Motor Fan's YEAR 2016

三栄書房

サンプル

モトチャンプ

国交省、日本初の対歩行者自動ブレーキの評価を公表。最高得点はマツダ アクセラ

国土交通省は12月1日、日本初となる11車種の対歩行者自動ブレーキの評価を公表しました。評価試験での最高得点はマツダ アクセラが獲得しました。

aku2

今回、同省が公表した対歩行者自動ブレーキ評価は、平成7年から行っている自動車アセスメントの一環として今年度の平成28年から新たに加えられたもので、国産乗用車11車種の対歩行者自動ブレーキ評価を実施しました。

aku1

公表された対歩行者自動ブレーキ評価の結果を得点順(25点満点)に並べると次の通り。

1.マツダ アクセラ:24.5
2.スバル フォレスター:23.5
3.スバル インプレッサ:22.9
4.スバル レヴォーグ/WRX:22.5
5.トヨタ プリウス:22.1
6.スバル レガシィ:22.0
6.レクサス RX:22.0
8.レクサス GS/GS F:21.9
9.トヨタ クラウンアスリート/ロイヤル/マジェスタ:21.3
10.スズキ イグニス:20.3

今回の評価は、歩く速度で車の前方を横断する人形に対して、車を10km/h〜60km/hの速度で複数回直進させ、横断する人形を検知して停車するまでの距離をメインに、衝突の回避・減速量に応じて点数を計算しました。

aku3

今回、同省が対歩行者自動ブレーキ評価を公表したのは、日本国内の交通事故実態では、①死者数の約37%を歩行者が占めて最多となっていること、②交通事故死者数が減少しているなかで、歩行者の死者数減少幅が小さいこと、を重視したものと見られます。

公表された評価は、一般ユーザーが車種を選択する際に大きな指針となるもので、今後評価対象の車種をどこまで広げるか、特に輸入車を評価の対象に加えるかに注目が集まっています。

なお、対歩行者自動自動ブレーキが検知する対象は、あくまでも歩く速度で横断する人形であり、歩行者が急に飛び出すようなケースは評価対象になっていないので、現状では自動ブレーキを過信することはできません。

(山内 博・画像:国土交通省)

国交省が保安基準を改定、「オートライト」や電動車の「接近音」装備義務付けへ

国土交通省は10月7日、国連欧州経済委員会の自動車基準調和世界フォーラムで新たな国際基準が採択されたことを受け、車両保安基準等を一部改正、「車両接近通報装置」及び「前照灯の自動点灯(オートライト)機能」の搭載を義務付けました。

01

「車両接近通報装置」は歩行者等に電動車(HV、PHV、FCV、EV)の接近を電子合成音で知らせるもので、OFFスイッチが無いことを条件としています。

同省では、歩行者が音の静かな電動車の接近に気付かず危険なことから、2010年にガイドラインを策定し、装置の普及を促して来ましたが、手動での発音停止が可能だったため、これを禁止。

発進から車速約20km/hの速度域と後退時に自動で発音すると共に、これまでより音量をアップ、聴き取り易い周波数を採用する方針といいます。

新型車への適用は2018年3月8日から、継続生産車は2020年10月8日からとなっています。

一方、「オートライト」は薄暮時等に周囲の明るさに応じて、自動的にロービームを点/消灯させるもので、こちらも手動による解除ができないことが条件となっています。

JAF

新型車への適用時期は2020年4月から、継続生産車は2021年10月から、また定員11名以上の乗用車や車両総重量3.5t超の貨物車については新型車が2021年4月から、継続生産車が2023年10月からとなっています。

また、灯火器関連では、今回の改正で「DRL(デイタイムランニングランプ)にかかる基準を新設、「灯火器の取付けに係る協定規則(第48号)」の要件に適合するDRL装着を正式に認めました。

W176_DRL

今回の保安基準改正により、国内販売される日本車についても、ようやく灯火器類の仕様が欧州車と同様になり、日中の被視認性が向上することで、安全性や商品性向上に寄与しそうです。

Avanti Yasunori・画像:JAF)

