Motor Fan's YEAR 2016

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ノートe-POWERの登場でますます混沌とする「HV&EVのセカイ」を整理してみる

日産から発売されたノートe-POWERは、ガソリンエンジンで発電し、その電力をバッテリーに蓄え、モーターを駆動する「シリーズハイブリッド」という方式を採用する。

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ホンダの現行フィットなどはガソリンエンジンの力で走行することが基本で、発進時や急加速時などにモーターが手助けするもので、これを「パラレルハイブリッド」という。

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ハイブリッドの代名詞ともいえるトヨタのプリウスは、パラレルハイブリッドとシリーズハイブリッドの両方の特徴を持った方式で「シリーズ・パラレルハイブリッド」などと呼ばれる。ハイブリッドはいずれの方式でもモーターのみで走るモードが存在することが多い。

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これら3つのハイブリッド方式をまとめて「フルハイブリッド」や「ストロングハイブリッド」と呼ぶ。

対して、日産のセレナなどが採用する簡易的なものを「マイルドハイブリッド」と呼ぶ。「ストロングハイブリッド」と「マイルドハイブリッド」の境界線は明確ではないのが現状。

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日産リーフのような「EV(電気自動車)」は、クルマを充電器につないで電気を充電し走るものだが、それだと充電切れでストップしてしまう恐れがあるため、充電用に小さなエンジンを積んだタイプもある。これを「レンジエクステンダー付きEV」と呼ぶ。

BMW i3は普通のEVと「レンジエクステンダー付きEV」が用意されている。「レンジエクステンダー付きEV」と「シリーズハイブリッド」は構造的似ているが、エンジンの存在が常に充電のため(シリーズハイブリッド)と、充電切れ対策のため(レンジエクステンダー)の違いがある。

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さらに、ハイブリッドでありながら、充電器につないで電気を充電できる「プラグインハイブリッド」というものも存在する。三菱のアウトランダーPHEVなどがこのタイプ。「プラグインハイブリッド」はHVとEVの中間的存在ともいえる。

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トヨタ・ミライやホンダ・クラリティ フューエル セルなどの「燃料電池車」は、水素を使って発電し、その電気を使って走るクルマ。シリーズハイブリッドのエンジンの部分を燃料電池に置き換えたものと考えればわかりやすい。燃料電池というのは電池というよりも水素発電装置と考えるといい。ただし、水素を燃やすのではないところがポイントだ。

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各社はそれぞれ販売戦略もあって、いろいろな名称で名前をつけているが、そろそろしっかり整理して、どんな方式なのかが一目でわかる表示が必要な時期に来ているのではないか……と感じる。

(諸星陽一)

三菱自動車がゴーン会長を筆頭とする新取締役人事を発表!

三菱自動車(以下三菱自)が11月28日、新役員体制を発表しました。

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それによると、代表取締役会長にカルロス・ゴーン氏、新任の社外取締役候補に日産自動車で副会長を務めた元通産省官僚の伊佐山建志氏、日産自動車専務執行役員の川口均氏、日産自動車 常務執行役員で経理担当の軽部博氏の3名が挙げられています。

これにより三菱自の取締役は、カルロス・ゴーン会長以下、益子修社長、山下光彦取締役、白地浩三取締役、池谷光司取締役の11名体制となる予定。

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また、今回の人事で国内営業担当の服部俊彦氏と生産担当の安藤剛史氏が取締役から退任する予定で、三菱自生え抜きの取締役は不在に。

益子修氏については以前にお伝えしたとおり、ゴーン氏からの強い要請により、一定期間に渡り、取締役社長として当面の経営にあたる予定。

将来的には日産から先行して派遣され、三菱自の立て直しに尽力中の山下光彦氏が同社の取締役社長職に就くものと予想されます。

新役員体制は、12月14日開催予定の臨時株主総会、並びに同総会後の臨時取締役会で正式決定されることになります。

Avanti Yasunori・画像:三菱自動車/日産自動車)

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2.2LディーゼルのデリカD:5に、2台の特別仕様車が登場

三菱自動車のミニバン『デリカD:5』2.2リッター・ディーゼルエンジン車に、2台の特別仕様車が登場です。

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本革の7名シート仕様となる「ROADEST ROYAL TOURING(ローデスト ロイヤルツーリング)」は2016年10月27日から、メッキパーツが外観を引き締めた「CHAMONIX(シャモニー)」は11月10日からの販売となります。

●特別仕様車「ROADEST ROYAL TOURING」(7人乗り)の主な特別装備
ベース車:「ROADEST D-Power package」(8人乗り)
<エクステリア>
アルミホイール:スパッタリング仕様
ボディカラー:ウォームホワイトパール(3万2400円高)、ダイヤモンドブラックマイカ
<インテリア>
セカンドシートをキャプテンシートに変更
本革シート(ブラック)を採用
運転席と助手席にシートヒーターを採用
運転席パワーシート(スライド、リクライニング、ハイト、チルト)

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●特別仕様車「CHAMONIX」(8人乗り)の主な特別装備
ベース車:「D-Power package」(8人乗り)
<エクステリア>
アウタードアハンドルとウインカー付電動格納式リモコンドアミラーカバーをメッキに変更
ボディカラー:ウォームホワイトパール/クールシルバーメタリック(3万2400円高)、クールシルバーメタリック/アイガーグレーメタリック、ウォームホワイトパール(3万2400円高)、ダイヤモンドブラックマイカ)た。
<インテリア>
本木目&本革巻ステアリングホイール
木目調パネル(インパネセンター、アッパーグローブボックス、フロアコンソールリッド、パワーウインドウスイッチパネル)、
ルーフビームガーニッシュ(ホワイト天井照明)
運転席パワーシート(スライド、リクライニング、ハイト、チルト)

メーカー希望小売価格は「ROADEST ROYAL TOURING」が401万2200円〜429万8400円(消費税込)、「CHAMONIX」が361万1520円〜378万8640円(消費税込)となっています。

(山本晋也)

三菱自動車が次世代店舗「電動 DRIVE STATION」第1号店を東京世田谷にオープン

新生三菱自動車への第一歩となる、新たな動きがあります。

日産自動車とのシナジー効果が出るのはまだ先になるはずで、そうなる前に少しでも国内市場では信頼回復が必須の三菱自動車。

新たにCMも展開されていて、「今度こそ大丈夫?」と思った三菱オーナーもいるでしょう。

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三菱が全国に展開する次世代店舗「電動 DRIVE STATION」、その第1号店として、関東三菱自動車の世田谷店(東京都世田谷区)がリニューアルされ、10月8日にオープンしました。

「電動DRIVE STATION」は同社の強みである電動車両を前面に押し出した店舗で、通常の店舗機能(新車販売やアフターサービスなど)に加えて、EVやPHEVの意義と価値、魅力を多くの人に広めるべく、プレゼンテーションツールやデモンストレーションコーナーを備えた次世代型の店舗です。

「電動DRIVE STATION」には、太陽光発電システムとV2H(V2:Vehicle to Home の略。電動車に蓄えた電気を家に供給する仕組みのこと)機器を設置し、太陽光で発電した電力を電動車への充電に使用。

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また店舗内では、日本のエネルギー問題に対して電動車が果たす役割に加えて、災害時に電動車の外部給電機能がもたらす価値について、デジタルサイネージシステム(デジタルサイネージシステム:電子看板。電子的な表示機器を使って情報を発信するシステム)やタブレット端末などで紹介されます。

さらに、一般家庭のダイニングルームを模した「ライフスタイルコーナー」では、停電発生時のV2H機器による電力供給を実演する「停電デモンストレーション」や、電動車の100V AC電源(1500W)で家庭の電化製品を同時に複数使用できることを実演する「1500W体感デモンストレーション」も行われます。

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そのほか、エネルギー、環境をテーマにした小中学生向けワークショップや防災イベントの開催、防災への取り組みをはじめとする地域情報を自治体と連携して発信するなどの活動を通じ、地域社会への貢献を目指すとしています。

繰り返されてきたリコール隠しやディーゼル不正問題などで、愛想を尽かした現ユーザーや元ユーザーもいることでしょう。それでもどうやって信頼回復を成し遂げるか。

今後、「電動 DRIVE  STATION」も含めた三菱自動車の動きに注目です。

(塚田勝弘)

一番安いモデルは意外にも!? 人気中古車ランエボの最安値モデルをチェック!

