Motor Fan's YEAR 2016

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圧縮比13で最大熱効率40%、トヨタの新型2.5リッターエンジンは何がポイントなのか?

トヨタの次世代技術群といえる「TNGA(トヨタニュージェネレーションアーキテクチャ)」に基づいた新世代エンジン『ダイナミックフォースエンジン』が発表されています。

ロングストローク化、バルブ挟角拡大といったプロフィールを持つ新世代エンジンは、高速燃焼技術によりターゲット性能を実現しているのが技術的なキーポイント。

その最大熱効率はコンベンショナルで40%、ハイブリッド用で41%と大量生産エンジンとしては驚異的な性能となっています。

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高速燃焼に必要なのは、流量の確保と強いタンブル流です。

タンブル流というのは、吸気行程においてシリンダー内に発生する縦渦のことで、そこにトヨタとしては初採用となるマルチホール直噴インジェクターを利用して燃料をうまく混ぜ合わせているのも、高速燃焼のポイントということです。

なお、エンジン始動時など直噴インジェクターが苦手な領域をカバーするためにポート噴射も併用したD-4Sシステムとなっています。

エンジンのロスを減らすためには、世界初となる連続可変容量オイルポンプを採用。トロコイド式ポンプのアウターローターを偏芯させることで、オイルの吐出量を変化させ、必要に応じてエンジンの負荷を軽減するということです。

この新型2.5リッターエンジン、新開発の8速ATと組み合わせられるコンベンショナル仕様と、2モーターシステムを使うハイブリッド仕様があり、それぞれ要求性能に応じて異なるスペックとなっています。

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■トヨタ新型21.5リッターエンジン主要諸元(コンベンショナル)
排気量:2487cc
ボア×ストローク:87.5×103.4mm
圧縮比:13
燃料噴射システム:D-4S(直噴&ポート噴射)
最高出力:151kW/6600rpm
最大トルク:250Nm/4800rpm
最大熱効率:40%

■トヨタ新型21.5リッターエンジン主要諸元(ハイブリッド)
排気量:2487cc
ボア×ストローク:87.5×103.4mm
圧縮比:14
燃料噴射システム:D-4S(直噴&ポート噴射)
最高出力:130kW/5700rpm
最大トルク:220Nm/3600-5200rpm
最大熱効率:41%

(写真・文 山本晋也)

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トヨタが新型2.5L 直列4気筒直噴エンジンと8速/10速ATを開発!! CO2排出量を15%以上削減へ

豊田章男社長の直轄であり、トヨタグループ総力を挙げてのEV参入で話題を集めているトヨタ。しかし、2040年時点でも何らかの形で内燃機関を使った車両は80%近く残るという分析もあります。

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EVやFCVなどの電動化車両へのシフトは徐々に進んでいくのは間違いないにしても、従来からのガソリン、ディーゼルエンジン、トランスミッションの進化はまだまだ伸ばす必要があり、マツダが「HCCI(予混合圧縮着火)」の開発を推進しているのもその一例といえます。

今回、トヨタから発表された2.5L 直列4気筒の新型直噴エンジンは、エンジンの実力を最大限引き出すために「TNGA」により基本骨格を一から見直したものだそうで、構造と構成を刷新することにより、高い走行性能と環境性能を両立させた「Dynamic Force Engine」と命名。今後もさらに進化させていくとしています。

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同エンジンは、高速燃焼技術、可変制御システムの採用のほか、排気・冷却・機械作動時などの様々なエネルギーロスを少なくして熱効率を向上させるとともに、高出力を両立するとしています。

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新開発の2.5Lガソリン車用エンジン、ハイブリッド用エンジンは、それぞれ世界トップレベルの熱効率40%、41%を達成しています。同時に、緻密な制御による高レスポンス化と全速度域での高トルク化など、多くの新技術の採用により全面的に見直し、大幅に進化させたそうです。

