Motor Fan's YEAR 2016

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モトチャンプ

2035年にPHVの世界市場が32倍、EVが17倍に拡大する!?

世界のマーケット情報や企業情報のレポートを手掛ける富士経済が、次世代自動車の市場動向を調査、その結果をまとめた「2016年版 HEV、EV関連市場徹底分析調査」を公開しました。

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報告書によると、現状ではHVが次世代自動車市場を牽引しているものの、2020年頃を起点にPHV、EVの市場拡大ペースが加速。2030年頃には拮抗し、その後PHVとEVがHVを抜き去り、逆転するとしています。

PHV:欧州、北米、中国で2025年頃より大幅な需要増加
EV:2015年に市場が大きく伸張。今後中国の需要増加がけん引
HV:日本を中心に市場が拡大。欧州や中国は伸び悩む

2035年頃にはPHVの世界市場が欧・米・中を中心に665万台(2015年比:約32倍)まで拡大、EVについても567万台(同 約17倍)に達するとしており、共にHVの468万台(同 約3倍)を上回ると予測。

欧米各メーカーを中心としたPHVとEVの多車種展開により、市場の伸びが予想されるとしています。

TOYOTA_PRIUS_PHV

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その背景として、北米のZEV(Zero Emission Vehicle)規制により、HVがZEV認定の対象から外れたことや、各国に於けるPHV・EVへの優遇策(購入補助他)による普及拡大とそれに伴う車両の低価格化、急速充電器の普及、二次バッテリーの容量アップによる航続距離拡大などをあげています。

次世代自動車の更なる普及拡大には世界的に需要が高いSUV、ピックアップトラックの電動化が有効としており、今後の企業戦略に活かせそうな内容となっています。

Avanti Yasunori ・画像:富士経済、トヨタ自動車)

トヨタ、ホンダからFCVの登場で、次世代エコカーの本命争いが激化!?

何度かトヨタ「MIRAI」に試乗する機会があり、先日も狭い山岳路で乗りました。ホンダも出したとなると、燃料電池車(FCV)が次世代エコカーの本命でキマリ? と思う方もいるでしょうが、EVやPHV、クリーンディーゼルなど多様なエコカーが共存、競争していくのではないでしょうか。

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水素はその製造方法から運搬や貯蔵などインフラ面を含めた課題があるほか、FCVが採用する「固体高分子形(PEFC)」と呼ばれる燃料電池の発電効率は30〜60%、経済効率性を考えると30〜40%程度という現実もあるようです。

そうなると、ガソリンエンジンで最高レベルの熱効率と大差ないでは? などと、クルマがひと際重く感じる狭い山岳路でMIRAIのステアリングを握りながら考えていた次第。

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テスラモーターズのイーロン・マスクCEOは、FCVについて否定的な発言をしていますが、FCVはある意味EVの一種ともいえますし、モーターならではの走りだけとってもEVとの違いを見いだすのは難しいでしょう。

テスラのモデルSなどは、速さも航続距離もEVの平均値を大きく上回っていて、確かに新しい高級車像、スポーツカー像を提案していますが、まだまだ高嶺の花。

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また、FCVも日本では200万円もの補助金があっても誰もが買えるモデルとは言いがたく(もちろんインフラ整備も含めて)、こちらもまだまだ「自分が乗る(乗れる)」クルマとは言いがたいのが現状です。

また、アメリカのカリフォルニア州のZEV規制という課題もあり、ZEV対象車から外れたハイブリッド(HV)の代わりにFCVを売りたいという思いもトヨタやホンダにはあるかもしれません。

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日本で余っている副生水素の活用(コスト面を考えるとFCV用としては容易に使えない)、FCVがその後の普及するに連れて国内では不足する可能性のある水素をどうやって確保するか、などの課題にも直面しそう。

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しかし「MIRAI」も「CLARITY FUEL CELL」もFCVの先駆者(車)として一歩踏み出した意義は大きく、数々の課題をクリアして現在のハイブリッドカーのように普及する日がいつ来るか、そんなことを考えられるのが「MIRAI」も「CLARITY FUEL CELL」の存在価値といえるでしょう。

(文/塚田勝弘・写真/小林和久)