても快適な空間といえるだけに、NAエンジンのみでかなり回さないと走らないシーンがあるのが残念です。

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タウンスピードでの乗り心地は、ムーヴやキャスト系(アクティバ・スポーツをのぞく)ほどのしっとり感までは得られていません。ダイハツだけでなく軽自動車全体の中でも最上といえる乗り味を誇るキャスト・アクティバよりも35mm高い全高が影響しているのか、背高系ならではの微小な上屋の動きも気になります。

ただし、2台試乗したうち1台はこうした動きもやや抑えられていたので、試乗車の個体差があるかもしれません。

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シャーシはムーヴ用を基本としていて、ダンパーには「フリクションコントロールダンパー(FCD)」が採用されており、バルブ応答性改善、サイズアップ(フロントC30、リヤC25)が図られています。

それでもムーヴやキャストとの乗り心地の差は、確かに感じられます。ダイハツ九州 開発部 開発室の大坪 稔さんによると「タント同等以上のボディ剛性(曲げ、ねじり)を確保していますが、ムーヴまでは到達していない」とのことで、両側大開口スライドドアという利便性を得ていますが、乗り心地とのトレードオフになっているようです。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

ダイハツ・ムーヴ・キャンパスは、内装にも細やかな工夫あり!!

現行ムーヴ以降のダイハツ車(とくに軽自動車)は、近年少し失われていた感のある内装のクオリティを再び引き上げ、スズキやホンダ、日産・三菱連合と比べてもアドバンテージといえるレベルに達している印象を受けます。

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ムーヴ・キャンパスも例に漏れず、軽自動車トップクラスといえる上質感のあるインパネを採用。プラスチック・パネルの梨地のシボも上質感があるうえに、ダッシュボード上辺は革系の素材にシボ加工が施されるという凝った仕上がりになっています。

20160926DaihatsuCanbus053もちろん、インパネには傷が付きにくい素材が選ばれていて、バッグの金具などが当たってしまっても傷つきにくく、目立ちにくいように配慮されています。

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内装色はアイボリー調が基本で、「メイクアップ」系グレードには「ファインミント」や「ミストピンク」、「マイルドモカ」の差し色が入り、差し色が入らないベーシックな内装色のほか、シックで男性ユーザーにも受けそうな「ブラックインテリアパック」も用意。

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なお、ドアアームレストとオーディオパネルまわりの差し色は、少しコストが嵩む塗装が採用されていますが、そのぶん艶(ツヤ)感が出されています。

それでも40代まで含めた女性層をターゲットにしているため、差し色が派手になり過ぎないようにミントでもピンクでも少し「くすませて」いるほか、同じ色でも面積の大きいグローブボックス部分を少し暗く、オーディオパネル部分を明るめにするなど、彩度を変えているそうです。

ピンクなどの差し色を派手になり過ぎないように「抑えた」のは、以前明るめの色を採用したところ女性からの恥ずかしい、という声もあったからだそうです。

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なお「ブラックインテリアパック」のオーディオパネルやシフトパネルには、ピアノブラック調加飾が配されています。

(塚田勝弘)

新型ルノー・トゥインゴを買うなら10万円高のキャンバストップが狙い目!?

新型ルノー トゥインゴは、スポーツサスペンション仕様を日本に導入することで、1550mmの高さ制限のある機械式立体駐車場などのへの入庫を可能にしているなど、日本市場にマッチする配慮がされています。

また、サイドストライプも日本向けは全車標準となっています。

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価格も189万円からという設定で、キャンバストップ仕様は10万円高と買い得感のある「売る気満々」という車両本体価格になっています。

カタログモデルは「インテンス」グレードのみで、パワートレーンも0.9Lターボ+6速DCTの6速EDC(エフィシェント デュアル クラッチ)のみ。

カタログモデルの購入時に迷うのは、アクセサリー類をのぞいて、オシャレな6色のボディカラー、そしてキャンバストップの有無でしょう。

また、ナビは用意されまずにスマートフォンクレードルがアクセサリーとして設定されますから、スマホのナビアプリを使う際はぜひ選択したいところ。

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スマートフォンクレードルは、ルノー製(サプライヤーはもちろんあるでしょうが)で、USB端子付でスマホの充電も可能になっています。

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あとは、先述したキャンバストップの有無をどうするか。

10万円高という価格設定は、キャンバストップの価格だけを考えると出血大サービスだそうですから、試乗した印象からもトゥインゴというキャラを考えても選ばない手はないという印象。

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確かに耐候性や防犯性、ボディ剛性感の不足(将来も含めて)などを懸念する声もありそうですが、前席、後席ともに心地よい開放感に包まれるうえに、風の巻き込みもほとんど気にする必要がなく、スイッチ操作で容易に開閉できます。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

小気味よく走る新型ルノー トゥインゴは「ファン・トゥ・ドライブ」度満点

メルセデス・ベンツの4人乗りスマート(smart forfour)とブランド違いの兄弟車であるルノー トゥインゴの新型モデルが9月15日から発売されました。

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新型ルノー トゥインゴと4人乗りのsmart forfourは、スロベニアにあるルノーのノボメスト工場で生産され、2シーターのsmart fortwoはフランスにあるダイムラーのハンバッハ工場でラインオフされています。

3代目となった新型トゥインゴ(トゥインゴⅢ)は、ローンチエディションとして1.0L NA+5MT仕様が50台限定で導入されましたが、即完売状態。

カタログモデルは、0.9L(897cc)の直列3気筒ターボに、デュアルクラッチトランスミッションの6速EDC(エフィシェント デュアル クラッチ)の組み合わせのみとなっています。

MT派の方は2017年以降の日本導入予定となっているそうなので、少し待ちという手もあります。また、ホットバージョンのトゥインゴGTの日本導入も今後あるかもしれませんし、ぜひ期待したいところ。

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さて、荷室下の奥、後席直後に49°寝かせて(傾けて)搭載されたRR(ミッドシップに近い)採用する新型ルノー トゥインゴ。

まさに、メルセデス・ベンツでお馴染みのスマートに打って付けといえるレイアウトですが、「新型スマートありきで」で新型トゥインゴが開発されたわけではなく、当初からRRレイアウトで行くという決断があったそうです。

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ルノー・日産連合とダイムラーの提携が活用され、新型スマートにもこのレイアウトが使われることになり、スケールメリットも享受できたというのが真相のようです。

さて、0.9Lターボ+6速DCTの組み合わせになる新型トゥインゴの走りは、見た目を裏切らない小気味よい走りが美点です。

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ルーテシアやキャプチャー、カングーなどルノー車でお馴染みの6速DCT(6速EDC)はゲトラグ製。変速時にアクセルを戻してあげるなど、スムーズな変速には多少のコツがいりますが、3ペダルMTやシングルクラッチなどの経験者であればすぐに慣れるはず。

逆にトルコン付ATやCVTしか乗ったことのない人には、2ペダル車とはいえ、変速時の「間」がギクシャクとしたものに感じるかもしれません。

中低速域のトルク感や高速域の伸びなど、ターボ付とはいえ900ccに満たない排気量のキャパも感じさせますし、ターボラグも最近にしては大きめという印象。

それでも、首都高速程度ならフロアにあるシフトレバーをマニュアル操作させることで流れをリードできます。パドルシフトが欲しくなりますが、そうなると189万円(キャンバストップは199万円)という価格設定はできなかったでしょう。

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乗り心地も「軽快」といえるもので、3.6m超の全長と2500mmに満たないホイールベース、1t程度の車両重量により少し跳ねるようなシーンもありますが、こうした条件の割にはよくまとめられています。

なお、日本向けは全高を1545mmに抑えるため(立体駐車場対策)スポーツサスペンション仕様を導入。その割には乗り心地も犠牲になっていない感じがします。

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フロントノーズにエンジンがないため、タイヤの切れ角を大きくできるのもあって最小回転半径はわずか4.3m。

全幅は1650mmと軽自動車よりも170mmワイドになっているものの、狭い住宅街でもスイスイとクリアできますから、取り回しのストレスもほとんど感じさせません。

日本人の平均的な体型であれば大人4人でも短時間なら移動できますし、小さな子どもが2人いても使えそう。セカンドカーとしてだけでなく、ファーストカーとしても頼りになる相棒になってくれるはずです。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

プジョー308に搭載される1.6Lディーゼルターボの小気味よい走り

今夏、「プジョー」ブランドに3モデル設定されたクリーンディーゼルモデル「BlueHDi」。

AdBlue(アドブルー/尿素水溶液)式のSCR(Selective Catalytic Reduction/選択触媒還元脱硝装置)を搭載し、NOx(窒素酸化物)を無害な窒素と水に分解するという、欧州車に比較的多いシステムが採用されています。

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日本のCセグメントモデルでクリーンディーゼルが搭載されるのは、ボルボV40、実質的に同セグメントに分類されるMINIクラブマン、BMW 2シリーズ アクティブツアラーなど少数。

プジョー308 BlueHDiは、アドブルー式SCRを搭載することを考えると299万円〜という価格は、戦略的な値付けといえそうです。なお、上質さがウリのボルボV40(ディーゼル車)は364万円〜という設定になっています。

プジョー308に積まれる1.6LのBlueHDiは、アルミ製のシリンダーヘッド、ブロックなどにより先代のディーゼルよりも約4kg軽量化。

最高出力120ps/3500rpm、最大トルク300Nm/1750rpmというスペックは、試乗車の308 Allure Blue HDiの1340kgというCセグメントとしては少々重めのボディを加速させるには力不足の懸念もありました。

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ガソリン車の308 Allureと比べて、50kg重くなっていますが、ディーゼル車らしく発進時から力強い加速を披露してくれます。組み合わされるアイシンAW製の6ATは、驚くほどのスムーズさはないものの、変速を意識させられるほど不器用ではありません。

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高速道路の合流時や追い越し時など、より力強い加速が欲しい際はややパンチ力不足や、加速の伸びに頭打ち感を少し抱かせますが、日常域で普通に走る分には不満は出ないはず。

中低速域のエンジンのダイレクト感もありますから、流れをリードするのも難しくありません。

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そして、プジョー308の魅力であるフットワークと直進安定性の両立ぶりも見事で、高速道路を巡航するのも非常に楽。もちろん、21.0km/Lという燃費も魅力で、長距離ドライブの多い方ならより満足度は高いのではないでしょうか。

(文/塚田勝弘 写真/前田惠介)

2017年モデルの日産・GT-Rはラグジュアリーセダンと錯覚する快適さを実現

2007年のデビュー以来、最大規模の変更を施された2017年モデルの日産GT-R。

車両本体価格が996万840円からという高価格帯のクルマながら、2016年7月27日の販売開始から、わずか1カ月で年間の販売台数である800台を超えており、ユーザーからの注目の高さも伺えます。

その注目の17年モデルのGT-Rに公道で試乗することができました。

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まずは変更点をおさらい。エクステリアデザインでは、フロントからリアまで大幅に変更されています。エクステリアの変更の目的はスポーティでシャープに見せるだけでなく、空気抵抗、ダウンフォース、冷却性能という3つの性能を高次元でバランスさせています。

フロント部分では新デザインのグリルを採用し、開口部を拡大させパワーアップしたエンジンの冷却性能を向上させています。また、開口部の拡大に伴い空気抵抗の増加をふせぐため、バンパーサイドの形状を最適化することで、従来の空気抵抗・ダウンフォースを維持しています

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サイドではこれまで直線的なデザインだったサイドシルを、空気の流れを改善させるため前方を張り出させています。

リアは新形状のサイドアウトレットを採用することで、リア廻りの空気の流れを改善させています。さらに新デザインのシルバーフィニッシャーのリアディフューザーを囲むバンパー下部とボディカラーを分けるラインは高い位置に変更され、よりワイドに見せる効果を発揮しています。

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インテリアではインパネやセンターパネルのデザインが大幅に変更されました。ナビのディスプレイはこれまでの7インチから8インチに拡大。一方、操作するスイッチも27個から11個へと減少。

そしてパドルシフトがステアリングホイール固定式となり操作性が向上しています。インパネには高級本革のナッパレザーを使用し質感も高めています。

それでは、いよいよ17年モデルのGT-Rの試乗です。

試乗したモデルはGT-Rプレミアムエディション。

GT-Rに乗り込み、走り出して感じたのは静粛性の高さです。吸音材や遮音構造の徹底的な見直しを行ったため、エンジン音や風切り音の室内への侵入が抑えられ、車内での会話やオーディオの音が非常に明瞭に聞こえます。その静粛性の高さはプレミアムブランドの高級セダンに匹敵するレベルです。

走行安定性の高さも17年モデルGT-Rの特徴です。2007年当時のGT-Rは路面のキレイなサーキットなどでは抜群の速さを発揮しましたが、硬いサスペンションとワイドタイヤによって、路面にアンジュレーションのある一般道ではハンドルが取られることがありました。

しかし、17年モデルのGT-Rはボディ剛性の前後バランスの調整などを行ったことで、ハンドルを修正するという操作がほとんど必要ありません。サスペンションは一般道でも高速道路でも路面からの入力をしなしてくれ、快適に走行することができます。

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最高出力570ps(419Nm)、最大トルク637Nmまでパワーアップした3.8LV6ツインターボエンジンは、非常に扱いやすいです。試乗した日はあいにくのウェット路面でしたが、安心して踏み込むことができますし、高速道路での追い越し加速も右足に少し力をいれるだけで、スッと加速してくれます。

2速や3速といったギアでレッドゾーンの始まる7000rpmまで回してもまったくパワーダウンすることがなく、スカッとする気持ちの良い加速を見せてくれました。

GT-Rは日本的なおもてなしの精神で上質な乗り心地そしてどこまでも気持ち良く乗り続けられるGT(グランツーリスモ)性能と圧倒的な速さのR(レーシングテクノロジー)という2つの両立をさせることを目指しているクルマです。

今回試乗した17年モデルのGT-Rは世界基準の圧倒的な走行パフォーマンスとラグジュアリーな装備そして乗り心地を両立させたモデルへと進化しています。

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GT-Rは登場した当時は速さが際立ったモデルでしたが、9年という時間の経過による熟成によって、速さとラグジュアリーを両立した日本のスーパースポーツカーに相応しいモデルに仕立てられています。

これまでは欧州のプレミアムブランドのスポーツカーが目標でしたが、この17年モデルのGT-Rはそれらに肩を並べるレベルまで来たといえます。

(萩原文博)

新型Eクラスの「ステアリング パイロット」は道路の白線が不明瞭でも車線を維持できる?

自動車線変更の「アクティブレーンチェンジアシスト」をメルセデス・ベンツとして初めて採用した新型Eクラス。

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同機能は、ウインカーを2秒以上点灯させると、約80〜180km/hの速度内で周辺の車両を検知して自動で車線変更する機能で、こちらは高速道路での使用を前提としています。メルセデスとしては初出ですが、高い精度での作動は十分に確認できました。

ほかにもドライバーエイドといえる安全装備が満載されています。世界初として採用されているのが「アクティブエマージェンシーストップアシスト」。

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「アクティブレーンチェンジアシスト」の作動条件である「ステアリング パイロット」の起動時に、ドライバーが一定時間ステアリングの操作をしないと、警告灯と警告音によりステアリングを握るように促し、さらにステアリングもしくはアクセル、ブレーキ、タッチコントロールの操作がないと、警告音を発しながら緩やかに停止する安全装置。

停止後は自動的にパーキングブレーキが作動します。こちらは、部分自動運転が高度化する現在、必要不可欠な機能と言えそう。

車線維持で注目なのが、先述した「ステアリング パイロット」。自動車線変更の「アクティブレーンチェンジアシスト」をオンにするには、先述したように「ステアリング パイロット」もアクティブになっていることが欠かせません。

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また、「ステアリング パイロット」そのものも機能を強化。

車線維持機能は、前走車や車線の白線を認識するタイプが主流になっています。同機能は車線や前走車に加えて、カーブそのものやガードレールなども認識。

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車線が不明瞭な道でも「ディスタンスパイロット・ディストロニック」により車間距離を維持しながらステアリング操作をアシスト。

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約130km/hまで作動する「ステアリング パイロット」の精度は、市販車の中でも確かにトップクラスにあります。

それでも市街地、高速道路を問わず多様なコーナーをもちろん手放しでクリアできるものではなく、あくまでアシスト程度。長距離移動などの際にドライバーをフォローしてくれる頼もしいサポート役ではありますが、依然として主役はドライバーです。

(文/塚田勝弘 写真/水野孔男、塚田勝弘)

新型インプレッサに速攻試乗。正常進化ではなく、まったくの別物だった!

2016年秋の発売に向けて、予約も始まっている新型インプレッサ。

スバルのエントリーモデルであり、完全新設計の「スバルグローバルプラットフォーム(略称:SGP)」を与えられたCセグメントのスタンダードを狙う力作に乗ることができました。

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今回、クローズドコースで試乗できたのはプロトタイプということですが、その感触はほぼ市販モデル。ボディパネルのチリもきれいに仕上がった状態です。

さて、新型インプレッサは新プラットフォームに、新しい2.0リッター直噴エンジンといったメカニズムが特徴ですが、サスペンション形式は見慣れたものですし、エンジンしても型式は従来通りのFB20ですから、正常進化版かと思っていました。

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しかし、ステアリングを握れば、そのフィーリングは完全に別物。レガシィやレヴォーグさえも超えたと感じるほど、フロントのしっかり感は高いレベルになっています。

具体的には上り下りが続くワインディングを模したクローズドコースにおいて、フロントタイヤの接地感は安定していて、ステアリング操作に機敏に反応するのです。

下りながらのコーナーでリアの接地感に変化を感じるのは当然ですが、仮にそうなってもフロントがしっかりと喰いついている感覚なので、安心して曲がっていけるのです。

コーナーのボトムスピードも高くなっているように感じます。

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試乗コースには、旧型(現行?)インプレッサも用意されていました。そこで同じ17インチタイヤを履くグレード同士で乗り比べてみると、圧倒的な差がありました。

あくまでメーター読みですが、新型インプレッサが70km/h程度で曲がっていける(それも余裕しゃくしゃく)コーナーを、旧型で同じように走ろうとすると不安感が漂います。

実際、メーター読みでは60km/h少々のボトムスピードになっています。いくらSGPという新プラットフォームを手に入れたとはいえ、ここまでの違いがあるというのは予想以上の進化ぶり。

いや、進化というよりは完全に別物といえるほど走りのレベルが違ったのです。

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エンジンやトランスミッションからのノイズも格段に小さく、キャビンのNVH性能も段違い。ただし、18インチタイヤを履いているグレードに限り、リアタイヤ由来のポンポンといった共鳴音が気になりましたが、今回の試乗車はあくまでもプロトタイプ。発売までの改善を期待したいところ。

それにしても、スバルのエントリーモデルだと思って乗ると、その高フィーリングに驚くこと必至。そして、旧型インプレッサのオーナーは、もし試乗したら買い換えたくなってしまいそう。そう感じるほど、走りがレベルアップしているのです。

こうした走りに加え、ステレオカメラを使った先進安全システム「アイサイト」や、国産車としては初採用の歩行者保護エアバッグを全グレードに標準装備している新型インプレッサ。

Cセグメントの新しいベンチマークと市場で評価されそうな予感ビンビンのプロトタイプ試乗となりました。

●インプレッサSPORT(5ドア)2.0i-S EyeSight AWD主要スペック(開発目標値)
全長:4460mm
全幅:1775mm
全高:1480mm
ホイールベース:2670mm
最低地上高:130mm
車両重量:1400kg
乗車定員:5名
エンジン型式:FB20
エンジン形式:水平対向4気筒DOHCガソリン直噴
総排気量:1995cc
最高出力:113kW(154PS)/6000rpm
最大トルク:196Nm(20.0kg-m)/4000rpm
変速装置:CVT
燃料消費率:15.8km/L (JC08モード)
タイヤサイズ:225/40R18

(写真:前田惠介 文:山本晋也)

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新型Eクラスの注目点は自動車線変更だけじゃない!? 未来を感じさせるインパネも必見!

新型メルセデス・ベンツEクラスにはいくつものトピックスがありますが、インテリアデザインも見逃せない点で、近未来を感じさせるのはSクラスと同じかそれ以上のインパクトがあります。さらに、インターフェイスの面でも新たな装備を用意。

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Sクラスと同じように、2つの高精細ディスプレイを配置したインパネは先進感にあふれていて、2つのディスプレイを1枚のガラスカバーで覆うコクピットディスプレイ形式になっています。

こちらは先進性だけでなく、インパネの水平方向の流れを意識させる役割も担っていて、ワイド感が車格をさらに引き上げている印象も受けます。

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中央のディスプレイにはナビやオーディオ、車両設定、多彩で高精度なカメラ映像などの表示に対応するほか、コクピットディスプレイは「クラシック」、「スポーツ」、「プログレッシブ」の3つから好みや状況に応じてチョイスできます。

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また、メーターが表示されるディスプレイには、ナビをはじめ、ECO表示や燃費履歴、走行モードの切替などを表示。

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冒頭で紹介した新しいインターフェイスは、世界初のタッチコントロール機能をステアリングに配置したもので、スマホ同様にタッチセンス機能を内蔵し、横、縦方向のスワイプに反応。

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ナビ(地図画面)の拡大・縮小を含め、インフォテイメントシステムの各機能の操作などのほとんどをステアリングから手を離すことなく操作できるのがウリ。短時間の試乗だと使いこなすには至りませんでしたが、オーナーになれば慣れるのでしょうか。

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そのほか、COMANDシステムのタッチパッド(手書き入力)や音声認識システムなど最近のメルセデス・ベンツでお馴染みの機能も用意されています。

ただし、エアコンや一部の安全運転支援機能を起動、停止できるショートカットボタンを採用し、安全運転支援機能のショートカット操作は新型Eクラスが初になるそう。

また、64色から選べるアンビエントライトを用意し、ダッシュボード下やドアパネルなどを広範囲に彩る演出も質感向上に一役買いそうです。

(文/塚田勝弘 写真/水野孔男)

エンジンは同じでも弟分より一枚上手?新型メルセデス・ベンツ Eクラスの走りをチェック!

メルセデス・ベンツの新型Eクラスのプレス向け試乗会に用意されていたのは「E 200 アバンギャルド スポーツ」。2.0Lの直列4気筒ターボエンジンと9ATが組み合わされています。

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第3世代の直噴システムである「BlueDIRECT」テクノロジーを搭載し、最大圧力200barのピエゾインジェクターをはじめ、スプレーガイド式燃料システム、マルチスパークイグニッションなどを採用し、184ps/300Nmというアウトプットと、14.7km/LというJC08モード燃費を実現。

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このエンジンは、CクラスのC 200系と同一でスペックも同じ。車両重量が重くなっているEクラスでの走りっぷりが気になるところです。

なお、C 200アバンギャルドとE 200アバンギャルドを比較すると130kg増、C 200アバンギャルド AMGラインとE 200 アバンギャルド スポーツを比べると165kg増になっています。

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大人2〜3人近い重量増ですが、動力性能に不足はありません。高速道路への合流や追い越しをかけるシーンでも余裕綽々とまでは言えないものの、容易にこなしてくれます。

さらに、9ATの俊敏かつスムーズな変速もあって流れをリードするのも日本の高速道路ならたやすいはず。

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高張力鋼板が多用されているのはもちろん、フロントフェンダーやボンネット、トランクリッドなど意欲的にアルミを採用した軽量、高剛性ボディもあって、全体的に軽やかなフットワークも美点。

逆に言えば、Eクラス単体で乗ってしまうと軽快感という意味ではCクラスとの違いを感じにくいという皮肉な点も浮かんできます。それでも、ロードノイズや風切り音などが徹底して遮断された高い静粛性や、しなやかな乗り心地など、弟分よりも確実に一枚上手になっています。

(文/塚田勝弘 写真/水野孔男)

1000kmのロングドライブでわかった!スズキ・アルトの3つの凄さ

スズキの軽自動車においてベンチマークといえるアルト。

2014年12月にフルモデルチェンジを行い、8代目となる現行モデルが登場。続いて2015年3月にはターボエンジンを搭載したスポーティモデルのターボRSを追加。そして12月に往年のボーイズレーサーモデル、アルトワークスが復活しました。

アルト走り

最近は、ターボRSやワークスの中古車が出回りはじめると同時に、アフターパーツも続々と登場してきました。

今回、大阪までアルトターボRSのチューニングカーに乗る機会があり、そのチューニングカーのインプレと、約1000kmのロングドライブで改めて実感したアルトの3つの凄さを紹介しましょう。

今回チューニングカーのアルトターボRSを用意してくれたのは大阪にあるコンプリートスピード。ワンメイクレースに参戦しながら、ターボRSだけでなくワークスのチューニングパーツも販売しているショップです。

2台がらみ リア

試乗したアルトターボRSにはパワー系のチューンではエアクリーナーとインタークーラー。そしてオールステンレス製のマフラーを装着。数値的には5馬力ほどのアップですが、アクセルのレスポンスと加速性能の向上を目指しています。

アルトエンジン マフラー

そして前後のサスペンションには車高調整式サスを装着。ショックの減衰力を調整できるだけでなく、スプリングの組み合わせによって街乗りからサーキットまで幅広く対応しています。

アルトフロントサス アルトリアサス

インプレッションはワインディングを中心に行いました。試乗車のアルトターボRSは直前にサーキット走行を行ったため、スプリングはかなりハードなセッティングでしたが、比較用に持ち込んだノーマル車で走行した時にフロントノーズの入りが遅いと感じたコーナーでも、ステアリングのギア比が変わった?と思うほどクイックにノーズが切れ込んでくれます。

アルトコンプリート走り ノーマルアルト走り

ステアリングフィールが向上した結果、アクセルを踏むタイミングも速くなり、アルトターボRSの軽快な走りをスポイルすることなく、さらに俊敏さが増しています。まさにワインディングで自由自在に操ることができます。

ターボRSはセミオートマの5AGSでも十分楽しめますが、5MTを設定するワークスならさらにアグレッシブな走りが楽しめるでしょう。

しかし、驚いたのはサーキット用セッティングのサスペンションを装着しても、しっかりとした剛性の高いアルトのボディです。硬いサスペンションを装着してワインディングを走っても、4輪ともにしっかりとした接地感があり、コーナリング時のボディの歪みも感じません。

アルトから採用した軽量で高剛性の新プラットフォームの高いポテンシャルによってチューニングしても、ボディ補強はそれほど必要ないようです。

ボディ剛性の高さは高速走行にも良い影響を与えています。

今回は1泊2日で約1000kmというロングドライブを行いましたが、高速道路の直進安定性は抜群で、疲労も非常に少なかったです軽自動車というと街乗り中心と思いがちですが、最新の軽自動車はロンドライブもラクラクこなしてくれます。

ちょっとシートのホールド性が物足りない感じがしましたが、それはレカロシートが標準装着のワークスを選べば解消できます。

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最後に凄い!と思ったのは大阪から東京まで無給油で帰って来られたこと。

ワインディング走行前に給油を行い、東京まで548.3km。東京到着時の給油量が22.94Lで、東京〜大阪を無給油で走破できるだけでなく、23.9km/Lという高い燃費性能を発揮しました。

JC08モード燃費が25.6km/Lなので、達成率93.3%という燃費面でも高い実力の持ち主と言えます。

なかなか行うことのない軽自動車でのロングドライブとチューニングカー試乗によって、アルトのシャシー性能の高さ、高速安定性、そして燃費性能をという3つの凄さを再認識することができました。

(萩原文博)

メルセデス・ベンツ GLが「GLS」になってどう変わった?最上級SUVに試乗

フルサイズの3列シートSUVであるメルセデス・ベンツGLS、しかも最上級の「メルセデスAMG GLS 63 4MATIC」に試乗する機会がありました。

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GLSは、メルセデス・ベンツのSUVであることを示す「GL」に、車格を表す「S」を付けたもので、2016年4月27日にフェイスリフトとともに車名を「GL」から変更。

なお、3列シートを有するフルサイズSUVは、輸入車ではオプションで用意するアウディQ7やBMW X5、ボルボXC90、レンジローバー・スポーツ、キャデラック・エスカレードなどがあります。

メルセデス・ベンツGLSは、今回のフェイスリフトで2本のルーバーと大型化されたエアインテークなどによりAMGフェイスになっているほか、写真の「メルセデスAMG GLS 63 4MATIC」には、現在のメルセデス・ベンツで最大径となる22インチタイヤを装着。

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インテリアは、車名からも分かるように「SUVのSクラス」を名乗るだけあって質感の高さを抱かせます。

ただし、センターのディスプレイは後付け感があり、インパネのスイッチ類が数多く配置されているなど、ひと世代前の設計。にもかかわらず「COMANDシステム」は最新バージョンになっているなど、ややチグハグな印象を受けます。

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3列どの席に座ってもゆったりと座れるシートサイズ、そしてゆとりある頭上、足元スペースが確保されているのは、全長5130×全幅1935×全高1850mmという巨体からすると当然かもしれません。

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「GLS 550 4MATIC Sports」と「メルセデスAMG GLS 63 4MATIC」は左ハンドルで、主力グレードのGLS350d系が右ハンドルとなっています。価格帯は「GLS 350 d」の1070万円から「メルセデスAMG GLS 63 4MATIC」の1900万円です。

(文/写真 塚田勝弘)

乗ってみてわかった新型メルセデス・ベンツ「Eクラス」の凄さとは?

7月27日に発売された5代目となる新型メルセデス・ベンツ「Eクラス」(W213系)。

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折からのクラスレス化により、外観はCクラスとの差が判り難くなっていますが、実車を前にすると、サイズ感の違いから「Eクラス」としての風格を感じさせます。

ちなみに車両のスリーサイズは全長4,950mm×全幅1,850mm×全高1,455mmと、先代の最終モデル比で60mm長く、5mmスリムになっており、Cクラス比では235mm長く、40mmワイドで、25mm高いなど、明確に差が付けられています。

またホイールベースについても2,940mmと、先代モデル比で65mm長く、Cクラス比では100mm長くなっています。

今回はそんな新型「クラス」の進化度について、試乗レポートを交えながらお伝えしたいと思います。

試乗車に選んだのは、アバンギャルド・シリーズの中でもAMGルックでスポーティな「E200 アバンギャルド スポーツ」。

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確実にサイズアップしている訳ですが、それを全く感じさせないエクステリア・デザインを採用しており、実際に運転していても想像する程大きく感じません。

その背景にはショート・オーバーハングで、且つステアリング切れ角が大きく、最小回転半径がAクラスやCクラスの5.1mに対して5.4mと、コンパクトに抑えられていることが寄与しているようです。

さっそく走り出してみると、2.0Lながらも184ps/30.6kgmを発生する4気筒ターボ エンジンは軽々と1.7トンの車体を加速させるだけの十分なパワーを秘めており、高回転まで一気に吹け上がります。

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その際のキャビンへの透過音レベルは、やはり同エンジンを積むCクラスよりも一段と低く抑えられており、クラス相応に静粛性が高められていることを窺がわせます。

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また、19インチのAMGホイールに装着されているミシュラン製のランフラットタイヤはフロントが245/40R19、リヤが275/35R19とかなり太目ですが、それでもロードノイズは比較的小さく、乗り心地も非常にしなやかで適切なものとなっています。

そして以前にもお伝えしたとおり、数多くの運転支援システムを搭載する中でも、新型「Eクラス」の最大のウリとされるのが、同車に初採用された半自動運転システム、「ドライブパイロット」。

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Cクラスにもステアリングアシスト機能付の「ディストロニック・プラス」が装備されていますが、Eクラスの「ドライブパイロット」では一歩進めて、車線が不明瞭な場合や表示されていない場合でも、車両やガードレールなど車線と並行する物を監視、前走車との車間を維持しながらステアリング操作をアシストしてくれます。

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これは完全自律走行に向けた1つの大きなステップとなる機能で、安全性、快適性を向上させ、運転時のストレスレベルを大幅に低減させる効果があります。

今回の試乗ではその効能を一般道で試してみました。

メーターパネル内に表示されているステアリングマークが緑色の場合、アシスト機能ONの状態で、違和感の無い適度な力でステアリング操作をアシストしてくれます。

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ただ、前走車がいない場合や、道幅が広くガードレールまでの距離が遠い一般道でのアシストは限定的で、同機能が本領を発揮するのはやはり高速道路上となるようです。

これまでの「ディストロニック・プラス」では、遠方で停止中の前走車は意外にも検知しませんでしたが、「ドライブパイロット」ではそんなシーンでも自動で停止します。

これは壁などを停止中の前走車と誤認することを防止するため、意図的に検知しないようにプログラムされていたようですが、新型Eクラスでは、ステレオマルチパーパスカメラやレーダーセンサーのセンシング能力向上により、実現したようです。

他にも一般路での不意な歩行者飛び出しに対応する「緊急回避補助システム」などの先進的なアシスト機能も装備。高速道路上ではウインカー操作で自動追い越しが可能。

そんな「E200 アバンギャルド スポーツ」のお値段は727万円。

現時点で新型「Eクラス」にはガソリンモデルの「E200アバンギャルド(675万円)」をはじめ、「E250」、ディーゼルモデルの「E220d」、そして最上級の「E400」がラインナップされています。

日本では恐らく「E200アバンギャルド」が売れ筋になると予想されますが、個人的には大きさを感じさせない軽快な走りや質感、インテリアの豪華さも含め、もはやこれで十分といった感想でした。

読者の皆さんも試乗フェアなどの機会に、最新のメルセデスを体感されてみてはいかがでしょうか。

Avanti Yasunori・画像:Mercedes-Benz)

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ジャガー・F-PACE、買うならガソリンかディーゼルか?

