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三菱自動車が不正防止対策のため組織変更。副社長直轄体制で監査機能を強化

三菱自動車が9月30日、国土交通省(以下国交省)へ燃費試験にかかる不正行為への対応について報告したそうです。

MITSUBISHI_MOTOR

同社は今年4月に軽自動車(4車種)の燃費改ざんが発覚後、対象車の販売を停止、国交省へ修正した燃費値を提出、7月に販売を再開しました。

しかし、その後の国交省の調査で、軽自動車以外のSUVなど8車種についても届出値からの乖離が大きいことが判明し、8月30日に同省へ修正版の燃費値を提出するとともに、対象車の販売を停止しました。

さらに、社内で燃費データを再測定した際にも不正を重ねていたことが国交省の調査で判明しており、今回の報告は、今後の新型車の燃費データ届け出時に実施する新たな再発防止策についてになります。

具体的には、性能実験部が提出するデータを検証する立場にある「認証部」を開発本部から独立させ、山下光彦副社長が直轄(10月15日〜)。監査機能を強化するとともに、開発本部に法規担当窓口を設置します(2017年1月〜)。

MITSUBISHI_MOTOR

また、法律に則った燃費測定(惰行法による)を行うためのマニュアル改定や、人的なデータ改ざん防止を目的とした、走行抵抗データ処理の自動化(12月1日〜)なども織り込んでいるそうです。

一連の不正の影に潜む重要な案件として、トヨタ自動車のOBを含む特別調査委員会の調査で明らかになった「開発工数見積りツール」の脆弱さについては、「慢性的な開発工数不足」に直結するため、工数検討委員会(8月30日設置)で工数管理システムを構築し(〜12月末)、見積り精度を向上させ、今後は商品計画段階で必要なリソース充当を図るとしています。

確かに自動車開発では部品も多く、特に燃費向上等では多大な「工数」を要するだけに「人の確保」が何より重要であり、粛々と開発を遂行するには、採用活動の段階から体制を強化する必要性が高そうです。

Avanti Yasunori・画像:三菱自動車)

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元初代プリウス開発者が精査した三菱自動車の開発実態は?

前東京高検検事長で弁護士の渡辺恵一氏を委員長に、委員として2名の弁護士と、元トヨタ自動車の理事、八重樫(やえがし)武久氏を含む4名で構成する特別調査委員会が、8月2日に三菱自動車の燃費不正に関する調査結果を公表しました。

NIKKEI

同委員会は本問題の事実関係や原因・背景等を明らかにするため、今年の4月25日から7月31日までの約3ヶ月に渡り、MMC(三菱自)、NMKV(日産/三菱自合弁会社)、MAE(三菱自動車エンジニアリング) の役職員、及び元役職員等154名を対象に実施した計236回に上る聞き取り調査をベースに、綿密に開発の実態を調査したそうです。

今回、調査委員として抜擢された八重樫氏は、入社以来一貫してトヨタのクリーンエンジンの研究開発に携わり、初代プリウスのハイブリッドシステム開発を担った中心人物で、「ハイブリッドの父」の異名を持つエンジン開発のベテラン。

そうした経歴を持つ元トヨタ自動車の八重樫氏らが今回の調査で目の当りにした同社の開発現場の実態はどのようなものだったのか、さっそく見て行きましょう。

報告書によると、下記に列記した原因/背景の根本まで掘り下げて分析した結果、「MMCの経営陣及び開発本部の幹部による開発現場に対する関心が低く、開発本部の各部署も自分たちの業務にしか関心を持っていない」と指摘しています。

・性能実験部、認証試験が燃費の責任を負う仕組み
・開発工数が慢性的に不足
・性能実験部が「できない」と言えない風土
・法規違反に対する意識が希薄
・不正行為が長年にわたり改められない
・技術的議論が不十分なまま燃費目標を設定
・会社一体となってクルマを作り、売るという意識が欠如

そうした背景から「MMC全体で自動車開発に対する理念の共有がなされず、全社一体となって自動車開発に取り組む姿勢が欠けていたことが本質的な原因」とした上で、今回の問題は「性能実験部及び認証試験グループ、更には開発本部だけの問題ではなく、経営陣をはじめとするMMC全体の問題」と結論付けています。

具体的には、MMCの開発業務について、経営陣が開発の実情や実力を十分に把握していたとはいい難く、開発の現場にほぼ任せきりにしており、開発責任者や開発本部の幹部らも、性能実験部の業務に対し、無理解、無関心だったと指摘。

性能実験部では、一足先に「惰行法」が採用されたディーゼル車の走行抵抗測定に関する経験から、法律に定める「惰行法」による走行抵抗測定が煩雑といった認識が浸透。

少なくとも1991年12月頃には「高速惰行法」による走行抵抗データを使って、あたかも「惰行法」によって走行抵抗を測定したかのような負荷設定記録を作成するようになっていたそうです。

MitsubishiMitsubishi

このような状況になってしまったのは、各車種の開発チームや担当者の意思によるものだった可能性が高く、その一方で、上司は部下が法規を遵守して業務を行うように、指導や監督をしていた形跡すら見当たらなかったといいます。

おりしも、2005年に当時の新入社員が評価方法の違法性を指摘、また2011年に実施したコンプライアンス(法令順守)に関する社内アンケートでも「報告書の虚偽」との指摘があったにもかかわらず放置しており、一連のリコール隠し問題が発覚以降も全く自浄作用が働かなかったことを考慮すると、この根深い状況は一筋縄では解決しそうに無さそうです。

NIKKEI

そこで先頃、三菱自動車を傘下に収めた日産自動車は、山下光彦副社長(開発・品質担当)を事業構造改革の責任者として早々に送り込んでおり、既に開発部門の多層からなる階層のフラット化や、会議体の見直しなどに着手しているそうです。

7月からは開発部門でエンジニアリング子会社を含む約5,000人を対象にした「パフォーマンス・レボリューション活動」をスタート。

新聞報道などによると、部長以上を対象に、現状認識、会社の実態等について議論を開始しており、9月末を目処に課題をまとめ、共通認識を高めた上で、具体的な解決策を見出し、その後、社内全体の活動に拡大していく計画とか。

