Motor Fan's YEAR 2016

三栄書房

サンプル

モトチャンプ

ノートe-POWERの登場でますます混沌とする「HV&EVのセカイ」を整理してみる

日産から発売されたノートe-POWERは、ガソリンエンジンで発電し、その電力をバッテリーに蓄え、モーターを駆動する「シリーズハイブリッド」という方式を採用する。

2016120e_power-gymkhana_052

ホンダの現行フィットなどはガソリンエンジンの力で走行することが基本で、発進時や急加速時などにモーターが手助けするもので、これを「パラレルハイブリッド」という。

4150917-fit_004h

ハイブリッドの代名詞ともいえるトヨタのプリウスは、パラレルハイブリッドとシリーズハイブリッドの両方の特徴を持った方式で「シリーズ・パラレルハイブリッド」などと呼ばれる。ハイブリッドはいずれの方式でもモーターのみで走るモードが存在することが多い。

20161201_02_02

これら3つのハイブリッド方式をまとめて「フルハイブリッド」や「ストロングハイブリッド」と呼ぶ。

対して、日産のセレナなどが採用する簡易的なものを「マイルドハイブリッド」と呼ぶ。「ストロングハイブリッド」と「マイルドハイブリッド」の境界線は明確ではないのが現状。

160824-01-11-1200x900

日産リーフのような「EV(電気自動車)」は、クルマを充電器につないで電気を充電し走るものだが、それだと充電切れでストップしてしまう恐れがあるため、充電用に小さなエンジンを積んだタイプもある。これを「レンジエクステンダー付きEV」と呼ぶ。

BMW i3は普通のEVと「レンジエクステンダー付きEV」が用意されている。「レンジエクステンダー付きEV」と「シリーズハイブリッド」は構造的似ているが、エンジンの存在が常に充電のため(シリーズハイブリッド)と、充電切れ対策のため(レンジエクステンダー)の違いがある。

161003-02-02-1200x873

さらに、ハイブリッドでありながら、充電器につないで電気を充電できる「プラグインハイブリッド」というものも存在する。三菱のアウトランダーPHEVなどがこのタイプ。「プラグインハイブリッド」はHVとEVの中間的存在ともいえる。

1506_ph_1-2_fr

トヨタ・ミライやホンダ・クラリティ フューエル セルなどの「燃料電池車」は、水素を使って発電し、その電気を使って走るクルマ。シリーズハイブリッドのエンジンの部分を燃料電池に置き換えたものと考えればわかりやすい。燃料電池というのは電池というよりも水素発電装置と考えるといい。ただし、水素を燃やすのではないところがポイントだ。

mir1411_01 c160526b_001h

各社はそれぞれ販売戦略もあって、いろいろな名称で名前をつけているが、そろそろしっかり整理して、どんな方式なのかが一目でわかる表示が必要な時期に来ているのではないか……と感じる。

(諸星陽一)

トヨタがFCV「ミライ」の技術を大型トラックに応用へ

トヨタ自動車が米カリフォルニア州で、大型トラックへのFC(燃料電池)搭載を目的とした技術・事業化スタディを進めると発表しました。

TOYOTA_FC-TRUCK

同社はこれまでに市販を実現したFCV「ミライ」をはじめ、FCフォークリフト、家庭用の定置式燃料電池などで技術開発・商品展開を推進しており、経済産業省主導の「低炭素社会システム実証プロジェクト」では日野自動車と共同で「FCバス」を開発

2020年の東京五輪に向けては、観客や出場選手の送迎用等に100台を超えるFCバスの投入を予定しています。

TOYOTA_FC-BUS

また2017年3月にトヨタブランドからFCバスの販売を予定しており、東京都交通局が運行する路線バスとして2台が採用される見込み。

同社は今後、大型FCトラックの実現により、「貨物輸送におけるゼロ・エミッション」に貢献することを視野に入れて調査を行なう予定で、プロジェクトの進捗に応じて、順次進展状況を公表するとしています。

Avanti Yasunori・画像:トヨタ自動車)

【関連記事】

トヨタが東京五輪に向けて100台超の燃料電池バスを投入!
http://clicccar.com/2016/11/02/413197/

トヨタが工場に燃料電池発電を導入!「工場CO2ゼロチャレンジ」の実現を目指す
http://clicccar.com/2016/09/15/399446/

京都市がFCV・ミライを活用したカーシェアリング事業をスタート!
http://clicccar.com/2016/08/17/393190/

トヨタ自動車、太陽光で製造する「CO2フリー」水素の実証試験へ!
http://clicccar.com/2016/07/04/383345/

トヨタが2020年に水素でFCVを生産!年内に実証実検へ
http://clicccar.com/2016/02/11/353500/

トヨタがPHV/FCVに加えて、「EV」開発にも本腰を入れる理由とは?

トヨタ自動車が2016年度上期(4〜9月)の決算発表で、今後のパワートレーン戦略について明らかにしました。

TOYOTA_PRIUS_PHV

それによると、短期的には重点的に投資している従来車の燃費向上や、排ガスのクリーン化促進、HVのバリエーション拡充に取り組む予定で、中期的にはPHV、FCVに加え、EVの開発にも力を入れる方針といいます。

TOYOTA

同社はこれまで日産などに比べ、バッテリー容量に起因する航続距離の課題から、EV開発には積極的ではありませんでした。しかし昨今、バッテリー性能が向上しつつあることや、欧州勢の電動化推進状況を踏まえ、EV開発にも力を入れることにしたもの。

FCV開発からの方向転換という訳では無く、当初からの計画に則ったものであり、構造的に難易度が高い燃料電池車から優先的に実現したというスタンス。

FCVは水素の充填時間や一充填あたりの航続距離など、ほぼ現行車と同様に扱えるメリットが大きく、排ガスを一切出さないため、「究極のエコカー」とされています。

TOYOTA

FCVもモーターで走行する一種のEVであり、外部充電する代わりに、水素燃料を使ってFCスタック(燃料電池)で自車発電する構造で、技術的にはHV/PHV/FCVからEVへの移行は同社にとって比較的容易なもの。(その逆は難易度大)

TOYOTA_PRIUS_PHV

同社は2017年初めに新型「プリウスPHV」の発売を予定しており、2018年には「カローラレビン」のPHV投入を予定するなど、PHVの展開を加速する構えのようですが、主力市場の米国では、カリフォルニア州で「ZEV(Zero Emission Vehicle)」規制強化が待ち受けています。

2018年以降、排出ガスを一切出さない電動車(EV、FCV)の販売比率が、現状の14%から16%に引き上げられる見通し。

同州以外でもZEV普及に積極的なことや、欧米勢がEVの開発に余念が無いことから、トヨタとしても持ち前の開発力と資金力を活かし、「EV」の品揃えを充実させ、フルライン体制で米国の規制強化を乗り切る考えのようです。

Avanti Yasunori

【関連記事】

メルセデス・ベンツなどドイツ3強がEV投入を加速!
http://clicccar.com/2016/10/19/409118/

BMWが米・テスラへの対抗で全モデルにEVを設定?
http://clicccar.com/2016/10/17/408715/

ルノーのキュートなEV「ZOE」、航続距離が400kmに伸長
http://clicccar.com/2016/10/16/408352/

フォルクスワーゲンが2020年に「MEB」搭載の新型EVを投入!
http://clicccar.com/2016/10/08/404829/

BMWがEV、電動化による新戦略「ナンバーワン・ネクスト」を発表!
http://clicccar.com/2016/03/28/362878/

世界の自動車メーカーが環境規制対応で電動化を加速!
http://clicccar.com/2015/06/22/312732/

ホンダが水素インフラ不要の高圧水電解型「70MPa スマート水素ステーション」の実証実験を開始

ホンダは、太陽電池パネルの電力で水を電気分解して高圧水素を製造できる充填圧力70MPa(メガパスカル)の「70MPa スマート水素ステーション(70MPa SHS)」の実証実験を東京都江東区青海で開始したと発表しました。

1477275315683

70MPaの高圧水素を製造できる水電解型水素製造ステーションは世界初(ホンダ調べ)となります。

この実証実験は、環境省のCO2排出削減対策を強化・誘導する実証事業として、太陽光エネルギー由来の水素を製造する70MPa小型水素ステーションを実際に運用した場合の効果を実証するために実施されます。