最終進化形となるファイナルエディションを発売し、惜しまれつつ2016年3月に販売終了となった三菱ランサーエボリューション。WRC(世界ラリー選手権)参戦車として1992年10月のエボIが販売開始され、エボXまで13モデルが販売されました。

中古車検索サイト カーセンサーnetによると、現在ランエボの中古車は約450台流通していて、エボIからエボXファイナルエディションまで全モデル揃っています。

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中古車の価格は年式や走行距離、コンディションなど様々な要因によって決まりますが、一般的に年式が古くなればなるほど安くなります。しかし、人気の高い中古車ではその法則が当てはまらないケースがあります。

そこで、今回は絶版車となり中古車で人気のランエボの最高値と最安値の中古車を紹介したいと思います。なお、記事中の価格は取材時点での流通価格で、変動している場合がありますのでご注意下さい。

まずは最高値から。現在、ランエボの中古車で最も高額なのは、限定1000台のランエボXファイナルエディションです。

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新車時価格は430万円でしたが、最高価格は550万円とプレミアム価格となっています。

走行距離は400km、ボディカラーはシルバーです。ファイナルエディションは新車時価格を上回る中古車はかなりの台数が流通しており、高コンディションのクルマが手に入れやすい状況となっています。

一方の最安値ですが、一般的に中古車は年式が価格決定に大きな影響を与えます。

その法則からすると、1992年に登場したエボIが最安値と思われがちですが、エボIの中古車はわずか1台しか流通していないこと。そしてランエボは各世代それぞれにファンがいることもあって、エボIが最安値ではありませんでした。

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では、最安値だったランエボの中古車は?というとランエボIVという結果になりました。

1996年8月に販売開始したランエボIVはベース車のランサーがフルモデルチェンジを行い、第2世代へと進化したモデルです。エンジンの出力は280馬力へとパワーアップし、AYCという電子デバイスを搭載することでさらに戦闘力をアップしました。

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ランエボIVの中古車は現在27台流通していて、価格帯は35万〜148万円となっています。

ランエボシリーズの中古車の最低価格は35万円のランエボIVで、ボディカラーは白、走行距離は12.1万kmとなっています。ランエボIVぐらい年式が古いと走行距離10万km超えの中古車が多くなっています。

最安値の中古車となった個体はタイミングベストが交換済なので、購入した際も大きな出費は免れそうです。タイミングベルトをエンジンに使用している場合、走行距離が少なめで未交換の中古車より、距離は多いけれども交換済の中古車のほうが、購入後のメンテナンス費用を抑えられると考えられます。

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新車では人気が高くても価格が高くなるということはありませんが、中古車の場合、人気の高さによって価格が変わるという特徴があります。

(萩原文博)

三菱自動車が不正防止対策のため組織変更。副社長直轄体制で監査機能を強化

三菱自動車が9月30日、国土交通省(以下国交省)へ燃費試験にかかる不正行為への対応について報告したそうです。

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同社は今年4月に軽自動車(4車種)の燃費改ざんが発覚後、対象車の販売を停止、国交省へ修正した燃費値を提出、7月に販売を再開しました。

しかし、その後の国交省の調査で、軽自動車以外のSUVなど8車種についても届出値からの乖離が大きいことが判明し、8月30日に同省へ修正版の燃費値を提出するとともに、対象車の販売を停止しました。

さらに、社内で燃費データを再測定した際にも不正を重ねていたことが国交省の調査で判明しており、今回の報告は、今後の新型車の燃費データ届け出時に実施する新たな再発防止策についてになります。

具体的には、性能実験部が提出するデータを検証する立場にある「認証部」を開発本部から独立させ、山下光彦副社長が直轄(10月15日〜)。監査機能を強化するとともに、開発本部に法規担当窓口を設置します(2017年1月〜)。

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また、法律に則った燃費測定(惰行法による)を行うためのマニュアル改定や、人的なデータ改ざん防止を目的とした、走行抵抗データ処理の自動化(12月1日〜)なども織り込んでいるそうです。

一連の不正の影に潜む重要な案件として、トヨタ自動車のOBを含む特別調査委員会の調査で明らかになった「開発工数見積りツール」の脆弱さについては、「慢性的な開発工数不足」に直結するため、工数検討委員会(8月30日設置)で工数管理システムを構築し(〜12月末)、見積り精度を向上させ、今後は商品計画段階で必要なリソース充当を図るとしています。

確かに自動車開発では部品も多く、特に燃費向上等では多大な「工数」を要するだけに「人の確保」が何より重要であり、粛々と開発を遂行するには、採用活動の段階から体制を強化する必要性が高そうです。

Avanti Yasunori・画像:三菱自動車)

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ランエボのファイナルモデル、ラスト1台がアメリカのオークションで780万円で落札!

北米三菱モータース(MMNA)が、ランサー エボリューション「ファイナル エディション」をチャリティオークションに出品。9月15日に76,400ドル(約780万円)の高値を付けて落札されたそうです。

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米国では昨年10月に「ファイナル エディション」が1,600台限定で発売されており、オークションにかけられた固体は最後の1台(No.1600)でした。

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一方、国内では昨年4月10日に「1,000台限定」で同モデルの先行受注がスタート。同年8月20日に429.8万円で発売され、今年の春までに順次納車されています。

国内仕様は、ランサー「GSRエボリューションX」の5MT仕様車をベースに、通常はメーカーオプション設定の「ハイパフォーマンスパッケージ」を標準装備。

RECAROシートやBBS製18インチ鍛造アルミホイール、ブレンボ製ブレーキ、ビルシュタイン製ショックアブソーバー、アイバッハ製コイルスプリングが奢られており、専用の2.0L直4ターボエンジンは313ps(+13ps)、43.7kgm(+0.7kgm)を発生。

軽量化を目的にフードなどに高価なアルミ製パネルを使用、ベースモデル比で約14万円アップに抑えており、まさにバーゲンプライスといえる内容になっていました。

米国仕様についても「GSRエボリューションX」の5MT仕様車をベースに、エンジンスペックがオリジナルから307ps/42.2kgmに高められており、ブレンボ製ブレーキやビルシュタイン製ショックアブソーバー、アイバッハ製コイルスプリングやなどが標準装備されています。

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米国でも「ランサーエボリューション」の復活を望む声が多いのは言うまでもありませんが、もし将来復活する際は「アウトランダーPHEV」で培った、モーターで自由に駆動力を操れる先進の4駆システムが搭載されるものと予想されます。

今回の北米三菱モータースによるチャリティオークションの収益は、米国内で飢えに苦しむ人々の食糧支援に役立てられるそうで、同社のドン・スウェリンゲン副社長は「オークションの収益が支援に役立つことを誇りに思う」とコメントしています。

Avanti Yasunori・画像:三菱自動車)

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三菱ランサーエボリューション・ファイナルエディション(国内版)
http://www.mitsubishi-motors.co.jp/evo/special/final_2015/info.html

(米国版)
http://media.mitsubishicars.com/channels/2015-Evo-Final-Edition/presskits/2015-lancer-evolution-final-edition-press-kit

次期「アウトランダーPHEV」? 三菱自動車がパリモーターショーでコンセプトモデルを公開

三菱自動車が9月21日、「MITSUBISHI GT-PHEV Concept」をパリモーターショー16でワールドプレミアすると発表しました。

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トリプルモーター方式のPHEVシステムを搭載した次世代クロスオーバーSUVで、先進かつ独自の電動技術と四輪制御技術により、様々な走行条件下でのドライブを可能にしているといいます。

存在感のある押し出しの強いフロントマスクを採用、サイドビューは水平基調のフォルムとすることで、最上級クロスオーバーSUVとしての上質感と走りの安定感を表現。

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PHEVシステムは、次世代の大容量駆動用バッテリーや、高出力・高効率のトリプルモーター(フロント:1基、リヤ:2基)、発電・動力性能を向上させたPHEV専用エンジンなどで構成。

同モデルは2018年頃の発売を目指す次期「アウトランダーPHEV」のコンセプトカーとみられ、フルタイム4WDと車両運動統合制御システム「S-AWC」により、力強い走りを実現するとともに、EV航続距離を120km、総航続距離を1,200km以上として、快適なロングドライブを可能にしているそうです。

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今回のショーでは昨年の東京モーターショーに出展したSUVタイプのEV、「MITSUBISHI eX Concept」を併せて出展するとともに、先進安全技術を新たに搭載した「アウトランダー」や、EV走行を優先させるEVプライオリティモードを採用した「アウトランダーPHEV」の2017年モデル(欧州仕様)も初公開するそうです。

国内が燃費不正問題で揺れるなか、同社は得意とする「電動化」を前面に打ち出すことで、イメージの回復を目指す考えのようです。

Avanti Yasunori・画像:三菱自動車)

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三菱自動車 パリモーターショー出品概要
http://www.mitsubishi-motors.com/jp/events/motorshow/2016/pms2016/

元初代プリウス開発者が精査した三菱自動車の開発実態は?

前東京高検検事長で弁護士の渡辺恵一氏を委員長に、委員として2名の弁護士と、元トヨタ自動車の理事、八重樫(やえがし)武久氏を含む4名で構成する特別調査委員会が、8月2日に三菱自動車の燃費不正に関する調査結果を公表しました。

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同委員会は本問題の事実関係や原因・背景等を明らかにするため、今年の4月25日から7月31日までの約3ヶ月に渡り、MMC(三菱自)、NMKV(日産/三菱自合弁会社)、MAE(三菱自動車エンジニアリング) の役職員、及び元役職員等154名を対象に実施した計236回に上る聞き取り調査をベースに、綿密に開発の実態を調査したそうです。

今回、調査委員として抜擢された八重樫氏は、入社以来一貫してトヨタのクリーンエンジンの研究開発に携わり、初代プリウスのハイブリッドシステム開発を担った中心人物で、「ハイブリッドの父」の異名を持つエンジン開発のベテラン。

そうした経歴を持つ元トヨタ自動車の八重樫氏らが今回の調査で目の当りにした同社の開発現場の実態はどのようなものだったのか、さっそく見て行きましょう。

報告書によると、下記に列記した原因/背景の根本まで掘り下げて分析した結果、「MMCの経営陣及び開発本部の幹部による開発現場に対する関心が低く、開発本部の各部署も自分たちの業務にしか関心を持っていない」と指摘しています。

・性能実験部、認証試験が燃費の責任を負う仕組み
・開発工数が慢性的に不足
・性能実験部が「できない」と言えない風土
・法規違反に対する意識が希薄
・不正行為が長年にわたり改められない
・技術的議論が不十分なまま燃費目標を設定
・会社一体となってクルマを作り、売るという意識が欠如

そうした背景から「MMC全体で自動車開発に対する理念の共有がなされず、全社一体となって自動車開発に取り組む姿勢が欠けていたことが本質的な原因」とした上で、今回の問題は「性能実験部及び認証試験グループ、更には開発本部だけの問題ではなく、経営陣をはじめとするMMC全体の問題」と結論付けています。