開発の現場で役員が議論に参加する仕組みづくりも併せて進めているようです。

山下副社長の今後の手腕が注目されるとともに、「外部の目」として日産自動車本体のサポートも引き続き、必須の状況と言えそうです。

Avanti Yasunori

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新入社員に指摘されていた三菱自動車の燃費不正問題

記者会見や一部報道でも周知のとおり、三菱自動車による燃費不正問題で、外部有識者のみで構成される特別調査委員会による報告書が8月2日に公表されました。

20151106MitsubishieK_0037

なお、特別調査委員会は、渡辺恵一委員長(元東京高検検事長)、元トヨタ理事でハイブリッド開発統括の八重樫武久委員、坂田吉郎委員(弁護士)、吉野弦太(弁護士)の4人です。

調査報告書によると、同社は遅くとも1991年(平成3年)頃から型式指定審査のため、法令である惰行法によって走行抵抗を測定することなく、開発段階における動力性能実験に付随する高速惰行法によって測定済みの走行抵抗のデータを流用。

そして、惰行法によって走行抵抗を測定したかのような体裁として負荷設定記録を作成して運輸省(当時)に提出し、型式指定審査を受けるようになっていました。

三菱自動車はその後、今回の燃費不正問題が発覚するまで約25年にもわたり、ほぼすべての車種について同様の方法で負荷設定記録を作成して、型式指定審査を受けていたと指摘しています。

20151106MitsubishieK_0082

報告書の中では、リコール隠しによる多数の人材流出なども指摘されていますが、中でも注目なのが極めてコンプライアンス意識の低下が続いていた状況。

とくに、驚くべきは、2005年(平成17年)2月18日に開催されたという「新人提言書発表会」において走行抵抗測定方法の問題が取り上げられ、「国仕向け自動車の型式指定審の際に使用する走行抵抗は、惰行法によって測定するというのが法規の定めであり、法規にって惰行法を用いるべきである旨の提言が、時の新人社員からなされた」と、新入社員から突っ込まれたという点です。しかし、その後も同社の運用は改められていません。

今後の復活は日産自動車のサポートも重要ですが、改めて企業風土の刷新は難しいことと感じさせられます。今度こそ自浄力が働くでしょうか。

(塚田勝弘)

三菱自動車の燃費試験における不正問題。軽以外の対象車には3万円

軽自動車の走行抵抗値不正問題の調査において、同社の登録車(パジェロ、RVR、旧型アウトランダー、ギャランフォルティス/ギャランフォルティス スポーツバック、コルト/コルトプラス)においても、恣意的な改ざん行為があったことが判明しています。

MMC_fusei

対象車のオーナー(所有者)には、お詫びとして3万円が払われることも発表されました。

対象車を判別するための専用検索ページも用意されています。用意するのは車検証。そこに書かれた車台番号を入力するだけで、自分のクルマが対象になっているかどうかがわかるという仕組みです。

また燃費不正に関するお問い合わせ専用窓口も用意されています。

フリーダイヤル:0120-100-223
[受付時間]9時〜17時(土日は9時〜12時、13時〜17時)

(山本晋也)

三菱自動車、燃費不正問題に関するユーザーへの賠償額を公表

三菱自動車が6月17日、国土交通省へ燃費試験不正に関する再報告を実施するとともに、対象車ユーザーへの賠償額の考え方について公表しました。

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また、不正に至った経緯や不正に関与した部署についても同日付けで公表。

同社によると、社内文書保管期間(10年間)である2006年まで遡って再調査した結果、過去に販売した車種でも不正行為があったとしており、現行販売車以外に1991年から法規で定める「惰行法」とは異なる独自の「高速惰行法」による走行抵抗値を17車種で使用していたそうです。

これにより、不正対象車は当初の62万5,000台から200万台超にまで膨らむことになり、補償額は少なくとも1,000億円以上に上る模様。

三菱自動車によると、今回の一連の不正は、遵法意識の不足、ものが言えない組織風土、人材の特定部署への長期固定などの複合要因によって起こったとしています。

<走行抵抗値改ざんに至った主な背景>

・実走行測定にバラツキ大、机上計算が常習化
・長期に渡り一部署に人材を固定、ローテーション不足
・性能実検部の業務がブラックボックス化
・試験項目が増大、開発現場の業務負担が増加
・総指揮を執るPXの業務量に則したリソース確保不足
・開発PMの業務マネジメント不足(子会社に丸投げ)
・燃費目標達成がプレッシャーとなりデータを改ざん

<不正に関与した部署>

・性能実験部/MAE/車両性能実験部
→法令で定められた「惰行法」と異なる方法で走行抵抗を測定
・認証部 法令で定められた成績書に事実と異なる記載
・性能実験部/MAE/認証部
→走行抵抗値のデータを改ざん
→過去の試験結果などを基に走行抵抗値を机上計算

賠償額については「ユーザーの使用年数に関わらず、燃費値が異なることによって生じる燃料代の差額や、今後の車検時等に発生する税額負担等を踏まえ、賠償金を一律に支払う」としています(自動車取得税のエコカー減税追加納付分も別途負担)。

ユーザーへの賠償金支払いは8月頃になる模様です。

■賠償額:10万円/台(2016年4月21日時点のユーザー対象)

eKワゴン/カスタム、eKスペース

・リース、残価設定型クレジットを利用のユーザーは契約年数毎に1万円
・既に車両を手放したユーザーについては使用年数毎に1万円

Mitsubishi_ek_customMitsubishi_ek_SPACE

■賠償額:3万円/台(2016年6月17日時点のユーザー対象)

・現行販売車種:パジェロ(2006年発売)、RVR(2010年発売)

・販売終了車種:旧型アウトランダー/ギャランフォルティス/ギャランフォルティス スポーツバック/コルト/ コルトプラス

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今回発表された賠償額が車種で異なるのは、軽自動車の方が燃費改ざんによる実燃費との乖離が大きいためとしています。

また、2006年3月までに販売した車種については社内記録が残っておらず、燃費の改ざん有無が不明のため、補償の対象外となっています。

日産ブランドで販売したOEM車(デイズ、デイズルークス)に対する賠償については日産から追って発表されるものと予想されます。

三菱自動車は再発防止に関して「開発部門の業務プロセス可視化、経営陣などによる部長職の意識改革により、開発部門の閉鎖的な組織に風穴を開け、自浄作用を取り戻す」としていますが、これまでの経緯を考えると同社の抜本的な社内風土改革には「外の目」が不可欠な状況。

先頃、資本提携を結んだ日産自動車からの人材投入など、「ゴーン流」の改革が注目されます。

Avanti Yasunori

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燃費不正問題で三菱自動車が500億円を計上するも旧型車の燃費計測は困難!?

