Motor Fan's YEAR 2016

三栄書房

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モトチャンプ

「ADAS」システムの標準装備が新車販売を左右する時代に?

カメラやセンサーなどの組合せにより、クルマの「走る」「曲がる」「止まる」の3機能を制御して衝突を回避すべく、自動でブレーキをかけたり、車線の逸脱をドライバーに知らせたりして安全運転を支援する「ADAS」(先進運転支援システム)。

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富士重工業が新型インプレッサに「アイサイト」を標準装着するなど、普及が進んでいます。

米金融大手のゴールドマン・サックスは「ADAS」の新車への採用比率について、欧州で2013年の9%から2018年に50%へ、米国でも同8%から22%に高まると予測。

新型車への標準搭載化が進み、廉価モデルを含めた幅広い車種に展開されていく見込みとしています。

「ADAS」は自動運転技術の普及につながるだけに、トヨタや日産などの国内勢に加え、世界の自動車各社が開発に凌ぎを削っている状況。

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そうした動きに呼応して、独BOSCHやコンチネンタルなどの機能部品メーカーが開発費を増大させており、矢野経済研究所では「ADAS」の世界市場が年間で平均30%ずつ拡大し、2020年に1兆4,500億円規模になると予測しています。

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こうした情勢から、「ADAS」システムの標準装備に加え、今後はその機能の優劣が新車販売を左右すると予想され、いかにこの分野で他社をリードするかが問われることになりそうです。

Avanti Yasunori・画像:トヨタ自動車、矢野経済研究所)

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デンソーがソニー製イメージセンサーを使用して車載用画像センサーを高性能化

デンソーは、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転の目となる車載用画像センサーに、ソニーセミコンダクタソリューションズ(以下ソニー)のイメージセンサーを採用し、夜間でも歩行者を認識できるように高性能化しました。

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車載用画像センサーは、ADAS・自動運転において道路上の白線や前方の物体を識別するセンサーとして開発されています。

今回デンソーは、ソニー製イメージセンサーを採用するため、車載用として要求される搭載性、耐熱性、耐振性などを向上させ、車両搭載を可能にしたということです。

同時に同社では、イメージセンサーで得られたデータの画像処理に関しても、ソニーの画像処理装置(ISP:Image Signal Processor)を活用して、ノイズリダクション・露出の設定を最適化することで認識性能を向上。従来品の画像と比べて夜間の歩行者を認識しやすく撮影できるようにしました。

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ソニー製のイメージセンサーは、世界中のデジタルカメラ・スマートフォン・監視カメラ・産業機器に多用されており、世界的にトップシェアを誇っています。

業界では、同業他社に対して2年以上の技術的アドバンテージを保っているといわれており、先日の熊本地震では熊本県菊池市にある画像センンサーの生産拠点が被災、ソニー製イメージセンサーの供給が滞るのではないか、と危惧されたほどです。

夜間の交通事故では、ドライバーが歩行者の存在を目で視認できないケースが多く、重大な事故につながる危険性があります。

日本・欧州が採用している自動車アセスメント「NCAP(New Car Assessment Program)」の安全性能評価基準では、自動ブレーキによる衝突回避の対象に夜間の歩行者を加えることが検討されており、今回デンソーが開発した画像センサーはこれに対応することができます。

(山内 博・画像:デンソー、ソニーセミコンダクタソリューションズ)

霧や逆光を見通す「電子の目」を搭載した自動運転車をパナソニックが公開!

パナソニックは、事業の柱である家電部門が厳しい競争に晒されるなか、自動車関連事業を新たな成長分野に位置付けています。

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一方、検索サイト大手の「Google」や、ベンチャー企業の「テスラ」などが自動運転技術の分野で大きな成果を上げていることもあり、国内家電メーカーについても得意とする電子技術を活かし、同分野への参入を狙っている状況。

そんな状況の中、パナソニックは、雨や霧、雪など視界が悪い中でも人や車などを正確に見極める画像処理技術を開発したそうです。

従来の画像センサーでは、対向車のヘッドライトなど、強い光を受けると映像がホワイトアウトしやすく、夜間の信号色や歩行者が見分けにくいという課題がありました。

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そこで同社は、テレビや防犯カメラで実用化した技術をカメラセンサーに適用、夜間に高速で通過する車のナンバーまで見分けられるといいます。

材料を従来のシリコンから有機材料の薄膜に換え、光を電気信号に変換する際のノイズを独自の回路設計で抑制、電極部の構造も見直し、僅かな光をも効率よく取り込めるようにしており、撮影可能な明るさは従来品の100倍に達しているそうです。

そうしたなか、パナソニックはこの技術を搭載したカメラを5台使い、周りを確認しながら自律走行する自社製の小型自動運転車を開発、公開しました。

NHK

高齢化社会が進むなか、全国的にバス路線の縮小や減便が続いており、病院通いや買い物に利用できる「足」として今後、自動運転のニーズが高まると予想。

2020年代半ばを目標に、自宅と最寄り駅や病院間などの近距離を、安全な40km/h以下の速度で往復する、街乗りに適した自動運転技術を目指しているそうです。

NHK報道によると、同社は車間通信の分野において、携帯電話の開発で培ったセキュリティー技術が活かせると考えているそうで、今後はプロのドライバーの運転技能を備えたAI(人工知能)の開発にも進出、自動運転車向けの製品開発を加速していくとしています。

このように、自動運転技術の高度化に向け、自動車メーカーはもちろん家電メーカーからの参入も増加すると予想され、今後はオールジャパンによる技術革新が本格化するものと思われます。

Avanti Yasunori・画像:Panasonic、NHK)

【関連リンク】

Panasonic
http://www.panasonic.com/jp/corporate/technology-design/technology/ai.html

NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160917/k10010690591000.html

世界の先進自動車技術市場、2030年にはどうなっている?