70MPa SHSの特徴は、①水素ステーションまで水素を輸送するインフラが不要、②70MPaの高圧で、市販されているFCV(燃料電池自動車)を満タンにできる、という点です。

14784876149141478487615018

この70MPa SHSを市街地に設置して、ホンダのFCV「クラリティ フューエル セル」と可搬型外部給電器「Power Exporter 9000」を使用すれば、FCVが走行するときのCO2を削減できるとともに、停電時にはFCVを家庭やオフィスの発電設備として活用することができます。

今回の実証実験を通じてホンダは、FCVが自動車として走行するときにCO2排出量を削減できるだけではなく、駐車時には発電設備として機能することをアピールして、FCVの普及を推進するねらいがあるようです。

(山内 博・画像:ホンダ)

世界初!ホンダが70MPaの高圧水素を充填できる「スマート水素ステーション」を実証開始

ホンダが世界初となる充填圧力70MPaを実現したスマート水素ステーション「70MPa SHS」を都内に設置し、実証実験を開始したと発表しました。

HONDA_SHS

この実証実験は、環境省による 「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」に基づき、太陽光エネルギー由来の水素を製造する小型水素ステーションの運用効果を実証するもの。

開発品は従来型から小型化を図っており、約6平方メートルのサイズに収めた独自の高圧水電解システム「Power Creator」により、圧縮機を使わずに77MPaの高圧水素を最大で1日あたり2.5kg製造することが可能で、製造した水素を約18kg貯蔵できるそうです。

水素の充填圧力をこれまでの35MPa→70MPaに高めたことで、1回の充填で「クラリティ フューエル セル」が約750km走行できる量の水素が供給可能になっています。

HONDA_SHS

今回の実証実験では、同ステーションと可搬型外部給電器「Power Exporter 9000」を使って、実際の都市環境下でのCO2削減効果と緊急時における移動可能な発電設備としての実用性を検証します。

HONDA_FCV

政府がFCVの販売台数を2025年までに20万台、2030年までに80万台の普及を目指すなか、水素を供給する水素ステーションの設置費用が従来のガソリンスタンドに比べて約5倍と高額なことから、拡充に時間がかかっている状況。

そこでホンダは岩谷産業と共同で、ユニット式の小型水素ステーション「SHS」(スマート・ハイドロゲン・ステーション)を開発、設置に向けた工期やコストの抑制を目指しているという訳です。

充填圧35MPaのSHSは、すでにホンダの青山本社ビルや地方自治体などで運用が始まっており、今回の70MPa版の登場に伴い、FCVへの水素供給における実用性が高まったことで、水素ステーションの拡充に威力を発揮しそうです。

Avanti Yasunori・画像:HONDA)

【関連記事】

ホンダが青山本社ビルに都内初の「スマート水素ステーション」を設置
http://clicccar.com/2016/05/13/371447/

2025年度までに320ヵ所へ!経産省が水素ステーション展開促進
http://clicccar.com/2016/03/22/361116/

ホンダのスマート水素ステーションは燃料電池車の普及を後押しする
http://clicccar.com/2016/03/18/360400/

ホンダが燃料電池車「クラリティ フューエル セル 」を発売開始!
http://clicccar.com/2016/03/10/359529/

岩谷産業、国内初のコンビニ併設の水素ステーションを開所
http://clicccar.com/2016/02/22/355555/

トヨタが東京五輪に向けて100台超の燃料電池バスを投入!

トヨタ自動車が2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、都内を中心に100台超の水素で走る「FCバス」導入を予定しているそうです。

TOYOTA_FC-BUS

経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム実証地域」として、トヨタのお膝元の愛知県豊田市が選定され、2010年8月に「豊田市低炭素社会システム実証プロジェクト」を立ち上げたことを受け、日野自動車と共同で「FCバス」を開発。

2013年11月に豊田市で実証試験運行をスタートさせ、昨年1月には「FCバス」を豊田市へ納車、豊田市内を走る基幹バスとしての営業運行を通じて、実用性を検証、着実にノウハウを蓄積してきました。

この「FCバス」では出力を高めるため、同社が開発した燃料電池車「MIRAI」用の燃料電池システム「TFCS」を2基搭載。高圧水素タンクを10本(総容量600L)搭載しており、1回の水素充填で200km以上の走行が可能。

TOYOTA_FC-BUS

実証試験運行で得た知見をもとに、外部電源供給(V2H:Vehicle to Home)システムに改良を加えており、非常時には学校体育館等の避難所照明用の電力を約1週間程度(最高出力9kW、235kWh)を供給できるそうです。

同社は今年10月21日、これまで走行実証を重ねてきた「FCバス」を2017年3月にトヨタブランドから販売、東京都交通局が運行する路線バスとして2台が採用される予定であることを明らかにしました。

TOYOTA_FC-BUS

今後、順次導入台数を増やし、東京オリンピック・パラリンピックでの活用を通じて「水素社会」の実現に貢献すべく、2018年からは新型のFCバスによる導入拡大を目指し、鋭意開発を進めているそうです。

2020年の東京五輪開催時には、都内を走る同社の燃料電池バスの姿があちこちで見受けられることになり、海外からも大きな注目を集めそうです。

Avanti Yasunori・画像:トヨタ自動車)

ホンダのFCV「クラリティ フューエル セル」がEPA評価で航続距離589kmを達成!

ホンダが年末に米国に投入予定のFCV(燃料電池車)「クラリティ フューエル セル」が、EPA(米国環境保護庁)による評価で航続距離366マイル(約589km)を達成したそうです。

HONDA_CLARITY

テスラ「モデルS P100D」は315マイル(約507km)、トヨタ「MIRAI」は312マイル(約502km)となっており、ホンダによれば米国で販売されている電動車の中で最高の航続距離としています。

HONDA_CLARITY

「クラリティ フューエル セル」ではFCスタック(燃料電池本体)をV6エンジン並みにコンパクト化することでエンジンルーム内に搭載、5名がゆったりと乗車できるキャビンを実現しているのが特徴です。

HONDA_CLARITY

同社は水素ステーション数が多いカリフォルニア州で年内にリース販売(500ドル/月)を予定しており、燃料となる水素は無償提供されるようです。

2017年には同モデルのシリーズ車として、PHVやピュアEVが追加される模様で、2050年を目処に、CO2企業総排出量50%減を目指すホンダの今後の電動化戦略が注目されます。

Avanti Yasunori・画像:HONDA)

【関連記事】

ホンダがFCV「クラリティ」で目指したのは「普通に使えるクルマ」
http://clicccar.com/2016/03/15/360079/

ホンダが燃料電池車「クラリティ フューエル セル 」を発売開始!
http://clicccar.com/2016/03/10/359529/

ホンダから「FCV」登場、温室効果ガス削減に寄与!
http://clicccar.com/2015/12/04/341690/

「COP21」温室効果ガス削減に向けてFCVへの期待上昇!
http://clicccar.com/2015/12/03/341748/

電通の調査で「FCV」が2016年有望商品ランキング首位に!
http://clicccar.com/2015/11/30/341334/

【関連リンク】

Honda Clarity
https://automobiles.honda.com/clarity

EPA(Environmental Protection Agency)
https://www.epa.gov/fuel-economy

BMWがFCVの試作車を公表。航続可能距離500km以上、価格は既存車から1割増しで投入へ

トヨタとスポーツカーとFCV(燃料電池車)の両面で提携しているBMW。FCVのテスト車両および市販化までのロードマップを紹介するプレス向けの説明会を開催しました。

BMW_FCV_01

公開されたテスト車両は、南フランスのテストコースで開催された「BMW Group Innovation Days 2015」などでデモ走行も披露されている5シリーズ・グランツーリスモがベース。

燃料電池システムはトヨタのそれで、5シリーズ・グランツーリスモ用にアジャストされているそう。

なお、FCVの試作車はほかにも2シリーズ アクティブツアラーなどがあります。

BMW_FCV_05公開された試作車は、電気モーターの出力が150kW/200psで、最高速は180km/h、0-100km/h加速は8.4秒、水素充填量および航続可能距離(EUサイクル)は4.5kgで450km、7.1kgで700kmとなっています。

BMW_FCV_02

BMW_FCV_03

BMWもトヨタとの協業により、FCVとして技術的には現在でも市販化できるところまで酷暑、極寒の地を含めてテストされているのでしょうが、2020年までに市販化とアナウンスしたのは、水素ステーションなどの「インフラ整備」そして、「価格面」をクリアする必要があるとのこと。

