Motor Fan's YEAR 2016

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ダイハツ・トール、トヨタ・ルーミー/タンクに搭載される新開発1.0L直列3気筒ターボの実力は?

ダイハツ・トール、トヨタ・ルーミー/タンク、そしてスバル・ジャスティの走行性能で注目なのが、新開発された1.0Lの直列3気筒DOHCターボでしょう。

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売り文句は、1.5Lクラスの最大トルク140Nm(最高出力は98ps/6000rpm)を2400-4000rpmという幅広い回転域で発揮する点。なお、JC08モード燃費は、21.8km/Lとなっています。

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NAエンジンも1.0Lの直列3気筒DOHCが搭載されています。こちらは最高出力69ps/6000rpm、最大トルク92Nm/4400rpmというエンジンスペックで、カタログ燃費は24.6km/LとNAエンジンの方が2.8km/Lよくなっています。組み合わされるトランスミッションは全車CVTで、4WDモデルはNAエンジンのみ。

注目の「1KR-VET」型の1.0Lターボは、低イナーシャターボ、カムタイミング・作用角最適化で高出力化が果たされているほか、高熱負荷対応として、エキマニフランジやブロックボアの冷却強化などが盛り込まれているそう。また、高乱流エネルギー変換、浅皿ピストンの採用などで燃費対策が施されています。

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CVTも専用チューン済みで、最終減速比のローギヤード化により軽快な加速フィールを引き出しているほか、電子制御スロットルの制御を見直すことで力強い走りが必要なシーンに対応したとしています。

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確かにターボモデルは、過給ラグも比較的抑えられていて、中・低速域の力強さを感じさせます。ただ「平坦な街中で2人乗車」という条件下であればNAエンジンでも流れに乗るのはそれほど難しくありません。

軽自動車よりも重いといっても車両重量は1.1t程度なので、1.0L NAエンジンでもこうしたシーンでは力不足と断ずる状況には遭遇しませんでした。

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しかし、流れが速い郊外路や高速道路を走ったり、勾配の多い地域に住んでいるのならターボの過給は心強いはずで、4人乗車が多かったり、荷物をたくさん乗せて遠出するのであれば、2.8km/Lのカタログ燃費の差に目をつぶっても選ぶ価値は高そう。

また、同じような速度フィールを引き出すにしても、過給が始まればアクセルもNAエンジンほど強く踏み続ける必要もなく、運転の仕方によってはカタログ燃費の差も縮まる可能性があります。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

ダイハツ・トール、トヨタ・ルーミー/タンクの軽自動車に対する利点とは?

車名の「トール」、「ルーミー」からして室内が高くて広そうですし、「タンク」もいかにも力強さを感じさせるネーミングといえそうです。

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なお、ダイハツ・トール(THOR)は、「力強く頼りがいのある相棒」という意味がある北欧神話の雷神であるThor(トール)、そして背が高い「TALL」から命名されたそう。

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トヨタ・ルーミーは、「広々した」という意味の「ROOMY」から、タンクは、水槽やタンクを意味する「TANK」からで、多くの荷物を積み込める空間をイメージさせることから命名されています。

ダイハツ・トール、トヨタ・ルーミー/タンク、スバル・ジャスティは、全長3715×全幅1670×全高1735mm(カスタム)というスリーサイズ。1335mmという室内高で、子どもなら立てるほど高い空間が広がっています。

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前後席ともに見上げるほど高い天井により開放感は抜群で、後席の足元も広々。前席を最も後まで下げても、後席も一番後までスライドさせれば足を組めるほど広く、逆に後席のスライド位置を前寄りにしても前席下に足が入りますから窮屈感は抱かせません。

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床下格納式の後席は、座面と背もたれの厚みがやや薄く、座面自体も水平で後継角(トルソー角)が小さいため、シートアレンジ優先のように感じさせます。

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一方の前席は、この全幅で前後ウォークスルーを実現していますから、シートの横幅に限界があるのでしょう。やや小ぶりなので、体型によっては窮屈というかシートの小ささを実感させられるかもしれません。

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最近の軽自動車が大きくなっているいま、こうしたリッターカークラスのハイト系2BOXは、維持費の面も含めて軽自動車とも競合するでしょう。

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それでもダイハツ・トール、トヨタ・ルーミー/タンク、スズキ・ソリオなどの強みは、軽自動車よりも前後、横方向に広いく、前席左右間だけでなく、前後席間のウォークスルーができる点などにあります。ほかにも、乗車定員や排気量の余裕(エンジンパワーとトルク)からもファーストカー向きといえます。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

ダイハツ・トール、トヨタ・ルーミー/タンクの後席と荷室の実用性は?

両側スライドドアに、背高系のミニバン的なスタイル。ウォースルーが可能な2列シートをコンパクトなボディサイズにパッケージする──

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初代ラウムもこんなコンセプトでした。ただし、背高系ではなくセミトールといえる全高(1535〜1590mm)で、両側スライドドアやコラムシフトにより左右、前後ウォークスルーも可能。私事ですが親が乗っていたこともあり、その利便性の高さ(スライドドアのアウタードアハンドルが重く、スライドさせるのが大変でしたが)を実感したことがあります。

さて、現役のモデルでコンセプトをもつ背高系コンパクト(2列車)といえばスズキ・ソリオ。そこに対抗馬としてぶつけてきたのがダイハツ・トール、トヨタ・ルーミー/タンク、スバル・ジャスティ。

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ここでは肝心要の使い勝手についてご紹介します。

乗り降りは低床設計により「楽ちん」そのもので、フロアももちろんフラット。ミニバンのような乗降性になっています。後席にはチャイルドグリップ付きの乗降用アシストグリップもあり、小さな子どもからお年寄りまで楽に乗り降りできるように配慮されています。

