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ホンダが水素インフラ不要の高圧水電解型「70MPa スマート水素ステーション」の実証実験を開始

ホンダは、太陽電池パネルの電力で水を電気分解して高圧水素を製造できる充填圧力70MPa(メガパスカル)の「70MPa スマート水素ステーション(70MPa SHS)」の実証実験を東京都江東区青海で開始したと発表しました。

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70MPaの高圧水素を製造できる水電解型水素製造ステーションは世界初(ホンダ調べ)となります。

この実証実験は、環境省のCO2排出削減対策を強化・誘導する実証事業として、太陽光エネルギー由来の水素を製造する70MPa小型水素ステーションを実際に運用した場合の効果を実証するために実施されます。

70MPa SHSの特徴は、①水素ステーションまで水素を輸送するインフラが不要、②70MPaの高圧で、市販されているFCV(燃料電池自動車)を満タンにできる、という点です。

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この70MPa SHSを市街地に設置して、ホンダのFCV「クラリティ フューエル セル」と可搬型外部給電器「Power Exporter 9000」を使用すれば、FCVが走行するときのCO2を削減できるとともに、停電時にはFCVを家庭やオフィスの発電設備として活用することができます。

今回の実証実験を通じてホンダは、FCVが自動車として走行するときにCO2排出量を削減できるだけではなく、駐車時には発電設備として機能することをアピールして、FCVの普及を推進するねらいがあるようです。

(山内 博・画像:ホンダ)

ホンダのFCV「クラリティ フューエル セル」がEPA評価で航続距離589kmを達成!

ホンダが年末に米国に投入予定のFCV(燃料電池車)「クラリティ フューエル セル」が、EPA(米国環境保護庁)による評価で航続距離366マイル(約589km)を達成したそうです。

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テスラ「モデルS P100D」は315マイル(約507km)、トヨタ「MIRAI」は312マイル(約502km)となっており、ホンダによれば米国で販売されている電動車の中で最高の航続距離としています。

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「クラリティ フューエル セル」ではFCスタック(燃料電池本体)をV6エンジン並みにコンパクト化することでエンジンルーム内に搭載、5名がゆったりと乗車できるキャビンを実現しているのが特徴です。

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同社は水素ステーション数が多いカリフォルニア州で年内にリース販売(500ドル/月)を予定しており、燃料となる水素は無償提供されるようです。

2017年には同モデルのシリーズ車として、PHVやピュアEVが追加される模様で、2050年を目処に、CO2企業総排出量50%減を目指すホンダの今後の電動化戦略が注目されます。

Avanti Yasunori・画像:HONDA)

【関連記事】

ホンダがFCV「クラリティ」で目指したのは「普通に使えるクルマ」
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ホンダが燃料電池車「クラリティ フューエル セル 」を発売開始!
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ホンダから「FCV」登場、温室効果ガス削減に寄与!
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「COP21」温室効果ガス削減に向けてFCVへの期待上昇!
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電通の調査で「FCV」が2016年有望商品ランキング首位に!
http://clicccar.com/2015/11/30/341334/

【関連リンク】

Honda Clarity
https://automobiles.honda.com/clarity

EPA(Environmental Protection Agency)
https://www.epa.gov/fuel-economy

ホンダの自家用水素ステーションは最新の燃料電池車を満タンにできない!?

ホンダから、燃料電池車「クラリティ フューエルセル」が登場したのと同時に、企業などが自社の燃料電池車に向けた小型水素ステーション「SHS(スマート・ハイドロゲン・ステーション)」も発表されました。

岩谷産業との共同開発によって生み出されたSHSは、工場でユニットを完成させて出荷するほどコンパクトにまとめることで、設置の工期やコストを抑制できるのも特徴。すでにホンダの青山本社ビルをはじめ、地方自治体などでも運用がはじまっています。

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高圧水分解システムにより水電解時に水素を直接高圧化することで、水素ガスを圧縮するためのコンプレッサーをなくしていることも特徴といえるSHSですが、その製造圧力は40MPa、充填圧力は35MPaとなっています。

一方、ホンダ・クラリティ フューエルセルやトヨタMIRAIといった最新の燃料電池車のタンクは、商業水素ステーションのスタンダードとなっている70MPaに対応したもの。

つまり、商業水素ステーションで満タンにしてから、ちょっと走った程度の状態では水素タンク内の圧力が高く、35MPaとなるホンダのSHSでは充填することができないのです。