P90189150_highRes_bmw-group-innovation

インフラ整備は、ドイツでは2018年までに140の水素ステーションが設置予定で、導入状況により2023年までに260追加される見込み。

なお、トヨタとの協業は、燃料電池システムの技術面だけでなく、水素インフラ整備を官民に働きかける、充填システムなどといった業界に統一規格化を主導するという面も大きいそうです。

価格は、従来のBMW車に対して1割までの価格上昇がユーザーに許容される範囲と予想、現時点では残念ながらクリアできないそう。

BMW_FCV_04BMW_FCV_06

ほかにも、ベース車に対して居住性や積載性が大きく犠牲にならず、BMWらしい「駆け抜ける歓び」ももちろん追求されています。

P90189046_highRes_bmw-group-innovation

今回は残念ながらBMW i8をベースとしたFCVの実車はなくプレゼンの写真だけでしたが、BMWならではのFCVが従来モデルよりも1割アップの価格でリリースされればかなりの反響がありそうです。

(文/写真 塚田勝弘)

住友商事、米国USH社と中大型車用燃料電池で業務協力契約を締結

大手商社の住友商事は、グループ会社の米州住友商事を通じてUS Hybrid社(USH社)と、USH社の中大型車用燃料電池の生産・量産化支援等に関する業務協力契約を締結したと発表しました。

201608081811_1

USH社は、カリフォルニア州トーランスに本拠を置き、1996年から中大型車用の燃料電池・電気パワートレインに関する事業を行っています。住友商事は、今回のUSH社との契約で自動車メーカーを含む日系企業に、大型バス・トラックに好適なUSH社の中大型車用燃料電池技術を売り込むことを目指しているようです。

201608081811_2

USH社は、カリフォルニア州の路線バスで燃料電池を搭載した大型バスの実証実験を行った実績があり、その実証実験で21,000時間を超える耐久性能と、故障なしで90パーセント以上の稼働率を記録し、米国エネルギー省傘下の国立研究機関からも高く評価されています。

201608081811_3-266x170

また、従来から燃料電池の課題と言われてきた、水素と酸素の電気化学反応で燃料電池内部に発生する生成水が寒冷地の冬季に凍結する問題に関して、USH社は燃料電池内部に発生する生成水の制御を改善する技術を開発した点で注目されています。

一方、トヨタの「ミライ」やホンダの「クラリティ」に代表される小型乗用車用燃料電池技術の分野で先行している日本の自動車メーカーでは、大型バス・トラック向けの中大型車用燃料電池については、トヨタと日野自動車が2015年に燃料電池バスを豊田市で実証実験する試みを行っています。

今回の住友商事グループによる中大型車用燃料電池事業に関する動きが、今後日本の自動車メーカーに、どのように拡大していくかに注目が集まっています。

(山内 博・画像:住友商事)

京都市がFCV・ミライを活用したカーシェアリング事業をスタート!

京都市は昨年、4人乗りFCV(燃料電池車)のトヨタ・ミライを3台導入しました。

KYOTO

市民を対象とした モニター制度によるFCVカーシェアリングを約1ヵ月間実施するなど、温室効果ガスの排出が無く、将来のエネルギーとして中心的な役割を担うことが期待される「水素エネルギー」の普及拡大に取り組んでいます。

そして同市は今回、水素エネルギーの更なる普及拡大に向け,「タイムズ」と共同で全国初となるFCVを活用した本格的な有料カーシェアリング事業をスタートさせました。

日祝日(振替休日含)と市内水素ステーションの休業日を除く、今年の8月10日(水)から来年の3月24日(金)までの期間に渡って実施しており、3台の車両はタイムズカーレンタル京都新幹線口店で貸し出しています。

TOYOTA_MIRAI

・貸出 9時30分〜22時/返却 8時〜22時
・返却前の水素充填は不要
・返却時に走行キロ換算料金により店舗で精算

利用予約は3ヵ月前から可能で、最長利用期間は7日間。

利用料金(消費税込)は6時間までが9,000円、12時間までが11,000円、24時間までが13,000円、追加1日ごと 11,000円、追加1時間ごと 1,500円となっています。

これから秋にかけて行楽シーズンとなるなか、紅葉の京都をクリーンエネルギーで走行するFCVで巡るのも良いかもしれません。

Avanti Yasunori

【関連リンク】

京都市:燃料電池自動車「ミライ」を活用した有料カーシェアリング事業について

京都市FCVカーシェアリング事業 | レンタカーならタイムズカーレンタル

アンモニアがエネルギーキャリアに!アンモニアから水素燃料を製造する技術開発に成功

昭和電工は共同研究により、アンモニアから燃料電池自動車用高純度水素を製造する実用可能な技術の開発に世界で初めて成功したと発表しました。

20170719_1

これにより、アンモニアを原料とした水素ステーション、すなわちアンモニア水素ステーションの実現に向け大きく踏み出したことになり、燃料電池自動車の普及に欠かせない新しい水素インフラ構築が進展します。

今回の共同研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「エネルギーキャリア」(管理法人:国立研究開発法人 科学技術振興機構【理事長 濵口 道成】)の委託研究課題「アンモニア水素ステーション基盤技術」によるもので、昭和電工、広島大学、産業技術総合研究所、豊田自動織機、大陽日酸が参加して行われました。

アンモニアは化学式「NH3」で示されるように多くの水素を含んでおり、エネルギーキャリアとして期待されています。

エネルギーキャリアとは、液体水素やメチルシクロヘキサン、アンモニアなど水素を多く含む物質のことで、エネルギー生産地で合成して、化学的に安定な液体として保存、運搬し、エネルギー消費地で液体から水素を取り出すか直接エネルギーに変換して使用する形で利用されます。

しかしながら、アンモニア水素ステーション実現のためにブレイクスルーしなければならない大きな技術障壁としては次の3点がありました。

その技術障壁とは、①高活性高耐久性アンモニア分解触媒、②残存アンモニア濃度を0.1ppm以下にでき、再生が容易なアンモニア除去材料、③水素純度99.97%を達成できる精製技術、の3点です。

今回の共同研究では、世界トップレベルのアンモニア分解用ルテニウム系触媒の調製、アンモニア除去材料の作製及び水素精製技術を確立することにより、それらを用いたアンモニア分解装置、残存アンモニア除去装置及び水素精製装置を実証システムの1/10スケールで開発することに成功しました。

20160719_3

これらの装置を組み合わせることで、世界で初めてアンモニアを原料とした燃料電池自動車用水素燃料の製造が可能となりました。

現在、研究チームでは昭和電工・川崎事業所においてシステムの実証を行うべく、プロセスの検討を行っています。

今回の成功により、アンモニアを燃料電池自動車用水素燃料へ利用するための基本的な技術が確立したことになり、将来、アンモニアを水素の運搬に利用する燃料電池自動車用水素ステーションの実現が期待されます。

20160719_5

今後、研究グループでは、アンモニア分解装置、アンモニア除去装置、水素精製装置を連結させ、10Nm3/hで水素を供給できる実証システムの開発を経て、アンモニア水素ステーションの実現を目指します。

同ステーションが実現すれば、アンモニアからの高純度水素を燃料電池自動車や燃料電池フォークリフトへ利用することができ、燃料電池自動車普及のネックになっている水素インフラ構築に新しい手段が登場することになります。

この技術の詳細は、2016年7月20日に日本科学未来館で開催されたSIPエネルギーキャリア公開シンポジウムで発表されました。

(山内 博・画像:昭和電工)

トヨタ自動車が「環境ブランド調査2016」で首位を獲得!

