Motor Fan's YEAR 2016

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ロードスターのデザインは薄着勝負!? RFの狙いはどこに?

マツダ・ロードスター(海外名MX-5)が、2016年ワールド・カー・オブ・ザ・イヤーに加え、ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤーを同時受賞しました。

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同じくファイナリストだったジャガーXEを下しての受賞。その理由はどこにあるのか? 受賞直後のいま、あらためてチーフデザイナーに話を聞きました。

[語る人)
マツダ株式会社デザイン本部
チーフデザイナー・中山 雅

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──まず魂動デザインそのものについてお聞きします。今回は世界的な賞を受賞したわけですが、そもそも魂動デザインは海外市場を想定したフィロソフィーだったのでしょうか?

「意識はしますが媚びはしません。たとえば、アメリカ人に寿司を出すにはマヨネーズをかけた方がウケそうですが、それでは日本発信の意味がない。マツダがいま考える日本美の本質は「引き算」の美で、油彩のように絵の具を盛るのではなく、水墨画のようにスッと一発で決めるような美しさです。まだまだ試行錯誤中ですが、そこを突き詰めれば世界に通用すると確信しています」

KODO

──獣がいまにも走り出しそうなイメージを伝えるのが魂動デザインですが、いまエモーショナルなデザインは世界的時流とも言えます。その中で魂動デザインの独自性はどこにあるのでしょう?

「ロードスターでは、エモーショナルとシンプルという相反する要素の両立を目指しました。服装でたとえればシンプルとはTシャツにジーンズのような薄着。そこでエモーションを表現するには体形のよさが必須です。つまり、ベースがよければ薄着でもいいデザインはできる筈。その点、逆に厚着に頼っているメーカーがあるかもしれませんね(笑)」

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──マツダの新世代ラインナップはシグネチャーウイングやボディのキャラクターラインなど、コンセプトカー「SHINARI」のモチーフを採用していますが、ロードスターだけにはその要素が見当たりません

「遠目でSHINARIを見ると本質的なスタイルのよさが浮かんできますが、そこを採り入れたと。全長3.9mのコンパクトなボディで、しかもドライバーが外から見えるという特殊な条件では、できるだけ要素を省く必要があったのです。つまり、ロードスターだからこそのデザインアプローチなんです」

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──では、受賞の話を。あのジャガーを抑えての快勝となったわけですが、今回、世界のジャーナリストからはどのような評価の声が届いていますか?

「やはりプロポーションのよさですね。中でもフロントオーバーハングの短さ、キャビンの小ささへ賞賛をいただいています。このミニマムなボディは、いわば設計部門の全面的協力があってこそです。つまり、単にカタチの評価だけではないことがダブル受賞の価値だと思っています」

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──ただ、プロポーションのよさはどのメーカーも意識しているかと思いますが、マツダデザインとの違いはどこにあるのでしょう?

「条件、つまり機構等によるデザインの制約はどこも一緒なんです。デザイナーの仕事というのは言ってみればその制約をいかにクリアするかで、最初からあきらめてしまうか否かの違いでしょう。各国のデザイナーによるプロ視点では、よくぞそこを突破したネという評価だと思います」

──受賞会場のニューヨーク・ショーではファストバックスタイルのRFを発表しました。ルーフ全体が格納できなかったことからの逆転の発想と聞きますが、この提案も世界に影響を与えそうですね

「はい。一見タルガトップに見えつつリアガラスが開く、つまりエンジン音がオープンと同様に聞こえるというのはまったく新しい価値です。また、実は屋根は開かなくていいからクーペを作って欲しいという声が多いのですが、その回答のひとつになるかもしれませんね」

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──では最後に今後について。発表間もない新型としては、次のモデルチェンジまでの長い間、いかに魅力的な成長をするのかが重要です。その点、何か具体的な計画はありますか?

「たとえば黄色のボディが出たら絶対買う!など、スポーツカーの購入動機は実用車とちょっと違う。今回のRFもそうですが、そうした特別な嗜好に応えるような展開が必要です。もちろん色も重要な要素ですね。いずれにしても、ロードスターは明快な理由をもってデザインしたクルマですから、そこをひっくり返すようなことは絶対にしませんので安心してください(笑)」

──本日はありがとうございました。

(聞き手:すぎもとたかよし)

アウディR8が「ワールド・パフォーマンス・カー」を受賞

マツダ・ロードスターの「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」と「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」のダブル受賞など、「「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」の詳細について、こちらでお届けしました。

Audi R8 is the “2016 World Performance Car”

同賞では、マツダのほか近年とくに目をひくのがアウディ。

アウディR8クーペが「2016ワールド・パフォーマンス・カー」に選出されましたが、アウディR8は、合計4回のアワードを受賞していて、「ワールド・カー・アワード」の歴史において、最も評価されてきたモデルといえそうです。

先代R8でも「ワールド・パフォーマンス・カー」を2回、「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」を一度受賞。

Static photo Colour: Ara Blue

アウディR8について、AUDI AGセールス&マーケティング担当取締役ディートマル フォッゲンライター氏は、

独自のデザイン、優れたドライビングダイナミクス、レーシングカーとしての素質によって、R8はアウディのブランドイメージを最も強く表現するクルマのひとつであると同時に、Audi Sportのフラッグシップカー。
第1世代のR8は、アウディがプレミアムブランドになるための道を切り拓き、アウディが備えるブランドのオーラを新たなレベルへと引き上げました。新型R8は初代の成功を継続し、Audi Sportの成長戦略をさらに加速させる役割を担っています

と語っています。

「2016ワールド・パフォーマンス・カー」に選ばれたアウディR8クーペは、ミッドシップに搭載されたV10エンジンと新開発された クワトロドライブが最大の特徴で、610hp(449kW)を発生するトップバージョンは、0-100km/hをわずか3.2秒で加速し、最高速度は330km/hに達します。

高回転型ミッドエンジン、一貫した軽量設計コンセプト、完全可変トルクベクタリングとquattroドライブを搭載した非常にダイナミックなサスペンションなど見どころ満載。

The “2016 World Performance Car” award.

ほかにもアウディでは、2005年にA6で「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」、2007年にアウディRS4が「ワールド・パフォーマンス・カー」、同年にアウディ TTが「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」を獲得。

ほかにも、2014年にアウディA3が「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」に選出されるなど、世界中のモータージャーナリストから高い評価を得ています。

(塚田勝弘)

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http://clicccar.com/2016/03/25/362567/