Motor Fan's YEAR 2016

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モトチャンプ

レクサスが28世紀の宇宙船をデザインしたらこうなった!

未来の乗り物はどんなカタチをしているのか? そのスタイルや機能などをあれこれ想像したことがある方は多いことでしょう。

今回、レクサスが28世紀の世界で活躍する宇宙船「SKYJET」を公開しました。

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大型の宇宙船に見えますが「SKYJET」は1人乗りと小柄。加藤 武明チーフエンジニアとデザイナーによる協力のもと、先進的なデザインと技術を予感させるリアルなデザインの船体正面にはレクサスのアイコンであるスピンドルグリルがあしらわれるほか、鋭い眼光を放つヘッドライトを採用し、ひと目でレクサスだと分かります。また、空力性能の高さとスポーティさも表現したとのこと。

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今回の企画の背景には、2001年にリュック・ベッソン監督によって創設された映像製作会社EuropaCorpとのクリエイティブパートナーシップの締結、および2017年7月に公開が予定されている映画「VALERIAN AND THE CITY OF A THOUSAND PLANETS」があります。

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原作は宇宙の平和を維持する2人のエージェントが活躍するフランスのSFコミック「Valérian and Laureline」。SKYJETはその二人が乗る宇宙船であり、公開された画像でも主人公の後ろに二台のSKYJETが鎮座しているのが確認できます。劇中でどのような活躍を見せるのかが気になるところです。

(今 総一郎)

もう箱とは言わせない! ─ 新型フリードのダイナミック・デザインとは?(後編)

ダイナミックさを追求した2代目フリードのデザイン・インタビュー。後半はリアボディからインテリアについて聞きます。

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[語る人]
株式会社本田技術研究所
四輪R&Dセンター デザイン室 1スタジオ
主任研究員 田中幸一
研究員 八木橋慎吾

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── ボディの後ろに移ります。リアドアからのラインはリアパネルまでつなりますが、ここまで目立たせる理由は?

「まずは足周りをしっかり見せて安定感を出したい。また、リアまでラインを回すことによってサイド面とリア面が連続して、箱のイメージが薄くなるんですね。とくに、サイド面はリアに向けてあまり絞っていないので、そのままだと箱そのものになってしまう」

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── リアランプは、シャープなボディの中でかなりボリュームがあり、ちょっと異質です

「それは意図的です。先代が比較的小さいランプで商用車っぽく見えてしまったのに対し、今回は乗用車らしさを狙った。また、ランプの面積が小さくなくなるとリアパネルが重く感じてしまうこともあります」

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── 左右に大きく張り出したリアバンパーは、ちょっと後付け感があってビジーです

「ボディ上部にボリュームがあるので、それに負けない踏ん張り感が欲しかった。もちろん、空力の処理にも効いています。リア正面から見ると、ボディにちゃんと溶け込んでいるのも分かってもらえると思いますが(笑)」

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── ボディカラーは青と黄色だけが明るい色ですが、全体的に明るいイメージで統一しなかったのは?

「先代はボディカラーやインテリアなどで若干質感が足りないとの指摘があった。今回はその点全体的に質感向上を意識し、ベーシックカラーでその部分を支え、その上で世界観を築く2つの訴求色を与えました」

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── インテリアです。ダイナミックな外観に対し、インテリアを水平基調にしたのは?

「初期には流麗な案もありましたが、質感や爽快感をシンメトリーデザインで表現し、断面やタッチで抑揚を付けようと考えました。今回リゾートをコンセプトに、木目を使ったのもその考えからです」

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── 外はダイナミック、中はリゾートというのは一見関係がないように思えますが

「一般的にエクステリアとインテリアでテーマが違うことは珍しくありません。外観と日常である室内とでは目的が異なる。また、ホンダ車のインテリアはいま、構成をシンプルにしつつ質感を上げようという動きがあるんです」

── 最近はやたらとシルバー加飾が目立ちますが、フリードではあまり感じません

「そこは派手にならないよう、意識して素材の構成を考えました。近頃のドイツメーカーもその辺は考えているようですが、今回はメッキは入れても細いラインにするなど、華美な表現は避けています」

── 最後に。ダイナミックな表現としてボディに多くのラインを入れる傾向にありますが、デザインの時間的な耐久性を考えた場合、よりシンプルにという考えもあります

「時代の変化の中でシンプルをどう考えるか、私たちも常に議論をしています。その中で、走るモノの本質的な表現を外さないことが重要だと考えています。先代もかなりラインが入った造形でしたが、ユーザーの評価は高かった。つまり、現在のシンプルさにミートすることも重要だと考えています」

── なるほど、本日はありがとうございました。

(すぎもとたかよし)

もう「箱」とは言わせない! ─ 新型フリードのダイナミック・デザインとは?(前編)

ちょうどいいサイズとして「小さな箱」を表現した初代フリード。「Dynamism and Functionality」を掲げた2代目はそこから何を引き継いだのか、担当デザイナーに話を聞きました。前半はコンセプトからサイドボディまでを語っていただきます。

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[語る人]
株式会社本田技術研究所
四輪R&Dセンター デザイン室 1スタジオ
主任研究員 田中幸一
研究員 八木橋慎吾

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── はじめに、造形上のコンセプトから教えてください

「コンパクト、スポーティ、パーソナルの3つをキーワードとして、機能の詰まった躍動感、つまりダイナミックさの中に広いパッケージを凝縮するイメージとしました」

── 先代は△+□という表現でコンパクトな箱を打ち出しましたが、今回は少し違う?

「はい、箱という考えはないですね。フィットとステップワゴンの間を埋める商品として、誰にでも使いやすいコンパクトさと、同時に広いキャビンも訴求したい。そうした相反する要件の中で、今回はよりスポーティな躍動感を前面に出しています」

── では前から見て行きます。フリードは最近のホンダ車に準じた顔ですが、『ソリッド・ウイングフェイス』とはこの表現に限定されるのでしょうか?