トヨタ自動車が「環境ブランド調査2016」で総合ランキング1位を獲得しました。

TOYOTA_MIRAI

この調査は、日経BP社が地球環境の保全と企業経営の持続的発展を支援する目的で行っているもので、インターネット経由で約2万人を対象に主要560社の環境活動が一般の消費者にどう伝わっているかについてアンケートを実施しています。

企業ランキング付けのベースとなる「環境ブランド指数」は環境情報接触度、環境コミュニケーション、環境イメージ、環境評価の4つの指標で構成されており、トヨタ自動車は総合評価で昨年の「97」から5.6ポイント伸ばして「102.6」を獲得。

TOYOTA_2016

昨年まで5年間首位を維持してきた「サントリー」の環境ブランド指数99.3を抜いて2009年以来、7年ぶりにトップの座に躍り出ました。

同社はハイブリッド車「プリウス」の商品イメージなどが奏功、2000年の調査開始から10年間に渡って1位を維持していましたが、2010年には「エコナビ」を打ち出したパナソニックに、また2011年から5年間は「水と生きる」の企業メッセージで強力なブランドを築いたサントリーに1位の座を譲っていました。

TOYOTA_PRIUS

今回の調査で首位に返り咲いた背景には、量産車として世界初の燃料電池車「ミライ」やハイブリッド車の4代目「プリウス」を発売したこと、昨年10月に打ち出した「トヨタ環境チャレンジ2050」で社会や会社の未来像を示したことなどがあるようです。

消費者が持つ同社のブランドイメージとして、「省エネルギーへの貢献度」で1位(日産3位、ホンダ4位、マツダ5位、ダイハツ8位、スズキ15位)、「リサイクルへの貢献度」で12位、「廃棄物削減への貢献度」で2位、「生物多様性や動植物資源の保全への貢献度」で7位にそれぞれランキングされています。

Avanti Yasunori ・画像:日経BP、トヨタ自動車)

【関連記事】

「2016年のもっともスマートな企業」50社にトヨタがランクイン!
http://clicccar.com/2016/07/05/383573/

グローバルWebサイト調査で「トヨタ自動車」が高評価!
http://clicccar.com/2016/06/18/379465/

ビジネスマンが勧める企業ランキング、2016年の1位はトヨタ自動車!
http://clicccar.com/2016/05/16/372267/

トヨタ自動車が企業情報サイトのユーザー評価で首位に!
http://clicccar.com/2015/12/16/343576/

トヨタ、世界ブランド価値ランキング自動車部門で1位!
http://clicccar.com/2014/05/31/257810/

バイオエタノールを燃料に使った日産のレンジエクステンダーEV「e-Bio Fuel-Cell」は何がスゴイ?

SOFC(固体酸化物型燃料電池)の車載では世界初の試みとしている日産自動車の「e-Bio Fuel-Cell」。エタノール燃料を使った車上(水素)改質型のレンジエクステンダーEVという位置づけになります。

IMG_2091

今回の日産「e-Bio Fuel-Cell」のように、エタノールなどのアルコール燃料、ガソリンなどの炭化水素燃料を使った車上改質は、80年代後半から1990年代後半にかけて各自動車メーカーが研究してきました。

しかし、改質器の小型化や熱対策や耐久性、始動性や応答性などが解決できず、高純度の水素を使ったSOFC(固体高分子型燃料電池)へと収斂していったという流れがあります。

こうした課題は、日産が発表した「e-Bio Fuel-Cell」の課題でもあるのでしょうが、こちらでも紹介したように、FCスタックの熱対策や作動温度のさらなる低温下などにより、かつてとは状況が違うというのも「絵空事ではない」ことにつながっているようです。

IMG_2129

燃料となる100%エタノールやエタノール混合水は、ブラジル、アメリカ、タイなどの世界中で普及しているという状況もあります。

食料と競合してしまう(バイオエタノール生産か食料か)フード・コンフリクトという問題も、サトウキビなどの残渣からバイオエタノール生産に成功するなど、解決策も芽生えつつあります。

なお、エタノール混合水の比率は水が55%、エタノールが45%となっています。この比率は改質器でエタノール混合水から水素を取り出す際の化学式の主反応によるものだそうで、これ以上水の割合を増やしても反応はするが、効率が悪くなるそう。

IMG_2096

日産が発表した「e-Bio Fuel-Cell」は、100%エタノールもしくは水を混ぜたエタノール混合水を補給する燃料タンクが30L前後で済み、航続可能距離は600km以上。

60%前後という燃焼効率の高さも利点で、ガソリンエンジンが究極的には43〜44%というところを目指すとされていますから、1.5倍以上という効率の高さが目を惹きます。

日産の算出によると、Cセグメントクラスを前提としたランニングコスト(参考値)は、ガソリンエンジン車が9.0円/km、「e-Bio Fuel-Cell」が3.1円/km、EVが2.9円/kmと、EV並のコストで済むうえに、エタノール燃料もしくはエタノール混合水の補給もすぐ完了し、EVのように長時間充電する必要がありません。

ガソリンや水素よりもインフラの制約が低く、自分で補給することも難しくないため、日本だけでなく世界的にガソリンスタンドの減少にも対応できるほか、高純度の水素が必要なPFEC(固体高分子型燃料電池)を採用するトヨタMIRAIやホンダFCXクラリティなどのような高額な水素スタンドの必要もありません。

e_bio_fuell_cell_04

日産では、同システムを短距離走行、長時間使用のデリバティブ・ユースを想定。バッテリーEVを軸に、エタノール燃料を使ったレンジエクステンダーEVでトヨタやホンダなどの高純度水素を使ったFCVに対抗する構えを取りつつあるといえそうです。

(文/写真 塚田勝弘)

【関連記事】

2020年にも実用化!? 商用バンを想定したバイオエタノール燃料使用の「e-Bio Fuel-Cell」技術
http://clicccar.com/?p=379044

2020年にも実用化!? バイオエタノール燃料使用の「e-Bio Fuel-Cell」技術

バッテリーEVを次世代エコカーの主軸に据えている日産自動車。

500km以上の航続可能距離を目指すなど、今後もバッテリーEVを主役と据えながらも、バイオエタノール燃料を使う、新しい燃料電池システム「e-Bio Fuel-Cell」の技術を発表しました。

e_bio_fuell_cell_03

技術説明会では副社長の坂本秀行氏(下の写真左)、日産自動車 総合研究所所長の土井三浩氏(下の写真右)が同技術の利点などを解説。

e_bio_fuell_cell_02

「e-Bio Fuel-Cell」システムは、バイオエタノール燃料を使うレンジエクステンダーという位置づけで、同システムを積んだプロトタイプもテストされているそうで、「絵空事ではない」と強調しているのが印象的でした。

今回、日産が発表したのは、バイオエタノール(100%もしくは、水とエタノールの混合水)をタンクに補給し、改質器により水素に改質、SOFC(固体酸化物型燃料電池)と呼ぶFCスタックが発電を行ってバッテリーに蓄電し、モーターによる電動駆動するというシステム。

e_bio_fuell_cell_06

SOFC(固体酸化物型燃料電池)は、700〜1000℃(技術革新により年々下がっているが動作温度には700℃は必要)にもなる高温の固体電解質を使った燃料電池で、家庭用エネファームのひとつのタイプとしても採用。大阪ガスやトヨタ、アイシンなどにより化石燃料を使い、発電効率46.5%を実現しすでに市販化されています。

e_bio_fuell_cell_05

SOFCは、酸素と反応する燃料であれば発電し、トヨタMIRAIが採用するPEFC(固体高分子型燃料電池)のように高純度の水素が不要で、純度の低い水素でも発電でき、コンパクトな車載システムの設計が可能というのが利点です。

さらに、高温で作動するため希少金属を使った高活性な触媒も不要というメリットもあります。

しかし、SOFCは発電効率が一般的に40〜70%(日産の同システムは60%)といわれている高さが魅力でも、700℃にもなる高温への対策が課題でした。そこで、FCスタックの材料をセラミックから金属ベースに変更をもくろみ、その目処が経ってきたことが、今回の発表に至った理由のひとつのようです。

なお、熱源があることは、常温と700℃の間を行ったり来たりするため、スタックが割れてしまうというデメリットがあります。

逆にメリットは「熱源を持つ」という点。バッテリーEVがヒーターなどを使うと航続可能距離が急速に短くなってしまうことからも分かるように、熱源の確保に心配する必要がないという、長短を併せ持っているのも特徴です。

ほかにも長短いくつもありますが、別記事でもご紹介します。なお、市販化は2020年を目指し、デリバティブ・ユースの商用車などが想定しているそうです。

(文/写真 塚田勝弘)

ホンダのFCV「CLARITY FUEL CELL」で活用される燃料電池テクロノジーとは?