また、新しい8速AT(FF用)、10速AT(FR用)も、エネルギーロスを最小限にし、伝達効率を高めるためにギヤやクラッチなどに様々な対策が施されています。

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ギヤは、歯面の摩擦係数を低くする新たな加工が施され、ギヤが噛み合う時のエネルギー伝達ロスを削減。機構内の摩擦材形状が最適化されたクラッチは、回転時のクラッチの損失トルクを約50%低減(従来型6速AT比)するなど世界トップレベルの伝達効率を達成。

ほかにも、小型軽量化により車両燃費を向上させるとともに、低重心化により直進およびコーナリングの走行安定性向上に寄与するそうです。

また、ギヤをワイド化するとともに、高性能・小型トルクコンバーターを新開発し、ロックアップ領域を拡大。アクセル操作に素早く、滑らかに反応するようになり、走りの質が高められています。

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10速ATの「Direct Shift-10AT」は、8速から10速に段数をアップさせてトータルのギヤ数を増やしながら、低・中速域を中心に、各段の使用領域(段数)を最適化するクロスギヤが採用されています。これにより、FRプレミアム車にふさわしいスムースかつ世界最速レベルのクイックな変速が生み出すダイナミックな走りを実現。

もちろん、FR向けハイブリッドも進化しています。4代目プリウスに採用された小型、軽量、低損失化技術を継承し、2.5Lエンジン用ハイブリッドシステムを一新するとともに、FR用の高性能「マルチステージTHSⅡ」を新開発。

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この2.5LのTHSⅡは、小型・軽量・低損失化技術と、TNGAによる新型エンジンの高い燃焼効率と高出力との相乗効果により、優れた動力性能、低燃費を高次元で追求したとしています。

具体的には、ハイブリッド車の走りのイメージを一新する高い発進加速性能とダイレクト感あふれる走りを実現。高速走行時のシステム効率の向上に加えて、高車速域でもエンジン間欠運転を可能にすることで高速燃費を向上しているそうです。

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プラグインハイブリッドシステムは、従来のモーター走行に加えて、これまで発電機として使用していたモーターを走行用としても使用する「デュアルモードドライブシステム」を搭載。欧州車などでも採用されている技術ですが、これにより力強いEVモード走行を実現。

各国の排ガス規制に対応すべく環境性能を高めるのは必須になっています。しかし、そこには従来よりも力強い走りも必要で、新パワートレーンを搭載させた車両を2021年には、トヨタの車両販売台数の60%以上に拡大(日本、米国、欧州、中国が対象)。CO2排出量は15%以上削減するとしていますから、新生トヨタに注目が集まります。

2021年までの5年間でエンジンは、今回開発した2.5Lガソリンエンジンを含め、9機種(17バリエーション)、トランスミッションは多段化AT、新機構の無断変速機(CVT)など4機種(10バリエーション)、ハイブリッドシステムは6機種(10バリエーション)の投入予定とされています。

(塚田勝弘)

ジャガー・ランドローバーがガソリンエンジンと最新ATを新たに開発する狙いとは?

フォード傘下から離れたマツダやボルボと同様に、ジャガー・ランドローバーも自前で最新エンジンを手がけており、「INGENIUM(インジニウム)」という名称で、ジャガーXE、F-PACEなどのほか、欧州向けのディスカバリー スポーツなどに搭載されています。

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従来はディーゼルでしたが、新たにラインナップを拡大し、直列4気筒ガソリンエンジンも追加されるそう。

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なお、先に投入されているディーゼルエンジンは、トルクフルな走りや燃費だけでなく、静粛性もトップクラスであるのも美点。もちろん、車体側の対策も功を奏しているはず。

年々厳しくなる環境規制(CO2排出量)に対応すべく、同社でもすべてのモデルで排出ガスを削減し、燃費を向上させるという長期的なコミットメントを掲げていて、高効率な代替パワートレインの採用、得意とするアルミなどを使った車体の軽量化、車両の省エネルギー化を進めています。

