Motor Fan's YEAR 2016

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【WEC第5戦メキシコ】トヨタ6号車が3位に入賞! ドライバーズ選手権も2位に浮上!!

9月3日(土)、FIA世界耐久選手権(WEC) 第5戦・メキシコ6時間レースが開催されました。

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25年振りの開催となったエルマノス・ロドリゲス・サーキットは、メキシコシティの中心地から車で20分程度の距離にあり、メキシコシティ国際空港近くの市立公園内にあります。

この一帯にはスポーツ施設が集まっており、サーキットの最終コーナー内側にはフォロ・ソルという野球場があったのですが、2015年の改修で野球場のスタンドを観客席として再利用するなど、なんとも個性的なサーキットです。

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ポールポジションを獲得したアウディ8号車と3番手スタートのアウディ7号車が、スタートでワン・ツー体制に。ポルシェの2台がすぐ後ろに続き接近戦を展開しますが、39周目にトップのアウディ8号車がLMP2クラスの接触を避けるためコースオフ。その隙を突いて、2番手を走行していたポルシェ1号車がトップの座を奪います。

1周が4.304kmでWECの行われるサーキットでは1周が最も短く、LMP1-H車両にとればトラフィックが大きな問題になり、通常とは異なるハプニングも発生しました。

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レースが半分を過ぎた頃、雨が降り始め、お客さんも大慌て! 急いでレインコートを身に着けている様子が映っていましたね。

各クラスのマシンがピットに向かいレインタイヤに交換するなか、アウディ8号車はインターミディエイトタイヤを選択しましたが、その直後に激しいクラッシュ……。マシントラブルに起因するクラッシュで、修復に30分以上を要したため表彰台争いからは完全に脱落。最終的に27位でレースを終えました。

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2番手を走行していたポルシェ2号車がLMP2クラスのマシンに追突され、破損したリアカウルを修復するため緊急ピットイン。

これによりトヨタ6号車が接近し、ステファン・サラザン選手(トヨタ6号車)がオーバーテイクを決め3位になります。その後も6号車のペースは良好で、レース残り20分のところで、2位を走行していた7号車のアウディに接近するもそのまま3位でフィニッシュとなりました。

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好調に見えるトヨタ6号車ですが、実は厳しい週末のスタートだったのです。

木曜日の午前中に行われたテスト走行中に事故に遭ったせいでその後に行われた2度の練習走行に出走できず、レースに向けてのロングランテストを行うことができませんでした。

この苦境を乗り越え、見事に3位表彰台を獲得するなんてかっこよすぎる!

この結果、トヨタ6号車の3人のドライバー、ステファン・サラザン選手、マイク・コンウェイ選手、小林可夢偉選手は2016年シーズンのドライバーズ選手権で2位に浮上しました!!

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一方、トヨタ5号車はアンソニー・デビットソン選手が8月中旬にフランスのマニクールで行われたプライベートテストでクラッシュ。助骨負傷でレース欠場となり、セバスチャン・ブエミ選手と中嶋一貴選手のふたりでレースに挑むことになりました。

中嶋選手がドライブ中、パワートレーンの電気系に問題が生じ、修理のためにマシンはピット・ガレージへ持ち込まれてしまいます。懸命の修復が試みられましたが、時間内の完了は困難と判断され、悔しいリタイアとなってしまいました(涙)。

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コースレイアウトや天候など、全ての要素が合わさって波乱のレースとなりましたが、見事1位を獲得したのは5番手スタートのポルシェ1号車でした。

前戦に引き続き、2戦連続優勝となったポルシェ1号車ですが荒れたレースの中でしっかりと1位を獲得するところは、さすが昨年のドライバーズチャンピオン! チームワークばっちりです。

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次戦のWEC(9月17日)はアメリカ・テキサスのオースティンに移動し、COTA(Circuit Of The Americas)で開催されます。またしてもポルシェが優勝するのか、それとも他のチームが優勝するのか、そろそろトヨタの優勝も見たいところです!