【関連記事】

薄暮・夜間の事故を減らせ! トヨタが進める「マチホタル計画」とは?
http://clicccar.com/2016/09/14/399072/

【関連リンク】

国土交通省
http://www.mlit.go.jp/

JAF(オートライト)
http://www.jaf.or.jp/eco-safety/safety_light/autolight/(前編)
http://www.jaf.or.jp/eco-safety/safety_light/autolightlatterpart/index.html(後編)

車両接近通報装置(トヨタ自動車)
http://www.toyota.co.jp/jpn/tech/safety/technology/technology_file/active/audible.html

三菱自動車が不正防止対策のため組織変更。副社長直轄体制で監査機能を強化

三菱自動車が9月30日、国土交通省(以下国交省)へ燃費試験にかかる不正行為への対応について報告したそうです。

MITSUBISHI_MOTOR

同社は今年4月に軽自動車(4車種)の燃費改ざんが発覚後、対象車の販売を停止、国交省へ修正した燃費値を提出、7月に販売を再開しました。

しかし、その後の国交省の調査で、軽自動車以外のSUVなど8車種についても届出値からの乖離が大きいことが判明し、8月30日に同省へ修正版の燃費値を提出するとともに、対象車の販売を停止しました。

さらに、社内で燃費データを再測定した際にも不正を重ねていたことが国交省の調査で判明しており、今回の報告は、今後の新型車の燃費データ届け出時に実施する新たな再発防止策についてになります。

具体的には、性能実験部が提出するデータを検証する立場にある「認証部」を開発本部から独立させ、山下光彦副社長が直轄(10月15日〜)。監査機能を強化するとともに、開発本部に法規担当窓口を設置します(2017年1月〜)。

MITSUBISHI_MOTOR

また、法律に則った燃費測定(惰行法による)を行うためのマニュアル改定や、人的なデータ改ざん防止を目的とした、走行抵抗データ処理の自動化(12月1日〜)なども織り込んでいるそうです。

一連の不正の影に潜む重要な案件として、トヨタ自動車のOBを含む特別調査委員会の調査で明らかになった「開発工数見積りツール」の脆弱さについては、「慢性的な開発工数不足」に直結するため、工数検討委員会(8月30日設置)で工数管理システムを構築し(〜12月末)、見積り精度を向上させ、今後は商品計画段階で必要なリソース充当を図るとしています。

確かに自動車開発では部品も多く、特に燃費向上等では多大な「工数」を要するだけに「人の確保」が何より重要であり、粛々と開発を遂行するには、採用活動の段階から体制を強化する必要性が高そうです。

Avanti Yasunori・画像:三菱自動車)

【関連記事】

三菱自動車がパリでPHEVのコンセプトモデルを公開!
http://clicccar.com/2016/09/23/401532/

三菱自動車の燃費不正問題、最大8.8%悪化! 現行販売車にも波及
http://clicccar.com/2016/08/31/396294/

元初代プリウス開発者が精査した三菱自動車の開発実態は?
http://clicccar.com/2016/08/04/390331/

三菱自動車、日産との提携を正式に締結!「外の目」で体制立て直しへ
http://clicccar.com/2016/05/31/374144/

日産がいち早く発動した三菱自とのシナジー戦略とは?
http://clicccar.com/2016/05/25/373756/

子供はチャイルドシートで後席へ ─ 国交省が改めて注意喚起するわけは

国土交通省は9月16日、子供を車に乗せる際に「チャイルドシートを使い、できるだけ後席に乗せる」という注意喚起を「秋の全国交通安全運動」に合わせて発表しました。

チャイルド1

これはシートベルトやエアバッグが成人の体型を前提に設計されているために、体が小さい子供を不用意に車に乗せると、事故の際に被害を大きくすることがあり、6歳未満の子どもを車に乗せる際には、チャイルドシートを適切に使用しなければならないという従来からの規定を、改めて注意喚起したものです。

これは、電柱に衝突した軽自動車の助手席に3歳の女児を座らせていて、エアバッグによる圧迫で死亡させた母親が、助手席に子どもを乗せるのは配慮を欠くとして9月1日に有罪判決を受けたことにも配慮したものと見られます。