「いえ、あくまでも機能を集約する見せ方であって、表現の幅は広いと考えます。たとえば、極端な話N-ONEも展開のひとつです。現行フィット以降、何となくライトとグリルのセットがソリッドウイングなんでしょ、と思われがちですが、それは違うんですね(笑)」

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── アンダーグリルですが、中央の台形グリルと外側に広げた逆台形ラインの関係性が少し分かりにくいですが…

「他社さんも含め、両サイドにガーニッシュを入れてワイド感を強調する例が多い。ただ、今回はそれをやってしまうとフロントの要素が増えて塊感が薄れてしまうと考えました。もちろん、ワイド感は欲しいですし、サイドビューでノーズを短く見せる役割も兼ねています」

── フロントのコーナー部はいろいろなラインが集まって少々複雑です。とくに、バンパーラインとボディサイドからのラインは衝突しているでは?

「裏事情として、フロントはバンパービームを覆いつつ、同時にコーナー部は歩行者保護として大きくカットする必要があった。その折り合いが非常に難しかったのは事実です。実際、空力も含め、モデリングではかなりいろいろな検討を繰り返しましたので」

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── サイドからのラインは、ホイールに合わせてそのままクルッと下ろしてはダメ?

「それをやるとフロントが重くなってしまうんですね。今回はそれを避けたかった。たしかにラインが集まってはいますが、最終的にはコントロールできたと考えています」

── サイドに移ります。先代のキャラクターラインはフロントホイール部からリアに向けて上り基調でしたが、今回はほぼ平行ですね。

「まずはダイナミックさ、前後への伸びやかさです。また、歩行者保護によりノーズが高くなっていますので、あまり低い位置からラインが始まると前のめりなイメージになってしまうんです」

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── サイドグラフィックは、もっとシンプルな形状にはできなかったのでしょうか?

「初期には単純なアーチ型やリアに抜けた案もありましたが、伸びやかさのために強いベクトル感を出したかった。ちょうど矢印が前後に向かうようなイメージですね。なので、リアクオーターガラスも、とくに先代を意識したわけではないんです」

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── ボディ下部の「切り欠き」はよく見られる手法ですが、上側にフレアを付けてまで強調するのは珍しいですね

「ミニバンの縦横比の中でも、より走りの印象を出すためにキースケッチからあった表現ですね。もちろん5ナンバーの制約は大きかったのですが、ボディのピークから下りてきた面を、ここでもう一度出すことで巧く処理できたと思います」

── なるほど。では続きは後半でお聞きします。

(すぎもとたかよし)

キャンバスのデザインは「陶器の輝き」─ ダイハツ・デザインの新ジャンルをインタビュー(後編)

軽の新ジャンルとして登場したムーブ・キャンバスのデザインインタビュー。後半はボディのリアからインテリア、ボディカラーの話を訊きました。

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[語る人]
ダイハツ工業株式会社
デザイン部デザイン室主任 畑 延広 氏
カラーマテリアルフィニッシングユニット 小池久弥代 氏

── 後編はボディの後ろから伺います。リアパネルは、横から見ると大きくカーブを描いています。一般的なバスのようにルーフを後ろまで引っ張ることもできたのでは?

「テーマであるラウンド感をしっかり持たせたかったのと、タントとの差別化もあります。実際、このボディでルーフを後ろまで引くと、リアに相当な違和感が出てしまうと思います」

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── 横長のフロントに対し、リアランプはほぼ正方形です

「フューエルリッドの位置など機能的な制約もありますが、たとえば前後で横長にしてしまうとボディが短く見えてしまう。ちなみに、フロント同様リアランプもジュエリーがモチーフで、宝石のように見る角度によって表情が変わるよう工夫しています」

── ホイールについてお伺いします。今回は2色塗りのホイールキャップがウリですが、なぜアルミではなかったのですか?

「上級グレードにアルミを付けて特別感を出すより、ホイールキャップで様々な表現を作った方が今回は訴求力があるだろうと。キャップ中心の広い面は、大きなキャビンを支える意図と、同時に愛らしさも兼ねています」

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── ホイールにボディカラーを入れるという発想はありませんでしたか?

「それも検討しましたが、実際にやってみると色があちこち散ってしまう。また、ストライプカラーではホイールとルーフの色を合わせると非常にしっくり来ることが分かったんですね。今回、ホワイトとグレーの2色にしたのはそのためなんです」

── 次にボディカラーです。今回のウリであるツートンのストライプカラーに具体的なモチーフはありますか?

「いえ。一口にツートンと言っても塗り分け方は様々なので、そこの検討をかなりやりました。その中で新ジャンル感があり、かつボディの長さを表現する手法として今回のパターンにたどり着きました」

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── ホワイトのツートンは流行ですが、グレーは珍しいですね

「はい、実は新ジャンルとして男性をイメージしました。メインの母娘に対し、ここは母息子でも父娘でもいいと(笑)。この配色は社内の男性役員にもウケがよかったですね」

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── 一方のモノトーンですが、ツートンとは異なるモノトーンならではの見せ方は考えたのですか?

「そこは何かを強調するのではなく、あえて素のよさを見せたかった。色も、陶器のようにハイライトが白っぽく抜ける、濁りのないモノを作りました。いまどきの2色性のあるギラギラした塗料でなく、より素直な色ですね」

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── メイクアップシリースですが、元々こちらがオリジナルという発想だったのでしょうか?

「そこは難しいところですね(笑)。見せ所であるボディを一周するメッキが似合うデザイン、という発想は当初からありましたので。メイクアップとキャンバスは同時発想と言えるかもしれません」

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── 室内に移ります。インテリアの造形コンセプトは?

「エクステリアに準じますが、ナチュラルさとして大きな面構成による居心地のよさを、アクティブさとしてメッキやカラーでのアクセントを出す。また、革ではなく布目のシボを使うことでもナチュラルさを表現しています」

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── アクセントカラーの3色は何を意図したものですか?