具体的には、MMCの開発業務について、経営陣が開発の実情や実力を十分に把握していたとはいい難く、開発の現場にほぼ任せきりにしており、開発責任者や開発本部の幹部らも、性能実験部の業務に対し、無理解、無関心だったと指摘。

性能実験部では、一足先に「惰行法」が採用されたディーゼル車の走行抵抗測定に関する経験から、法律に定める「惰行法」による走行抵抗測定が煩雑といった認識が浸透。

少なくとも1991年12月頃には「高速惰行法」による走行抵抗データを使って、あたかも「惰行法」によって走行抵抗を測定したかのような負荷設定記録を作成するようになっていたそうです。

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このような状況になってしまったのは、各車種の開発チームや担当者の意思によるものだった可能性が高く、その一方で、上司は部下が法規を遵守して業務を行うように、指導や監督をしていた形跡すら見当たらなかったといいます。

おりしも、2005年に当時の新入社員が評価方法の違法性を指摘、また2011年に実施したコンプライアンス(法令順守)に関する社内アンケートでも「報告書の虚偽」との指摘があったにもかかわらず放置しており、一連のリコール隠し問題が発覚以降も全く自浄作用が働かなかったことを考慮すると、この根深い状況は一筋縄では解決しそうに無さそうです。

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そこで先頃、三菱自動車を傘下に収めた日産自動車は、山下光彦副社長(開発・品質担当)を事業構造改革の責任者として早々に送り込んでおり、既に開発部門の多層からなる階層のフラット化や、会議体の見直しなどに着手しているそうです。

7月からは開発部門でエンジニアリング子会社を含む約5,000人を対象にした「パフォーマンス・レボリューション活動」をスタート。

新聞報道などによると、部長以上を対象に、現状認識、会社の実態等について議論を開始しており、9月末を目処に課題をまとめ、共通認識を高めた上で、具体的な解決策を見出し、その後、社内全体の活動に拡大していく計画とか。

開発の現場で役員が議論に参加する仕組みづくりも併せて進めているようです。

山下副社長の今後の手腕が注目されるとともに、「外部の目」として日産自動車本体のサポートも引き続き、必須の状況と言えそうです。

Avanti Yasunori

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新入社員に指摘されていた三菱自動車の燃費不正問題

記者会見や一部報道でも周知のとおり、三菱自動車による燃費不正問題で、外部有識者のみで構成される特別調査委員会による報告書が8月2日に公表されました。

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なお、特別調査委員会は、渡辺恵一委員長(元東京高検検事長)、元トヨタ理事でハイブリッド開発統括の八重樫武久委員、坂田吉郎委員(弁護士)、吉野弦太(弁護士)の4人です。

調査報告書によると、同社は遅くとも1991年(平成3年)頃から型式指定審査のため、法令である惰行法によって走行抵抗を測定することなく、開発段階における動力性能実験に付随する高速惰行法によって測定済みの走行抵抗のデータを流用。

そして、惰行法によって走行抵抗を測定したかのような体裁として負荷設定記録を作成して運輸省(当時)に提出し、型式指定審査を受けるようになっていました。

三菱自動車はその後、今回の燃費不正問題が発覚するまで約25年にもわたり、ほぼすべての車種について同様の方法で負荷設定記録を作成して、型式指定審査を受けていたと指摘しています。

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報告書の中では、リコール隠しによる多数の人材流出なども指摘されていますが、中でも注目なのが極めてコンプライアンス意識の低下が続いていた状況。

とくに、驚くべきは、2005年(平成17年)2月18日に開催されたという「新人提言書発表会」において走行抵抗測定方法の問題が取り上げられ、「国仕向け自動車の型式指定審の際に使用する走行抵抗は、惰行法によって測定するというのが法規の定めであり、法規にって惰行法を用いるべきである旨の提言が、時の新人社員からなされた」と、新入社員から突っ込まれたという点です。しかし、その後も同社の運用は改められていません。

今後の復活は日産自動車のサポートも重要ですが、改めて企業風土の刷新は難しいことと感じさせられます。今度こそ自浄力が働くでしょうか。

(塚田勝弘)

次期アウトランダーか!? 三菱が新型スモールクロスオーバーMPVを世界初披露

eKワゴン、eKスペースの生産再開、販売を開始した三菱自動車。

信頼回復の道のりは決して容易なものではないでしょうが、日産の力を借りながら復活するには新型モデルの存在も欠かせないでしょう。

燃費不正問題以前は、軽自動車と電動化車両(PHEVやピュアEV)が二大看板で、そして従来からの強みであるSUVという構図でしたが、今後は軽の復活だけでなく、より電動化車両、SUVの存在感が増しそう。

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しかし、次期RVRは開発が遅れているという問題があったという報道もあったなかで燃費不正問題という状況になりましたから、スケジュールの重要性はあったとしても「より良いモデル」をリリースしないとユーザーの反応は厳しいでしょう。

2016年8月11日(一般公開は12日)から21日までインドネシアで開催されるインドネシア国際オートショーに、SUVの力強さとMPVの多用途性を融合させた、スモールサイズのクロスオーバーMPVコンセプトカーを世界初披露するとしています。

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同モデルが東京モーターショーでも披露された「MITSUBISHI eX Concept」と異なるものなのか、上の1枚の写真では分かりませんが、「eX Concept」は次世代コンパクトSUVという位置づけで、SUVとクーペのクロスオーバーという雰囲気。

今回、ワールドプレミアされるというモデルは「スモールサイズのクロスオーバーMPV」だそうですから、もう少し居住性や積載性を重視したコンセプトカーなのでしょう。

具体的には、同コンセプトカーはレイアウトの最適化とワイドボディの採用により、MPVとして乗員7名がゆったりくつろげる居住空間を確保しているそうで、コンパクトミニバンとSUVをクロスさせたモデル。

フロントフェイスには、人とクルマを守る機能を表現したという最近の三菱顔である「ダイナミックシールド」を採用しているほか、伸びやかでスポーティなボディに安定感の高さをアピールする大きく張り出した前後フェンダーや高めの地上高など、外観はSUVらしいスタイリングや機能を融合させたクロスオーバーMPVのコンセプトカーとしています。

(塚田勝弘)

三菱自動車の燃費試験における不正問題。軽以外の対象車には3万円

軽自動車の走行抵抗値不正問題の調査において、同社の登録車(パジェロ、RVR、旧型アウトランダー、ギャランフォルティス/ギャランフォルティス スポーツバック、コルト/コルトプラス)においても、恣意的な改ざん行為があったことが判明しています。

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対象車のオーナー(所有者)には、お詫びとして3万円が払われることも発表されました。

対象車を判別するための専用検索ページも用意されています。用意するのは車検証。そこに書かれた車台番号を入力するだけで、自分のクルマが対象になっているかどうかがわかるという仕組みです。

また燃費不正に関するお問い合わせ専用窓口も用意されています。

フリーダイヤル:0120-100-223
[受付時間]9時〜17時(土日は9時〜12時、13時〜17時)

(山本晋也)

三菱自動車、燃費不正問題に関するユーザーへの賠償額を公表

三菱自動車が6月17日、国土交通省へ燃費試験不正に関する再報告を実施するとともに、対象車ユーザーへの賠償額の考え方について公表しました。

Mitsubishi_ek_wagon

また、不正に至った経緯や不正に関与した部署についても同日付けで公表。

同社によると、社内文書保管期間(10年間)である2006年まで遡って再調査した結果、過去に販売した車種でも不正行為があったとしており、現行販売車以外に1991年から法規で定める「惰行法」とは異なる独自の「高速惰行法」による走行抵抗値を17車種で使用していたそうです。

これにより、不正対象車は当初の62万5,000台から200万台超にまで膨らむことになり、補償額は少なくとも1,000億円以上に上る模様。

三菱自動車によると、今回の一連の不正は、遵法意識の不足、ものが言えない組織風土、人材の特定部署への長期固定などの複合要因によって起こったとしています。

<走行抵抗値改ざんに至った主な背景>

・実走行測定にバラツキ大、机上計算が常習化
・長期に渡り一部署に人材を固定、ローテーション不足
・性能実検部の業務がブラックボックス化
・試験項目が増大、開発現場の業務負担が増加
・総指揮を執るPXの業務量に則したリソース確保不足
・開発PMの業務マネジメント不足(子会社に丸投げ)
・燃費目標達成がプレッシャーとなりデータを改ざん

<不正に関与した部署>

・性能実験部/MAE/車両性能実験部
→法令で定められた「惰行法」と異なる方法で走行抵抗を測定
・認証部 法令で定められた成績書に事実と異なる記載
・性能実験部/MAE/認証部
→走行抵抗値のデータを改ざん
→過去の試験結果などを基に走行抵抗値を机上計算

賠償額については「ユーザーの使用年数に関わらず、燃費値が異なることによって生じる燃料代の差額や、今後の車検時等に発生する税額負担等を踏まえ、賠償金を一律に支払う」としています(自動車取得税のエコカー減税追加納付分も別途負担)。

ユーザーへの賠償金支払いは8月頃になる模様です。

■賠償額:10万円/台(2016年4月21日時点のユーザー対象)

eKワゴン/カスタム、eKスペース

・リース、残価設定型クレジットを利用のユーザーは契約年数毎に1万円
・既に車両を手放したユーザーについては使用年数毎に1万円

Mitsubishi_ek_customMitsubishi_ek_SPACE

■賠償額:3万円/台(2016年6月17日時点のユーザー対象)

・現行販売車種:パジェロ(2006年発売)、RVR(2010年発売)

・販売終了車種:旧型アウトランダー/ギャランフォルティス/ギャランフォルティス スポーツバック/コルト/ コルトプラス

Mitsubishi_PAJEROMitsubishi_RVR

今回発表された賠償額が車種で異なるのは、軽自動車の方が燃費改ざんによる実燃費との乖離が大きいためとしています。

また、2006年3月までに販売した車種については社内記録が残っておらず、燃費の改ざん有無が不明のため、補償の対象外となっています。

日産ブランドで販売したOEM車(デイズ、デイズルークス)に対する賠償については日産から追って発表されるものと予想されます。

三菱自動車は再発防止に関して「開発部門の業務プロセス可視化、経営陣などによる部長職の意識改革により、開発部門の閉鎖的な組織に風穴を開け、自浄作用を取り戻す」としていますが、これまでの経緯を考えると同社の抜本的な社内風土改革には「外の目」が不可欠な状況。

先頃、資本提携を結んだ日産自動車からの人材投入など、「ゴーン流」の改革が注目されます。

Avanti Yasunori

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燃費不正問題で三菱自動車が500億円を計上するも旧型車の燃費計測は困難!?

