Motor Fan's YEAR 2016

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モトチャンプ

ジャガー・ランドローバーが2020年までに半数を電動化する理由とは?

既報のとおり、ロサンゼルスオートショー2016においてジャガー初の電気自動車「I-PACE(アイ・ペイス)コンセプト」が初公開されています。

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同ショーにおいてジャガー・ランドローバー社は、クリーンディーゼルエンジンやガソリンエンジン、BEV(バッテリー式電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド式電気自動車)、MHEV(マイルドハイブリッド式電気自動車)のすべてを今後の製品戦略計画に盛り込んでいることを披露。

最高経営責任者(CEO)のラルフ・スペッツ氏が今後2020年までに製造、発売されるジャガー・ランドローバーの各モデルの半数を電化すると表明したものです。

これは、世界各地で強化されるCO2排出量の規制に対応するものと考えられます。というのも、欧州では2021年にCO2排出量を95g/kmという厳しい数値をクリアできなければ罰金まで課せられるようになります。

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今回ワールドプレミアされた「I-PACE コンセプト」は、スポーツカーのような外観とパフォーマンス、そしてSUVのスペースを兼ね備えた5人乗りのEVで、市販仕様の発表は2017年後半、発売は2018年となる予定。

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目標(推定)航続距離は「NEDC(New European Driving Cycle:新欧州ドライビング・サイクル)」で500km以上、「EPA(Environmental Protection Agency:米国環境保護庁)で」220マイル以上とされています。

(塚田勝弘)

ジャガー・ランドローバーがテストを開始した自動運転技術の目標とは?

好調な販売が続くジャガー・ランドローバー社。環境対策や自動運転技術の開発は、自動車メーカーにとって直近の業績が好調でも待ったなしの課題となっています。

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同社は今秋、英国において車両間通信を可能にする新しいコネクテッド技術の試験運用を初めて実施しました。

HORIBA MIRA社で実施されたUK Autodriveのデモンストレーションの一環として、最新のコネクテッド自動運転車両(CAV:Connected and Autonomous Vehicle)技術を披露しましたもので、ジャガー・ランドローバーはフォードおよびタタ・モーターズ欧州技術センターと協力し、車両間、そして車両と信号機をはじめとする道路インフラとの通信(路車間)を可能にするコネクテッド技術を英国で初めてテスト。

コネクテッド自動運転車両技術は、ジャガー・ランドローバーとしての重要プロジェクトのひとつに掲げられています。今後4年間で同分野の開発およびテストを幅広く行うために、100台を超える研究用車両を用意するという気合いの入れよう。

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最終的にはこの技術によって、ドライビング体験が向上するだけでなく、よりスマートかつ安全で、クリーンな運転が実現できることを目指しているそうです。

具体的には、下記の3つが挙げられます。

■Advanced Highway Assist(先進道路走行アシスト)
ドライバーがステアリングやペダルの操作をせずに、車両は道路の車線に沿って走行し、自動で追い越しが可能な技術。

■Electronic Emergency Brake Light Assist(電子緊急ブレーキライトアシスト)
前を走行する車両が急に、または予想外のタイミングでブレーキをかけた際、ドライバーに警告。濃霧のなかでの運転や、前方の車両が見えない場合にとくに役立ちます。

■Green Light Optimal Speed Advisory(青信号最適速度アドバイザリー)
車両が信号機と接続し、青信号で通過できるための最適な走行速度をドライバーに助言します。これにより交通の流れやCO₂排出量、さらにはドライビング・エクスペリエンスも向上します。渋滞の多いロンドン中心部やパリを走行中、すべての信号が青で通過できることをイメージしています。

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ちなみに「Green Light Optimal Speed Advisory(青信号最適速度アドバイザリー)」と似た装備として、ホンダがアコードや新型フリードに一部搭載し、日本でも導入済み。

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ジャガー・ランドローバー社では、運転する楽しさを維持したうえで、運転技術を必要とする走行や、退屈な道を走行する場合にドライバーを支援できるように完全自動および半自動運転車両技術の開発に取り組んでいます。

また、最終的なビジョンとして、オンロードのみならずオフロードを含めた路面状況や天候条件など、現実社会のあらゆる運転環境に対応する自動運転車両を提供するとしています。

(塚田勝弘)

新型ディスカバリーは2列目と3列目のリモート操作が可能【パリモーターショー16】

英国のソリハル工場近くでワールドプレミアされた新型「DISCOVERY(ディスカバリー)」。パリモーターショーでもジャガー・ランドローバー社の目玉モデルとして披露されました。