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排出ガスの削減戦略の中核である新開発の4気筒「INGENIUM」ガソリンエンジンは、ジャガー・ランドローバー社が10億ポンド(約1,300億円)を投資して建設、拡張されたエンジン・マニュファクチャリング・センターにおいて製造。

デザイン、エンジニアリング、マニュファクチャリングはすべて英国で行われていて、同社が開発するものとしてはもちろん最先端のエンジンになります。従来のエンジンと比較すると、パワーを最大25%向上させながらも燃費を最大15%削減できるとのこと。

BMW同様に、1気筒あたり500ccの排気量を基本構造として、最大限の柔軟性と拡張性を両立。そのため、スポーツサルーンやSUVといった様々なモデルに適用した開発が可能になります。

また、同エンジンには、電動油圧式バルブトレイン、一体型のエキゾーストマニホールドとセラミック・ボール・ベアリング技術を使用したツイン・スクロール・ターボチャージャーなどの最新技術が搭載されます。

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さらに、組み合わされるトランスミッションも新たに開発中だそうで、今後の市販車モデルの効率性を向上させると同時に、全輪駆動の能力をさらに高める革新的な先進的なATになるそう。

3,000万ポンド(約39億円)規模の先進的な研究プロジェクト「TRANSCEND(トランセンド)」と呼ばれるもので、ローレンジ・ギアボックス、デュアル・ クラッチ、ハイブリッド技術を組み合わせ、「20:1」という極めて高いギア比を採用。新たな水準のオフロード性能に貢献しながら燃費を約10%改善できます。

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ディーゼルに加えて、ガソリンエンジンの刷新、そして新しいトランスミッションの開発、ボディの軽量化などによりジャガー・ランドローバー社の今後のモデルにもより注目が集まりそうです。

(塚田勝弘)

出力向上と省燃費・エコ性能を両立させるボッシュのガソリンエンジン向け水噴射システム

ドイツの自動車部品大手 ボッシュは、出力・トルク向上と省燃費・省エミッションを実現するガソリンエンジン向け水噴射システムを開発したと発表しました。

同システムはBMW M4 GTSに搭載されます。

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ボッシュの発表によると、新開発の水噴射システムは、ターボチャージャー付きダウンサイジングエンジンにも好適で、ガソリンエンジンの出力・トルクを5%向上させながら、最大13%の省燃費と、4%のCO2低減を実現することができるということです。

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発表で明らかにされた水噴射システムは、水タンクに貯留された蒸留水を吸気ポートにインジェクタで噴射するようになっています。インジェクタへの蒸留水を加圧するポンプと水噴射量を制御する制御装置については、今回の発表では公表されませんでした。

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新開発の水噴射システムは、ガソリンエンジンに供給されるガソリンの一部が燃焼室・エンジンブロックの冷却のために浪費されていることを知見して開発に着手したもので、噴射された水の気化熱で燃焼室・エンジンブロックの温度を下げ、同時に水が分解して発生する酸素でガソリンの燃焼を促進することで、効果を発揮します。

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新燃費基準のWLTCによる計測では、水噴射システムを搭載したエンジンは最大4%の燃費向上という結果が得られました。ただし、ボッシュでは省燃費効果について、実走行ではこの数字がさらに上がるポテンシャルがあるとしており、急加速時や高速道路の走行時には、最大で13%もの燃費向上が可能になるとしています。

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今回の水噴射システムでは、蒸留水の消費量は走行100km当たり数百ミリリットル程度のわずかな量で、水タンクへの蒸留水の補給は3000kmごとに1度行うだけで済み、万一水タンクが空になっても、通常のガソリンエンジンとして動作可能です。

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心配されるのが、冬季に水タンク内の蒸留水凍結することですが、ボッシュではエンジンの暖機で凍結した蒸留水を融解させるようにしているようです。

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これまでも水噴射エンジンは開発が試みられてきましたが、今回のボッシュのシステムはBMW M4 GTSに搭載されて市場に登場するように完成度が高く、今後の普及・発展が期待されます。

(山内 博・画像:ボッシュ)