チャイルド2

国交省が発表したリーフレットでは、①子供を車に乗せる時は、必ずチャイルドシートを使用する、②子供はできるだけ後席に乗せる、③安全基準に適合したチャイルドシートを使う、ことを注意喚起しています。

チャイルド4

子供がチャイルドシート無しでシートベルトを使用すると、事故の際に首などに重大な障害を負う恐れがあります。また、子供を抱っこして乗車するのも、衝突時に子供を支えられず、大変危険です。

また、助手席に子供を乗せると、衝突時に膨張するエアバッグで子供が被害を受ける危険があります。助手席にチャイルドシートを取り付ける場合は、助手席を一番後ろに下げて、前向きに取り付けてください。後ろ向きは危険です。

チャイルドシートを正しく使用して、秋のドライブシーズンを楽しみましょう。

(山内 博・画像:国交省)

【関連リンク】

チャイルドシートコーナートップページ|国土交通省
http://www.mlit.go.jp/jidosha/child/

東京のタクシー初乗り運賃を「410円」に引下げる実証実験が8月5日から実施

国土交通省は、東京のタクシー初乗り運賃を410円に引下げる実証実験を8月5日(金)から9月15日(木)までの期間限定で実施すると発表しました。

タクシー1a

今回の実証実験に参加するのは東京のタクシー事業者23社の40台のタクシーで、参加車両の車体後部左側には上図右側のステッカーが表示されています。

これにより、東京の一部タクシー乗り場において、初乗り410円のタクシーを利用することができます。

東京のタクシー初乗り運賃については、初乗り距離を短くして額を引き下げるという内容の申請がなされており、現在、国土交通省で運賃改定手続が進められています。

今回の実証実験は初乗り運賃の引き下げによる効果を確かめるために行われます。

タクシー2

初乗り410円のタクシーを利用できる場所は、1.新橋駅東口、2.浅草駅前、3.新宿駅東口、4.東大病院前の4カ所のタクシー乗り場です。各タクシー乗り場の地図で青い円は実証実験の初乗り区間を示し、赤い円は現行の初乗り区間(2km)を示しています。

なお、今回の実証実験に参加する車両は流し営業は行わず、上記乗り場でのみ利用可能です。

実証実験の実施運賃は、初乗り運賃が1.059mまで410円に、加算運賃が237mごとに80円となります。

タクシー3

タクシー4

タクシー5

国土交通省では、実証実験の利用者に対してタクシー利用の実態や実証実験参加に係る感想等について、アンケートを実施する予定です。

(山内 博・画像:国土交通省)

シートベルト警報装置の設置義務が後部座席にも拡大

国土交通省が、シートベルト未着用で走り続けた場合に警報音が鳴る「シートベルト・リマインダー」の全席装着を義務化する方針を固めたそうです。

Mercedes-Benz_E-Class

後部座席でシートベルトを着用せずに事故で死亡するケースが多いため、安全上の観点から後部座席についてもシートベルトの着用を義務付けており、高速道路で未着用が判明した場合、罰則で減点(-1点)を伴います。

ただ一般路の場合、口頭注意のみで罰則・罰金の設定が無いため、着用率が上がっていないのが実情のようです。

とはいえ、衝突事故が発生した場合、後席乗員のダメージは想像以上に大きく、窓が開いている場合、車外へ放出されるケースもあるといいます。

新聞報道によると、国交省は昨春、世界的な基準を定める国際会議で、乗用車の警報装置設置範囲を後部座席を含む全座席に拡大する規制を提案したそうです。

今年11月の国際会議で正式に採択され、早ければ2017年春にも保安基準が改定される見通しとか。

警察庁の統計では昨年、後部座席で事故に遭って亡くなった152人のうち、約7割の人がシートベルトを付けていなかったそうで、そのうち35人は車外に放出されていたそうです。

家族など後席乗員の安全を守るためにも、こうした装置の有無にかかわらず、ドライバーが率先してシートベルトの着用を促したいものです。

Avanti Yasunori・画像:メルセデス・ベンツ)