■LMP1-Hクラス
順位/No./チーム/車名/タイム差
1/#1/ポルシェチーム/Porsche 919 Hybrid
2/#7/アウディ スポーツ チームヨースト/Audi R18/1’01.442
3/#6/Toyota Gazoo Racing/Toyota TS050-Hybrid/1’09.709
4/#2/ポルシェチーム/Porsche 919 Hybrid/1’30.004

■LMP2クラス
順位/No./チーム/車名
1/#43/スポーツ by モーランド/Ligier JS P2
2/#36/シグナテック アルピーヌ/Alpine A460
3/#31/エクストリーム スピード モータースポーツ/Ligier JS P2

■LM-GTE Proクラス
順位/No./チーム/車名
1/#97/アストンマーチン・レーシング/Aston Martin Vantage V8
2/#51/AFコルセ/Ferrari488 GTE
3/#95/アストンマーチン・レーシング/Aston Martin Vantage V8

■LM-GTE Amクラス
順位/No./チーム/車名
1/#88/アブダビ-プロトン・レーシング/Porsche911RSR
2/#83/AFコルセ/Ferrari458 Italia
3/#78/KCMG/Porsche911RSR

(yuri)

【WEC第4戦ニュルブルクリンク】トヨタがもう一つのホームレースで今季初勝利を目指す!

WEC第4戦ニュルブルクリンク6時間耐久レースが7月24日(日)に開催されます。

ニュルブルクリンク・サーキットは、チームの本拠地であるドイツ・ケルンから車で1時間ほどの場所にあり、ル・マンでの悪夢を振り払い、心機一転、勝利を目指すのに最高の舞台と言えます。

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レースにはル・マン24時間レース用に開発された低ドラッグ空力仕様ではなく、ストレートの距離が短く、タイトなコーナーをもつニュルブルクリンクに合わせた超ハイダウンフォース仕様のTS050 HYBRIDが投入されます。

ケルンのトヨタモータースポーツ有限会社(TMG)の風洞で開発された新しい空力仕様は、最高速性能と引き替えにより強力なダウンフォースを生み出し、これが、これからのシーズン後半戦へ向けたパッケージとなります。

7月22日(金)に行われる公式練習走行では、5.137kmのニュルブルクリンク・グランプリコースにおいて新しい空力仕様の検証とそのセッティングが進められる予定。尚、サーキットに関しては、今シーズンからヴィードル・シケインがよりタイトに変更されています。

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チーム代表、ドライバーのコメントが届きました。

■佐藤俊男(TOYOTA GAZOO Racingチーム代表)

「前戦ル・マンの無念は一旦胸中に収め、前を向いて進みたいと思います。ファンの皆様をはじめ、関係者やライバルメーカーの方々にはこれまでに多くの温かい励ましの言葉を頂き、心から感謝を申し上げます。モータースポーツチームとして、改めてレースをしたい、戦いたい思いで一杯であり、モチベーション、チーム力ともこれまで以上に高まっています。

よってニュルブルクリンク6時間レースは再度パフォーマンスを示す絶好の機会になると思います。またケルンのTMG社員など大勢の応援がもらえるこのレースは、我々にとってはホームレースと言えるイベントです。昨年は、とても多くの観客の皆様にも声援を頂きました。今年も、グランドスタンドを埋めつくす皆様の前で勝利に向かって戦うことが出来るものと確信しています。」

■中嶋一貴(TS050 HYBRID 5号車)

「ル・マンからあまり間を空けずにレースに戻ることが出来るのは嬉しいことです。例年WECはル・マンの後長い夏休みとなっていましたが、1か月でシリーズが再開するのは我々にとって歓迎すべき状況です。

ル・マンでは我々の真の強さを証明出来たので、今週末も同様に戦えると思っています。ニュルでのレースには、ケルンからチームの仲間が、大勢応援に駆けつけてくれます。特にあのル・マンの後だけに、彼らに好結果をもって応えるべく、士気は高まっています。チームの仲間は、懸命な努力を続けてくれています。このレースは彼らの働きに報いる絶好のチャンスです。」

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■アンソニー・デビッドソン(TS050 HYBRID 5号車)

「ル・マンが残念な結果に終わっただけに、これまでにないほど雪辱に燃えています。ニュルブルクリンク・サーキットはとても楽しいコースで、これまでと同じように、我々のTS050 HYBRIDがここでも競争力があることを願っていま

す。チームのホームレースで勝利を目指し戦えることは大きな励みとなるでしょう。ケルンから応援に来てくれる多くの仲間の前でのレースは特別です。その素晴らしい雰囲気とチームスピリットは、この週末のレースに大きな力をもたらしてくれるでしょう。」