三菱自動車の燃費試験における走行抵抗値の不正行為。5月下旬には、「燃費試験関連損失」として191億円の特別損失を計上すると発表していました。

P63ディープシーグリーン

今回新たに、平成29年度3月期決算に約500億円の特別損失を計上する見込みと発表。

そのうち、軽自動車4車種以外の登録車5車種についての顧客補償として、約30億円が含まれます。

なお、冒頭で紹介した191億円のうち、平成28年3月期決算に三菱と日産自動車の軽自動車4車種ユーザーへの支払い費用として、約150億円を引き当て済み。

しかし、三菱と日産の軽自動車4車種、登録車5車種以外にも過去販売されたモデルについても不正があったことが明らかになっているため、今後の見通しとして

「平成29年度3月期の業績見通しにつきましては、上記お客様へのお支払い以外に発生する費用を現在精査中であり、見通しが明らかになった段階で公表させて頂く予定です」

とされています。

このように、まだ全容解明にはほど遠い状態で、過去に販売されたモデルのうち、走行抵抗の改ざんが行われたパジェロ、旧型アウトランダー、ギャランフォルティス、ギャランフォルティス スポーツバック、コルト、コルトプラス、RVRの5車種の該当類別については、旧年式車であったり、生産を終了したりしており、中古車による実車測定も行っていますが、正確な燃費値は確認することができないそうです。

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それでは補償はどうなる? と気になる方も多いと思いますが、三菱自動車では、改ざんの事実を真摯に受け止め、該当車両を使用している顧客に対し、誠実な対応するとしています。

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これらのモデルに「乗っていた」人への補償がどうなるかは文脈からは読み取れませんが、今後の対応に注目が集まります。

(塚田勝弘)

5月国内新車販売、登録車は6.6%増も軽自動車14.3%減!

自販連(日本自動車販売協会連合会)と全軽自協(全国軽自動車協会連合会)の発表によると、5月の軽自動車を含む国内の新車総販売台数は前年同月比1.2%減の33.2万台と、2ヶ月ぶりの前年割れとなっています。

2016.05

内訳では登録車が22.4万台(6.6%増)、軽自動車が10.8万台(14.3%減)と、軽自動車の不振が目立ちます。

これは三菱自動車の燃費データ改ざんで「eKワゴン」などに加え、同社からOEM供給を受けていた日産「デイズ」などの販売が大きく落ち込んだ事が影響しています。

三菱自動車の軽自動車販売は75%減の912台、日産も76.8%減の3,105台。また、燃費試験方法で不正があったスズキは15.4%減の3万8,094台の状況。

一方、ダイハツは5.4%増の3万8,358台、ホンダも3.8%増の2万786台となっており、日産や三菱自から顧客が流入した可能性が考えられます。

軽自動車は昨年1月以降、17ヶ月連続で前年割れが続いており、好材料が無いことから登録車との対比がいっそう鮮明化、総販売台数への影響も顕著になっています。

Avanti Yasunori

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5月の軽自動車販売台数発表。燃費不正問題で三菱自動車75%減、日産77%減、スズキ15%減。ダイハツ、ホンダは増加

三菱自動車などの燃費不正は自動車業界のみならず社会問題になっていますが、この問題に関係するメーカーは大きく販売台数を減らしていることが全国軽自動車協会連合会(全軽自協)の発表で明らかになりました。

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全軽自協が発表した軽自動車の5月販売台数によると、貨物車と乗用車を合わせた軽自動車全体で、「eKワゴン」などの販売停止に追い込まれた三菱自動車は全年同月比75.0%減の912台に激減しました。

また、三菱自動車からOEM供給されていた「デイズ」などの販売を停止した日産は、76.8%減の3105台に大幅減少しました。

5月18日に燃費データの不正を公表したスズキは、15.4%減の3万8094台に販売台数を減らしています。

一方、燃費不正問題とは無関係のメーカーは、ダイハツが5.4%増、ホンダが3.8%増と、ライバルの苦境を尻目に販売を伸ばしています。

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軽四輪乗用車に限った5月の販売台数では、三菱自動車は前年同月比97.2%減の僅か74台、日産は94.6%減の593台に激減しました。スズキも21.1%減の結果になりました。

これら3社と比べて、ダイハツは7.1%増、ホンダは11.4%増と販売台数を大幅に増加させていることが分かります。

今回発表の5月軽自動車販売台数を見れば、世間を敵に回すような内向きの企業体質では、いくら名門企業といえども、今の時代はやっていけないことが明らかになった、といえそうです。

報道発表:2016年5月軽四輪車新車販売速報(一般社団法人全国軽自動車協会連合会)

(山内 博・画像:全軽自協)

燃費不正スズキ車の走行抵抗を法令通り測ったら「カタログ燃費より良かった」!?