三菱自動車の燃費試験における走行抵抗値の不正行為。5月下旬には、「燃費試験関連損失」として191億円の特別損失を計上すると発表していました。

P63ディープシーグリーン

今回新たに、平成29年度3月期決算に約500億円の特別損失を計上する見込みと発表。

そのうち、軽自動車4車種以外の登録車5車種についての顧客補償として、約30億円が含まれます。

なお、冒頭で紹介した191億円のうち、平成28年3月期決算に三菱と日産自動車の軽自動車4車種ユーザーへの支払い費用として、約150億円を引き当て済み。

しかし、三菱と日産の軽自動車4車種、登録車5車種以外にも過去販売されたモデルについても不正があったことが明らかになっているため、今後の見通しとして

「平成29年度3月期の業績見通しにつきましては、上記お客様へのお支払い以外に発生する費用を現在精査中であり、見通しが明らかになった段階で公表させて頂く予定です」

とされています。

このように、まだ全容解明にはほど遠い状態で、過去に販売されたモデルのうち、走行抵抗の改ざんが行われたパジェロ、旧型アウトランダー、ギャランフォルティス、ギャランフォルティス スポーツバック、コルト、コルトプラス、RVRの5車種の該当類別については、旧年式車であったり、生産を終了したりしており、中古車による実車測定も行っていますが、正確な燃費値は確認することができないそうです。

P45パープリッシュグレー

それでは補償はどうなる? と気になる方も多いと思いますが、三菱自動車では、改ざんの事実を真摯に受け止め、該当車両を使用している顧客に対し、誠実な対応するとしています。

1107_COLT_P27COLT P COOL Very

これらのモデルに「乗っていた」人への補償がどうなるかは文脈からは読み取れませんが、今後の対応に注目が集まります。

(塚田勝弘)

5月国内新車販売、登録車は6.6%増も軽自動車14.3%減!

自販連(日本自動車販売協会連合会)と全軽自協(全国軽自動車協会連合会)の発表によると、5月の軽自動車を含む国内の新車総販売台数は前年同月比1.2%減の33.2万台と、2ヶ月ぶりの前年割れとなっています。

2016.05

内訳では登録車が22.4万台(6.6%増)、軽自動車が10.8万台(14.3%減)と、軽自動車の不振が目立ちます。

これは三菱自動車の燃費データ改ざんで「eKワゴン」などに加え、同社からOEM供給を受けていた日産「デイズ」などの販売が大きく落ち込んだ事が影響しています。

三菱自動車の軽自動車販売は75%減の912台、日産も76.8%減の3,105台。また、燃費試験方法で不正があったスズキは15.4%減の3万8,094台の状況。

一方、ダイハツは5.4%増の3万8,358台、ホンダも3.8%増の2万786台となっており、日産や三菱自から顧客が流入した可能性が考えられます。

軽自動車は昨年1月以降、17ヶ月連続で前年割れが続いており、好材料が無いことから登録車との対比がいっそう鮮明化、総販売台数への影響も顕著になっています。

Avanti Yasunori

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三菱自動車、日産との提携を正式に締結!「外の目」で体制立て直しへ

三菱自動車が5月25日、日産自動車との資本業務提携に向けた「戦略提携契約」を正式に締結したと発表しました。

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これにより、日産は10月に約2374億円を投じて三菱自動車株の34%を取得、総議決権を得て三菱自動車は事実上、日産の傘下に入ることになります。

また同日、6月24日に予定している株主総会後の新役員人事について発表。

開発部門の立て直しを目的に、日産から担当副社長として山下光彦氏(63)、財務経理担当副社長として三菱東京UFJ銀行から池谷光司氏(58)を招くとともに、三菱商事出身の白地浩三氏(63)を常務執行役員から副社長に昇格させるそうです。

三菱自動車生え抜きで開発部門に長く携わってきた相川哲郎社長(62)と中尾龍吾副社長(63)は、不正問題の責任を取って辞任することになります。

益子会長(67)については当面、社長を兼任、10月に日産が出資後、年内に開く臨時株主総会にて新体制が発足する時点で辞任する模様。

一方、三菱自動車は同日、2016年3月期決算を修正、偽装問題の対応で191億円の特別損失を計上すると発表。軽4車種のユーザーへの燃料代の差額支払いや、エコカー減税の追加納税などに対する補償費の一部に引き当てるとしています。

新聞報道などによると、三菱自動車の開発部門に入る山下光彦氏は既に日産を退任しているそうですが、日産時代にEV開発にも携わっていたこともあり「日産での経験を生かし改革を進めたい」と意気込みをみせているそうです。

「外の目」による社内改革が必須の三菱自動車だけに、開発部門のトップとなる山下副社長の今後の手腕に期待がかかります。

Avanti Yasunori ・写真:小林和久)

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日産がいち早く発動した三菱自とのシナジー戦略とは?

三菱自動車の燃費偽装をきっかけに、同社を傘下に収めることになった日産自動車が、さっそくそのシナジー効果を出すべく動き出しているようです。

NISSAN

6月24日付けで日産から開発担当トップを送り込み、三菱自動車 開発部門の抜本的な改革に着手するようで、産経新聞によると、それを担うのは日産の元開発担当副社長、山下光彦氏としています。

同社は三菱自への34%出資が完了する10月には会長を送り込む予定。

注目される日産の今後のシナジー戦略は以下となっているようです。

・ルノーの欧米工場を活用して三菱の輸出車を現地生産化
・軽自動車を生産する水島製作所に日産の製造ノウハウ導入
・三菱自の東南アジア販売網を活用して販売をてこ入れ
・EV、PHV開発における両社の役割分担を明確化
・将来的に三菱自からのOEM車種を拡大
・国内外の生産拠点を相互活用

なかでも注目されるのが、開発における役割分担で、今後は日産がEV開発を一貫して担当、三菱自は経営資源をPHV開発に集中させる考えのようです。

NISSAN_LEAFMITSUBISHI_i_MiEV

日産はEV「リーフ」の世界累計販売が21万台を超えるなど、EV開発に強みを持っており、PHVは「アウトランダーPHEV」のノウハウを持つ三菱自が得意としていることが背景にあります。

また軽自動車タイプの小型EV開発については既に日産主導で進めている模様。

このように早くも日産はゴーンCEOの号令のもと「マイナス」を「プラス」に転換する作戦を着々と進めつつあるようです。

Avanti Yasunori

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スズキの報告から見えてくる燃費試験「惰行法」の課題とは?

三菱自動車の燃費不正問題を受け、国土交通省が各自動車メーカーに同様の問題が無いか調査を指示しました。

その結果、スズキが同省に報告した内容が話題になっています。

SUZUKI_SWIFT

スズキが18日夕方に開いた緊急会見によると、燃費測定の際の走行抵抗値の改ざん等は無かったものの、16車種(登録車/軽自動車各8車種)全てについて、同社独自の方法で測定した走行抵抗値を国交省に提出していたそうです。

実車走行テストで得たデータではなく、実験室の風洞で空気抵抗を測定、台上で測定したタイヤの転がり抵抗値との合算で走行抵抗を算出していたとしています。

同社がこれまで国交省が定めた「惰行法」による測定データを使わなかったのは、相良テストコースに横風を防ぐ遮風板等の設備が無く、測定データがバラつくためで、燃費を良くみせることが目的ではないと説明しています。

確かに近頃のモデルは車高が高いトールボディが主流なので、横風が強い屋外の場合、安定した測定が難しいのかもしれません。

SUZUKI_HUSTLER

ちなみに国交省が定めている「惰行法」は以下となっています。

・時速20km/hから90km/hまでの10km/h刻みを基準に+5km/hで走行
・その後ギアをニュートラルにして基準-5km/hまで減速する時間を測定
・時速90km/hなら、95km/hから85km/hまで減速する秒数を測定
・測定は往路3回及び復路3回行い、その平均値を求める

スズキではこれまでも全車種について実験室で得たデータと、テストコースでの「惰行法」による測定結果との相関をとりながら走行抵抗値を決定しており、今回の再検証の結果でも届出値との差異が5%以内だったことから、販売中の車種においても燃費値に問題は無いとしています。

会見に出席した鈴木修会長は「国が定めた試験方法で実施してなかったのは事実」として、今回国交省へ報告、並びに謝罪会見を開いたと述べています。

スズキも三菱自と同様に海外で販売している車両については問題が無いとしており、本件は国内のみの案件としていることから、燃費測定の基準となる日本独自の「惰行法」による走行抵抗値測定方法自体にも問題がある可能性が浮き彫りになって来ました。

おりしも国交省は2018年内に新たな燃費試験基準(WLTP)の導入を予定しており、実燃費に近いデータが得られる測定方法や表示方法への早期移行が期待されています。

Avanti Yasunori

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三菱自動車・相川社長が辞任表明、益子会長は当面留任。その背景とは?

