Motor Fan's YEAR 2016

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米・Time誌が2016年ベスト発明品に選定したグッドイヤーの球形タイヤ「Eagle-360」とは?

グッドイヤーは、同社の球形タイヤ「Eagle-360(イーグル・サンロクマル)」が米Time誌の2016年「ベスト発明品」の25品目のひとつに選定されたと発表しました。

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Time誌ベスト発明品とは、同誌の技術分野担当編集者が「世界をより良く、よりスマートに、時としてより楽しくしてくれる発明品」を毎年選出しているもの。

「Eagle-360」はグッドイヤーが 今年のジュネーブモーターショー2016で自動運転車向けの次世代コンセプトタイヤとして公開したもので、いままで見たこともないような、まん丸の球形をしている点にビックリです。

グッドイヤーでは「Eagle-360」の特徴は「機動性」・「通信接続性」・「バイオミミクリー(生態模倣性)」の3点であるとしており、それにより将来の自動運転の安全性の向上に寄与することができるとしています。

まず、第1の特徴である機動性については、球形タイヤであることから、すべての方向に移動できる多方向性を備えており、安全性が向上するだけではなく、さらに隙間のない駐車場や街中の狭い道路など狭いスペースにも対応できます。

次に、第2の特徴の通信接続性については、埋め込まれたセンサーが車両制御システム及び周りの車両に対して、路面状況や気象状況を伝達して安全性を高めています。さらに、空気圧&トレッド監視システムが備えられており、タイヤの摩耗状態を管理できます。

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そして、第3の特徴のバイオミミクリー(生物模倣性)とは、自然界からヒントを得た形状をトレッド設計に取り入れているということです。具体的には、トレッドパターンにブレインコーラル(脳サンゴ)という、見た目が脳みそのような形のサンゴを模倣したパターンを採用しています。

このパターンを採用したことで、トレッドが天然のスポンジのように作用し、路面がドライな状態ではトレッドが硬く、ウェットな状態では柔らかくなる特性を持っており、優れた運転性能を発揮するだけでなく、ハイドロプレーニング現象の防止にも寄与することができます。

このブレインコーラルを模倣したトレッドパターンは、球形ではない通常のタイヤにも応用可能なアイデアであると思われます。「Eagle-360」から生まれたアイデア・技術が近い将来の一般タイヤに取り入れられることを期待しましょう。

(山内 博・画像:グッドイヤー)

タイヤに新機能を搭載!レクサスとグッドイヤーがコラボレーション【パリモーターショー16】

10月1日に開幕したパリモーターショー16で、レクサスのコンパクトSUVの将来像を示すコンセプトカー「UX Concept」がワールドプレミアされました。

Goodyear

現行モデルのレクサス「NX」よりも230mm短く、55mm広く、125mm低い、走りを予感させるクーペライクなプロポーションを採用しています。

中でも、スクエアなオーバーフェンダー内に収まる21インチのアロイホイールや、見慣れないタイヤが目を引きます。

Goodyear

サイドウォール部に彫刻的なデザインが施され、オフロードでの高いグリップ性能をイメージさせると共に、アロイホイールのスポーク部との連続感を出すことで、ホイールがより大きく見えます。

このタイヤは「Goodyear」が同モデル用に専用開発したもので、「アーバン・クロスオーバー」のイメージを表現しているそうです。

走行時のタイヤ空洞共鳴音のピークを減衰(タイヤ内面にポリウレタンフォームを装着)し、ロードノイズ低減に寄与する「サウンド・コンフォート・テクノロジー」や、タイヤ内に埋め込んだセンサーにより、タイヤ内のエア圧や発熱温度などを車載コンピュータに送信する「チップ・イン・タイヤ・テクノロジー」を採用。Goodyear

また、パンク等で完全にエアが抜けた状態でも、強化したサイドウォールにより、最高で80km/hの走行が可能な「ランオンフラット・テクノロジー」を採用しています。

レクサスは昨年3月のジュネーブショーに出展したコンセプトモデル「LF-SA」にもGoodyear製の新機能を持たせたタイヤを装着していました。

Lexus_LF-SA

「Triple Tube(トリプルチューブ)」と称するこのタイヤでは、トレッドに3本のチューブを備えており、走行中の速度などのシチュエーションにあわせて内側/中央/外側の空気圧を自動調整し、タイヤを変形させることが可能になっています。

