Motor Fan's YEAR 2016

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フォークリフトも燃料電池の時代、日本初の燃料電池フォークリフトが今秋に販売へ

豊田自動織機は、日本初の2.5トン積 燃料電池フォークリフト(FCフォークリフト)をトヨタL&Fカンパニーを通じて今秋から販売開始すると発表しました。

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FCフォークリフトは、稼動時にCO2・NOxを排出しない環境性能と、わずか3分程で燃料の充填が完了する利便性というメリットを持っています。

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このFCフォークリフトを開発した豊田自動織機では、これまで豊田合成・北九州工場、関西国際空港、周南市地方卸売市場で実証実験を重ね、CO2削減効果などを検証してきましたが、今回いよいよFCフォークリフトを本格的に市場投入することになります。

新発売のFCフォークリフトでは、トヨタの燃料電池自動車「MIRAI」と同じ燃料電池セルを使用し、セルの積層枚数を減らしてフォークリフト専用FCシステムを構成しています。水素タンクの圧力は35MPaで、稼働時間は8時間となっています。価格は税抜きで1,400万円です。

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私は、豊田自動織機が2014年5月の「エコ&セーフティ神戸2014」でFCフォークリフトの試作車を展示した際に取材しました。上の写真は、その際の試作車です。試作車の床下に配置されているFCスタックの大きさは弁当箱を大きくした程度の大きさで、予想外のコンパクトさに驚いた記憶があります。

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展示された試作車と今回の市販車の違いは、外部給電の電圧がシステム電圧の48Vから、AC100V(1kW×15時間)に変更されている点で、外部給電の使い勝手を考慮して変更されたものと思われます。

(山内 博・画像:豊田自動織機)

世界初! メルセデスが外部充電可能な燃料電池車「GLC F-CELL」を2017年に発売

メルセデス・ブランドを擁するダイムラーグループが、次世代環境テクノロジーの数々を発表しています。その中でも間もなくやってくる未来として注目されるのが「GLC F-CELL」です。

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長年、燃料電池車の研究に注力しているダイムラー(メルセデス)ですが、CクラスのSUVであるGLCをベースにした燃料電池車の特徴は外部充電(プラグイン)に対応していることにあります。

700気圧の水素タンク(搭載量は約4kg)と従来より3割も小型化したという燃料電池スタックに、外部充電可能な9kWhものリチウムイオンバッテリーをプラスすることにより、水素が手に入らない状態でも50kmの走行を可能としているのです。

燃料電池を含めた航続可能距離は約500km(NEDCモード)、現時点ではプロトタイプということですが、2017年には発売を予定しているというリアリティのあるプラグイン燃料電池車。

コンセプトとしては過去にも存在していましたが、実際に発売を予定しているのは、世界初ということになるとダイムラーはアナウンスしています。

(山本晋也)

東京アールアンドデーが燃料電池小型トラックの技術を開発し、福岡で実証へ

自動車技術の研究・開発会社の東京アールアンドデーは、環境省の技術開発・実証事業で「燃料電池小型トラックの技術開発・実証」事業を行うと、発表しました。

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東京アールアンドデーとグループ会社のピューズは共同で燃料電池トラックの技術開発を行い、車両の基本性能や働く車としての実用性などの検証を経て、普及の基本型となる燃料電池トラックを実現するということです。

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(この画像は東京アールアンドデーのEVです)

実証事業では、福岡市で「下水バイオガス原料による 水素製造時にCo2を排出しないグリーン水素」を用いて、福岡市内のエリア共同輸配送を手がける天神地区共同輸送株式会社(通称:イエローバード、本社:福岡市)と共同で2018年度に実際の配送業務を行い、本事業後の2019年度に燃料電池トラックの量産を目指しています。

(山内 博・画像:東京アールアンドデー)

ホンダの自家用水素ステーションは最新の燃料電池車を満タンにできない!?

ホンダから、燃料電池車「クラリティ フューエルセル」が登場したのと同時に、企業などが自社の燃料電池車に向けた小型水素ステーション「SHS(スマート・ハイドロゲン・ステーション)」も発表されました。

岩谷産業との共同開発によって生み出されたSHSは、工場でユニットを完成させて出荷するほどコンパクトにまとめることで、設置の工期やコストを抑制できるのも特徴。すでにホンダの青山本社ビルをはじめ、地方自治体などでも運用がはじまっています。

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高圧水分解システムにより水電解時に水素を直接高圧化することで、水素ガスを圧縮するためのコンプレッサーをなくしていることも特徴といえるSHSですが、その製造圧力は40MPa、充填圧力は35MPaとなっています。