スズキの国内販売(速報値)によると、2016年4月の軽四輪車は3万9820台で、前年同月比89%、登録車は8404台で前年同月比175.2%となっています。

4月の軽自動車の落ち込みは、ハスラー、ワゴンRなどの減少が響き、一方の登録車は、新型ソリオや新型イグニスなどの新車効果で4月として過去最高を記録。

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JC08モード燃費の計測時に必要な走行抵抗値の不正問題に揺れるスズキですが、本当に影響が出てくるのは5月でしょう。

一部報道によると、5月31日の記者会見では、鈴木 修会長から軽自動車販売は18%減という数字も出たそうですが、11%減となった4月よりも減少幅が大きくなっていて、しかも新車攻勢は登録車だっただめ、今後も軽自動車の販売は減らしていくかもしれません。

しかし、スズキの説明では、実際の燃費に影響がないと国土交通省に報告。その根拠として、今回スズキが行っていたことについて

「装置毎などの積上げによる走行抵抗値は、量産部品を用いた実測値であり、車両開発の段階において量産部品相当の部品を組み付けた試作車において惰行法による検証も行っていることから、申請した数値自体は間違いのないものと考えております」

と説明。

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また、社内調査による関係資料の確認及び関係者の聞き取り調査により、「燃費を不正に操作しようとした意図はなかったことを確認しております」としていますが、この点は国土交通省による調査などが必要ないか少し引っかかるところ。

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さらに、

「14車種(OEM供給車種を含めると計26車種)の燃費最良車について、実際に惰行法により測定した走行抵抗値により燃費測定を行ったところ、全てカタログ表記の燃費値を上回っていることを社内試験にて確認しております」

としています。

カタログの燃費値を上回っているならば、惰行法の計測を最初からそうしていれば、と思ってしまいますが、今回の不正では、テストコースの風などの影響以外にも

「リーマンショック後に再開した新車開発や軽自動車用新型エンジンの開発などへの対応のため、審査時に必要な惰行法の測定に十分な人員が配置できなかった」

とも説明し、また社内のチェック体制が働いていなかったことも認めていますから、鈴木会長が謝罪したように、法令違反への認識が甘かったという説明に集約されそうです。

燃費不正問題は、国交省の対応にも批判が集まっていますが、法令違反なのは事実で、スズキによる

「(三菱と違い)意図的に燃費をつり上げる不正がなかったから」

だけでは、一般ユーザーへの説明不足なのは明らかで、今後も丁寧なフォローがないと販売への影響が続くかもしれません。

[対象車種]スズキ:14車種 OEM:12車種 合計 26車種

[軽四輪車]スズキ:8車種 OEM:11車種 軽四輪車計 19車種

アルト(マツダ・キャロル)
2014年12月22日発売
アルト ラパン
2015年6月3日発売
アルト エコ(マツダ・キャロル エコ)
2011年12月13日発売〜2014年11月生産終了
ワゴンR(マツダ・フレア)
2012年9月6日発売
ハスラー(マツダ・フレアクロスオーバー)
2014年1月8日発売
スペーシア(マツダ・フレアワゴン)
2013年3月15日発売
エブリイ(マツダ・スクラムワゴン・スクラムバン/日産・クリッパーリオ・クリッパー/三菱・タウンボックス・ミニキャブバン)
2015年2月18日発売
キャリイ(マツダ・スクラムトラック/日産・クリッパー/三菱・ミニキャブトラック)
2013年9月20日発売

[登録車] スズキ:6車種 OEM:1車種 登録車計 7車種

ソリオ(三菱・デリカD:2)
2015年8月26日発売
イグニス
2016年2月18日発売
バレーノ
2016年3月9日発売
SX4 S-CROSS
2015年2月19日発売
スイフト
2010年9月18日発売
エスクード
2015年10月15日発売

(塚田勝弘)

三菱自動車、日産との提携を正式に締結!「外の目」で体制立て直しへ

三菱自動車が5月25日、日産自動車との資本業務提携に向けた「戦略提携契約」を正式に締結したと発表しました。

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これにより、日産は10月に約2374億円を投じて三菱自動車株の34%を取得、総議決権を得て三菱自動車は事実上、日産の傘下に入ることになります。

また同日、6月24日に予定している株主総会後の新役員人事について発表。

開発部門の立て直しを目的に、日産から担当副社長として山下光彦氏(63)、財務経理担当副社長として三菱東京UFJ銀行から池谷光司氏(58)を招くとともに、三菱商事出身の白地浩三氏(63)を常務執行役員から副社長に昇格させるそうです。

三菱自動車生え抜きで開発部門に長く携わってきた相川哲郎社長(62)と中尾龍吾副社長(63)は、不正問題の責任を取って辞任することになります。

益子会長(67)については当面、社長を兼任、10月に日産が出資後、年内に開く臨時株主総会にて新体制が発足する時点で辞任する模様。

一方、三菱自動車は同日、2016年3月期決算を修正、偽装問題の対応で191億円の特別損失を計上すると発表。軽4車種のユーザーへの燃料代の差額支払いや、エコカー減税の追加納税などに対する補償費の一部に引き当てるとしています。

新聞報道などによると、三菱自動車の開発部門に入る山下光彦氏は既に日産を退任しているそうですが、日産時代にEV開発にも携わっていたこともあり「日産での経験を生かし改革を進めたい」と意気込みをみせているそうです。

「外の目」による社内改革が必須の三菱自動車だけに、開発部門のトップとなる山下副社長の今後の手腕に期待がかかります。

Avanti Yasunori ・写真:小林和久)

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日産がいち早く発動した三菱自とのシナジー戦略とは?

三菱自動車の燃費偽装をきっかけに、同社を傘下に収めることになった日産自動車が、さっそくそのシナジー効果を出すべく動き出しているようです。

NISSAN

6月24日付けで日産から開発担当トップを送り込み、三菱自動車 開発部門の抜本的な改革に着手するようで、産経新聞によると、それを担うのは日産の元開発担当副社長、山下光彦氏としています。

同社は三菱自への34%出資が完了する10月には会長を送り込む予定。

注目される日産の今後のシナジー戦略は以下となっているようです。

・ルノーの欧米工場を活用して三菱の輸出車を現地生産化
・軽自動車を生産する水島製作所に日産の製造ノウハウ導入
・三菱自の東南アジア販売網を活用して販売をてこ入れ
・EV、PHV開発における両社の役割分担を明確化
・将来的に三菱自からのOEM車種を拡大
・国内外の生産拠点を相互活用

なかでも注目されるのが、開発における役割分担で、今後は日産がEV開発を一貫して担当、三菱自は経営資源をPHV開発に集中させる考えのようです。

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日産はEV「リーフ」の世界累計販売が21万台を超えるなど、EV開発に強みを持っており、PHVは「アウトランダーPHEV」のノウハウを持つ三菱自が得意としていることが背景にあります。

また軽自動車タイプの小型EV開発については既に日産主導で進めている模様。

このように早くも日産はゴーンCEOの号令のもと「マイナス」を「プラス」に転換する作戦を着々と進めつつあるようです。

Avanti Yasunori

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スズキの報告から見えてくる燃費試験「惰行法」の課題とは?