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機能面での注目点は、スマホを介してセカンドシートとサードシートをリモート操作できる世界初の「インテリジェント・シートフォールド・システム」。

同機能により乗車人数や荷物の量に合わせてシートアレンジが容易になり、雨で傘を差していたり、荷物を抱えていたりする場合でも楽にシートの操作が可能になります。

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また、最大9つのUSBポート、6つの12Vパワーソケット、最大8つのデバイスまで接続が可能な車内Wi-Fiホットスポットを備えることで、様々なデジタル機器を活用したシーンに対応。

さらに、ジャガー・ランドローバーが新しく発表した「Spotify」アプリも見どころで、同アプリを起動すると、ラジオや車内でよく聴く音楽、ユーザーの嗜好を参考にカスタマイズされたプレイリストが再生されるというもの。

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ジャガーブランドでは、新モデルの「XF Sportbrake」に関してもアナウンスがありました。

全天候型で4WDとなる同車は、すでにプロトタイプによる開発テストや英国での路上テストが開始されているそうで、来年の公開に向けて準備が進められているそうです。

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ほかにも、ジャガー初のEVレーシングカー「I-TYPE 1」を初めて一般公開し、モータースポーツ界への復活も宣言。

「パナソニック・ジャガー・レーシング」は、10月に開催されるフォーミュラE第3シーズン開幕戦から、ジャガー史上初となる電気自動車のレーシングカーで参戦する予定になっています。

(塚田勝弘)

ジャガー・ランドローバーがガソリンエンジンと最新ATを新たに開発する狙いとは?

フォード傘下から離れたマツダやボルボと同様に、ジャガー・ランドローバーも自前で最新エンジンを手がけており、「INGENIUM(インジニウム)」という名称で、ジャガーXE、F-PACEなどのほか、欧州向けのディスカバリー スポーツなどに搭載されています。

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従来はディーゼルでしたが、新たにラインナップを拡大し、直列4気筒ガソリンエンジンも追加されるそう。

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なお、先に投入されているディーゼルエンジンは、トルクフルな走りや燃費だけでなく、静粛性もトップクラスであるのも美点。もちろん、車体側の対策も功を奏しているはず。

年々厳しくなる環境規制(CO2排出量)に対応すべく、同社でもすべてのモデルで排出ガスを削減し、燃費を向上させるという長期的なコミットメントを掲げていて、高効率な代替パワートレインの採用、得意とするアルミなどを使った車体の軽量化、車両の省エネルギー化を進めています。

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排出ガスの削減戦略の中核である新開発の4気筒「INGENIUM」ガソリンエンジンは、ジャガー・ランドローバー社が10億ポンド(約1,300億円)を投資して建設、拡張されたエンジン・マニュファクチャリング・センターにおいて製造。

デザイン、エンジニアリング、マニュファクチャリングはすべて英国で行われていて、同社が開発するものとしてはもちろん最先端のエンジンになります。従来のエンジンと比較すると、パワーを最大25%向上させながらも燃費を最大15%削減できるとのこと。

BMW同様に、1気筒あたり500ccの排気量を基本構造として、最大限の柔軟性と拡張性を両立。そのため、スポーツサルーンやSUVといった様々なモデルに適用した開発が可能になります。

また、同エンジンには、電動油圧式バルブトレイン、一体型のエキゾーストマニホールドとセラミック・ボール・ベアリング技術を使用したツイン・スクロール・ターボチャージャーなどの最新技術が搭載されます。

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さらに、組み合わされるトランスミッションも新たに開発中だそうで、今後の市販車モデルの効率性を向上させると同時に、全輪駆動の能力をさらに高める革新的な先進的なATになるそう。

3,000万ポンド(約39億円)規模の先進的な研究プロジェクト「TRANSCEND(トランセンド)」と呼ばれるもので、ローレンジ・ギアボックス、デュアル・ クラッチ、ハイブリッド技術を組み合わせ、「20:1」という極めて高いギア比を採用。新たな水準のオフロード性能に貢献しながら燃費を約10%改善できます。

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ディーゼルに加えて、ガソリンエンジンの刷新、そして新しいトランスミッションの開発、ボディの軽量化などによりジャガー・ランドローバー社の今後のモデルにもより注目が集まりそうです。

(塚田勝弘)