一方、ホンダ・クラリティ フューエルセルやトヨタMIRAIといった最新の燃料電池車のタンクは、商業水素ステーションのスタンダードとなっている70MPaに対応したもの。

つまり、商業水素ステーションで満タンにしてから、ちょっと走った程度の状態では水素タンク内の圧力が高く、35MPaとなるホンダのSHSでは充填することができないのです。

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おおよその目安としては、最低でもタンクの6割程度まで水素を使った状態からでなければ充填できないといいます。また、充填圧力が低いため、タンク内の残量が少なくても満タンまでは充填できないのも、SHSの仕様となっているのです。

もっとも、高圧充填に対応するにはコストも上がり、ユニットも大きくなる可能性があります。

あくまでもSHSは自社内で数台の燃料電池車を運用しているようなシチュエーションを前提としているため、一日の水素製造能力は1.5kg、充填圧力35MPaを選択したということです。

ちなみに、現在は諸条件を満たせば設置において国から補助金が出るというSHSですが、補助金を考慮しても3000万円〜の設置予算が必要といいますから、まだまだ水素でクルマを動かすというのはハードルが高いと感じさせます。

(写真・文 山本晋也)

燃料電池車に必須の「専用」ナビ。トヨタとホンダで扱いに差があった!?

トヨタから「MIRAI」、そしてホンダから「クラリティ フューエルセル」が登場するなど、水素社会へ向けた燃料電池車のリアルが増しています。

とはいえ、まだまだ水素社会のキーとなるインフラ整備は始まったばかりで、水素ステーションの数は、燃料電池車を運用するには心許ない状況といえます。

電気自動車でも専用ナビで充電ポイントが検索できるようになっているのと同様、燃料電池車には近場の水素ステーションの情報を得ることのできる専用メニューが用意されています。

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こちらの画像はホンダ・クラリティ フューエルセルの8インチワイドディスプレイ・インターナビの水素ステーション情報画面。

自車位置が埼玉県和光市での検索結果で、意外に水素ステーションは近くにあるようにも思えますが、「×」印がついているステーションは営業準備中だったりするので注意が必要です。

とはいえ、このような営業開始に関する情報も随時更新されるというのは、インフラ整備段階においては重要な情報となりそうです。

ちなみに、トヨタの燃料電池車MIRAIにも9インチ画面の専用T-Connectナビが用意され、同様に水素ステーション情報を活用することができます。

両車の違いは、ホンダが専用ナビを標準装備しているのに対して、トヨタは31万3200円のオプション設定としていること。

メーカー希望小売価格はMIRAIが723万6000円、クラリティ フューエルセルは766万円となっていますが、現時点の燃料電池車には必須といえる専用ナビの装着を考慮すると、価格差が縮まることも見逃せないファクターといえそうです。

(写真・文 山本晋也)

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ホンダの燃料電池車「クラリティ フューエルセル」は乗り心地のよさがお値段以上!?
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ホンダの燃料電池車・CLARITY FUEL CELLには、カーボン材料が生きている

ホンダの燃料電池車「CLARITY FUEL CELL(クラリティ フューエル セル)」(以下「クラリティ」)が3月に発売されて以来、最近「クラリティ」に使われている部品や材料についての発表が続いています。

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(画像:ホンダ)今回は東レの炭素繊維材料が「クラリティ」に使われていることが明らかになりました。

東レの発表によると「クラリティ」に採用された炭素繊維材料は、燃料電池スタックの電極基材用カーボンペーパーと、および高圧水素貯蔵タンク用高強度炭素繊維の2つです。

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(画像:東レ)まず、燃料電池スタックの電極基材用カーボンペーパーについては、東レが30年来開発を続けてきたもので、ガス拡散性、耐久性などの要求特性を兼ね備えて、燃料電池スタックの性能向上、省スペース化に貢献している、ということです。

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(画像:東レ)次に高圧水素貯蔵タンクには、東レの高強度炭素繊維 トレカ(登録商標)が使われており、東レでは高圧水素貯蔵タンクの安全性や強度・軽量性を両立することができた、と説明しています。

燃料電池車には、いままでになかった新技術や新しい部品が満載で、これらを開発する部品メーカーや素材メーカーの活躍が目立っています。

(山内 博)

2025年度までに320ヵ所へ!経産省が水素ステーション展開促進で行程表を改定

経産省が3月16日、FCV(燃料電池車)に燃料を供給する水素ステーションを2020年度に160カ所、2025年度までに現在の4倍となる320箇所に増やす計画案をまとめたそうです。

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当初、2015年度内に全国4大都市で100ヵ所の水素ステーションを展開する計画でしたが、開業に漕ぎ着けるのは80ヵ所に留まる見通し。