前後のトルク配分をデフォルトで「前1:後9」としているジャガーF-PACE。

リヤが力強く蹴り出す走りの姿勢と、舵角、速度域を問わず違和感を抱かせない電動パワステの仕上がりの良さ、走りと乗り心地の高いバランスなどが際立っています。

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ボディの80%にアルミを使った軽量ボディ、サスペンションもアルミ化した恩恵を感じさせる点で、そこに完成度の高さを感じさせるパワートレーンも加わりますから、走りの面では短時間の試乗だと大きな欠点を察しさせない完成度になっています。

試乗したのは、340ps/450Nmの3.0L V6スーパーチャージャー搭載車と、「INGENIUM(インジニウム)」と呼ばれる2.0Lの直列4気筒ディーゼルターボで、いずれもZF製8ATとの組み合わせ。

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ほかに、380ps/450Nmを誇る3.0LガソリンのV6スーパーチャージャーも控えていますが、今回は乗る機会がありませんでした。

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最量販として期待されるのは、2.0Lのディーゼルターボでしょう。

輸入車を中心に日本でもディーゼルが根付きつつあるいま、しかもその傾向が強いSUVですから639万〜728万円という価格面も含めてディーゼル仕様を指名する人が多いはず。

なお、3.0LのV6スーパーチャージャー搭載車は849万〜981万円(カタログ。導入限定車のぞく)。

430Nmもの最大トルクを誇るだけあって、大柄なF-PACEでも不足は全く感じさせません。最大トルクを発揮する4000rpmまで濃密なトルク感をもって車速を引き上げていきますし、勾配でも力強さを堪能できます。

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8ATのスムーズさはもちろん、シフトアップ、ダウンを感じさせない黒子役であるのも好ましく感じますし、必要があればパドルシフトで操作すればストレスのない変速も可能。

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一方の3.0L V6スーパーチャージャー搭載車は、340ps仕様(最大トルクはいずれも450Nm)であっても痛快な加速フィールを味わえます。

軽快なフットワークとの相性の良さ、走りの楽しさではディーゼルを上回っている印象を受けました。

スーパーチャージャーらしく低速域からの力強さに加え、高速域の伸びも、再加速する際のパンチ力も強烈そのもの。ディーゼルよりも約200万円高い理由は、ガソリンとディーゼルを乗り比べてみるとまさに実感させられます。

もし、予算が許せばガソリンを指名したいところ。しかし、ディーゼルでもフロントの重さをほとんど意識させない、F-PACEらしい切れ味のあるハンドリングを堪能できますからご安心を。

(文/塚田勝弘 写真/ジャガー・ランドローバー・ジャパン、塚田勝弘)

新生ジャガーらしい走りを味わえる初のSUV「F-PACE」

ジャガー初のSUVである「F-PACE(エフ・ペイス)」のデリバリーが7月下旬から開始されています。

ランドローバー部門を擁するジャガー・ランドローバーだけに、ランドローバーとの違いはどうなんだろう? といったあたりが気になるところです。

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レンジローバー・イヴォーク、ランドローバー・ディスカバリー スポーツがエンジン横置きのFFベースとなっているのに対し、ジャガーF-PACEはFRベースで、プラットフォームはセダンのXE、XFのそれをベースとしたものとなっています。

同じ4WDといってもFF系とFR系の違いがあるわけですが、駆動方式はもちろん、それ以上にF-PACEはスポーティな走りで驚かされます。

とくに、ZF製のラックを採用している電動パワーステアリングの手応えがナチュラルで、直進安定性とフットワークを見事に両立しています。

回頭性の高さもFR的な挙動で運転しやすく、着座位置が高めでロングノーズであることを少し意識させられること以外、SUVという形をしたスポーツカーに乗っている感じがします。

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F-PACEの開発陣は、ポルシェ・マカンをベンチマークとしたそうですが、中低速域から高速域までハンドリングを楽しめるのは甲乙付けがたいところ。

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よりスポーティな味付けという意味で「わかりやすい」のは、マカンのような気がしますが、ジャガーF-PACEも十分にホットな走りが楽しめますし、乗り心地の良さも試乗車の19インチ、20インチであっても納得させられる仕上がりとなっています。

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ハンドリングと適度に引き締まっていながら乗り心地が良い点などは、最近のジャガー各モデルに共通するもので、SUVのF-PACEはそのバランスがさらにブラッシュアップされています。

(文/塚田勝弘 写真/ジャガー・ランドローバー・ジャパン、塚田勝弘)

MTから2年後に設定されたDCT搭載のルノー カングー直噴ターボの走り

直噴ターボ+6MTの登場から2年過ぎてようやく設定されたルノー カングーの6速デュアルクラッチトランスミッション「EDC」。

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1.2Lの直列4気筒DOHC直噴ターボは、最高出力115ps/4500rpm、最大トルク190Nm/1750rpmというスペックで、EDC搭載車のJC08モード燃費は14.7km/Lとなっています。

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なお、6MT仕様の最高出力、最大トルクも同値ですが、6MTの最大トルクは2000rpmで発揮されるので、トランスミッションと変速比の違い、最大トルクの回転域が6DCTである「EDC」と6MTの違いになっています。

さらに、アイドリングストップ機構の有無もEDCと6MTの異なる点で、6MTにはストップ&スタート機能が標準装備されていますが、EDCには未設定になるそうです。

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アイドリングストップの有無で、どれくらいの燃費の差になるかは分かりませんが、JC08モード燃費だとその有無で大きな差にはならずコスト(車両価格)を考慮して装備されなかったそうです。

なお、ルーテシアやキャプチャーのEDCにはアイドリングストップが用意されているのでもちろん技術面での理由ではありません。また、アイドリングストップが付く6MT仕様がPHP(輸入自動車特別取扱制度)モデルであるため、JC08モード燃費の数値がなく、EDCとMTのカタログ燃費の差も不明。

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さて、気になる1.2L直噴ターボと6EDCの走りは、看板に偽りなくトルクフルで力強い走りを堪能できます。試乗ステージの山中湖周辺にはアップダウンと多様なコーナーが連続するワインディングがあり、さらに東富士五胡道路という高速専用道があり、シーンを問わず爽快なドライブが楽しめます。

カングーに乗っていると、そのストローク感のあるゆったりした乗り味からのんびりと走りたくなりますが、高速域でも流れに乗って走るのは容易で、さらに追い抜きをかける場合でも無理なく再加速することが可能。

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デュアルクラッチトランスミッションである6DECは、2-3速、3-4速への変速時に一瞬間を感じさせるフィーリングになっていて、DCTの中でもスムーズさという点では少し物足りなさを感じさせますが、コツをつかめば気にならなくなるのではないでしょうか。

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ほかにも、カングーならではの「粘り腰」と表現したくなるコーナリングなど、走らせることが楽しいと感じさせてくれる美点はもちろんEDC仕様もそのまま。

6MTも完成度も高いだけに、直噴ターボとMTの組み合わせを推したいところ。もし、2ペダルしか選択できないなら4AT仕様ではなく、迷わず6EDC仕様をチョイスしましょう!

(文/写真 塚田勝弘)

ボルボ・V40らしさが最も味わえる1.5Lガソリンターボ「T3」の実力

ボルボ・V40が受けた2016年7月のマイナーチェンジでは、パワートレーンやシャーシには手が入れられていないものの、最新のCセグメントモデルにふさわしい乗り味を享受できます。

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乗り心地、ハンドリングともにクセがなく、最もベーシックな「T3」ガソリンエンジン搭載車は、ベーシックモデルでありながら「軽快さと上質さ」というV40の良さを最大限味わえる仕様に仕上がっています。

「T3」というエンジンの呼び名ですが、直列3気筒ではなく1.5Lの直列4気筒DOHCターボを横置きしたFFモデルで、152ps/5000rpm、250Nm/1700-4000rpmというスペックを得ています。組み合わされるトランスミッションは、アイシンAW製の6速ATのみ。

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V40には、190ps/400Nmを誇る「D4」こと2.0Lディーゼルターボ、245ps/350Nmを発揮する「T5」の2.0Lガソリンターボも用意されていて、ディーゼルはトルクフルで高いランニングコスト、2.0ガソリンターボは「R-DESIGN」というスポーツグレードに搭載されるなど、それぞれ長所を備えています。

「T3」以外は8ATとなるなど、カタログだけ見ていると動力性能や走りに不安を抱く向きもあるかもしれません。

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しかし、「T3」エンジンは、V40よりも重いS60/V60にも搭載されていて十分な走りを実現していますし、V40 T3の登場時も乗る機会を思い起こしても期待どおりの、それ以上の軽快感、力強い走りを披露してくれました。

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6ATでも走り出しからスムーズですし、速度を上げていってもレスポンスもいいですから走行シーンを問わずストレスフリーな走りを楽しめます。

価格面も歩行者用エアバッグを含めて「全部のせ」状態ですから、339万円〜手に入る「T3」搭載モデルは、他のエンジン搭載車と比べても万人に推奨できるバランスの良さが光っています。

(文/塚田勝弘 写真/冨士井明史)

最新のボルボ顔に変身したスマートなV40はボディカラーも魅力

2016年7月上旬にフェイスリフトを受けたボルボV40。世界累計で38万台超、日本でも2万7000台に迫る販売台数で、現在のボルボを牽引しています。

さらに日本では、Cセグメント唯一のディーゼル搭載モデルでしたが、プジョー308、DS 4にディーゼルが加えたことで同クラスでのディーゼル人気がさらに高まるはず。

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V40には注目が集まっている2.0Lディーゼルのほか、ガソリン(1.5L、2.0L)も用意されています。試乗したのは直列4気筒ガソリンのT3エンジンを積む「V40 T3 Momentum(モメンタム)」。

今回のマイナーチェンジでは、新型XC90にも採用された、北欧の神話に由来する「トールハンマー」と呼ばれるT字型LEDヘッドライトが印象的。

同社のブランドマーク「アイアン」のデザイン(矢印)をリフレッシュしてフロントグリルに配置するなど、少変更でも最新のボルボらしいスタイリッシュな雰囲気に仕立てられています。

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また、細かな所ではフロントグリル内にある衝突被害軽減ブレーキ用のミリ波レーダーのカバーを見えにくいものにするなど、細部にまで配慮されています。

新しさを感じさせるのが加速させるのが新しいボディカラーで、1960年代に人気を集めたP120系のAMAZONにも採用されていた「アマゾンブルー」の現代版(新色)をはじめ、「ルミナスサンドメタリック」、「マッセルブルーメタリック」、新色「デニムブルーメタリック」、「バースティングブルーメタリック(R-DESIGN専用)」5色を用意。

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とくに「アマゾンブルー」は、メタリックではなくソリッドカラーでありながら印象的な色味を実現しています。

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内装では、2014年のジュネーブモーターショーに出展された「コンセプト・エステート」からエッセンスが受け継がれた写真の「シティ・ウィーブ」というテキスタイルシートが採用されているほか、インパネの加飾も3種類のデザインを追加。

装備面でも歩行者エアバッグを全車に標準装備し、高い安全性性能がさらに引き上げられています。

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価格は「V40 T3 Momentum(モメンタム)」が384万円、V40の価格帯は339万〜455万円、V40 クロスカントリーは354万〜459万円です。

(文/塚田勝弘 写真/冨士井明史)

最新エスティマの走りをチェック。ホンダ・オデッセイと比較すると…

2016年6月にマイナーチェンジを受けたトヨタ・エスティマは、「デザイン」を最優先に掲げているため、パワートレーンの変更はありません。

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しかし、10年選手となっている現行エスティマだけに、足まわりを中心に変更を加えることで上質な乗り味を追求したとしています。

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変更箇所は少ないながらも可能な範囲で手が入れられたそうで、左右のサイドメンバーをつなぐフロントパフォーマンスダンパーを上級グレードに用意(AERAS PREMIUM-G、AERAS PREMIUM、AERAS PREMIUMサイドリフトアップシート装着車に標準、AERAS SMARTにオプション設定)。

ヤマハ製フロントパフォーマンスダンパーにより、剛性アップ、ボディな微少な振動を減衰することが可能となったそう。

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また、最近のトヨタ車ではお馴染みのエアロスタビライジングフィンをリヤコンビネーションランプに施すことで、空力性能を向上。こちらは、乱流を起こして空力でボディを左右からしっかりと抑えるのが狙いです。効果は分かる人なら40km/hくらいから察知できるそうですが、80km/h以上の中・高速域で顕著になります。

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また、サスペンションは、パフォーマンスダンパーやエアロスタビライジングフィンの装着を前提にチューニングされているとのこと。

バネ定数の変更、ダンパーの摩擦抵抗などが盛り込まれ、初期の動き出しをスムーズにしているほか、減衰力も新しいバルブの採用により操縦安定性と乗り心地の両立が図られています。

マイナーチェンジによりエスティマが目指した走りは、より乗り心地を良くして、その上でもバネ上のボディの動きを抑制するという仕上がりを目指しているそうです。

試乗時間や試乗ステージは限られていたものの、実際の走りもマイナーチェンジ前よりも洗練されている印象を受けますし、狙ったラインをトレースしやすいなど、ハンドリング面の向上も実感できます。

しかし、2013年に登場した現行のホンダ・オデッセイと比べると、デビュー年月の差は埋めがたいものがあります。とくにフロアや足まわりからの微振動を抑える巧みさや、滑らかに動くサスペンションはオデッセイの方が上。

さらに、現行オデッセイは現在のミニバンの中でもトップクラスといえる上質な乗り心地を得ているだけに、エスティマの基本設計の古さは、すべては隠しきれないというところでしょうか。

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それでも先述したように、マイナーチェンジ前と比べると洗練された走りを得ているのは間違いなく、今回は「アエラス」系のみとなっていますが、乗り心地の面で大きな不満を抱くことはないでしょう。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

ヴォクシー/ノアG‘sが全高15mmダウンで得た走りとは?

2016年4月に設定された現行トヨタ・ヴォクシー/ノアのG’sバージョン。

「G’s」は「G SPORT」の略で、「G‘s」第1弾は2010年に登場したヴォクシー/ノアですから、2代目ヴォクシー/ノアG’sということになります。

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ミニバンであることを意識させない走りを目指し、全高を約15mmダウンさせる専用チューニングサスペンションの装着により、ノーマルよりも明らかに低く構えたフォルムは、専用の大型フロントバンパーなどのエアロにより迫力は十分。

ほかにも、専用剛性アップ&フロア下空力パーツにより操縦安定性が磨かれているそうですが、走りの印象は見た目どおりかなり硬派なもの。

足まわりは硬めに引き締められていて、コーナーでのロールも抑制され、路面にピタリと吸いつくような動きはミニバン離れしています。

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それだけでなく、狙ったラインを外すことなく走れるうえに、ステアリングを戻していった際のボディの揺れも抑えられていますから、慣れてくると背の高いミニバンとは思えない安定感を披露してくれます。

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そのぶん、路面の凹凸を素直に伝えるような、上下の動きで跳ねるような乗り心地になるのは仕方ないでしょう。

「上質な乗り味」を目指しているそうですが、あくまで「チューニング系モデルとして」という条件付きなのは間違いなく、ファミリーユースとして許容できるかは人により異なるとしても、メーカー純正によるミニバンとしてはなかなかハードだなという印象を受けました。

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硬めの乗り味はサスペンションだけでなく、215/45R18サイズのブリヂストン・ポテンザRE050Aによるものもあるでしょう。なお、ホイールはエンケイ製の7J×18の専用アルミホイールを装着。

それでも、ベース車のヴォクシー/ノアは乗り心地、操縦安定性のバランスに秀でていて、ライバルに対してリードしていると思わせてくれる点ですから、「G’sだからこれくらい当たり前でしょう?」と織り込み済みなら乗り心地もしなやかに感じるでしょうし、もっと攻めてもいいかも、と感じさせるかもしれません。

価格はヴォクシーZS G’s、ノアSi G’sともに311万9237円で、2.0Lガソリン車のみの設定になっています。

(文/塚田勝弘・写真/小林和久)

現在の「BC戦争」はいかに?プレミオ/アリオンと日産・シルフィを比べてみると…

1960年代を中心に「BC戦争」というB(日産ブルーバード)、C(トヨタ・コロナ)の激しい販売競争がありました。

1972年生まれの私にとっては、かつてそんなことがあったのか、という逸話のひとつでしかありませんが、セダン全盛期の「隣のクルマが小さく見えます」という日産サニーのコピー(対トヨタ・カローラ)とともに記憶に残るキーワードのひとつ。

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トヨタ・プレミオ/アリオンは5ナンバーサイズ枠にこだわっていて、一方の日産シルフィは、2000年に初代ブルーバード・シルフィとしてブルーバードの名を冠していました。現在の3代目は2012年に登場し、シルフィという車名になっています。

現行シルフィが3ナンバー枠に拡大されたため、サイズの比較では若干異なるものの、実際の販売現場では互いに意識しあう関係ではないでしょうか。

プレミオは全長4595×全幅1695×全高1475mm(FF)、ホイールベースは2700mmで、最小回転半径は5.3m。

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ライバルのシルフィは、全長4675×全幅1760×全高1495mm(Sツーリング)で、ホイールベースはこちらも2700mm。最小回転半径は5.2m。

ただし、シルフィ・Sツーリングの全長は、エアロパーツ装着により長くなっていて、ほかのグレードは全長4615mmとプレミオ/アリオンよりも20mm長いだけ。

両モデルを並べると、ワイドかつ伸びやかなシルフィの存在感が上回っているように見えます。しかし、プレミオ/アリオンはマイナーチェンジにより5ナンバー枠という限られたサイズの中で最大限、質感の向上が果たされているだけあって、高級感というキーワードでは明らかに上回っている印象を受けます。

内装も質感ではプレミオ/アリオンが一歩リード。ただし、シルフィがSツーリングというスポーティなグレードであったこともあり、シンプルな仕上がりで、こちらの方が好みという方もいそう。

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走りでは、1.8L+CVTのみのシルフィに対して、プレミオ/アリオンは1.5L、1.8L、2.0Lと3種類のガソリンエンジンを用意しているのが強みでしょう。

試乗したのは2.0L(2.0G EXパッケージ)で、152ps/193Nmというスペック。動力性能は街中はもちろん、高速道路でも不足はないはずで、乗り心地の良さや素直なハンドリング性能が印象的です。プラットフォームが初代プリウスをベースとしたものと考えると上出来。

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一方のシルフィも、ロードノイズがやや高い点を除けば走りは悪くありません。とくに高速域の直進安定性の高さが光ります。また、131ps/174Nmという1.8Lエンジンは、高速道路で流れをリードすることもできるなど必要十分といえる動力性能を確保しています。

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商品力では今夏マイナーチェンジを受けたばかりで、「Toyota Safety Sense C」を標準化したプレミオ/アリオンに軍配が上がりそうですが、居住性や積載性を重視するなら荷室容量510Lを確保するシルフィが適任かもしれません(プレミオ/アリオンは491L)。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

グレード選びはどうする?ヴォクシー/ノアのエアロ仕様にも追加されたハイブリッド車

トヨタ・ヴォクシー/ノアのエアロ仕様に追加されたハイブリッド車は、重量によるエミッションへの影響を軽量化によりクリアすることで実現されています。

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なお、最新のヴォクシー/ノアには、プリクラッシュセーフティ、レーンディパーチャーアラート、オートマチックハイビームをセットにした「Toyota Safety Sense C」を設定しているほか、小さな擦り傷程度なら自己修復可能なクリア塗装の「セルフリストアリングコート」が全ボディカラーに採用されています。

さて、ヴォクシー「ZS」、ノア「Si」として設定されたエアロ仕様のハイブリッドモデル。

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外観は、ガソリン車のエアロ仕様と同様に、専用エアロバンパー(フロント大型バンパー、フロントフェンダー、リヤ大型バンパー、大型サイドマッドガード)による迫力あるデザインが魅力で、軽量化に寄与している専用の16インチ鍛造アルミホイールを装着。全長4710×全幅1730×全高1825mmと3ナンバーサイズに突入しています。

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1.8Lエンジンにモーターを組み合わせるハイブリッドシステムにより、標準ボディの5ナンバー系と同じ23.8km/Lというクラストップの燃費を実現。ただし、ガソリンタンクは標準ボディのハイブリッド車やガソリン車よりも5L減となっていますので、航続距離では差が出ています。

車両重量は、軽量化により同じハイブリッド車(標準ボディ)から同じか10kg増に抑制し、ガソリン車のエアロボディと比べても20kg増(ヴォクシーZS同士の比較)に抑えるなど、苦慮した結果の商品化であることをうかがわせます。

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室内の装備では、本革巻き3本スポークステアリング、ハイブリッド専用オプティトロンメーター、消臭機能付シート表皮などが標準装備されていますが、クルーズコントロールや快適温熱シートなどは「V」グレードのみに標準装備となっていますので、快適性重視なら「V」を選びたいところです。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

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ヴォクシー/ノアのエアロ仕様にハイブリッドを追加できた理由とは?
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新型プレミオ/アリオンの木目調インテリアはまさにトヨタのお家芸

マイナーチェンジを受けたトヨタ・プレミオのフロントドアを開けると、目に飛び込んでくるのはセンターコンソールやドアスイッチパネルなど多用されている木目調パネル。

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長年、高級車の質感向上の切り札として使われてきた木目調パネルは、高級コンパクトセダンのプレミオ/アリオンにも息づいています。

しかも「ライトブラウン」の明るい色調で、最近のクルマでは見かけなくなったトラディショナルなムードが漂います。

ほかにも、ステアリングホイールのリム上部やシフトノブ、助手席グローブボックスにもアクセントとして木目調を使っているほか、シートやフロントアームレストなどにダブルステッチを施すことで高い質感を演出。

今夏のマイナーチェンジでは、インパネをセンタークラスターからシフトレバーまでのコンソールまわりを変更し、一体感とシャープな印象をもたらしています。

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さらに、メーターも一新され、4.2インチカラーTFT液晶の採用により多彩な情報が表示されるようになったほか、照明色、メーターの針を白に統一することにより高級感を付与。

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シートでは本革仕様にブラウンを採用することで上質感を強調し、ファブリック使用にはアイボリーから明るいフラクセンに変更。ブラック内装とのコーディネイトによりメリハリのある内装にイメチェンしています。

装備面では、待望の「Toyota Safety Sense C」を標準化しているのが最大のトピックス。

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「Toyota Safety Sense C」は、レーザーレーダーと単眼カメラを組み合わせることで衝突回避・被害軽減ブレーキやレーンディパーチャーアラート、オートマチックハイビームをパッケージ化した先進安全装備。

ほかにもインテリジェントクリアランスソナーや緊急ブレーキシグナル、シフト操作時の急発進・急加速を抑制し被害の軽減をサポートするドライブスタートコントロールが全車に標準装備されています。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

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若々しくなったトヨタ・プレミオ/アリオンのエクステリア
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若々しくなったトヨタ・プレミオ/アリオンのエクステリア

1957年にトヨペット・コロナとして登場した現行モデルのトヨタ・プレミオ/アリオンは、50周年を迎えたカローラよりも長い歴史をもつセダンです。

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その後、コロナ/カリーナという兄弟車関係になり、現在のプレミオ/アリオンにも引き継がれています。カローラよりも上級志向であり、日本ならではの駐車場事情や道路環境に合わせて5ナンバー枠にこだわっているのが特徴。

かつてはセダンこそがファミリーカーの王道という時代もありましたが、いまやミニバンやSUV、ハッチバックなど多様な形態に変わっています。オーナーの年齢層はやはり高めで、60代後半から70代が中心だそう。

こうした保守的なセダンであっても、現在のシニア層は若々しい人が多いですから、内・外装の質感アップだけでなく、ダイナミックな顔つきなど、言葉は悪いですが「爺くさい」クルマでは振り向いてもらえません。

トヨタではSAIがアグレッシブな顔つきになってから存在感を増していて、SAIほどではないにしても、コンパクトなセダンであるプレミオ/アリオンもテコ入れが欲しいところでした。

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外観の変更点まさに高級感、スポーティなイメージを高めることで、写真のプレミオは横バーを組み合わせたデザインにメッキを施したグリルになり、アリオンは細かいブロックメッシュが印象的なフロントグリルになっています。

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プレミオのリヤビューでは、「C」字型のグラフィックが与えられたリヤコンビネーションが新しさを感じさせる点が特徴で、アリオンは6眼のストップランプを採用することでスマートかつハイクオリティな印象。

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ボディカラーでは、新色として「ブラッキッシュアゲハガラスフレーク(メーカーオプション)」を含む5色を加えた全8色を用意。なお、価格はプレミオが190万8655円〜271万1782円。アリオンは189万7855円〜267万5455円です。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

BMW X4 M40iの良好な乗り心地に驚き!!

私が初めてBMW X4に乗ったのは導入後のプレス向けの試乗会で、箱根が試乗ステージでした。

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BMWのSUV(X4はスポーツ・アクティビティ・クーペを意味するSACを名乗る)らしく、ボディの大きさを感じさせないフットワークを見せてくれる反面、突き上げの大きな乗り心地には少し驚かされた記憶が鮮明に残っていました。

ランフラットタイヤの採用に加えて、明らかに硬い足は、小さな子どもがいるファミリーなどには正直推奨できないかな……と。

「M Performance Automobiles(エム・パフォーマンス・オートモビル)」による「BMW X4 M40i」は、さらにハードな乗り味かもと身構えて街中から走り出すと、良好な乗り心地で驚かされます。

それは速度域を問わず、走行モードを「スポーツ」にしても損なわれない基本的なテイストになっています。

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同モデルに搭載されているタイヤは、ミシュランの「スーパー・スポーツ・タイヤ」。

20インチ(F:245/40ZR20、R:275/35ZR20)という条件下では、という注釈を付けなくても十分に快適に感じるのは、ランフラットタイヤではないことが大きいはず。

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さらに、電子制御ダンパー「ダイナミック・ダンピング・コントロール」を含めたサスペンションのチューニングもガチガチに固めたスポーティ路線一辺倒ではない印象で、20インチということを考えると十分に満足できる乗り味になっています。

BMW X4の最上級モデルにして最高のパフォーマンスと乗り心地を実現しているX4 M40iは、BMW M社によるスポーツモデル作りの巧みさを感じさせてくれます。

(文/写真 塚田勝弘)

SUVとスポーツクーペを融合させたBMW X4 M40iのパワーはどうか?

BMW M社によるハイパフォーマンスモデルが増え続けています。

新型のM2クーペをはじめ、M3セダン、M4クーペ、X5M、X6MまでのMモデルに加えて、M135i、M235iという「M Performance Automobiles(エム・パフォーマンス・オートモビル)」も人気を集めています。

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「M Performance Automobiles」は、M社が手がける高性能車で、M3に代表されるいわゆる「Mモデル」のように専用エンジンなどは搭載されていませんが、ノーマルよりもハイスペックが与えられ、M135i、M235iの2台でも十分なハイパフォーマンスぶりを堪能できます。

「M Performance Automobiles」の第3弾となる「BMW X4 M40i」も、期待を裏切らないスポーティぶりです。

まず、スターターボタンを押すと野太いエンジンの始動音が響き渡ります。「バリバリ」と後方から伝わってくる音は、確かにスポーティ感はありますが、早朝深夜にエンジンを始動させ、アイドリング時でも周囲の目(耳)が気になるところ。

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エンジンは「X4 xDrive 35i」にも積まれている「N55B30A」型で、3.0L直列6気筒DOHCでいわゆる「シルキー6」と呼ばれるもの。「X4 xDrive 35i」よりも過給圧を高め、吸気抵抗を低減することで360ps/5800rpm、465Nm/1350-5250rpmというスペックを獲得。

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ベースとなる「X4 xDrive 35i」の「N55B30A」型エンジンは、306ps/5800rpm、400Nm/1200-5000rpmですから「X4 M40i」は54ps/65Nmも増強されています。

「X4 xDrive 35i」でもシーンを問わずパワー不足とは無縁ですから、パワー/トルク向上の効果は絶大。

ただし、「ECO PRO」モードにすると、ほかのBMW車同様に、かなり出力が抑えられる感じで、街中で経済的にゆったり走る分にはちょうどいい加速を引き出しやすいという利点もあります。

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一方で飛ばしたい時には物足りなく感じますから、「コンフォート」以上にして走るとストレスを感じさせず、「スポーツ」にするとさらに鋭い加速を披露。高速道路の上り坂でもどこまでも加速していきそうなパンチ力はまさに圧巻です。

ただし、この際の排気音はさらに「バリバリ」と高まり、静まった山中にこだまする様は少し演出過剰のような気もしました。

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BMWはX4やX6をSAC(スポーツ・アクティビティ・クーペ)と呼ぶとおり、SUVとクーペのクロスオーバーという味付けを与えています。

BMW X4 M40iは、SUVとスポーツクーペの融合で他にはない個性的なSUVといえるでしょう。

(文/写真 塚田勝弘)

【ジャガーF-Pace試乗2】ディーゼル版のINGINIUMエンジンの秀逸は何より静粛性だろう

日本仕様の搭載エンジンは、「INGINIUM(インジニウム)」と呼ばれる最新の2L直4ディーゼルターボと、3Lスパーチャージャー付V6ガソリンの2種。

パワースペックは、前者が180PS/4000r.p.mと43.8kgm/1750~2500r.p.m、後者には340PS/6500r.p.mと45.9kgm/3500r.p.mの標準型と、380ps/6500r.p.mと46.9kgm/3500r.p.mのHP版がある。

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トランスミットは、全車8速ATにIDD(インテリジェント・ドライブライン・ダイナミクス)採用のトルクオンディマンド式AWDを組み合わせている。

これ、通常は後輪へ90%の駆動トルクを送るが、走行状況に応じて、それを最大90%以上前輪に移行できる4駆システム。

で、今回試せたは“普通のV6“とインジニウム仕様の搭載モデルでありました。

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V6ガソリン版の試乗車は、255/50R20インチタイヤを履く35t R-Sport。L4ディーゼルは255/55R19を履いた20d Prestigeのご指定であります。

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80%のアルミ材と2%のマグネシューム部材、残り18%が各種鋼板という構成のハイブリッドボディは、走り出した瞬間に判るほどボディコアにガッシリとした剛性感が漲ってる。おまけに、前後の軸荷重配分が50:50というスポーツカー並のバランスも効いているんだろう。

2t近い車重を全く意識させることなく、軸ブレしない滑らかさで走り出せる感触が、実に印象的だ。躾けの好い電動パワステの感触はもとより、シャーシにはトルクベクタリング・バイ・ブレーキング、インテリジェント・ドライブイン・ダイナミクス等、安定して止まる、曲がるを支援するための「寿限無の黒子」が緻密に配備されていて、それらが巧みに連携し合う事により、F-PACEに爽快な走りと弛まないフィット感をもたらしている。

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脚の動きには、柔軟な関節に抑制感一杯の張りある筋肉が躍動している如きイメージが常にある。けれど、古典的なジャガーの猫脚とは最早次元の違うボディ体幹の強さが、無駄な多々良踏みを尽く吸収して不快や不安を操者に与えないのが、今様だな。

操作に呼応するインフォメーションが実に適切で、挙動を即座に掴めるから、とにかく積極的に走り込めるし、穏やかに走りたい時にも生きた路面の突然の変化に脅かされることが少ない。

試乗を通じて、「御者に極め付け忠実性の高い乗り物」という印象に終始した。

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3Lの340PSと45.9kgm仕様エンジンは、スーパーチャージャーの奏でる勇ましいサウンドはさておき、全域に滑らかで応答性も素早い部類といった印象。力感自体も、走行状況に応じた緻密なパワー制御に加え、2t近いボディ重量もあってか、持て余すほどのものではない。

8ATの制御に委ね右足の感触で操る範囲なら、万事安心感に満ちた過不足ない心臓だ。もちろんダイナミック・モードやマニュアル・セレクトで、美味しいパワーやトルクの波を目一杯たぐり出せば、御望みの「豹変」も可能ではある。

そういう時も、件の黒子軍団が必死にあちこちで働いていてくれるから、いわゆる「意のままの運転」のまま、ハイアベレージのペイスを稼ぎ出すことができる。

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方や、ディーゼル版のINGINIUMエンジンの秀逸は何より静粛性だろう。直噴のノイズレベルはオープンボンネット状態でも同等排気量のガソリン直噴に劣らない。

ディーゼルとしては異例に静かなアイドリングだ。走り出してスロットルを開けていく過程も、ノイズというより寧ろ心地よい部類のサウンドと表現できる類で、ネガなイメージに一切触らない。素敵だねぇ、これは。

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惜しむらくは3点あり。

常用性面で感じる発進トルクの、やや薄い点。加えて、日本の一般道の常用域(40〜60Km/h範囲)において、パーシャルから加速体制に入る場合などに示される、ATシフトモードの不適応感、かな。

それに、試乗車に装着の19インチタイヤの感触がやや、粗い…。

20in
20inch
19in
19inch

先ず、アイドルから踏み込んだ時に感じさせるトルクの薄さは、2Lキャパのシングルターボ・ディーゼルのポテンシャルとしては未だ払拭しにくい宿命だろうから、このタメは覚悟して堪えられる範疇ではある。

走り出してしまえば加速は驚くほど滑らかで、文字通り広いトルクバンドを掴んでしまえば、寧ろ十分に力強く感じるから。

だけど、要するに1500rpm+の巡行領域からアクセルを踏み込んで加速を所望する場合などは、もう少々積極的に、かつ滑らかにAT側がトルクのボトムを補う制御をして欲しい、って感じ。

まぁ、そういう時はマニュアルでギヤを落とすか、市街地では燃費効率に目を瞑ってATモードを予め「ダイナミック」にして走ればいいって話ではあるけれど。

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V6ガソリンに比べINGINIUMディーゼル搭載車、乗り比べると鼻先が軽く感じ、ワインディングでは身のこなしに優位性を感じさせる。のは魅力なのだけれど、19インチタイヤ装着の試乗車は若干だが、タイヤの縦バネ感が強い印象。舗装路面の状況によって、共振の収まりが悪かった点が惜しまれるところだ。

18インチや22インチ仕様は比較試乗出来なかったけれど、これだけ多彩なタイヤチョイスを可能としているわけだから、全方位に万全とは仲々いかないのかもしれない、けどね。

22in
22inch
18in
18inch

(鈴木誠男)

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【ジャガーF-Pace試乗 序章】Jaguarの歴史では英国の「いつかはクラウン」だった!?
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【ジャガーF-Pace試乗1】20世紀のジャガーと決別したイアン・カラム ジャガー
http://clicccar.com/2016/08/03/389990/

【ジャガーF-Pace試乗1】20世紀のジャガーと決別したイアン・カラム ジャガー

F-PACEのボディは、ほぼ同時期に開発されたEセグ・サルーン「二代目XF」のD7aアルミニューム骨格を基本にする。が、その81%は独自性を与えるため、専用にアレンジされたものだという。

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スタイリングはXF&XF Mk2と同じジャガーの現デザイン・デレクター、イアン・カラムの担当だ。

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99年に先任のジェフ・ローソンからジャガースタイリングの重いバトンを渡されたカラムだが、それまでの60年代を意識下とする懐古調のジャガーの造形エッセンスを、08年の初代XFを機に大幅に切り替えている。

シンプルな塊に観せながらも、広範囲に巧みなプレスラインの彫塑処理を図ることで途切れぬ緊張感を全身に保たせた、張りのあるカラム調のボディ造形は圧巻だ。中でも、ロングボンネットの先に収斂する短いオーバーハングに刻み込まれた開口の大きい3ピースグリルと、睨みの利いた切れ長のヘッドライトが相まって魅せる、躍動的で力感ある野獣の表情は見事だ。

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このカラム・ジャガーの趣には、それまでのどの世代のジャガーとも異なるモダーン、かつクールな佇まいがある。Grace、Pace、Spaceの押えるべき3点の基本も、カラムはモデルを追うごとに確実なステップアップを果たしつつある。

09年発表のトップレンジXJ(SWB)を、15年生まれのXF-Mk2は居住性の基本となるSpace面で明らかに抜き去っているからだ。

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そのXFの派生形となるF-PACEは、サルーンが主体だったジャガーの体系を、間違いなく打開する次代への意欲作だろう。

カジュアルでスポーティかつモダーンな新世代ジャガーは、おそらく今後その主軸をXE&XFのサルーン系と、F-PACEを切り口として計画され、今後順次登場する幾つかのSUV系による二本立てで構築されるものになる、と予想できる。

2座スポーツのF-typeの行方は読みにくいが、その上でトップレンジのXJは一段とラグジャリーなハイクラス・スポーツサルーンへと発展することになるだろう。

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F-PACEの基礎造形を大雑把に言ってしまえば、XFサルーンの屋根を延した上で、Dピラーをキックアップさせてハッチバック化し、SUVならではの嵩高いアピアランスを持たせたものだ。

この技法の応用により、シューティングブレーク的なミドルレンジワゴンの誕生も、近い将来十分に予想できる。

対XF比で言うと、F-PACEのサイズは全長-234mm、ホイールベースで-86mmそれぞれ短いが、全幅は+56mm拡く、全高も+212mm高い。乗員の着座ポジションをボディ高の増加を活かして見直したおかげで、キャビンは内側に喰い込ませたリアドアの厚みにも関わらず、特に長手方向に結構なゆとりがある。

ホイールベースの短縮にも関わらず508L(左右後席を畳めば最大1598L)のブートスペースが確保でき、かつオフロード走行を見越したオーバーハング長の最適化も合わせて実現している点は、流石だ。

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ボディ側面は、側突耐性を確保するストロークを、膨張では無く内側に飲み込ませる技法を基本に構築したために、ドアは相応に厚い。

けれど、ピラーを悪戯に内側へ絞り込んでいないため、側面をスクエアに切り立てたそれは、ショート・ボブの髪型みたいにスリークで涼し気だ。車幅をつかみ易い気遣いを感じさせるまとめが、好い。

ボリューミーなカイエンやマカンのそれとは実に対照的だ。

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惜しむらくは、リアエンド周辺の処理で、些か実用面での纏りを無視した感が残り、運転席から確認させる後方が遠方視点寄りにして視野が狭い点が難、だと感じた。

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XFに似たインテリアの印象は、正しく20世紀のジャガーと決別した風情。これぞカラムの描くクールの具象なのだろう。

が反面、「古典的なジャガーの世界」を些かなりとも身を置く空間に望みたい向きには、モダーンがドライに過ぎて、「色気や艶、湿り」等が思いっきり排除されている感は、如何にも惜しい。

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VWとアウディ、レンジローバーとランドローバーの持分を参考に想えば、独行ゆえに新世代ジャガーブランドの居住空間の設えに関する試行錯誤、まだ最適解に到ってはいないような気がするのだが、いかがなものだろう

(鈴木誠男)

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【ジャガーF-Pace試乗 序章】Jaguarの歴史では英国の「いつかはクラウン」だった!?
http://clicccar.com/2016/08/03/389819/

【ジャガーF-Pace試乗 序章】Jaguarの歴史では英国の「いつかはクラウン」だった!?