三菱自動車の燃費不正問題を受け、国土交通省が各自動車メーカーに同様の問題が無いか調査を指示しました。

その結果、スズキが同省に報告した内容が話題になっています。

SUZUKI_SWIFT

スズキが18日夕方に開いた緊急会見によると、燃費測定の際の走行抵抗値の改ざん等は無かったものの、16車種(登録車/軽自動車各8車種)全てについて、同社独自の方法で測定した走行抵抗値を国交省に提出していたそうです。

実車走行テストで得たデータではなく、実験室の風洞で空気抵抗を測定、台上で測定したタイヤの転がり抵抗値との合算で走行抵抗を算出していたとしています。

同社がこれまで国交省が定めた「惰行法」による測定データを使わなかったのは、相良テストコースに横風を防ぐ遮風板等の設備が無く、測定データがバラつくためで、燃費を良くみせることが目的ではないと説明しています。

確かに近頃のモデルは車高が高いトールボディが主流なので、横風が強い屋外の場合、安定した測定が難しいのかもしれません。

SUZUKI_HUSTLER

ちなみに国交省が定めている「惰行法」は以下となっています。

・時速20km/hから90km/hまでの10km/h刻みを基準に+5km/hで走行
・その後ギアをニュートラルにして基準-5km/hまで減速する時間を測定
・時速90km/hなら、95km/hから85km/hまで減速する秒数を測定
・測定は往路3回及び復路3回行い、その平均値を求める

スズキではこれまでも全車種について実験室で得たデータと、テストコースでの「惰行法」による測定結果との相関をとりながら走行抵抗値を決定しており、今回の再検証の結果でも届出値との差異が5%以内だったことから、販売中の車種においても燃費値に問題は無いとしています。

会見に出席した鈴木修会長は「国が定めた試験方法で実施してなかったのは事実」として、今回国交省へ報告、並びに謝罪会見を開いたと述べています。

スズキも三菱自と同様に海外で販売している車両については問題が無いとしており、本件は国内のみの案件としていることから、燃費測定の基準となる日本独自の「惰行法」による走行抵抗値測定方法自体にも問題がある可能性が浮き彫りになって来ました。

おりしも国交省は2018年内に新たな燃費試験基準(WLTP)の導入を予定しており、実燃費に近いデータが得られる測定方法や表示方法への早期移行が期待されています。

Avanti Yasunori

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カタログ燃費とのギャップは三菱だけじゃない!新燃費基準「WLTP」について訊いてみた

三菱自動車の不正問題では、カタログ燃費と10%前後の差違がクローズアップされています。しかし、そもそも国の基準自体が実燃費とかけ離れている実態が一方にあります。

その点、所管省はどう考えているのか? 最近発表された新しい燃費基準も含めて話を聞きました。

[答える人]
国土交通省 自動車局環境政策課
髙井誠治 氏

IMG_2595 IMG_2589

── カタログ燃費であるJC08モードと実燃費のギャップは、三菱車オーナーだけでなく多くの方が感じているところです。これについて国土交通省へ具体的な声は届いていますか?

「はい。やはりユーザーからの声が多く、直接電話での問い合わせもあります。特定の車種についてはもちろん、一般論として差が大き過ぎるという声もありますね。メディア関係では一部新聞社からの質問がありました」

JC08モード

── 以前の10.15モードの反省を生かしたはずのJC08モードですが、なぜ解離が大きいままになってしまったのでしょう?

「モード燃費は運転スタイルに左右されますので一概に差が大きいとはいえません。ただ、燃費に厳しいとされる寒冷時(コールド)スタートや、エアコンなど電装品の使用に対しての設定が甘かったとは言えるかもしれませんね」

── 先頃、新しい国際燃費基準である「WLTP(Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedure)」の2018年導入が発表されましたが、その点で具体的な改善点はありますか?

「基本的には欧州基準の準用で、まずスタートは100%コールド・スタート(JC08は25%)であること、平均車速が約50%上がっていること、またアイドリング時間が逆に50%程度減っていること、総走行距離の倍増などがおもな改善点です」

新基準モード

── それで、どの程度実燃費に近くなると考えていますか?

「車種によりますが、全体的にJC08より低い数値が出ます。事前の実験では、とくにハイブリッド車や軽自動車でその差が大きい。これは平均車速が上がっているためだと思われます。また、WLTPでは市街地・郊外・高速道路のパターン別数値も公表しますので、車種による特性の違いも出せると思います」

新基準実験

── 2018年の導入以降、新型車を含め当面JC08モードとの併記表示が可能とされていますが、たとえば、既存車にも新基準適用の指導などは行いますか?

「現行の2020年度燃費基準はJC08モードベースです。メーカーもそれを元に開発を進めていますので、所管としていきなり全部変えろとは言えない。ただ、お願いとして話をするか否かは状況を見ながら考えたいですね」

HONDA_N-BOX

── WLTP導入で過度な燃費競争は収まると思いますか? また、所管としてそのような施策を考えていますか?

「そこはメーカーの競争領域ですし、環境政策の部署としてはより燃費のいいクルマが増えること自体は歓迎です。ただ、たとえば軽ではホンダN-BOXやダイハツ・タントなど、販売上位車種は必ずしも燃費だけで選ばれていません。ユーザーは意外と多様な選択理由を持っていると思いたいですね」

── 本日はありがとうございました。

(すぎもとたかよし)

三菱自動車・相川社長が辞任表明、益子会長は当面留任。その背景とは?