ホンダの燃料電池自動車「CLARITY FUEL CELL (クラリティ フューエル セル)」には、米国の燃料電池素材メーカー W. L. Gore & Associates(以下、ゴア社)のプロトン交換膜(PEM)「ゴアセレクト(登録商標、以下同じ)メンブレン」が、燃料電池テクロノジーとして採用されています。

4151028_001L

4151028_012L

最近FCV関連部品の情報が明らかになることが増えていますが、いよいよFCVの心臓部とも言える燃料電池テクノロジーの一端が明らかになりました。

4151028_013L

ホンダの「CLARITY FUEL CELL」は、燃料電池パワートレインの小型化に成功し、ボンネット内への搭載を可能としたことで、セダンタイプのFCVとして世界で初めて5人乗りを実現しました。

4151028_014L4151028_015L

FCVで水素と酸素を反応させて電気エネルギーを取り出すのが、発電機能をもつ燃料電池(FC)スタックです。FCスタックの内部には板状のセルが数百枚も積層されています。

4151028_016L

1枚のセルには、PEMと電極層を組み合わせたMEAと呼ばれる膜/電極複合体が構成されており、このMEAに高圧水素タンクからの水素と空気中の酸素を通して水素と酸素を反応させて電気を発電します。

fuel-cell-326x382,0

このMEAを構成しているPEMの素材が、今回発表されたゴアセレクト メンブレンです。

ゴアセレクト メンブレンは、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を補強材としてフイルム状に形成されており、FCスタックの出力密度向上の一端を担うことにより、FCスタックの小型化に貢献しています。

ゴア社のPEMは、FCVのパワートレインが要求する二大要素である性能と耐久性を高いレベルで満足しているために、今回ホンダ「CLARITY FUEL CELL」に採用されたということです。

新たに開発されたゴアセレクト メンブレンは、高いプロトン伝導性が特徴。同時に、耐久性や品質に対する厳しい要求もクリアしています。

今後もFCV関連の技術が公開されることに興味がつきません。

(山内 博・画像:ホンダ、ゴア社)

燃料電池車に必須の「専用」ナビ。トヨタとホンダで扱いに差があった!?

トヨタから「MIRAI」、そしてホンダから「クラリティ フューエルセル」が登場するなど、水素社会へ向けた燃料電池車のリアルが増しています。

とはいえ、まだまだ水素社会のキーとなるインフラ整備は始まったばかりで、水素ステーションの数は、燃料電池車を運用するには心許ない状況といえます。

電気自動車でも専用ナビで充電ポイントが検索できるようになっているのと同様、燃料電池車には近場の水素ステーションの情報を得ることのできる専用メニューが用意されています。

clarity-FC006

こちらの画像はホンダ・クラリティ フューエルセルの8インチワイドディスプレイ・インターナビの水素ステーション情報画面。

自車位置が埼玉県和光市での検索結果で、意外に水素ステーションは近くにあるようにも思えますが、「×」印がついているステーションは営業準備中だったりするので注意が必要です。

とはいえ、このような営業開始に関する情報も随時更新されるというのは、インフラ整備段階においては重要な情報となりそうです。

ちなみに、トヨタの燃料電池車MIRAIにも9インチ画面の専用T-Connectナビが用意され、同様に水素ステーション情報を活用することができます。

両車の違いは、ホンダが専用ナビを標準装備しているのに対して、トヨタは31万3200円のオプション設定としていること。

メーカー希望小売価格はMIRAIが723万6000円、クラリティ フューエルセルは766万円となっていますが、現時点の燃料電池車には必須といえる専用ナビの装着を考慮すると、価格差が縮まることも見逃せないファクターといえそうです。

(写真・文 山本晋也)

【関連記事】

ホンダの燃料電池車「クラリティ フューエルセル」は乗り心地のよさがお値段以上!?
http://clicccar.com/2016/05/02/369443/

日本でのFCV向け炭素繊維強化高圧水素タンクの合弁事業が進行中

最近、燃料電池自動車(FCV)関連の話題が増えていますが、今回はFCVの燃料である水素を入れる車載用炭素繊維強化高圧水素タンク(高圧水素タンク)を製造・販売する合弁事業についての話題です。

doc_32_6

三井物産、東レ、並びにHexagon Lincoln Inc.(本社:米国ネブラスカ州リンカーン、以下「ヘキサゴンリンカーン」) の3社は、2016年4月25日に日本での車載用炭素繊維強化高圧水素タンク製造・販売事業(以下「高圧水素タンク事業」)を行う合弁会社設立の共同開発契約書を締結した、と発表しました。

今回の高圧水素タンク事業は、世界最大の樹脂ライナー製炭素繊維強化圧力タンク(以下「コンポジットタンク」)メーカーであるヘキサゴンリンカーンの高圧水素タンク製造技術、三井物産の総合力、東レの炭素繊維という各社の長所を活かして、FCV量産車が市販されている日本市場で、FCVの重要部品の一つである炭素繊維を使用した高圧水素タンクを2020年頃から製造することを企図している、ということです。

doc_33_6

ヘキサゴンリンカーンは、天然ガス(CNG)の車載向けタンクや輸送・貯蔵向けコンポジットタンクの豊富な量産実績を活かして、FCVの高圧水素タンクを開発してきました。

一方、FCV市販で先行する日系自動車メーカー各社は、東京五輪開催の2020年には数万台規模でのFCV量産を計画しており、FCV向けの主要部品である高圧水素タンクは今後の市場拡大が見込まれています。

今回の3社による高圧水素タンク事業の合弁計画は、このようなFCVをめぐる動きに対応して、FCV市販で先行している日本市場を狙ったものと考えられます。

(山内 博・画像:ヘキサゴンリンカーン)

ホンダの燃料電池車「クラリティ フューエルセル」は乗り心地のよさがお値段以上!?

まずは官庁や企業などへのリーフ販売から市販のはじまったホンダの燃料電池車「クラリティ フューエルセル」に乗ることができました。

すでに同じプラットフォームを使った電気自動車やプラグインハイブリッドカーの開発が進んでいることが北米では発表されていますが、やはり圧縮水素を化学反応させ電気を起こしてモーターで駆動する燃料電池車は、テクノロジー面でのイメージリーダーであることは間違いありません。

メーカー希望小売価格(参考価格)が766万円というのも、NSXの国内販売が始まるまでは価格面でのフラッグシップともいえます。

clarity-FC001

そして、フラッグシップ&テクノロジーリーダーであっても、ホンダの思想に変わりはありません。

メカニズムを凝縮して、乗員スペースを最大にとるというM・M思想(「メカ・ミニマム」、「マン・マキシマム」に由来するホンダのクルマづくりにおける基本思想)は、燃料電池車においても重視されています。

これまでホンダの生み出してきた燃料電池車は燃料電池スタックが、フロア下を占めていたり、センターコンソール内に収められていたりしましたが、ついにフロントフード下に「昇圧コンバーター、燃料電池スタック、駆動モーター&ディファレンシャル」を三階建て構造として収めることに成功。量産燃料電池車としては初めて5人乗りを実現したと胸を張ります。

そうした小型化に効いているのが世界で初めてダイオードやMOS-FETにSiCをフル採用することで小さくできた昇圧コンバーターや従来比で33%も小さくなった燃料電池スタックといったM・M思想による技術といいます。

とはいえ、燃料電池スタックなどはまだまだ生産性が厳しく、2台/日程度の量産にとどまってしまうということです。

clarity-FC003

ボディサイズでいうとアコードクラスのセダンといえる「クラリティ」は、ホンダの燃料電池システムが持つ湿度コントロールや温度管理の巧みさにより、開口部も小さく、空力ボディに仕上げられています。

空気抵抗を減らすために前後のタイヤで起きる乱流を整えるエアカーテンやリヤタイヤはフェンダーを伸ばしてカバーしているほど。

こうした外観の印象から、またホンダというブランドのイメージから、さぞスポーティな燃料電池車になっているのだと思いきや、意外にもジェントルな乗り心地に感じられたのです。

clarity-FC002

クラリティもそうですが多段変速機を持たないモーター駆動の電動車両というのは、まさしく段付き感のないスムースな走りがセールスポイントとなります。さらに車両重量が1.9t近いという重さもあってか、重厚でフラットな乗り心地を実現しているのです。