マツダ、タイのパワートレイン工場にエンジン機械加工工場を新設し、現地化率を向上

マツダは、タイ・チョンブリ県のパワートレイン生産拠点「Mazda Powertrain Manufacturing (Thailand) Co., Ltd.」(MPMT)を増強すると発表しました。

今回のMPMT増強のポイントは、エンジン組立工場の年間生産能力を2018年上半期までに10万基に増強することと、同規模のエンジン機械加工工場を新設することです。

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上の画像はMPMTの完成予想図。左上がトランスミッション工場で、右下がエンジン工場になります。このエンジン工場で色の薄い部分が新設されるエンジン機械加工工場です。

2015年10月に本格稼働を開始したMPMTのエンジン組立工場は、現在のところ年間生産能力3万基で、日本から輸出したエンジン部品を組み立てて「SKYACTIV-D 1.5」および「SKYACTIV-G 1.3」の2種類のエンジンを生産しています。

現在MPMTで生産されたエンジンは、タイで生産される「Mazda2(日本名:マツダ デミオ)」に搭載されています。

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マツダは今回新たに221億円を投資して、エンジン組立工場の年間生産能力を3万基から10万基に増強するとともに、同規模のエンジン機械加工工場を新設することになります。

今回のMPMT増強で、現地でのエンジン部品の機械加工が可能になり、現地化率が向上して、タイでの車両、エンジン、トランスミッションの現地一貫生産体制が拡充されることになります。

マツダでは、今後同工場での生産機種に「SKYACTIV-G 2.0」を追加し、ASEAN域内のマレーシア、ベトナムにある車両生産拠点へエンジンを輸出する計画を立てており、MPMTが今後ASEAN地域のエンジン生産拠点になるものと見られます。

(山内 博・画像:マツダ)

内燃機関の可能性に挑む!日産が新型「QX50」に次世代エンジン搭載か?

日産自動車が先頃、VQエンジン(3.5L V6)の後継となる2.0L直4ダウンサイジング・ターボエンジン「VC-T」(バリアブル・コンプレッション・ターボチャージド)を10月のパリ・モーターショーで初公開すると発表しました。

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最高出力270psを発生する「可変圧縮比エンジン」で、各種情報によると「インフィニティQX50」を皮切りに2017年からシリーズへの搭載を予定しているようで、走行中に圧縮比を8から14まで変化させることができるのが最大の特徴となっています。

低回転域(加給圧:低)を使う巡航時では圧縮比を上げてトルクを引き出し、加速時など、高回転域(加給圧:高)を使うシーンでは圧縮比を下げることでノッキングの発生を防止します。

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これにより、VQエンジン比で約30%、競合する2.0直4ターボエンジン比でも約10%もの燃費低減を実現しているといいます。

機構的にはエンジン外部に設けたモーターでコンロッドの下端位置を変化させており、ピストンの上死点位置を上下方向に制御する方式。

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内燃機関に潜在する可能性を引き出すことに成功した点で、まさにエンジン史上に残る大発明ともいえそうです。

一方、8月29日には早稲田大学の研究グループが「熱効率」を最大で60%と、約2倍に高めるエンジンの試作機を開発、燃焼実験に成功したと発表しました。

実用化できれば、燃費を2倍に伸ばせる可能性があるとしています。

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現在の自動車用エンジンは、燃料を燃やしたガスの力でピストンを動かしていますが、多くの熱が逃げてしまうため「熱効率」は30%〜35%、最大でも40%と、燃料が持っているエネルギーの半分以下しか活用できておらず、理論上も50%を超えるのは難しいとされています。

そこで、開発品では複数の方向から音速に近い速さで燃料と空気を吹きこみ、シリンダの中心で衝突させることで、燃料を一点に集中させて燃焼させる仕組を採用。

これにより、燃焼する際の熱が外部に逃げ難くなるなど、より効率よくエネルギーを取り出すことができるそうで、研究室では排気量30ccの試作機を作り、燃焼試験を行ったところ、計算どおりの出力が得られたとしています。