三菱自動車の相川哲郎社長が燃費データ不正操作問題の責任を取って辞任する意向を固めたそうです。

MMC_Aikawa

2014年1月31日に当時の益子社長から命を受け、6月25日に現在のポストに就任した相川社長でしたが、社長就任から僅か2年弱、社内改革の道半ばにして今年6月24日の株主総会後に辞任する模様。

益子会長は当面、三菱自に残り、日産との資本業務提携に向けた調整や、ブランド再生のための計画策定、日産、三菱グループとの調整などに当たる見通し。

今回の三菱自の燃費不正を指摘後、同社の買収に動いた日産は10月頃に三菱自に出資後、同社を傘下に収め、その後、会長を含む4人の取締役を派遣する計画のようです。

相川社長は5月19日に開かれる日本自動車工業会の定時総会で自工会の副会長も辞任する予定で、後任としてホンダの八郷隆弘社長が就任、新会長には西川廣人・日産自動車副会長が就任する見通し。

相川社長は東大で船舶機械工学を専攻、三菱自動車入社後は開発畑を歩み、初代ミニカトッポ(1990年)の企画開発や初代eKワゴン(2001年)の開発プロジェクトリーダーなどを務めた人物。

MMC_Aikawa

父親の相川賢太郎氏は三菱重工で社長、会長を歴任した三菱グループの重鎮で、原動機畑一筋で地熱発電プラント開発の第一人者。

しかしながら、相川社長は今回の燃費不正の舞台となった開発畑の出身であり、経営責任が重いと判断、今後の開発部門のたて直しは事実上、日産主体で行われるものと予想されます。

Avanti Yasunori ・写真:小林和久)

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三菱自動車の相川哲郎新社長「入社のワケは?」【動画】
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三菱自動車の次期社長が「あの軽自動車の生みの親」となったワケは!?
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日産と三菱の資本提携で浦和レッズが危機だって!? そんなバカな

浦和レッズをなめるな。あいつらは強い。

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私はFC東京サポーターなので浦和レッズはべつに好きじゃないんですが、サッカーファン、Jリーグファンとしてちょっと気になるのは、日産自動車と三菱自動車の資本提携です。

これ、まず自動車業界で話題になったニュースですが、Jリーグにも影響してくるんですね。

というのは、Jリーグ規約の第25条第5項に

「Jクラブは、直接たると間接たるとを問わず、他のJクラブまたは当該他のJクラブの 重大な影響下にある法人の経営を支配しうるだけの株式(公益社団法人または特定非営 利活動法人にあっては社員たる地位)を保有している者に対し、自クラブまたは自クラブの重大な影響下にあると判断される法人の経営を支配できるだけの株式(公益社団法 人または特定非営利活動法人にあっては社員たる地位)を保有させてはならない。」

というのがあるんです。

日産自動車は横浜Fマリノスの株式の過半数を持つ筆頭株主、三菱自動車は浦和レッズの株式の過半数を持つ筆頭株主のようなんですね。

そこで三菱自動車が日産自動車の傘下に入ると、どちらかが株式を売却しないといけないことになると思われます。この場合、おそらくは三菱自動車が浦和レッズの株式を売却することになるでしょうね。

というわけで、いまスポーツ新聞やらなんやらは、『浦和レッズ存続の危機か?』みたいな記事を出しているわけです。

でもね。悔しいけど、浦和レッズはそんなにヤワじゃないですよ。

じっさいにこのままではJリーグ規約に抵触するっぽいので、そうであれば三菱自動車は浦和レッズの株式を(あるていど)手放すでしょう。でも、保有している株式の全部手放さなくてもいいんじゃないかな。

『経営を支配しうるだけの株式』じゃなければいいわけだから。

で、浦和レッズはあぶないか? そんなバカな! あのクラブすげえ観客動員があるんですよ。1試合平均3万8000人を超えるんだよ! Jリーグの中でもダントツの1位ですよ。

ちなみに2位がFC東京で1試合平均2万8000人台だから、いかに浦和レッズの人気がバケモノかわかるでしょう。予算も潤沢だし、浦和レッズは優良企業なんです。

futta2464m

じつは三菱自動車の大きな不祥事っていうのは今回が初めてじゃないんですね。

以前のリコール隠しのときにも三菱自動車の経営が危うくなる事態があったんですが、浦和レッズの経営陣は「三菱自動車が撤退しても浦和レッズは問題なくやっていける」と表明していたと記憶しています。

親会社に支えられないと成り立たないクラブじゃないんですね。

そもそも浦和レッズはJリーグ発足当初は弱小クラブでした。それがビッグクラブに成長できたのは、まぎれもなく地元サポーターのおかげです。そのサポーターからひんしゅくをかうような名称の変更なんか、筆頭株主が変わってもこわくてできないでしょう。

というわけで、マスコミは『浦和レッズの危機』みたいに騒ぐ記事が好きだろうけど、残念ながら!浦和レッズは(すくなくとも見た目には)あまり大きな影響を受けずにビッグクラブでありつづけるんじゃないかな。それくらいあのクラブは手ごわいです。

(まめ蔵)

日産が三菱自動車の燃費不正解明を待たずに買収に動いた訳は?

三菱自動車の燃費データ改ざんが公表された4月20日以降、被害者の立場で沈黙を続けていた日産が5月12日に三菱自動車との資本業務提携を発表。同社を事実上、傘下に収めるという話題が注目を集めています。

NISSAN

日産と三菱自動車は同日、アライアンスに関する覚書を締結したと発表。三菱自動車の発行済み株式34%を日産が2,370億円で取得することになるそうです。

日産が三菱自動車の買収に動いた背景には、三菱自動車がタイなどに生産拠点を置いて主力市場としている東南アジアでの販売シェア拡大に繋げたいとの狙いがあるものとみられます。

三菱自動車は11日の記者会見でその後の不正全容解明に向けた状況を発表しましたが、燃費テストの委託先が100%子会社のMAE(三菱自動車エンジニアリング)であることを明かした程度で、「依然、社内で聞き取り調査中」の報告に終始。

振り返れば三菱自動車の燃費不正発覚の発端となったのは、当時合弁会社「NMKV」を中心に共同開発を行っていた日産からの指摘によるものでした。

日産は三菱自動車への損害賠償などについて、不正の全容が明らかになるまで静観するとしていましたが、その一方で4月の「デイズ」販売台数が前年同月比で約7割減となっています。

三菱自動車も今回は三菱グループの情勢や倫理上の観点から、救済が期待できない状況にあり、日産の要求を受け入れざるを得なかったと推測されます。

MITSUBISHI_eK_Wagon

ではなぜ、日産は燃費不正の全容が明らかになっていない現段階で三菱自動車の買収に動いたのでしょうか。

それが外資比率の高い企業特有の手法だとすれば、わかりやすいのかもしれません。

以前に日産がNMKVで開発した軽自動車の自社生産を匂わせたことから、これに三菱自動車が抵抗、ひと悶着有った件が買収の引き金になっているとすればどうでしょうか。

あくまで推測ですが、全ては事の発端から日産側のシナリオどおりに進んでおり、三菱自動車が記者会見で燃費不正の事実を認めた段階で、迅速かつ比較的安価に同社を傘下に収めることで、海外を含む他企業からの三菱自動車買収を未然に防ぐ狙いが有ったのかもしれません。

今回の資本業務提携で、日産、ルノー、三菱自動車を合わせた世界販売台数は950万台を超える規模となり、首位のトヨタやフォルクスワーゲンなどに迫ることになります。

それが目的だったとすれば4月20日以降、日産の三菱自動車買収戦略にマスコミを含め踊らされていたことにもなりかねず、真相がどうなのかが大いに気になるところです。

Avanti Yasunori

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日産自動車が三菱自動車の筆頭になるメリットとは?

三菱自動車が日産自動車の傘下に入り再建を期すというニュース、新聞やテレビなどの報道にすでに接している方も多いでしょう。

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日産と三菱が2011年6月に折半出資で設立したNMKVは、日本市場向けの軽自動車の商品企画、開発という事業内容です。

燃費不正という根の深い問題が起きましたが、軽自動車の提携という実績からいっても、三菱グループ外で再建を図るとしたら日産しかないだろうな、というのは皆さんが感じていたことではないでしょうか。

一部報道によると、日産が2000億円を投じて三菱自動車の3割強の株式を取得するというもので、日産が三菱自動車の筆頭株主になります。

三菱自動車の筆頭株主は、同社のホームページによると三菱重工業が約12%、三菱商事が約10%、三菱東京UFJ銀行が4%弱で、三菱グループが約26%となっています。

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日産が三菱を事実上、傘下に収める利点は軽自動車の生産面(水島製作所)もあるでしょう。

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ほかにも、両社が注力しているEVやPHVなどの電動化車両でも共同開発が進めばコスト削減や性能向上などの相乗効果も期待できます。

あくまで想像ですが、日産エクストレイルにプラグインハイブリッドが設定されることもあるかもしれません。あるいは、ルノーブランドで新しいプラグインハイブリッドモデルを出すということもできるかもしれません。

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さらに、日経新聞などの一部報道によると、タイやインドネシアで人気の高い三菱製のSUV、パジェロやパジェロスポーツなどブランド力を日産が魅力的に感じているという内容もありましたが、日産の「DATSUN(ダットサン)」と三菱の2つのブランドで新興国のシェアを高める戦略もあるのかもしれません。

三菱自動車からすると、再度三菱グループの支援を仰ぐことができるのか不透明な中、同じ業種の日産からの支援があれば軽自動車事業の継続、EVやPHVなどの電動車両の推進などの利点がありそうですが、車種のリストラや開発拠点や生産工場などが今後どうなるか気になるところ。

両社からの正式発表が待たれますが、やはり今回の燃費不正問題は、日本の自動車業界再編にまで及ぶことになりそうです。

(塚田勝弘)