三菱自動車の相川哲郎社長が燃費データ不正操作問題の責任を取って辞任する意向を固めたそうです。

MMC_Aikawa

2014年1月31日に当時の益子社長から命を受け、6月25日に現在のポストに就任した相川社長でしたが、社長就任から僅か2年弱、社内改革の道半ばにして今年6月24日の株主総会後に辞任する模様。

益子会長は当面、三菱自に残り、日産との資本業務提携に向けた調整や、ブランド再生のための計画策定、日産、三菱グループとの調整などに当たる見通し。

今回の三菱自の燃費不正を指摘後、同社の買収に動いた日産は10月頃に三菱自に出資後、同社を傘下に収め、その後、会長を含む4人の取締役を派遣する計画のようです。

相川社長は5月19日に開かれる日本自動車工業会の定時総会で自工会の副会長も辞任する予定で、後任としてホンダの八郷隆弘社長が就任、新会長には西川廣人・日産自動車副会長が就任する見通し。

相川社長は東大で船舶機械工学を専攻、三菱自動車入社後は開発畑を歩み、初代ミニカトッポ(1990年)の企画開発や初代eKワゴン(2001年)の開発プロジェクトリーダーなどを務めた人物。

MMC_Aikawa

父親の相川賢太郎氏は三菱重工で社長、会長を歴任した三菱グループの重鎮で、原動機畑一筋で地熱発電プラント開発の第一人者。

しかしながら、相川社長は今回の燃費不正の舞台となった開発畑の出身であり、経営責任が重いと判断、今後の開発部門のたて直しは事実上、日産主体で行われるものと予想されます。

Avanti Yasunori ・写真:小林和久)

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三菱自動車の相川哲郎新社長「入社のワケは?」【動画】
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三菱自動車の次期社長が「あの軽自動車の生みの親」となったワケは!?
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スズキも国土交通省に燃費不正問題を報告、対象の16車種に燃費不正はなし!?

三菱自動車の燃費不正問題を受けて、国土交通省が各自動車メーカーに同様の問題がないか調査を求めていました。問題が持ち上がっていたスズキが国土交通省に報告した内容が発表されました。

20160408Suzuki Baleno_060

スズキが社内で測定されたデータを調査したところ、燃費性能を偽る不正行為はなかったものの、四輪車の排出ガス・燃費試験業務について、国土交通省が定める規定と一部異なる取り扱いがあった、という概要になっています。具体的には下記のとおりです。

●国が定める規定と異なる測定方法について

「現在、販売されている16車種について走行抵抗の測定状況を確認したところ、申請時には、惰行法により実測したデータではなく、惰行法実測値と比較して妥当性をみた上で、タイヤ、ブレーキ、トランスミッションなどの装置ごとの転がり抵抗の実測値や風洞試験装置での空気抵抗の実測値を積み上げた走行抵 抗値を使用していたことが判明いたしました」

少し分かりにくいですが、惰行法による実測値ではなく、計算された机上の数値ということでしょうか。
プリント

●国土交通省が定める規定と異なった取り扱いになった原因については、

「当社が所有する相良テストコースは、海に近く丘の上にあることから風の影響を著しく受けるなど、天候に左右されるため試験が困難であったことが背景にあると考えております。
昨今の低燃費技術の向上に伴う転がり抵抗の低下や車体の軽量化により、風による影響を受けやすくなってきており、測定結果のばらつきが大きくなる傾向にあります。例えば、低転がりタイヤを採用する場合に、その効果をばらつきなく把握することが難しく、データを取得するためには、何度も繰り返し測定を行う必要がありました

天候によるばらつきなどを排除するためとしていますが、どのテストコースも多かれ少なかれ天候による差が出てくるのではないでしょうか。

●最も気になる燃費値などへの影響については、

「今回、すでに持っている惰行法による実測データに加えて、惰行法による実測データを追加取得し、すべての申請値と惰行法実測値の関係を改めて検証した結果、すべての申請値が惰行法による実測値の測定誤差の範囲内であることを確認いたしました。
申請した走行抵抗値及びそれにより測定した燃費値については修正の必要はないと考えております。また、排出ガス性能についても、保安基準に適合しており、問題はないと考えております」

走行抵抗値を各メーカーに丸投げしている国土交通省の問題点も感じさせますが、スズキの報告にたいして同省が測定しなおすのか気になるところです。

【調査対象車種16車種】

<軽自動車>
アルト(2014年12月22日発売)
アルト ラパン(2015年6月3日発売)
ワゴンR(2012年9月19日発売)
ハスラー(2014年1月8日発売)
スペーシア(2013年3月15日発売)
エブリイ(2015年2月18日発売)
キャリイ(2013年9月20日発売)
ジムニー(2010年JC08対応)

<登録車>
ソリオ(2015年8月26日発売)
イグニス(2016年2月18日発売)
バレーノ(2016年3月9日発売)
SX4 S-CROSS(2015年2月19日発売)
スイフト(2010年9月18日発売)
エスクード2.4(2012年JC08対応)
エスクード(2015年10月15日発売)
ジムニーシエラ(2010年JC08対応)

SUZUKI_04SUZUKI_01

海外については同件は関係なく、業績予想に与える影響については、現時点ではないと判断しているとのこと。なお、今後、業績予想の修正が必要とされる場合には、速やかに開示するとしています。

(塚田勝弘)

日産と三菱の資本提携で浦和レッズが危機だって!? そんなバカな

浦和レッズをなめるな。あいつらは強い。

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私はFC東京サポーターなので浦和レッズはべつに好きじゃないんですが、サッカーファン、Jリーグファンとしてちょっと気になるのは、日産自動車と三菱自動車の資本提携です。

これ、まず自動車業界で話題になったニュースですが、Jリーグにも影響してくるんですね。

というのは、Jリーグ規約の第25条第5項に

「Jクラブは、直接たると間接たるとを問わず、他のJクラブまたは当該他のJクラブの 重大な影響下にある法人の経営を支配しうるだけの株式(公益社団法人または特定非営 利活動法人にあっては社員たる地位)を保有している者に対し、自クラブまたは自クラブの重大な影響下にあると判断される法人の経営を支配できるだけの株式(公益社団法 人または特定非営利活動法人にあっては社員たる地位)を保有させてはならない。」

というのがあるんです。

日産自動車は横浜Fマリノスの株式の過半数を持つ筆頭株主、三菱自動車は浦和レッズの株式の過半数を持つ筆頭株主のようなんですね。

そこで三菱自動車が日産自動車の傘下に入ると、どちらかが株式を売却しないといけないことになると思われます。この場合、おそらくは三菱自動車が浦和レッズの株式を売却することになるでしょうね。