エンジン周辺の温度もほとんど上がらず、熱が逃げていないことが確認できたとしており、研究室を率いる内藤教授のもとには自動車メーカー10社余りが視察に訪れ、技術協力の話を進めているそうです。

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ただ、クルマは加速したり止まったりと動作が一定ではなく、エンジンの燃焼も一定ではないため、燃料を常に一点集中で燃やし続けられるかなど、技術的な課題もあり、実用化には少なくとも5〜10年かかるとのこと。

このように、クルマの電動化が進む中、日産をはじめとする自動車メーカーや大学研究室では次世代のエンジン開発が本格化しているようで、内燃機関の可能性追求は今後も続くことになりそうです。

Avanti Yasunori・画像:日産自動車)

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【関連リンク】

早稲田大学 基幹理工学部
https://www.waseda.jp/top/news/44166

圧縮比が8から14まで可変する日産の次世代ターボエンジンはパリサロンで発表

日産の上級ブランド「インフィニティ」のモデルに搭載される『VC-T(バリアブル・コンプレッション・ターボチャージド)』・2.0リッター4気筒エンジンの単体画像が公開されています。

2016年9月のパリサロン(パリ・モーターショー)にて世界初公開される予定のVC-Tエンジン。日産が20年以上も開発を続けてきた「可変圧縮比エンジン」がついに実現するのです。

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10年以上前にリンク式コンロッドを用いた可変圧縮比エンジンの技術発表をしている日産ですが、今度のVC-Tエンジンについては、圧縮比が8から14の間で可変できるという数値が公開されているくらいで、具体的な機構についてはパリサロンでプレゼンテーションする予定となっています。

なお、圧縮比の低い状態はハイパフォーマンスを発揮するため、高い状態は高効率を可能にするためと、可変圧縮比のメリットを説明しています。

環境と動力性能を両立できる新世代エンジンは、まさにインフィニティという上級ブランドにふさわしいパワートレインとなるということなのでしょう。

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(山本晋也)

豊田自動織機がインドのエンジン生産工場で開所式を実施。新興国市場でのエンジン生産能力拡充が続く

豊田自動織機のインドにおけるエンジン生産子会社「Toyota Industries Engine India Private Limited(トヨタ インダストリーズ エンジン インディ・以下TIEI)」は6月23日に現地で開所式を行い、本格的な生産を開始しました。

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開所式には、インド政府重工業・公企業省のAnant G Geete大臣、カルナタカ州のSiddaramaiah州主席大臣などの現地行政トップ、在インド大使館磯俣秋男公使、トヨタ自動車役員など多数の関係者が出席しました。

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インドは、2012年の自動車生産台数が400万台を超える世界第6位(自動車部品工業会調べ)の自動車大国で、生産の約4割をディーゼルエンジン車が占めるディーゼルエンジンの一大マーケットです。

豊田自動織機とTIEIは、より多くのTIEI製のディーゼルエンジンを生産し、インドのエンジン生産の主要拠点としてインドの自動車関連産業の一翼を担うことが出来るよう努めたい、としています。

TIEIインド工場は、カルナタカ州ベンガルール・ジガニ工業団地に立地し、建屋面積は約4万平方メートル、2016年3月末の従業員数は約1,200名で、生産能力は年間108,000基となっています。

トヨタ系では先日ブラジルでもエンジン工場を開設したばかりで、新興国市場でのエンジンの現地生産能力を拡充する動きが続いています。

(山内 博・画像:豊田自動織機)

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アウディの2.5 TFSIが「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー」のクラス最高点を獲得

「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー」は、世界各国のモータージャーナリストにより投票が行われ、大賞の「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー」を筆頭に、「ベスト・ニュー・エンジン」や「ベスト・パフォーマンス・エンジン」のほか、排気量別(1.0L以下、1、1.4L〜1.8L、1.8L〜2.0Lなど、大排気量は4.0L以上)に賞が与えられます。