■セバスチャン・ブエミ(TS050 HYBRID 5号車)

「あのル・マンからすぐにレースに戻れるのは気分的に良いことで、ニュルブルクリンクでの第4戦をとても楽しみにしています。我々は再び勝利を争えると思っていますし、シーズンの前半戦を良い流れで締めくくるためにも好結果を目指します。今季これまでの3戦中、2戦でレース終盤までリード出来たことは大きな自信に繋がっており、ニュルブルクリンクでも同様の好パフォーマンスを見せられると思っています。ル・マンの結果を受け入れるのが困難なのは我々全員同じですが、それはもう胸にしまい、シーズン残りのレースを見据えて戦う時期に来ています。何としても今季初勝利を狙って行きます。」

[nextpage title=”6号車ドライバーのコメントは次ページへ!”]

■小林可夢偉(TS050 HYBRID 6号車)

「個人的にはニュルブルクリンクでここ数年間レースを行っていませんが、フォーミュラカーでは何度か良い結果も得ており、LMP1-Hカーでの初のニュルブルクリンクを楽しみにしています。我々のTS050 HYBRIDは充分に上位を争える速さがあると思っていますので、表彰台の一番上を目指します。このレースにはダウンフォースを増強した空力仕様を投入することになり、最高のパフォーマンスを引き出すべくハードワークが必要です。チームはル・マンのパッケージでも素晴らしい仕事をしてくれ、今週末も再び良いレースが戦える自信があります。」

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■ステファン・サラザン(TS050 HYBRID 6号車)

「ル・マンで我々は素晴らしい仕事をやり遂げ、昨年と比べて大きな進歩を果たしました。今の我々にとって最も重要なのは、ライバルと戦える位置に戻れたということです。今の我々の目標はレースに勝つ事、そして世界チャンピオンのタイトル争いです。ル・マンの後に長い休暇がないのは良いことだと思っています。ニュルブルクリンクのコースは大好きですし、我々には競争力の高いTS050 HYBRIDがあります。この週末のレースを心待ちにしており、戦う準備は出来ています。」

■マイク・コンウェイ(TS050 HYBRID 6号車)

「ニュルブルクリンクは最高のコースで、レースを戦うのを本当に楽しみにしています。ハイダウンフォースサーキットなので、どのチームのパッケージが適しているのか、とても興味があります。我々も改良したパッケージを持ち込みますので、ル・マンのような良いペースで戦えることを望んでいます。6号車はドライバーズ選手権を争っており、着実にポイントを獲得してタイトルを狙いにいきます。昨年のニュルブルクリンクでの雰囲気は最高でした。我々にとってもう一つのホームレースで、多くのファンやチームの仲間を前に戦えるのを楽しみにしています。」

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前戦のル・マン24時間レースでは、TS050 HYBRID 5号車がチェッカーフラッグまであと数分というところで、痛恨のメカニカルトラブルにより、ほぼ手中にしていた初勝利を逃すこととなりましたが、速さではライバルのポルシェとアウディに決して引けを取らないことを証明しました。

ニュルブルクリンクはル・マンでの悔しい気持ちをバネに、素晴らしい結果になることを期待したいですね。今度こそチームトヨタの笑顔が見ることができますように。

(yuri)

ポルシェが911RSR後継モデルのテストを開始

ドイツ・ ポルシェAGは同社のGTレーシングカー、ポルシェ911 RSRを2017年シーズンに向けて一新すべく、911RSRの後継モデルのテストを開始したと発表しました。

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911 RSRの後継モデルはポルシェのヴァイザッハ研究開発センターのテストコースにおいてシェイクダウンを終え、間もなく世界中のサーキットにおいて本格的なテスト段階に入るということです。

ヴァイザッハで行われた今回のシェイクダウンでは、ポルシェワークスドライバー達が新しい2017年のGTEレーシングカーの感触を確かめました。

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同社GTモータースポーツ総合プロジェクトリーダーのマルコ・ウジャーシ氏は

「新しいマシンの初走行を数人のドライバーが行うのは非常に珍しいことです」

と説明し、さらに

「しかしワークスドライバー全員が開発に携わったこともあり、可能な限り多くのドライバーにテストコースを数ラップしてもらいました」

と今回のシェイクダウンについてコメントしています。

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911RSRの後継モデルは、2017年1月のデイトナ24時間でのデビューを予定しています。