ジャガー・カーズの前身は、今から94年前に創業の側車(オートバイのサイドカー)屋まで遡れる。けど、そこまで振り返ると物語が壮大に過ぎて、今のジャガーとの脈絡図り難くなる。

XJ12
XJ12

クルマの側から眺めて今のジャガーの基礎体系を固めたモデルは、いささか乱暴な言い方だけど1968年に発表されたXJ6(&12)シリーズじゃないか。

歴代ジャガー・モデルに共通するコンセプトはGrace(優雅さ)、Pace(速さ)、Space(広さ)って事だが、XJはまさに何処を切っても、そつなくそれ等の持ち味を備えていた。ただしそれは、70年代以前の価値観に照らしてだけれど。

此奴ぁ86年まで18年間もシリーズを重ねて作り込まれたんもんだが、同時にそれはイギリスの経済不況の只中で築かれた足跡だから、輝きだけで無く多くの時代の影も背負いこんだ作品て事も言える。

まぁ工業製品として診ると、電気系統の脆弱さとか、日本の気候ではオーバヒート例もかなりあって、全般に信頼性は褒められたものでは無かったなぁ。でも、WW2を境に徐々に失われて行った幾つかの「英国製高級車ならではの風情」を、比較的身近に感じさせる存在として初代XJは、大きな役割を果たした。同時代のR.Rやベントレーも「信頼性の内実は大差ないレベル」なんだけど、価格は一層高かったから。

XJ6&12シリーズこそ70〜80年代のイギリスを代表できる「現実的な高級車?!」だった点は、おそらくは誰も否定できないと思うけれど。

XJ40
XJ40

このXJに、機械的信頼性がもたらされるのは86年発表のXJ40かな。これが実質的に創業者ライオンズの承認した最後のジャガーだね。その後XJは、94年のX300系を経て、2003年にフルアルミモノコックボディのX350に発展する。

XJ8(X350系)
XJ8(X350系)

で、ここまでのXJジャガーの立ち位置、日本車でいうところの「いつかはクラウン」に近いかも。

まず違う点から言うと、ジャガーはドライバーズカーの性格が強く、クラウンは概ねリヤパッセンジャーサイドのクルマという感じ。搭載エンジンや装備によって価格差はかなり幅が大きく、上級モデルは専ら個人所有車に、ベーシックから中級モデルはジャガーの場合、カンパニーカーって呼ばれる「企業の管理職級に貸与される社用車」需要に生産が支えられていた。

クラウン等が、その頃の日本を代表する高級車だった一方、タクシーやハイヤー等の特定需要に支えられていたのに似ているだろう。

現行XJ(X351系)
現行XJ(X351系)

以上のベクトルが明確に変化し始めたのは、比較的最近のこと。

XJ系で眺めれば09年に発表された現行X351系からだけれど、それはむしろ、その前年に発表された一回り小さいX250(初代XF)の方に、より意味が大きかった。

経営母体がいくつも変転したジャガーだけど、フォードに時代を経て現在のタタ・モータース傘下に収まったのを機に、以降ジャガーのモデルコンセプトはかなり大きな方向転換を図ってる。

一言で言えば、それまでのオフィシャルやビジネスライクなスタイル重視とは趣が違う、プライベートカーとしてのカジュアルでスポーティなスタイリスト、とでも言おうか。初代XFは、まさにその先鞭を打ったモデルだろうな。

勿論、ドライバーズカーである事の軸足は何一つ外さない。のだけど、ジャガー全体のイメージがそれ以前よりモダーンで軽快、かつ様々なステージにマッチできるクルマへと柔軟に変貌を遂げたわけだ。

その一環として、より広いフィールドでジャガーならではの持ち味を満喫させる、舗装路から踏み出せるジャガー初のクロスオーバーモデルが、「F-PACE=エフ-ペイス」として生まれ出たって話だ。

勿論そこには、Grace、Pace、Spaceという、ジャガーの基本理念が、新しい時代と多様な環境にマッチできる形としてアレンジされ、確と受け継がれている。

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(鈴木誠男)

内装の質感向上でスバルBRZは大人のスポーツモデルに変身!?

今夏、ビッグマイナーチェンジを受けたスバルBRZ。

「大幅改良前のBRZもベストだと思っていたが、さらに引き上げる」という意気込みをもって、内・外装、走りなどが磨き上げられています。

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外観はフェイスリフトが中心で、MT車のドライバビリティ向上、乗り心地と操縦安定性の改善などが主なテーマ。今回は内装のクオリティアップについてご紹介します。

「所有する喜び」を感じさせるインテリアを掲げた後期型BRZは、Sグレード以上に4.2インチのカラーTFTをメーターに追加しているほか、インパネをはじめニーパッドやメーターパネルバイザーにレザー調素材を新たに採用し、レッドステッチも施すことで上質感とスポーティムードを演出。

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また、新意匠となったステアリングホイールは小径化されているだけでなく、断面形状の最適化に加えて、高触感革を使うことで操作性とグリップ性を向上。実際にしっとりした触感を味わえますし、スポーティな走りをしても滑ってしまうことはありませんでした。

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ほかにも、「R」グレードにカーボン調インパネパネルを、「S」にデザインフルオートエアコンスイッチパネルを採用するなど、スポーツモデルらしさを強調するフィニッシャーも用意されています。

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スバルBRZが取り込みたい若い人はもちろんですが、より本物志向を抱いている大人の層にビッグマイナーチェンジを受けたスバルBRZがインテリアの色気でアピールできるか気になるところ。

とくに、「S」グレードのスポーティな雰囲気が魅力ですが、より上級志向の方には2016年秋に登場予定の最上級グレード「GT」を待つ手もあります。

(文/塚田勝弘 写真/森山良雄)

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「プラス2」の後席を持つスバルBRZの走りはどこまで引き上げられたか?
http://clicccar.com/2016/08/01/389767/

スポーティなのに乗りやすくなった後期型スバルBRZ
http://clicccar.com/2016/07/31/389469/

「プラス2」の後席を持つスバルBRZの走りはどこまで引き上げられたか?

マツダの初代ロードスターの登場が世界的に熱気を持って迎えられたのは、デザインや価格などはもちろん、誰もが気軽にスポーツカーを楽しめるというのが大きかったはずです。

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ワインディングやサーキットでなくても、街中の交差点をひとつ曲がるだけでも楽しい。こんなモデルはスポーツカーに限らず、走りを楽しむ人から歓迎されます。

とくにスポーツカーに大切な旋回性能は、ボディサイズや重量、足まわりのセッティングなど多様な要素により決まりますが、全長やホイールベースの長さが大切です。

トヨタ86/BRZは、ドライバーをより低く座らせるだけでなく、ドライバーを中心に回転するような設計がされていますが、2570mmという長すぎるホイールベースは心地よい旋回性能という面では、物理的な限界も感じさせるところ。

なお、ひと回り以上小さなマツダ・ロードスターは2310mm。

商品企画上、「プラス2」のリヤシートが不可欠なのは理解できるにしても、純粋に走りを楽しむなら「後席要らないかも」と思わされることも。

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そうはいっても与えられた条件下でのハンドリング向上は、スポーティ志向のユーザーも振り向かせるためには欠かせないはず。

ビッグマイナーチェンジを受けたスバルBRZは、乗り心地と操縦安定性の両立という、相反するメニューが掲げられ、ダンパーやコイルスプリングのチューニング、リヤスタビ径のアップ、車体剛性強化、EPS(電動パワーステアリング)のチューニングなどが盛り込まれています。

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さらに、サスペンションセッテイングにより、横滑り防止装置であるVDC介入のタイミングを最適化し、スピン回避のため「利けばいい」というレベルから進化。

とくに「Track」モードを追加し、車両コントロール領域を拡大し、通常モードよりもドライバーによるコントロール性を重視するなど、介入のしきい値が変更されています。

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公道の普段使いでは、「Track」モードにはせずに、基本制御が変更されたVDCによる安定感と安心感のある走りを楽しみ、サーキットであればまさに「Track」モードで徹底してコーナーを攻める、そんなメリハリのあるハンドリングが楽しめるのが最新のスバルBRZといえそうです。

(文/塚田勝弘・写真/森山良雄)

スポーティなのに乗りやすくなった後期型スバルBRZ

トヨタ86、スバルBRZがビッグマイナーチェンジを受けて、後期型にスイッチしました。ここではスバルBRZについて走りの印象をお届けします。

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スバルBRZ(トヨタ86も)の使命のひとつに、20代など若年層にスポーツカーの魅力を届けるというものがあります。

BRZが2012年3月に発売されて以来、グローバル販売台数は約5万5000台、国内は約1万5000台だそうで、台数だけ聞くと物足りなく感じますが、BRZ/86の投入は「いま時の若者」に振り向いてもらい、さらに新型ロードスターの登場もあって国産クーペ/スペシャリティカーという絶滅しかけていたマーケットを活性化させているのは間違いないでしょう。

内・外装の質感向上とともに、新型スバルBRZで追求されているのはドライバビリティの向上。

MT仕様のエンジンは、アルミ化と赤ちぢみ塗装が施されたインテークマニホールドは、吸気脈動効果最大化を図るべくブランチ長最適化、ポート断面積の拡大などが盛り込まれています。

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こうした吸排気のフリクション低減などにより、最高出力は改良前の200ps/7000rpmから207ps/7000rpmに7psアップ。最大トルクも205Nm/6400-6600rpmから212Nm/6400-6800rpmに向上。

また、MTのファイナルギアも4.100から4.300に低くなっているほか、6速の耐久性向上も盛り込まれています。

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7ps/7Nmアップしたパワーとトルクにより、中低速域ではより扱いやすく、高速域では伸びやかさが増しているのは十分に感じられます。とくに、2000-4000rpm付近のトルク増強が利いている印象で、やや改良前モデルで感じられた線の細さは解消されています。

それだけでなく、エンジンレスポンスの高まりや高回転域の吹き上がりもシャープになっていますから街中から高速、ワインディングまで改良前よりも扱いやすく、しかも楽しめるパワートレーンになっているのは朗報。

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ほかにも操縦安定性や乗り心地の向上、新グレード「GT」の設定など見どころは満載となっているスバルBRZ。GTの追加もあってより幅広い層にアピールするスポーティモデルに仕上がっています。

(文/塚田勝弘 写真/森山良雄)

買うならどっち?「kouki」86、GとGT系グレードの装備を徹底比較!

2016年8月1日から販売が開始される“kouki”ことマイナーチェンジ版のトヨタ「86」。購入に向けて、財布と相談している人も多いのではないでしょうか?

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新しい86のグレード構成はシンプルに、ベーシックな「G」(6MT:262万3320円/6AT:264万7080円)、中堅の「GT」(298万1880円/304万8840円)、そして最上級「GT Limited」(318万3840円/325万0800円)で構成されます。

かつてラインナップされたモータースポーツ用のベース車「RC」は、今回、カタログから落とされました。

発売に先立って、簡素な「G」と豪華な「GT Limited」の撮影をすることができたので、両者を写真で比べてみましょう。

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まず、わかりやすいところで、ホイール。

青いボディのGは16インチ。タイヤサイズは、205/55R16です。白いボディのGT Limited(及びGT)は、17インチになります。意匠も異なりますね。タイヤサイズは、215/45R17と、一段とスポーティになっています。

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Gのスタイリング。特に「ショボい」という印象は受けません。地味めなホイールも、かえってスパルタンでいいかも。なお、フォグランプが省略されています。

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GT Limited(及びGT)には、フォグランプが付きます。ホイールと併せて、華やかな印象ですね。

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スポーツカーは、他車を抜き去ったあとの後姿も大事。Gのリアビューは、アッサリしています。「黒」の面積が大きくて、視覚的に締まった感じ。

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GT Limited(及びGT)には、マフラーエンドに「マフラーカッター」が付くので、ポイントが利いた後姿になります。GT Limitedの専用装備「リアスポイラー」は、意外に目立ちませんね。

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走行中のG。Gのブレーキは、通常のディスクブレーキですが、MT車にはベンチレーテッドタイプがオプションで用意されます。ベーシックグレードながら、MT車にはトルセン式LSDが標準で装備されます。なお、GのAT車には、ベンチレーデッドディスクやトルセン式LSDの設定がありません。

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同じく、走行中のGT Limited。GT Limited(及びGT)は、AT車も含めて、16インチのベンチレーデッドディスクブレーキ、トルセンLSDが標準装備。そのうえGT Limitedには、ブレーキパッドにスポーツブレーキパッド(ハイμパッド)が奢られます。

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上級グレードと大きく異なるのが、Gのインテリア。ブラック基調というか、(ほぼ)黒一色です。うーん、禁欲的……。

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GT Limited(及びGT)は、2トーンのインテリア。ググッと豪華になります。GT LimitedとGTは「ブラック&ブラック」「レッド&ブラック」、そしてGT Limited専用色として、写真の「タン&ブラック」が用意されます。

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ステアリングホイール、パーキングブレーキレバー、シフトブーツなどのステッチが効果的ですね。小径3本スポークのステアリングホイールは、GT Limited(及びGT)は本革巻き、Gはウレタンとなります。

GT Limited(及びGT)のAT車は、パドルシフト付き(GのAT車には設定なし)。また、GT Limited(及びGT)のペダル類は、スポーツアルミペダルになっています(Gではオプション装備)。

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GT Limitedには、バックスキン調のアルカンターラと本革のコンビネーションシートが採用されました。しかも、パーフォレイション(小孔)付き。

GTのシートは「ブラック&ブラック」「レッド&ブラック」の2種類から選べます。シート地は、GT Limitedと異なり、ファブリック仕様となります。

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ちょっと寂しい、Gのギアレバーまわり。

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GT Limited(及びGT)とGでは、空調関係でも差が付きます。上級グレードは、左右独立式のオートエアコンを採用。スイッチ類は、ダイヤル+トグル調の「ピアノタッチスイッチ」です。一方、Gはシンプルに、3つのダイヤル式となります。

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グレードを問わず、ATモデルには「VSCオフ」「TRACKスイッチ」に加え、「スポーツ/スノーモード」が設定されます。

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こちらは、MT車(G)です。

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86全グレード中、唯一、GT Limitedには、贅沢にもシートヒーターが装備されます。

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Gのコンビネーションメーター。

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GT Limited(及びGT)には、コンビネーションメーター内に、4.2インチのディスプレイが組み込まれます。

以上、GT LimitedとGの主な違いを見てきました。いかがだったでしょう……?

ベースグレードのGでも、MT車ならちゃんとトルセン式LSDが付いてくるのが、良心的ですね。

フル装備のGT Limitedもカッコいいけれど、個人的には、むしろシンプルなGの方に肩入れしたい気持ちです。なにしろ、両者には50万円以上の差がありますから。

庶民派スポーツカーとして、廉価なGを買って、自分なりにモディファイする。惜しげなくサーキットの走行会に参加する。トヨタ86には、そんな楽しみ方が似合っている……というのは、贔屓の引き倒しでしょうか!?

(文と写真:ダン・アオキ)

スバル・レヴォーグ STI Sportは輸入ステーションワゴンを超えた!?

従来のコンプリートカーとは異なり、工場でのインライン化が可能となったスバル・レヴォーグ STI Sport。

その前に2016年4月に年次改良でC型となったレヴォーグのポイントをおさらいします。

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当初、国内専用モデルとしてデビューしたレヴォーグですが、欧州やオセアニア、アジアなどにも投入されています。世界的なSUVブームとはいえ、大きすぎないワゴンのニーズは依然としてあるということでしょう。

C型レヴォーグの改良点は、日本よりも速度域の高い欧州から要望があったという静粛性の向上をはじめ、安全性の強化、質感のアップが盛り込まれています。

静粛性向上のメニューは、フロントドアガラスの室内側ショルダー部ウェザーストリップを2枚化することで車内への透過音を低減させたほか、リヤクォーターガラスの板厚アップやカーゴルームの吸音材追加など、非常に細やかな改善によって静かなキャビン空間を実現しました。

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安全面では、フロントドアビーム強化、リヤシートベルトにプリテンショナーを追加、後席シートクッションの乗員保持向上などが注目点です。

質感向上では「1.6GT EyeSight」に新デザインの17インチアルミホイールを採用。また、「GT-S」には、メーカーオプションで「ブライトパール」内装が新たに加わっています。

C型になってグレード整理もされたレヴォーグですが、やはり最大の注目は「STI Sport」。一見あまり変わっていないように見えるかもしれませんが、外観の変更点は専用18インチアルミホイール、フロントグリル、リヤゲートにSTIロゴの追加、フロントバンパーとグリル&メッキバーの新設計、フロントフォグカバーの新設計、フロントフォグランプのLED化、マフラーカッター(100パイ真円形状)など、多岐にわたっています。

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内装もステアリングなどにSTIロゴの追加、赤ステッチの追加、ドアトリムへの不織布表皮の追加など、細部にまでこだわりを感じさせます。

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「1.6 STI Sport」は323万円〜、「2.0 STI Sport」は365万円〜という価格設定も装備内容を考えると魅力的といえる内容になっています。インライン化により価格を抑えることで、輸入ステーションワゴンにも対抗できる商品力を確保しているのは間違いないでしょう。

(文/塚田勝弘・写真/森山良雄)

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スバル・レヴォーグ「STI Sport」の乗り味はノーマルを超越!?
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スバル・レヴォーグSTI Sportのシャープで扱いやすいハンドリング
http://clicccar.com/?p=388219

スバル・レヴォーグ STI Sportのシャープで扱いやすいハンドリング

スバル・レヴォーグに最上級グレードとして追加された「LEVORG STI Sport」は、こちらでもご紹介したように、良好な乗り心地を実現するなど、シャーシまわりが最大の見どころになっています。

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フロントダンパーの「ダンプマティックⅡ」は、スバル WRX STI S207譲りで、メルセデス・ベンツCクラスなどが採用していますが、日本の量産車ではスバルが初。

大小様々な路面からの入力に対応する乗り心地だけでなく、ステアリング操作に素直に反応する利点、直進安定性やロール剛性、スラロームなどでステアリングを戻した際の追従性などの向上もレヴォーグ STI Sportの狙いのひとつとなっています。

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「ダンプマティックⅡ」以外にもステアリングギアボックスの取付部の剛性アップにより、切れ味鋭いハンドリング、連続するコーナーでも容易に破綻しない追従性も謳われています。さらにリヤサスペンションの最適化によりロール特性、乗り心地の改善を図っているとのこと。

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ショートサーキットでは、コーナーの大小を問わずロール剛性の高さを感じさせてくれました。

ボディの傾きや揺り返しなども抑制されていますから非常にコントロールしやすいうえに、足も硬く引き締められている印象も希薄で、ハンドリングと乗り心地の両立は想像上以上に高い次元で行われています。

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ただし1.6Lと2.0Lは、AWD方式が異なりますから操縦性には差が感じられます。1.6Lは、イニシャルトルクが「前60:後40」で滑りやすいウェット路面でも安心して走れますし、FFからの乗り換えでも違和感を覚えることは少なそう。

一方、「前45:後55」となるVTD-AWD(不等&可変トルク配分電子制御AWD)の2.0Lモデルは、アクセルを踏んで曲がることがより容易。1.6Lよりも乗り心地は若干硬めに感じますが、動力性能だけでなくフットワークも重視するなら2.0Lをチョイスしたいところです。

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レヴォーグSTI Sportは、高速道路やワインディングなどで気持ちのいい走りを味わえるだけでなく、低・中速域での良好な乗り心地を得るという相反する要素を達成。運転席だけでなく後席でも良好な乗り味が確認できました。

また、レヴォーグそのものマイナーチェンジでC型になり、欧州からの要望で静粛性の向上も図られるなど、最近よく使われる「動的質感」も明らかに高められています。

(文/塚田勝弘・写真/森山良雄)

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新型ダイハツ・ブーンのアイドリングストップ機構、実燃費はどうか?

2016年4月時点で「ガソリン車ナンバー1」というJC08モード燃費を掲げて登場した新型ダイハツ・ブーン、トヨタ・パッソ。1.0L直列3気筒DOHCの自然吸気エンジンは、吸気側のデュアルポート化により高タンブル化と吸気効率の向上などを実現。

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高タンブル化やアトキンソンサイクル化や、ピストン形状の最適化により、圧縮比は従来の11.5から12.5に向上、高圧縮化も達成。そのほか、EGRバルブの応答性向上によってEGR(排気再循環)の量を拡大し、燃焼効率を向上するなど定番といえるメニューも盛り込まれています。

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さらに、ボディ側も空力性能の向上(空力意匠、空力パーツの採用)によりCd値の低減も図られているほか、プラットフォームの軽量化など低燃費実現策が数多く採用されています。

トランスミッションは、燃焼効率のいい回転域を使いやすいなど、カタログ燃費向上に利くCVT。もちろん、いわゆる「コースティング」機能付アイドリングストップも用意されています。

新型ブーンに搭載されているアイドリングストップは、軽を含む従来のダイハツ車と同じフィーリングで、再始動時の音、振動ともにスズキのアイドリングストップと比べるとやや大きめ。

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また、停車時に「カックン」ブレーキを防ぐため、少しブレーキを戻しながら停止するようなブレーキ動作だと意図していないのにエンジンが再始動してしまい、再びブレーキペダルを踏み込んでも再停止してくれません。

ホンダの軽なども同様ですが、ドライバーの意図に沿ってくれないのはやや残念なところ。

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ブレーキストロークセンサーなどにより意図しないエンジン再始動を防ぐスズキ方式は、同社の特許かもしれませんが、乗り比べてしまうと少し気になります。

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さらに、コースティングに入ってからのエンジン再始動もスズキの方がスムーズ。ダイハツ・ブーンも9km/h以下では同機構が作動しませんから、渋滞時にエンジンが止まったり再始動したりしてギクシャクした動きにはならないものの、再始動時は音も振動も大きめに伝わってきます。

ただし、新型ブーン/パッソは、2WDだけでなく4WDにも9km/h以下でエンジンがストップするなどにより4WDでも24.4km/Lという燃費を達成しているのも自慢。

ブレーキ操作も「どうすれば再始動せずにアイドリングストップに入れるか」も慣れてくるとコツがつかめますので、オーナーなら慣れるかもしれません。

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さて、新型ブーン/パッソが誇る2WDのカタログ燃費28.0km/Lですが、315km走行して(高速道路約6割、一般道約4割)実燃費は18.5km/L(満タン法)。

なお、メーターの平均燃費表示は走行シーンにより異なりますが、15〜18km/L台(写真は16.7km/L)を表示することが多かったです。

とくにエコランに徹したわけではないので20km/L台も無理とはいいませんが、15〜19km/Lくらいが現実的な数値ではないでしょうか?

(文/写真 塚田勝弘)

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新型ダイハツ・ブーンの居住性、積載性は「軽」を超えたか?

新型ダイハツ・ブーンは、全長3660×全幅1665×全高1525mm(CILQ。X系は全長3650mm)、ホイールベースは2490mmというサイズ。

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先代ブーンの全長3640×全幅1665×全高1535mm、ホイールベース2440mmと比べると、スリーサイズはほとんど変わっていませんが、50mmもホイールベースが延長されているほか、前後トレッドも各10mmずつワイドになるなど、居住性や安定感のある走りに配慮されていることが分かります。

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さらに、トレッド拡大で前輪の切れ角を見直すことで、先代の4.7mから4.6mに最小回転半径も小さくなっていて、全長が10〜20mm伸びても取り回しの面でも不安はありません。

気になる居住性ですが、前席は横方向、頭上空間ともに身長171cmの私でもとくに不満はありません。

シートサイズも一見すると十分なサイズが確保されていますが、時間座っていると腰を中心に疲れを感じることもありました。

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後席は先述したロングホイールベース化し後席をより後方に配置して、タンデムディスタンス(前後乗員間距離)を940mmとすることでクラストップを実現したとしています。

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膝まわり、頭上空間ともに十分な広さを感じさせてくれますが、シートは背もたれ、前後ともにもう少し厚みを含めたサイズアップが欲しいところ。

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また、荷室はスモールカーの標準的な広さという印象で、シングルフォールディング(6:4分割可倒式はX系のエントリーモデル以外に標準装備)により、シンプルに前倒しすれば拡大できるという設計になっています。

150万円以下がメイングレードだけにコストの制約も厳しいのでしょうが、もう少しスモールカーのスタンダードを打ち破るような質感があると軽からのアップサイジング層の心をよりキャッチできる気がします。

(文/写真 塚田勝弘)

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ダイハツ・新型ブーン試乗!! 軽の技術でコンパクトカーは変わるのか?

2010年に登場した先代ダイハツ・ブーンのプラットフォームを軽量化、高剛性化させて生まれ変わった新型ダイハツ・ブーン。

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先代同様にトヨタ・パッソのブランド違いであるのは同じですが、開発や設計、デザイン、製造までをダイハツが担っていて、新型パッソはダイハツからトヨタにOEM供給されることになります。

これからトヨタ、ダイハツのコンパクトカーは、トヨタの7カンパニー制で生まれたトヨタ自動車東日本主体の「トヨタコンパクトカーカンパニー」とともに歩むことが予想されますから、ダイハツ主体の新型ブーン/パッソとは異なった戦略、クルマ作りがされる可能性もありそう。

新型ブーンは、とくにフロントマスクからキャストあたりと似た雰囲気が漂います。

乗り心地の良さも先代ブーンからの進化を感じさせる点。街中での静粛性は国内のスモールカーの標準を少し超えたあたりかな、と感じさせます。

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28.0km/Lという低燃費を謳う直列3気筒の1.0L NAエンジンとCVTの組み合わせは、メインステージと思われるタウンスピードであれば動力性能に大きな不満はないものの、高速に場所を移すとモアパワーを抱かせます。その加速フィールは、最高出力64psの軽のターボが過給をはじめた際には及ばない印象。

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また、少し気になるのがかなり軽めのパワステで、街中で交差点を曲がる際や狭い場所で駐車する時などは女性などでも楽に扱えるのでしょうが、市街地でも少し速度を上げるだけで、直進するだけでも僅かとはいえ、修正舵を当てる必要性を感じさせます。

これが高速になると顕著になりますから、街中中心という割り切りを感じさせるパワステのセッティングといえそうです。

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一方で、高速巡航時は軽自動車よりも室内への侵入音も抑えられていて、軽とはひと味違う美点。これでもう少し直進安定性やロードホールディング性能が向上されれば、走りの質感の「軽さ」が払拭されるはずで、さらなるスポーティグレードの設定も期待したいところです。

(文/写真 塚田勝弘)

スバル・レヴォーグ「STI Sport」の乗り味はノーマルを超越!?

国内外でモータースポーツ系モデルの投入が相次いでいます。

スバルも例に漏れず、レヴォーグに新設定された「STI Sport」は、スバルというメーカーのブランド力を高めるだけでなく、STIにとっても認知度のさらなる向上に貢献するモデルと期待も大きいでしょう。

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7月21日に発売されたレヴォーグSTI Sport最大の見どころはシャーシにありますが、従来のSTI製コンプリートカーとは異なりライン生産されるため、足まわりのパーツ点数を抑えるなどの工夫もされています。

そうなると、STIなのに硬派なモデルではないのでは? という突っ込みもありそうですが、当然、多くの人に売りたいカタログモデルである以上、快適な走りを提供すると同時に価格もある程度抑制する必要があります。

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とはいえ、富士スピードウェイで開催された試乗会では、路面が良好なショートサーキット内はもちろん、一部荒れた路面がある外周路でも想像以上に良好な乗り心地を味わえました。

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「STI Sport」は、1.6Lと2.0Lともに同じ225/45R18タイヤ、そして目玉であるフロントダンパーの「DampMatic Ⅱ」も同じ。この「ダンプマティックⅡ」はビルシュタイン製の倒立式ダンパーで、メルセデス・ベンツのA、B、Cクラスなどの採用例があります。

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主に大きなストロークに作用する「メインバルブ」と、微小な入力に作用する「コンフォートバルブ」の2バルブを組み合わせた可変減衰力ダンパーからなり、非線形的な流量コントロールが可能で良好な乗り心地を実現。

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ただし、「ダンプマティックⅡ」を使っていれば乗り心地と操縦安定性の両立が図れるというほど単純な話ではありません。メルセデスの例でいえば、Cクラスは見事な乗り味とハンドリングを得ていますが、それ以外の車種では完璧とはいえませんし、ほかのセッティングや設計なども重要になっています。

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レヴォーグ STI Sportでは、ニュルブルクリンクなどからのフィードバックで得た知見が活かされているだけでなく、選任のテストドライバーをおかず開発陣自らがステアリングを握るなど、新たな開発手法の構築も利いているのかもしれません。

また、今回の結果次第で、走りと乗り心地が磨かれた仕様が数多くスバル、STIから出てくると予想されます。

(文/塚田勝弘・写真/森山良雄)

バーゲンプライス!? ベースモデルから80万円アップの「GOLF GTI Clubsport Track Edition」

現行フォルクスワーゲン・ゴルフは最廉価モデルが250万円を切るという、輸入車のライバルを寄せ付けない価格設定で、ゴルフGTIも389万9000円(MT)、399万(DSG)という戦略的な価格設定が際立っています。

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なお、弟分のポロGTIはMTが327万9000円、DSGが337万9000円ですから62万円という差。決して小さくはありませんが、駐車場事情などが許す限りやはりゴルフGTIに手を伸ばしたくなります。

「GOLF GTI Clubsport Track Edition」は、400台限定で価格は469万9000円。ゴルフGTIのMTよりも80万円高、DSGから70万9000円高となっていますが「GTI Clubsport」の性能アップ、装備を考えると買い得感すら抱かせます。

265ps/5350-6600rpm、350Nm/1700-5300rpmの2.0Lエンジンは、約10秒間のブースト機能により290ps/380Nmにまで向上。いざという時の伝家の宝刀としての魅力は十分にあります。

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ほかにも、電子制御油圧式フロントディファレンシャルロック、大径4輪ベンチレーテッドブレーキディスク(フロント:340×30mm/リヤ:312×22mm)、アダプティブシャシーコントロール「DCC」といった走りを磨く装備を用意。

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ブラックルーフが精悍な外観も専用エクステリア(ハニカムフロントグリル、フロント&リヤバンパー、リヤスポイラー)、225/35R19タイヤ/7.5Jx19アルミホイールが与えられていて素のGTIとはひと味違った凄みを感じさせます。

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インテリアも専用ファブリック&アルカンターラレカロスポーツシートによるホールド性の高いシートをはじめ、触感も見た目も際立つ専用アルカンターラ3本スポークマルチファンクションステアリングホイールによりスポーティかつ上質な仕立てとなっています。

(文/塚田勝弘 写真/佐藤靖彦)

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「GOLF GTI Clubsport Track Edition」のブースト機能の加速感は?
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強烈な加速Gを発揮するゴルフ GTI Clubsport Track Editionのブースト機能

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI生誕40周年を記念して限定車として設定された「GOLF GTI Clubsport Track Edition」に、ちょい乗りする機会がありました。

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試乗ステージは、パサート/パサートヴァリアントGTEの試乗会でもあった袖ヶ浦フォレストレースウェイでしたので、約10秒間というブースト機能も試すには格好の場だと思いましたが、プログラムの関係で残念ながら周辺の一般道ということで、その速さはまさに味見した程度……

ゴルフGTIにはDSG、MT仕様があり、さらに速いモデルならゴルフRもありますが、個人的には走りのバランスはノーマルのGTIがベストで、より楽しむならMTモデルがオススメです。

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「GOLF GTI Clubsport Track Edition」は、6速DSG仕様のみ日本に上陸していて、残念ながら本国にある3ドアのMT仕様(ClubSport S)はありません。

エンジンはゴルフRの2.0L TSIがベース。ノーマルのゴルフGTIと比べると、最高出力は45ps(33kw)向上となる265ps(195kW)、最大トルクは350Nmでこちらは同値。

そして、アクセルペダルをキックダウンすると10秒ほど最高出力が290ps(213kW)、最大トルクも380Nmまでアップするブースト機能が作動するというものです。

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限られた走行条件でしたが、キックダウンさせてブースト機能を発揮させると、強烈な加速Gに驚かされます。グレード名のとおりサーキットで楽しむ仕掛けではあるでしょうが、いざというときに楽しめそう。

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普段使いで気になる乗り心地は、素のGTI(225/45R17)よりも大きな225/35R19タイヤを履くだけあってショックはハードに伝えてきますが、それでもこうしたスポーツ仕様の割には良好といえるもので、ストローク量の大きなサスペンションであることを感じさせてくれます。

ブースト機能に注目が集まりがちですが、普通に走らせる分でも中・低速域のトルク感、そして高速域のパンチ力もノーマルGTIより当然上で、最大トルクこそ350Nmと同じですが、素のGTIが1500-4400rpmという回転域で最大トルクを発揮するのに対し、「GTI Clubsport」は1700-5300rpmとより幅広い回転域になっているのも効いているのでしょう。

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より攻撃的な内・外装が与えられている「GTI Clubsport」は、コレクターズアイテムとしての価値も見逃せません。一方で、公道を中心に走りを楽しみ、そして乗り心地を含めたロングツーリング性能の高さでいえば、やはり素のGTIのバランスの高さも再確認させられました。

469万円という価格はその内容から見れば決して高くはなく、400台限定の「GOLF GTI Clubsport Track Edition」は、ディーラーにより異なるそうですが、在庫は品薄状態とのこと。

ただ、今秋には快適性を重視した「Street Edition」も導入される予定ですので、そちらを待つ手もあります。

(文/塚田勝弘・写真/佐藤靖彦)

フォルクワーゲンのPHEV・パサートGTEは、EVとしても使える!?

フォルクワーゲンのプラグインハイブリッド第2弾であるパサート/パサートヴァリアントGTE。

路面状態が良好なサーキット(袖ヶ浦フォレストレースウェイサーキット)ではあまり気になりませんでしたが、一般道に出ると乗り心地の面でやや硬さを感じさせるのは、ガソリン仕様と同じという印象です。

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MQBプラットフォームがゴルフを主眼に置いて開発されているためか、パサートの重量増に足がついていないキャパ不足も感じさせてしまうのが、ゴルフとの違いかもしれません。

しかし、PHEV化されたパワートレーン系の仕上がりは上々といえます。

通常時は3つの走行モードから「ハイブリッド」を選べば充電もしてくれますし、イージーかつエコな走りが可能。

「低速時だからエンジンは停めてEVで走らなければ損!」なんて気を使うことなく、ドライビングに合わせて最適なパワーソースを選択してくれます。

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早朝深夜の住宅街などでエンジンを始動させたくない場合などは、最長51.7km(JC08モード)を誇るEVモードが控えていますし、モーター走行時でも130km/hまでカバーしますから日本であれば公道すべてをEVとして走行することもできます。

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試乗時はバッテリーがフル充電ではなく、途中からは第4の走行モードともいえる「バッテリーチャージモード」で試乗会会場に戻る要請がありましたので、エンジンが主役(モーターはオルタネーター)の走行になりましたが、このモードでも動力性能にもちろん不満はなく、PHEV向けに開発されたコースティング機能付6速DSGのスムーズかつダイレクト感のあるシフトフィールもあってドライビングの楽しさは損なわれません。

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なお、袖ヶ浦フォレストレースウェイでは、このコースティング(エンジンをクラッチがフロントドライブアクスルから切り離す)で滑走するフィーリングや回生具合など、プラグインハイブリッドならではの特性もチェックする機会がありました。

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コースティングや回生ブレーキを使えばエコな走りが可能で、もちろん充電すればカタログ値ですが51.7km走行可能とEVとして実用になるのも美点(現時点でセダン、ワゴンでは国内最長)。

なお、急速充電には対応せず普通充電の200Vで満充電までは約4時間となっています(充電設備、充電環境により異なります)。

(文/塚田勝弘・写真/佐藤靖彦)

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フォルクワーゲン第2弾のプラグインハイブリッド「パサートGTE」もスポーティな走りが魅力
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VWのプラグインハイブリッド第2弾「パサートGTE」もスポーティな走りが魅力

ゴルフGTEに続き、パサートにもプラグインハイブリッド(PHEV)を設定したフォルクワーゲン。

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フォルクワーゲングループジャパンでは、プラグインハイブリッドをPHEVと表記していますが、PHVと呼ぶメーカーもあり、統一された方がユーザーは混乱しないと思うのですが、メーカーやブランドのイメージ戦略もあって、こうした呼称の違いが生まれるのでしょう。

さて、ゴルフGTEに続いてパサート/パサート ヴァリアントに設定されたPHEVは、フォルクワーゲンにとって第2弾。

パサート/パサート ヴァリアントはゴルフ同様にMQB(モジュラー・トランスバース・マトリックス)と呼ばれるモジュラー化されたプラットフォームを使っていますから、PHEV化も想定した戦略のもとで生まれたモデルです。

日本で発売されるPHEVのセダン/ステーションワゴンでは最長となるEV走行可能距離51.7kmが特徴のひとつですが、ゴルフGTEとはスペックが異なります。

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エンジンはゴルフGTEと同じ1.4Lの直列4気筒DOHCターボですが、ゴルフGTEの150ps/5000-6000rpm、250Nm/1500-3500rpmに対し、パサートGTE(ヴァリアント含む)は156ps/5000-6000rpmと最高出力が6ps高められています。なお、最大トルクはゴルフGTEと同じ。

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モーターも55kWという定格出力は両モデルともに同じですが、最高出力はゴルフGTEから5kW(7ps)アップの116psとなっています。なお、最大トルクは330Nm(33.6kg-m)でゴルフGTEと同じです。

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パサートGTEの出力アップはボディサイズ拡大による重量増に対応したもので、パサートはセダンが1720kg、ヴァリアントが1770kgあり、ゴルフGTEの1580kgよりもセダンは140kg、ヴァリアントは190kgも重くなっていますから、エコだけではない走りのプラグインハイブリッドを謳うなら出力向上はマストなのも頷けます。

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パサートGTEにも「EV」、「ハイブリッド」、「GTE」の3つの走行モードが用意されていますが、最もスポーティな「GTE」にすると、エンジンレスポンスが一段と高まり、試乗会場だった袖ヶ浦フォレストレースウェイサーキット内はもちろん、外周路や一般道でも爽快な走りが楽しめました。

(文/塚田勝弘・写真/佐藤靖彦)

レヴォーグ STI Sportを「マニア目線」で徹底チェック!