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おおよその目安としては、最低でもタンクの6割程度まで水素を使った状態からでなければ充填できないといいます。また、充填圧力が低いため、タンク内の残量が少なくても満タンまでは充填できないのも、SHSの仕様となっているのです。

もっとも、高圧充填に対応するにはコストも上がり、ユニットも大きくなる可能性があります。

あくまでもSHSは自社内で数台の燃料電池車を運用しているようなシチュエーションを前提としているため、一日の水素製造能力は1.5kg、充填圧力35MPaを選択したということです。

ちなみに、現在は諸条件を満たせば設置において国から補助金が出るというSHSですが、補助金を考慮しても3000万円〜の設置予算が必要といいますから、まだまだ水素でクルマを動かすというのはハードルが高いと感じさせます。

(写真・文 山本晋也)

燃料電池車に必須の「専用」ナビ。トヨタとホンダで扱いに差があった!?

トヨタから「MIRAI」、そしてホンダから「クラリティ フューエルセル」が登場するなど、水素社会へ向けた燃料電池車のリアルが増しています。

とはいえ、まだまだ水素社会のキーとなるインフラ整備は始まったばかりで、水素ステーションの数は、燃料電池車を運用するには心許ない状況といえます。

電気自動車でも専用ナビで充電ポイントが検索できるようになっているのと同様、燃料電池車には近場の水素ステーションの情報を得ることのできる専用メニューが用意されています。

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こちらの画像はホンダ・クラリティ フューエルセルの8インチワイドディスプレイ・インターナビの水素ステーション情報画面。

自車位置が埼玉県和光市での検索結果で、意外に水素ステーションは近くにあるようにも思えますが、「×」印がついているステーションは営業準備中だったりするので注意が必要です。

とはいえ、このような営業開始に関する情報も随時更新されるというのは、インフラ整備段階においては重要な情報となりそうです。

ちなみに、トヨタの燃料電池車MIRAIにも9インチ画面の専用T-Connectナビが用意され、同様に水素ステーション情報を活用することができます。

両車の違いは、ホンダが専用ナビを標準装備しているのに対して、トヨタは31万3200円のオプション設定としていること。

メーカー希望小売価格はMIRAIが723万6000円、クラリティ フューエルセルは766万円となっていますが、現時点の燃料電池車には必須といえる専用ナビの装着を考慮すると、価格差が縮まることも見逃せないファクターといえそうです。

(写真・文 山本晋也)

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ホンダの燃料電池車「クラリティ フューエルセル」は乗り心地のよさがお値段以上!?
http://clicccar.com/2016/05/02/369443/

ホンダの燃料電池車「クラリティ フューエルセル」は乗り心地のよさがお値段以上!?

まずは官庁や企業などへのリーフ販売から市販のはじまったホンダの燃料電池車「クラリティ フューエルセル」に乗ることができました。

すでに同じプラットフォームを使った電気自動車やプラグインハイブリッドカーの開発が進んでいることが北米では発表されていますが、やはり圧縮水素を化学反応させ電気を起こしてモーターで駆動する燃料電池車は、テクノロジー面でのイメージリーダーであることは間違いありません。

メーカー希望小売価格(参考価格)が766万円というのも、NSXの国内販売が始まるまでは価格面でのフラッグシップともいえます。

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そして、フラッグシップ&テクノロジーリーダーであっても、ホンダの思想に変わりはありません。

メカニズムを凝縮して、乗員スペースを最大にとるというM・M思想(「メカ・ミニマム」、「マン・マキシマム」に由来するホンダのクルマづくりにおける基本思想)は、燃料電池車においても重視されています。

これまでホンダの生み出してきた燃料電池車は燃料電池スタックが、フロア下を占めていたり、センターコンソール内に収められていたりしましたが、ついにフロントフード下に「昇圧コンバーター、燃料電池スタック、駆動モーター&ディファレンシャル」を三階建て構造として収めることに成功。量産燃料電池車としては初めて5人乗りを実現したと胸を張ります。

そうした小型化に効いているのが世界で初めてダイオードやMOS-FETにSiCをフル採用することで小さくできた昇圧コンバーターや従来比で33%も小さくなった燃料電池スタックといったM・M思想による技術といいます。