マーケティング&コンサルテーションを手掛ける富士キメラ総研が、自動車産業において「環境」「安全」「快適」をキーワードとする有望技術の方向性や、それらに応じて変化する機器やデバイス市場の将来動向を調査しました。

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その調査結果を元にまとめた「2016 次世代カーテクノロジーの本命予測」では、自動車産業の将来を以下のように予測しています。

・自動運転システム

衝突回避、車線逸脱防止、道路検知などを行う先進運転支援システム(ADAS)搭載車は2015年時点で1,030万台に達しており、2020年には日米欧における販売台数の過半数がADAS搭載車となる見込み。

その後、2030年には全販売台数の41.5%にあたる5,800万台に拡大すると予測しています。

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また、2020年から徐々に「自動運転レベル3」の生産が拡大、2020年代後半には高級車や商用車を中心に、より高度な「自動運転レベル4」の量産がスタートするとしています。

・次世代カーナビゲーションシステム

ADASの搭載が進むなかで、日欧を中心に次世代車載情報通信システム「IVI」(In-Vehicle Infotainment)のディスプレイにADAS情報を映すニーズが高まるとしており、2030年には現在の6倍以上の1,812万台まで搭載が拡大すると予測しています。

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また、低価格車を中心にスマートフォン連携システムの需要が拡大しており、2030年には現在の30倍以上となる7,450万台にまで拡大する見込み。

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・センシング技術

ADASの普及に連動してセンシングカメラの需要が拡大すると予想され、2030年には日欧で主流になりつつあるミリ波レーダーとの組合せがさらに拡大。

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また、レーザーレーダーは、コスト低減要求の強いコンパクトカーや新興国向け車種の一部で採用が拡大するとの予想。

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・車載電源

2011年にドイツのメーカー5社が「LV148」規格を策定、48V電源対応車の開発が進んでおり、今年から欧州を中心に「48VマイルドHV」が投入されるようです。

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また、2020年からは中国、米国でも採用が増えるとの予想。

・バイ・ワイヤ技術

機械式制御に代わって電気信号で制御する技術で、主に日米欧を中心に搭載が増えています。

ドライブ・バイ・ワイヤは、エンジンの回転を電気制御するため、燃費削減につながるほか、アクセルワイヤやなどの部品が不要になるため、軽量化にも貢献。

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今後、自動運転などで電子制御化がさらに進むことから、2020年代前半には搭載率が100%になるとみられ、上級モデルを中心に搭載が進むようです。

シフト・バイ・ワイヤは、シフトレバーのデザインに制約がなくなり、センタークラスター、センターコンソールのデザイン性向上にもつながるため、ハイエンドクラスの自動車を中心に搭載が進むとの予想。

また、クラッチ・バイ・ワイヤは、高速道路でのみクラッチ操作からオートマチックに切り替えるなど、ドライバーの運転支援にもつながることから、2018年から主にM/T車の多い地域で搭載が進み、欧州、中国、新興国に限定的に普及するとしています。

これらの調査結果より、今後2020年から2030年にかけて「環境」「安全」「快適」をテーマにした機器やデバイス市場が飛躍的に拡大するとみてよさそうです。

Avanti Yasunori ・画像:トヨタ自動車、富士キメラ総研)

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オムロンが運転手の状態をリアルタイムに判定する世界初の車載センサーを開発

オムロンは、運転手の行動や状態をセンシングし、安全運転に適した状態かを判定する「ドライバー運転集中度センシング技術」を搭載した、世界初の車載センサーを開発したと発表しました。

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この車載センサーに搭載されている「ドライバー運転集中度センシング技術」は、画像センシング技術に「時系列ディープラーニング」という最先端のAI(人工知能)技術を組み合わせているということです。

オムロンでは、運転手の健康状態が急変し、運転の継続が困難な状況に陥ってしまうことによる事故の複数発生や、自動運転の実現にむけた運転手の安全運転を支援する技術開発が求められていることを背景に、運転手が安全運転に適した状態かをリアルタイムに判定できる技術開発を進めてきました。

今回の車載センサーのキモである「ドライバー運転集中度センシング技術」は、画像センシング技術に最先端のAI技術「時系列ディープラーニング」を取り入れて、カメラで撮影した映像から、運転手が運転に適した状態かをリアルタイムにレベル分けして判定することができます。

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オムロンは、この技術を搭載した車載センサーを2019年〜2020年に発売される自動運転車などへ搭載することを目指しています。

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新開発の車載センサーの特長は次の3点です。

・運転手の行動/状態をセンシングし、運転に適した状態かをリアルタイムにレベル別に判定できる
・多様な運転手の状態を手のひらサイズのカメラ1台で判定できる
・ネットワーク接続を必要としない車内で完結したシステムでもリアルタイムに判定処理が可能

オムロンは、当技術のデモンストレーションを、2016年6月8日(水)から10日(金)まで開催された「第22回 画像センシングシンポジウム SSII2016」および、2016年6月27日(月)から30日(木)に、アメリカ・ラスベガスで開催される「CVPR Industry Expo 2016」に展示します。

(山内 博・動画、画像:オムロン)