とはいえ、モーターをレスポンス良く働かせるだけのリニアな電気供給ができているので、加速感に重さのネガは感じません。

たとえるなら、大排気量のV8エンジンと多段ATを搭載したFWDサルーンといった印象を、運転していても後席に座ったときにも感じたのでした。

だからといってホンダがスポーティさを忘れているわけではありません。

燃料電池車ながら「スポーツ」モードを持つクラリティ。その「スポーツ」ボタンをプッシュすれば、アクセルペダルだけで加減速をコントロールしやすくなり、これまた車重を感じさせないリズミカルな動きを味わえます。

手応えのあるデュアルピニオン電動パワーステアリングや、高圧水素タンクを支える強固なサブフレームからアームを生やしたリヤ・マルチリンク式サスペンションといったシャシーに投入されたメカニズムからもハンドリングへのこだわりが感じられます。

燃料電池車としての完成度だけでなく、内燃機関車の目指す理想的な面も持つ「クラリティ フューエルセル」。価格だけでなく、乗り味においても、現時点におけるホンダの頂点であるといえそうです。

(写真・文 山本晋也)

ホンダ「CLARITY FUEL CELL」に独・ランクセスの軽量化素材が採用

ドイツの特殊化学品メーカーのランクセス(LANXESS)は、ホンダが本年3月より販売を開始した新型の燃料電池自動車(以下、FCV)「CLARITY FUEL CELL(クラリティ フューエルセル)」に、自社の軽量化素材が採用されたことを発表しました。

Honda_Clarity_FCV_body_image_532-366_03

上図で車体後方の緑色部分に示すワンショットハイブリッド成形リアバンパービームという部品に、ランクセスの軽量化素材が採用されています。

このワンショットハイブリッド成形リアバンパービームには、熱可塑性コンポジットシート「テペックス」(登録商標)と、プラスチック「デュレタン」(登録商標)が、樹脂とガラス繊維からなる複合素材GFRTP(Glass Fiber Peinforced Thrmo-Plastics)の材料として使用されています。

ホンダでは、GFRTPによるワンショットハイブリッド成形リアバンパービームは世界初になる、としています。

Tepex-dynalite-photo_LR_532-366_03

ランクセス日本法人の代表取締役社長である辻英男氏は、「ホンダの新型FCVのリアバンパーに、ランクセスの『テペックス』および『デュレタン』が採用されたことを心より光栄に思います」とコメントしています。

またランクセスのハイパフォーマンスマテリアルズ シニアエンジニアの豊田徳視氏は、「このたび新たに開発された部品は、ランクセスの『テペックス』と『デュレタン』による世界初のワンショットハイブリッド成形リアバンパービームというだけでなく、当社のコンポジットシート『テペックス』を使用したアジア太平洋地区で初めての量産車モデルへの採用事例となります」と強調しました。

2016-00035_01_65bd7e3d8f

ホンダのFCV「クラリティ フューエルセル」には、東レの炭素素材が使われていることが先日発表されました。それに続いて今回の発表で、いままでホンダの量産車に採用されていないドイツ・ランクセスの軽量化素材が採用されたことが明らかになりました。

今後、このように自動車の部品供給網(サプライチェーン)がますます国際化・広域化することが予想されます。

(山内 博・画像:ランクセス)

ブルーエナジー製リチウムイオン電池がホンダ・CLARITY FUEL CELLに搭載

ホンダの燃料電池自動車(FCV)「CLARITY FUEL CELL」の部品調達に関するニュースが相次いでいますが、今回はアシスト/回生用バッテリーの調達先が明らかになりました。

Print

img_gs_160410551819

ホンダとGS・ユアサが出資するブルーエナジー(京都府福知山市)製のリチウムイオン電池が、ホンダの「クラリティ フューエル セル」に搭載されていることをGS・ユアサが発表しました。

「クラリティ フューエル セル」に搭載されている新型リチウムイオン電池「EHW5」は、従来品より17%軽量化と7%小型化しながら、同等以上の容量・出力性能と耐久・安全性能を実現している、ということです。

0002a

ブルーエナジーのリチウムイオン電池は2011年から量産を開始し、2012年9月発売のホンダ「CR-Z」から今回のホンダ「クラリティ フューエル セル」まで10車種に搭載されています。

(山内 博・画像:GS・ユアサ)

技術研究組合「ハイストラ」がCO2フリー水素の実現へ始動

燃料電池自動車(FCV)の燃料にもなる水素を、 CO2フリーで製造して大量に輸送するための技術を研究する企業の組織「技術研究組合 CO2フリー水素サプライチェーン推進機構」〔略称「HySTRA」(ハイストラ)〕が活動を開始しました。

水素というとエコというイメージがありますが、残念ながら現状では水素の製造過程ではCO2が発生しています。その現状がハイストラの活動で改善されることが期待されています。

0001c

豪州には褐炭という未利用の資源が膨大にあります。一説には、その埋蔵量は日本全体の総発電量の240年分に相当するということです。しかし、褐炭は低品質であるために輸送が困難で、安価ですが現状では利用する方法がありません。

0001a

そこで豪州の現地で褐炭から水素を製造し、その製造過程で排出されるCO2は豪州政府が推進するカーボンネット(CO2貯蔵インフラ)に接続して、CO2を出さずに水素を製造する豪州褐炭プロジェクトに川崎重工が参画しています。

0001b

この豪州褐炭プロジェクトを促進するのが、今回の技術研究組合「ハイストラ」という訳です。ハイストラには、川崎重工、岩谷産業、シェルジャパン、電源開発の4社が参加しています。

ハイストラは、CO2フリー水素サプライチェーンの構築・商用化に向けて、水素製造、輸送・貯蔵、利用に至るチェーンで必要となる技術確立と実証を目的としています。

hystra(1)a

ハイストラでの各企業の役割は次の通りです。

まず、国内で石炭ガス化複合発電(IGCC)に取り組んでいる電源揮発は、そのガス化技術を生かし、「褐炭ガス化技術」の技術実証を行います。川崎重工・岩谷産業・シェルジャパンの3社は共同で「液化水素の長距離大量輸送技術」および「液化水素荷役技術」の技術実証を担当します。

このハイストラの活動で地球環境に貢献できるCO2フリー水素サプライチェーンの構築・商用化が進展することに期待が集まっています。

(山内 博・画像:川崎重工)

トヨタ、ホンダからFCVの登場で、次世代エコカーの本命争いが激化!?

何度かトヨタ「MIRAI」に試乗する機会があり、先日も狭い山岳路で乗りました。ホンダも出したとなると、燃料電池車(FCV)が次世代エコカーの本命でキマリ? と思う方もいるでしょうが、EVやPHV、クリーンディーゼルなど多様なエコカーが共存、競争していくのではないでしょうか。

20160310Honda Clarity Fuel Cell015

水素はその製造方法から運搬や貯蔵などインフラ面を含めた課題があるほか、FCVが採用する「固体高分子形(PEFC)」と呼ばれる燃料電池の発電効率は30〜60%、経済効率性を考えると30〜40%程度という現実もあるようです。

そうなると、ガソリンエンジンで最高レベルの熱効率と大差ないでは? などと、クルマがひと際重く感じる狭い山岳路でMIRAIのステアリングを握りながら考えていた次第。

20160226_02_04

テスラモーターズのイーロン・マスクCEOは、FCVについて否定的な発言をしていますが、FCVはある意味EVの一種ともいえますし、モーターならではの走りだけとってもEVとの違いを見いだすのは難しいでしょう。

テスラのモデルSなどは、速さも航続距離もEVの平均値を大きく上回っていて、確かに新しい高級車像、スポーツカー像を提案していますが、まだまだ高嶺の花。

20160310Honda Clarity Fuel Cell016

また、FCVも日本では200万円もの補助金があっても誰もが買えるモデルとは言いがたく(もちろんインフラ整備も含めて)、こちらもまだまだ「自分が乗る(乗れる)」クルマとは言いがたいのが現状です。

また、アメリカのカリフォルニア州のZEV規制という課題もあり、ZEV対象車から外れたハイブリッド(HV)の代わりにFCVを売りたいという思いもトヨタやホンダにはあるかもしれません。

20160310Honda Clarity Fuel Cell065

日本で余っている副生水素の活用(コスト面を考えるとFCV用としては容易に使えない)、FCVがその後の普及するに連れて国内では不足する可能性のある水素をどうやって確保するか、などの課題にも直面しそう。

