Motor Fan's YEAR 2016

三栄書房

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モトチャンプ

作業時間は約2000時間!完璧にレストアされたランボルギーニ350GTが納車された場所とは?

2016年9月に神宮で開催されたランボルギーニ100周年記念イベントに、1971年式の緑のランボルギーニミウラが展示されていました。

このミウラはランボルギーニの歴史的モデルに関するレストアや鑑定を行う部門として2015年春に新設されたランボルギーニ・ポロストリコが完璧に修復したクルマです。

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ランボルギーニ・ポロストリコはミウラのほかにLM002、カウンタック、そして350GTと4つのフルレストアを手掛けました。そして今回ミウラに続いて350GTのレストアが完成し、オーナーへの納車式が10月13日に開催されました。

ランボルギーニ初の量産市販車となった350GTは、1963年のトリノ・モーターショーで350GTVのプロトタイプが披露され、翌年の1864年にジュネーブモーターショーで350GTを発表し、世界中にランボルギーニ・ブランドを印象づけました。

ボディパネルはアルミ製で、シートはフロントに2席、リアに補助的な1席が設置されています。生産台数は諸説ありますが、130台程度と言われています。

回レストアしたシャシー番号0121の350GTは初回に生産した15台のうちの1台という貴重なモデルのため、シャシーとボディはオリジナルの配置に戻されました。そしてエンジンやブレーキ、キャブレターといった燃料システムにも大幅な修理と真正性の保持に努めています。

ボディはきめ細やかなホワイトカラーで再塗装を施しています。ニトロアクリルの塗料配合と塗装技術はなんと製造当時のもので、22層もの塗装構造を採用し、各層の間に手作業による湿式研磨を掛けたことで、クルマのフォルムに優美で鮮やかな流れが生まれました。

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ブラックレザーの内装もボディカラー同様にブラックレザーの内装も製造された当時の同じプロセスを用いて改装されています。木製のハンドルやアクセルなどのペダル類も摩擦や劣化を残しつつレストアされています。その上、装着されていたカーラジオも1964年当時の姿で蘇り、軽快な音を流すなど完全に機能しています。

こうして、車体と内装の作業に掛かった時間は1150時間。さらに電気系統機能などの修復に780時間を費やし、約1年振りにシャシー番号0121の350GTはオーナーの手に戻りました。

レストア後にサーキットでの初走行を望んだオーナーの意向を反映して、初テスト走行と納車がモデナ・サーキットで行われました。サーキットを貸し切りにして、オーナーの目の前でレストアされた350GTは80kmを走行、無事完走しました。

全般的なクルマのバランスと性能はもとより、ギアチェンジの機密性やブレーキの応答性などパーフェクトな結果となり、より厳しい走行環境においても優れたドライビングとハンドリングが実証されました。

ポロストリコが次ぎにレストアが完成させるモデルが一体何なのか興味が尽きません。

(萩原文博)

「クルマのあるライフスタイルをサポートする」ボルボが始めたリフレッシュプロジェクト

『クラシックカー・リフレッシュプログラム』を掲げ、かつての名車であるP1800やヒット作・850シリーズを新車同様に蘇らせたボルボ・カー・ジャパン。

CLASSIC GARAGE①

新世代車が好調なボルボが、いまなぜ旧車に目を向けるのか。話を聞いてみました。

【語る人】

ボルボ・カー・ジャパン株式会社
クラシック・ガレージ マネージャー
阿部昭男

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──  まず、今回の『クラシックカー・リフレッシュプログラム』を始めたきっかけを教えてください

「直接的には、弊社代表取締役社長の木村隆之が偶然P1800に出会ってレストアを行ったことですが、同時期にメルセデス・ベンツさんが190シリーズで同様のプログラムを始めたこともありましたね。ボルボも、旧いクルマの残存率が高いのでいろいろできるだろうと」

CLASSIC GARAGE④

──  対象車を100、200、700、850、900シリーズとした理由は?

「最初にボルボが正規輸入された60年代初頭以降、FR車の最後となる1998年までを対象にしたということです。期間は長いのですが、中規模メーカーとしてエンジンの種類もそう多くなく、たとえばオイルフィルターなどはずっと共通部品だったりするんですよ」

CLASSIC GARAGE③

──  国産メーカーの多くは、新車販売に影響が出るとか中古車に興味がないなど、こうした企画に消極的ですが

「ボルボのオーナーは、クルマをライフスタイルのひとつとして捉えている方が多い。そうであれば、ウチはそのサポートをさせていただこうと。正規ディーラーが責任を持ってメンテナンスすることで、より永くボルボ車に乗っていただける。それが結局はユーザー増につながると考えています」

──  レストアや修理自体はどこでもできますが、ディーラーが行うリフレッシュの特徴は?

「やはり純正部品の使用による品質基準の高さです。ボルボは本国に『ジェネラル・クラシックパーツ』という部署があって、一旦生産が終わった部品も再生産できる仕組みがあります。せっかくお金をかけてレストアをしても、精度や耐用年数で劣る社外部品を使うことで、寿命が縮む例は少なくないんです」

CLASSIC GARAGE②

──  技術的な違いはどうでしょう?

「手前味噌ですが、私自身が入社後30年以上を経て、60年代以降のボルボ車と付き合ってきた経験があります。それを木村社長が汲み上げてくれたことで、今般クラシックガレージを設けるに至りました。私にとっては夢のような企画ですが、自分の技術を生かしつつ、それを伝承して行く責任もありますね」

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──  クラシックガレージとリフレッシュプログラムの関係は?

「グラシックガレージ自体は、ディーラー品質の修理をオーナー様の希望に応じて行う工房です。一方、リフレッシュプログラムは、自社登録のクラシックカーを、先のP1800や850のようにこの工房で新車同様に仕立てて販売しようというものです」

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──  いま両者の状況はどうなっていますか?