クルマも「ミラーレス」に!6月18日、国土交通省が解禁

「ミラーレス」といってもデジタルカメラの話ではありません。長い歴史を持つ自動車用のミラーがいよいよ無くなろうとしています。

国土交通省が6月18日、サイドミラーの代わりにカメラモニタリングシステムを備えた「ミラーレス車」を解禁しました。

MAZDA_RX-VISION

道路運送車両の保安基準などで、鏡面の面積や視認エリアなど詳細な条件が定められていたサイドミラー。

今回カメラとモニターで代用できるようになったのは、国連のWP29(自動車基準調和世界フォーラム)が、昨年11月にミラーの代用範囲拡大を決定したことが背景に有ります。

VW_XL1

こうした世界の動きを踏まえ、国土交通省が自動車の保安基準を改定し、自動車の全てのミラーをカメラとモニターで代用することを認めたもの。

これまでバックカメラが先行して普及するなか、日産自動車がエクストレイルなどのインナーミラーに液晶モニターを内蔵した「スマート・ルームミラー」をいち早く採用。

車両後方の様子をカメラ映像化することで、後席乗員の頭部やCピラーなどによる後方視界への影響が無くなり、暗い地下駐車場内や夜間の視認性も向上、安全性の向上に寄与しています。

今回「ミラーレス車」が解禁されたことで、これまでゼロにできなかった死角を無くすことが可能になるとともに、雨天時にドアガラスやバックウインドウガラスについた水滴の影響を受けること無く、クリアな視界を得ることができるようになります。

また、エクステリアデザインの一部となっていた外付けミラーに代わり、新たなアイデアが生まれる可能性も。

一方、ネガ要因としては、後続車の遠近感への違和感や、映像表示の微小な遅延、システムの故障などが考えられます。

また、カメラの搭載位置やレンズへの埃・水滴付着に対する設計上の工夫が必要になるのは言うまでもありません。

しかし、国交省がGoを出した背景には、これらの要件をクリアした車両の登場が近い事を意味している可能性が高く、それが国産車なのか、輸入車なのか、はたまたトラックやバスなどの商用車なのかは現時点で不明ですが、いずれにしても今後の動向が大いに注目されます。

Avanti Yasunori ・画像:Volkswagen

【関連記事】

国交省が2016年6月に車両のミラーレス化を解禁する!?
http://clicccar.com/2015/12/01/341391/

トヨタ自動車が運転席から車外を「透視」する技術を開発!
http://clicccar.com/2015/04/11/302742/

仏Valeoがコンセプトカー並みの小型ドアミラーを実現?
http://clicccar.com/2015/02/01/291011/

エルグランドの新装備「スマートルームミラー」は使える?
http://clicccar.com/2014/07/02/260496/

日産が採用するレーシングカーと共通するルームミラーとは?
http://clicccar.com/2014/03/05/248329/

スズキの報告から見えてくる燃費試験「惰行法」の課題とは?

三菱自動車の燃費不正問題を受け、国土交通省が各自動車メーカーに同様の問題が無いか調査を指示しました。

その結果、スズキが同省に報告した内容が話題になっています。

SUZUKI_SWIFT

スズキが18日夕方に開いた緊急会見によると、燃費測定の際の走行抵抗値の改ざん等は無かったものの、16車種(登録車/軽自動車各8車種)全てについて、同社独自の方法で測定した走行抵抗値を国交省に提出していたそうです。

実車走行テストで得たデータではなく、実験室の風洞で空気抵抗を測定、台上で測定したタイヤの転がり抵抗値との合算で走行抵抗を算出していたとしています。

同社がこれまで国交省が定めた「惰行法」による測定データを使わなかったのは、相良テストコースに横風を防ぐ遮風板等の設備が無く、測定データがバラつくためで、燃費を良くみせることが目的ではないと説明しています。