「茶色はナチュラルと上質、ミントはこのクルマのキーカラーとしてアクティブさを、ピンクはやはり女性を意識しました。実は、ピンクはパンプキンイエローと最後まで迷ったのですが、まずは順当にピンクかなと(笑)」

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── シートは3色とも単色で落ち着いたものですね

「インパネやドア内張りのアイボリーと協調する色としました。キャンバスはシート自体が主張をするようなクルマではありませんので、穏やかでシックなイメージにしています。ブラック内装は、男性を意識したグレーツートンのボディに用意しました」

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── 最後に。キャンバスはボディに目立ったラインもなく非常にシンプルですが、デザインの耐久性を意識したものなのでしょうか?

「はい。より長く愛着を持っていただけるよう飽きの来ない造形を意識しています。シンプルなボディですが、基本骨格、面の張り剛性をしっかり確保していますので、長い時間に耐え得るデザインと言えるでしょう」

── なるほど。本日はありがとうございました。

(すぎもとたかよし)

キャンバスのデザインは「陶器の輝き」─ ダイハツ・デザインの新ジャンルをインタビュー(前編)

ミラ・ココアの後継かと思われたムーブ・キャンバスは、まったく新しいジャンルの軽として発表されました。

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そこで「デザインにおける新しさとは何か」を、デザイナーにインタビューしました。前半では、コンセプトからサイドボディのデザインについてお伺いしました。

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[語る人]
ダイハツ工業株式会社
デザイン部デザイン室主任 畑 延広 氏
カラーマテリアルフィニッシングユニット 小池久弥代 氏

── はじめに、造形上のコンセプトから教えてください

「ナチュラル、愛着、アクティブの三つのキーワードから『ステキ・リラックス』としました。女性をメインターゲットとして、「ナチュラル」は柔らかいラウンドシルエット、「アクティブ」は使えるロングシルエット、「愛着」は斬新なツートンのストライプカラーとして表現しています」

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── 昨年の東京モーターショー出品の『Hinata』がオリジナルかと思いますが、有名なVWバス(タイプ2)のイメージも重なりますね

「Hinataの直接の市販版ではありませんが、デザインスタディといえます。VWバスについては、楽しい雰囲気をどう演出するかの検討段階で話に出ましたが、それを目指そうとはなりませんでしたね」

── 近いカテゴリーにタントやミラ・ココアがありますが、2台との棲み分けは?

「家族のタントに対し、母娘のキャンバスは全高を下げ、よりパーソナルなイメージとしています。ミラ・ココアとは同じ『テイスト系』ですが、ロングキャビンによる使い勝手重視のパッケージがキャンバスの独自性でしょう」

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── では、フロントから見ていきます。横楕円のフロントランプには何かモチーフがありましたか?

「いえ、形状自体にはありません。リアに向けて流れるボディラインの出発点としつつ、同時に愛らしさを持たせました。一方で、ランプ内部はジュエリーをモチーフとして、リングと宝石を表現しています」

── サイズに厳しい軽では珍しく、グリルとバンパーに明快な段差を設けていますね

「特徴であるツートンのストライプカラーを際立たせるため、ここはわざわざ別パーツで構成しました。こうした立体造形は質感のアップにもつながるんですね」

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── 丸いエンブレムはかなり大きめですが、アクセントの意図があるのですか?

「はい。ミラ・ココアもそうですが、テイスト系のクルマでは社名のDの字以外の専用表現としています。今回は『canbus』のCとBをモチーフとし、女性が身につけるアクセサリーをイメージしてまとめました」

── ボディサイドに移ります。ルーフの前後ではかなり丸みを持たせましたね

「シンプルな面でラウンド感を出したかったのがひとつ。もうひとつは愛着の表現でもありますが、思わず手で触りたくなるような優しい面の質感を出したかった」

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── 一方で、左右方向は大きく絞りませんでした

「タントほどではありませんが、やはり適度な広々感は必要です。また、左右の角をあまり削ってしまうと、ルーフラインの前後長がなくなり、キャビンが短く見えてしまうんですね」

── すべてのピラーがブラックアウトされていますが、これは必須条件でしたか?

「はい。前から後ろにスッと抜けることで、サイドボディの大きな面がうまく分割され、前後への長さ感が出てきます。同時に、シルエットをタントと異なる表現にしたかったこともあります」

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── その広いサイドボディですが、メッキモールの少し上に折れ線というか、淡いラインを入れたワケは?

「これだけ広い面なので、張りを持たせるためには面を一旦凹ませて再び出す必要がありました。これがないとペナペナになってしまう」

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── ホイールアーチについて、最近は強い凹面でキッチリした表情を出す例が多いですが、キャンバスはずいぶん穏やかな面です

「実は、当初からボディを陶器のように滑らかに見せたい意図があって、強い表現はやりたくなかったんです。また、ことさら走りを強調する必要もないので、最低限の凹面で微妙な表情を作ったわけです」

続きは後編にて…

(すぎもとたかよし)

マツダデザインの歴史とデザイナーとエンジニアの共創【戦後から1980年代まで】

マツダにとって5年連続の出展となる「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2016」では、開発者トークセッションも開催されています。プレス向けに開催されたトークセッションは、同期間中と同じ「マツダデザインの歴史」、「デザイナーとエンジニアの共創」がテーマ。

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ここでは、マツダのデザイン本部 ブランドスタイル統括部 主幹の田中秀昭氏による戦後から1980年代までのトークの概要をお届けします。

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現在、クルマ以外のマツダのデザインを担当している田中氏は、マーチャンダイジングなどのほか「デザインタッチ」などのイベントにも携わっています。以前は世田谷にあったエムツー(M2)でロードスターの「1001」、「1028」なども担当していたそうです。