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大賞といえる「インターナショナル・エンジン オブ・ザ・イヤー」に輝いたのは、フェラーリ488 GTB/スパイダーに搭載されている3.9L V8ターボ(669Pps)で、「3.0〜4.0L」、「4.0L以上」、「パフォーマンス・エンジン」でも受賞するなど圧倒的な強さを見せたのがフェラーリです。

そして、2.0〜2.5Lカテゴリーでは、アウディの2.5 TFSIエンジンが受賞しました。なお、アウディは2.0〜2.5Lカテゴリーにおいて7年連続で受賞しています。

AUDI AG技術開発担当取締役のDr.ステファン クニゥシュは「この5気筒エンジンは、アウディでもっとも長い伝統を持つエンジンのひとつで、今後も開発を継続してゆきます」と語っています。

さらに「2.5 TFSIは、Audi RS Q3 performanceにおいて、圧倒的な牽引力、強化されたレスポンス、特徴的なサウンドによって人々を魅了しています。さらに、新型Audi TT RSには、新開発されたアルミ合金製の5気筒エンジンを搭載する予定です」と、さらに今後に期待を抱かせるコメントも残しています。

私もSUV離れしたRS3 スポーツバックやRS Q3の圧倒的なトルク感と速さには、驚かされましたが、審査員は「これほど力強い特性を備えたエンジンは、世界に数えるほどしか存在しません。しかも、この5気筒パワーユニットは、1980年代のグループBラリーカーの独特なエンジンサウンドを思い起こさせます。アウディの2.5 TFSIは、優れたパフォーマンスが印象的なだけでなく、その個性でも際立っています。この5気筒エンジンを通してアウディは1980年代の夢を現代へ と受け継ぐことに成功しています」と高く評価しています。

(塚田勝弘)

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アウディRS Q3は「大きすぎず、すこぶる速い!」という希有なSUV
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シェフラーが日産と協業して電動可変バルブタイミング機構を開発

欧州自動車部品大手のシェフラーは、日産自動車と共同で、ガソリンエンジン向け電動可変バルブタイミングコントロール(Electric Cam Phaser、以下ECP)機構を開発したと発表しました。

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両社は、この技術で加速レスポンスを向上させながら、CO2削減および排気性能向上にも対応することを狙っています。

従来の可変バルブタイミング機構の多くは、エンジンの油圧を駆動源とした油圧制御であったため、その作動範囲(エンジン回転数/温度)および応答速度に制限があり、エンジン冷機始動後ではある程度潤滑油が暖まるまでは作動できないという課題がありました。

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今回シェフラーが開発したECPは電動モータとギアボックスによってバルブの開閉タイミングを制御させるので、すべての条件下における応答時間の向上や変換角度を拡大することができ、油圧制御と比較して高度で繊細な制御を行うことが可能になる利点があります。

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また、アイドリングストップなどのストップスタートエンジンアプリケーションでは、最適なバルブタイミングをエンジンの再始動前に設定することができ、排気エミッションの低減、燃費の向上、加速レスポンスの向上などをもたらすことができます。

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シェフラージャパンの代表取締役社長 四元伸三氏は

「今回、日産との協業によりシェフラー初となるECPを提供できることを大変光栄に感じています。ECPは単体の部品開発とは異なり、エンジンの一部となるシステム開発になるため、精緻なすり合わせが必要になります。今回の開発は、シェフラージャパンの技術者が日産の開発チームと緊密に連携をとり、さらにドイツ本社の開発チームも日本を訪れて日産とともにワークショップを開くなど、シェフラーのローカルとグローバルR&Dの機能が融合した成果と考えています。(今後)さらに日本のR&D体制を強化しながら、日本メーカーの開発に貢献していく考えです。」

とコメントしています。

今回、欧州自動車部品大手のシェフラーが日産と協業してECPを開発したことで、国内の自動車メーカーと外国の部品メーカーとの取引が増加すれば、国内の自動車部品業界が影響を受けることになり、今後の動向が注目されます。

(山内 博・画像:シャフラージャパン)