確かに近頃のモデルは車高が高いトールボディが主流なので、横風が強い屋外の場合、安定した測定が難しいのかもしれません。

SUZUKI_HUSTLER

ちなみに国交省が定めている「惰行法」は以下となっています。

・時速20km/hから90km/hまでの10km/h刻みを基準に+5km/hで走行
・その後ギアをニュートラルにして基準-5km/hまで減速する時間を測定
・時速90km/hなら、95km/hから85km/hまで減速する秒数を測定
・測定は往路3回及び復路3回行い、その平均値を求める

スズキではこれまでも全車種について実験室で得たデータと、テストコースでの「惰行法」による測定結果との相関をとりながら走行抵抗値を決定しており、今回の再検証の結果でも届出値との差異が5%以内だったことから、販売中の車種においても燃費値に問題は無いとしています。

会見に出席した鈴木修会長は「国が定めた試験方法で実施してなかったのは事実」として、今回国交省へ報告、並びに謝罪会見を開いたと述べています。

スズキも三菱自と同様に海外で販売している車両については問題が無いとしており、本件は国内のみの案件としていることから、燃費測定の基準となる日本独自の「惰行法」による走行抵抗値測定方法自体にも問題がある可能性が浮き彫りになって来ました。

おりしも国交省は2018年内に新たな燃費試験基準(WLTP)の導入を予定しており、実燃費に近いデータが得られる測定方法や表示方法への早期移行が期待されています。

Avanti Yasunori

【関連記事】

国交省が2018年内に導入する新燃費基準「WLTP」とは ?
http://clicccar.com/2016/05/19/372611/

三菱自、相川社長が6月辞任、益子会長は当面留任、その背景は?
http://clicccar.com/2016/05/18/372721/

スズキも国土交通省に燃費不正問題を報告、燃費不正はなし!?
http://clicccar.com/2016/05/18/372701/

日産が三菱自動車の燃費不正解明を待たずに買収に動いた訳は?
http://clicccar.com/2016/05/13/371662/

三菱自動車 相川社長が燃費偽装で引責辞任か?国交省の対応は?
http://clicccar.com/2016/04/27/369037/

カタログ燃費とのギャップは三菱だけじゃない!新燃費基準「WLTP」について訊いてみた

三菱自動車の不正問題では、カタログ燃費と10%前後の差違がクローズアップされています。しかし、そもそも国の基準自体が実燃費とかけ離れている実態が一方にあります。

その点、所管省はどう考えているのか? 最近発表された新しい燃費基準も含めて話を聞きました。

[答える人]
国土交通省 自動車局環境政策課
髙井誠治 氏

IMG_2595 IMG_2589

── カタログ燃費であるJC08モードと実燃費のギャップは、三菱車オーナーだけでなく多くの方が感じているところです。これについて国土交通省へ具体的な声は届いていますか?

「はい。やはりユーザーからの声が多く、直接電話での問い合わせもあります。特定の車種についてはもちろん、一般論として差が大き過ぎるという声もありますね。メディア関係では一部新聞社からの質問がありました」

JC08モード

── 以前の10.15モードの反省を生かしたはずのJC08モードですが、なぜ解離が大きいままになってしまったのでしょう?

「モード燃費は運転スタイルに左右されますので一概に差が大きいとはいえません。ただ、燃費に厳しいとされる寒冷時(コールド)スタートや、エアコンなど電装品の使用に対しての設定が甘かったとは言えるかもしれませんね」

── 先頃、新しい国際燃費基準である「WLTP(Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedure)」の2018年導入が発表されましたが、その点で具体的な改善点はありますか?

「基本的には欧州基準の準用で、まずスタートは100%コールド・スタート(JC08は25%)であること、平均車速が約50%上がっていること、またアイドリング時間が逆に50%程度減っていること、総走行距離の倍増などがおもな改善点です」

新基準モード

── それで、どの程度実燃費に近くなると考えていますか?

「車種によりますが、全体的にJC08より低い数値が出ます。事前の実験では、とくにハイブリッド車や軽自動車でその差が大きい。これは平均車速が上がっているためだと思われます。また、WLTPでは市街地・郊外・高速道路のパターン別数値も公表しますので、車種による特性の違いも出せると思います」

新基準実験

── 2018年の導入以降、新型車を含め当面JC08モードとの併記表示が可能とされていますが、たとえば、既存車にも新基準適用の指導などは行いますか?

