Motor Fan's YEAR 2016

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ボッシュのバイク用ABSがカワサキとスズキの2車種に採用

自動車部品大手のボッシュは、同社の新型二輪車用アンチロックブレーキシステム「ABS10」が、カワサキVersys-X 300 ABSに量産車として初搭載され、続いて2018年モデルのスズキGSX-S125 ABSにも搭載される予定と発表しました。

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二輪車用アンチロックブレーキシステム(ABS)については、欧州連合(EC)が125cc以上の二輪車に搭載を義務付け、日本国内でも125cc以上の二輪車にABSの搭載が法制化されました。その他にも、米国、オーストラリア、ブラジル、インド、台湾で二輪車のABS搭載義務化が進行しています。今回のカワサキ・スズキ2メーカーのABS搭載は、これらの法制化に対応したものと見られます。

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二輪車用のABSは、1987年にBMWが「K100」で初めて搭載し、その後、1994年にボッシュが二輪車用ABSとなる「ABS2L1」を開発しました。

二輪車用ABSが難しいのは、ABSを搭載するスペースを確保することが困難であること、作動するときの「ガクガク」としたブレーキショックが二輪車では転倒につながってしまうことの2点です。

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ボッシュは、これらの二輪車用ABSの課題に対して改善を続け、1994年の「ABS2L1」では4.5kgだったABSの重量も、2011年の「ABS9」では0.7kgに軽量化されました。そして、今回の新型「ABS10」では重量が0.45kgになり、「ABS9」と比較して約30%の軽量化と、約45%の小型化が達成されています。

二輪車用ABSは元来特定の大型バイクのみに採用されていました。一方、50ccの原付バイクから大型バイクまでフルラインで車種を揃えている日本の大手二輪車メーカーでは、小型バイクに搭載しにくいABSに対して消極的な姿勢をとらざるを得ないという事情もありました。

ボッシュでは、世界の二輪車生産の90%を占める中国、インド、東南アジア諸国などのアジア地域でABSの普及を進め、インドネシアとタイだけでも、年間約2万1,000人にのぼる二輪車事故の死亡者数を減少させたい、としています。

そこで気になるのが、日本の二輪車メーカーのABSに対する取り組みです。当然ボッシュはABSのパテントを保有しており、ボッシュのパテントを回避したABSを日本の二輪車メーカーが開発するには、相当の困難が予想されます。

今後、日本の二輪車メーカーがABS搭載の義務化の流れを受けて、カワサキ・スズキの2社に続いて、ボッシュのABSを導入することになるのか、自社開発のABS搭載を目指すことになるのかに注目が集まっています。

(山内 博・画像:ボッシュ)

出力向上と省燃費・エコ性能を両立させるボッシュのガソリンエンジン向け水噴射システム

ドイツの自動車部品大手 ボッシュは、出力・トルク向上と省燃費・省エミッションを実現するガソリンエンジン向け水噴射システムを開発したと発表しました。

同システムはBMW M4 GTSに搭載されます。

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ボッシュの発表によると、新開発の水噴射システムは、ターボチャージャー付きダウンサイジングエンジンにも好適で、ガソリンエンジンの出力・トルクを5%向上させながら、最大13%の省燃費と、4%のCO2低減を実現することができるということです。

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発表で明らかにされた水噴射システムは、水タンクに貯留された蒸留水を吸気ポートにインジェクタで噴射するようになっています。インジェクタへの蒸留水を加圧するポンプと水噴射量を制御する制御装置については、今回の発表では公表されませんでした。

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新開発の水噴射システムは、ガソリンエンジンに供給されるガソリンの一部が燃焼室・エンジンブロックの冷却のために浪費されていることを知見して開発に着手したもので、噴射された水の気化熱で燃焼室・エンジンブロックの温度を下げ、同時に水が分解して発生する酸素でガソリンの燃焼を促進することで、効果を発揮します。

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新燃費基準のWLTCによる計測では、水噴射システムを搭載したエンジンは最大4%の燃費向上という結果が得られました。ただし、ボッシュでは省燃費効果について、実走行ではこの数字がさらに上がるポテンシャルがあるとしており、急加速時や高速道路の走行時には、最大で13%もの燃費向上が可能になるとしています。

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今回の水噴射システムでは、蒸留水の消費量は走行100km当たり数百ミリリットル程度のわずかな量で、水タンクへの蒸留水の補給は3000kmごとに1度行うだけで済み、万一水タンクが空になっても、通常のガソリンエンジンとして動作可能です。

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心配されるのが、冬季に水タンク内の蒸留水凍結することですが、ボッシュではエンジンの暖機で凍結した蒸留水を融解させるようにしているようです。

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これまでも水噴射エンジンは開発が試みられてきましたが、今回のボッシュのシステムはBMW M4 GTSに搭載されて市場に登場するように完成度が高く、今後の普及・発展が期待されます。

(山内 博・画像:ボッシュ)