Motor Fan's YEAR 2016

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マツダ、タイのパワートレイン工場にエンジン機械加工工場を新設し、現地化率を向上

マツダは、タイ・チョンブリ県のパワートレイン生産拠点「Mazda Powertrain Manufacturing (Thailand) Co., Ltd.」(MPMT)を増強すると発表しました。

今回のMPMT増強のポイントは、エンジン組立工場の年間生産能力を2018年上半期までに10万基に増強することと、同規模のエンジン機械加工工場を新設することです。

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上の画像はMPMTの完成予想図。左上がトランスミッション工場で、右下がエンジン工場になります。このエンジン工場で色の薄い部分が新設されるエンジン機械加工工場です。

2015年10月に本格稼働を開始したMPMTのエンジン組立工場は、現在のところ年間生産能力3万基で、日本から輸出したエンジン部品を組み立てて「SKYACTIV-D 1.5」および「SKYACTIV-G 1.3」の2種類のエンジンを生産しています。

現在MPMTで生産されたエンジンは、タイで生産される「Mazda2(日本名:マツダ デミオ)」に搭載されています。

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マツダは今回新たに221億円を投資して、エンジン組立工場の年間生産能力を3万基から10万基に増強するとともに、同規模のエンジン機械加工工場を新設することになります。

今回のMPMT増強で、現地でのエンジン部品の機械加工が可能になり、現地化率が向上して、タイでの車両、エンジン、トランスミッションの現地一貫生産体制が拡充されることになります。

マツダでは、今後同工場での生産機種に「SKYACTIV-G 2.0」を追加し、ASEAN域内のマレーシア、ベトナムにある車両生産拠点へエンジンを輸出する計画を立てており、MPMTが今後ASEAN地域のエンジン生産拠点になるものと見られます。

(山内 博・画像:マツダ)

タイでキャッチされた「なんだかおかしい」覆面テスト車。なんと意外にも○○○車だった

一体なんなのでしょうか、このクルマは?
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トムヤムクンとドリアンの香りが漂うタイの高速道路で撮影されたこの写真。見るからに怪しく、覆面テストカーだということは一目瞭然です。

しかしなんだかおかしい。まず異様に背が高くてプロポーションがおかしい。ガラスエリアが異様に広くておかしい。まるで(チョップドルーフとは逆に)天井を高くしたような雰囲気がおかしい。スライドドアだけど、いわゆるミニバンではなさそうなパッケージングもおかしい。

怪しすぎるんです、このクルマ。

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このおかしいことだらけのクルマの正体はいったい何なのだ?

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この不思議でおかしなプロポーションが実は大きなヒント。なんと、意外なことに日本の自動車メーカーのテストカーでした。何を隠そう、トヨタの開発車両なのです。

正体はこれ。次世代タクシーです。

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2015年の東京モーターショーでもコンセプトモデルとして公開された「次世代タクシー」は、2017年度内に発売を予定し鋭意開発中。

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低いフロアや大開口スライドドアによる優れた乗降性と、車椅子乗車まで考慮した広い室内で「みんなにやさしいタクシー」を目指して設計されています。

2020年の東京オリンピックの際には、このタクシーが東京にたくさん走り回ることになるんでしょうね。

パワートレインはLPGハイブリッドシステムを搭載するとアナウンスされています。

しかしモヤモヤするのは、どうしてこのタクシーがタイの高速道路でテストしていたのかということ。確かにタイは左側通行右ハンドルなので日本の交通環境と同じですが、だからと言ってタイの道を走っていた理由にはならないと思います。

高温多湿の環境でLPGハイブリッドシステムの長期テストをしているんでしょうか? 確かにタイではLPガスが簡単に手に入りますが。

もしくは、タイでもこのタクシーを発売するということなんでしょうかね。

(編集部)

新型「シビック」を生産するホンダのタイ新四輪車工場が完成

ホンダのタイにおける四輪車生産販売現地法人であるホンダオートモービル(タイランド)カンパニー・リミテッド(以下、HATC)は、タイ・プラチンブリ県・ロジャーナ工業団地内に完成した新四輪車工場のオープニングセレモニーを5月12日に挙行しました。

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今回の新プラチンブリ工場は年12万台の生産能力があり、これを加えてHATCは年42万台の生産体制を持つことになります。

新プラチンブリ工場には、四輪完成車の量産では世界初(ホンダ調べ)となる、完成車組立のメインラインに組み込まれる流動型のセル生産方式ライン「ARC(アーク)ライン」(ARC:Assembly Revolution Cell)が設置されています。