というわけで、いまスポーツ新聞やらなんやらは、『浦和レッズ存続の危機か?』みたいな記事を出しているわけです。

でもね。悔しいけど、浦和レッズはそんなにヤワじゃないですよ。

じっさいにこのままではJリーグ規約に抵触するっぽいので、そうであれば三菱自動車は浦和レッズの株式を(あるていど)手放すでしょう。でも、保有している株式の全部手放さなくてもいいんじゃないかな。

『経営を支配しうるだけの株式』じゃなければいいわけだから。

で、浦和レッズはあぶないか? そんなバカな! あのクラブすげえ観客動員があるんですよ。1試合平均3万8000人を超えるんだよ! Jリーグの中でもダントツの1位ですよ。

ちなみに2位がFC東京で1試合平均2万8000人台だから、いかに浦和レッズの人気がバケモノかわかるでしょう。予算も潤沢だし、浦和レッズは優良企業なんです。

futta2464m

じつは三菱自動車の大きな不祥事っていうのは今回が初めてじゃないんですね。

以前のリコール隠しのときにも三菱自動車の経営が危うくなる事態があったんですが、浦和レッズの経営陣は「三菱自動車が撤退しても浦和レッズは問題なくやっていける」と表明していたと記憶しています。

親会社に支えられないと成り立たないクラブじゃないんですね。

そもそも浦和レッズはJリーグ発足当初は弱小クラブでした。それがビッグクラブに成長できたのは、まぎれもなく地元サポーターのおかげです。そのサポーターからひんしゅくをかうような名称の変更なんか、筆頭株主が変わってもこわくてできないでしょう。

というわけで、マスコミは『浦和レッズの危機』みたいに騒ぐ記事が好きだろうけど、残念ながら!浦和レッズは(すくなくとも見た目には)あまり大きな影響を受けずにビッグクラブでありつづけるんじゃないかな。それくらいあのクラブは手ごわいです。

(まめ蔵)

日産が三菱自動車の燃費不正解明を待たずに買収に動いた訳は?

三菱自動車の燃費データ改ざんが公表された4月20日以降、被害者の立場で沈黙を続けていた日産が5月12日に三菱自動車との資本業務提携を発表。同社を事実上、傘下に収めるという話題が注目を集めています。

NISSAN

日産と三菱自動車は同日、アライアンスに関する覚書を締結したと発表。三菱自動車の発行済み株式34%を日産が2,370億円で取得することになるそうです。

日産が三菱自動車の買収に動いた背景には、三菱自動車がタイなどに生産拠点を置いて主力市場としている東南アジアでの販売シェア拡大に繋げたいとの狙いがあるものとみられます。

三菱自動車は11日の記者会見でその後の不正全容解明に向けた状況を発表しましたが、燃費テストの委託先が100%子会社のMAE(三菱自動車エンジニアリング)であることを明かした程度で、「依然、社内で聞き取り調査中」の報告に終始。

振り返れば三菱自動車の燃費不正発覚の発端となったのは、当時合弁会社「NMKV」を中心に共同開発を行っていた日産からの指摘によるものでした。

日産は三菱自動車への損害賠償などについて、不正の全容が明らかになるまで静観するとしていましたが、その一方で4月の「デイズ」販売台数が前年同月比で約7割減となっています。

三菱自動車も今回は三菱グループの情勢や倫理上の観点から、救済が期待できない状況にあり、日産の要求を受け入れざるを得なかったと推測されます。

MITSUBISHI_eK_Wagon

ではなぜ、日産は燃費不正の全容が明らかになっていない現段階で三菱自動車の買収に動いたのでしょうか。

それが外資比率の高い企業特有の手法だとすれば、わかりやすいのかもしれません。

以前に日産がNMKVで開発した軽自動車の自社生産を匂わせたことから、これに三菱自動車が抵抗、ひと悶着有った件が買収の引き金になっているとすればどうでしょうか。

あくまで推測ですが、全ては事の発端から日産側のシナリオどおりに進んでおり、三菱自動車が記者会見で燃費不正の事実を認めた段階で、迅速かつ比較的安価に同社を傘下に収めることで、海外を含む他企業からの三菱自動車買収を未然に防ぐ狙いが有ったのかもしれません。

今回の資本業務提携で、日産、ルノー、三菱自動車を合わせた世界販売台数は950万台を超える規模となり、首位のトヨタやフォルクスワーゲンなどに迫ることになります。

それが目的だったとすれば4月20日以降、日産の三菱自動車買収戦略にマスコミを含め踊らされていたことにもなりかねず、真相がどうなのかが大いに気になるところです。

Avanti Yasunori

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日産自動車が三菱自動車の筆頭になるメリットとは?

三菱自動車が日産自動車の傘下に入り再建を期すというニュース、新聞やテレビなどの報道にすでに接している方も多いでしょう。

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日産と三菱が2011年6月に折半出資で設立したNMKVは、日本市場向けの軽自動車の商品企画、開発という事業内容です。

燃費不正という根の深い問題が起きましたが、軽自動車の提携という実績からいっても、三菱グループ外で再建を図るとしたら日産しかないだろうな、というのは皆さんが感じていたことではないでしょうか。

一部報道によると、日産が2000億円を投じて三菱自動車の3割強の株式を取得するというもので、日産が三菱自動車の筆頭株主になります。

三菱自動車の筆頭株主は、同社のホームページによると三菱重工業が約12%、三菱商事が約10%、三菱東京UFJ銀行が4%弱で、三菱グループが約26%となっています。

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日産が三菱を事実上、傘下に収める利点は軽自動車の生産面(水島製作所)もあるでしょう。

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ほかにも、両社が注力しているEVやPHVなどの電動化車両でも共同開発が進めばコスト削減や性能向上などの相乗効果も期待できます。

あくまで想像ですが、日産エクストレイルにプラグインハイブリッドが設定されることもあるかもしれません。あるいは、ルノーブランドで新しいプラグインハイブリッドモデルを出すということもできるかもしれません。

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さらに、日経新聞などの一部報道によると、タイやインドネシアで人気の高い三菱製のSUV、パジェロやパジェロスポーツなどブランド力を日産が魅力的に感じているという内容もありましたが、日産の「DATSUN(ダットサン)」と三菱の2つのブランドで新興国のシェアを高める戦略もあるのかもしれません。