例えば全てのチューブの空気圧を高めれば、転がり抵抗が低減されて燃費が向上。

また雨天時には左右チューブを減圧。中央部のみが接地することで極細タイヤのようになり、ハイドロプレーニング現象を起き難くすることが可能というもの。

また一昨年のパリモーターショーに出展したトヨタ「C-HR Concept」にも、やはりGoodyear社が提案する発電するタイヤ「BH‐03」が装着されていました。

こちらは、走行中に発生する路面との摩擦熱や、駐車時に吸収した太陽熱を電力に変換したり、走行中のタイヤ変形エネルギーを利用してカーカス層に張り巡らせた圧電素子で発電、その際の電力で駆動用2次バッテリーを充電する仕組み。

このようにトヨタ自動車は今回を含め、3度に渡って新機能を持たせたコンセプトタイヤを披露しており、将来の市販車への採用を示唆している可能性が高そうです。

「発電するタイヤ」が実現した際には、自動車業界に大きなインパクトを与えそうで、今後の技術開発が期待されます。

Avanti Yasunori・画像:Lexus、Goodyear)

【関連記事】

トヨタ次期プリウスベースのコンセプトカーに「発電タイヤ」を搭載していた!
http://clicccar.com/2015/07/24/319046/

【関連リンク】

Lexus UX コンセプト
http://www.lexus-int.com/motorshow/2016-paris-motor-show/?contents=ux

Goodyear
https://corporate.goodyear.com/en-US/media/news/goodyear_presents_th.html

新生グッドイヤーはオールシーズンタイヤで日本のユーザーニーズを切り開く

13インチ〜18インチの計44サイズをラインナップするグッドイヤーの新オールシーズンタイヤ「Vector 4 Seasons Hybrid(ベクター フォーシーズンズ ハイブリッド)」の発表会において日本グッドイヤーの金原雄次郎社長が、新生グッドイヤーとして同社の戦略発表もしています。

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「Vector 4 Seasons Hybrid(ベクター フォーシーズンズ ハイブリッド)」は、欧州仕込みのオールウェザー性能と、国産によるデリバリー性のアップというメリットを、その名の通りに『ハイブリッド』したタイヤです。

アイスバーンでの性能はスタッドレスタイヤに劣るオールシーズンタイヤですが、東京のような年間でも積雪路が時々しか発生しないような地域では、ドライやウェット路面でのグリップにおいてスタッドレスタイヤをしのぎ、また積雪路では走ることもできないサマータイヤとは異なり、雪道も走行可能なオールシーズンタイヤは、一年中履き替えることなく利用できるタイヤなのです。

[nextpage title=”新生グッドイヤーはオールシーズンタイヤを核にする”]

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サマータイヤに限りなく近い性能と積雪路での必要性能を持つオールシーズンタイヤを、すべての路面に対して安全を求めるユーザーに向けた最適解として、日本グッドイヤーは2016年後半の中心的ラインナップとしてアピールしていくそうです。

タイヤを履き替え忘れていて突然の雪道で困ることもなければ、交換の手間も、保管のコストも不要になるというオールシーズンタイヤ。

すでにアウディやフィアット、シトロエンなど世界中の自動車メーカーに選ばれているという実績もあり、さらに日本向けに国産というのですから、国内市場での評価が高まることが予想されています。

とはいえ、新生グッドイヤーはオールシーズンタイヤだけで勝負するわけではありません。2017年には新しいハイパフォーマンスタイヤの発売を予定しているなど、グッドイヤーの持つブランド性を引き上げる製品投入も予定しています。

日本のユーザーメリットを、世界の目で見つけ、提案するグッドイヤーの提案には、これからも要注目といえそうです。

(写真:小林和久 文:山本晋也)

【関連記事】

GOODYEAR Vector 4 Seasons Hybrid(ベクター フォーシーズンズ ハイブリッド)発表! グッドイヤーの日本向けオールシーズンタイヤが国産化でラインナップを拡大
http://clicccar.com/2016/07/26/388474/

自動運転に対応する次世代コンセプトのタイヤがついに登場!?