20160310Honda Clarity Fuel Cell045

しかし「MIRAI」も「CLARITY FUEL CELL」もFCVの先駆者(車)として一歩踏み出した意義は大きく、数々の課題をクリアして現在のハイブリッドカーのように普及する日がいつ来るか、そんなことを考えられるのが「MIRAI」も「CLARITY FUEL CELL」の存在価値といえるでしょう。

(文/塚田勝弘・写真/小林和久)

2025年度までに320ヵ所へ!経産省が水素ステーション展開促進で行程表を改定

経産省が3月16日、FCV(燃料電池車)に燃料を供給する水素ステーションを2020年度に160カ所、2025年度までに現在の4倍となる320箇所に増やす計画案をまとめたそうです。

IWATANI(出展 岩谷産業)

当初、2015年度内に全国4大都市で100ヵ所の水素ステーションを展開する計画でしたが、開業に漕ぎ着けるのは80ヵ所に留まる見通し。

HONDA_CLARITY(出展 HONDA)

その背景には、水素取扱いに関する厳しい安全基準を強いていることから、設置費用が通常のガソリンスタンドの5倍(約5億円)かかるという課題があります。

そこで経産省は、補助金により企業の活動を後押しするとともに、コスト低減が見込める機材調達先の規制緩和や、運営費の低減に向けた「セルフ式充填」の解禁、さらには大型トラックの荷台部に水素充填装置を積んだ「移動式スタンド」などの普及を促進するそうです。

HONDA_CLARITY(出展 HONDA)

一方、FCVの車両価格についても、2025年を目処に普及価格帯(200万円台)にまで引き下げるべく、トヨタ、ホンダ以外のメーカーからのFCV参入に向けて研究開発を支援、販売台数拡大に繋げる考え。

新聞報道によると同省は水素利用拡大に向けて行程表を改訂、FCVの販売台数を2025年までに20万台、2030年までに80万台の普及を目指す数値目標を設定した模様。

政府は2020年に開催される東京五輪で世界に向けて水素社会実現に向けた取組みをアピールするとともに、その活動に弾みをつけたい考えで、行程表改定もそうした一連の流れの線上にあるようです。

Avanti Yasunori

【関連記事】

ホンダが燃料電池車「クラリティ フューエル セル 」を発売開始!
http://clicccar.com/2016/03/10/359529/

「燃料電池バイク」市販に向け、国交省が技術基準策定!
http://clicccar.com/2016/03/07/357555/

大阪ガス、京都初の移動式水素ステーションが完成
http://clicccar.com/2016/02/28/356814/

岩谷産業、国内初のコンビニ併設の水素ステーションを開所
http://clicccar.com/2016/02/22/355555/

トヨタ、日産、ホンダの3社が水素ステーション整備を共同で推進へ
http://clicccar.com/2015/07/08/315134/

ホンダの燃料電池車は「軽自動車のエンジン」と同等のバッテリーを積む?

ホンダから登場した燃料電池車「クラリティ フューエルセル」は、高圧タンクに充填された水素を使い、FCスタックによって発電した電気で走る電動車両です。

3分で満充填できるという水素タンクは、航続可能距離750kmを誇る141L(約5kg)の容量で、ミリ波レーダーとカメラを使った先進安全システム「ホンダセンシング」を搭載しているのも最先端のクルマらしいといえそうです。

20160310Honda Clarity Fuel Cell016

さて、そんなホンダ・クラリティ フューエルセルのモーター最高出力は130kWですが、FCスタックの最高出力は103kWにとどまっています。FCスタックで発電した電気でモーターを動かすという流れのはずなのに、発電能力よりも駆動の最高出力が大きいというのはあり得ないことです。

20160310Honda Clarity Fuel Cell028

その点について、ホンダのエンジニアに質問してみると「足りないぶんはバッテリーから電力を送っています。燃料電池とバッテリーのハイブリッドにより最高出力に達します」ということでした。

では、クラリティ フューエルセルの前席床下に搭載されるリチウムイオンバッテリーは、それだけの性能を持っているのでしょうか。

スペックについては、総電力量・最高出力ともに非公開ということですが、前述のとおりであれば、FCスタックがフル稼働しているとして、少なくとも27kWの出力でなければモーターの最高出力には届きません。

出力のバッファとして活用されるバッテリー、その余裕を考えると出力が27kWよりも大きいことが予想されます。

詳細なスペックは非公開ですが、軽自動車のエンジンと同等の出力を持つ、というウワサも聞こえてきます。ちなみに、ホンダの軽自動車「N-BOX」が積むNAエンジンの最高出力は43kW。クラリティ フューエルセルはバッテリーだけで、それに近い出力を可能としているのでしょうか?

(文:山本晋也/写真:小林和久)

ホンダ「CLARITY FUEL CELL」とトヨタ「MIRAI」の違いとは?

世界初の量産型FCVとして市販化されたトヨタ「MIRAI」に続き、発売されたホンダ「CLARITY FUEL CELL」。

「CLARITY FUEL CELL」の導入初年度は、官公庁や企業へのリース販売になるなど、「FCXクラリティ」など従来のモデルと同じ販売手法になっているのがMIRAIとの目立った違いになります。

20160310Honda Clarity Fuel Cell037

CLARITY FUEL CELLはその後、一般向けに販売されますが、ホンダの慎重な姿勢と取るのか、あるいは現実的な戦略と見るかは分かれそう。

それはさておき、トヨタMIRAIとホンダCLARITY FUEL CELLのどちらを買うか、迷うことができる状況になるのは間違いありません。
CLARITY FUEL CELLを見ていくと、取り回しや車内空間、荷室容量を左右するボディサイズは全長4915×全幅1875×全高1480mm、走りや燃費(電費? 航続可能距離)を左右しそうな車両重量は1890kg。

20160310Honda Clarity Fuel Cell002

一方のMIRAIは、全長4890×全幅1815×全高1535mmで、車両重量は1850kg。MIRAIの方がCLARITY FUEL CELLよりも25mm短く、60mm狭く、55mm高くなっています。

mir1411_09_sなお、最小回転半径は両車ともに5.7mで、単純にサイズが小さい分、狭い道などでのすれ違いなどはMIRAIの方がしやすそう。

20160310Honda Clarity Fuel Cell01620160310Honda Clarity Fuel Cell050

パッケージングでは「5人乗りを実現」したとホンダが胸を張りますが、CLARITY FUEL CELLの方が全高は55mmも低く、頭上空間を含めて長距離移動時などの快適性にどれだけ差が出るか気になるところ。2人掛けのMIRAIはフロアの高さこそ意識させられるもの大人でもまずまず快適に座れます。

20160226_02_04_smir1411_18_s

荷室容量はCLARITY FUEL CELLが394L、MIRAIは361Lで、ともに9.5インチのゴルフバッグが3セット積めるとしています。

20160310Honda Clarity Fuel Cell041

MIRAIよりも全長と全幅に余裕があるうえに、燃料電池パワートレーン(FC昇圧コンバーター、燃料電池スタック、駆動ユニット)の一体化により、これらをボンネットフードに収めたCLARITY FUEL CELLのパッケージングの利点でしょうか。

mir1411_23_s

パワートレーンを見ていくと、CLARITY FUEL CELLのモーターは、130kW/4501-9028rpm(最高回転数:13,000rpm)という高出力が自慢で、最大トルクは300Nm/0-3500rpm。MIRAIは、レクサスRX450hのフロント用と同じ「4JM」型のモーターを使い、113kW、335Nmというスペック。

20160310Honda Clarity Fuel Cell017mir1411_22_s

FCスタック(燃料電池スタック)の最高出力は、CLARITY FUEL CELLが103kW、MIRAIが114kWとなっています。なお最高速は、CLARITY FUEL CELLが165km/h、MIRAIは175km/h。

そのほか大きな違いとしては、MIRAIがニッケル水素バッテリー(6.5Ah)を搭載するのに対し、CLARITY FUEL CELLはリチウムイオン電池(容量未公表)となっています。

20160310Honda Clarity Fuel Cell020

水素タンクはCLARITY FUEL CELがアルミライナー製水素タンクで、容積は141L、水素貯蔵量は約5.0kgで、充填時間は約3分、航続可能距離は約750kmです。対するMIRAIは、容積が122.4(前方60.0/後方62.4)Lで、充填時間は約3分、航続可能距離は約650kmとされています。

安全装備では、CLARITY FUEL CELLが「Honda Sensing」を標準装備し、衝突被害軽減ブレーキや渋滞追従機能付ACCなどを搭載。MIRAIもプリクラッシュセーフティシステム(ミリ波レーダー)、ブレーキ制御機能付レーダークルーズコントロールなどを標準装備。

最後に価格ですが、CLARITY FUEL CELLは766万円、MIRAIは723万6000円となっています。
(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

【関連記事】

ホンダ「CLARITY FUEL CELL」の特徴とは?
http://clicccar.com/2016/03/19/359901/

ホンダ「CLARITY FUEL CELL」の特徴とは?