HONDA_CLARITY(出展 HONDA)

その背景には、水素取扱いに関する厳しい安全基準を強いていることから、設置費用が通常のガソリンスタンドの5倍(約5億円)かかるという課題があります。

そこで経産省は、補助金により企業の活動を後押しするとともに、コスト低減が見込める機材調達先の規制緩和や、運営費の低減に向けた「セルフ式充填」の解禁、さらには大型トラックの荷台部に水素充填装置を積んだ「移動式スタンド」などの普及を促進するそうです。

HONDA_CLARITY(出展 HONDA)

一方、FCVの車両価格についても、2025年を目処に普及価格帯(200万円台)にまで引き下げるべく、トヨタ、ホンダ以外のメーカーからのFCV参入に向けて研究開発を支援、販売台数拡大に繋げる考え。

新聞報道によると同省は水素利用拡大に向けて行程表を改訂、FCVの販売台数を2025年までに20万台、2030年までに80万台の普及を目指す数値目標を設定した模様。

政府は2020年に開催される東京五輪で世界に向けて水素社会実現に向けた取組みをアピールするとともに、その活動に弾みをつけたい考えで、行程表改定もそうした一連の流れの線上にあるようです。

Avanti Yasunori

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ホンダの燃料電池車は「軽自動車のエンジン」と同等のバッテリーを積む?

ホンダから登場した燃料電池車「クラリティ フューエルセル」は、高圧タンクに充填された水素を使い、FCスタックによって発電した電気で走る電動車両です。

3分で満充填できるという水素タンクは、航続可能距離750kmを誇る141L(約5kg)の容量で、ミリ波レーダーとカメラを使った先進安全システム「ホンダセンシング」を搭載しているのも最先端のクルマらしいといえそうです。

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さて、そんなホンダ・クラリティ フューエルセルのモーター最高出力は130kWですが、FCスタックの最高出力は103kWにとどまっています。FCスタックで発電した電気でモーターを動かすという流れのはずなのに、発電能力よりも駆動の最高出力が大きいというのはあり得ないことです。

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その点について、ホンダのエンジニアに質問してみると「足りないぶんはバッテリーから電力を送っています。燃料電池とバッテリーのハイブリッドにより最高出力に達します」ということでした。

では、クラリティ フューエルセルの前席床下に搭載されるリチウムイオンバッテリーは、それだけの性能を持っているのでしょうか。

スペックについては、総電力量・最高出力ともに非公開ということですが、前述のとおりであれば、FCスタックがフル稼働しているとして、少なくとも27kWの出力でなければモーターの最高出力には届きません。

出力のバッファとして活用されるバッテリー、その余裕を考えると出力が27kWよりも大きいことが予想されます。

詳細なスペックは非公開ですが、軽自動車のエンジンと同等の出力を持つ、というウワサも聞こえてきます。ちなみに、ホンダの軽自動車「N-BOX」が積むNAエンジンの最高出力は43kW。クラリティ フューエルセルはバッテリーだけで、それに近い出力を可能としているのでしょうか?

(文:山本晋也/写真:小林和久)

FCVを2030年までに80万台普及!エネ庁が戦略改定

一昨年12月、トヨタ自動車が世界に先駆けて水素燃料で発電しながらモーターで走行する燃料電池車(FCV)「MIRAI」の量産をスタートさせました。

TOYOTA_MIRAI(出展 TOYOTA )

今年3月10日にはホンダが独自開発したFCV「クラリティ」のリース販売を開始するとともに、17日に第1号車を経産省に納車、来秋には一般販売を開始するとしています。

HONDA_CLARITY(出展 HONDA)

こうした状況を受け、経産省資源エネルギー庁が自動車メーカーや水素を供給するエネルギー業界、学識者などを交えた有識者会議を開催、「水素・燃料電池戦略ロードマップ」の改定内容をまとめました。

国内で500台程度の普及に留まっているFCVについて、2020年までに約4万台、2025年までに約20万台、2030年までに約80万台に増やす数値目標を設定したそうです。

また今年の3月末時点で目標(100ヵ所)の8割に留まっている水素ステーションについても2020年度までに約160カ所、2025年度には約320カ所まで拡大する計画。

TOYOTA_MIRAI(出展 TOYOTA)

加えて、FCVの車両価格が現状700万円台と高額なことから、燃料電池のコストを2020年までに半減、2025年までには25%に圧縮することで、普及価格帯(200万円台)にまで引き下げる考えのようです。

これにより販売台数が増えることで、水素の使用量が増え、水素ステーションの稼働率が上がり、ステーション数についても更なる拡大が期待できそうです。

Avanti Yasunori
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