「現行の2020年度燃費基準はJC08モードベースです。メーカーもそれを元に開発を進めていますので、所管としていきなり全部変えろとは言えない。ただ、お願いとして話をするか否かは状況を見ながら考えたいですね」

HONDA_N-BOX

── WLTP導入で過度な燃費競争は収まると思いますか? また、所管としてそのような施策を考えていますか?

「そこはメーカーの競争領域ですし、環境政策の部署としてはより燃費のいいクルマが増えること自体は歓迎です。ただ、たとえば軽ではホンダN-BOXやダイハツ・タントなど、販売上位車種は必ずしも燃費だけで選ばれていません。ユーザーは意外と多様な選択理由を持っていると思いたいですね」

── 本日はありがとうございました。

(すぎもとたかよし)

三菱自 相川社長が燃費偽装で引責辞任か?国交省の対応は?

VWのディーゼル車排ガス不正問題に続き、三菱自動車による燃費改ざん問題で、自動車業界に再び大きな衝撃が走っています。

MITSUBISHI_ek_Wagon

本問題は性善説に基づく国土交通省の自動車検査方法にまで波及しつつあります。

そうしたなか、毎日新聞によると、三菱自の相川社長が26日に社内に発足させた外部弁護士による特別調査委員会の検証結果取りまとめなど、事態収拾に一定の道筋を付けた後に退任する方向としています。

また読売新聞によると、当時の社長で現在会長の益子修氏についても退任する公算が強いとしています。

今回取り沙汰されている「ekワゴン」が発売されたのは2013年6月。

TV東京の「ガイアの夜明け」で「人気沸騰!軽自動車ウォーズ」と題して開発記録が放映されており、当時この番組をご覧になった方も多いのではないでしょうか。

2011年6月に三菱自と日産が発足させた合弁会社「NMKV」を舞台に、両社が協力しながら最後の最後まで果敢に燃費改善を図る様子がリアルに描かれていました。

しかしながら、今回の三菱自の燃費不正発覚の発端となったのは、意外にも当時共に開発を行っていた日産からの指摘によるものでした。

不正発覚のきっかけは「デイズ」の次期モデルを日産が自前で開発すべく、現行モデルの燃費を調査したところ、公称燃費との乖離が大きかったことによるとされています。

そして三菱自が4月26日に国土交通省へ報告した内容を要約すると以下のようになっています。

・「ekワゴン」の燃費訴求車の当初目標値は26.4km/L
5回の上方修正を経て発売直前には29.2km/Lに引き上げ

・1991年より法規と異なる「高速惰行法」で走行抵抗を実測
測定データの中から小さい値を選別して走行抵抗を設定

・派生車やマイチェン車は燃費訴求車を元に机上で算出

そもそも現行の「JC08モード燃費」は独立行政法人 交通安全環境研究所で試験した結果を元に国土交通省が認定する仕組み。

ただ、燃費試験に必要なタイヤと路面の摩擦で生じる“走行抵抗”については各メーカーが提出するデータを使用しているのが実情。

三菱自は燃費を良く見せかけるため、この走行抵抗値を改ざんしていたという訳です。

この独自の測定方法を使った対象車種数については現在調査中とのことですが、恐らく数十車種にのぼるとみられています。

三菱自動車では現時点で不正に及んだ原因や責任について未解明としており、今回設置した「特別調査委員会」で調査を進めるとしています。

顧客への補償やエコカー減税額が変わる事で、税金の不足分などが出れば一連の対応費用について最大で1,000億円以上に上るとの試算も。

振り返れば軽自動車のシェア拡大に向け、ダイハツ、スズキの2強を相手に拡販を狙うべく選んだ相手が日産でした。

しかしながら、2015年度(15/4〜16/3)の軽自動車国内販売シェアはダイハツ(32%)、スズキ(30%)の2強が約6割を占めており、ホンダ(18%)、日産(11%)を差し引いた中の約3%といった状況。