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新プラチンブリ工場では、昨年の10月に樹脂工場が、今年2月にエンジン工場が稼働を開始し、今年3月から新型「CIVIC(シビック)」の量産を開始しています。

ホンダでは、今後も小型車を中心に生産モデルを増やし、タイの国内市場ならびに輸出における競争力を強化していたい、としています。

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ホンダのタイ工場というと、思い出すのが2011年11月に発生した大雨による洪水での浸水。

当時「浸水した新車が販売されるのでは」という噂を打ち消すために、被災したタイ工場の全生産車を廃棄処分したことが記憶に残っています。

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ホンダは、洪水に見舞われたロジャーナ工業団地内で洪水後の2013年から今回の新プラチンブリ工場の建設を開始しており、同工場の完成はホンダが5年前の洪水被害を乗り越えた証といえます。

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新プラチンブリ工場の完成式典に招待されたタイ政府副首相ソムキット・チャトゥシピタック氏は次のようにコメントしました。

「自動車産業はタイ経済の発展にとって大変重要であり、ホンダがタイを戦略的な生産および輸出拠点として位置づけ、環境に配慮した先進的な技術を投入することを歓迎します。グローバルにおける四輪車生産拠点として、タイの位置付けがますます強化されるものと期待しています」

同式典でのホンダ代表取締役社長 社長執行役員 八郷隆弘氏のコメントは次の通りです。

「タイは、国内市場のみならず、グローバルでの販売拡大を牽引するアセアン市場を含む全世界へ完成車および部品を供給することで、ホンダの生産拠点の一つとしてその存在感を高めてきました。ホンダの最新の生産技術を最大限に活用するこの新プラチンブリ工場の完成にともない、タイの役割をこれまで以上に価値のあるものにしていきます」

同じくホンダ執行役員 アジア・大洋州本部長 安部典明氏は次のようにコメントしました。

「この新工場における最新で高効率の生産技術により、ホンダの商品はさらに競争力を高めていきます。シビックに加え、将来はここプラチンブリ工場で生産する小型車モデルを増やし、タイ市場ならびに輸出向けの競争力を強化することで、タイの経済に貢献していきます」

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ホンダのタイ・新プラチンブリ工場には次のような技術が採用されています。

[生産効率向上]

組立ライン:世界初(ホンダ調べ)となるARC(Assembly Revolution Cell)ライン
→生産効率を従来の製造工程比で約10%向上

プレス:サーボ制御、高速フィーダー採用
→プレス工程の効率を従来比で25%向上

溶接:軽量小型ロボット治具の採用
→溶接ロボット稼働率を40%向上

[人・環境に配慮した取り組み]

溶接:生産工程で使用された冷却水を再利用する「水搬送」を採用
→施設管理:屋根から自然光を取り込んだ「スカイライトルーフ」の採用

(山内 博・画像:ホンダ)

【関連記事】

世界初!ホンダが新発想の量産完成車組立ライン「ARCライン」をタイ工場に導入
http://clicccar.com/2016/04/25/367879/

日産自動車がアセアンに研究開発の拠点を設置

日産自動車は4月28日、同社のアセアン地域統括会社であるアジア・パシフィック日産自動車会社(NMAP)がタイにR&Dテストセンターを開設すると発表しました。

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新テストセンターは、アセアン地域の自動車生産の中心であるタイに開設され、日産グループのアセアン地域の研究開発における主要ハブになるものです。

タイの新テストセンターでは、日産のアセアン地域のコアモデルである「ナバラ」や、最もよく売れているエコカーの「アルメーラ」や「エクストレイル ハイブリッド」を含む計12車種の車両テストを同センターで行うとのことです。

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2003年に現在も稼働中のR&Dセンターをタイに設立して以来、タイは日産にとって、アジア・パシフィック地域における拠点になっており、今回の新テストセンター開設によって、市場投入に向けた商品の品質保証という商品開発の下流工程から、プロトタイプの評価テストなど商品開発の上流工程までの広範囲の開発業務をタイで行うことができるようになります・

今後NMAPの新R&Dテストセンターは、インドネシア、フィリピン、マレーシア、ヴェトナム、タイのアセアン5カ国を対象にサービスを展開し、さらにタイ工場から輸出される90カ国以上の車両もテストすることになる、ということです。