三菱自動車からすると、再度三菱グループの支援を仰ぐことができるのか不透明な中、同じ業種の日産からの支援があれば軽自動車事業の継続、EVやPHVなどの電動車両の推進などの利点がありそうですが、車種のリストラや開発拠点や生産工場などが今後どうなるか気になるところ。

両社からの正式発表が待たれますが、やはり今回の燃費不正問題は、日本の自動車業界再編にまで及ぶことになりそうです。

(塚田勝弘)

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■三菱自動車の燃費不正問題の影響は業界再編にまで及ぶ?
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■三菱自動車が国土交通省へ燃費不正問題の報告書を追加報告
http://clicccar.com/?p=371514

三菱自動車が国土交通省へ燃費不正問題の報告書を追加

三菱自動車のeKワゴン、eKスペースは、前年同月比で65%弱という大幅減になっているほか、日産デイズ、デイズルークスも67%減と大きく減らしています。

20151106MitsubishieK_0024DAYZ大幅減は、販売停止になっていますから当然ですが、燃費(差額分)の補償やエコカー減税の支払いなどはもちろん、停止している三菱の水島工場の行方も気になるところ。

記者会見も行われたように、5月11日に三菱自動車から国土交通省に燃費試験における不正行為について報告書が追加されました。

20151106MitsubishieK_0074

まず、上記の軽自動車4車種の調査について、下記の4点が報告されています。

(1)燃費を良く見せるための走行抵抗の不正な操作は、14型のeKワゴン、デイズ(2013年2月申請)の燃費訴求車の開発において始まった。他の類別(標準車、ターボ付車、4WD車)やeKスペース、デイズルークス、各年式変更車では、走行抵抗は同燃費訴求車のデータから机上計算された。

1点目で驚かされるのは、ほかのグレードや仕様、年式変更、つまりイヤーモデルの走行抵抗のデータは、燃費をウリにするモデルから机上計算されたという点。元となる走行抵抗のデータに不正があった上に、机上計算というのですから根の深さを感じさせます。

(2)同燃費訴求車の開発において、燃費目標は26.4km/Lから29.2km/Lまで計5回引き上げられた。新型競合車の燃費を強く意識したもので、現実的には達成が困難でありながら、根拠に乏しい安易な見通しに基づく開発が進められた。

2点目に関しては、スズキとダイハツが燃費競争でしのぎを削る中、三菱の焦りが透けて見えます。

(3)担当者らは、燃費が「商品性の一番の訴求ポイント」と認識し、開発関連部門の管理職・役員からの燃費向上の要請を必達目標として感じていた。

燃費向上には、パワートレーンの改良、軽量化、ときにタイヤメーカーまで巻き込んだ走行抵抗の低減など、全方位に渡っての努力と積み重ねが不可欠ですが、どの程度、上役が困難な仕事であることを理解していたのか気になるところです。

(4)開発関連部門の管理職(複数)は、業務委託先とのコミュニケーションを十分に行っていなかった上、高い燃費目標の困難さを理解していたにも係わらず、実務状況の確認をしなかった。

上でも述べましたが、燃費目標の困難さを理解していたのに実情を把握していなかったのは職務放棄といわれても仕方ないかもしれません。

(5)再発防止策については、各問題点をふまえ抜本的な改革を検討している。

水島工場で働く方やサプライヤーなどにも丁寧な説明が必要なのはもちろん、最も大切なユーザーの理解が再度得られるでしょうか。

なお、今後の対応については、「その他の現在販売している9車種及び、すでに販売を終了した車種については、ヒアリングの結果、正しく走行抵抗を算出していなかったり、RVRなど机上計算により算出したりしたものがあることが疑われるため、測定データによる裏づけや経緯などを調査中で、別途ご報告する」としています。

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さらに、問題となっている「高速惰行法使用の理由・経緯を含む同件の徹底的な調査のため、外部有識者のみによる特別調査委員会を4月25日に設置。同委の報告と提言を受け次第、弊社としての適切な対応を立案し、別途ご報告する」としています。

軽4車種以外にも、RVRが机上計算により走行抵抗データが出されている可能性も示唆されていますが、全容が明らかになるにはまだ時間がかかるようです。

(塚田勝弘)

日産が三菱自動車の株34%取得して資本業務提携!

2016年4月20日に三菱自動車が委託生産をしている軽自動車(三菱eKシリーズ、日産DAYZシリーズ)の認証取得時における不正が公表され、両社が該当モデルを販売停止にするなど大きな問題となっています。

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その後の調査で、三菱自動車においては1991年から排ガス・燃費試験において不正な数値を申請していた可能性が明らかとなり、実測が求められている走行抵抗値を机上計算によって導き出したという不正も同社により公表されています。

そうした中、三菱自動車の今後について様々な風説が飛び交いましたが、わずかな期間で日産との資本業務提携を結ぶことが発表されました。

日産のカルロス・ゴーン氏、三菱自動車の益子修氏という両CEOの記者会見では、まずゴーンCEOが「日産が三菱自動車の発行済株式の34%を2370億円で取得。筆頭株主となることで、シナジー効果を高め、ウインウインの関係となることを期待しています。また三菱自動車の筆頭株主として、同社のブランドと歴史を尊重し、大きな成長の可能性の実現をサポートすると同時に、アライアンスファミリーの一員として迎えたい」と資本提携による戦略的アライアンスであることを説明します。

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また、益子CEOは「軽自動車の試験における不正において日産の責任について、そうした認識はない」と明言。

そのうえで「非常に近いところにいたこと、将来的な成長などから手を結ぼことにした」、「2011年の軽自動車事業におけるパートナーシップやアセアン地区におけるピックアップトラックの生産など以前から進んでいたことが、このタイミングでカタチになった」と、軽自動車の不正がきっかけではないとしています。

このアライアンスにより、日産の意思を受けた取締役会会長を含む議決権に比例した人数の取締役候補を提案することになるということです。

日産(ルノー)は、ダイムラーとのアライアンスも結んでいますが、かつてダイムラーの傘下にあった三菱自動車が、またアライアンスの一員として再会することになるというのも不思議な縁を感じさせます。

(写真:小林和久・文:山本晋也)