MITSUBISHI_ek_Wagon

さらに日産は今後、軽を三菱自との共同開発では無く、自社で開発する腹づもりのようで、新会社発足当時からは方向性が変わりそう。

不正発覚の発端となった「ekワゴン」など4車型は既に62.5万台が生産されており、その他の車種への拡大や、ユーザーからの信頼を失うことで被る販売への影響は計り知れません。

今回の不正発覚を機に国土交通省もようやく重い腰を上げ、26日の記者会見で石井啓一国土交通相が燃費測定方法の見直しを図るとしており、再発防止策を検討する作業部会を設置すると発表しました。

今回はっきりしたのは公的な燃費審査機関がメーカーの「いい値」を使って試験していたのでは“お話にならない”ということ。

今後は日本でも現状のような台上試験では無く、米国の燃費審査機関である「EPA」(環境保護庁)が行っているような実走行によるものとし、消費者側が実力燃費を把握できる測定方法に一刻も早く切替えるべきでしょう。

そうすれば今回のような企業側の「甘え」や「からくり」を使った燃費偽装が入り込む余地が無くせる可能性が高まりそうです。

Avanti Yasunori

【関連記事】

三菱自の新たな発表「1991年から続いた4重の不正」とは?
http://clicccar.com/2016/04/26/368979/

日産自動車、三菱自動車、NMKVの三社、軽自動車の協業を拡大、
http://clicccar.com/2015/10/25/334493/

新型「ekワゴン」が三菱自動車経営再建の切り札になるこれだけの理由 !
http://clicccar.com/2013/06/21/223007/

国交省、乗用車の燃費基準をJC08から国際基準のWLTPに変更

国土交通省は、乗用車の燃費基準を現在のJC08モードから、国際基準のWLTPモードへ変更する方針を発表しました。

0001b

今後、国土交通省は改正が必要な関連法案を国会へ上程して、2018年中に乗用車の燃費基準にWLTPモードを導入する見込みです。

現在の乗用車の燃費基準は、日本のJC08モードや、米国のLA#4モード、欧州のNEDCモードなど国別に個別に決められています。

0001a

このため、次のような問題が指摘されています。

1.自動車メーカーは輸出先の国別に異なる燃費基準で燃費を測定しなければならない
2.ユーザーは国別に異なる燃費基準の測定費用を車両価格で負担しなければならない

燃費はわれわれ一般ユーザーにとっても関心のあるデータですが、国際基準のWLTPモードが普及すれば、自動車メーカーは輸出先別に燃費を測定するコストを低減でき、ユーザーは低燃費の車をより低価格で購入できることが期待されています。

(山内 博・画像:国土交通省)

国交省、世界初の「ドライバー異常時対応システム」のガイドラインを策定

国土交通省は、ドライバーが急病になったときに自動車を自動で停止させる「ドライバー異常時対応システム」のガイドラインを策定し、3月29日に世界に先駆けて公表しました。

0001a

ガイドラインの対象となるのは、「二輪車を除くすべての自動車」としています。

ガイドラインでは、ドライバー異常の検知方法として

1.システムによる「異常自動検知型」
2.「ドライバー押しボタン型」
3.「同乗者押しボタン型」

の3タイプを提示しています。

0001b

またガイドラインでは、運転者へシステムが作動したことを警報するプロセスを設けて、減速開始前に運転者に一定時間警報を発生させることを求めています。

その理由は検知方法の1.では誤作動が、3.では悪戯等が懸念されるからです。運転者に異常がない場合は、警報に応じて運転者が作動を解除します。

そしてガイドラインでは、自動車の減速度を制御し、後続車の追突や立ち席の乗客に考慮した緩やかな減速をすることを求めています。

さらにガイドラインでは、「同乗者への報知」 「他の交通への報知」を提示しています。

最近、新聞紙上では「大阪梅田での暴走事故」「バス運転手の急病」などドライバーの急病による事故の報道が目に付きます。

今回のガイドライン策定によって「ドライバー異常時対応システム」の開発が進むことが期待されます。

(山内 博・画像:国土交通省)