絶え間なく進化を続けるタイヤは、クルマの中で唯一路面と接している機能パーツであり、その接地面積はハガキ大程度……。というような説明をよく耳にするかと思います。

Eagle 360

さらに、グリップやウェット路面への対策をはじめ、スタッドレスタイヤやレーシング向け、ミニバンや軽自動車など用途や車種に応じたタイヤ、燃費性能向上に貢献したり、減衰も担ったりするなど、その役割は非常に大きく、乗り心地やハンドリングなどシャーシの性能を大きく左右するケースも珍しくありません。

次世代タイヤといわれているタイプも各メーカーから提案されていますが、グッドイヤーがジュネーブモーターショーで披露したのは「自動運転向け」を標榜する次世代タイヤ。

ついに「自動運転向け」も提案されたのか、そんな感想を抱く方も多いと思いますが、どんなタイヤなのでしょうか。見た目もテニスボール?のようですが…

グッドイヤーが掲げた新しいコンセプトは「Eagle-360(イーグル・サンロクマル) 」と「IntelliGrip(インテリ・グリップ)」のふたつ。

「Eagle-360(イーグル・サンロクマル) 」は球状に設計されていて、「機動性」、「通信接続性」、「バイオミミクリー(生態 模倣性)」が特徴。

IntelliGrip

クルマやタイヤの性能で「機動性」と聞くと、旋回性能やハンドリングなどの高さ、シーンを問わない俊敏な動きを思い浮かべそうですが、同タイヤでは「すべての方向に移動できる多方向性により、運転者および同乗者の安全性が向上。さらに、隙間のない駐車場や街中の狭い道路など限られたスペースへも対応が可能」と、まさに単語の意味どおりの機動性を提案しています。

「通信接続性」は「埋め込まれたセンサーが車両制御システムおよび周りの車両に対して、路面状況や気象状況を伝達することにより安全性を高め、さらに空気圧&トレッド監視システムがタイヤの摩耗状態を管理し、走行距離を伸ばす」というもの。

空気圧監視システム(TPMS)はお馴染みですし、トレッド監視システムも他メーカーがコンセプトとして提案していますが、路面や気象状況を車両と周囲の車両にも伝える、というのは次世代タイヤであることを感じさせます。

「バイオミミクリー(生態 模倣性)」と聞くと、昆虫や植物などの模倣性、擬態などを想像しますが、自然界からヒントを得たトレッド設計とのことで、「ブレインコーラル(ブレインコーラル:脳サンゴ=見た目が脳みそ状であることから名がついたサンゴの一種 )」のパターンを模倣し、 天然のスポンジのように作用するものだそう。

具体的には、ドライ路面では硬くウェットな状態では柔らかくなる設計により優れた運転性能を発揮。またハイドロプレーニング現象の防止にも寄与するとしています。

ほかにも、磁場浮揚(リニアモーター)方式という、一見するとタイヤの常識を覆すような技術も盛り込まれています。こちらは「タイヤと車両の接点に磁気浮揚方式を採用することで、スムーズで静かな乗り心地を楽しむことができる」という考え方。

もうひとつのコンセプト「IntelliGrip(インテリ・グリップ)」は、先進センサー技術と専用設計のトレッドにより、路面状況や気象状況を感知するほか、タイヤと車両の状況をリアルタイムに評価する最先端のアクティブ・ウェア(耐摩耗性) 技術が採用されています。

さらに「カスタム・アルゴリズム」として、独自開発のアルゴリズムにより、空気圧やタイヤの温度といった変動要素を定義づけているほか、路面状況にフレキシブルに対応。

タイヤが「雨で濡れている」あるいは、「滑りやすい」と感知すると車載システムが状況に合わせてスピードを調整。それにより、制動距離の短縮、確かなコーナリング、操縦安定性の向上、さらには衝突防止機能のサポートも実現するそうです。

また、現在のタイヤも担っていそうな、車両技術適合として、多くの自動車メーカーと協働し、横滑り防止装置(ESC)、ブレーキ制御システム、サスペンション制御システムなどの機能との関連性を強化。自動車メーカーのニーズに適合させるタイヤ作りを推進していくとしています。

これらのコンセプトが具現化されれば、気象状態なども加味しなければ成立しそうにない自動運転の高度化に貢献しそうな気がします。

(塚田勝弘)