とはいえ、燃料電池スタックなどはまだまだ生産性が厳しく、2台/日程度の量産にとどまってしまうということです。

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ボディサイズでいうとアコードクラスのセダンといえる「クラリティ」は、ホンダの燃料電池システムが持つ湿度コントロールや温度管理の巧みさにより、開口部も小さく、空力ボディに仕上げられています。

空気抵抗を減らすために前後のタイヤで起きる乱流を整えるエアカーテンやリヤタイヤはフェンダーを伸ばしてカバーしているほど。

こうした外観の印象から、またホンダというブランドのイメージから、さぞスポーティな燃料電池車になっているのだと思いきや、意外にもジェントルな乗り心地に感じられたのです。

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クラリティもそうですが多段変速機を持たないモーター駆動の電動車両というのは、まさしく段付き感のないスムースな走りがセールスポイントとなります。さらに車両重量が1.9t近いという重さもあってか、重厚でフラットな乗り心地を実現しているのです。

とはいえ、モーターをレスポンス良く働かせるだけのリニアな電気供給ができているので、加速感に重さのネガは感じません。

たとえるなら、大排気量のV8エンジンと多段ATを搭載したFWDサルーンといった印象を、運転していても後席に座ったときにも感じたのでした。

だからといってホンダがスポーティさを忘れているわけではありません。

燃料電池車ながら「スポーツ」モードを持つクラリティ。その「スポーツ」ボタンをプッシュすれば、アクセルペダルだけで加減速をコントロールしやすくなり、これまた車重を感じさせないリズミカルな動きを味わえます。

手応えのあるデュアルピニオン電動パワーステアリングや、高圧水素タンクを支える強固なサブフレームからアームを生やしたリヤ・マルチリンク式サスペンションといったシャシーに投入されたメカニズムからもハンドリングへのこだわりが感じられます。

燃料電池車としての完成度だけでなく、内燃機関車の目指す理想的な面も持つ「クラリティ フューエルセル」。価格だけでなく、乗り味においても、現時点におけるホンダの頂点であるといえそうです。

(写真・文 山本晋也)

ホンダ「CLARITY FUEL CELL」に独・ランクセスの軽量化素材が採用

ドイツの特殊化学品メーカーのランクセス(LANXESS)は、ホンダが本年3月より販売を開始した新型の燃料電池自動車(以下、FCV)「CLARITY FUEL CELL(クラリティ フューエルセル)」に、自社の軽量化素材が採用されたことを発表しました。

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上図で車体後方の緑色部分に示すワンショットハイブリッド成形リアバンパービームという部品に、ランクセスの軽量化素材が採用されています。

このワンショットハイブリッド成形リアバンパービームには、熱可塑性コンポジットシート「テペックス」(登録商標)と、プラスチック「デュレタン」(登録商標)が、樹脂とガラス繊維からなる複合素材GFRTP(Glass Fiber Peinforced Thrmo-Plastics)の材料として使用されています。

ホンダでは、GFRTPによるワンショットハイブリッド成形リアバンパービームは世界初になる、としています。

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ランクセス日本法人の代表取締役社長である辻英男氏は、「ホンダの新型FCVのリアバンパーに、ランクセスの『テペックス』および『デュレタン』が採用されたことを心より光栄に思います」とコメントしています。

またランクセスのハイパフォーマンスマテリアルズ シニアエンジニアの豊田徳視氏は、「このたび新たに開発された部品は、ランクセスの『テペックス』と『デュレタン』による世界初のワンショットハイブリッド成形リアバンパービームというだけでなく、当社のコンポジットシート『テペックス』を使用したアジア太平洋地区で初めての量産車モデルへの採用事例となります」と強調しました。

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ホンダのFCV「クラリティ フューエルセル」には、東レの炭素素材が使われていることが先日発表されました。それに続いて今回の発表で、いままでホンダの量産車に採用されていないドイツ・ランクセスの軽量化素材が採用されたことが明らかになりました。

今後、このように自動車の部品供給網(サプライチェーン)がますます国際化・広域化することが予想されます。

(山内 博・画像:ランクセス)

ブリヂストン「エコピア」がホンダ「CLARITY FUEL CELL」の新車装着タイヤに

ブリヂストンを代表する省燃費タイヤの「ECOPIA(エコピア)」が、ホンダの燃料電池車「CLARITY FUEL CELL」に新車装着タイヤとして採用されました。