マツダの歴史は戦後の焼け野原からスタート。戦後、三輪トラックを作っていた頃からインダストリアルデザイン(工業デザイン)を採り入れていて、当時、インダストリアルデザイナーの第一人者であった小杉二郎氏に三輪トラックのデザインを依頼。

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三輪トラックからスタートしたマツダのデザインは、1960年代のモータリゼーションを迎えると「ピラミッドビジョン」を掲げます。

同ビジョンは、一番下に軽自動車があるという需要構造を見立て、マツダのクルマも小さな軽自動車から段階を踏んで大きなクルマへと行く考え方。つまり、乗用車需要の底辺を支えようという意図です。

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1959年12月、デザインルームである機構構造型課 造型係が発足。なお、上の写真はキャロルのドアを開発、設計している様子です。

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1960年、マツダが初めて販売した乗用車「R360 Coupe」は、戦後初めて車名にクーペの名が付いたモデル。メインのデザイナーは先述の小杉二郎氏ですが、1958年に入社したマツダ初のデザイナーである小林平治氏(1年後にはコスモスポーツをデザイン)も一緒にデザインしていました。

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「R360」は、ドアやボンネット、トランクなどにアルミを使うなど徹底した軽量化が図られているほか、薄い鉄板に強度を持たせるためビードが入れられています。これが、寸詰まり感のある軽自動車を伸びやかに見せ、あえて「2+2」になりきることでキャビンを小さくすることで、当時の軽の中で、最も全長が短く、全高が低くても存在感を放つことができました。

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さて、今回の「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2016」に展示されている「ルーチェ ロータリー クーペ」に話が飛びます。三角ウインドウもBピラーもないハードトップは日本初の試みで、マツダ初のFFでもあります。当時、ベルトーネに在籍していたジウジアーロのデザインであることは広く知られていますが、実際は異なるそうです。

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まず、ベルトーネ(ジウジアーロ)のデザインモデルを元に、マツダ社内で4ドアセダンを試作。さらに、これをベースにルーチェのセダンが生まれ、さらにセダンをベースに社内のデザイナーがクーペ化を図ったという流れ。

同車のオーバーハングが短くできたのは、「13A」型ロータリーエンジンの高さ方向を大きくし、全長を短く(厚さ)を薄くすることで実現。エンジニアとデザイナーが一緒になっていい物を作り上げるというのは、現在の魂動デザインと同じような考え方といえます。

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そのほか、北米への輸出の時代を迎え、マスキー法を逆手に取った経営戦略を採り、「サバンナ」が登場。世界唯一のロータリーエンジンは力強さが特徴であり、それを積む「サバンナ」は、百獣の王であるライオンを表現。もちろん、サバンナが持つ誇りや力強さが込められています。

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オイルショック後、エコなモデルにシフトしていき、1980年代に入って5代目ファミリアが登場。フォードからデザイナーが多く来日し、フォード・レーザーをデザインする彼らの仕事ぶりを隣で見て刺激を得ていたそうです。

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「コスモAP」はオペルに一度移ってから再度マツダに戻ってきた河岡徳彦氏による仕事で、ヨーロピアンな香りが漂っています。しかもCd値は0.32で世界屈指の空力性能を誇ったボディでもありました。

(文/写真 塚田勝弘)

マツダの「魂動デザイン」の魅力が分かる「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2016」

2020年に100周年を迎えるマツダ。CX-5やアテンザ、アクセラ、デミオやCX-3、ロードスターといった新生代商品を擁し、黒い外観が印象的な新世代店舗の展開など、ブランド力向上に注力しています。

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しかし、マーケティング戦略だけでブランドとして認知されるほど甘くないのは重々承知で、商品そのものを絶えず磨き上げているのが上記の新世代商品というわけです。

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マツダの魅力といえば、「走り」はもちろんですが、デザインテーマに「魂動(こどう)」を掲げることで、ファンを着実に増やしています。

マツダのデザインの魅力を訴求する場として、5年連続となる「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2016」に出展しています(10月14日〜23日まで開催)。

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今年のテーマは「Mazda Design Elegance」で、今秋日本で予約販売を開始する予定になっているマツダ ロードスター RFの北米仕様モデル「Mazda MX-5 RF」をはじめ、1969年に発売されたマツダ初のFFモデル「ルーチェ ロータリークーペ」を展示。

なお、同モデルはイタリアのベルトーネによる4ドアセダンのデザインを元に、マツダ社内のデザイナーが独自のテイストを加えたクーペデザインが特徴です。

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初日の14日には、マツダ デザイン本部 ブランドスタイル統括部 主幹の田中秀昭氏、デザインモデリングスタジオ 部長の呉羽博史氏がマツダのブランドストリーをデザインの面から語るトークセッションが開催されました(こちらは別記事でご紹介します)。

そして、東京ミッドタウンのプラザ1F(キャノピー・スクエア)に展示されていたMazda MX-5 RFを前に、チーフデザイナーであり現在の主査でもある中山 雅氏が最もこだわりがつまったファストバックスタイル、リトラクタブルハードトップの開閉動作の美しさについて解説。こちらも別記事でご紹介します。

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そのほか、資生堂と一緒に開発したマツダの「魂動(こどう)」デザインの世界観を表現したというフレグランス「SOLE of MOTION」も出展。10月23日(日)まで東京ミッドタウンで開催されていますので、気になる方は訪れてみてはいかがでしょうか。

(文/写真 塚田勝弘)

カーデザインも「AI」で!? 次期「GT-R」や「フェアレディZ」に活用か?