【関連記事】

■三菱自動車の燃費不正問題の影響は業界再編にまで及ぶ?
http://clicccar.com/2016/04/23/367698/

■三菱自動車が国土交通省へ燃費不正問題の報告書を追加報告
http://clicccar.com/?p=371514

三菱自動車が国土交通省へ燃費不正問題の報告書を追加

三菱自動車のeKワゴン、eKスペースは、前年同月比で65%弱という大幅減になっているほか、日産デイズ、デイズルークスも67%減と大きく減らしています。

20151106MitsubishieK_0024DAYZ大幅減は、販売停止になっていますから当然ですが、燃費(差額分)の補償やエコカー減税の支払いなどはもちろん、停止している三菱の水島工場の行方も気になるところ。

記者会見も行われたように、5月11日に三菱自動車から国土交通省に燃費試験における不正行為について報告書が追加されました。

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まず、上記の軽自動車4車種の調査について、下記の4点が報告されています。

(1)燃費を良く見せるための走行抵抗の不正な操作は、14型のeKワゴン、デイズ(2013年2月申請)の燃費訴求車の開発において始まった。他の類別(標準車、ターボ付車、4WD車)やeKスペース、デイズルークス、各年式変更車では、走行抵抗は同燃費訴求車のデータから机上計算された。

1点目で驚かされるのは、ほかのグレードや仕様、年式変更、つまりイヤーモデルの走行抵抗のデータは、燃費をウリにするモデルから机上計算されたという点。元となる走行抵抗のデータに不正があった上に、机上計算というのですから根の深さを感じさせます。

(2)同燃費訴求車の開発において、燃費目標は26.4km/Lから29.2km/Lまで計5回引き上げられた。新型競合車の燃費を強く意識したもので、現実的には達成が困難でありながら、根拠に乏しい安易な見通しに基づく開発が進められた。

2点目に関しては、スズキとダイハツが燃費競争でしのぎを削る中、三菱の焦りが透けて見えます。

(3)担当者らは、燃費が「商品性の一番の訴求ポイント」と認識し、開発関連部門の管理職・役員からの燃費向上の要請を必達目標として感じていた。

燃費向上には、パワートレーンの改良、軽量化、ときにタイヤメーカーまで巻き込んだ走行抵抗の低減など、全方位に渡っての努力と積み重ねが不可欠ですが、どの程度、上役が困難な仕事であることを理解していたのか気になるところです。

(4)開発関連部門の管理職(複数)は、業務委託先とのコミュニケーションを十分に行っていなかった上、高い燃費目標の困難さを理解していたにも係わらず、実務状況の確認をしなかった。

上でも述べましたが、燃費目標の困難さを理解していたのに実情を把握していなかったのは職務放棄といわれても仕方ないかもしれません。

(5)再発防止策については、各問題点をふまえ抜本的な改革を検討している。

水島工場で働く方やサプライヤーなどにも丁寧な説明が必要なのはもちろん、最も大切なユーザーの理解が再度得られるでしょうか。

なお、今後の対応については、「その他の現在販売している9車種及び、すでに販売を終了した車種については、ヒアリングの結果、正しく走行抵抗を算出していなかったり、RVRなど机上計算により算出したりしたものがあることが疑われるため、測定データによる裏づけや経緯などを調査中で、別途ご報告する」としています。

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さらに、問題となっている「高速惰行法使用の理由・経緯を含む同件の徹底的な調査のため、外部有識者のみによる特別調査委員会を4月25日に設置。同委の報告と提言を受け次第、弊社としての適切な対応を立案し、別途ご報告する」としています。

軽4車種以外にも、RVRが机上計算により走行抵抗データが出されている可能性も示唆されていますが、全容が明らかになるにはまだ時間がかかるようです。

(塚田勝弘)

日産が三菱自動車の株34%取得して資本業務提携!

2016年4月20日に三菱自動車が委託生産をしている軽自動車(三菱eKシリーズ、日産DAYZシリーズ)の認証取得時における不正が公表され、両社が該当モデルを販売停止にするなど大きな問題となっています。

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その後の調査で、三菱自動車においては1991年から排ガス・燃費試験において不正な数値を申請していた可能性が明らかとなり、実測が求められている走行抵抗値を机上計算によって導き出したという不正も同社により公表されています。

そうした中、三菱自動車の今後について様々な風説が飛び交いましたが、わずかな期間で日産との資本業務提携を結ぶことが発表されました。

日産のカルロス・ゴーン氏、三菱自動車の益子修氏という両CEOの記者会見では、まずゴーンCEOが「日産が三菱自動車の発行済株式の34%を2370億円で取得。筆頭株主となることで、シナジー効果を高め、ウインウインの関係となることを期待しています。また三菱自動車の筆頭株主として、同社のブランドと歴史を尊重し、大きな成長の可能性の実現をサポートすると同時に、アライアンスファミリーの一員として迎えたい」と資本提携による戦略的アライアンスであることを説明します。

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また、益子CEOは「軽自動車の試験における不正において日産の責任について、そうした認識はない」と明言。

そのうえで「非常に近いところにいたこと、将来的な成長などから手を結ぼことにした」、「2011年の軽自動車事業におけるパートナーシップやアセアン地区におけるピックアップトラックの生産など以前から進んでいたことが、このタイミングでカタチになった」と、軽自動車の不正がきっかけではないとしています。

このアライアンスにより、日産の意思を受けた取締役会会長を含む議決権に比例した人数の取締役候補を提案することになるということです。

日産(ルノー)は、ダイムラーとのアライアンスも結んでいますが、かつてダイムラーの傘下にあった三菱自動車が、またアライアンスの一員として再会することになるというのも不思議な縁を感じさせます。

(写真:小林和久・文:山本晋也)

三菱の軽乗用車販売、4月は前年比37.9%の680台。日産は?

全国軽乗用車協会連合会が、2016年4月の軽自動車セールスデータ(速報)を発表しています。

認証取得時の不正が明らかとなった三菱自動車「eK」シリーズと、その兄弟モデルである「DAYZ」シリーズを販売していた日産自動車の両社の販売数は、三菱が前年同月比55.1%の1,477台、日産は同48.8%の5,574台となっています。

いずれも不正問題の発覚後、販売を停止しているのでこうした数字は予想の範囲ですが、それにしては台数の落ち込みが少ないという見方もあるかもしれません。

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ここでポイントとなるのは、上記の数字は各社の軽自動車販売のトータルの数字であること。

三菱、日産ともに販売を停止しているのは乗用モデルのeKシリーズ、DAYZシリーズに限った話。軽自動車全体では、スズキからOEM供給を受けている商用車などを含めての軽自動車セールス台数ということになります。

そこで、両社の軽乗用車に限った数字を見てみると、三菱は前年同月比37.9%の680台。結果として、三菱の軽自動車販売は商用車のほうが多いという非常に珍しいバランスとなっています。

また、日産はスズキからOEMのモコを含んだ台数となりますが、軽乗用車に限った4月の実績は同35.7%の3185台と、比率でいえば三菱自動車より落ち込んでいます。

そもそも不正を行なったのは三菱自動車であり、しかも1991年から不正が続いていたということで、社会的な問題となっています。

しかし、販売現場での影響でいえば、日産の軽自動車への影響がより目立つ結果となっているようです。

(山本晋也)

中国北京モーターショーに出展される新型ASXは、日本名RVRでアジア初披露

日本では大変なニュースとなってモーターファンフェスタへの出展も中止となった三菱自動車ですが、中国での北京モーターショーでは無事出展されているようです。

EVとSUVが現在の三菱自動車の強みとなっていて、経営資源を注力することも2015年の東京モーターショーでアナウンスされています。

2016年の北京モーターショー(4月25日〜5月4日)で披露されるASX(日本名RVR)は、2015年のロサンゼルスモーターショーで公開された2016年モデルとなるビッグマイナーチェンジ版。

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世界的に流行しているSUVだけに、大がかりなフェイスリフトで話題を喚起し、商品力も高めたいところです。

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新型RVRは、最近の三菱車に採用されている「ダイナミックシールド」と呼ばれる新しい顔つきになっていて、新デザインの17インチアルミホイールにより力強い雰囲気が色濃く漂っています。なお、新型ASXは今年の4月から中国で生産、販売するとしています。

ほかにもアウトランダーPHEVやアウトランダー、スポーティセダンのランサーEXの特別仕様車などが披露されます。

三菱自動車の国内での今後の動向も不透明ですが、収益の大きな海外への展開にも注目が集まります。

(塚田勝弘)

三菱自の軽自動車が消えた!? 燃費不正発覚後のekワゴン、eKスペースの中古車はどこへ?

4月20日に発表された三菱自動車の燃費問題。まだまだ真相は明らかになっていませんし、車種は拡大の様相を示しています。この問題発覚後、三菱自動車の株価は一気に下がりましたが、中古車相場はどうなっているのかをチェックしてみました。

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今回、中古車相場をチェックしたのは燃費問題発覚のきっかけとなった三菱eKワゴン、ekスポーツ。そして共同開発した日産デイズ、デイズルークスの4車種です。

直近の1カ月の平均相場の推移と流通台数は一体どのようになっているのでしょうか。データは中古車情報サイト、カーセンサーnetのものです。

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まずは、三菱ekワゴン、ekスペースです。左のグラフeKワゴン、右がeKスペースのものです。緑の線が平均価格、オレンジの棒グラフは流通台数を示しています。

2車種ともに記者会見が行われた4月20日を境にして中古車の平均価格は下がり、流通台数は減少しているのがわかります。ekワゴンは記者会見前の時点で500台を超える中古車が流通していました。しかし記者会見後わずか一週間で半分以下の220台程度まで減少しています。そして中古車相場は90万円前後を推移していたのにも関わらず、一気に86万円まで下がりました。

軽自動車の場合、1カ月の平均価格は大きく動いても1万円程度というケースが一般的なので、これは暴落といえるでしょう。

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さらに深刻なのはeKスペースです。中古車の大需要期である3月が終了した後、4月20日までは小幅な値動きで収まっていました。しかし記者会見後一週間で平均価格は10万円も値落ちし115万円まで下がっています。

さらに流通台数は400台近くに流通していましたが、166台とこちらも半数以下になっています。三菱自動車の株価同様に問題が発覚した車種の中古車も暴落していることがわかりました。

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一方の日産デイズ、デイズルークスの平均価格と流通台数はどうなっているのでしょうか?