「修理では240と780の2台が入庫中です。リフレッシュプログラムは240が進行中ですが、これは850などの記事を見た関西のオーナー様が、25年間乗ったワンオーナー車をわざわざ譲ってくれものなんですよ」

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──  今後販売を行う場合、価格設定はどのように考えていますか?

「まあ、掛かった費用を回収する程度でしょうか(笑)ボルボのユーザーは一部輸入車メーカーのようにコアで濃いマニアとはチョット違う。いくらでも払うというタイプじゃないんですね(笑)私たちも中古車はあくまでも中古という認識です」

──  今後の展開で考えていることはありますか?

「リフレッシュプログラムについては、現状ほかにもベース車両があります。それを自分たちの考えでレストアしてもいいのですが、あらかじめオーナー希望者さんを募り、その要望に沿って仕上げて行くという方法もあり得ると考えています」

──  なるほど。今日はありがとうございました。

(すぎもとたかよし)

【関連リンク】

ヒストリックカー・リフレッシュプロジェクト | ボルボ・カー・ジャパン
http://www.volvocars.com/jp/about/our-stories/classic_cars

1948年生まれのランドローバー・シリーズ1を25台レストアして販売!

28回目を迎えたヒストリックカーのイベント「テクノ クラシカ エッセン」が今年も開催され、ランドローバーからは(Series I/シリーズⅠ)が出展されました。

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シリーズⅠは1948年に初披露され、民生用だけでなく軍用としても活躍。今回レストアされたシリーズⅠはなんと25台。

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これらの車輌は博物館にズラリと展示されるのではなく、「Rebornイニシアチブ」を掲げ、ランドローバー・クラシックから直接購入できるというから驚きです。買えるんですね!

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どうやって25台かき集めたのか気になりますが、ランドローバー・クラシックの専門チームが長年の経験を活かし、ランドローバーのグローバル・ネットワークから25台分のシリーズ1のシャーシを確認し、1948年当時の製造されていた仕様に沿って完全にレストア。

正真正銘のランドローバー車であることを保持するために、ランドローバー・クラシックのパーツのみが採用されているそうです。

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さらに、「ライトグリーン」、「ブロンズグリーン」、「RAFブルー」、「ドーブグレイ」、「ポピーレッド」という生産当時の5色から選択が可能というこだわりよう。

また、英国ソリハル工場にある初代ディフェンダーの製造センターに、ランドローバーの新しいクラシック・ワークショップが設けられ、この希少なシリーズⅠのレストア工程を最初から最後まで見学できるそうです。

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イギリス、そしてランドローバーのクルマ文化の奥深さを感じさせるシリーズⅠのレストア、そして販売。

日本でもこうした販売がされれば話題を集めそうですが、旧い車ほど税金が高くなる現状では、根付きそうにはないでしょうか…

(塚田勝弘)

1972年のル・マンでクラス優勝を遂げたポルシェがレストアされて登場

新車登録から13年以上(ディーゼル車は10年)経過すると、自動車税が約15%割増になります。日本の税制は古いクルマには乗るな! といっているように思えますが、それは果たして「エコ」なのか、こうした指摘は確かにと頷きたくなります。

それは、ドイツやイギリス、スイスなどの欧州では旧車への優遇措置があるか、あるいは古いから税金を上げるといった税制がないという、対比からくるものもあるでしょう。

確かに欧州に行くと街中にたたずむ古いクルマを見かけると、よくいわれるように、文化も違うのかなという気もしてきます。

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それでもヒストリックカーイベントなどもあるじゃないか、という声もあるでしょうが、税金も含めた維持費を考えると、羨ましいけどなかなかできないよな、という感じもします。

さて、ポルシェAGから「911 2.5 S/T」のフルレストアのニュースが発表されました。

ポルシェ クラシックのスペシャリストによりじつに2年の歳月をかけてレストアされたという、1972年のル・マンでクラス優勝を飾ったモデルです。

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ポルシェは、クラシックモデルの強化を掲げていて、今年の4月6日〜10日にエッセンで開催された世界最大級のクラシックカーイベント「テクノクラシカ」の祭典にも出展。

この「テクノクラシカ」の開幕を記念して、波乱に富んだモータースポーツの歴史とともにレストアされた「911 2.5 S/T」が紹介されたわけです。

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ポルシェ クラシック代表のアレクサンダー・ファビック氏は、

「911 2.5 S/Tは、数年前に米国のコレクターによってレストアベースの状態で探し出されました。ポルシェのスペシャリストたちの巧みな作業によって、このスポーツカーは最高水準の状態によみがえりました」

と語っています。

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見つかったクルマは本当に稀少なものだそうで「911 2.4 Sクーペ」をベースとしてわずか24台が製造されたレーシングカー。

「911 2.5 S/T」は、グループ3(市販車ベースのGT車両)とグループ4(改造を施したGT車両)のカスタマースポーツ用に開発されたモデルで、1971年末に当時のDr.Ing.h.c.F.Porsche KGスポーツ部門から49,680マルクで限定発売されました。

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「911 2.5 S」は、タルガ・フローリオ、ル・マン、ラリーなどのサーキット用に開発された「911 2.4 Sクーペ」のワークス改造仕様であり、国際スポーツレギュレーションにしたがって厳密に変更され、特別仕様の価格はプラス19,000マルクだったそう。

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「最新のポルシェが最良のポルシェ」というフレーズは、新しい商品(クルマ)にベストを尽くすというメーカーとして当然の姿勢を示しているだけで、ポルシェの旧車への愛を感じさせます。

(塚田勝弘)