日産自動車がカーデザインへの「AI」(人工知能)導入に挑戦しているそうです。

8月31日に同社が開催したシンポジウムで、総合研究所の上田哲郎氏が明らかにしたもので、同氏によると、まだ実験段階としながらも、すでに「AI」にデザインを任せたことがあるとしており、実用化への可能性を示唆しています。

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手法としては、「AI」に膨大な画像を認識させることにより自動車の共通点を抽出、演算させることでデザインのベースとなるアイデアをアウトプットできるそうです。

昨年3月にジュネーブモーターショーで同社が公開した次期「マーチ」のコンセプトモデルとみられる「SWAY(スウェイ)」 や、10月の東京モーターショーに出展したコンセプトカー「日産 IDS」、さらには次期「フェアレディZ」次期「GT-R」などでも「AI」が創出したデザインモチーフが取り入れられている可能性も。

「AI」がすぐに人間のデザイナーに取って代わる訳ではないものの、常に新しいアイデアを求められるデザイナーにとって、心強いパートナーになりそう。

日産ではデザイナーにインスピレーションを与えることが可能としており、これまでに見たことが無いようなデザインが得られたことから、今後はスポーツカーやコンパクトカー、ミニバンなど、カテゴリー別にアウトプットできるように改良するそうです。

一方、トヨタ自動車は今年1月、「AI」を開発する新会社「TRI」(Toyota Research Institute)を米国に設立 。

自動運転や家庭用ロボットの分野での「AI」活用を研究しており、今後はいっそう、「クルマ」と「AI」の関わりが深まりそうな状況になって来ました。

Avanti Yasunori・画像:日産自動車)

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「キーンルック」は『意外性』と『緩さ』!? 新しいトヨタフェイスの正体について訊く

エスティマがビッグマイナーチェンジを行い、最新のトヨタフェイスに一新されました。

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次々に展開されるトヨタの新しい顔ですが、そもそもこの顔にはどんな意味が込められているのか、あらためてその真意を聞きました。

[語る人]
トヨタ自動車株式会社
トヨタ・コンパクトカー・カンパニー デザイン部長
CVカンパニー 主査 服部繁也 氏

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── まず、「キーンルック」や「アンダープライオリティ」といった考え方は、どんなきっかけから生まれたのでしょうか?

「トリガーは2回です。まず欧州戦略で、シェア5%と伸び悩む理由にトヨタ車としての共通項の欠如、ブランド力の弱さがありました。そこを何とかしたかった。もうひとつは先代プリウスでの取り組みです。空力のためにアッパーグリルはツルッとさせて空気を流しつつ、冷却はアンダーグリルに集中させた。この両者がいまの表現につながっています」

── マツダのイメージモデルのような、デザインのキーとなる造形やスケッチはありますか?

「いえ。トヨタはフルラインメーカーで、かつ世界展開も幅広いですから、そうした原型のような考えは縛りになってしまいます。今回のエスティマも結果的には薄い目に大きなグリルとなりましたが、当初には異なるアイデアもいろいろありました」

── しかし、そうは言ってもデザイン部内での共通認識は必要ですよね?

「そこは専務役員の福市得雄が、常に現場に対し語りかける機会をもっています。福市は5年前にデザイン本部長に就いて以降『意外性』をテーマに社外へメッセージを発信していますが、同時に社内トップ会議にも目を配ることで現場を喚起しています」

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── カローラやカムリ、SAIなど、キーンルックはそれぞれの表情や個性の表現が難しいのでは?

「キーンルックを最大限に表現するのはあくまでヴィッツなどグローバル・コアモデルに絞っていて、たとえばパッソやアルファードなど国内向けモデルではそこまでやらない。ただ、たとえば新しいプレミオ・アリオンでは、グリルは大きいけれど、フォグランプ周りにメッキを施して重心を下げ、それをこのクルマのアンダープライオリティとしている。そういう自由度は残しているということです」

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── キーンルックはどんどん先鋭的になります。先ほど意外性という話がありましたが、より派手に展開するしかないのでしょうか?

「今回のエスティマでは、顔の表現をよりツルッとさせました。先代はアンダーグリルが左右に張った顔をしていましたが、本来のエスティマはこっちじゃないかと。つまり、単に派手にするのではなく、クルマごとにあるべき表現を考えている。ちなみに、よく誤解されるのですが、キーンルックとは新しい顔の表現全体のことで、細長いグリルやランプのことではありません」

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── アンダープライオリティは開口部が大きく、表情が大味で、ややもすると改造車のようになりませんか?

「そこは配慮しています。たとえば新しいエスティマのグリルは横バーを挟んで上下に開口部がある。上のグリルは結構高い位置にあるので、そのまま下までハの字にしてしまうと大きすぎてしまいます。なので、サイドラインからの流れで挟み込んで六角形としました。これはアクアと同じ考え方ですね」

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── アンダープライオリティにも幅がある?

「はい。もともとはハの字の開口によって視点を下げることが目的なのですが、エスティマやアクアでは、アクセサリーランプを組み込んださらに外側のハの字で視点を横に引っ張る次のステップにもトライしている。シエンタもその応用ですね。そういう幅、ある種の緩さがあるのがキーンルックということです」

── なるほど。ありがとうございました。

(すぎもとたかよし)

「軽」を作ってなければ出来なかった!? ブーン・パッソ、超合理性のデザイン。

「軽じゃないK」(トヨタ)というキャッチーなコピーで登場した新型ブーン/パッソ。一見キープコンセプトなモデルチェンジの進化点はどこにあるのか?あらためてチーフデザイナーに話を聞いてみました。

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[語る人]
ダイハツ工業株式会社 デザイン部
第1デザイン室 東京デザイン課長 清水幸治 氏

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── はじめに体制面からお伺いします。新型は企画・開発がダイハツ主導になりましたが、デザインをする上での影響はありましたか?

「ありましたね。生活に密着し、かつ廉価なコンパクトという条件では、制約の大きい軽での経験は非常に有利でした。また、トヨタさんにとってはエントリーですが、ダイハツでは上級車という立ち位置の違いも実は大きいんです」

── 造形上のテーマ、キーワードは?