流通台数は一旦減少していましたが、すでに回復傾向となっています。そして中古車の平均価格はデイズが一旦3万円の値落ちを示したものの、すでに反発して104万円まで戻しています。

もともとデイズルークスは記者会見前からの値落ち傾向が続いており、問題発覚によって値落ちに拍車は掛かったものの、ekスペースに比べると影響は小さいと言えます。

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では、この販売店から消えた中古車はどこに行ったのでしょうか?

答えは中古車が取引されるオークション会場にありました。ekワゴン・eKスペース。そしてデイズ・デイズルークスの未使用車や中古車が大量にオークションに出展されていたのです。

しかし、この2車種をはじめ、オークションに出展される三菱車の多くは入札がなく、流れてしまっているようでした。

ここまで値落ちが進んだekワゴン、ekスペースの中古車相場は反発して値を戻す可能性はありますが、一旦傷付いたブランドの信頼回復はできるのでしょうか。

(萩原文博)

日産はどうする? 三菱自動車の不正、NMKVの行方は?

三菱自動車工業の軽自動車による認証取得時の不正問題が拡大しています。

三菱が生産、日産にも供給する軽自動車だけでなく、四半世紀にわたって法規に則った走行抵抗の試験が行なわれていなかったことが明らかとなるなど、問題の根深さがあらわとなっています。

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問題の軽自動車については、当事者でもある日産ですが、まずは三菱が生産を担当している軽自動車「DAYZシリーズ」に関しては販売停止中(スズキからOEMを受ける車種は販売続行)としています。

2015年度の同社国内販売を見ると、登録車は37万5498台、軽自動車は19万7083台となっています。前年同期比でマイナス15.6%と減っている軽自動車ですが、それでも同社における国内販売の比率では34%もあり、このまま軽自動車の販売を停止していては営業への影響が大きいことは容易に想像できる状況です。

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もともとスズキからのOEMによって軽自動車ビジネスに参入した日産が、独自のモデルを開発しようとした狙いと、開発リソースに悩む三菱自動車の思惑が合致して2011年に生まれたのが、両社のジョイントベンチャー「NMKV」といえます。

『日産・三菱・軽・自動車』を意味する名前を持つ同社が担うのは、商品企画とプロジェクトのマネージメント。

認証取得における不正が問題となっている三菱eKシリーズ、日産DAYZシリーズの開発・生産は三菱自動車が担当していましたが、次期モデルについては、開発段階においても日産の関与が深くなることが2015年10月に発表されていました。

その内容について、公式発表では次のように表現されています。

具体的には、設計開発、実験など実際の開発業務については、今後、日産自動車もより深くかかわることとなります。

また、NMKVの機能を強化し、従来担当してきた商品企画やプロジェクト開発などのマネジメント機能に加え、開発と生産の連携をより円滑、強化するための部署を新たに設けます。

なお、生産については、引き続き、三菱自動車の水島製作所で行う予定です。

今回の不正については、そうした日産の設計開発への”深い関わり”によって明らかになったという面もありますが、このままでは従来と同じ体制により次期モデルを開発するというわけにはいかない状況です。

不正行為を正すのは当然でしょうが、それだけでは信頼回復とはならないといえるでしょう。つまり、このまま次期モデルを開発しても市場が受け入れるとは考えづらいのも事実。

とはいえ、前述のとおり日産の国内販売において軽自動車は欠かせないプロダクトであり、いまさら軽自動車抜きのマーケティングに切り替えるというのも無理めな話といえそう。しかしながら、三菱の不正問題は1991年から始まっていたと根が深く、短期間での解決は難しい様相。

可能性としては、あらためてスズキのOEMを増やす可能性を模索して、商品を揃えるというカタチをとるのか、それともすでに進めていた路線を拡大して独自に軽自動車を開発・生産するといった2つの方向が考えられます。

いずれにしてもジョイントベンチャーとして生まれたNMKVが、その存在意義が問われる状況になるのは必至といえそうです。

(写真:山本晋也/小林和久/日産自動車)

(文:山本晋也)

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【関連リンク】

日産自動車、三菱自動車、NMKV、次期型軽自動車の企画・開発で基本合意
http://www.nmkv.com/info/2015/10/info20151016.html

三菱自 相川社長が燃費偽装で引責辞任か?国交省の対応は?

VWのディーゼル車排ガス不正問題に続き、三菱自動車による燃費改ざん問題で、自動車業界に再び大きな衝撃が走っています。

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本問題は性善説に基づく国土交通省の自動車検査方法にまで波及しつつあります。

そうしたなか、毎日新聞によると、三菱自の相川社長が26日に社内に発足させた外部弁護士による特別調査委員会の検証結果取りまとめなど、事態収拾に一定の道筋を付けた後に退任する方向としています。

また読売新聞によると、当時の社長で現在会長の益子修氏についても退任する公算が強いとしています。

今回取り沙汰されている「ekワゴン」が発売されたのは2013年6月。

TV東京の「ガイアの夜明け」で「人気沸騰!軽自動車ウォーズ」と題して開発記録が放映されており、当時この番組をご覧になった方も多いのではないでしょうか。

2011年6月に三菱自と日産が発足させた合弁会社「NMKV」を舞台に、両社が協力しながら最後の最後まで果敢に燃費改善を図る様子がリアルに描かれていました。

しかしながら、今回の三菱自の燃費不正発覚の発端となったのは、意外にも当時共に開発を行っていた日産からの指摘によるものでした。

不正発覚のきっかけは「デイズ」の次期モデルを日産が自前で開発すべく、現行モデルの燃費を調査したところ、公称燃費との乖離が大きかったことによるとされています。

そして三菱自が4月26日に国土交通省へ報告した内容を要約すると以下のようになっています。

・「ekワゴン」の燃費訴求車の当初目標値は26.4km/L
5回の上方修正を経て発売直前には29.2km/Lに引き上げ

・1991年より法規と異なる「高速惰行法」で走行抵抗を実測
測定データの中から小さい値を選別して走行抵抗を設定

・派生車やマイチェン車は燃費訴求車を元に机上で算出

そもそも現行の「JC08モード燃費」は独立行政法人 交通安全環境研究所で試験した結果を元に国土交通省が認定する仕組み。

ただ、燃費試験に必要なタイヤと路面の摩擦で生じる“走行抵抗”については各メーカーが提出するデータを使用しているのが実情。

三菱自は燃費を良く見せかけるため、この走行抵抗値を改ざんしていたという訳です。

この独自の測定方法を使った対象車種数については現在調査中とのことですが、恐らく数十車種にのぼるとみられています。

三菱自動車では現時点で不正に及んだ原因や責任について未解明としており、今回設置した「特別調査委員会」で調査を進めるとしています。

顧客への補償やエコカー減税額が変わる事で、税金の不足分などが出れば一連の対応費用について最大で1,000億円以上に上るとの試算も。

振り返れば軽自動車のシェア拡大に向け、ダイハツ、スズキの2強を相手に拡販を狙うべく選んだ相手が日産でした。

しかしながら、2015年度(15/4〜16/3)の軽自動車国内販売シェアはダイハツ(32%)、スズキ(30%)の2強が約6割を占めており、ホンダ(18%)、日産(11%)を差し引いた中の約3%といった状況。

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さらに日産は今後、軽を三菱自との共同開発では無く、自社で開発する腹づもりのようで、新会社発足当時からは方向性が変わりそう。

不正発覚の発端となった「ekワゴン」など4車型は既に62.5万台が生産されており、その他の車種への拡大や、ユーザーからの信頼を失うことで被る販売への影響は計り知れません。

今回の不正発覚を機に国土交通省もようやく重い腰を上げ、26日の記者会見で石井啓一国土交通相が燃費測定方法の見直しを図るとしており、再発防止策を検討する作業部会を設置すると発表しました。

今回はっきりしたのは公的な燃費審査機関がメーカーの「いい値」を使って試験していたのでは“お話にならない”ということ。

今後は日本でも現状のような台上試験では無く、米国の燃費審査機関である「EPA」(環境保護庁)が行っているような実走行によるものとし、消費者側が実力燃費を把握できる測定方法に一刻も早く切替えるべきでしょう。

そうすれば今回のような企業側の「甘え」や「からくり」を使った燃費偽装が入り込む余地が無くせる可能性が高まりそうです。

Avanti Yasunori

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三菱自の新たな発表「1991年から続いた4重の不正」とは?