FCV(燃料電池車)のほか、EVやPHVなどの多様なエコカーを開発しているホンダ。ホンダでは、FCVのカギは「FCスタック(燃料電池スタック)の小型化・高性能化」にあるとしています。

20160310Honda Clarity Fuel Cell061

「CLARITY FUEL CELL(クラリティ フューエル セル)」では、従来モデル比で33%小型化し、出力密度は世界トップレベルの3.1kW/Lを実現。また、燃料電池パワートレーン(FC昇圧コンバーター、燃料電池スタック、駆動ユニット)の一体化によりボンネット内に収まり、パッケージングの自由度が高まり5人乗りを実現しました。

20160310Honda Clarity Fuel Cell016

燃料電池スタックは、ガスの拡散性を高めることにより1セルあたりの発電性能を1.5倍とし、容積出力密度を60%向上。その結果、セル数を30%削減し、セル単体の薄型化と合わせ、容積比33%の小型化を達成。

20160310Honda Clarity Fuel Cell022

燃料電池の小型化には、電動ターボエアコンプレッサーの採用による空気(酸素)システムの供給システムもあるとしています。
小さな燃料電池スタックで大きな電力を得るには、エンジン車におけるターボのように圧力を高めて空気の供給量を増やす必要があり、「クラリティ FUEL CELL」には高圧縮比・高流量、軽量・コンパクト、静粛性などに優れた新開発の電動ターボ型エアコンプレッサーが搭載されています。

20160310Honda Clarity Fuel Cell029

小型ながら従来モデルに対し1.7倍の供給圧力を発揮し、燃料電池スタックの発電性能向上に貢献しているそう。

20160310Honda Clarity Fuel Cell017

小型化ではそのほかにも、駆動ユニットの高出力化、コンパクト化も大きく、ボンネットフード下の格納に利いています。

20160310Honda Clarity Fuel Cell02020160310Honda Clarity Fuel Cell018

場所を取る高圧水素タンクには、70MPaの充填圧力に対応し、水素透過ゼロを達成したアルミライナー製水素タンクを採用され、従来の約4.0kgから約5.0kgに水素貯蔵量が増加。

20160310Honda Clarity Fuel Cell003

そのほかにも、ホンダらしい鋭さを感じさせるエクステリアや「ぬくもりと落ち着き」を演出したというインテリアなど「見た目はスポーティ、中は快適」という内・外装もアピールポイントといえそうです。

20160310Honda Clarity Fuel Cell039

パッケージングでは、5人乗りのほか9.5型ゴルフバッグが3セット積載できるトランクも自慢。394Lの荷室容量はCセグメント並ですが、日常ユースなら大きな不満はなさそう。

20160310Honda Clarity Fuel Cell042

安全装備では、ミリ波レーダーと単眼カメラによるホンダ最新の「Honda Sensing」が搭載され、衝突軽減ブレーキや渋滞追従機能付ACCのほか、車線維持支援システム、誤発進抑制機能などを用意。

20160310Honda Clarity Fuel Cell06420160310Honda Clarity Fuel Cell063

給電関連では、一般家庭のおよそ 7日分の電力を供給できる可搬型外部給電器の「POWER EXPORTER 9000」を、118万円(参考価格、消費税込み)で設定しているのも特徴です。

(文/塚田勝弘・写真/小林和久)

FCVを2030年までに80万台普及!エネ庁が戦略改定

一昨年12月、トヨタ自動車が世界に先駆けて水素燃料で発電しながらモーターで走行する燃料電池車(FCV)「MIRAI」の量産をスタートさせました。

TOYOTA_MIRAI(出展 TOYOTA )

今年3月10日にはホンダが独自開発したFCV「クラリティ」のリース販売を開始するとともに、17日に第1号車を経産省に納車、来秋には一般販売を開始するとしています。

HONDA_CLARITY(出展 HONDA)

こうした状況を受け、経産省資源エネルギー庁が自動車メーカーや水素を供給するエネルギー業界、学識者などを交えた有識者会議を開催、「水素・燃料電池戦略ロードマップ」の改定内容をまとめました。

国内で500台程度の普及に留まっているFCVについて、2020年までに約4万台、2025年までに約20万台、2030年までに約80万台に増やす数値目標を設定したそうです。

また今年の3月末時点で目標(100ヵ所)の8割に留まっている水素ステーションについても2020年度までに約160カ所、2025年度には約320カ所まで拡大する計画。

TOYOTA_MIRAI(出展 TOYOTA)

加えて、FCVの車両価格が現状700万円台と高額なことから、燃料電池のコストを2020年までに半減、2025年までには25%に圧縮することで、普及価格帯(200万円台)にまで引き下げる考えのようです。

これにより販売台数が増えることで、水素の使用量が増え、水素ステーションの稼働率が上がり、ステーション数についても更なる拡大が期待できそうです。

Avanti Yasunori
【関連記事】

ホンダが燃料電池車「クラリティ フューエル セル 」を発売開始!
http://clicccar.com/2016/03/10/359529/

「燃料電池バイク」市販に向け、国交省が技術基準策定!
http://clicccar.com/2016/03/07/357555/

大阪ガス、京都初の移動式水素ステーションが完成
http://clicccar.com/2016/02/28/356814/

岩谷産業、国内初のコンビニ併設の水素ステーションを開所
http://clicccar.com/2016/02/22/355555/

トヨタ、日産、ホンダの3社が水素ステーション整備を共同で推進へ
http://clicccar.com/2015/07/08/315134/

ホンダのスマート水素ステーションは燃料電池車の普及を後押しする

ホンダが新しい燃料電池車「クラリティ フューエルセル」を発表しました。

初年度は200台程度のリース販売を目標としているこのクルマは、過去にホンダがリース販売していきた燃料電池車(FCX、FCXクラリティ)よりも高圧な70MPaの圧縮水素タンクを採用しているのもニュースのひとつ。

20160310Honda Clarity Fuel Cell001

これにより、トヨタMIRAIと同じ70MPaとなり、水素ステーションの設備としては共通化したわけですが、いずれにしても高圧水素のインフラ整備はまだまだ普及フェイズというには程遠い状況です。

電気自動車であれば、急速充電器がなくとも普通充電用のコンセントを設置すれば使う場所を選ばないといえますが、燃料電池車では水素インフラがなくては動かすことができません。

事実、常設の水素ステーションは北は埼玉県から南は福岡(移動式を除く)まで80か所程度しかなく、燃料電池車を運用できるエリアは限られます。

20160310Honda Clarity Fuel Cell006

そこで、ホンダは燃料電池車「クラリティ フューエルセル」の発売にあわせて、「SHS(スマート水素ステーション)」を発表しています。

水素製造大手の岩谷産業と共同開発したというSHSは、高圧水電解システムを搭載した小型のパッケージ型水素ステーション。一日の製造能力は3~4台分といいますから、商用ステーションとしては能力不足だということですが、現在の普及台数であれば十分にカバーできるともいえます。

設置場所は許可の面から用途地域を選ぶといいますが、たとえば複数台を運用する企業が自社敷地内に設置するだとか、ディーラー(販売店)に設置するといった使い方を想定している水素供給ソリューションなのです。

いわゆる商業ステーションの隙間を埋めることで、燃料電池車の運用に困らないよう、ユーザーをインフラ面からサポートするというわけです。

もともと、ホンダは燃料電池車を開発している初期段階から、こうしたパーソナルな水素ステーションの研究に熱心で、太陽光発電を利用した水素ステーションの実験もしていました。

今回発表されたSHSについても、再生可能エネルギーを使うことで、燃料電池車の運用レベルでゼロ・エミッションとすることが期待されています。

(写真:小林和久 文:山本晋也)