ついに待望の「レヴォーグ STI Sport」が発表となりました。

すでにクリッカーでもインプレッション記事などがアップされていますが、2015年モデルともいえる「アプライドB型」オーナーの筆者が、気になるポイントをチェックしてみました。

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レヴォーグ STI Sportは、レヴォーグの最上級グレードとして設定され、内外装の質感と乗り心地を含めた走りの部分を高めたモデルとして登場しました。

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これまでSTIといえば走りを重視したモデルを数多くリリースし、WRXシリーズ以外ではSTIの名を冠したモデルは限定車となるコンプリートカーのみとなっていました。

こうした経緯もあり、登場を待ち望んでいたユーザーの中には「MTの設定ないの?」とか「なんでブレンボついてないんだ」といった声も聞こえてきます。

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しかし、今回登場したモデルはあくまでカタログモデルであり、レヴォーグの質感を向上させるために、足回りとステアリングフィールの味付けをSTIが担当したモデルといえます。

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グレード名にSTIの名が入ることから誤解を招いてしまいそうですが、フットワークについてはSTIのエッセンスをふんだんに取り入れていますから、期待を裏切らない仕上がりとなっています。

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足回りでは専用チューニングのダンパーとコイルスプリングを採用。フロントにはS207にも採用されているダンプマチックIIを採用しています。

ダンプマチックIIは、微低速域ではコンフォート・バルブが作動して滑らかに、高速域になるに従いリニアでレスポンスの高い減衰特性となるメイン・バルブが働く構造となっています。これにより乗り心地とハンドリングの楽しさを両立しているのです。

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もちろん、リアのダンパーとスプリングもSTI Sport専用のセッティングとなっており、試乗をさせていただいた富士スピードウェイの外周路からショートコースの領域まで、ノーマルのGT-Sとは一線を画す乗り味を体感できました。

外周路の路面の継ぎ目などはトトンと軽やかな音とともにいなしている乗り心地を実現する一方で、ショートコースのような振り返しの多い場所でも破綻することなくハイレベルなフットワークを披露。

まさに、STI Sportの上質なイメージを走りの部分でも裏切らない仕上がりといえるでしょう。

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STIの手掛けたポイントはダンパーとサスペンション以外にもステアリングフィールを向上させるために、専用クランプスティフナーを装備した電動パワーステアリングもあります。

このスティフナーは標準モデルの2.9mmから4.0mmへとアップ。取り付け部分の剛性をアップさせ直進状態から遅れなくリニアに反応する操舵応答性を実現しています。

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レヴォーグSTI Sportは走りの部分でSTIの提唱する「強靭でしなやかな走り」を誰でも手に入れることができるようにしている、まさにSTIの入門モデルといえるでしょう。

もちろん、より応答性や操縦安定性を向上させたいオーナーにはフレキシブルタワーバーやフレキシブルドロースティフナーといったアイテムもディーラー装着オプションとして設定されているので、好みで追加するのもおススメです。

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さて、STI Sportの魅力は走りの部分だけではありません。エクステリアも専用アイテムが上質さを際立たせています。

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まずは専用のフロントバンパー。フォグランプ周りの造形が変更され、サイド部分まで回り込んだ形状はアグレッシブな印象を受けます。

フロントグリルは標準モデルと比べ外周のメッキ部分を細くし、精悍な印象となっています。もちろんグリル内にはSTIのバッヂが添えられ、バンパー下部のメッキアクセントと併せて、STI Sportであることを上品に主張しています。

ちなみにSTI Sportは今後ほかのスバル車にも展開していく計画とのこと。他のモデルでもひとめでSTI Sportとわかるフロントマスクとするために共通のイメージとなるようです。

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ホイールも専用デザインの18インチホイールを採用。デザインはSTI Sport専用となりますが、ベースとなる部分はSTIからリリースされている18インチホイールセットをベースとした軽量、高剛性の鋳造ホイールとなっています。

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リム部のデザインが異なるものの、スポーク形状などはSTIのホイールセットと同一であることがわかります。カタログモデルでありながら、バネ下荷重の低減により乗り心地の面でもSTIのテクノロジーの恩恵を受けることのできる重要なアイテムの一つといえるでしょう。

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リアに回ると、STIのロゴ入りマフラーカッターがさりげなく装着されています。マフラー本体の性能は標準モデルと変わりはないそうですが、こうしたちょっとした配慮もうれしいアイテムですね。

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注目のインテリアですが、スバルの市販車としては初となるボルドー色の内装が最大のトピックといえるでしょう。

シート形状は標準モデルの本革仕様と同一ですが、プレミアムスポーツツアラーのイメージと、STIの象徴色でもあるチェリーレッドを連想させる配色はSTI Sportに相応しいインテリアカラーといえます。

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ヘッドレストにはSTIロゴが入り、インテリアでもさりげなく主張している部分といえます。もちろん角度調整などの機能は標準モデルと同一の機構を備えます。また、シートヒーターや2名分のポジションメモリーも装備されます。

ただ、個人的には本革だけでなく、ウルトラスエードの設定も欲しかったところ。

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インパネ回りも形状はそのままに、配色やSTIロゴを随所に配置することで、標準車とはまた異なったイメージとなっています。

ベースモデルはGT-S系としながらも、加飾パネルはGT系のピアノブラックを採用。ボルドー色とのマッチングも絶妙です。また、各部のステッチ色はGT-S系のブルーに対し、内装色に合わせレッドとなっています。

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メーターパネルも標準車がブルーを基調としているのに対し、リング部分をレッドに変更し、STIロゴを配置。

フルスケールではないものの、白い文字盤にレッドにリングという組み合わせと併せ、控えめにスポーツさを印象付けています。WRX STIのように赤文字盤ほどの過激さはなく、実用域での視認性が良好な180km/hメーターとしたことは、筆者個人的には高評価です。

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インテリアの気になる部分といえば、ドアポケット内に貼られた専用素材。細かい部分ですが、4枚のすべてのドアに貼られています。

ドアポケットのドリンクホルダーは特にこれからの季節飲み物を多く摂取するので大変重宝する収納ですが、500mlのペットボトルより少しポケットが大きいため、荒れた路面ではボトルがガタつき意外と音が気になるのですが、こうした配慮も最上級モデルならではのきめの細かさといえるでしょう。

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また、注目のオプションとしてはサンルーフの設定があげられます。

これまでスバルでSTIの名を冠したモデルでサンルーフが設定されていたのは先代インプレッサWRX STI A-Lineのみで、大人のためのプレミアムスポーツモデルという部分ではA-LineとSTI Sportは共通している部分といえるでしょう。

レヴォーグ STI Sportは2回目の年次改良と同時に発売され、いわゆるアプライドモデルがC型となりますが、標準モデルもきめ細かな進化を果たしています。

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まずはGT-S系に新たに設定されたブライトパール内装。

これまでブラック系のみしか選択のできなかったGT-Sに白系の内装が設定されたことはトピックといえます。ドアアームレストなどもシート色と統一され、新たなインテリアカラーとして注目されています。

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細かな部分としてはエアコン吹き出し口の開閉ダイアルにホワイトのポイントを追加。一目で開閉状態がわかるようになりました。これはレガシィアウトバックやB4ではすでに採用されており、WRXシリーズも今年の年次改良で追加されて部分です。

もちろんポイントの追加だけでなく、ダイアルを操作したときの質感も向上。タッチが上質になっています。

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後席も左右のクッション内部の発砲ポリプロピレンを拡大し、安全性を向上しているほか、左右のシートベルトにプリテンショナーを内蔵することでさらなる安全性の向上が図られています。

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フロントドアのウェザーストリップを2重化し、静粛性も向上。すでに採用されている遮音ガラスと併せて、より静かな室内空間へと進化しています。

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静粛性の面ではカーゴルームのフロアボードをウレタン高密度化することで遮音性を強化。ルーフ部分の吸音材の追加と併せてカーゴスペースの静粛性を大幅に向上。後席の快適性がさらに高まったといえるでしょう。

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遮音性の向上ではクオーターウインドウの厚みが3.1mmから3.5mmへアップしたことで、こちらもカーゴルームの遮音性がアップしています。

レヴォーグ STI Sportは、プレミアムGTツアラーといった印象で、それに相応しい走りと内外装を手に入れたこだわりのモデルといえます。

もちろんC型へ改良された標準モデルもブライトパール内装の追加や各部の静粛性の向上などで、商品力が強化されています。

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標準モデルでも十分すぎるツアラー性能を有するレヴォーグですが、新たに設定されたSTI Sportはプレミアム感とワンランク上の走りを満喫できるイチオシのグレードです。

レヴォーグの購入を検討している方は、一部の店舗では試乗車も用意されるそうなので、是非標準モデルとの違いを体感し、STIの手掛けた走りを体感することをおすすめします。

(井元 貴幸)

46万円でも装備したい!新型アウディQ7の4WS「オールホイールステアリング」

新型アウディQ7は先代よりも若干小さくなっていますが、それでも全長5070×全幅1970×全高1735mm(エアサスペンション装着車は全高1705mm)という巨体。

現在日本で買えるSUVの中でも(フォード、リンカーンのぞく)、キャデラック・エスカレードに次ぐ全長で、全幅は1985mmあるレンジローバー・ディスカバリーには及ばないものの、ボリューム感のあるフロントセクションもあって存在感は抜群です。

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先代よりもシャープなラインと面構成によるフォルムにより、スッキリとした印象を受けますが、実寸は依然として大きく、狭い場所でのすれ違いや駐車などの取り回しが気になってきます。

そこで、ぜひ装備したいのがオプションの「アダプティブエアサスペンションパッケージ」。エアサスペンションといわゆる4WSの「オールホイールステアリング」がセットで用意されます。

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新開発のエアサスペンションは、アクティブダンパー(制御ユニット)によりダンパーの減衰力だけでなく全高まで自動調整され、高速走行中は最大30mm低くなり、燃費向上などに貢献。オフロードを低速で走る場合は逆に最大60mm上昇することで悪路走破性を向上させます。

「オールホイールステアリング」は、電動のスピンドルを使ったリアのステアリング機構により、状況に応じて後輪を最大5度切ることができる装備で、低速では後輪が前輪と逆位相になることで、旋回半径を最大40cm減らすことが可能。

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最小回転半径は、オールホイールステアリングなしの5.7mから、ありは5.3mまで小さくなります。さらに高速域では、前輪と同じ方向に後輪をわずかに切ることで、ステアリングのレスポンスを高めることが可能。

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今回、割り振られた試乗車が「なし」仕様だったため、高速域のフィーリングは残念ながら確認できませんでしたが、駐車場内に設けられたパイロンを通過する極低速用の特設コースでは、冒頭で紹介した巨体とは思えない小回り性能が確認できました。

これなら大きなボディサイズにより取り回しが気になる方も懸念は緩和されるはず。

最大5度というと小さく感じるかもしれませんが、運転席からも後輪が逆位相に切れていることが目視できるほど。また、この手のステアリング機構は操舵フィールに違和感を覚えることも多々ありますが、ホンダやBMW、日産など各メーカーが投入してきた歴史もあってか、アウディが新機構と謳う出始めの割に完成度の高さも印象的でした。

「アダプティブエアサスペンションパッケージ」のオプション価格は46万円と、安いとはいえませんが、804万円〜という新型Q7を手にしようとする方なら選択できるのではないでしょうか。

(塚田勝弘)

新型アウディQ7の豪快な加速と上質な乗り味はロングツーリング向き

こちらでもご紹介したように、最大300kgの重量増を削減したという新型アウディQ7。

先代Q7(3.OL)と新型Q7の3.0Lモデルを比較すると、2300kgから2080kg(エアサスペンション装着車は2100kg)と、車両重量上では約200kg減となっています。

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先代登場から10年を経て初のフルモデルチェンジですから、先進安全装備などの時代の要請もあって装備が増えるのは当然で、大人3〜4人分のダイエットは評価できるのではないでしょうか。

フットワークは軽快とまではいえませんが、5m超という全長、2mに迫る全幅、そして3m近いホイールベースということを考えると、パワフルな3.0L TFSI車はトルクフルで、ボディの重さを感じさせない走りを披露。

乗り心地の良さも魅力で、大きなタイヤを履く(試乗車は285/45R20)だけあって大きな入力に対してはそれなりに衝撃を伝えますが、不快さはなく、ボディの揺れも気になるほどではないです。

大型SUVらしいドッシリとした足まわりの動きですが、高速域になるとフラットライド感が増すだけでなく、十分に高級車といえる上質な乗り味を提供してくれます。

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さらに、路面から遠いSUVということもあってタイヤからのノイズも抑制されていますし、エンジンや風切り音なども抑制されていて高い静粛性を味わえるのも魅力といえそう。

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今回は乗ることはできませんでしたが、2.0L、3.0Lともにエアサスペンション装着車が設定されており、バネ下重量を大幅に削減したエアサスならさらに上質な乗り心地が期待できます。

(文/写真 塚田勝弘)

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最大300kgものダイエットに成功した新型アウディQ7
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最大300kgものダイエットに成功した新型アウディQ7

2代目にスイッチしたアウディQ7。新型Q7のスリーサイズは全長5070×全幅1970×全高1735mmと、日本ではフルサイズSUVといえる大きさです。

それでも年々拡大するプレミアムモデルの中にあって、先代Q7(5090×1985×1740mm)よりも若干小さくなっているのは朗報といえそう。

さらに、重厚感のあった初代よりもスッキリしたフォルムになったことも視覚的に威圧感が薄れた理由になっている気がします。

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10年目にして初のフルモデルチェンジを受けたQ7は、時代の分だけダイエットされているのも美点で、アルミ(ドア、エンジンフード、テールゲート、フロントフェンダーなど)と高強度スチールの組み合わせにより、ボディで71kg、ドライブドレインで約20kg、サスペンションやステアリング、ブレーキなどのシャーシで約100kg以上も軽くなっているそうですから驚き。

トータルでは最大300kgの軽量化により、クラストップレベルの軽量化、そして空気抵抗低減が達成されています。

軽くなれば動力性能や燃費の面に好影響を与えるのはもちろんで、新設定された2.0Lの直列4気筒エンジン搭載車も売れるはず、という手応えをアウディ ジャパンが抱くのもよく理解できます。

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導入当初は高いグレードが売れるという傾向があるため、改良された3.0L TFSIエンジン搭載車が半分以上を占めているそうで、とくに先代Q7からの買い替え層は3.0Lを選ぶ傾向が強いそう。

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試乗車はその3.0LのTFIS搭載車(Q7 3.0TFIS quattro)が割り当てられましたが、333ps/440Nmというスペックは、先代3.0Lの272ps/400Nmから大きく向上しているとおり、大きさを感じさせない強烈な加速をどの速度域でも味わえるのが魅力。

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先述した最大300kgの軽量化もあって3.0L TFSIの燃費は、先代の8.6km/Lから11.7km/Lと37%改善しているのも魅力ですし、先代オーナーを中心に予想よりも3.0L車が売れている理由のひとつといえそうです。

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トランスミッションは全車に8速ティプトロニックが組み合わされていて、トルクコンバーター付の多段ATらしくスムーズな変速フィールとなっていますし、速度域を問わず扱いやすさを感じさせてくれます。

残念ながらインポーター「いち押し」の2.0L搭載車は試乗できませんでしたが、こちらも大きなQ7を十分に走らせるというアウトプット(252ps/370Nm)に加えて、12.6km/Lというカタログ燃費を達成していますから、実用上は2.0Lモデルを本命で選んでもいいでしょう。

(文/写真 塚田勝弘)

「GT」と「S」どちらのグレードが買い? 207馬力にパワーアップしたBRZに試乗

2016年8月1日より発売されるスバルBRZの大幅改良モデルに乗ることができました。

今回のビッグマイナーチェンジでは、内外装が変化しているだけでなく、MTモデルのエンジン出力アップ(200馬力→207馬力)と、ファイナルギアのローギアード化(4.1→4.3)による動力性能やフィーリングの変化も見逃せないポイントです。

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もともとBRZはパワーに頼るキャラクターではありません。今回のマイナーチェンジでも、ボディ剛性アップや、それに合わせてサスペンションのセッティングも変更することにも注力しているといいます。

そうして標準車のシャシー系もレベルアップしていますが、シャシー系のアイテム(ブレンボブレーキやザックスダンパー)をグレードアップした最上級グレード「GT」が追加されるというのもトピックスのひとつでしょう(GTの発売は2016年秋予定)。

まだ発売前ということもあり、参考価格が発表されているのみですが、その価格は331万5600円(MT)。

標準仕様の価格帯243万円〜297万円(MTの場合)と比べると、十分に高価に感じます。果たして、価格差だけの価値は感じられるのでしょうか。

今回、従来の最上級グレードである「S」の進化版と、新たな最上級グレードとなる「GT(プロトタイプ)」、いずれもMT車を同条件で、比較しながら乗りことができました。

メーカー希望小売価格297万円の「S」と、それに対して34万5600円高のGT(プロトタイプ)。

果たして、ドライビングの満足度には価格なりの違いが明確にあったのかといえば、答えはノー。第一印象は、意外にも「S」にドライビングファンを感じるものだったのです。

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その理由はタイヤとのマッチングにあります。いずれのグレードも、ミシュラン・プライマシーHP(215/45R17)を履いていますが、おそらく「S」は標準タイヤに完璧にターゲットを合わせたシャシーと感じられたのです。

それはブレーキやサスペンションから感じたことで、フルブレーキングをしたときの減速感も互角ですし、旋回しながらアクセルを開けていったときの粘り具合も同様。むしろ加速状態で適度にリアが沈み込む「S」の方が、安心してアクセルを踏んでいけると感じたくらいなのです。

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発想を転換して、タイヤをグレードアップしていくと想像すると「GT」の充実したシャシーとバランスが取れ、その能力を存分に味わうことができそうな予感。

自動車メーカーの標準装着タイヤというのは、雪道用のチェーンを装着することも考慮しなければいけないので、ドライ路面での走りだけを考えて選定することはできません。

今回のマイナーチェンジではボディ寸法などには手を入れていませんから、「GT」グレードであっても標準装着は215幅となってしまうとエンジニア氏は言います。

件のエンジニア氏は明言したわけではありませんが、その言葉の行間と「GT」グレードの印象からは『225サイズのタイヤであれば』、『もっとグリップ重視の銘柄であれば』、まったく違う印象になるであろうということは感じられます。

BRZというクルマは、ノーマル状態で乗るだけでなく、オーナーの好みに合わせてモディファイすることも含めてスポーツカーとして受け入れるというキャラクターも持っています。

そうした部分も含めて考えれば、吊るしで楽しむのであれば「S」が最適バランス。一方、タイヤ・ホイールのグレードアップを考えているのならば「GT」を選ぶのがベターといえそう。

17インチに収まるブレンボブレーキですが、その存在感は大径ホイールを履かせても色褪せることなく、相乗効果で足元をマッシブに魅せると思えるからです。

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■スバルBRZ S(6MT)主要スペック
車両型式:DBA-ZC6
全長:4240mm
全幅:1775mm
全高:1320mm
ホイールベース:2570mm
車両重量:1240kg
乗車定員:4名
エンジン型式:FA20 D-4S
エンジン形式:水平対向4気筒DOHC
総排気量:1998cc
最高出力:152kW(207PS)/7000rpm
最大トルク:212Nm(21.6kg-m)/6400-6800rpm
変速装置:6速MT
燃料消費率:11.8km/L (JC08モード)
タイヤサイズ:215/45R17
メーカー希望小売価格(税込):297万円

(写真と文 山本晋也)

新型アウディA4アバントの美点と課題とは?

プレミアムワゴンでありながら初の大台超えとなる、通常時500Lという大容量のラゲッジスペースをはじめ、電動ラゲッジルームカバー、パーティションネット、ルーフレールを全車に標準装備するなど、新型アウディA4アバントの積載性や装備は、最新モデルらしい隙のない仕上がりになっています。

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なお、電動ラゲッジルームカバーは、全車標準のオートマチックテールゲート(キーを保持した状態でのキック操作にも対応)と連動して自動的に上下する便利なトノカバー。トノカバーを上げたままだと後方視界が制限されてしまいますが、いちいち上げたり下ろしたりする手間が省ける装備です。

Audi_a4_avant_06ステーションワゴンである新型アウディA4アバントの美点は、スクエアで使いやすくて大容量(505L〜1510L)、荷室フロアに配置されたフックも含めた電動ラゲッジルームカバーといった積載性の高さ。

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また、セダン同様に質感の高いインテリアと操作性を若干変更したMMI(ナビやオーディオ、車両設定などを司る)、そして12.3インチというワイドなメーター(バーチャルコクピット)などの先進装備も魅力です。

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安全装備では前後カメラ、ディスタンスセンサー、フロントアシストの「アウディプレゼンスシティ」をはじめ、アダプティブクルーズコントロール(ACC)、「アウディアクティブレーンアシスト」などの予防安全システムを備えていて、欧州ミドルサイズワゴンの中でもトップクラスの充実ぶりとなっています。

2.0LのFF(2.0 TFSI Sport)仕様を走らせてみて気になるのが、乗り心地の洗練度がもう少しという点。

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足まわりの熟成不足なのか、路面状態を問わず絶えず上下に揺れている印象で、しなやかさもあまり期待できません。

試乗車の「2.0 TFSI Sport」に装着されているスポーツサスペンションによるものなのか、スポーツタイヤ(試乗車はブリヂストン・ポテンザ S001)の特性か、その両方なのか分かりませんが、セダンでもFF、クワトロモデルともに見受けられた傾向の乗り味なのでワゴンのクワトロ仕様がどういうマナーを示すのか気になります。

また、オーナー予備軍の方は重々承知の上で購入するとは思いますが、若干のボディサイズ拡大により(全長4735×全幅1840×全高1435mm/全長5mm、全幅15mm拡大)狭い場所でのすれ違いや車庫入れなどもライバルであるCクラスワゴン(全長4705×全幅1810×全高1460mm)やBMW3シリーズツーリング(全長4625×全幅1800×全高1460mm)などと比べるとかなり不利であるという点でしょうか。

ボディサイズ以外、とくに走りの面では熟成が進めば、乗り心地と操縦安定性のバランスもより改善が期待できますし、ワゴンで重要な積載性が良好といえるのはまずは朗報といえそうです。

(文/写真 塚田勝弘)

1.6リッターと2.0リッターでSTI Sportの走りは違う!?【スバル・レヴォーグC型試乗】

2016年6月、スバル・レヴォーグが年次改良でC型へ進化したのに合わせて、新グレード「STI Sport」を設定しました。

スバルのモータースポーツ部門ともいえるSTIのノウハウを量産車にフィードバックした、STIの手が加わった初のカタログモデルです。

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そのSTI Sport、最上級グレードという位置づけながら、最高価格のグレードというわけではありません。

もともと1.6リッターと2.0リッターという2つのボクサー直噴ターボエンジンを設定するレヴォーグは、排気量によって安全装備やシャシー性能を差別しないグレード展開をしてきましたが、STI Sportについても同様。外観では見分けがつかないほどです。

とはいえ、走り味には明確な違いを感じます。

レヴォーグSTI Sportには、ステアリングギアボックスの取り付け剛性を上げるスティフナーとフロントにダンプトロニックIIという仕組みを採用したビルシュタイン・ダンパー、そしてSTIらしいチェリーレッドに塗られたコイルスプリングが与えられています。

スプリングの塗装色は、量産車としての耐久性を満たすために新規に開発された塗料というのも隠れた注目点でしょう。

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このサスペンション、1.6リッターと2.0リッターで区別していないといいます。実際、カタログ重量は10kgしか変わらない両車ですから、あえて別々に作り込むよりも、ひとつの仕様に注力したほうがリソースの無駄にならず、有効といえます。

ただし、その乗り味は意外にも異なるものでした。

今回、それぞれ1つの車体しか乗っていないので個体差という可能性もありますが、2.0リッターのSTI Sportが、ズシッと入力を受け止める筋肉質なフィーリングのフラットライドなのに対して、大げさに言えば1.6リッターのSTI Sportは、リアがヒラヒラと旋回を促すような印象があったのです。

STI Sportのシャシーチューニングは、応答遅れの少ないリニアなハンドリングと、ニュルブルクリンクで鍛えられた柔軟で強靭なサスペンションという2つの要素が大きな特徴ということですが、前者が強調されているのは1.6リッター車、後者は2.0リッター車で、より感じやすい傾向にあるといえそう。

その理由についてエンジニア氏にたずねてみたところ、「駆動システムの違いが大きいのではないか」という見解でした。

2.0リッター車は前後トルク配分45:55を基本としたVTD-AWD方式、1.6リッター車は同60:40を基本に、100:0まで可変するアクティブトルクスプリットAWD方式を採用しています。

こうした駆動トルクの違いにより、軽快さや重厚感といった違いが出ているという見立てです。

レヴォーグSTI Sportのメーカー希望小売価格は、1.6リッター車が348万8400円、2.0リッター車が394万2000円(いずれも消費税込)。45万円以上の価格差がありながら、装備面で違うのはエンジンと前述した駆動システムだけで、どちらも先進安全技術のアイサイトやアドバンスドセーフティパッケージは標準装備しています。

また、STIチューンのサスペンションをはじめ、ボルドー&ブラックのレザーシートや専用エクステリアなどの装備面でも違いはありません。

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さらに、1.6リッター車にはアイドリングストップが備わるなど、よりダウンサイジングターボらしい環境性能を意識したキャラクターで、新しいSTIの解釈による新世代スポーツツアラーとしての印象は強まっているようにも感じます。

STI Sportのリニアなハンドリングに価値を見出すのであれば、あえて1.6リッターに乗るというのも、ひとつの選択といえるでしょう。

●スバル レヴォーグ 1.6STI Sport EyeSight主要スペック
車両型式:DBA-VMG
全長:4690mm
全幅:1780mm
全高:1490mm
ホイールベース:2650mm
車両重量:1550kg
乗車定員:5名
エンジン型式:FB16
エンジン形式:水平対向4気筒DOHC直噴ターボ
総排気量:1599cc
最高出力:125kW(170PS)/4800-5600rpm
最大トルク:250Nm(25.5kg-m)/1800-4800rpm
変速装置:CVT(マニュアルモード付き)
燃料消費率:16.0km/L (JC08モード)
タイヤサイズ:225/45R18
メーカー希望小売価格(税込):348万8400円

(写真と文 山本晋也)

新型・アウディ A4アバントの荷室容量、走りはどうか?

セダンに続き、4月末に発売された新型・アウディ A4のステーションワゴン「アバント」。アウディのアバントには多くのファンがいるだけに、登場を待っていた方も多いでしょう。

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VWグループのディーゼルゲートの余波により、残念ながら日本向でのローンチ時にディーゼルの設定はありませんが、FFの「2.0 TFSI」、「2.0 TFSI Sport」、クワトロ(AWD)の「2.0 TFSI quattro」、「2.0 TFSI quattro Sport」という4モデルが設定されています。

セダン同様に、空力性能を徹底したダイナミックな外観、先進的なコクピットと広くなった上質なインテリアなどが大きな魅力です。

なお、セダンのCd値0.23、アバントは0.26となっています。

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ワゴンだけに気になる荷室容量は、後席を立てた状態で505L、3分割式の後席バックレストを倒すと最大で1510Lを確保。先代よりもそれぞれ15L、80L拡大するなど、スクエアなラゲッジスペースは大きさだけでなく、使い勝手も良さそう。

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ボディサイズは、全長4735×全幅1840×全高1435〜1455mmと、先代よりも5mm長く、全幅は15mmワイドになり、全高は標準車が10mm高く、スポーツサスペンション仕様は逆に10mm低くなっています。

なお、最小回転半径は先代と変わらず5.5mで、FFもクワトロも同じ。

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ボディサイズはやや拡大していますが、セダン同様にアルミとスチールを組み合わせた複合ボディを採用し、最大120kgの軽量化(欧州仕様値)果たし、ボディも熱間成形鋼板(ホットスタンプ)の多用により15kgの軽量化を果たしています。

ジャガーがXEやXFなどでアルミ合金製ボディを積極採用している点などを考えると新型だけにA4にもその使用比率を高めて欲しいところですが、実際の走りは190ps/320Nmというアウトプットを誇るFFでもパワー不足は感じられず、1人乗車で空荷状態だと痛快な加速を堪能できるほど。クワトロよりも100kg軽い車両重量ももちろん効いていそう。

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FF向けは、アウディが「ライトサイジング」と呼ぶ燃費とドライバビリティを両立したエンジンですが、高圧縮比のアトキンソンサイクルでもパフォーマンス面に影響が出ていないのも朗報。吹け上がりも良好で、トルク感も十分に感じられます。

さらに、7速Sトロニック(デュアルクラッチトランスミッション)の変速もスムーズで、しかも美点のダイレクト感も健在。

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今回はFFモデルのみの試乗でしたが、「アウディ=クワトロだろう!」という声があるのを重々承知しながらも、セダン同様に使用条件などが合えばFFを積極的に選んでいいのかなと感じさせてくれる仕上がりになっています。

(文/写真 塚田勝弘)

554万円〜という戦略的価格を付けたプラグインハイブリッドのBMW 330 eの走りは?

こちらでは、プラグインハイブリッドのBMW 330 eとメルセデス・ベンツC 350 e アバンギャルドの価格設定をはじめとした比較をお届けしました。

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554万円〜というBMW 330 eと、メルセデス・ベンツC 350 e アバンギャルド(単一グレード)の721万円という価格差には驚かされますが、BMW 330 eは、カタログから落ちた2.0L直列4気筒ターボを搭載する純ガソリン仕様の330i系と価格は同じくらいで、その代役と考えると納得できます。

さて、330 eの魅力はなんと言ってもモーター駆動らしく低速域の力強さ、スムーズかつ静かな走りでしょう。

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状況に応じてモーターとガソリンエンジンをバランス良く使う「AUTO eDrive」、最速120km/hまでモーター走行が可能な「MAX eDrive」、バッテリー残量を最大50%まで増やせる「SAVE Battery」の3つに加えて、シフトレバーをM/S側に倒すことで充電量を最大80%まで増やせる「CHARGE Battery」と、走行モードを選べる点もプラグインハイブリッドならではの長所といえそう。

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最も気になるのは、BMWらしいフットワークを味わえるかどうか、という方も多いでしょう。

部分的とはいえ電動車両らしく重量を感じさせる乗り味に加えて、それをカバーするためか、パワーステアリングの手応えが妙に軽く感じるのが少し気になります。また、乗り心地はMスポーツだと路面によってはやや硬めに感じられるシーンもありました。

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PHV化されても前後重量配分50:50にするなど、BMWらしいこだわりはコーナリング時の重心の低さという恩恵を得ているとも受け取れますが、バッテリー搭載による低重心フィーリングは好みが分かれそうです。

(文/塚田勝弘 写真/前田惠介)

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「ギュ、バキ、ドン」!? ジムカーナチャンピオンに聞いた、リーフでタイム短縮のコツ。

前回の記事「日産リーフでジムカーナ。390kg軽いノートと勝負してあのCMを証明?」で、日産自動車広報部の期待通りに(クリッカー編集部の目論見が完全に外れて!?)、ノートよりも速いタイムでジムカーナを走った電気自動車のリーフ。

速いだけでなく楽しいってことは十分わかったんだけど、それだけで終われるわけがない。

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だって、クリッカーは常に読者の役に立ちたいと思っているから、記事を読んでリーフでジムカーナをしようという人のために、どうやったら人より速くリーフを走らせることができるのか?というコツくらいは聞いておかないと編集長が許してくれるわけがないってもんです。

……なんて思っていたら、ちょうどいい先生をスタッフの中に発見。

「日産自動車実験部でリーフ担当」と紹介されたちょっと怖そうな見た目の人(ああ書いちゃった!)、実は現役ジムカーナドライバーの顔も持つ河本晃一さん。2015年の全日本ジムカーナ選手権ではPN2クラスでシリーズ2位になった凄い人に、リーフを速く走らせるコツを聞いてみましたよ。

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「大事なことは、抑える(減速する)ところは抑えることです。音で言うと『ギュ、バキ、ドン』。ギュっと減速して速度を抑え、バキッと曲げる、そしてドン!と加速する。リーフの優れた加速を上手に生かすのがタイムアップの近道ですね。」

なるほど。減速してきちんと曲がり、リーフの鋭い立ち上がりを生かせばタイムが短縮できると。

タイムアタックの後に河本さんの助手席に乗せてもらいました。その動きのスムーズなことといったら、素人の僕とは次元違い(当たりまえだ!)。

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コーナーを繋げるライン取りの滑らかさに感動しました。パイロンを抜けるときは、すでに2つくらい先のパイロンを見ているのだとか。視線も大事です。

そんな河本さんがリーフで走ったタイムは54秒46(ウェット)。同条件でのクリッカー編集部のタイムは59秒96。予想通りにぜんぜん違う(笑)。

ちなみにタイムアタック前にコースを歩いてまわるのですが「その時にコース図を見ているようではダメ。どんなライン取りでどう走るかイメージしながら歩くのはあたりまえ」なのだそうで。

ここだけのナイショですけど、ボクはその時コースを覚えるので精いっぱいでした。

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(クリッカー編集部)

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BMW 2シリーズ アクティブツアラーのPHVモデル、225xeの走りは上質か?

「BMW 2シリーズ アクティブ ツアラー」に追加されたプラグインハイブリッド(PHV)の「225xe」は、4WDの「xDrive」とモーター走行の組み合わせと思われる車名の「xe」からも分かるように、1.5Lの直列3気筒ターボに後輪を駆動するモーターを組み合わせた4WDとなっています。

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エンジンは「218iアクティブツアラー」と同じく、最高出力136ps/4400rpm、最大トルク220Nm/1250-4300rpmというスペック。モーターは88ps(65kW)/4000rpm、165Nm/3000rpmという数値になっています。

システム合計で224ps/385Nmというパワーを誇ります。0-100km/h加速は6.7秒(ヨーロッパ仕様車値)ですから、まずまずの俊足ぶりというのが分かります。なお、組み合わされるトランスミッションは6AT。

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4WDシステムはフロントを駆動するエンジンと、リヤを駆動するモーターという組み合わせたオンデマンド式ですが、モーターは停止時から最大トルクを発生するため、バッテリー状態やアクセルの踏み込む方次第によりますが、125km/hまでは(MAX eDriveモード時)まではモーターによる後輪駆動になります。

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走り出しはモーター走行なのでもちろん静かで、エンジンが始動しても1.5Lの直列3気筒は予想以上に力強さがありますから、街中、そして郊外の坂道などを乗る分には動力性能に不満を抱くことはまったくありませんでした。

「SPORT」モードで気持ちよく走っていると、バッテリーはあっという間に減っていきますが、バッテリーの充電量を最大50%まで増やせる「SAVE」モードにも変更できますので、状況に応じた走りをゲーム感覚で楽しめます。

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気になる乗り味は、バッテリーを低い位置に積むとはいえ重量物がプラスされることを感じさせるもので、ボディが前後、左右に揺すられるような動きが気になりました。

もう少しストローク感があるといいのでしょうが、SUVのような車高の高さがないだけに仕方ないかも。

短時間の試乗だったため実燃費や高速域の走りなど、分からないことだらけでしたが、街中では部分電動車両らしい静粛性の高さなど、純ガソリン仕様やディーゼル車にはない魅力も確認できました。

(文/塚田勝弘 写真/前田惠介)

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■「BMW 225 xe アクティブ ツアラー」は買いか? 欧州メーカーがPHVを導入するワケは?
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「BMW 225 xe アクティブ ツアラー」は買いか? 欧州メーカーがPHVを導入するワケは?