ポルシェのモータースポーツGT部門トップであるDr.フランク=シュテッフェン・バリサー氏は次のようにコメントしています。

「完全に新しいマシンの初戦が24時間レースというのは大きなチャレンジですが、デビューに向けて開発は順調に進んでいます」

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911RSR は2015年シーズンにもっとも成功を収めたGTレーシングカーといわれており、ル・マン24時間やWECのGTカテゴリーで目覚しい活躍を見せてくれました。優秀な戦績を誇る911RSRの後継モデルの実戦デビューが待ち遠しい限りです。

(山内 博・画像:ポルシェジャパン)

ポルシェのレースカー、919ハイブリッドのステアリングの操作方法とは?

919ハイブリッドでFIA世界耐久選手権(WEC)に参戦しているポルシェ。

ドライバーがどんなドライビングをしているかは、オンボード映像を見れば何となく想像できますが、実際のところどうなのでしょうか?

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ドライバーは足元ではヒール・アンド・トウを駆使し、左足ブレーキを使うドライバーもいれば、 アクセルとブレーキを右足で踏み替えるワークスドライバーもいるそうです。

しかし最も忙しいのはF1同様にステアリングスイッチやパドルの操作。マシンをドライバーの意図する方向に向けることは、ステアリングホイールの機能の中で、ごく一部の役割でしかないそう。

複雑なレーシングカーを制御するため、前面にはじつに24ものボタン/スイッチ、裏面には6つのパドルが用意されており、これらを操作する必要があります。

なお、2016年シーズンでは操作性をさらに向上させるために、ドライバーとともにステアリングホイールのボタン/スイッチの配置が見直されています。

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「ル・マン」における最高速度は340km/hに達しますが、こうした速度域で操作するいくつかの制御機能は、ステアリングホイールに設置スペースがないためダッシュボードに移設。

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中央に配置されている大型ディスプレイは、速度、現在のギヤ、エンジンマネージメント、リチウムイオンバッテリー残量(前輪を駆動するためにどのくらいの電気エネルギーを使用できるか)などの多くの情報が表示されます。左上のコントロールボタン(DISP)は、表示された情報を選択するためのものです。

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また、ステアリングホイールは円形ではなく長方形。これは、舵角が小さくすむためかなと思われますが、ドライバーチェンジの際にスペースが必要なため。とくに、マーク・ウェバーやブレンドン・ハートレーのような長身のドライバーの場合、この形でないと長い足を迅速に収めることができないそう。

ステアリングホイールはカーボン製で、グリップハンドルは滑り止めラバーで覆われています。パワーステアリングシステムによって、比較的狭いグリップでも 容易に操作することが可能で、開口部を通してステアリング裏側の6つのパドルを指で操作。

また、中央のパドルはシフトチェンジ用で、右を引くと シフトアップ、左を引くとシフトダウン。最下部のパドルはクラッチ操作用です。最上部はブースト操作用で、このパドルかステアリングの前述ブーストボタンの好きな方を使うことができるそうです。

最もよく使われるボタンは、親指が届く上部外側に沿って配置されています。

右上のブルーボタンは常に使用し、高速走行時のマシンがほかのクラスのマシンを追い抜く際にヘッドライトを点滅させるパッシングボタン。1回押すとヘッドライトが3回点滅しますが、日中にはヘッドライトの合図に気付くことが難しくなるので、ドライバーは親指を常にここに置いているそうです。

左上のレッドボタンもバッテリーから電力を供給してブーストをかけるために頻繁に使用。ブーストを使うことにより追い抜きが可能になりますが、当然ながら1周あたりに使用できるエネルギー量が規定されていて、周回の途中でエネルギーを消費すると、終盤で使えなくなることに。

ディスプレイ左右下部にあるロータリースイッチ(TC/CONとTC R)は、トラクションコントロールのプリセット用。エンジンとハイブリッドの各設定を調節するため、上部2段のライトイエロー(TF-とTF+)とブルー(MI-とMI+)のボタンを使用。その下には、フロントとリヤ間のブレーキバランスを分配するピンクの+と-ボタン(BR)が配置されています。

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ほかにも数多くのボタン類が配されていますが、オンボード映像を見る際は、足元はもちろん、指先も非常に忙しい「仕事」をしているのをチェックするとさらに楽しめそうです。

(塚田勝弘)