「合理性です。初代は円柱、2代目は卵をボディのモチーフにしつつ、大きなフレアでタイヤの存在感を出しました。ホイールベースを50ミリ延ばした今回は、タイヤをさらに四隅に置いて、プロポーションとパッケージを高次元で成立させました」

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── では前から具体的に。標準車であるXはランプとグリルを横長に、上級のシルク/モーダは丸形と六角形としました

「今回はトレッドも拡大し、Xではそのワイド感を強調するため横基調に、シルク/モーダは上級車として、ひと目見て忘れない記号性の強い丸形ランプとしました。六角形のグリルは左右に広がる形状として、やはりワイド感を狙いました。実は、六角形がこのクルマのキーになっているんです」

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── バンパーは、先代に続いてプロテクト感を強調していますね

「コンパクトとしての安心・安全と、同時にワイド感、安定感の表現です。丸いフォグランプを左右両端の低い位置にしたのも同じで、印象的な形で視線を下に引っ張り、安定感のある台形ボディを表現しました。これはリアでもやっています」

── 横からのシルエットでは、ルーフからリアへ向けて大きな曲面とし、ウインドウ・グラフィックもこれに沿うように丸いのが特徴です

「リアの大きなRは居住空間確保のためです。ウインドウ・グラフィックは、実は外周が大きな六角形になっています。Xのキャラクターラインはフロントフェンダーでカクっと上を向いていますが、ここが六角形のカド部分です。先代まではボディ全体で居住性を表現しましたが、今回はこの六角形のグラフィックで広さを示しています」

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── リアピラーの黒いガーニッシュはワイド感の強調ですか?

「はい。同時に空力パーツとして整流線を入れています。ここは板金の方が安上がりなのですが、成形が難しく樹脂としました。一方、その前のリアドア後端はボディ色のままですが、これはリアへの目線をここで一旦止め、コンパクトカーであることを認識させるためです」

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── 先代までは縦長のリアランプが、今回はほぼ正方形です。ワイド感を出すには横長もあり得たのでは?

「実はリアランプも六角形で、先端をセンターに向けることでワイド感を出しています。また、左右のランプを結ぶラインがリアパネルのピーク面となっていて、これもワイド感に効いているんです」

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── ボディカラーですが、パステル調が多いコンパクトカーの中で、かなり彩度の高い色を集めましたね

「まず、アイキャッチ性を考えて高彩度の青・赤・黄の3原色で脇を固め、その中で数色を配することでバラエティを感じてもらいたいと。また、今回はより質感重視の意図から、あえてマイカ色をメインにしています」

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── 内装ですが、ダッシュパネルは構造も配色も上下2段構造です

「運転席に座ってパッと目に入るのはパネルの上半分なんです。で、今回は限られたコストを上部に集中させ加飾類を配しました。例の六角形を用いたパネルも、フォグランプを反復させた両端の丸いエアダクトも上部にまとめたわけです」

── なるほど。本日はありがとうございました。

(すぎもとたかよし)

ロードスターのデザインは薄着勝負!? RFの狙いはどこに?

マツダ・ロードスター(海外名MX-5)が、2016年ワールド・カー・オブ・ザ・イヤーに加え、ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤーを同時受賞しました。

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同じくファイナリストだったジャガーXEを下しての受賞。その理由はどこにあるのか? 受賞直後のいま、あらためてチーフデザイナーに話を聞きました。

[語る人)
マツダ株式会社デザイン本部
チーフデザイナー・中山 雅

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──まず魂動デザインそのものについてお聞きします。今回は世界的な賞を受賞したわけですが、そもそも魂動デザインは海外市場を想定したフィロソフィーだったのでしょうか?

「意識はしますが媚びはしません。たとえば、アメリカ人に寿司を出すにはマヨネーズをかけた方がウケそうですが、それでは日本発信の意味がない。マツダがいま考える日本美の本質は「引き算」の美で、油彩のように絵の具を盛るのではなく、水墨画のようにスッと一発で決めるような美しさです。まだまだ試行錯誤中ですが、そこを突き詰めれば世界に通用すると確信しています」

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──獣がいまにも走り出しそうなイメージを伝えるのが魂動デザインですが、いまエモーショナルなデザインは世界的時流とも言えます。その中で魂動デザインの独自性はどこにあるのでしょう?

「ロードスターでは、エモーショナルとシンプルという相反する要素の両立を目指しました。服装でたとえればシンプルとはTシャツにジーンズのような薄着。そこでエモーションを表現するには体形のよさが必須です。つまり、ベースがよければ薄着でもいいデザインはできる筈。その点、逆に厚着に頼っているメーカーがあるかもしれませんね(笑)」

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──マツダの新世代ラインナップはシグネチャーウイングやボディのキャラクターラインなど、コンセプトカー「SHINARI」のモチーフを採用していますが、ロードスターだけにはその要素が見当たりません

「遠目でSHINARIを見ると本質的なスタイルのよさが浮かんできますが、そこを採り入れたと。全長3.9mのコンパクトなボディで、しかもドライバーが外から見えるという特殊な条件では、できるだけ要素を省く必要があったのです。つまり、ロードスターだからこそのデザインアプローチなんです」

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──では、受賞の話を。あのジャガーを抑えての快勝となったわけですが、今回、世界のジャーナリストからはどのような評価の声が届いていますか?

「やはりプロポーションのよさですね。中でもフロントオーバーハングの短さ、キャビンの小ささへ賞賛をいただいています。このミニマムなボディは、いわば設計部門の全面的協力があってこそです。つまり、単にカタチの評価だけではないことがダブル受賞の価値だと思っています」

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──ただ、プロポーションのよさはどのメーカーも意識しているかと思いますが、マツダデザインとの違いはどこにあるのでしょう?