BMW 2シリーズに追加されたプラグインハイブリッド「BMW 225 xe アクティブ ツアラー」。

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最近は、BMWだけでなくメルセデス・ベンツやVWグループ(フォルクワーゲン、アウディ、ポルシェ)、ボルボなど欧州系メーカーのプラグインハイブリッド(PHV)攻勢が続いていますが、欧州メーカーがこぞってPHVを投入するのは、燃費向上はもちろん、最大の理由はEUで2021年に待ち構えているC02排出量95g/km(メーカーの平均値)という壁。

アメリカのZEV規制をクリアできずにクレジットを購入するのも避けたいところでしょうが、お膝元で罰金を払うのも避けたいところでしょう。

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そう考えると、メルセデス・ベンツがPHVを2017年までに10モデルを、BMWが7シリーズに追加することで2016年中に全5モデルを日本導入し、ボルボが今後、全モデルにPHVを導入するとアナウンスしていることも理解できます。

なにせ、EUでは充電してEV走行した分はCO2排出量がカウントされませんから、PHVはCO2削減の有効な切り札になりえます。

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さて、メルセデス・ベンツBクラスの対抗馬として登場させたはずのBMW 2シリーズ アクティブ ツアラーは、コンパクトなボディサイズでも4人家族がゆったり過ごせるキャビンや使い勝手のいい荷室などを備えています。

なんだか日本車が得意とする使い勝手を備えている気がしますが、そこに誰が見てもBMWと分かるデザイン(ブランド力)と、前輪駆動でもBMWらしい走りが味わえるのが人気の理由でしょう。

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プラグインハイブリッドの「225xe アクティブツアラー」は、モーター走行のみで最大42.4km走行可能(EV走行換算距離/JC08モード)で、最高速度は125km/h(ヨーロッパ仕様車値)。電気モーター走行時は後輪駆動になります。

ゴルフGTEの53.1km(アウディA3スポーツバック e-tronは52.8km)には及びませんし、JC08モードなので実走行では5〜7割くらいに減るかもしれません。それでも近所の買い物や駅までの送迎程度なら充電した電気でまかなえるのではないでしょうか。

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価格は「225xe アクティブ ツアラー Luxury」が488万円、「225xe アクティブ ツアラー M Sport」が509万円。もちろん、自動車取得税、重量税が免税になり、翌年度の自動車税も75%減税となります。

なお、1.5Lターボ搭載車が342万円〜、2.0Lのディーゼルターボ363万円〜という値付けですから、アクティブ ツアラーの居住性や使い勝手を享受すればいい、というのであればわざわざPHVに手を出す必要はないかもしれません。

ただし、2.0Lガソリンターボで4WDの「225i xDrive アクティブツアラー M Sport」は504万円という設定で、カタログ燃費は14.6km/L。

一方、PHVの「225xe アクティブ ツアラー 」のハイブリッド燃費は17.6km/L。充電分のEV走行を別にしても燃費面ではPHVの「225xe」の優位が目を惹きます。

(文/塚田勝弘・写真/前田惠介)

トヨタ86GRMNの楽しみ方は? 求められるものは?

トヨタの「より良い走りを目指した」G’s、GRMNの試乗で最後を飾るのは2台の86。

6速MTのリミテッド仕様と、マークXと同じく100台限定の86 GRMN仕様をに乗ることができました。

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結論からいって、サーキットでもクルマのコントロールを楽しむことにかけては前者、通常の200psパワーユニットを選んだ方がまずもって運転も巧くなるでしょう。

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しかしタイムを削るという目的については明らかに後者に軍配が上がります。

それは86GRMNが楽しめない、という意味ではありません。

そもそも、赤/黒のド派手なアルカンターラ内装とバケットシートに迎えられて、ココロが浮き立たないドライバーはいないでしょう。それよりも86GRMNは、ステアリングやシートを通じて伝わってくるインフォメーションの質、身のこなしの質という点で優れているだけでなく、ウエポンめいた一面があります。

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妙な話、リミテッドでサーキットを周っていると自分のドライビング上のミスすら楽しめるのですが、86GRMNではドライビングの粗さやミスは、そのまま失速となって、すぐさま反映されるかのような印象です。

例えば低速コーナーの出口で荒っぽくアクセルを踏みすぎると、トラクションコントロールがグッグッという音とともにすかさず介入してきます。よって86GRMNは挙動やラインを乱すことなく、安定姿勢のままコーナーを脱出するわけですが。

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一方で、フロントを5mm、逆にリアは5mm狭めたトレッドは、回頭性とリアのスタビリティ重視といえます。アイシン精機が開発したモーションコントロールビームというボディの捩れや振動を吸収する減衰装置をリアパンパー下に備え、S字の切り替えしや路面表面が大きくき切り替わるような局面でも、シャシーそのもののしなりを穏やかに保ちます。

しかもボンネットやトランクリッドなど上モノを軽くしただけあって86GRMNの身のこなしは元々俊敏。逆に舵がキチンと鋭敏に効く分、つい欲張ってこじりがちにもなりますが、そういうドライバーの未熟さや拙速さをクルマが見抜いてクールダウンしてくれるような、そんなところもあります。

それでいて、アクセルを早めに踏めて、手で組まれた219psエンジンを5500rpm以上の回転域できっちり回せた時のエキゾーストの心地よさは、格別です。

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それにしてもこの日、何台ものG’s、GRMNに乗って強く印象づけられたことは、各車とも速度域を問わず、走行フィールに雑味がなく安定していることでした。

シャシーの剛性アップは無論、空力スパッツなどで車体下の空気の流れをコントロールして、ホイールハウスから車体がリフトするのを防いだり、ホント、ブレーキの制動フィールから4輪の接地感までタッチがいいんです。

86GRMNのトランクリッドなど、大きなリアウイングを背負っているだけでなくテールエンドがノーマルよりかなりハネ上がっていることにも、今回、初めて気づきました。

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「走りの味だし」という点でこれだけの成果を積み上げたG’sやGRMNに今後、求めたいのは、デザイン面です。

後付け感や攻撃性の表現ばかりでなく、大人っぽいシンプルな意匠・デザインを創り出すことができたら、そこさえクリアできたら、ハイパフォーマンス系の輸入車から流れる客層すらいるのでは? これだけ走りが磨かれたからこそ、美意識面での洗練に期待せずにはいられないのです。

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(南陽 一浩)

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トヨタ「マークX GRMN」は本格スポーツFRだった!

G’s、GRMNのフルラインナップ試乗会。G’s VOXYに続いて乗ったのはマークXのGRMN仕様。

19インチ大径サイズのホイールに、リアがより幅広&扁平のタイヤを履く本格的FRです。

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エアダムを左右に広げ、アグレッシブでエレガントさを増したエクステリアは、AMGやMといった欧州の名門チューナーにも共通する文法が貫かれています。

驚いたのは、G’sノアから乗り換えた直後から、車格やサイズが似ても似つかないにもかかわらず、ニュルブルクリンク仕込みらしい懐の深い乗り味が地続きで感じられたことです。

というのも車高が下がってストローク感は短くなったとはいえ、アシがおそろしくよく動き、フラットな乗り心地が持続します。

ステアリング操舵に対する素直な回頭性、ブレーキのタッチ、そしてV6の3.5Lが絞り出す321ps・380Nmの滑らかなパワーフィールなど、明らかに動的質感という点では2ランクほど上がってはいますが。

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惜しむらくは、袖ヶ浦ではこのパワーと体躯をやや持て余してしまうところでした。

8コーナーのような大回りでヨーが残る局面では、穏やかとはいえ立ち上がりで踏みすぎるとナチュラルにオーバーステアが出て、次の逆振りのヘアピンでよろけるといった具合です。

ただしコーナー出口でなく、もっと上手なドライバーが進入時からパワードリフトに持ち込むような操り方をしたら、話は別かもしれません。

それだけ積極的にコントロールしてこそ光る何かを秘めているだけでなく、コントロール性の高さを感じさせてくれる一台、それがこのマークX GRMNなのです。

(南陽 一浩)

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これぞ伝統のGTI!フォルクスワーゲン・新型ポロGTI 6MT試乗レポート

2014年夏にマイナーチェンジを行ったフォルクスワーゲンポロ。2015年冬に最上級モデルのポロGTIを追加。さらに夏には待望の6MTが登場しました。

今回、個人的にメーカーの広報車両を借用し、山梨方面にハンドルを切りました。

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ポロGTIのエクステリアは5ナンバー枠に収まり、コンパクトで取り回しもよく嬉しい限りです。あのMINIですら、今は3ナンバーですから・・・。

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コンパクトなボディですが、佇む姿は迫力満点です。

落とされた全高、水平基調のフロントマスクにヘッドライトユニットまで続くレッドライン、LEDヘッドライト、大型フロント&リアスポイラーと専用パーツを纏います。

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タイヤサイズは、コンパクトボディに215/40R17というワイドなものを採用しています。ポリッシュ&ブラックの専用アロイホイール、その隙間から覗くレッドキャリパーもホットハッチ感満点です。

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新型ポロGTIは、従来からエンジンの排気量が大きくなっています。ダウンサイジングエンジンの先駆けであった同社としては意外な設計といえます。

先代は1.4リッターにターボとスーパーチャージャーを組み合わせた、ツインチャージャーでパワーを引き出していましたが、今回のマイナーチェンジで1.8リッ ターTSIエンジンが搭載されています。

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最近では左足で運転をすることすら忘れている方が多い中、踏みごたえのあるクラッチペダルを踏み、エンジンを始動させますと、「ブウォン!」とGTIにふさわしい咆哮が響きます。

クラッチペダルから足を浮かすと、エンジン回転を上げなくてもスルスルと動き出し、豊かな低速トルクに助けられ、ポンポンとシフトアップをしても街中では交通の流れをリードしているほどです。

ターボチャージャーが仕事をはじめるのは超低速域からであるため、1.8リッターエンジンは、さらに大排気量エンジンを搭載している感覚でした。試乗前には、じゃじゃ馬を予想していましたが、いい意味で裏切られました。

ただ、足回りの硬さは否定できず、キャビンには容赦なくダンピングのショックが届きます。

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高速道路では、弾丸のような速さを見せてくれます。車両重量:1240kgに対して、最高出力:192psですから、速いのは当たり前です。

追い越し加速も豊かなトルクでシフトダウンを要求する場面は少ないのですが、ここぞという時に、シフトダウンをし、アクセルを踏み込むと、野太い排気音と共に猛進していきます。

そのような場面でも、車両の挙動は極めて安定志向。ホットハッチというよりGTカー的な要素が高いといえます。

ワインディングでは、水を得た魚のように走ります。コリコリと節度感のあるシフトレバー、ヒール&トウに適したペダル配置。これらを駆使した走りは大人をアツくさせてくれます。

コーナーでもロールは見事に押さえ込まれ、クリックなギア比を持つステアリングと相まって、優れた回頭性を実現しています。

またブレーキフィールも絶品。構造は前後とも一般的な片押しのシングルピストン式なのですが、踏力に比例して「ググっ」と制動が立ち上がるもの。決してカックンブレーキにはならず、ワインディングでも大きな武器になってくれました。

GTI伝統の赤いラインが印象的なタータンチェックを採用したシートや、パワフルなエンジンなど、GTI魂がコンパクトなボディにギュっと凝縮された一台といえます。

(文/写真:外川 信太郎)

新型MINIコンバーチブルの爽快な走りはクセになる!?

「基本」モデルといえる3ドア/5ドアをはじめ、クラブマンやクロスオーバーなど、独身の方からディンクス、ファミリーまで、多様なニーズを多彩なボディバリエーションによって応えるMINIシリーズ。

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MINI「ファミリー」と呼びたくなる充実ぶりで、あとは3列シートのミニバンを待つだけ!? と思えるほどです。そのなかで、日本はもちろん世界的にも人気なのがMINIコンバーチブルで、2016年1〜4月期に前年同期比12.0%増の5849台を販売。

日本登場時の新型MINIコンバーチブルは、1.5Lの直列3気筒ターボを積むクーパー、2.0LターボのクーパーSのほか、ジョン・クーパー・ワークスが用意されています。なお、トランスミッションは全車6ATのみです。

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試乗したのはクーパーとクーパーS。

前者は136ps/4400rpm、220Nm/1250-4300rpmというスペックで、アイドリング時や低速走行時を中心に、屋根を開けていると3気筒らしいやや大きめの音が聞こえてきますが、通常時はアイドリングストップが作動しますから音も振動も気にする必要は当然ながらありません。

クーパーはクーパーSよりも40kg軽く、タイヤサイズも1インチ小さい195/55R16ということもあってか、より軽快感を抱かせます。

2台を乗り比べるとトルク感も高速域のパンチ力もクーパーSのほうがもちろん上ですが、パワーフィールや乗り心地などのバランスはクーパーの方が一枚上手な印象を受けます。

それに、オープン時は「飛ばす」よりも「流す」方が楽しく感じられますから、コンバーチブルならではの醍醐味を味わうならクーパーでしょう。

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一方のクーパーSは、上り坂でもグイグイと速度を乗せていく痛快な走りが魅力で、コンバーチブルでも高速道路を使って頻繁にロングドライブを楽しむなら「S」の192ps/5000rpm、280Nm/1250-4600rpmというスペックは大きな強みになるはず。

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カタログ燃費もクーパーが16.7km/L、クーパーSが16.3km/Lとほとんど差がなく、走らせ方次第でリカバリーできますから、上記のような乗り方が多く、予算が許せばダイナミックな走りが美点のクーパーSを躊躇なく選択したいところです。

(文/塚田勝弘・写真/前田惠介)

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■新型MINIコンバーチブルの装備、居住性、積載性はどうか?
http://clicccar.com/?p=372920

新型MINIコンバーチブルの装備、居住性、積載性はどうか?

3代目にスイッチした新型MINIコンバーチブル。ここでは進化のポイントをご紹介します。

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電動ソフトトップは、30km/h以下なら走行中に開閉が可能で、要する時間は約18秒。急な雨でも制限速度以下なら屋根を閉じることができますし、どれくらいの待ち時間になるか分かっている信号なら屋根を開け放つことも可能です。

装備では、歩行者検知機能付前車接近警告、衝突被害軽減ブレーキをはじめ、アクティブクルーズコントロール、ヘッドアップディスプレイのほか、万一の転倒時にロールオーバー・プロテクションなどの最新装備を用意。

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4シーターとはいっても乗車するのは2人までというケースが多いと思われますが、後席は先代よりも横方向が約30mm、足元スペースが約40mm拡大しているそう。

背もたれはやや直立気味なのは仕方ないところにしても、小柄な方なら意外と座れてしまうかもしれません。なお、身長171cmの私だと近所のファミレスや駅の送迎程度なら許容できるかなというのが正直なところ。

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荷室容量も拡大していて、先代よりも40Lアップし、通常時は215L、オープン時は160L。また、スルーローディングシステムの開口部も拡大することで使い勝手も向上。幌を閉じた状態でも大きくトランクリッドが開くのが便利に感じます。

(文/塚田勝弘 写真/前田惠介)

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今どきの10代女子にとって無骨なジープ・ラングラーは「粋なクルマ」!?

1941年に初代ジープウィリスが発売されて、75周年を迎えたジープブランド。

「どこへでも行ける。何でもできる。」をアイデンティティとして、様々なモデルをこれまで販売。さらに2015年にはスモールSUVのレネゲートを加えて、ラインナップの強化が図られています。

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コンパクトSUVのレネゲートからプレミアムSUVのパイオニアといえるグランドチェロキーまで豊富なSUVラインナップを誇りますが、日本国内で最も販売台数が多いのは初代ジープのDNAを色濃く受け継いだラングラー。

しかも5ドアのアンリミテッドが圧倒的な販売台数となっているはご存じでしょうか。

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「どこへでも行ける。何でもできる。」を具現化したラングラーのエクステリアもインテリアもひと言で表すととにかく無骨です。

街を走っていると目立つのではと思うのですが、これが不思議と景色に馴染んでしまうのから不思議。実際に私の家の周りにも2台のジープラングラーがあったのですが、今回の試乗中に発見したほどでした。

試乗したジープラングラーのボディサイズは全長4705mm×全幅1880mm×全高1845mm。最少回転半径は7.1mと、都内で乗るには持てあますサイズですし、取り回しもお世辞にも良いとは言えないです。

しかしそれでも、多くの人が惹きつけられる魅力。それは高い悪路走破性に尽きるでしょう。

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ジープラングラーの本当の性能はラフロードを走行した時に発揮されます。ダートや岩場といった道とは呼べないような場所でもジープラングラーは走行可能です。

このジープラングラーと同じ悪路走破性や登坂性能をもっているとするとスズキジムニーぐらいではないでしょうか。スズキジムニーといえば、軽オフローダーとして非常に人気が高いことは、高値安定傾向の中古車相場からも理解できます。

つまり、SUVの中でも超ハードなモデルは昔から一定のユーザーが存在しているということです。

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このように、世界中でSUVブームが起こり、様々なボディタイプや都市型モデルなど多様化する中でもジープラングラーは変わることなく、高い悪路走破性に特化したモデルとして君臨しているのです。

この孤高の存在こそ、多くのジープファン支持され、ジープブランドで最も販売台数が高いモデルとなっているのです。

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超硬派なラングラーを見て、女子大生のrinoちゃんは

「最初見たときはちょっと古めかしいクルマだなと思いましたが、このクルマを乗りこなせたら、粋だなと感じました。よく、SUVに乗せてもらいますけど全く違うクルマのように感じますし、これで街を走っていたらカッコイイですよね。さらに屋根も外せてオープンになるので、自然の中を走ってみたいですね。」

とのこと。

ハードコアなSUV、ラングラーも若い女子には粋なクルマに感じるようです。

(萩原文博)

「インド製」スズキ・バレーノの質感、居住性と積載性は?

スズキの新世代グローバルコンパクトカーであるバレーノがインドに続き、日本に投入されました。

同車が生産されるインドのマネサール工場では、日本の熟練検査員が送り込まれ、徹底した品質管理がされています。

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インドでも高品質であることは必須という時代になっているそうで、実際の仕上がりは実車をチェックしていただければと思いますが、同じアジアカーであるタイ製の日産マーチ、三菱ミラージュよりも、とくに内・外装の質感などで車格、価格が上であることが実感できるはずです。

ワイドなフロントグリルが印象的なフロントマスクですが、個人的にはもう少し洗練された顔つきであれば、スポーティで流麗なサイドビュー、安定感を抱かせるリヤビューとの統一感がさらに高まる気がするのですが……。

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一方のインテリアは、ダッシュボードの上面を抑えることで、前方はもちろんサイドの視界ともに良好。1745mmとワイドな全幅の割に取り回ししやすい印象を受けます。

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ブラック基調のインパネは、メッキやピアノブラック塗装、シルバー加飾などで上質感を演出しています。ウレタンステアリングホイールになる1.2L NAの「XG」は、エアコンパネルメッキ調の加飾が省かれるなど、質感の面ではもう少しという印象。1.2L NA車にも上級仕様が欲しいところです。

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シートもブラックのみでファブリックが標準。前席、後席ともに横方向に余裕があるほか、後席は身長171cmの私でも頭上にこぶしが縦に1つくらい入る空間があります。また、膝前空間にも余裕があり、前席下に足が入る空間が残されています。

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上下に装着できるラゲッジボードを備えた荷室は、320LとBセグメントではトップクラスの容量を誇り、広くて機能的な作りとなっています。

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(文/塚田勝弘・写真/小林和久)

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■スズキ・バレーノはハンドリングと高速域のフラットライド感が魅力
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■インドで生産されるスズキ・バレーノ。その長所と短所とは?
http://clicccar.com/2016/05/12/371314

スズキ・バレーノはハンドリングと高速域のフラットライド感が魅力

スズキのコンパクトカーといえば、先に登場したイグニスもあり、登場が待たれる新型スイフトも控えていますから、ここに来て登録車の充実ぶりが目を惹きます。

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マイルドハイブリッドのイグニスは、全長3700×全幅1660×全高1595mmでAセグメントとBセグメントの中間といえるサイズ感ですが、同じコンパクトカーでもBセグメント用の新開発プラットフォームを使うバレーノは、全長3995×全幅1745×全高1470mmと、全長と全幅はひと回り大きく、ホイールベースもイグニスの2435mmよりも長い2520mmとなっています。

バレーノは1.0L直噴ターボも1.2L NAエンジンも走り出すと、イグニスよりも乗り心地に落ち着きが感じます。欧州車的な硬めなセッティングではありますが、多少荒れた路面でも上下方向の振動が抑制されている感じを受けます。

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乗り味で美点といえるのが、高速域のフラットライド感。直進安定性もまずまずで動力性能に余裕はありませんが、高速移動も苦にならない乗り心地といえそうです。

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また、フットワークの良さを実感させるハンドリングも良好。ターボとNAではステアリングを切り始めた時の感覚が少し異なり、ターボはやや人工的な味付けに思えましたが、パワステの制御などは同じだそうですから個体差などもあるかもしれません。

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1.0L直噴ターボには6ATが組み合わされていて変速フィールの面でもCVTよりも違和感を抱かせない美点もあり、動力性能で選ぶなら111ps/5500rpm、160Nm/1500-4000rpmの1.0L直噴ターボで決まり! と言いたいところですが、ハイオク指定なのがやや気になります。

一方の1.2L CVTはエントリーグレードといえる「XG」のみで、91ps/6000rpm、118Nm/4400rpmという動力性能も流れに乗って走る分にはもちろん不満はありません。

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1.2L NAエンジンはATではなくCVTですが、JC08モード燃費24.6km/L(直噴ターボは20.0km/L)という利点もあるだけに、エンジン選びは悩ましいどころ。

1.2Lの「XG」にも質感を高めた仕様があると選択肢が広がるだけに、設定をのぞみたいところです。

(文/塚田勝弘・写真/小林和久)

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35.4kmは長い?短い?ボルボ・XC90 プラグインハイブリッドのEV走行可能距離

96セルのリチウムイオン電池を搭載し、総電力は9.2kWh、200Vの普通充電で2.5〜3.0時間で充電が完了する、ボルボ・XC90のプラグインハイブリッド「T8 Twin Engine AWD Inscription」。

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バッテリーは床下中央に搭載され87ps(65kW)を発生。後輪を駆動するリヤモーターは後輪の左右間に配置されています。

さらに、エンジンのスターターモーターだけでなく、バッテリー用の発電・パワーブーストを兼ねるCISGと呼ぶジェネレーターも搭載されているほか、8ATのトランスミッションには、電動オイルポンプ、CIGSのための空間を確保するクラッチカバー、シフトバイワイヤ化のための改良が施されています。

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気になるEV走行の航続可能距離は最大で35.4km。

フォルクワーゲンのゴルフGTIが53.1km/hなど50km超のモデルもあることを考えると、短く思えますが、重量級SUVとしてはライバルと比べても遜色なく、BMW X5 xDrive40e(EU値)は31km、ポルシェ・カイエンS Hybridは36kmとなっています。

なお、国産勢では三菱のアウトランダーPHEVが60.8kmと、SUVでは群を抜いていますが、カタログスペックであることを考えるとどう評価するか難しいところ。

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充電は車両左前のリッドを開けて差し込むだけ。充電中は自動的にロックがかかり、キー操作をしないと充電ケーブルが抜けないようになっています。

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なお、電気モーターのエネルギー消費量をはじめ、エンジンの使用や電気モーターが推進として使われているか、回生中かどうかなどを中央の大型ディスプレイに表示される機能も用意されています。

(文/塚田勝弘・写真/前田惠介)

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ボルボ・XC90 プラグインハイブリッドの走りはどうか?

スーパーチャージャーと直噴ターボのダブル過給器付2.0Lエンジンに、リヤモーターが後輪を駆動するボルボ・XC90のプラグインハイブリッドモデル。

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グレード名は「XC90 T8 Twin Engine AWD Inscription」で、エンジンスペックは320ps/5700rpm、400Nm/2200-5400rpm。リヤモーターは87ps(65kW)/240Nmという数値で、システムトータルでは407ps/640Nm(欧州値)という高い出力、トルクを誇ります。

発進時から非常に静かでスムーズなのはもちろん、21インチタイヤとは思えないほど乗り心地は良好。試乗車はオプションのエアサスペンションを装着。

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エアサスペンション装着車でもひと昔前のフワフワとした乗り味ではなく、適度に引き締まっているのも印象的。ノーマルサスがどんな乗り味を示すのか興味深いですが、試乗する機会があればご報告したいと思います。

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ただし、同じエアサスのガソリン仕様と比較すると、車両重量の重さを感じさせるフィーリング。床下に重量物のバッテリーを積むPHVらしい乗り心地で、荒れた路面だと左右にボディが揺すられるようなシーンもありました。

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動力性能はもちろん不満を一切感じさせないもので、エンジンが始動し、スーパーチャージャー、ターボと過給が切り替わっても遮音対策が念入りにされているためか静粛性の高さも1000万円超の価格にふさわしいレベルといえます。

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そのほか、PHV向けに「DRIVE MODE」も用意されていて、「Pure mode」にするとモーター走行が最優先となり、バッテリー状態などによっては125km/hまでEV走行となるそうです。また、同モード時は車高が10mm下がります。

そのほか、エンジン、バッテリー、モーターを走行状況などに応じてバランスよく使い、燃費も最も良い「Hybrid mode」、市街地などでのモーター走行に備えてバッテリーを温存する「Save mode」は、バッテリー残量が少ないと33%まで充電が可能に。

「AWD mode」が用意されているのも特徴で、路面状態が悪い場合などはトラクションが最大化されます。

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音・振動面の対策も抜かりのないボルボXC90プラグインハイブリッド。1009万円という価格は万人に推奨できるものではありませんが、大型SUVのPHVで3列を実現するなどによりモデルライフを通して一定の支持を得そうです。

(文/塚田勝弘・写真/前田惠介)

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1000万円超となるボルボ・XC90 プラグインハイブリッドの強みとは?

北米などを中心に好調のボルボXC90は、「北米トラック・オブ・ザ・イヤー」、「2016 SUVオブ・ザ・イヤー」に輝くなど、世界的な話題を集めている新世代ボルボを象徴するモデルといえるでしょう。

日本でも1月27日の発売以来、3月末までの約2カ月で300台以上を受注しているそうです。

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新しさを感じさせる内・外装だけでなく、パワートレーンも見どころ満載。

なかでも1000万円超えとなるプラグインハイブリッドの「XC90 T8 Twin Engine AWD Inscription」は、環境性能だけでなく動力性能などXC90を象徴するモデル。

フロントに搭載されるエンジンは、2.0Lの直列4気筒直噴ガソリンターボにスーパーチャージャーを加えたダブル過給器付き。それに加えて87ps(65kW)、240Nmを発揮するリヤモーターが後輪を駆動する4WDとなっています。トランスミッションは他グレードと同じように8ATを搭載。

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The all-new Volvo XC90 Twin Engine is a plug-in electric car, hybrid car and high-performance car rolled into one. A two-litre, four-cylinder supercharged and turbocharged Drive-E petrol engine powers the front wheels and an 80 hp (60 kW) electric motor drives the rear wheels. The battery pack is located in the centre of the vehicle.

気になる燃費は15.3km/Lで、200Vで2.5〜3時間かかるという充電電力使用時の航続可能距離は35.4km。近所への買い物などなら充電電力でもまかなえそうです。

なお、システムトータルでは407ps/640Nm(欧州参考値)と大出力を誇り、燃費だけでなく動力性能への期待も高まります。

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また、PHV化によりボディ補強など一部手が入れられています。

トンネルは高電圧バッテリーを積むためボディ中央部が高くなっていて、リヤのフロアはハイブリッドコンポーネント搭載のためガソリン仕様よりも高く、サイドシルにはガソリン仕様よりも370mm長い補強メンバーが配置されているそうです。

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それでも7人乗りを実現しているのもポイントで、バッテリーは車両の中央に配置し、リヤモーターによりドライブシャフトが不要など、巧みなパッケージングも自慢です。

SUVのPHVは最近モデル数が増えていて、BMW X5をはじめ、レクサスRXや三菱アウトランダーなどもありますが、7人乗りのXC90(PHV)は確かに強み。

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あとは1009万円という価格でしょうが、ボルボが高級ブランドとしても認知されるには1000万円超という価格帯は不可欠でしょうし、それを最上級SUVのプラグインハイブリッドで提供するというのは確かな戦略といえそうです。

(文/塚田勝弘・写真/前田惠介)

スーパーチャージャーと直噴ターボを積むボルボ「S60 T6 AWD R-DESIGN」は豪快な加速が魅力

ボルボS60、V60に追加された直列4気筒エンジンの「T3」の後は、同じ直列4気筒でありながらスーパーチャージャーと直噴ターボのダブル過給器を搭載したS60の「T6 AWD R-DESIGN」に試乗しました。

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「T3」は152ps/250Nmというスペックですが、「T6」は306ps/5700rpm、400Nm/2100-4500rpmというアウトプットで、まさに「T3」の約2倍となる最高出力を得ています。

旧型の「T6 AWD」と比べると出力は2psアップとほとんど変わらず、最大トルクは40Nm低くなっていますが、S60の場合は燃費が60%向上し、13.6km/LというJC08モード燃費を実現。

なお、S60、V60の「T6 AWD R-DESIGN」は、自動車取得税40%軽減、自動車重量税25%軽減、自動車税50%軽減のエコカー減税対象車となっています。

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ターボチャージャーは自社開発の鋼板製タービン、マニフォールドが採用され、軽量化、遮熱性の改善により排ガス、燃費の改善に貢献しているとのこと。

さらに、ルーツ式スーパーチャージャーは、4枚のブレード付らせん状ローター、インペラーブレードを採用し、3500rpm以下でクイックなレスポンス、パワーを得られるのが特徴です。

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3500rpmまでスーパーチャージャーが受け持ち、3500rpm以上では直噴ターボがパワーを引き出しますが、その切り替わりやターボラグのような違和感は最新の過給エンジンらしく、意識しないとほとんど感じさせません。

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さらに、アイシンAW製8ATのシフトフィールは変速の仕事ぶりを意識させないほどスムーズですから、アクセルを意識的に強く踏み込まない限り、過給遅れなどは察知させないほど。

逆に言うと、タウンスピードであれば乗り比べた「T3」と大きな差は感じさせず、倍もある最高出力、そして150Nmもの差がある最大トルクの恩恵は、「宝の持ち腐れ」までは言わなくても出番なし、というのも当然かもしれません。

大人4人乗車などの機会が多く、高速道路を使ってのロングツーリングあるいはワンデードライブであれば、余裕の走りを得たければ断然「T6」の方が優位。高速道路で加速する際などは胸がすくようなパンチ力が味わえますし、上り坂での力強さも一枚以上上手なのは間違いありません。

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なお、「T6 AWD R-DESIGN」の乗り心地ですが、以前のR-DESIGNほどの硬さはそれほど感じさせず、全体に軽快感の強い「T3 SE」よりも重厚感はあるものの、ファミリーユースでも許容できる範囲ではないでしょうか。

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S60、V60には、「T3」と「T6」以外にもディーゼルターボの「D4」、直列4気筒ターボの「T5」もありますからパワートレーン選びに悩まされそうですが、街中が中心なら「T3」、長距離&多走行となりそうなら「D4」、豪快な加速と4WDのスタビリティの高さなら「T6」、バランスの良さなら「T5」などのように、乗り方次第で吟味したいものです。

(文/塚田勝弘 写真/前田惠介)

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■ボルボS60、V60に搭載される1.5L 4気筒直噴ターボの走りは?
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■ボルボS60、V60、XC60に新エンジンを搭載
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ボルボ・S60、V60に搭載される1.5L 4気筒直噴ターボの走りは?

ボルボが「T3」と呼ぶ1.5Lの直列4気筒直噴ターボは、V40にも搭載済みで、日本導入時に試乗する機会もありました。

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180psの「T4」やディーゼルターボの「D4」と比べると、高速域のパンチ力やトルク感では及ばないものの、「D4」よりも鼻先を中心としたボディの軽さは際立っていて、街中メインの使い方であればV40には「T3」がベストマッチかも、と思わせてくれる仕上がりになっています。

一方で、ひと回り大きく約100kg重いS60(試乗車はセダンのS60で、ワゴンのV60にもT3を設定)には、152ps/5000rpm、250Nm/1700-4000rpmというスペックの「T3」は荷が重いのではないか? という懸念は当然ながら浮かんできます。

なお、V40「T3」のエンジンスペックも同値です。

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さらに、S60、V60に搭載されるトランスミッションは「T3」のみ6ATで、「D4」、「T5」、「T6」は8ATですから、変速フィールのマナーも気になるところ。

街中や少し流れの速い郊外路で走り出すと、トルク感や加速性能に不満はほとんど感じさせず、その後試乗したスーパーチャージャー+ターボ搭載の「T6」と比べても街中、郊外路で流す程度であれば大差は感じさせません。

また、こうしたシーンなら6ATの変速マナーもほとんど突っ込みどころはなく、JC08モード燃費が16.5km/L、エコカー減税対象(自動車取得税60%軽減、自動車重量税50%軽減、自動車税75%軽減)という点も魅力的に思えます。

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同じタイミングの2016年2月にS60、V60、XC60の60シリーズに設定されたダブル過給器の「T6」エンジンについては別記事でご紹介しますが、この「T3」エンジン搭載車は、高速道路や上り坂でも普通に流す分には、特にパワー不足を感じさせません。

S60、V60も街中メインの乗り方ならT3で十分という印象で、それほど速さを求めないのであれば満足させてくれるはずです。

(文/塚田勝弘・写真/前田惠介)

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■ボルボS60、V60、XC60に新エンジンを搭載
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4人家族にちょうどいいサイズのルノー・キャプチャー。ライバルのプジョー2008との違いは?