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今回装着されるのは「ECOPIA EP160」で、タイヤサイズは235/45R18 94W。

安全性能や操縦安定性などタイヤに求められる多様な性能を高次元で維持しながら、FCVにふさわしく、転がり抵抗の低減も追求されていて、ホンダ「CLARITY FUEL CELL」が追求している性能のひとつである1回の水素充填による走行距離の向上に貢献しているとしています。

ECOPIAFCVに限らず燃費や航続可能距離を左右するのは、パワートレーンをはじめ、車両重量や空力性能など多様な要素がありますが、タイヤも大きな要素なのは間違いありません。

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今回の新車装着タイヤの「ECOPIA EP160」は、転がり抵抗の低減だけでなく、タイヤに求められる乗り心地や静粛性能も含めて高次元で両立させることにより、「CLARITY FUEL CELL」の魅力を足元から支えるタイヤとブリヂストンはアピールしています。

(塚田勝弘)

ブルーエナジー製リチウムイオン電池がホンダ・CLARITY FUEL CELLに搭載

ホンダの燃料電池自動車(FCV)「CLARITY FUEL CELL」の部品調達に関するニュースが相次いでいますが、今回はアシスト/回生用バッテリーの調達先が明らかになりました。

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ホンダとGS・ユアサが出資するブルーエナジー(京都府福知山市)製のリチウムイオン電池が、ホンダの「クラリティ フューエル セル」に搭載されていることをGS・ユアサが発表しました。

「クラリティ フューエル セル」に搭載されている新型リチウムイオン電池「EHW5」は、従来品より17%軽量化と7%小型化しながら、同等以上の容量・出力性能と耐久・安全性能を実現している、ということです。

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ブルーエナジーのリチウムイオン電池は2011年から量産を開始し、2012年9月発売のホンダ「CR-Z」から今回のホンダ「クラリティ フューエル セル」まで10車種に搭載されています。

(山内 博・画像:GS・ユアサ)

ホンダの燃料電池車・CLARITY FUEL CELLには、カーボン材料が生きている

ホンダの燃料電池車「CLARITY FUEL CELL(クラリティ フューエル セル)」(以下「クラリティ」)が3月に発売されて以来、最近「クラリティ」に使われている部品や材料についての発表が続いています。

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(画像:ホンダ)今回は東レの炭素繊維材料が「クラリティ」に使われていることが明らかになりました。

東レの発表によると「クラリティ」に採用された炭素繊維材料は、燃料電池スタックの電極基材用カーボンペーパーと、および高圧水素貯蔵タンク用高強度炭素繊維の2つです。

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(画像:東レ)まず、燃料電池スタックの電極基材用カーボンペーパーについては、東レが30年来開発を続けてきたもので、ガス拡散性、耐久性などの要求特性を兼ね備えて、燃料電池スタックの性能向上、省スペース化に貢献している、ということです。

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(画像:東レ)次に高圧水素貯蔵タンクには、東レの高強度炭素繊維 トレカ(登録商標)が使われており、東レでは高圧水素貯蔵タンクの安全性や強度・軽量性を両立することができた、と説明しています。

燃料電池車には、いままでになかった新技術や新しい部品が満載で、これらを開発する部品メーカーや素材メーカーの活躍が目立っています。

(山内 博)

エイチワン、燃料電池向け金属セパレーターの量産を開始

ホンダ系の車体骨格メーカーのエイチワンは、ホンダ の新型燃料電池自動車「クラリティ フューエル セル」に搭載される燃料電池スタック(以下、FCスタック)の「金属セパレーター」の量産を開始した、と発表しました。

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燃料電池自動車は、FCスタック内で水素と酸素を化学反応させることによって発電した電気でモーターを動かしており、FCスタックの小型化・軽量化・高効率化が望まれています。

ホンダの「クラリティ フューエル セル」では、FCスタックを小型化できたためにボンネットの下にFCスタックを配置して、5人乗りの車内空間を確保できました。

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FCスタックは、水素と酸素が化学反応を起こす膜電極接合体(MEA)をセパレーターで挟んだ「セル」が何百にも重なってできています。セパレーターは、水素や酸素、冷却に必要な冷媒を流すための微細な流路が設けられ、セパレーター自体が発生した電気の通り道にもなるため、セパレーターには薄さと微細な加工形状を施すことができるプレス加工技術が要求されます。