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低床設計なのはキャビン側だけでなく、荷室側も下から大きく開く大開口部を備えていて、まるでダイハツ・ウェイクやホンダN-BOX+のような低さ。「軽自動車で培った技術をコンパクトカーにも投入する」とアナウンスしているとおり、ノウハウが活かされています。

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後席は床下に2段階で格納する方式。前席を一番後まで下げていると干渉してしまうため、その場合は前席を少し前にスライドさせておきます。

後席の背もたれを前に倒し、座面横下にあるストラップを引いてロックを解除させ、背もたれ座面にあるストラップを持ちながら床下に引き下げます。

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この床下格納式の長所は、低い位置にフラットに格納できる点で、低床設計により自転車なども容易に積載可能。防汚デッキボードを反転させれば、タイヤに泥が付いた自転車なども積みやすく、アウトドア派なども重宝しそうです。

一方の欠点は、シートのロックを解除するストラップがシート横にしかないため、荷室側からは後席を倒せないのと、シングルフォールドダウン式よりも二度手間になる点でしょう。

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シートを起こす際もシンプルに前倒しする方式よりも手間も力も多少かかります。もちろん、後席の背もたれを前倒しするだけでも荷室を拡大できますが、その際は写真のように段差が残ってしまいます。荷物が自転車のように「大きい」のではなく、「多い」というだけならこちらで対応できるので、わざわざ格納しない人もいそうです。

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ライバルのスズキ・ソリオ(上の写真)は、後席バックレストの上部に前倒し用(リクライニング用)とスライド用のレバーが付いていますから、荷室側からもスライドドア側からも倒すことができます。イージーに操作できるのはソリオの方で、自転車などの大物を積まないのであればこちらの方が使いやすいでしょう。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

圧倒的な販売力。トヨタ・ルーミー/タンクが発売から1カ月で計3万5000台を受注

11月9日に発売されたトヨタ・ルーミー/タンクは、ダイハツ・トールのOEMモデルで、設計、開発から生産(ダイハツ本社の池田工場)までをダイハツが受け持っています。スバルにも22年ぶりに復活した車名・ジャスティでダイハツから供給されています。

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トヨタからルーミー/タンクの発売1カ月(ダイハツは未公表)の受注台数が発表されました。トヨタ店、トヨタカローラ店で販売されているルーミーは約1万8300台、トヨペット店、ネッツ店扱いのタンクは約1万6700台。

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月販目標台数は両モデルともに3750台という設定ですから、ルーミーが約4.8倍、タンクが約4.4倍という出だしになります。主な好評点は、下記の通りです。

・堂々迫力のデザイン性
・コンパクトながら広い室内空間
・広くて使い勝手のよい荷室
・衝突回避支援システム(スマートアシストⅡ)搭載
・1.0Lターボのゆとりある走り(1.5L相当のパワー)

ルーミー、タンク両モデル合わせると3万5000台に達します。これは、現行シエンタの発売から約1カ月の4万9000台には及ばないものの、ダイハツ・トール、スバル・ジャスティを合わせるとさらに数字が伸びるだけに、「ガチンコ」のライバルであるソリオを発売してきたスズキからするとその販売力は驚異でしょう。

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スズキとトヨタの提携は発表済みとはいえ、具体的に何か決まっているようでもなさそうだけに、今後の販売動向にも注目が集まります。

(文/写真 塚田勝弘)

ダイハツ・トール/トール カスタム、トヨタ・ルーミー/タンク、スバル・ジャスティってどんなクルマ?

「コンパクトカー以上、ミニバン未満」のクルマというと、背を高くした2BOX系に行き着きます。

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トヨタ・bB(ダイハツ・クー)や日産キューブなどの2BOX系コンパクトカーが以前ほどの存在感を示していないなか、トヨタではポルテ/スペイドなどがユーザーをある程度吸収してきたのでしょう。

ひと回り小さなボディサイズで「コンパクトカー以上、ミニバン未満」というモデルとなると、現状では両側スライドドアを採用するスズキ・ソリオ(OEM:三菱デリカD:2)のみ。

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ダイハツとトヨタ、スバルがコンパクト2BOXの両側スライドドア車に参入するのは、現状のマーケットを踏まえると十分理解できます。

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ダイハツが開発、生産するトール/トール カスタム、トヨタ・ルーミー(トヨタ店およびカローラ店)/タンク(トヨペット店およびネッツ店)、スバル・ジャスティの見どころは、全長3700(3725)×全幅1670×全高1735mmというコンパクトなサイズに、両側スライドドア、前後席間のウォークスルーを加えたミニバン的な要素。

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追いかけられることになったスズキ・ソリオは全長3710×全幅1625×全高1745mmで、ソリオの方が45mm狭く、最小回転半径は4.8mとなっています。

しかし、トール/ルーミー&タンク/ジャスティは全幅が45mワイドでも最小回転半径を4.6m(一部4.7m)にするなど、取り回しの面でも気が配られています。

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パワートレーンの見どころは新開発の直列3気筒1.0Lターボで、98ps/140Nmというスペックは、1.5Lクラスの最大トルクを発揮するとしています。そのほか1.0LのNAエンジンも設定し、気になる燃費は2WD車が24.6km/L、4WD車は22.0km/L。1.0Lのターボ車は21.8km/Lを達成。

なお、スズキ・ソリオは全車1.2LのNAエンジンを搭載し、ハイブリッドが27.8km/L(FF)、1.2Lのガソリンが24.8km/L(FF)。発売が遅れているフルハイブリッドなしでも燃費で負けていません。

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価格帯はトヨタとダイハツが146万3400円〜200万8800円。スバル・ジャスティはグレード数が少なく、価格帯は152万8200円〜207万1440円 となっています。

(塚田勝弘)

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