ルノー・キャプチャーのボディサイズは全長4125×全幅1780×全高1585mm。最大のライバルといえるプジョー2008のサイズは全長4160×全幅1740×1550mm。

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プジョー2008には、1550mm以下の機械式立体駐車場にも入るかもしれないという利点がありますが(ジャストサイズなので入庫可能は確認する必要があります)、ルノー・キャプチャーにはDCTによるスムーズは変速フィールと、トルクアップした力強い走りが特徴です。

プジョー2008には新グレードで全高1570mmの「2008 CROSSCITY」が2016年3月に追加されていて、1.2L直噴ターボエンジンに6ATという新しいパワートレーンが用意されています。

160307_2008_CROSSCITY_Exterior3従来の2008は、1.2LのNAにシングルクラッチという組み合わせだったため、トルク・パワーともに余裕はあまりなく、しかも変速フィールになれる必要がありました。

新グレードの「2008 CROSSCITY」はこうした点も払拭されているだけでなく、「グリップコントロール」と呼ぶ走行モードセレクターも追加されています。

一方のルノー キャプチャーも一部改良でトルク、燃費をアップさせるなど商品力向上を果たしていて、新しいボディカラー「ベージュ サンドレメタリック+イヴォワール(ルーフ)」、「ベージュ サンドレメタリック+ノワール エトワールメタリック(ルーフ)」を追加。

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また、160mm前後可能なリヤシートなどにより、小さな子どもが2人いるファミリーでも使いやすく、脱着可能で洗濯機でも洗えるという「ジップシートクロス」など、ルノーらしい遊び心を感じさせる装備も用意されています。

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価格はルノー キャプチャー ゼンが256万9000円、ルノー キャプチャー インテンスが267万2000円、プジョー2008 CROSSCITYが265万円となっています。

(文/写真 塚田勝弘)【関連記事】

■エンジントルクの向上で力強い走りを得たルノー キャプチャー
http://clicccar.com/?p=370423

エンジントルクの向上で力強い走りを得たルノー キャプチャー

世界的な流行となっているコンパクトSUV。現在の日本で買えるBセグメント系SUVのフランス車は、ルノー キャプチャーとプジョー2008の2台。

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日本市場における「フランス車のBセグメント」というニッチな世界ではルノー ルーテシアがプジョー208を抜いて1位になっていますが、SUVではプジョー2008がルノー キャプチャーを僅差で上回ったそうです。

3月3日から一部改良を受けたルノー・キャプチャーが販売されています。

今回の一部改良は、2.0Lに匹敵するという1.2L直噴ターボエンジンのトルク向上、そして6速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)のギヤ比変更など、パワートレーンの改良でよりスムーズな走りを得ているのが主な改良点となっています。

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いままでなかったのが意外ですが、ストップ&スタート機能も追加されています。新型ルノー キャプチャーは、旧型よりも最高出力は2ps下がり、118ps/5000rpm(旧型は120ps/4900rpm)、最大トルクは15Nmアップとなる205Nm/2000rpm(旧型は190Nm/2000rpm)。

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改良前のキャプチャーには日本登場時のプレス向け試乗会などのほか、数回乗る機会がありましたが、今回は新旧を乗り比べるチャンスがなかったため、2psダウン、15Nmアップの恩恵は明確に感じることはできませんでした。

それでも2.0L NAエンジンなみという力強い加速フィールは、街中や首都高速でも十分に実感できるもので、とくにエコモードをオフにするとターボとはいえ、1.2Lとは思えない元気な走りを堪能できます。

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パワートレーン以外で少し気になったのは、ヒョコヒョコとした乗り心地で、ルーテシアではあまり感じられない挙動なので、購入を考えている方はディーラー試乗などで確認した方がいいでしょう。

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なお、今回の一部改良で変速比も変更されたことで力強い加速感と、PHP(輸入自動車特別取扱制度)から型式認定に変わったため、JC08モード燃費17.2km/Lというカタログ燃費も表示されるようになっています。

(文/写真 塚田勝弘)

INGENUIMモデルとは異なる印象をみせるジャガー・XFのガソリンモデル

フルモデルチェンジを果たしたジャガーXFに乗って参りました。三重県は伊勢志摩を基点に、プレス試乗会が開かれたのです。

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2007年以来のニューモデルとなった2代目XFは、そのルックス通り名実ともに(!?)XEの兄貴分。ボディの75%にアルミニウムを使用したモノコックボディを、XEより125mm長い2960mmのホイールベースに載せています。

メルセデス・ベンツCクラス、BMW3シリーズをライバルとするXE、同じくEクラス、5シリーズに対抗するXF、というわけです。

初代XFの時代は、まだXEが登場していませんでしたから、先代は、Eクラス/5シリーズの顧客を睨みながら、Cクラス/3シリーズのお客様もフォローしなければいけないという厳しい闘いを強いられました。

今回、ようやく体勢が整い、ジャーマンプレミアムにジャーマンスープレックスをかけられるようになりました……って、なんのこっちゃ。

新型XFのスタイリングはXEそっくり。さらに言うと、フラッグシップたるXJのデザインにもつながっています。

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現行XJがデビューしてすでに8年が経ちますが、世界的にジャガーというと丸目4灯のクラシカルなイメージが未だに根強く残っています(特に日本市場ではその傾向が強いそうです)。

ガラリと装いを変えた新生ジャガーの姿を認識してもらうため、3つのモデルが一丸となって、消費者にアピール必要があるのでしょう。

ニューXFはボディサイズの大きさをほぼ変えず、というか、全長は旧型から10mm短い4965mmとした一方、ホイールベースを50mm延ばして後席の居住性を向上させました。

サイドのウィンドウグラフィックも、リアドアの後ろに小窓を設けたシックスライトとして、スポーティなフォルムを維持しつつ、全体にちょっぴりフォーマルな印象にしています。

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車種構成は、2リッター直4ターボ(240ps/598万円〜)、同ディーゼルターボ(180ps/635万円〜)、3リッターV6スーパーチャージド(340ps/969万円〜)、そのハイチューン版(380ps/1105万円)に大別されます。トランスミッションは、いずれも8速ATが組み合わされます。

「INGENUIM(インジニウム)」と名づけられた2リッター直4ディーゼルターボ搭載車については、こちらの記事ですでに報告しましたが、わずか1750rpmで430Nmの最大トルクを発生する使いやすいエンジンで、回さなくても速い。

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最新世代のディーゼルらしく、シリンダー内に精緻に燃料を噴射する直噴機構を備え、排ガスに尿素水を噴き付けて、有害な窒素酸化物(NOx)を無害化するAdBlue(アドブルー)システムを採用しています。

試乗会初日は、ジャガー・ランドローバー・グループがリリースした最新ディーゼルに大いに感心させられました。

翌日の試乗車は、スーパーチャージャーで過給される3リッターV6ペトロ(ガソリン)エンジンを搭載したクルマでした。

前述の通り、340psと380psモデルが用意されるのですが、どちらも素晴らしい。試乗したのは、前者がXF R-SPORT(969万円)、後者がXF S(1105万円)でした。

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ディーゼルモデルと比較すると価格が300万円以上違うので、これはもう違うクルマと言っていいでしょう。

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堅実な走りを見せるXFディーゼルに対し、6気筒を積んだXFのドライブフィールは、実に華やかなもの。

タコメーターの針が回るのに従って排気音が高まり、クルマの速度がのっていく。積極的にエンジンを回すのが楽しくて、頭の中で「もしやこの感覚は古臭いのでは?」と思いながらも、頬が緩むのを止められません。

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この3リッターV6は、ジャガー自慢のスポーツカー、Fタイプにも使われています。どおりでスポーティなはずですね!

V6を積んだXFでもうひとつ印象的だったのは、乗り心地のよさ。

サスペンション形式は、フロントがダブルウィッシュボーン、リアはマルチリンク式です。XFディーゼルでも十分フラットな乗り心地でしたが、ことに電子制御式アクティブダンピングシステムを採用したXFで高速道路を巡航していると、運転者の視線がほとんど上下しません。

これには本当にビックリです。ホイールポジションを1秒間に500回、ボディの揺れを同じく100回チェックして、ダンピング具合を調整しているのだとか。

新しいジャガーXFは、乗り心地の面でも順当に次世代に移行しているようです。「“フラットライド”といえばドイツ車!」と思っている方、一度、XFを試してみてはいかがでしょう?

(文と写真:ダン・アオキ/Office Henschel)

上質な乗り味が魅力のオデッセイ・ハイブリッド。 気になる実燃費は?

2月にマイナーチェンジを実施したホンダ・オデッセイ。発売から1カ月で9000台超という受注を集めたそうですが、そのうち7割強がハイブリッドモデルとのこと。

いままでハイブリッドがなかったのが不思議なくらいですが、それだけ待望の追加設定といえるのでしょう。

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JC08モード燃費は、クラストップ(7/8人乗り、1.8L以上のクラス、全高1600mm以上のミニバン)の26.0km/L。

日本自動車販売協会連合会の「新車乗用車販売台数月別ランキング」では、2016年2月に20位、翌3月は22位と圏外から30以内に顔を出しています。

ハイブリッド仕様と純ガソリン仕様の価格差は、装備など違いで単純比較はできないものの、ベースグレードで単純比較すると75万円超、装備を考慮すると実質約55万円の差といえそうです。

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そうなると、ガソリン代だけ元を取るのはかなり走らなければなりませんが、ハイブリッドモデルを購入する「理由」は単なる燃費だけでなく、静粛性の高さや静かさからくる上質感などを挙げる人も多いはず。

実際に試乗してみると、オデッセイ・ハイブリッドの乗り味は音・振動面、乗り心地など動的質感の高さは想像以上の出来映えでした。

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一般道から山岳路、高速道路まで約280km走行する機会がありましたが、路面状況を問わず1列目から3列目までショックを抑制したフラットライドは最近のミニバンの中でも上々といえるもの。

乗り心地の良さは、車格が下になるヴォクシー/ノア/エスクァイアはもちろん、基本設計の古いエスティマ・ハイブリッドなどを超えて、アルファード/ヴェルファイアに匹敵するかそれ以上かもしれません。

Printまた、バッテリー残量によりますが、街中であればEV走行中心でまかなえることが多く、エンジンの出番となると力強い加速も可能。ノーマルでも重い3列ミニバンですが、高速道路の巡航でも「かったるさ」はあまり感じさせませんでした。

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フットワークに関しては、70〜100kgほど重いハイブリッドらしく軽快とまではいえませんが、背の高いミニバン(といっても1700mm以下ですが)にありがちな重心の高さを感じさせず、ワンディングなどでもロールが大きくて運転がしにくいということもありません。

ほかにも、純ガソリン仕様と変わらない乗降性や居住性も魅力で、左右一体式のサードシートの床下格納など、シートアレンジを含めた使い勝手もガソリン車と同等。

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実燃費は約16.5km/Lで、JC08モード燃費からするともう少し伸びて欲しい気もしますが、エコランに徹したわけでもなく、渋滞にもたびたび遭遇したことを考えると上出来といえそうです。

(文/写真 塚田勝弘)

ホンダの燃料電池車「クラリティ フューエルセル」は乗り心地のよさがお値段以上!?

まずは官庁や企業などへのリーフ販売から市販のはじまったホンダの燃料電池車「クラリティ フューエルセル」に乗ることができました。

すでに同じプラットフォームを使った電気自動車やプラグインハイブリッドカーの開発が進んでいることが北米では発表されていますが、やはり圧縮水素を化学反応させ電気を起こしてモーターで駆動する燃料電池車は、テクノロジー面でのイメージリーダーであることは間違いありません。

メーカー希望小売価格(参考価格)が766万円というのも、NSXの国内販売が始まるまでは価格面でのフラッグシップともいえます。

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そして、フラッグシップ&テクノロジーリーダーであっても、ホンダの思想に変わりはありません。

メカニズムを凝縮して、乗員スペースを最大にとるというM・M思想(「メカ・ミニマム」、「マン・マキシマム」に由来するホンダのクルマづくりにおける基本思想)は、燃料電池車においても重視されています。

これまでホンダの生み出してきた燃料電池車は燃料電池スタックが、フロア下を占めていたり、センターコンソール内に収められていたりしましたが、ついにフロントフード下に「昇圧コンバーター、燃料電池スタック、駆動モーター&ディファレンシャル」を三階建て構造として収めることに成功。量産燃料電池車としては初めて5人乗りを実現したと胸を張ります。

そうした小型化に効いているのが世界で初めてダイオードやMOS-FETにSiCをフル採用することで小さくできた昇圧コンバーターや従来比で33%も小さくなった燃料電池スタックといったM・M思想による技術といいます。

とはいえ、燃料電池スタックなどはまだまだ生産性が厳しく、2台/日程度の量産にとどまってしまうということです。

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ボディサイズでいうとアコードクラスのセダンといえる「クラリティ」は、ホンダの燃料電池システムが持つ湿度コントロールや温度管理の巧みさにより、開口部も小さく、空力ボディに仕上げられています。

空気抵抗を減らすために前後のタイヤで起きる乱流を整えるエアカーテンやリヤタイヤはフェンダーを伸ばしてカバーしているほど。

こうした外観の印象から、またホンダというブランドのイメージから、さぞスポーティな燃料電池車になっているのだと思いきや、意外にもジェントルな乗り心地に感じられたのです。

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クラリティもそうですが多段変速機を持たないモーター駆動の電動車両というのは、まさしく段付き感のないスムースな走りがセールスポイントとなります。さらに車両重量が1.9t近いという重さもあってか、重厚でフラットな乗り心地を実現しているのです。

とはいえ、モーターをレスポンス良く働かせるだけのリニアな電気供給ができているので、加速感に重さのネガは感じません。

たとえるなら、大排気量のV8エンジンと多段ATを搭載したFWDサルーンといった印象を、運転していても後席に座ったときにも感じたのでした。

だからといってホンダがスポーティさを忘れているわけではありません。

燃料電池車ながら「スポーツ」モードを持つクラリティ。その「スポーツ」ボタンをプッシュすれば、アクセルペダルだけで加減速をコントロールしやすくなり、これまた車重を感じさせないリズミカルな動きを味わえます。

手応えのあるデュアルピニオン電動パワーステアリングや、高圧水素タンクを支える強固なサブフレームからアームを生やしたリヤ・マルチリンク式サスペンションといったシャシーに投入されたメカニズムからもハンドリングへのこだわりが感じられます。

燃料電池車としての完成度だけでなく、内燃機関車の目指す理想的な面も持つ「クラリティ フューエルセル」。価格だけでなく、乗り味においても、現時点におけるホンダの頂点であるといえそうです。

(写真・文 山本晋也)

585ps/760Nmを誇る「Mercedes-AMG GLE 63 S 4MATIC」の桁違いの速さ!

CクラスベースのSUV「GLC」のプレス向け試乗会には、2016年の今年は「SUVイヤー」と位置づけることもあってか、Mクラスから車名を変えたGLEやGクラス、GLAなどのメルセデス・ベンツのSUVが揃っていました。

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同試乗会では、昨年秋に登場したGLEの最上級グレード「Mercedes-AMG GLE 63 S 4MATIC」に試乗する機会がありました。

Mercedes-AMG社による5.5LのV8直噴ツインターボエンジンは、585ps/760Nmという圧倒的なアウトプットを誇ります。

個人的には、Mクラス時代のML 63 AMG(510ps/630Nm)には何度か試乗していますが、こちらは「S」がさらに付きますからまさに別格。

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全長4855×全幅1965×全高1760mmという巨体にこのパワーとトルクですから、発進から不用意にアクセルを踏むことはできません。飛ばさなくても早朝深夜の住宅街を走らせるのは憚られるほどの迫力あるエキゾーストノートを残しながらスタート。

高回転域のパンチ力を試すシーンはありませんでしたが、停止状態からゆっくりとアクセルを踏んでも無尽蔵に思えるほどのトルク感がおそってきます。

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とはいえ、車名からも分かるようにこの強大なトルクを路面に確実に伝え、スタビリティを向上させる専用セッティングの4WDシステム「AMG 4MATIC」、AMG専用に最適化され、操縦安定性と快適性を両立したエアサスペンション「AMG RIDE CONTROL スポーツサスペンション」、コーナリングのロールを抑え走行安定性を向上させる「ACTIVE CURVEシステム」など、油圧や電子制御により調教されています。

間違いなく速いのですが、単なる凶暴な? SUVではなく、メルセデスらしい上質感も漂うのはさすが。

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ワインディングでは、重厚感のある背の高いSUVらしくそれなりのロールを許しながらも予想以上に速くコーナーを次々とクリアしていきますが、主戦場は間違いなく高速道路でしょう。なお、価格は1740万円でこちらもド級といえる設定になっています。

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ライバルはカイエン・ターボSですが、走りだけでなく、乗り心地などの快適性もより重視するのであれば、「Mercedes-AMG GLE 63 S 4MATIC」の方が若干上手のような気がします。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

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■ディーゼルと5.5Lガソリンターボのみのメルセデス・ベンツGLEに勝ち目はあるか!?
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INGENUIMディーゼルを搭載したジャガーXE/XFはシルキーでトルクフル

盛り上がりを見せていた日本市場のディーゼル車マーケットに、冷や水を浴びせるカタチとなった、フォルクスワーゲンの排ガス不正事件。

その余波で停滞するかに見えたわが国のディーゼル市場に、新たなモデルを投入したのは、意外なことに(!?)ジャガーでした。

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“知の力”を意味する「INGENUIM(インジニウム)」と名づけられた2リッター直4ディーゼルターボを搭載したモデルが、XF(白い車両)とXE(赤い車両)に用意されたのです。

その新しいディーゼルターボは、ツインカム4バルブのヘッドメカニズムを持つ、オールアルミユニット。ジャガーがこれまで使っていた2.2リッターの2.2dユニットと比較して、燃費は17.5%向上し(EU6)、20kgほど軽量化され、静かで振動も少ないとされます。ボア×ストロークは83.0×92.4mm。排気量は1999ccです。

最新のディーゼルらしく、ボッシュ第2世代のコモンレール式燃料噴射装置を採用。バランサーシャフトを備え、カムシャフトのタイミングは可変化されます。英国はじめ、欧州では、税制や保険に合わせて複数のアウトプットが用意されるはずですが、日本市場では、当面、最高出力180ps/4000rpm、最大トルク430Nm/1750〜2500rpmの1種類。このスペックは、XFとXEで共通です。

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ディーゼルエンジンで問題になる、排ガス中の窒素酸化物は、AdBlue(アドブルー)システムで対応。排気に尿素水を噴き付け、有害な窒素酸化物(NOx)を、最終的に無害な窒素に還元します。

XEのディーゼルモデルは、仕様によって497〜549万円。XFは635〜693万円。カタログ燃費(JC08モード)は、XEが17.1km/リッター、XFは16.7km/リッターで、いずれもラインナップ中、最良の値です。

INGENUIMユニットを搭載したXFとXEに乗ることができたので、簡単な印象を報告しましょう。

試乗したXEは、20d R-SPORT(549万円)。

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XEディーゼル中の最上級モデルで、試乗車はさらに18インチホイールを19インチ(12万3000円)、スポーツシートをレザー(31万2000円)、さらにMeridianプレミアムサラウンドサウンドシステム(36万4000円)を奢るなど、254万7000円分のオプション装備を装着した豪華版でした。

スターターボタンを押してエンジンをかけると、「明らかにディーゼル」という音と振動を発して、INGENUIMユニットは目覚めます。

もちろん、ひと昔前のディーゼルエンジンと比較すると、大幅に静かでスムーズですが、総額800万円を超える高級サルーンとして、ちょっと気になる人がいるかもしれません。

ことに、市街地ではアイドリングストップが働くので、再始動のたびに「ブルン!」という身震いとともに、「ディーゼルサルーンに乗っている」ことを再確認することになります。

一方、XEディーゼルのドライブフィールは力強くて、ことに低回転域からトルキーなのが、最大の美点。そのうえ8段という多段ATと組み合わされるので、走り始めると次々とギアが上がっていきます。街なかでは、使っても2000rpmくらいまででしょうか。普通に走っていても燃費はよさそうです。

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ちなみに、INGENUIMユニット搭載のジャガーXEは、エコカー減税の対象になります。

試乗車のR-Sportで約19万7000円。ベーシックな20d Pure(497万円)だと、約18万4000円の減税となります。ガソリン車のベースグレードXE Pureは477万円ですから、減税分でほぼ相殺される計算になります。

ジャガーXEの場合は、シンプルなPureグレードでディーゼルモデルに乗った方が、“らしい”かもしれませんね。ライバルは、BMW320d(506万円)になりましょうか。

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さて、上級モデルXFのディーゼルは、20d Prestige(693万円)でした。XFディーゼルの上級版ですね。こちらも、19インチホイール(20万1000円)、LEDヘッドランプ(25万9000円)など、120万7000円のオプション装備が付いていました。

前述の通り、INGENUIMユニットのアウトプットはXEと変わらないので、車重が重い分(サンルーフ付きのXE 20d R-SPORTが1680kg。XF 20d Prestigeが1760kg)不利なはずですが、低回転域からの厚いトルクの恩恵か、運転者(←自分です)の感覚が鈍いのか、動力性能の差はほとんど感じられません。

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XFのディーゼルモデルは、エンジンルームまわりに遮音・吸音材が贅沢に使われているので、走行中の車内はXEよりグッと静かです。100km/hでの巡航なら、トップギアで1400rpmほど。スロットルペダルに足を載せているだけで、豪華なブリティッシュサルーンは粛々と走ります。

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BMW523d(599万円から)とメルセデス・ベンツE220d(687万円)を価格帯が重なるジャガーXFディーゼル。おもしろい存在になりそうです。

ちなみに、XFディーゼルもエコカー減税の対象車となり、20d Ingenium Pure(635万円)が約21万8500円、同Prestige(693万円)が約23万3000円の減税となります。

(文と写真:ダン・アオキ/Office Henschel)

AクラスベースのSUV「メルセデス・ベンツGLA」の魅力を再考する

SUVのラインナップを強化しているメルセデス・ベンツ。

プレミアムミドルサイズSUVを謳う「GLC」が登場し、日本で認知度・人気が高まっているBMWのSAVシリーズを追いかける商品群が形成されつつあります。

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GLCに追加される予定のディーゼルやプラグイン、さらにGLCクーペまで出揃えば、日本の輸入車市場での連続首位も見えてくるのではないでしょうか。

2015年に16年ぶりに輸入車の販売台数でトップに輝いたのは、看板車種であるCクラスはもちろん、Aクラス、Bクラス系のFFモデルも大きく貢献しているはず。

SUV効果は、GLCはもちろん車名をMクラスから変更したGLEなどによりこれから出てくると思われます。

GLCやGLEが気になるけれど、ボディサイズや予算的にも選択肢から外れるという場合でも、ほかにメルセデス・ベンツのSUVで選択肢があります。

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それがGLA。発売は2014年5月ですから2年近く経っていますが、GLCのプレス向け試乗会が撮影、試乗する機会がありましたので改めてその魅力をチェックしたいと思います。

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ボディサイズは全長4455×全幅1805×全高1495mm(GLA 180 Sport)。Aクラス(A 180 Sport)よりも全長が100mm長く、全幅は25mmワイド、全高は75mm高く、最低地上高は40mm高い140mm。

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FFと4WDの4MATICを設定し、雪国ではないからFFでも十分というニーズも満たしてくれますし、街中のちょっとした段差なら躊躇なく乗り越えられますし、キャンプ場などの相棒としても不足はないはず。

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後席の乗降性や居住性はAクラスから大きく向上した印象はありませんが、荷室容量は421〜836Lと、341〜1157LのAクラスと比べると通常時(後席バックレストを立てた状態)は80L増えていますから、普段の使い勝手はAクラスよりも良さそうです。

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走りに関しては、日本上陸時のAクラスやBクラスよりも乗り心地の面で上質さが増している印象で、その後AクラスもBクラスも乗り味やパワートレーンがかなり洗練されていますが、GLAは走りの質という点でかなり改善されています。

それでもFRベースのCクラスとは「上質」とはいっても差はありますので、ハッチバックベースのコンパクトSUV「GLA」というキャラクターが気に入ったのでなければ、400万円台から買えるCクラスを狙ったほうがいいかもしれません(GLAは351万円〜)。

逆にいえば大きすぎないサイズと適度な機動力、積載性などが気に入れば選択肢に入れたいところです。

(塚田勝弘)

【関連記事】

■メルセデス・ベンツGLAクラスの上質な乗り味に驚き!
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ヤナセにいって「レーシングコルベット」を試乗してきました!【動画】

日本で「アメ車」と言われて真っ先に思いつく可能性が高いのが「シボレー・コルベット」だと思います。

現行のコルベットは、初代から数えて7代目。これまでも数々のモデルを販売し、ル・マンシリーズをはじめとしたモータースポーツでもそのパフォーマンスの高さを全世界に知らしめています。

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そんなアメリカン・スポーツカーを正規輸入販売している「ヤナセ」で、4月から期間限定で「体験できる」という話を聞きました。

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早速、東京都港区芝浦にあるディーラー「キャデラック・シボレー東京」に足を運んでみました!

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お店の前には、2台のC7コルベットZ06が並んでいました。1台はコンバーチブルタイプです。さらに、ショールームに入るとZ06コンバーチブルと立派なドライビングシミュレーターが置かれていました。

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ヤナセでは、この4月からこのコルベットZ06を気軽に体験できるディーラーツアー「シボレー コルベット ドライビングエクスペリエンスツアー」を開始したのです。

そのスタートがこのキャデラック・シボレー東京なのです。

コルベットZ06の凄さの片鱗を体験でき、ショールーム内では緻密にコンピューター上に再現されたレーシングコルベット・C7Rを富士スピードウェイで全開走行できます。

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ドライビングシミュレーターは、ただのシミュレーターではなく、プロドライバーのトレーニング用に開発製作されたスペシャルモデル「TSK Racing Simulator T3R」です。

サーキットで走行する際にマシンにかかる力をこのシミュレーターが再現します。路面の凹凸から4輪全ての荷重移動まで体感できます。今回のツアーには、このシミュレーターを実際にトレーニングとして利用しているプロドライバーが来てくれています。

RES_KOGA(写真は公式サイトより)

今回は、2016年のNASCAR K&N PRO SERIESにシボレーワークスドライバーとして参戦している古賀琢麻選手がサポートしてくれます。

では早速富士スピードウェイを走ってみましょう!まずは古賀選手!

流石はプロドライバーです。思い切りもよく、メリハリのある速いドライビングです。
次に僕がシミュレーターのバケットシートに収まって、いざ挑戦!

ハンドルの修正が多く、踏力が足らなかったりでオーバーランしかけるところがありました。マシンからのフォースフィードバックがステアリングを通じて体に伝わりシミュレーターですが、怖さを感じるほど緊張しました。

この時、古賀選手は1分43秒台でドライビングしていましたが、僕は1分44秒台でした。
やっぱり敵いませんでした(笑)

古賀選手からは、

・ハンドルの操作が急でタイヤを壊してしまう
・コーナー入ってからの修正が多いのでタイムロスと余計なタイヤの負担に繋がる
を主に指摘されました。

「フロントノーズにきちんと荷重を入れ、リアから曲がっていき、方向が決まったらハンドルを戻してアクセルを入れていく」…頭では理解できるのですが、いざ実践しようとするとスピンしてしまいました。

20〜30分ぐらいドライビングさせていただきましたが、背中は汗で湿っていました。

シミュレータ体験の次は、お待ちかねコルベットZ06の実車のテストドライブです。

ヤナセのスタッフから「ATとMT、どちらを試乗しますか?」と訊かれたので、当然MTをお願いしました!それから少しすると、市販車とは思えない猛々しいサウンドでやってきたのは

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一見、ル・マンシリーズに出場しているコルベットC7.R。しかしナンバープレートは付いています。

このクルマの正体は、GM本社から公認された唯一のレーシングコルベットのレプリカなのです。カラーリングと古賀選手が展開しているコルベット専門のパーツブランド「REVORIX」のエアロキット、カーボンリアウイング、超軽量鍛造ホイールで迫力満点です。

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コルベットの大きなドアを開けて、コクピットに収まると、これが意外と使い勝手のいい車内でした。

走行性能を追求したスポーツカーは、車内の操作系もドライバー寄りに配置(オフセット)されているので、カーナビ、エアコンの操作もラクなものです。

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エンジンを掛けると6.2L V8エンジンのサウンドが車内に入ってきます。シフトの下にあるダイヤルで走行モードを切替可能です。

悪天候時の「W」ウェザーモード、市街地は「E」エコモードというコルベットにはあまり似合わないモード、山道などのワインディングの「T」ツアー、高速走行やサーキットの走行会がメインの「S」スポーツモード、そしてサーキット全開走行モード「T」トラックモードが選択できます。

スポーツモードに切り替えるとエンジンサウンドがよりマッシブになります。今回の試乗では、そのサウンドを体感するためスポーツモードでドライブしました。

1速に入れてクラッチを繋げた瞬間、見た目からは想像できない従順さで走り始めました。

最高出力659馬力、最大トルク89.8kgmのモンスターはとっても良い子なものでした。交差点を曲がる際の徐行からでもほんの少しアクセルを入れていけばスムーズに加速します。

ステアリングもハンドル操作の多い市街地でも疲れなさそうな軽快さを感じさせてくれました。運転しながら「普段使いでも十分いけるな」と思ったら、古賀選手が既に日常生活でC7 Z06を愛用をしているそうです。

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今回の「シボレー コルベットドライビングエクスペリエンスツアー」は7月まで、首都圏、中部、関西の各ディーラーで開催予定です。日程は以下の通り

・4月16日(土)・17日(日) キャデラック・シボレー 葛西
・4月23日(土)・24日(日) キャデラック・シボレー 東名横浜
・4月30日(土) 5月1日(日) キャデラック・シボレー 相模原
・5月3日(火・祝)・4日(水・祝)・5日(木・祝) シボレー 日進
・5月7日(土)・8日(日) キャデラック・シボレー 横浜港北
・5月14日(土)・15日(日) キャデラック・シボレー 楠
・5月21日(土)・22日(日) キャデラック・シボレー 高崎
・6月4日(土)・5日(日) キャデラック・シボレー 桜山
・6月11日(土)・12日(日) シボレー 名岐
・6月18日(土)・19日(日) シボレー 袖ヶ浦
・6月25日(土)・26日(日) キャデラック・シボレー 国立
・7月2日(土)・3日(日) キャデラック・シボレー 神戸東
・7月9日(土)・10日(日) キャデラック・シボレー 大阪中央
・7月16日(土)・17日(日)・18日(月・祝) キャデラック・シボレー 北大阪

なかなか試乗するチャンスがないクルマですので、ぜひ足を運んでみてください!

・Webサイト

シボレージャパンツアー案内ページ
シボレージャパン「コルベット Z06」商品ページ
キャデラック・シボレー東京公式サイト

レーシングシミュレーターTSK公式サイト

古賀琢麻選手公式サイト
REVORIX公式サイト

(栗原 淳)

他の追従を許さないベンツ・GLC の「2.0L直噴ターボ+9AT」の組み合わせ

現在のメルセデス・ベンツ Cクラスには、PHVの「C 350 e」や「Mercedes-AMG C63 S」も含めて7ATが用意されています。同じプラットフォームでもより新しいメルセデス・ベンツGLCには、2.0L直列4気筒直噴ターボに9ATの「9G-TRONIC」が組み合わされています。

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その利点は、1つのギヤが受け持つ速度域が狭くなるため、スムーズな変速が可能なほか、回転数の上昇を抑制することで燃費に効くなど、走りと燃費への効果が期待できるもの。

7ATでも非常にスムーズですが、9ATはさらに滑らかで、いま何速に入っているのか分からないほど。100km/h以下では9速に入ることはなさそうで、6速から下はローギヤードになっていますからレスポンスも良好なのも美点。

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211ps/5500rpm、350Nm/1200-4000rpmの2.0L直列4気筒直噴ターボの「BlueDirect」エンジンは、圧倒的な加速感までは味わえないものの、試乗会場だった相模湖周辺の上り勾配程度なら、どんな車速域でも瞬時に欲しい加速感が得られました。

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走行モードを「Eco」にしていると、多少加速フィールが抑制されますが、街中ならまったく不足はないはず。また、いざという時は「Sport」以上にしておけばワインディングや高速域でも伸びやかな加速感を享受できます。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

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■「Cクラス」のSUVメルセデス・ベンツGLCの魅力は? セダンやワゴンとの違いとは?
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メルセデス・ベンツ GLCの快適な乗り心地も大きな魅力!

メルセデス・ベンツ GLCの前身であるGLKは、左ハンドルのみという条件に加えて、やや好みが分かれそうな「四角い」フォルムなどにより、販売面では同ブランドSUVのエースにはなれかなったようです。

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しかし、乗り心地の良さはミドルクラスSUVでもトップクラスかも! と思えるほどの仕上がりでした。フルモデルチェンジによりメルセデス・ベンツGLCに車名を改め、CMでも「Cクラスから、SUV」と謳っていますが、どんな乗り味か興味深いところ。

試乗ステージは、キャンプ場内にある未舗装路を含め周辺の道路も荒れた路面も多かったですが、期待どおりの良好な乗り心地が確認できました。

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フロントサスペンションは、先代GLKの3リンクから4リンクになり、リンク機構とストラット式スプリングを独立させることが可能になり、動きはより滑らかかつ、Cクラスよりもストロークが大きいこともあってゆったりした乗り味になっています。

リヤはGLK同様、メルセデス・ベンツではマルチリンクで高い直進安定性に寄与するとしていますが、今回は残念ながら高速道路などで高い速度域で試すことはできませんでしたが、こちらはあまり心配する必要はないでしょう。

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またハンドリングは、Cクラスほどの軽快感はないものの、SUVとしては十分に軽やかで、タイトなコーナーでも安心してステアリングの操作が可能。コーナーではロールも比較的抑えられていて、初めてSUVを運転する人でも山道で不安を覚えるようなことはないはず。

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ダンパーには、オイル流量を変化させることで減衰力を調整する「アジリティ・コントロールサスペンション」が採用され、コンソールにあるコントローラーでセッティングの変更ができます。

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「Comfort」、「Eco」、「Sport」、「Sport+」から選べますが、基本的にどのモードにしても乗り心地が大きく損なわれることはありません。もちろん「Comfort」および「Eco」と、「Sport+」の差はありますが、足まわりの仕上がりは上々といえそうです。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)【関連記事】

■「Cクラス」のSUVメルセデス・ベンツGLCの魅力は? セダンやワゴンとの違いとは?
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スズキ・イグニスはニッチから王道になれるか?

スズキのコンパクトカーは、一見オーソドックスでも走りにこだわったスイフト、欧州仕込みのフットワークを披露するスプラッシュなど、個性的なモデルが多い印象を受けます。

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初代SX4も全長は4.1mちょっとで、日産ノートと同じくらい。全幅は1.7m台でややワイドだった点をのぞけばコンパクトカーといえる範囲に収まっていました。

ただ、SUV系のクロスオーバーモデルであったため、全高は1585mmと立体駐車場の高さ制限(ひとつの目安)に多い1550mmを上回っていました。

また、2014年に販売を終えたスプラッシュも全長3715×全幅1680×全高1590mmと、ハンガリーからの逆輸入モデルで、Aセグメントのコンパクトカーでありながら全高は1550mmを超えていました。

さて、スズキ・イグニスのサイズを見ると、全長3700×全幅1660×全高1595mmで、クルマが肥大化し続けている時代なのに、全長と全幅はわずかに小さくなっています。1550mm超えをした全高もスプラッシュと同じですが、駐車場事情から全高だけで購入を見送る人もいるでしょう。

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最低地上高を180mmと高くして全高も高くするクロスオーバースタイルは、初代SX4の175mmよりも5mm高く、たかが5mmでも雪国などでは効果のある数値なのかもしれません。

高い全高は、高めのヒップポイントによる良好な乗降性、高めのアイポイントによる前方視界の良さ、そしてアップライトに座らせる設計により、頭上だけでなく足元の広さ感にも貢献してくれます。

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こうしたパッケージングは、イグニスに限らず、Aセグメントで居住性を確保する王道といえる手段で、フィアットがFIAT500をベースにパンダを仕立てているのも好例といえるもので、イグニスの広さ感は、新プラットフォームによるエンジンルームの最小化などもあって、わずか全長3.7mとは思えない仕上がり。

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元々のお家芸であるクロスオーバースタイル、そして現在のSUV人気にもあやかろうとしているのかもしれませんが、時代がスズキに追いついたともいえます。

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スプラッシュの販売実績がスズキの満足できるものだったか分かりませんが、日産ジュークがアーバンセレクションで、ホンダが軽自動車のN-ONEで「1550mm」に対応する低全高グレードを追加したように、イグニスも低全高モデルも追加すれば、ニッチから主役になれるかもしれません。

そんな秘めた魅力が伺えるのもイグニスの実力だと感じました。

(文/写真・塚田勝弘)

「CクラスのSUV」メルセデス・ベンツGLCの魅力は? セダンやワゴンとの違いとは?