三菱と日産のJVであるNMKVが企画した軽自動車、三菱「eKシリーズ」、日産「DAYZシリーズ」における燃費試験データの不正使用が明らかになってから、およそ一週間。不正行為について国道交通省に報告したのに合わせて、概要が発表されています。

その内容は大きく2点。

ひとつは軽自動車の認証取得に際して、開発中における燃費性能の引き上げと、それに伴う不正。

もうひとつは、1991年から続いていたという走行抵抗試験に関する不正行為についてとなります。

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軽自動車については、2013年に発売されたeKワゴンとデイズについて、開発段階で燃費目標の引き上げ(26.4km/Lから29.2km/L)があり、道路運送車両法に定められた「惰行法」とは異なる「高速惰行法」において走行抵抗値を実測。

そのうえで中央値をとらずに、最良値を申請したという二重の不正が明らかとなっています。

ターボエンジン車や4WD車、そして標準モデルについては、前述した燃費訴求車の数値を元に、机上で計算したといいます。本来であれば、いずれも実測する必要があり、この行為により三重の不正です。

全高の異なるeKスペースやデイズルークスなどの追加モデルや、その後のマイナーチェンジモデルについても、初期の高速惰行法によって得られた数値をベースに算出したデータによって申請していたといいます。

シリーズ名こそ共通していますが、誰が見ても異なるモデルにおいても実測をしていないというのは、四重の不正であり、またコンプライアンス意識の低さを感じさせる行為といえます。

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さらに、三菱自動車工業においては、日本国内の法規で定められた「惰行法」による走行抵抗の計測は行なわれていなかったと思わせる発表もされました。その経緯を以下に引用します。

(1)1991年、道路運送車両法により走行抵抗の測定法が「惰行法」と指定されたが、当社ではそれと異なる「高速惰行法」で国内向け車両の計測を始めた。

(2)1992年1月、走行抵抗から惰行時間を逆算する計算法が作られた。

(3)2001年1月、「惰行法」と「高速惰行法」の比較試験を実施し、最大2.3%の差にとどまることを確認。

(4)2007年2月、試験マニュアルにより、「DOM(国内)はTRIAS(「惰行法」)」と追記改定したが、以降も「高速惰行法」を継続して使用していた。

この発表は、国内で必要とされる「惰行法」による計測を行なっていなかったとも読み取れます。つまり、軽自動車の燃費目標を達成するためのインチキではなく、法規が定められたときから守ることがなかったと捉えることもできるでしょう。

日産自動車は同社WEBサイトにて、デイズとデイズルークスの販売停止に関する『お詫びとお知らせ』を出した後は、公式なアナウンスはありません。

不正な計測方法が1991年から続いていたとなると三菱自動車工業の社内的な問題が大きく、日産は静観するほかないということでしょうか。

また、1991年から不正行為が続いていたとすると、2000年から5年間ほど提携を結んでいたダイムラークライスラー(当時)の品質管理の目もかいくぐったということになります。

今回の発表は、ひとまずの報告に基づいたもの。検事経験者などによる特別調査委員会による徹底的な調査結果が待たれます。

(山本晋也)

【関連リンク】

三菱自動車工業・当社製車両の燃費試験における不正行為に係わる国土交通省への報告について
http://www.mitsubishi-motors.com/publish/pressrelease_jp/corporate/2016/news/detailg427.html

三菱自動車の燃費不正問題の影響は業界再編にまで及ぶ?

三菱自動車の燃費不正問題。概要をおさらいすると、三菱自動車製の軽自動車の型式認証取得において、同社が国土交通省へ提出した燃費試験データが燃費を実際よりも良く見せるため、不正な操作が行われていたということです。

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なお、4月21日現在、三菱自動車のホームページには、おわびが掲載されるとともにeKシリーズのWEBページは閲覧できなくなっています。日産もホームページからデイズとデイズ ルークスが消えて、モコとNV100クリッパーリオのみとなっています。

では、eKワゴンの登場時はどんな走りだったかというと、とくにNAエンジンモデルは、スロープを上ったり、大きな通りに合流、加速したりする際など「今時こんなに遅いの?」かと驚くほどで、思わずサイドブレーキ引いたまま走り出したのか確認したこともありました。

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その後の改良で改善されていますが、デビュー時は燃費を達成するためにこんなに出力を絞るしかないのか、と思い知らされました。

今回の問題点は、クルマの型式認定を受ける際に燃費に有利になる走行抵抗値(主にタイヤの転がり抵抗と、空気抵抗)を使ったというもので、一部報道などによると、カタログ燃費への影響は5〜10%くらい悪くなる可能性があるそう。

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JC08モード燃費と実燃費の乖離は、三菱車だけではなく全メーカーに当てはまるものですが、唯一の統一基準であるはずのカタログ燃費になる大きな要因の走行抵抗値が不正のものだったとなると、国交省のお墨付きだと思っている人が多そうだけに(メーカーが提出する届け出値とはいえ)カタログ燃費への信頼も揺るぎかねません。

また、問題は軽自動車だけにとどまらない可能性も否定できないようで、同社では「国内市場向け車両についても、社内調査の過程で国内法規で定められたものと異なる試験方法がとられていたことが判明しました。

また、状況の重大性を鑑み、海外市場向け車両についても調査を行います」とコメント。

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こちらも調査待ちとなりますが、該当車両以外のカタログ燃費が適正であるかも分からなくなるという事態になりかねません。さらに、一部報道によると国土交通省は他メーカーにも調査するように指示したそうです。

また、記者会見ではエコカー減税などの税金や補助金関連も国や自治体への返納についても言及したようですが、燃費不正による燃料代なども含めてユーザーへの補償も全容が解明されるまでには時間がかかりそう。

三菱自動車は、軽自動車とSUV、EV、PHVなどの電動車両に経営資源を集中して投下していましたが、利益率はSUVや電動車両と比べて低いと想像できる軽自動車とはいえ、その影響は絶大でしょう。

ブランド失墜、販売大不振で経営問題に発展した場合、過去のリコール隠しなどの時のように、三菱グループが支えることができるか気になるところ。

現在の大株主は三菱重工業(約12%)、三菱商事(約10%)と2社だけで22%を超え、三菱UFJなど同グループが多くなっています。

今回の不正は、まだ分からないことだらけですが、自動業界再編も含めた問題になる可能性もはらんでいそうです。

(塚田勝弘)

合計62.5万台が不正!三菱自動車工業がekワゴン等軽自動車の認証取得時の不正を公表。日産含め販売停止

三菱自動車工業の軽自動車において、型式認証取得時に不正を働いていたことが同社によって公表されました。

認証取得時の不正が判明したのは、日産とのJVであるNMKVによって開発された『eKワゴン』『eKスペース』と、日産自動車が販売する『デイズ』『デイズルークス』の計4車種(2013年6月から三菱自動車工業が生産)。

合計62.5万台(三菱15.7台、日産46.8台)が生産されたといいます。

不正の内容は、国土交通省へ提出する燃費試験データについて、燃費を実際よりも良く見せるために走行抵抗値をごまかし、燃費がよく見えるようにしていたというもの。

これは、日産が現行モデルを測定したことにより発覚、三菱自動車工業に指摘したことから明らかになったということです。

ひとまず、該当する4車種については生産・販売を停止。日産自動車への補償や、ユーザーへの対応は決定していないとのこと。

また、他の国内向けモデルについても国内法規と異なる試験方法がとられていたことが判明。第三者機関による真相究明が急がれる事態となっています。

(山本晋也)

三菱も認めた!? 新型ソリオ(新型デリカD:2)の高い完成度

スズキからOEM供給されている三菱デリカD:2。ソリオのフルモデルチェンジは昨年夏に行われましたが、OEM版であるデリカD:2もそれに合わせて新型に移行しました。

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とはいっても完全なバッジエンジニアリングで、エンブレムなどをのぞき、ベース車であるスズキ・ソリオと同一の仕様になっています。

三菱の関係者に聞くと、今回の新型ソリオの完成度の高さには感心しているようで、OEM版とはいえ、販売現場でも新型デリカD:2への期待値はかなり高そうです。

なお、ソリオにある純ガソリン仕様の「G」に相当するグレードはデリカD:2にはなく、すべてマイルドハイブリッド搭載モデルになります。

今回、新型ミラージュのプレス試乗会の会場で新型デリカD:2を撮影する機会がありましたので、スズキ・ソリオのおさらいもかねて概要をご紹介します。

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先代のデリカD:2は、2011年に発売され、コンパクトながらも広大な室内空間や積載性の高さ、そしてスライドドアなどにより乗降性にも優れるなど、駐車場所や狭い住宅街での使い勝手が魅力となっていました。

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新型デリカD:2は、全長3710×全幅1625×全高1745mm。新開発の1.2Lエンジンにマイルドハイブリッドシステムを搭載し、2WDは27.8km/L、4WDは23.8km/Lというカタログ燃費を達成しています。

軽自動車よりも約400mm長く、約150mmワイドなだけですが、室内は広々していて子どもが2人いるファミリーでも十分に実用になる荷室空間が残されているほか、後席は荷室側からも容易にスライドできたり、後席を前倒しすればフラットに拡大できたりします。

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さらに、両側スライドドアの乗降性に加えて、前席左右間のウォークスルー、前後席間のセンターウォークスルーも可能など、ミニバン的な使いやすさは健在。

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外観では、標準モデルにはヘッドランプと連動して点灯するLEDイルミネーションランプを組み込んだ大型メッキグリルを採用。カスタムモデルは、LEDヘッドランプ(ハイ/ロービーム、オートレベリング機能付)を上段、LEDポジションランプを下段にハイした2段式として精悍な顔つきになっています。

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ホイールは標準モデルが10本スポークタイプ、カスタムモデルが力強い印象の8本スポークタイプを採用。

広大な内装では、標準モデルがチャコールグレー&ブラックを基調とし、シート生地はブラウン。カスタムモデルはブラック内装で、シートはグレーをベースにダークパープルが配された生地になっています。

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そのほか、ステレオカメラタイプの安全予防装備「e-Assist」を搭載。衝突被害軽減ブレーキ、誤発進抑制機能、車線逸脱警報、ふらつき警報機能などが用意されています。

価格帯は標準モデルの2WDが178万7400円〜206万640円、同4WDが191万3760円〜218万7000円。カスタムモデルの2WDが196万3440円、同4WDが208万9800円です。

(塚田勝弘)