「条件、つまり機構等によるデザインの制約はどこも一緒なんです。デザイナーの仕事というのは言ってみればその制約をいかにクリアするかで、最初からあきらめてしまうか否かの違いでしょう。各国のデザイナーによるプロ視点では、よくぞそこを突破したネという評価だと思います」

──受賞会場のニューヨーク・ショーではファストバックスタイルのRFを発表しました。ルーフ全体が格納できなかったことからの逆転の発想と聞きますが、この提案も世界に影響を与えそうですね

「はい。一見タルガトップに見えつつリアガラスが開く、つまりエンジン音がオープンと同様に聞こえるというのはまったく新しい価値です。また、実は屋根は開かなくていいからクーペを作って欲しいという声が多いのですが、その回答のひとつになるかもしれませんね」

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──では最後に今後について。発表間もない新型としては、次のモデルチェンジまでの長い間、いかに魅力的な成長をするのかが重要です。その点、何か具体的な計画はありますか?

「たとえば黄色のボディが出たら絶対買う!など、スポーツカーの購入動機は実用車とちょっと違う。今回のRFもそうですが、そうした特別な嗜好に応えるような展開が必要です。もちろん色も重要な要素ですね。いずれにしても、ロードスターは明快な理由をもってデザインしたクルマですから、そこをひっくり返すようなことは絶対にしませんので安心してください(笑)」

──本日はありがとうございました。

(聞き手:すぎもとたかよし)

新型インプレッサに込めたデザインとは?

「スバル グローバル プラットフォーム」を採用する第1弾モデルであるスバル・インプレッサ。

全長4625×全幅1777×全高1465mm(セダン/北米仕様)というサイズは、先代モデルから全長が45mm長くなり、全幅は37mm広くなっており、10mm下がった全高以外はひと回り大きくなったといえるでしょう。

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見どころのひとつがデザイン。スバルが新たに掲げるデザインフィロソフィーの「DYNAMIC×SOLID」の第1弾でもあります。

スバル商品企画本部 デザイン部の部長である石井 守氏によると、新型インプレッサは「DYNAMIC×SOLID」という大きな考え方を元に、「スポーティ&アドバンス」というコンセプトも掲げられているそうです。

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外観は美しさを重視し、フロントからサイド、リヤにかけて流麗で躍動感と塊感のある骨格として、37mm拡幅されたことでサイドはホイールをより外にあるように感じさせ、スタンスがよく絶対にロールオーバーしない安定したカタチとしています。

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大きく張り出した前後ホイール(ハウス)は、どこにも出かけられそうな雰囲気とし、サーフェイスは躍動感と塊感を象徴的に扱うものを模索した結果、コンセプトカー「VIZIV」などから引き続き「V」の字を進化。

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フロントマスクにもスバル全車共通のモチーフが採用されていて、それが「ヘキサゴングリル」とヘッドランプの中にある「コ」の字の表現。「セットでスバルの顔」だそうで、スバルが掲げる「安心と愉しさ」を演出されています。

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「ヘキサゴングリル」については、スバルの成り立ちである6つの会社ひとつの角に表現し、ハニカム構造も安心感につながるものとしています。

また、「コ」の字の表現には、中島飛行機のDNAが注入されているそうで、当時作っていた飛行機のレシプロエンジンである「栄」や「誉」などの星型エンジンのコンロッドやピストンも表現されているとのこと。

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インテリアでは、スバルの骨格のモチーフを使いながら質感を向上させているのがポイント。

なお、カップルディスタンスが10mm拡大し、フロアコンソールも広がったことでレイアウトの自由度や質感向上にも寄与しているようです。

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最近のマツダなどもデザインのストーリーを語るようになっていますが、走りだけでなくデザインも雄弁に語るものとしているのは、聞いていて楽しくなる気がします。

(文 写真/塚田勝弘)

【関連記事】

■「SUBARU GLOBAL PLATFORM」第1弾の新型インプレッサはどんなクルマなのか?
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■新型スバル・インプレッサはサイズ拡大で広さはどうなったか?
http://clicccar.com/?p=368145

寒天から作った梱包資材が環境を守る~「LEXUS DESIGN AWARD 2016」グランプリ決定

レクサスは、第4回となる「LEXUS DESIGN AWARD 2016」のグランプリをデザイングループAMAM(アマム)の「寒天から作った梱包資材」に決定したと発表しました。

海草の寒天は日本では昔から食品として利用されてきましたが、デザイングループAMAMは多孔質的な構造や、ボリュームに対して非常に軽い点に着目して、寒天から作ったクッションなど梱包資材を試作・出品し、さらに寒天製パッケージを提案しています。

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一般的なプラスチック性梱包材は、破棄されるとゴミとなり、リサイクルするにしても環境負荷が懸念されます。

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その点、寒天から作った梱包資材は、使用後に土に混ざっても土壌の保水力を向上させる効果があり、海に流れた場合も天然素材のために海洋生物を害さない、という環境保全性に優れた利点を持っています。

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デザイングループAMAMは、荒木宏介さん、前谷典樹さん、村岡明さんによる多摩美大:プロダクトデザインの同期生のグループです。今後の活躍が期待されます。

(山内 博・画像と動画:レクサス)

レクサスがミラノに独創のデザイン空間を出現させた目的は?

レクサス(トヨタ自動車)は、イタリアで開催された世界最大のデザインエキジビション「ミラノデザインウィーク2016」で、レクサスのデザインフィロソフィーを来場者に体験してもらう事を目的とした大掛かりな空間を創出しました。

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「ミラノデザインウィーク」は、ファッションブランドや家具メーカーがブランドの独自性をアピールする場で“ミラノサローネ”とも呼ばれています。

今回レクサスは、イベント会場となったミラノの「スパツィオ・レクサスートルネリア」に、クラフトマンシップと技術力、デザインフィロソフィーを体験できる空間、「LEXUS-An Encounter with Anticipation(期待との出会い)」を設置しました。

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レクサスはこの空間の創造にあたり、イベント来場者に驚きと感動を提供すべく、世界が注目する若手デザイナーズ・デュオの“フォルマファンタズマ”と新進気鋭のシェフ、徳吉洋二氏を起用。