2016年を「SUV強化イヤー」と位置づけるメルセデス・ベンツ日本。なかでも目玉といえるのがプレミアムミドルサイズSUVという位置づけのメルセデス・ベンツGLCでしょう。

「GL」は同ブランドのSUV、「C」は車格を表していて、現行Cクラスのプラットフォームを使い、全長4660×全幅1890×全高1645mmというサイズになっています。

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なお、セダンのCクラスは全長4690×全幅1810×全高1435mm、Cクラスステーションワゴンは全長4705×全幅1810×全高1450mmですから、全長はセダンやワゴンよりも短めですが、全幅は80mmもワイド、全高も約200mm高くなっています。

前身のGLKは先代Cクラスベースで、左ハンドルのみでしたが、GLCは右ハンドル化されているのが朗報。

右側にある運転席に乗り込むと、まさに背の高いCクラスという感じで、ワイドな全幅も感じさせますが、アイポイントの高さと前後シートの頭上空間の十分な余裕などはセダンやワゴンにはない魅力に感じます。

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さらに、積載性の高さも美点。ラゲッジ容量はGLKから100L拡大の550L(VDA方式)で、後席背もたれをすべて倒すと1600mmにまで拡大します。

これは、445Lのセダン(最大時未公表)はもちろん、470L-1490Lのステーションワゴンと比べても広く、ワイドな全幅と余裕のある全高が活かされているといえそうです。

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セダンはもちろん、ワゴンよりも居住性や積載性、そして4WDなどによる悪路走破性などの点では、アドバンテージのあるGLC。こうしたニーズを求める方には当然ながら「買い」となるわけで、あとは全幅や全高を許容できるか、そして価格が気になるところ。

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ただし、GLCのローンチ時は2.0L直列4気筒ターボのみで、ディーゼルやプラグインハイブリッドは今後導入予定だそうです。

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GLCの価格は「GLC 250 4MATIC」が628万円、「GLC 250 4MATIC Sports」が678万円、「GLC 250 4MATIC Sports(本革仕様)」となっています。なお、Cクラスセダンの2.0ターボは534万〜657万円、ワゴンの2.0Lターボは570万〜738万円です。

(塚田勝弘)

EV走行時と全開走行時のギャップに驚かされるCクラスPHV「C 350 e」

Cクラスに加わったプラグインハイブリッド(PHV)の「C 350 e」。ベースとなる純ガソリン車の完成度の高さを活かし、フットワークや乗り心地の良さなどが大きくスポイルされることなく半電動化されています。

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エンジンだけでも211ps/350Nmというスペックで、力強い走りを披露する「C 250 Sports」向けの2.0L直列4気筒ターボに、最高出力82ps(60kW)、最大トルク340Nmを発生する電気モーターの組み合わせは、システムトータルで279ps/600Nmに達するだけあって、高速道路やワインディングなど飛ばせる場所ほど輝きを放ち「PHV化=エコカー化」ではないのがよく分かります。

一方で、思いのほかEV走行の速度領域は高く、充電状態がよければ約130km/hまでモーター走行が可能という謳い文句も伺い知ることができました。

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C 350 eには、4つの走行モードが用意されていて、「HYBRID」は走行環境やバッテリーの残量に合わせてエンジンと電気モーターを併用。先述したように、高出力電気モーターのブースト機能によりスムーズな加速感を享受できます。

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「E-MODE」は、文字どおりモーターのみのEV走行で、バッテリー状態により約30kmの走行と最高速度130km/hの走行を実現するもの。

「E-SAVE」は、早朝深夜の住宅街などで静かにEV走行したい際など、バッテリー残量をキープするモードです。走行しながらバッテリーを充電する「CHARGE」モードは、積極的にエンジンを始動。残量が減っても少しずつ増えてきますので、あと数kmだけモーター走行したい際などは重宝しそうです。

せっかくPHVを買ったのであれば夜間など使わない時に充電し、近場はモーター走行のみで、遠出する際はハイブリッド走行やチャージモードで走るなど、走り方を選べるのが魅力。同車も同じでしょう。

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なお、リチウムイオンバッテリーの充電時間はフル充電まで「CHARGE」モードで約40分、AC200V電源使用で約4時間。急速充電には対応していません。

20160223Mercedes-Benz C350e_01520160223Mercedes-Benz C350e_017セダンのトランク容量は335Lで、純ガソリン車の445Lよりは見た目も小さく、リチウムイオンバッテリーを床下に積むため荷室奥が一段高くなっています。それでも後席の分割可倒式機構が残されていますから、荷物が多い際も対応できます。

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荷室がある程度狭くなるのは仕方ないですし、ブレーキのフィールに電動化モデルの癖(急に制動力が高まり、「カックン」ブレーキになりやすい)があり、また「ここまで速くなくてもいいのでは?」と思うほど、ゆっくり走った際と踏み込んだ時との二面性には驚かされますが、退屈とは無縁のPHVといえそうです。

(文/塚田勝弘・写真/小林和久、塚田勝弘)

新型アウディA4が誇るドライバー支援機能の実力は?

新型アウディA4に搭載されている最先端の安全、ドライバーサポート機能は、数多くあります。

全車速域対応のアダプティブクルーズコントロール(ACC)には、0-65km/hの範囲で先行車両に追従し、アクセルとブレーキだけでなく、車線から逸脱しそうになるとステアリングの操作にも介入する「トラフィックジャムアシスト機能」も用意されています。

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こちらは主に高速道路などでの渋滞時などにドライバーをサポートする機能ですが、バイパスや国道など白線などの走行区分線がはっきり肉眼でも見えるような場所であれば、ステアリングのアシストを含めて作動するもの。

追従する精度はなかなか高い印象ですが、もちろん手放し運転で追従するものではなく、あくまでドライバーエイドとして成り立っている機能。

しかし、フォルクワーゲン・パサートでも同じような傾向がありましたが、白線には比較的高い精度で反応する一方、黄線には反応しないケースも散見されました。

Traffic jam assistant

なお、ACCの再発進時は、0km/hになっても3秒以内に先行車両が動き出せば自動的に再発進する機能も備わっていて、部分自動運転を感じさせる機能ともいえますが、道路状況などによって作動状況にバラツキがあるなど、従来のACC、車線維持機能の延長線上にあるのは間違いありません。

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ACCやレーンキープ系の機能は、ステアリングコラム左側にあるレバーを使って操作しますが、ACCとレーンキープそれぞれ1本ずつレバーが割り振られているほか、ACCはレバー1本で速度設定(上下)、車間距離設定、セットのオン/オフ、設定速度の復帰/加速などをするため、慣れが必要で初めてだと戸惑います。

しかも、ステアリングのリムとスポークの間からのぞくような位置にあり、視認しにくいのも気になるところ。こうしたドライバー支援機能などが増えるほど、その操作性と見せ方の「両立」は難しくなるのは確かですが、アウディに限らず見た目もよくて使いやすい! というのは、まだ出てきてないような気がします。

Audi A4

さて、そのほかにも車両や歩行者との衝突を避ける「アウディプレゼンスシティ」は、85km/h以下でフルブレーキまで作動するほか、これを補助する「プレセンスフロント」により約250km/hまで場合によってはフルブレーキまでかける機能が加わっています。

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さらに、レーダーセンサーの情報を元に、交差点での右折時に対向車に衝突する危険を察知すると警告や自動ブレーキを作動させる(約2km/h〜10km/hの範囲)など、世界最先端の装備も用意(同機能は、欧州での発売が早かったボルボが世界初を謳っています)。

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Rear cross traffic assist

そのほかにも、後方からの衝突に備えて前席シートベルトを締め上げ、ウインドウなどを閉じるシステムの「アウディプレゼンスリヤ」や、「パークアシスト」が有効になっている際に、バックで駐車スペースから出る際に接近車両があると、警告サイン、警告音、ブレーキペダルの振動という順で警告する「リヤクロストラフィックアシスト」を設定。さらに、駐車時に自動ステアリングで駐車をサポートする「パークアシスト」などもオプション設定されています。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久、塚田勝弘)

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新型アウディA4のフットワークと乗り心地をCクラス、3シリーズと比べてみると?

前回の記事でもご紹介しましたが、新型アウディA4で気になるのはやや硬めの乗り心地。

もう少し走行距離が伸びれば、路面からの当たりも少し「角」も取れるかもしれませんが、劇的にマイルドな乗り味になるわけはないでしょう。

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高いボディの剛性感は速度域が高まればフラット感も抱かせますから、人によっては全然気にならないかもしれません。

オールアルミボディとはならずとも、シャーシにアルミを多用していることで、軽くはないけれど重厚感もないという乗り味は、もう少し柔らかめなら言うことナシ! といったところでしょうか。

フロントサスペンションはお馴染みの5リンクですが、新型A4向けに改良されていて、操縦安定性確保のため横からの入力に対してはマウントを硬めにすることで対応し、縦方向のコンプライアンスはソフトにチューニングされているそう。

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リヤは従来のトラペゾイダルから5リンクに一新。5kgの重量減によりバネ下重量を軽減し、ダンパーやブッシュ類のチューニングはもちろん、フロントだけでなくリヤにもモノチューブ式ダンパーを採用することで、軽量化が図られています。

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「クワトロ」モデルの試乗車は、スポーツサスペンションとなる「クワトロ スポーツ」でタイヤサイズは245/40R18。FFの試乗車は225/50R17のこちらも「スポーツ」で、乗り味に大差は感じられませんでした。

新しいプラットフォームによる恩恵で5リンク化された恩恵は、乗り心地の面よりもフットワークで強く察知できるのが印象的。

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また、直進安定性の高さは期待以上で、ワインディングでもFFモデルでもとくに曲がりにくい(アンダーステアになりやすい)と印象づけられることはなく、クワトロはターンインのしやすさもありますが重量がFFよりも120kg重いこともあって、公道の法定速度内ではほとんど無視できそうな差といってよさそう。

新型アウディA4と前後して、Cクラス(プラグインハイブリッド)とBMW3シリーズに乗る機会がありましたが、A4は看板モデルのクワトロだけでなくFFもレベルアップしているのは間違いありません。

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Cクラスはプラグインハイブリッド化されたことで、純ガソリン車よりも重さを感じさせるものの、乗り心地と予想以上に軽快なフットワークとのバランスが秀逸。

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BMW3シリーズは、ひと回り以上小さく感じる(実際にサイズも小さいのですが)旋回性の高さなど一枚上手。低速でコーナー1つ曲がる際でもBMWらしいキビキビとした動きが感じられ、パワステのフィーリングなどは好みが分かれそうですが、それでもフットワーク重視を貫くセッティングといえそう。

Cクラスに最近使われているキーワードである「俊敏性(アジリティ)」も十分に伝わってきますが、軽快感ではやはり3シリーズでしょう。

ドイツプレミアム御三家は、やはり「三車三様」なのだと再確認させられました。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久、塚田勝弘)

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新型アウディA4は前輪駆動とクワトロのどちらを選ぶ?

いきなり結論を言うようですが、アウディといえばクワトロ以外興味はなし、という方は新型アウディA4でもフルタイム4WDを選べばいいと思います。

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でも、新型A4に興味があるけれど、エンジン(駆動方式)で悩んでいる場合は、まずはFFで十分満足できるはず。

2.0L TFISエンジンは、FF向けの190ps/320Nm版、クワトロ向けの252ps/370Nm版があり、エンジンを選ぶと必然的に駆動方式も決まっています。

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FF向け190ps版は、252ps版のクワトロと乗り比べなければトルク、パワーともに不足は感じさせず、4WDよりも車両重量は当然軽く、重量差は120kgもあります。

およそ大人2分の差は無視できないもので、ダウンサイジングならぬ「ライトサイジング」というコンセプトを掲げるもの。

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こうした省エネ系エンジンにありがちな線の細さや、「回らない」など面白みのない加速フィールもほとんど感知させず、いわれなければ吸気バルブ早閉じのミラーサイクルエンジンだとは分からないかもしれません。

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エンジンレスポンスやパワーだけでなく、ダイレクト感のある変速フィールも今モデルからFFにもDCTの7速トロニックが組み合わされる恩恵も感じさせてくれます。

一方のクワトロモデルに乗り替えると、やはり「速い!」という感触は街中で巡航速度に乗るまでの早さでも実感できますし、高速道路でも床まで踏み込む必要性は感じさせません。

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最高出力の発生回転数は、190ps版が4200-6000rpm、252ps版が5000-6000rpmとなっていますが、252ps版の高速域の伸び、パンチ力は明らかに上で、しかも7000rpm近くまで回りますから高速道路での追い越し時なども余裕綽々。

高速域の直進安定性は、ドライ時であればFFもクワトロも劇的な差は感じさせず、FFでも十分過ぎるほど安定感があり、しかもパワステのフィールもより手応えがあり、安心感も絶大といえます。

雨天時や雪上では当然ながらクワトロの利点が際立つでしょうが、普段は街中使いが中心で、ロングドライブに時々出かけたとしてもFFで何ら不足はないはず。

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これだけFFの出来がいいと、クワトロが必要という明確な理由がない限り、カタログ燃費も約3km/L良好(FF:18.4km/L クワトロ:15.5km/L)なFFを選んでも新型A4の良さは十分に堪能できるのではないでしょうか。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

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大きくなった新型アウディA4の広さ、使い勝手は?

新型にスイッチしたアウディA4。

先代A4は、トランスミッションケースの影響もあってか運転席足元の左側の張り出しが大きめで、少し斜めに座る感覚で、長時間だと疲れを誘いそうなドラポジになるのが気になりました。

新型ではかなり改善した印象で、完全ではないものの、ほぼ真っ直ぐ左足を伸ばすことができます。

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ボディサイズは全長4735×全幅1840×全高1410〜1430mmで、先代A4は全長4720×全幅1825×全高1440mmですから、全長も全幅も15mm拡大し、全高は10〜30mm低くなっています。

全高を下げたのはCd値改善のために欠かせない設計だったのではないでしょうか。

なお、メルセデス・ベンツCクラスの4690×1810×1445mm、BMW3シリーズの4645×1800×1440mmと比べると、全長はCクラスよりも45mm、3シリーズよりも90mm長く、全幅も30〜40mmワイドになっています。

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一方の全高はライバルよりも低めですから、伸びやかでワイド、そして低く構えたロングノーズのスタイリングは、そのサイズ感も相まって1.5クラス上という印象も受けます。

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エンジンを縦置きし、その直後にトランスミッションを配置する縦置きFF(もしくは4WDのクワトロ)というレイアウトを取る以上、こうしたスタイリング、そして居住、積載スペースを稼ぐには大きくなるのは宿命でしょうが、これだけ大きくなると、駐車場事情から選択肢から外れる人もいるはず。もちろん、A3セダンという弟分があるからこそできるサイズアップだと思いますが。

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アウディによると、ショルダー部の幅は11mm、前席のヘッドクリアランスは24mm拡大し、室内長は17mm延長、後席の膝前空間は実質23mm広くなっているそうです。

実際に座ってみると、低めの全高からも想像できるように、前席は基本的に低めに座らせるポジション。

長いフロントノーズの先は、前席座面を上げても完全に見切ることはできません。シートは座面も背もたれもやや小さめですが、そのぶんフィット感はまずまずという印象。

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後席は、Cクラスや3シリーズよりもとくにフットスペースに余裕が感じられ、大型化された恩恵を感じさせる点。頭上には身長171cmの私で、こぶし1つ弱分くらいの空間が残ります。

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幅が約1m、奥行きも1m超というスクエアな形状のトランクは、通常時で480Lを確保。「4:2:4」の分割可倒式後席をすべて倒せば962Lまで拡大可能。プレミアムDセグメントのセダンとしては、トップクラスの容量が確保されています。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

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アウディに期待する先進性は新型A4にも備わっている?

アウディといえば「技術による先進」という社是というか、その心意気を思い浮かべるファンの方も多いでしょう。最近では、内・外装のハイクオリティからくるクールな雰囲気に惹かれる人も少なくないはず。

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先進性、革新性といった言葉で新型アウディA4を眺めていくと、外観のデザインよりも内装から大きく感じられることが多い印象を受けます。

その前にドアを開けると、「お!」と思うのが、アウターハンドルが従来の前ヒンジから上に引き上げるタイプの上ヒンジ式になっていて、軽い操作感で開けること。

A4

女性や子どもでも楽でしょうし、あるいはネイルなど指先を傷付けたくないなど、そんな方でもスマートに操作できるはずです。

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インテリアでは、ダッシュボード中央、中心に配置された8.3インチカラーディスプレイ、そしてメーターパネルの「バーチャルコクピット」が目を惹きます。

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中央のディスプレイは、従来型のメーターと横同軸上で、メーターフードとの一体感のあるものから、独立式になっていますから視認性が向上。

その反面、ナビなどを見る必要がない場合でも常に鎮座していますから、視線を妨げるとまでは言えなくても「格納できればな」と思うこともありそうです。

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最も先進性を感じさせる「バーチャルコクピット」は、慣れてくると、ドライバーにとってナビの情報はこの12.3インチディスプレイで十分! と思わせてくれる見やすさ。

一方で、8.3インチカラーディスプレイとバーチャルコクピットの2つのディスプレイは、たとえば両方ともナビを表示していると、少し煩わしく感じるほどで、インパネの「見せ方」が少しスマートではないような気もしますし、まだ「見せ方」には改善の余地がありそうです。

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それでも、スクエアで短めのシフトレバーやその周辺のコンソールのスイッチレイアウトなどは、たとえばCクラスのCOMMANDシステムや3シリーズのiDriveよりもセンスの高さ、操作のしやすさを実感できるもので、アウディがMMIと呼ぶ操作も先代よりもシンプルかつ、浅い階層で目当ての機能にたどり着く印象を受けました。

質感に関してもやや素っ気ない3シリーズなどよりは色気も適度にあり、このインパネのハイクオリティが購入の大きな決め手になるというケースもありそうです。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

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■美点も課題も感じられた新型アウディA4の走り
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美点も課題も感じられた新型アウディA4の走りとは?

クラストップレベルのCd値0.23やライバルよりもやや大きめのボディサイズ、そしてキープコンセプトながらもキリッとしたエクステリアに生まれ変わったアウディの中核モデルA4。

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アウディといえば、アルミを使った軽量ボディを思い浮かべる人が多いと思いますが、新型は最大120kgの減量化を果たしていて、ダッシュボード下のモジュールクロスメンバーをアルミ押し出し材、シートアルミで構成、さらにフロントのクロスメンバーにもアルミ押し出し材が採用されています。

ほかにも、ストラット(フロント)の軸受け部分に鋳造アルミの強化部材を使用。また、ルーフフレームの前面、Bピラー、ドアシル、フロアの一部に熱間成形鋼鈑パーツ(ホットスタンプによる高張力鋼板)を使用するなど、複合材料を使っていますが、A8のようにさすがにオールアルミボディ化せずに、A6と同様のアルミコンポジットボディとなっています。

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これから少なくても4、5年以上はアウディを支えていく中核モデルですから、新型A4ではオールアルミボディへの期待も個人的にあったのですが……。

そんなことを思いながら乗り込むと、最初に気がつくのはボディ剛性感の高さ。

兄貴分のA6よりもサイズが小さいこともあってか、ボディがギュッと引き締まっていて、しかもスチール主体のコンポジットボディでも意外なほどの軽快感もあります。

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また、運転席のフットスペース(主に左足側)が広くなった印象で、適正なドラポジがとれるようになり、左足への圧迫感がなくなりました。ほかにも、やや手応えが希薄で軽すぎた感のあるパワステも新型では適度な重さ、そして路面からの情報もより感じやすくなったのも見逃せません。

逆に気になるのは、予想以上に硬めの乗り心地。コーナリング時などでは先代よりもストローク感は得られるものの、とくに街乗りでは小さなショックが常に感じられます。

救いなのは、先述したように高い剛性感あるボディが減衰している感じがするのですが、良くも悪くもアウディA4ってこんなに硬質だったかな? という乗り味になっています。なお、試乗した17インチ、18インチモデルもその印象はほぼ同じようなものでした。

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エンジンはFFに搭載される190ps/320Nm版と、クワトロ向けの252ps/370Nm版の2.0L直列4気筒ターボがあります。

190ps版でもこれ1台で乗る限りは街中から高速道路からパンチ不足を痛感させられることはなく、DCTとしてはスムーズかつダイレクト感のある7Sトロニックという組み合わせもあって、適度にメリハリがあり、しかもショックの少ない変速フィールも大きな美点。

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しかし、クワトロに乗り替えるとトルク、パワーともに額面どおりの差は歴然とあり、「アウディ=クワトロだろう!」という方は動力性能の面でも不満を抱くシーンはほとんどないのではないでしょうか。

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ボディの堅牢感がありながら軽さもあり、あとはもう少ししなやかな乗り心地があればCクラスや3シリーズなどのライバルとの差別化も明確に図れるはずで、乗り心地に関しては今後の熟成も期待したいところです。

(文/塚田勝弘・写真/小林和久)

この巨大サイズ。あふれるワイルド感。オトコがこのクルマに憧れるのはやっぱり本能?

「使いやすいクルマ」とか「快適なクルマ」とか、ときには「燃費のいいクルマ」とか、末席とはいえ自動車ライターとして仕事をしているので基本的にはユーザーの賢いクルマ選びをサポートすべく原稿を書いているワタクシ。

ですが、時には小難しい理論とか理由付けなんかすっかり忘れて憧れてしまうクルマだってあるのです。

先日、そんなクルマに乗るチャンスがありました。その名はタイタン!……といっても同名のマツダのトラックではありません

見てくださいこのスタイリング。

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ワイルドでしょー。そして全長約6mという巨大サイズ。

この押し出しの強さ。いかにも頑丈そうな雰囲気。磨き上げられた道具感。

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いわゆるフルサイズピックアップで、アメリカではこれを乗用車として個人で愛用する人がけっこう多いんですよね。

もし日本で使ったら、車体が大きすぎてファミレスの駐車場ではとんでもないことになりそうです。

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ダブルキャブ車は後席が広いのも特徴。足元の余裕も凄い。

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エンジンは日産製ではなく、カミンズ社製のディーゼルを搭載。V8の5Lで、最高出力は310馬力。トルクはなんと753Nm。

これだけの強心臓なのだから、車重約3トンとはいっても加速は豪快。巨体が勢いよく動く様子は、まるで疾走するバッファロー(アメリカっぽくまとめてみましたよ)。

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今回撮影した車両は上級仕様で、日本円にすると約650万円。

その値段を出せばそれなりのプレミアムセダンも買えるけれど、実車を前にするとあえてワイルドなトラックを選ぶ気持ちもよくわかります。理論ではどうにも説明できない、もはや本能的としかいえない魅力ってやつですね。

これでホームセンターとか行ったらカッコいいぜ。あぁ欲しい。

(工藤貴宏)

スタッドレスタイヤの性能向上には東京ドーム約19個分の広さが必要!?

北海道のイメージといえば「旭川動物園」「ラベンダー」「流氷」などなど、とくに観光地としてのイメージが強いですよね。

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しかし、自動車業界にいる人間にとって北海道といえば「テストコース王国」であること。

事実、自動車メーカー、サプライヤー、タイヤメーカーなどなど、道内には20箇所以上のテストコースが存在します。

1979年にいすゞのテストコースとしてオープンした「ワーカム北海道」(勇払郡むかわ町/※現在は独立した自動車試験場)を皮切りに、自動車メーカー各社やタイヤメーカーが、とくに寒冷地特有の試験を行うためにコースを設立していますが、今年1月、旭川市に新たなテストコースが開設しました。

そのコースとは、横浜ゴムの冬用タイヤテストコース「北海道タイヤテストセンター(Tire Test Center of Hokkaido=TTCH)」。

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旧旭川競馬場跡地に建設された横浜ゴムの最新テストコースとはどのような施設なのでしょうか。

一般には公開されていない新テストコースに、報道陣向け試乗会で取材してきました。

敷地面積は東京ドームの19倍強に当る906,462㎡という新テストコースは、約1kmの圧雪路、そして氷盤路、登坂路、雪上/氷上旋回路、ハンドリング路などが備わっています。

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横浜ゴムは北海道内に「T*MARY(ティーマリー)」(上川郡鷹栖町)と呼ばれる冬用タイヤテストコースを持っていましたが、広さは約4倍になります。

「T*MARYでは直線の距離が短くて制動評価に手詰まり感がありました」

横浜ゴムの担当者は試乗会でこう語っていましたが、新テストコースの完成でスタッドレスタイヤ性能の向上に繋がることを期待しているようです。

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試乗会では新テストコースの各路面を走行したとき改めてわかったのは、圧雪路、氷盤路などなど、ひとえに「雪道」と呼ばれるあらゆる路面をスムーズに走ることができるにはタイヤの性能が重要だということ。

走る、止まる、そして滑らない──これらを高いバランスで実現するためには、新たなテストコースが必要なのだと理解できました。

今年は暖冬のためタイヤ各社ともに売上的には苦労したようですが、スタッドレスタイヤの性能競争は今後ますます激しくなっていくことは間違いありません。

そんななか、新たにテストコースを開設した横浜ゴムのスタッドレスタイヤがどのように進化していくか注目したいですね。

【テヅカ・ツヨシ】

いまさら聞けない、日産の4WDシステムの違いとは?

「4WD」を聞いたことがないクリッカー読者はいないと思いますが、いまやそのシステムは多岐にわたります。同じメーカーでさえ、複数のシステムを用意していることは珍しくありません。

今回は、駆動方式や車種により異なる複数のシステムを用意している日産の4WDシステムの違いを見ていきましょう。

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■ALL MODE 4×4

エクストレイルに搭載されている4WDシステム「ALL MODE 4×4」。大きな特徴はアクセルを踏むとセンサーが路面状況を感知し4WDコンピューターが走行状態を判断することでしょう。

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走行状況に応じて前後トルク配分を燃料消費が少ない(フロント)100:(リア)0から、悪路などで走破性を高める約50:50に切り替えることで、滑りやすい路面でも安定した走りを可能とします。

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また「ALL MODE 4×4」搭載車に標準装備される「ヨーモーメントコントロール」は、自動的にきめ細かい前後トルク配分を行う機構。さらに「VDC(ビークルダイナミクスコントロール)」などとの組み合わせで、あらゆる路面で安心して走行できる4WDシステムと言えるでしょう。

■ALL MODE 4×4-i(トルクベクトル付)

ジュークに搭載されている4WDシステム「ALL MODE 4×4-i(トルクベクトル付)」をひと言でいうと「曲がる4WD」。

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新開発のリヤファイナルドライブユニットは、左右に電子制御カップリングを搭載していて、旋回時に後輪外輪側により大きな駆動力を配分するのが特徴です。

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このユニットにより左右の駆動力に差が出て車両ヨーモーメント(車を旋回させようとする力)をダイレクトにコントロールします。言ってみれば機敏なハンドリングでコーナリング時にクルマを思い通りに操ることができるシステムと言えるでしょう。

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また舗装時にスポーティなハンドリングが楽しめるだけでなく、滑りやすい路面でのより安定した走行が可能な4WDモードを選択することも可能です。

■ATTESA E-TS

GT-Rが搭載している4WDシステムが「ATTESA E-TS」。

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この4WDシステムはリヤタイヤに必要なグリップ力をもたらしつつ、ブレーキング時などで車両姿勢を保つために必要なフロントタイヤのグリップ力と荷重を割り出し、4輪にいかに荷重をかけるかという考え方のもと開発されたシステムです。

「あらゆる路面で旋回ライントレース性と加速性を高い次元で両立させた」と、日産は説明していますが、ハイパフォーマンスカーのGT-Rにふさわしい4WDシステムであることは間違いありません。

■パートタイム4WD

NV350キャラバンなどに搭載されている4WDシステムが「パートタイム4WD」。

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「パートタイム4WD」とは、基本は二輪駆動で走行しますが、路面状況などに応じてスイッチひとつで2WDから4WDの切り替えが可能なシステムです。

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NV350キャラバンのような商用車にとって、市街地などでは二輪駆動(FR)、悪路や雪道では4WDと切り替えることができるこのシステムは燃費などを考えたときメリットがある4WDシステムといえますね。

(テヅカ・ツヨシ)

3列シートを標準装備する新型ボルボXC90の使い勝手はどうか?

新型ボルボXC90の居住性・積載性は、ボディサイズ拡大の恩恵を感じさせる仕上がりになっています。

サードシートまで大人(身長170cmまでを想定)が快適に座れる設計となっていて、身長171cmの私でも3列ともに余裕を感じさせるフットスペース、ヘッドクリアランスが確保されていて広々しています。

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そのボディサイズは全長4950×全幅1930×全高1775mmで、ホイールベースは2985mm。

先代は全長4810×全幅1935×全高1780mm、ホイールベースは2855mmですから、前後方向(主にフットスペース)を中心とした居住性の向上が図られているのはサイズからも、座り心地からも実感できます。

フロントシートは電動化され、ランバーサポートは4ウェイ、電動クッションエクステンションが用意されるほか、「Inscription」系にはベンチレーション、マッサージ、電動バックレスト・サイドサポートが装備されています。

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セカンドシートは、12cmのスライド、7段階のリクライニングが可能で、4ゾーンエアコンやシートヒーターのほか、2列目中央席には先代同様「インテグレーテッド・チャイルドクッション」が用意されています。

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こちらは、座面を持ち上げることでシートベルトを適切な位置にするだけでなく、前方にスライドすることでフロントシートに近づけることが可能。

2列目の座り心地は、欲をいえばもう少し座面と背もたれに厚みがあり、シートのホールド性もあるとベストですが、先述したように足元と頭上空間だけでなく、シートサイズやヒール段差(フロアからヒップポイントまでの高さ)も不足を感じさせません。

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積載性は、パワーテールゲート(バンパー下の足の動きで開く、ハンズフリー機構付)に加えて、エアサスペンション装着車には車高調整機能もありますから、背の高い大型SUVでも比較的低めのフロア高となるのも美点。

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荷室容量は、ガソリン車が通常時314L、サードシート格納時692L、3列目と2列目格納の最大時が1868Lと広大なだけでなく、フラットで使いやすいのも魅力。なお、プラグインハイブリッドモデルは通常時262L、3列目格納時640L、最大時1816Lが確保されています。

(文/塚田勝弘 写真/佐藤靖彦)

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商用車購入のポイントは使い勝手だけでない。NV350キャラバンの隠れた実力を発見!

今年2月にエマージェンシーブレーキ(自動ブレーキ)の採用など、一部改良を行ったNV350キャラバン。

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このクラスとしては初となる自動ブレーキ、VDC(ビークルダイナミクスコントロール)、ヒルスタートアシストと安全装備をセットにした「エマージェンシーブレーキパッケージ」を設定したことで、ライバルとなるハイエースに安全装備では大きく差をつけました。

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荷物の積載能力や使い勝手ばかりに目を向けられる商用車ですが、今後は安全面を重視したユーザーが増えていくかもしれません。

そんなNV350キャラバンですが、あまり表に出ない走行性能についても実は高い実力を備えていることはあまり知られていません。

というか、試乗するまで筆者も知りませんでした…。

今回試乗したのは、NV350キャラバンのプレミアムGX・4WD。ボディバリエーションが複数ある同車ですが、ロングボディの標準ルーフボディです。

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試乗車には2.5L直4ディーゼルのYD25DDTi型エンジンが搭載されていました。

最高出力は129psとスペック的には高くありませんが、低速からトルクが大きい(最大トルクが36.3kgf・m)ターボディーゼルは、アクセルを踏み込むとグイっと加速していきます。

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ワインディングロードでは機敏なハンドリングを実現…とはいきませんが、逆に荷物を積んでいない状況であっても安定した走行を見せてくれます。

また乗り心地もなかなか。これなら長距離ドライブで運転手や同乗者がキツイ思いをすることはないでしょう。

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試乗していたなかでとくに感心したのが不整路の走破性。

試乗時は一部コースでは圧雪路はあったものの、暖冬の影響で融雪路を中心としたコースでしたが、路面の状況を気にせずスムーズな走行が可能だったのです。

試乗したNV350キャラバンはパートタイム式4WDだったことも大きな要因かもしれませんが、もともとの基本性能が高いことは試乗するだけでよくわかりました。

商用車を購入する条件で、安定した走行ができる性能を重視するユーザーは少ないでしょう。1年間に3万km以上走るといわれる商用車にとって走行性能が高いNV350キャラバンは大きなメリットになるのではないでしょうか。

【テヅカ・ツヨシ】

洗練度を増したボルボXC90のインテリアは必見!

新型ボルボXC90の見どころは、走りやスタイリッシュなエクステリアだけではありません。

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9インチタッチディスプレイ、メーターは12.3インチのフル液晶ディスプレイになり、さらにボルボ初のヘッドアップディスプレイの装備や、ハードスイッチを8つだけに減らすなど、最新世代を謳うのにふさわしいインテリアに仕立てられています。

最も目をひくのは、三菱電機製という縦型9インチタッチディスプレイ。

まさにタブレット感覚でナビやエアコン、オーディオ、車両設定などを指先で操作できる優れもの。

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「メイン画面」を中心に左にフリックすると「メディア」、右にフリックすると「車両設定」という3つの画面を容易に呼び出すことができます。

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安全や快適装備、ドライバーサポートなど多機能化するクルマでは、ハードキーが増えることでインパネまわりの造形美を損なうことが多々あり、操作性を担保しながら機能美として具現化するのも容易ではありません。

スマートでクール、しかも適度な温かみを感じさせる「スカンジナビアン・デザイン」で表現される従来のボルボは、インパネ中央から数多くのスイッチが廃されていましたが、先述したように9インチディスプレイを中心にハードキーを8つまで減らすことでスッキリとしたセンスある空間に仕立てられているのはさすが。

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肝心の操作性は、9インチタッチディスプレイの表示で「どこになるがあるか」、分かってしまえば比較的容易で、ナビやオーディオ、エアコン、車両設定などの代表的な機能は、深い階層まで探しにいく必要もほとんどありません。

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スマホ連携では、「Apple CarPlay」に標準で対応し、電話やマップ、メッセージ(SMS)、ミュージック、Siri(音声認識)などが使えます。

さらに、赤外線方式を採用するこのタッチスクリーンは、手袋をしていても操作が可能とのことで、さすがスウェーデンを本拠地とするだけのことはあります。

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そのほか、エンジンスイッチやドライブモードのロータリースイッチには、ダイヤモンド型の刻みが設けられているなど、細部にまでこだわりを感じさせます。

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オーディオもこだわりのひとつで、スピーカーには、イギリスの高級スピーカーブランドである「BOWERS&WILKINS(バウアース&ウィルキンス)プレミアムサウンド・オーディオシステム」を45万円(税抜き)でオプション設定。

こちらは、世界で初めてサブウーファーをリヤホイールアーチに配置し、より多くの空気を振動させることが可能だそうで、超低音バストーン(20Hzまで)実現。

部分的にカーボンファイバーを使った250mmコーンを採用するなど、19スピーカー、12チャンネル、1400Wの迫力あるサウンドも享受できます。

(文/塚田勝弘 写真/佐藤靖彦)

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新型ボルボXC90は2.0Lの直列4気筒ターボでも「走る」のか?

新型ボルボXC90のボディサイズは、全長4950×全幅1930×全高1775mm。

日本ではフルサイズSUVといえる堂々たる体躯ですが、先代XC90にあった2.5Lの直列5気筒ターボや3.0Lの直列6気筒ターボ、3.2Lの直列6気筒ターボ、あるいはヤマハ製の4.4L V8エンジンなどからすると、時代の流れとはいえ大胆なダウンサイジングぶりに「走るの?」という疑問が浮かぶのも不思議ではないでしょう。

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「排気量信仰」から抜け出ていないのでは? と言われそうですが、新型XC90のサイズを目にするとやはり最も気になるところ。

エンジンラインナップで「T5」と呼ばれる「B4204T23」型は、2.0Lの直列4気筒DOHC16バルブターボ。

254ps/5500rpm、350Nm/1500-4800rpmというスペックで、8ATとの組み合わせ。もちろん、アイドリングストップも備わりJC08モード燃費は12.8km/L。駆動方式は4WDのみとなっています。

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本来は最もベーシックなこちらに乗りたかったのですが、試乗車は「B4024T27」というエンジン型式となる2.0L直列4気筒16バルブターボ+スーパーチャージャーのダブル過給器により、320ps/5700rpm、400Nm/2200-5400rpmというアウトプットを得ている「T6」。

こちらも8ATとの組み合わせで、アイドリングストップ付、カタログ燃費は11.7km/Lとなっています。

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最大トルクが発揮されるのは「T5」の1500rpmよりも高い2200rpmからですが、出だしから力強く、8ATのスムーズな変速もあってストップ&ゴーもスマートにこなしてくれます。

高速道路に合流する際などの加速フィールもなかなか力強く、巡航速度に乗ってから追い越しをかける際もまったく力不足を抱かせないのには驚かされました。

「いや、最近のダウンサイジングターボはこれくらいやるよ」なんて思う一方で、車両重量は「XC90 T6 AWD Inscription」で2080kgと2t超えしているわけですから、やはりよく走るといえます。

ボディ自体の重さやサイズ感はありますが、大型SUVにありがちな鼻先の重さも感じさせず、見た目よりも意外なほどの軽快感さえ漂わせます。

先代XC90よりも全長が140mm延びていますが、車両重量は最大125kg減らした効果もあるのでしょうが、「Drive-E」と呼ぶ100%自社開発のエンジン、そしてDレンジのままだと何速で走っているのか分からないほど非常にスムーズなアイシンAW製の8ATという組み合わせのパワートレーンはXC90の魅力といえそう。

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室内の静粛性の高さも印象的ですが、試乗車のエアサスペンション装着車は、とくに市街地を流す程度の速度域だと意外にも硬めに感じさせるシーンもありました。

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とくに、荒れた路面の凹凸を乗り越える際は、ドライブモードを「Comfort」にしてやや大きめの振動と音が感じられます。それでも高速道路までを含めた幅広い車速域では、先代XC90と比べても音・振動面の対策は念入りにされている印象です。

(文/塚田勝弘 写真/佐藤靖彦)

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ルノー・ルーテシアがエンジン特性とトランスミッションを改良して加速力をアップ!