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NMAPは、新テストセンターの開設で、従来のR&Dセンターの設備に加えて無響室、電波暗室、振動シミュレータ装置のある環境試験室など、タイにおいて業界初のテスト設備を搭載したR&Dセンターを有することになり、日産のタイにおける開発能力が増強されることになります。

日産は今回の新テストセンターに10億バーツを追加投資して、敷地面積6,600平方メートルの同施設を開設しました。同施設では今年度中に新たに雇用を増やし、従業員数を合計330名に増員する予定で、日本でトレーニングを積んだタイ人の技術者らとともにテスト設備を運営したい、としています。

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同R&Dセンターの開所式に出席したタイのソムキット副首相は

日産の、タイへの技術および人材開発の移管に向けた投資を称賛します。本開発投資は、国内の生産及び輸出需要を伸ばし、タイの更なる経済発展に貢献することでしょう。

と挨拶しました。

それに対してタイ日産自動車の南部一孝社長は、

アジア・パシフィック日産の新テストセンターは、日産のタイにおけるプレゼンスを高めるとともに、タイの自動車産業の発展における重要なマイルストーンでもあります」と述べ、新R&Dセンターの実現は、タイの高い技術を持つ労働力や競争力、強固なサプライチェーンに加え、タイ政府による効果的な政策支援のおかげである

と強調しました。

タイはアセアン地域での日系自動車メーカーの拠点となっており、日産の新テストセンター開設でタイがますますアセアン地域での自動車生産の中心地になるものと見られます。

(山内 博・画像:日産自動車)

世界初!ホンダが新発想の量産完成車組立ライン「ARCライン」をタイ工場に導入

ホンダは、四輪完成車の量産では世界初(ホンダ調べ)となる、完成車組立のメインラインに流動型のセル生産方式を組み込んだ「ARC(アーク)ライン」を開発したと発表しました。

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この組立ラインは、タイのホンダオートモービル(タイランド)カンパニー・リミテッド(以下、HATC)のプラチンブリ工場に導入され、2016年3月から稼働しています。

ARCラインとは、Assembly Revolution Cellの略で、特徴をひとことで説明すると、「セル生産方式」をメインラインに組み込んで流れ作業を行う四輪車の組立ラインのことです。

これまで四輪車の生産現場では、よく知られている「ライン生産方式」が採用されていました。「ライン生産方式」では、コンベア上を流動する車体に組立作業者が単一工程で部品を組み付けていく方式です。

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一方、今回のARCラインでは、一人の作業者が広い範囲の工程を受け持ち、複数部品の組み付けを行う「セル生産方式」の生産ユニットをメインラインに組み込んで流動させたことが特徴で、ホンダによると世界初の革新的でユニークな組立ラインということです。

ARCラインでの組立作業では、上図のように1台の車体と1台分の部品を積載した「ARCユニット」に4人の組立作業者が乗り込み、車体と一緒に移動しながら組み付け作業を行うスタイルになります。

これにより、従来の「流れてくる車体の仕様に合わせて必要な部品を選び、歩きながら組み付ける」という作業を減らすことができ、工程ロスを削減して、生産効率が大幅に向上する効果が期待できる、ということです。

またARCラインでは、1人の作業者が従来よりも広範囲な工程を担当するので、製造工程に関してより幅広い知識と技能を習得することが可能になります。

将来的には開発現場へ生産現場の意見をフィードバックできるような「熟練作業者」を育成する効果も期待されています。

(山内 博・画像:ホンダ)

デンソー、車載ソフトウェアの開発も現地化~豊田通商とタイで合弁会社設立~

デンソーと豊田通商がタイ・バンコクに合弁会社を設立することに合意し、現地で車載ソフトウェアの開発を強化することになりました。

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新会社の社名は「Toyota Tsusho DENSO Electronics (Thailand) Co., Ltd」で、2016年7月からエンジンECU(Electronic Control Units)の開発効率向上に向けたソフトウェア開発を行う予定とのことです。

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タイは東南アジアの自動車生産拠点になっていますが、車載ソフトウェアはどこで開発しても簡単に電送できるのに車載ソフトウェアの開発を現地化するのは、なぜでしょうか?

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デンソーによると今回の合弁会社では、ソフトウェア開発における制御開発・設計・検証に至る全工程にて、一貫してモデルを活用した開発を行い、開発の効率化・スピードアップを狙っているようです。

つまり、タイで生産する車のエンジンECUに搭載する車載ソフトウェアを現地のニーズをダイレクトに理解できる場所で、一貫して開発しようというわけで、今後の動向が注目されます。

(山内 博・画像:デンソー)