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両者とのコラボにより、新たなデザインの可能性を創造することを目的にしており、「LEXUS-An Encounter with Anticipation」ではテーマごとに3つのエリアを構成。

“クラフトマンシップとの出会い”を創出したエリアでは、レクサス「LF-FC」と同じ塗装工程により匠の技で仕上げられた16脚の美しいスツールや、日本の“障子”から発想した壁が織りなす空間の中央に、無数の糸で形作られた「LF-FC」の三次元イメージが変形しながら姿を現す作品を展示しました。

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一方、全世界のクリエイターを対象とした国際デザインコンペティション「LEXUS DESIGN AWARD」では、世界73カ国から応募があった1,232作品の中から12点を入賞作品として選出。

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その中の“Anticipation”(予見)をテーマに制作された4作品の中から、“AMAM”が寒天を使って表現した梱包資材「AGAR PLASTICITY」をグランプリに決定。

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梱包材として使用後も土壌の保水力向上に寄与、天然素材で海洋生物にも害が無いなど、環境保全に考慮している点を評価、他の作品と共にイベント会場に展示しました。

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レクサスでは今回の出展作品の一部をミラノへの出展後、東京・南青山の INTERSECT BY LEXUS -TOKYOで5月に凱旋展示を予定しているそうです。

トヨタ自動車ではこうした著名イベントを活用して「レクサス」を世界にアピールすることで、ブランド力をよりいっそう高める狙いがあるようです。

Avanti Yasunori

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「木製」のコンセプトカー登場。トヨタと住友林業がコラボ

4月12日(火)~17日(日)に伊ミラノで開催されるデザインウィーク2016(ミラノサローネ)に、トヨタ自動車が住友林業とのコラボで製作したコンセプトカー「SETSUNA(刹那)」を出展するそうです。

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車名の「刹那(せつな)」は、短い時間の繰り返しの中でかけがえのないものになっていく、という想いを込めて命名。

クルマが家族の積み重なる想いを受け継ぎ、人々と共に歳月を経て変わっていくことを愛でる、という“人とクルマの新たなつながり”を表現するコンセプトカーです。

外板やフレームなどに環境や使われ方で色や風合いが変わり、味わいや深みが増す材料として「木」を使用。

そのボディラインは船のような美しいカーブを描いています。

同車の製作に協力した住友林業はコンセプト具現化のための木部設計、加工、組立ての提案の他、フレームや各種パネル用の樹種の選択、木構造の知識などをトヨタと共有。

メンテナンス性を考慮して、外板パネルは容易に取り替えられるように工夫されており、釘やネジを使用しない日本古来の伝統技法を取り入れるなど、木造住宅に活用されている技術が織り込まれています。

木材は全て国産材に拘り、ボディ外板には高知県にある住友林業社有林の杉を使用。

インテリアには世代を超えて時を刻む100年メーターを設置、インパネ・シートには「栓(せん)」、ステアリングに「檜(ひのき)」、フレームに「樺(かば)」、フロアに「欅(けやき)」をそれぞれ使用。

トヨタはこれまでのクルマに存在し得ない新しい価値観を持たせたとしており、ミラノデザインウィークでの反響が注目されます。

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新型インプレッサが示す「次世代スバル・デザイン」とは?

スバルが新型インプレッサをニューヨーク国際自動車ショー(3月23日〜4月3日)に出展しますが、ショーに先立ちティザーフォトが公開されました。

先日開催されたプレス向けの「次世代SUBARU説明会2016」では「スバル デザイン戦略」として、スバル商品企画本部 デザイン部の石井 守部長が登壇し、スバルのブランドスローガンである「安心と愉しさ」を磨くため「新スバル デザインが目指すこと」をテーマとしたプレゼンを披露。

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なお、新型インプレッサは「SUBARU GLOBAL PLATFORM(スバルグローバルプラットフォーム)」を採用する第一弾で、スバルの歴史の中でも第5世代に位置づけられるモデルになります。

石井デザイン部長は、「カタチの意味」、「DNAの意味」、「機能の意味」の3つの意味を掲げ、その3つが重なる領域を具現化したものを「スバルならではのデザイン」として紹介。

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抽象的で少し分かりにくいですが、スバルは「技術で価値の両立に挑戦」した過去から、「クロスオーバー デザインで新しい価値を創造」してきた現在、そしていまから2020年以降の未来は「新時代のライフスタイル デザイン」を探求するとしています。

その未来は、「堅牢性」+「遊び心」+「スポーティ」+「室内空間」というキーワードを具現化したものを目指すそうです。

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デザインを個別に見ていくと、顔であるフロントマスクは「SUBARU FACE DESIGN」と呼び、いわゆる「ヘキサゴングリル」を中心に「コ」の字型のヘッドライトで印象的なものとして、スバル車共通のイメージを構築。

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また、全体のフォルムやディテールは、2013年からスタートされている「DYNAMIC(躍動感)」×「SOLID(塊感)」がテーマで、コンセプトカーの「VIZIV 2」、「VIZIV GT」、「VIZIV FUTURE」、そして新型インプレッサまで反映され、今後も発展・進化していくとしています。

また「DYNAMIC×SOLID」を掲げる新型インプレッサ(コンセプトカー)については、「サイドウインドウ下端が切れ上がったデザインが採用されているようだが、斜め後方の視界確保はどうなるか?」という質問がありました。

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石井氏は「DYNAMIC×SOLIDデザイン」を採用した新型インプレッサ(コンセプト)は、コンセプトカーのためサイドウインドウは小さくしているが、市販モデルの新型インプレッサは現行インプレッサよりもサイドウインドウは小さくなる傾向あるが、それでも他メーカーよりも大きく斜め後方視界は良好で、カメラなどのサポートも併せて窓ガラスの視界性能と「DYNAMIC×SOLIDデザイン」の両立ができているそうです。

(塚田勝弘)