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エイチワンでは、1台のFCスタックで数百枚が必要となる薄いステンレス製の金属セパレーターの大量生産するため、自動車部品の生産で培ってきた精密打ち抜き加工技術(ファインブランキング)と精密金型の製作技術を応用して、セパレーター特有の緻密な形状をプレス加工で安定的に生産する技術を開発した、ということです。

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FCスタックのような未知の装置を量産するためには、車体の骨格部材をプレス加工するために長年にわたって蓄えられてきた技術が必要であることがよくわかります。

(山内 博・画像:エイチワン)

2025年度までに320ヵ所へ!経産省が水素ステーション展開促進で行程表を改定

経産省が3月16日、FCV(燃料電池車)に燃料を供給する水素ステーションを2020年度に160カ所、2025年度までに現在の4倍となる320箇所に増やす計画案をまとめたそうです。

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当初、2015年度内に全国4大都市で100ヵ所の水素ステーションを展開する計画でしたが、開業に漕ぎ着けるのは80ヵ所に留まる見通し。

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その背景には、水素取扱いに関する厳しい安全基準を強いていることから、設置費用が通常のガソリンスタンドの5倍(約5億円)かかるという課題があります。

そこで経産省は、補助金により企業の活動を後押しするとともに、コスト低減が見込める機材調達先の規制緩和や、運営費の低減に向けた「セルフ式充填」の解禁、さらには大型トラックの荷台部に水素充填装置を積んだ「移動式スタンド」などの普及を促進するそうです。

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一方、FCVの車両価格についても、2025年を目処に普及価格帯(200万円台)にまで引き下げるべく、トヨタ、ホンダ以外のメーカーからのFCV参入に向けて研究開発を支援、販売台数拡大に繋げる考え。

新聞報道によると同省は水素利用拡大に向けて行程表を改訂、FCVの販売台数を2025年までに20万台、2030年までに80万台の普及を目指す数値目標を設定した模様。

政府は2020年に開催される東京五輪で世界に向けて水素社会実現に向けた取組みをアピールするとともに、その活動に弾みをつけたい考えで、行程表改定もそうした一連の流れの線上にあるようです。

Avanti Yasunori

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ホンダの燃料電池車は「軽自動車のエンジン」と同等のバッテリーを積む?

ホンダから登場した燃料電池車「クラリティ フューエルセル」は、高圧タンクに充填された水素を使い、FCスタックによって発電した電気で走る電動車両です。

3分で満充填できるという水素タンクは、航続可能距離750kmを誇る141L(約5kg)の容量で、ミリ波レーダーとカメラを使った先進安全システム「ホンダセンシング」を搭載しているのも最先端のクルマらしいといえそうです。

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さて、そんなホンダ・クラリティ フューエルセルのモーター最高出力は130kWですが、FCスタックの最高出力は103kWにとどまっています。FCスタックで発電した電気でモーターを動かすという流れのはずなのに、発電能力よりも駆動の最高出力が大きいというのはあり得ないことです。

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その点について、ホンダのエンジニアに質問してみると「足りないぶんはバッテリーから電力を送っています。燃料電池とバッテリーのハイブリッドにより最高出力に達します」ということでした。

では、クラリティ フューエルセルの前席床下に搭載されるリチウムイオンバッテリーは、それだけの性能を持っているのでしょうか。

スペックについては、総電力量・最高出力ともに非公開ということですが、前述のとおりであれば、FCスタックがフル稼働しているとして、少なくとも27kWの出力でなければモーターの最高出力には届きません。

出力のバッファとして活用されるバッテリー、その余裕を考えると出力が27kWよりも大きいことが予想されます。

詳細なスペックは非公開ですが、軽自動車のエンジンと同等の出力を持つ、というウワサも聞こえてきます。ちなみに、ホンダの軽自動車「N-BOX」が積むNAエンジンの最高出力は43kW。クラリティ フューエルセルはバッテリーだけで、それに近い出力を可能としているのでしょうか?

(文:山本晋也/写真:小林和久)

ホンダ「CLARITY FUEL CELL」とトヨタ「MIRAI」の違いとは?