ルノー ルーテシアには、0.9LのMTを搭載する「ゼン(0.9L)」、最上級の「GT」がありますが(R.S.モデルをのぞいて)、今回マイナーチェンジを受けたのは「インテンス」と1.2LとDCTの組み合わせとなる「ゼン」の2グレード。

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エンジンはともに1.2Lの直列4気筒直噴ターボで、118ps/5000rpm、205Nm/2000rpmというスペック。改良前の最高出力120ps/4900rpmから若干下がっていますが、最大トルクは190Nmから205Nmへと15Nm向上しているのがトピックスです。

さらに、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)の変速比も変更されています。

1速は3.916(旧)→4.307(新)、2速は2.428→2.476、3速は1.435→1.447、4速は1.021→1.019、5速は0.866→0.844、6速は0.702→0.653、後退時は3.507→3.858。変速比は5.58から6.60にワイドレンジ化されています。

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これらにより30-60km/h加速、50-80km/h加速、80-120km/h加速は、平均で0.6秒以上向上し、0-100km/h加速は−1.2秒となる10.1秒を達成。

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今回の変更は、ユーロ5からユーロ6に対応したことによるものですが、日本のユーザーにとっても歓迎すべきマイナーチェンジといえそう。

また、新たにアイドリングストップが追加されたほか、「PHP」と呼ばれる「輸入自動車特別取扱制度」から「型式指定制度」に変わったことにより、JC08モード燃費も初めてカタログに掲載されています(17.4km/L)。

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新旧ルーテシアを同時に乗り比べたわけではありませんが、ストップ&ゴーの多い街中はもちろん、首都高速への合流時などでも十分な加速フィールが得られるのが印象的。もちろん、わずか2psダウンとなる最高出力により、高速域のパンチ力の差も感じられません。

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ただし、「ECO」モードのオン/オフ時の差は結構あり、「ECO」スイッチをオフにすると上記の力強い加速感がより分かりやすく得られるほか、各ギヤもやや引っ張り気味になり(ECOモード時は素早く変速して高いギヤを使う)、よりスポーティな走りに対応してくれます。

逆に、渋滞時やすぐに信号が目の前に表れる都市部などでは、「ECO」モードをオンにしてエコランに徹するのが正解のようです。

(文/写真 塚田勝弘)

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■パリの「モード」を取り入れた小粋な「ルノー ルーテシア アイコニック」が30台限定で登場
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スズキ・イグニスの走りはどうか?

全長3700×全幅1660×全高1595mm、ホイールベースは2435mmというコンパクトなボディサイズの割に広さ感のあるスズキ・イグニス。

トヨタ・パッソの全長3650×全幅1665×全高1535mm、ホイールベース2440mmと比べるとやや長めの全長と高めの全高になっていますが、ホイールベースは同じくらいになっています。

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最も気になったのはやや硬めの乗り味。舗装状態が良ければショートホイールベース、軽量化のネガはあまり感じさせませんが、荒れた路面だとボディが上下、左右に揺すられるのは驚かされました。

というのは、新型ソリオと同じ新プラットフォームを使っているのになぜ? という理由から。

ですが、こうした条件(荒れた路面)でもソリオはここまでボディの収まりが悪かった記憶もなかったからです。また、イグニスの試乗車の差(個体差)もあるかもしれませんが、もしディーラーなどで試乗する機会があればチェックしたいところ。

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動力性能は、速度が乗ってしまえば880kg(FFのMZ、MXグレード)と軽量に仕上がっているためまさに不足なし、といったところ。

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しかし、停止状態からの出足はアクセルを踏んでもワンテンポも間があってから動き出す反応が気になるうえに、発進時に「最長」30秒間モーターのアシストが働くそうですが、試乗時には30秒よりも前に終わってしまうことが多かった気がしました。

街中でそれほどエンジンを回さなければ、という条件付ですが、4気筒ということもあり、3気筒のトヨタ・パッソや三菱ミラージュよりもエンジンの音・振動面は気にならないのは美点でしょう。しかし、CVTということもあってか、アクセルを踏み込むことの多い高速道路や山岳路ではそれなりに高まります。

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荒れた路面での乗り心地に課題を残す一方で、フットワークの仕上がりは良好で、背の高さの割にロール時に腰砕けになることもなく、コーナリングは思ったほど苦手としない印象。サスペンションの取付部の剛性を強化しているそうですが、そうした効果でしょうか。さらに、もう少し減衰されれば課題の乗り心地も改善される気がします。

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良好なパッケージングや個性的な外観、安全面を含めた装備の充実も光るだけに、乗り心地に関しては、今後の熟成に期待したいところです。

(文/写真 塚田勝弘)

スズキ・イグニスは燃費と安全装備で選んで間違いなし!?

2WDと4WD、3グレードを設定するスズキ・イグニス。

マイルドハイブリッドシステムにより、JC08モード燃費は25.4km/L〜28.8km/Lを実現。中間の「HYBRID MX」と上級の「HYBRID MZ」の2WDが28.0km/Lとなっています。

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数あるコンパクトカーの中でもサイズは小さめで、全長3700×全幅1660×全幅1595mmというスリーサイズは、トヨタ・ヴィッツ(全長3885×全幅1695×全高1500mm)と比べてもひと回り小さく、トヨタであればパッソ(全長3650×全幅1665×全高1535mm)に全高をのぞいたサイズが近くなっています。

4WDの設定や180mmの最低地上高による高い機動性が特徴ですが、冒頭で紹介した燃費は、パッソの19.0km/L〜27.6km/Lと比較しても最高値では若干上回っています。

さらに、同じ1.3Lエンジン(2WD)で比べると、イグニスの28.0km/Lに対してパッソは19.0km/L。

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ただし、モデル末期と思われるパッソは次期型で大きく燃費を伸ばしてくると予想されますので、「スモールカーで燃費最重視」という条件であれば、新型パッソ待ちという手もあるでしょう。

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イグニスは燃費や機動性の高さ以外にも、良好な使い勝手や安全装備の充実ぶりも見逃せません。

後席は左右別々にスライドするだけでなく、背もたれの前倒しが可能。しかもスライドとリクライニングレバーが背もたれ上部に用意されているため、荷室側から容易に荷室の拡大ができます。

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このクラスは、エントリーグレードになると後席一体可倒式になるケースもありますが、イグニスは中間グレード以上が5:5分割可倒式、下位グレードは6:4分割可倒式なので、「3名乗車+多めの荷物」というアレンジも可能。また、中間グレード以上には大きめのサブトランクも用意されています。

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安全装備では、デュアルカメラブレーキサポートを採用する「セーフティパッケージ装着車」の設定も見逃せません。約5〜約100km/hで作動する前方衝突警報機能は、車両や歩行者を検知し、衝突の回避もしくは被害軽減を図るもの。

ほかの方式、たとえば「Toyota Safety Sense C」は、レーザーレーダー(赤外線)と単眼カメラを組み合わせ、約10〜80km/hで自動ブレーキの作動条件で、先行車との相対速度が30km/h以内であれば衝突回避もしくは被害軽減を図るという内容になっています。「Toyota Safety Sense C」だと80km/h以上の高速域(高速道路)では作動条件からも外れてしまいます。

ライバル車となりそうな他車をみてみると、日産・マーチは未設定、ノートに80km/h以下で作動する「エマージェンシーブレーキ」を設定、ホンダは軽自動車に多い30km/h以下で作動する「シティブレーキアクティブシステム」をフィットに設定していますが、「ホンダ・センシング」はまだフィットには用意されていません。

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イグニスはほかにも、誤発進抑制機能(前進時のみ)、車線逸脱警報機能(警報、注意表示のみ)、ふらつき警報機能(警報、注意表示のみ)、先行車発進お知らせ機能も搭載。

贅沢をいえば誤発進抑制機能は後進時も、車線逸脱警報機能とふらつき警報機能に車線維持機能が用意されるとベターですが、現時点でもコンパクトカーでは最先端の安全装備が用意されています。

(文/写真 塚田勝弘)

フルモデルチェンジした新型ゴルフ・トゥーランの魅力とは?

2代目に移行したフォルクワーゲン「ゴルフ・トゥーラン」。日本では「ゴルフ」の名が冠されていますが、それ以外の国では単に「トゥーラン」となっています。

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それだけ日本ではフォルクワーゲン・ゴルフの名が通っている証なのでしょうが、外観を見ると一見フルモデルチェンジしたの? というほど同じテイストに見えるのは、ゴルフ・トゥーランに限らずフォルクワーゲン、アウディ、ポルシェなどでは「それほど」珍しいことではないのかもしれません。

もちろん2代目ゴルフ・トゥーランはフルモデルチェンジを受けた新型で、最新の生産方式であり、モジュラープラットフォームの「MQB」を採用。先代よりも全長は130mm延び、全幅も35mm拡幅されています。全高は0-30mmと変わらないか低くなっていて、ホイールベースも110mm延長されています。

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エンジンは1.4Lの直列4気筒DOHCターボ(1.4L TSI)で、ボディサイズの拡大にも関わらず車両重量を20kg減らし、燃費は15.0km/Lから18.5km/Lに向上したのもトピックス。

一見、フルモデルチェンジしたのか分からないほど印象が同じと紹介しましたが、もちろん新旧2台を隣に並べると差は歴然で、いわゆるキープコンセプトといえる見た目の進化となっています。

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同じキープコンセプトといえるフルモデルチェンジを果たしたパサートが新型になってキリリとした外観(とくに顔つき)になったのと同じ印象で、とくにLEDターンシグナル付のLEDヘッドライトとなる「TSI ハイライン」は、より精悍なフロントマスクになっています。

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インテリアでは、ボディサイズの拡大によりとくに2列目の居住性が向上。2列目の前後スライドが40mm拡大し、より足元を広く設定(スライド位置)することが可能になっているほか、3列目のレッグスペースも54mm拡大。それでも3列目は非常用の域は出ていませんが、先代よりも若干広く感じます。

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また、2列目と3列目シートの脱着はできなくなりましたが、頻繁に取り外しする人は少ないはずで、それよりも2列目にイージーエントリー機構が備わり3列目の乗降性が改善された点や、3列目から助手席まで運転席をのぞいてフラットに倒せるシートなどにより高い積載性を得ていることの方が「現実的」で朗報といえそうです。

(文/塚田勝弘・写真/小林和久)

スズキ・アルト・ワークスとホンダ・S660、乗り比べてみると?

2シーターのホンダS660よりも160kgも軽いスズキのアルト・ワークスは、どこから踏んでも加速していく印象を受けます。「軽」という括りだけで、駆動方式やドア枚数、シート数など異なる2台を比べるのはどうかと思いますが、本格的な軽スポーツを目指したという点でも共通します。

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64ps/6000rpm、100Nm/3000rpmというスペックを、ホンダS660の64ps/6000rpm、104Nm/2600rpmと比較すると、ピークパワーは軽の自主規制値いっぱいなのは当然として、最大トルクのわずかな差と回転数の違い、もちろんギヤ比や5MT(アルト・ワークス)と6MT(S660)という差を考慮しても「軽さ」によるアルト・ワークスの加速感が印象に残るのは当然なのかもしれません。

S660_01一方で、乗員の背後にエンジンを積んでいるS660とボンネットの下に積むアルト・ワークスとでは、音・振動面を含めた回り方までエンジンそのものの存在感が異なり、S660の方がより軽快に回るような気がします。

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S660のエンジンマウントが緩いためか振動が大きめという点を除けば、絶対的なパワーはなくても走りを楽しめる、しかもミッドシップという難しさは公道の常識的な速度内、ドライ路面なら感じさせないのが美点。

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たとえば、同じリヤエンジンでデビューが近いスマートと比べても(ボディタイプも車格も違いますが)S660の方がフロントの接地感が高く、ステアリングから伝わる情報も明快なのが印象的です。

さて、5MTのアルト・ワークスに戻りますが、クロスレシオ化されたことで短い距離(時間)であっという間に5速に入ってしまい、やはり6速が欲しいところ。回転の落ちが少ないので非常に走りやすいのはいいですが…

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足まわりの良さは、基準車のアルトからしてそうですが、ターボRSよりもさらにスポーティな味付けにしたことで、乗り心地は硬めです。ただし、コーナーでのロールはもちろん感じるものの、そこから腰砕けになることなく、ロール初期から減衰させることで確かな接地感を狙っているというコーナーワークも、少なくても公道レベルでは軽離れした作り込みに感じます。

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回頭性ではさすがにS660にはおよばないものの、FFでも最も楽しめるのはワインディングというステージなのは間違いありません。一方で走りに特化したスポーツモデルとはいえ、難点は大幅な軽量化の副作用というべきか、音・振動面は目をつぶる必要があるでしょう。

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ちなみに5速100km/hでの回転数は4000rpm近くまで高まることもあって盛大なエンジン音に見舞われる中、メーターに目をやると高速道路では巡航時でも20km/L前後の燃費がようやくで、回していると10km/Lにも届かないのも玉に瑕といったところでしょうか。

(文/写真 塚田勝弘)

【関連記事】

■「アルト・ワークス」の進化ポイントとMTモデルの価格設定が気になる
http://clicccar.com/?p=361012

■アルト・ワークス(5MT)で最も気になった点とは?
http://clicccar.com/?p=360960

アルト・ワークス(5MT)の動力性能、加速フィールはどうか?

アルト・ワークスとアルト・ターボRSのエンジン主要諸元を見ると、同じ改良型R06A型ターボで、VVT(可変バルブタイミング機構)が吸気側に装備され、圧縮比は9.1と同一。最高出力は自主規制値いっぱいの64ps/6000rpm、最大トルクはターボRSの98Nm/3000rpmから100Nm/3000rpmと2Nm(0.2kg-m)引き上げられています。

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最大トルクの増強は、冷却性能の向上が寄与しているそうで、冷却水制御温度を88℃から82℃に下げることで燃焼室温度の低減を図り、充填効率向上とノッキングを回避しているそうです。

なお、フロントバンパーの右側に、ワークス専用の外気口が追加されていますが、エンジンルームに外気を入れることで冷却効果を向上させるもの。

また、走りの印象を変える要素として、加速時のレスポンスディレイ(応答遅れ)をターボRSから10%短縮し、素早い加速フィールを得ているそう。

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2Nmの最大トルクアップと、アクセルレスポンスの10%向上というのは、ターボRSと乗り比べができれば良かったのですが、MTとAGSという違いもあり、乗り比べしたところでどれだけ差が分かったか怪しいところ。

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少なくともターボRSと同様に、670kgという超軽量ボディを加速させるにはシーンを問わず、また速度域を問わずどこでもグイグイと速度を乗せていくという、軽さの利点を存分に思い知らされたことです。

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最も得意とするワインディングはもちろん、高速道路でも流れをリードするのはたやすく(音・振動はかなりど派手なことになりますが)、おそらく速度リミッターから先もまだまだ加速が続いていきそうな気配も。

アルト・ワークスに乗った後日、高速道路を含めてホンダS660に久しぶりに乗る機会がありました。

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確かに、S660の軽自動車の領域を超えたような動的質感の高さは魅力ですが、駆動方式や最大トルクの差、ドアの枚数やシートの数などその成り立ちを度外視しても、S660の830kgと、アルト・ワークスの670kgの差は明らか。

速度リミッター前後で延々とクルージングする人は少ないでしょうが、痛快な加速感を味わうなら同じ64ps/6000rpmでもアルト・ワークスの方が上でしょう。

(文/写真 塚田勝弘)

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マツダ・デミオの熟成でCX-3との差が縮まったか!?

昨年12月24日に一部改良を受けたマツダ・デミオ。マツダCX-3も同日商品改良を受け、動的質感の向上が図られています。

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静粛性の向上がひとつの狙いで、ディーゼルエンジン特有のノック音を抑える「ナチュラル・サウンド・スムーザー」を全グレードに標準装備しているほか、 こちらも全車のフロントドアガラスの厚みを増すことにより車外騒音の室内への透過を抑えることで、静かなキャビンを得ているというもの。

乗り心地やハンドリングの面も改良されています。足まわりでは、前後ダンパーの内部構造、そしてフロントスタビライザーの構造の改良により、乗り心地の改善が図られているほか、デミオ同様に電動パワーステアリング制御の改良により、操舵初期の車両コントロール性を向上。

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また、こちらもデミオ同様に、エンジンのトルク応答を緻密にコントロールする「DE精密過給制御」が採用され、低負荷領域においてアクセル操作に対するクルマの反応がよりダイレクトになるよう設定されるなど、マツダが唱える「人車一体感」のさらなる向上も静粛性とともに大きなテーマになっています。

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改良後を受けたデミオから乗り替えると、アイポイントの高さが印象的で、視界がよく感じる分、CX-3の方が運転しやすく感じるかもしれません。

ただし、着座姿勢はアップライトになりますから、SUVが初めての方は慣れが必要かも。それでもペダル配置に違和感はなく、運転姿勢が決めやすいのも美点。

気になる静粛性に関しては、改良後デミオといい意味で大差ない印象で、路面から少し高い位置に座るぶん同じ速度域でも静かに感じるかな、といった程度。実施的には同等といえそう。

また、音対策以上に乗り心地の向上が印象的で、改良前はややピッチングが大きめでしたがよりフラットライド感を得ているのも朗報でしょう。

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デミオよりもアップライトで着座位置が少し高いにも関わらず、コーナリング時に過大なロールを感じさせず、路面が波打っているような場所でもボディの揺れがよく抑えられています。

改良前からCX-3のフットワークは非凡なものがあり、やや粗めの乗り心地が気になるという感じでしたが、よりナチュラルになったパワステのフィーリングやフラットライドといえるレベルにまで引き上げられた乗り味は美点。

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デミオが改良後で大きくCX-3に近づいた感がありますが、それでも今回のCX-3の改良でこちらも引き上げられていて、車格の差は絶妙に保たれている印象を受けました。

(文/写真 塚田勝弘)

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「アルト・ワークス」の進化ポイントと、気になるMTモデルの価格設定

待望されていたアルト・ワークスはアルト・ターボRSをベースに、5MTの設定や専用チューニングされたシングルクラッチのAGS(オートギヤシフト)、最大トルクの向上、レカロシートの装備、専用セッティングされた足まわりなど、ワークス専用チューニングが数多く施されています。

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1速から4速をクロスレシオ化した5MTは、2速にダブルコーンシンクロを採用し、操作荷重を専用設計してダイレクトかつ節度感のあるシフトフィールが実現されているほか、クラッチディスクの荷重特性の最適化など、クラッチミートの操作感まで追求されています。なお、アルト・ワークスの変速比はファイナルが4.705で、こちらはアルト・ターボRSと同じで、標準車は4.388となっています。

2ペダルのAGSは、トルコン付ATやCVTからの乗り替えだと違和感を抱く可能性が高いですが「シングルクラッチとしては」完成度は高く、ターボRS用よりもスポーティな変速マッピングとされているほか、シフトレスポンスを重視した変速チューニングにより変速時間を最大10%短縮しているそうです。

ワークスのAGS車には試乗する機会はありませんでしたが、パドルシフトも備わりますし、AT限定車でも同車のスポーティな走りが楽しめるのは間違いないでしょう。

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改良型R06Aターボエンジンは、冷却性能の向上により2Nmトルクアップが図られています。さらに、アクセルレスポンスの向上やターボ過給圧の高さに応じて、メーター内のインジケーターが白から赤に変化するなどの装備も用意。

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引き締まった乗り味と正確なハンドリングもワークスの魅力ですが、足まわりでは、フロントストラットの減衰力最適化によりロールスピードの低減、ダンピングの向上が図られています。

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リヤもダンパーの減衰力最適化で、ロールスピードの低減、ダンピングの向上が意図されているほか、ホイールのリム幅拡大(ターボRSの15×4.5Jから15×5J)により応答性の向上、EPSコントローラーの制御マップ最適化により、ダイレクトな操舵フィールが追求されています。

ダンパーはKYB製が採用されているほか、15インチの専用アルミホイールはENKEI製などスポーティなハンドリング、見た目も強化されています。

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外観ではカーボン調フロントバンパーアッパーガーニッシュ、ボディサイドデカール、専用リヤエンブレムなどを専用装備。

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内装では、本革巻ステアリング(レッドステッチ&ディンプル加工)、エアコンサイドルーバーリング(サテンメッキ調)、レッドステッチのシフトブーツ、ステンレス製ペダルプレート、そしてレカロ製フロントシートが用意されています。

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ひとつ気になるのは、MTの比率が高そうなアルト・ワークスですが、燃費(2WD)は5MTが23.0km/L。AGSは23.6km/LとAGSの方が若干良くなっています。アイドリングストップの有無(MTは未設定で、AGSに標準)という点が大きいのでしょうが、MTもAGSも価格は同じ。

さらに5MTは、レーダーブレーキサポートや誤発進抑制機能、エマージェンシーストップシグナル、ヒルホールドコントロール、エコクール、シフトインジケーター、フットレストなどが未設定となっていますので、価格面で少し差が付いても(AGSよりも安く)いいような気がします。

(文/写真 塚田勝弘)

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アルト・ワークス(5MT)で最も気になった点とは?

スズキ・アルトについに設定されたアルト・ワークス。アルト・ターボRSではなく、ワークスを待っていた方も多いでしょう。

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運転席に収まると気がつくのは着座位置の高さ。「レカロシート=低い」という思い込みがあるせいか余計に高く感じてしまいます。しかし、シートレールそのものはアルト・ターボRSと同じで、ほかに技術的な要因があるというわけではないそうです。

ただし、アルト・ターボRSに標準装備の運転席シートリフターは、アルト・ワークスには未設定で、ワークスがどういった基準でシート位置が決められたか分かりませんが(試乗する前と試乗時は)、後日試乗する機会があった標準車のアルトと比べても着座感は明らかに高めになっています。

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また、広報部にうかがうとワークスのレカロシートは、シートの形状やトルソ角などが「背筋を伸ばして座らせる」設計になっていることも着座位置やアイポイントの高さ「感」につながっているのでは? とのこと。

視界の高さは「スポーツモデルなのに高いとはけしからん!」という方もいれば、小柄な人にとっては前がよく見えていい、小柄でなくてもアイポイントは高めの方がいいなど、好みが分かれそう。

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私も「低く座って足を投げ出すような姿勢」になるのがスポーツモデルのお約束と思っていたため、違和感を覚えながら一般道や山道、高速道路まで時間の許す限り走ってみました。

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専用設計のレカロシート自体は「ホールド性の高さとロングドライブ時の快適性を兼ね備えた」と解説されていますが、個人的にはレカロの割にホールド性はそこそこで、おそらく後者も重要視しているのかな、という印象。

さらに、座面前端部のクッションの硬さを最適化(硬すぎない?)することで、ペダル操作性も向上させているとのこと。

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そのペダルは、クラッチは軽くもなく重くもないというところ。プレートスプリングの特性を見直すことにより、トルク伝達がリニアに立ち上がるクラッチ荷重特性とすることで、スムーズで力強い走りを実現しているそうです。また、クラッチディスクの荷重特性を最適化することでミートポイントも分かりやすくなっていて、クラッチ操作そのものも楽しめるように設計されています。

5MTは1から4速をクロスレシオ化し、トルクバンドを持続させるつながりの良いギヤ比に、ショートストロークシフト化とレカロシートに合わせたシフトノブ位置の最適化が図られているそう。シフトフィールは短いストロークで決まりやすく、ホンダS660とは異なる剛性感も味わえる印象です。

こう聞くと、レカロシートの位置決めが高く感じるのは、MTのシフトノブとの位置関係もあってのこととなりますが、背の高い人が同モデルに乗るとヘッドクリアランスの心配も出てきそうです。

(文/写真 塚田勝弘)

走りと質感、快適性を向上させたマツダ・デミオ

昨年末に一部改良を受けたマツダ・デミオ。新型は1月中旬から発売(ガソリン車が1月15日、ディーゼルが1月22日)されています。

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クリーンディーゼルの「SKYACTIV-D 1.5」搭載モデルでは、エンジンのノックオンを抑制する「ナチュラル・サウンド・スムーザー」の設定(XD Touring、XD Touring L Package、特別仕様車XD BLACK LEATHER LIMITEDに搭載)のほか、低負荷領域でアクセル操作に対してリニアな加速が可能となった「DE精密過給制御」の採用がトピックス。

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「SKYACTIV-D 1.5」、「SKYACTIV-G 1.3」ともに電動パワーステアリングの制御を見直し、ステアリングの切り始めの応答性を改善することで、よりナチュラルな操舵感を得ているなど、細部にわたって走行フィールの改善が図られているのはマツダらしいところです。

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ガソリン車の「SKYACTIV-G 1.3」搭載モデルには、トノカバーとフロントウインドウシールド遮音ガラスを採用(13S Touring、13S Touring L Package、13S BLACK LEATHER LIMITED)することで、静粛性を向上させる手も打たれています。

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そのほか、シャークフィンアンテナや3段階の温度調整が可能なシートヒーターを前席両側への設定、CX-3と同様にスタイリッシュなフォルムのフラットワイパー(フロント)を採用するなど、質感と快適性の向上が図られているのも朗報。

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デミオよりも後発で、少し車格が上になるCX-3から採用された装備も多く、常に新しいモデルをショールームに並べるという、マツダの意気込みを存分に感じさせる改良とでしょう。

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なお、価格帯はガソリンが135万〜193万3200円、ディーゼル搭載車が178万2000円〜221万4000円です。

(塚田勝弘)

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デミオ・ディーゼルは走りもさらにブラッシュアップ

マツダ・デミオにクリーンディーゼルエンジンを搭載した「SKYACTIV-D 1.5」に、CX-3にも用意されている「ナチュラル・サウンド・スムーザー」が設定され、エンジンのノック音を低減することにより静粛性が向上されていますが、今回の商品改良はそれだけではありません。

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「DE精密過給制御」と呼ぶエンジン制御の見直しによりダイナミック性能を進化させたほか、電動パワーステアリングの制御の改良によってナチュラルなハンドリングを得ているのが特徴。

その進化が分かるのは主に街中などの低速域のステージ。

DE精密過給制御により低速域の出足感をよりリニアなものにされたもので、新旧デミオを乗り比べると、アクセル操作に対する反応が素早くなっているのが分かります。

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しかも、停止時から急に加速するような「飛び出し感」を伴うのではなく、アクセル操作に連動するようなスムーズなものですから、ストップ&ゴーの多い街中でより感じられる制御になっています。

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電動パワステの制御改良もひと言でいうと、スムーズそのもの。切り始めの応答性を高めることで、たとえば信号待ちからの発進、そして右左折による操舵時などでその効果を新旧乗り比べで実感できましたし(新型はシャークフィンアンテナを採用)、首都高速のような中・高速域でもより自然なハンドリングを披露。

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経済性の高さやトルクフルな走りだけでなく、操舵応答性やアクセルワークの改善、そして「ナチュラル・サウンド・スムーザー」の設定により動的質感が高まったデミオのディーゼルモデル。

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軽快な走りが魅力のガソリン車も、トノカバーとフロントウインドウシールド遮音ガラスにより静粛性を向上させていますから、ますますエンジン選びには悩まされそうです。

(文/塚田勝弘・写真/小林和久)

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マツダ・デミオの走りは国産コンパクトカー随一!?

マツダといえば、クリーンディーゼルエンジンを思い浮かべる方も多いでしょう。ほかにも「魂動(こどう)」デザイン、エンジンやプラットフォームだけでなく、新しいクルマ作りを総称する「スカイアクティブ」テクノロジーなど、クルマ好きだけでなく幅広い層にそのブランド哲学が広まりつつある、そんな状態ではないでしょうか。

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クルマ好き以外の方々にも新世代商品をズラリと揃えるマツダを知ってもらう入り口として最適なのがデミオ。

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現行型は、走りもデザインも質感も国産コンパクトカーの中で一頭地を抜く存在といえる完成度でしたが、ほかの最新マツダ車と比べると、ノイズ(エンジン)の高さや室内スペース、一部部品の見栄えなどがネガティブなコメントとしてユーザーから上がっていたそうです。

1月から販売されている改良後モデルですが、看板グレードといえる「SKYACTIV-D 1.5」搭載車に、CX-3にも採用されていたエンジンのノック音を抑制する「ナチュラル・サウンド・スムーザー」を設定(XD Touring、XD Touring L Package、特別仕様車XD BLACK LEATHER LIMITEDに採用)されているほか、「SKYACTIV-G 1.3」搭載車にトノカバーとフロントウインドウシールド遮音ガラスを採用(13S Touring、13S Touring L Package、13S BLACK LEATHER LIMITED)することで、ノイズの侵入が抑制されています。

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気になる走りですが、ディーゼルに搭載された「ナチュラル・サウンド・スムーザー」は、パーシャル域から少し踏んでいった際のノック音を抑制するもので、CX-3と同様に注意深く聞いてみるとその差を感じ取れる程度。

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今回、新旧デミオ(ディーゼル搭載車)に乗り比べる機会がありましたので、乗り比べるとその差は確かに実感できました。これなら、デミオのディーゼルはやや音が大きめといった声もかなり少なくなるでしょう。

また、全グレードがEPS(電動パワステ)のアシスト力(セッティング)を見直すことでよりスムーズなハンドリング、とくにステアリングを切り始めの応答性能改善も図られています。

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その後に乗り比べたCX-3と改良後デミオの差が縮まった印象で、音・振動面や走りの上質感、ハンドリングなどは国産コンパクトカーの中でもトップクラスの実力の持ち主であることは間違いないでしょう。

(文/塚田勝弘・写真/小林和久)

最もスバルらしい「DCCD」方式AWDの真価とは?

6MTのみのWRX STIに搭載されているセンターデフ式、電磁クラッチを採用するDCCD(ドライバーズコントロールデフ)方式のシンメトリカルAWDは、最もスバルらしいスポーツ4WDの代表例といえるでしょう。

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プラネタリーギヤ式センターデフを採用しているのはAT(CVT)系の「VTD-AWD」と同じですが、「DCCD」は前後基本トルク配分をよりリヤ寄りの「41:59」とし、前後重量配分がフロント寄り(重くなる)となるFFベースとのバランスが取られています。

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センターデフに多板クラッチによる差動制限を組み合わせ、前後輪への駆動配分がされていますが、トルク配分を緻密に制御できる電磁式LSD(電磁ソレノイド)と、素早くしかもリニアな制御が可能なカムによる機械式LSDが組み合わせているのが特徴。

低ミュー路での走りはフロントヘビーを忘れさせるほどで、FFベースとは思えずFR的な挙動が印象的です。

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同乗走行の機会のあったラリードラーバー・鎌田卓磨選手の手に掛かると、アクセルコントロールでテールを滑らせ、自在に曲がれるワケですが、ハンドブレーキ形状のサイドブレーキを採用しているのもスバルらしいこだわりを感じさせる瞬間。

現行モデルには、先代WRX STIと同様に電磁式LSD(電子制御LSD)のデフロック率をロックからフリーまで6段階で設定できるマニュアルモード、走りに併せて電子制御される3種類のオートモードが用意され、「マルチモードDCCD」と呼ばれています。

こちらは、センターデフをマイナス側にするとテールスライドしやすく、より旋回しやすく、プラス側にすると安定感を抱く一方で曲がりにくくなる、という傾向。AUTOモードにすると、舵角やヨーレート、スロットル開度などを検出することでコーナリング時でもセンターを維持しやすく、マイナスにするとよりノーズがインに向きやすく、プラスにするとトラクションがより確保されます。

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「マルチモードVDC」は、挙動の限界付近で4輪個別のブレーキ制御、エンジン出力制御により車両を安定化させるもの。

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曲がりやすいFR的な挙動ですが、横滑り防止装置をオンにしておけば低ミュー路でも安全に走破できるのはもちろん、そこから先の真価はオフにして積極的にきっかけを作りながらテールスライドさせながら曲がっていくという、スポーツ系AWDらしい設定で、WRCなどラリーを主戦場としてきたスバルの真骨頂を感じさせてくれます。

(塚田勝弘)

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アクティブトルクスプリット式を採用するスバル「シンメトリカルAWD」の走りは?

スバルではシンメトリカルAWD(4WD)の利点として、トラクション(発進性や走破性)の高さや、高速安定性や旋回性能などに加えて、低ミュー時も全輪が駆動輪であるためブレーキを深くかける(ABS)ことが可能なこと、ロック時も車輪の復帰に素早く駆動力を使えることが可能なことを挙げています。

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ここでは、レヴォーグ(1.6L)、レガシィ、インプレッサ(ハイブリッド含む)、スバルXV(ハイブリッド含む)、フォレスター、クロスオーバー7に搭載されているアクティブトルクスプリット方式のAWDをご紹介します。

油圧多板クラッチを採用するアクティブトルクスプリット方式は、前後基本トルク配分を「60:40」に設定し、エンジントルクと車輪速センサーにより駆動状況をモニタリングするシステム。

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さらには、VDCからステアリングの舵角、ヨーレート、横加速度信号などもモニターされていて、通常時は駆動ロスを抑え、突然滑りやすい路面に遭遇しても素早く対応することが可能です。

制御はトランスファー内の多板クラッチにより行われ、ほぼ直結状態からほぼ前輪駆動まで可変させることができます。

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さらに、インプレッサ(スポーツ)とXVのハイブリッド車は、アクティブトルクスプリット式をベースに、専用設計となるコンパクトなモーターがミッションケースに内蔵されていて、AWDの基本構造を変えることなくハイブリッド化がされているのも特徴。

アクティブトルクスプリット式では、レヴォーグ(1.6)、レガシィ・アウトバック、インプレッサ(スポーツ)、XV、フォレスターに雪上コースや公道で試乗する機会がありました。

どのモデルでも印象的なのがAWDとは思えない素直なハンドリング特性。なお、試乗車全車にブリヂストンの「ブリザック(VRXやDM-V2)」が装着されていました。

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圧雪路や氷上に近いコンディション、坂道やコーナーなどでも横滑り防止装置のVDCをオフにしなければ高い安定性が得られます。走るごとに路面が磨かれるコースでは、非常に滑りやすい路面もありましたが、慣れてくるとコントロールしやすく、横滑り防止装置をオフにしてその違いも楽しむことができます。

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フォレスターとアウトバックには「X-MODE」が装備されていることもあり、よりイージーに特設コースを走破できるのが印象的でした。オフにしても特設コースをクリアできましたが、楽なのはやはり「X-MODE」のオンで、余計にスリップするシーンが激変します。

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また、フォレスターはインパネ中央に「X-MODE」などの作動状況が分かるディスプレイが配置されていて、メーターで確認するアウトバックよりも「X-MODE」の仕事ぶりをチェックしやすく感じました。

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インプレッサやXVは、フォレスターやアウトバックよりもひと回り小さく感じさせるほど全体の動きが軽く、滑り出したときの対処もしやすいのが美点。

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ただし、パワステもやや軽く感じるため、雪道やほぼ凍結した路面ではステアリングのインフォメーションに物足りなさも抱かせますが、普通に走る分には先述したように軽快感につながっているのでしょう。

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また、レヴォーグ(1.6)とフォレスターのターボで公道(林道)を走る機会もあり、先の路面が読みにくい林道ではフォレスターのアイポイントやロードクリアランスの高さが頼もしさに感じられ、雪上や除雪された冬道ではレヴォーグの乗り味の良さが伝わってきました。

(塚田勝弘)

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