世界初の量産型FCVとして市販化されたトヨタ「MIRAI」に続き、発売されたホンダ「CLARITY FUEL CELL」。

「CLARITY FUEL CELL」の導入初年度は、官公庁や企業へのリース販売になるなど、「FCXクラリティ」など従来のモデルと同じ販売手法になっているのがMIRAIとの目立った違いになります。

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CLARITY FUEL CELLはその後、一般向けに販売されますが、ホンダの慎重な姿勢と取るのか、あるいは現実的な戦略と見るかは分かれそう。

それはさておき、トヨタMIRAIとホンダCLARITY FUEL CELLのどちらを買うか、迷うことができる状況になるのは間違いありません。
CLARITY FUEL CELLを見ていくと、取り回しや車内空間、荷室容量を左右するボディサイズは全長4915×全幅1875×全高1480mm、走りや燃費(電費? 航続可能距離)を左右しそうな車両重量は1890kg。

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一方のMIRAIは、全長4890×全幅1815×全高1535mmで、車両重量は1850kg。MIRAIの方がCLARITY FUEL CELLよりも25mm短く、60mm狭く、55mm高くなっています。

mir1411_09_sなお、最小回転半径は両車ともに5.7mで、単純にサイズが小さい分、狭い道などでのすれ違いなどはMIRAIの方がしやすそう。

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パッケージングでは「5人乗りを実現」したとホンダが胸を張りますが、CLARITY FUEL CELLの方が全高は55mmも低く、頭上空間を含めて長距離移動時などの快適性にどれだけ差が出るか気になるところ。2人掛けのMIRAIはフロアの高さこそ意識させられるもの大人でもまずまず快適に座れます。

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荷室容量はCLARITY FUEL CELLが394L、MIRAIは361Lで、ともに9.5インチのゴルフバッグが3セット積めるとしています。

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MIRAIよりも全長と全幅に余裕があるうえに、燃料電池パワートレーン(FC昇圧コンバーター、燃料電池スタック、駆動ユニット)の一体化により、これらをボンネットフードに収めたCLARITY FUEL CELLのパッケージングの利点でしょうか。

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パワートレーンを見ていくと、CLARITY FUEL CELLのモーターは、130kW/4501-9028rpm(最高回転数:13,000rpm)という高出力が自慢で、最大トルクは300Nm/0-3500rpm。MIRAIは、レクサスRX450hのフロント用と同じ「4JM」型のモーターを使い、113kW、335Nmというスペック。

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FCスタック(燃料電池スタック)の最高出力は、CLARITY FUEL CELLが103kW、MIRAIが114kWとなっています。なお最高速は、CLARITY FUEL CELLが165km/h、MIRAIは175km/h。

そのほか大きな違いとしては、MIRAIがニッケル水素バッテリー(6.5Ah)を搭載するのに対し、CLARITY FUEL CELLはリチウムイオン電池(容量未公表)となっています。

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水素タンクはCLARITY FUEL CELがアルミライナー製水素タンクで、容積は141L、水素貯蔵量は約5.0kgで、充填時間は約3分、航続可能距離は約750kmです。対するMIRAIは、容積が122.4(前方60.0/後方62.4)Lで、充填時間は約3分、航続可能距離は約650kmとされています。

安全装備では、CLARITY FUEL CELLが「Honda Sensing」を標準装備し、衝突被害軽減ブレーキや渋滞追従機能付ACCなどを搭載。MIRAIもプリクラッシュセーフティシステム(ミリ波レーダー)、ブレーキ制御機能付レーダークルーズコントロールなどを標準装備。

最後に価格ですが、CLARITY FUEL CELLは766万円、MIRAIは723万6000円となっています。
(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

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ホンダ「CLARITY FUEL CELL」の特徴とは?
http://clicccar.com/2016/03/19/359901/

ホンダ「CLARITY FUEL CELL」の特徴とは?

FCV(燃料電池車)のほか、EVやPHVなどの多様なエコカーを開発しているホンダ。ホンダでは、FCVのカギは「FCスタック(燃料電池スタック)の小型化・高性能化」にあるとしています。

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「CLARITY FUEL CELL(クラリティ フューエル セル)」では、従来モデル比で33%小型化し、出力密度は世界トップレベルの3.1kW/Lを実現。また、燃料電池パワートレーン(FC昇圧コンバーター、燃料電池スタック、駆動ユニット)の一体化によりボンネット内に収まり、パッケージングの自由度が高まり5人乗りを実現しました。

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燃料電池スタックは、ガスの拡散性を高めることにより1セルあたりの発電性能を1.5倍とし、容積出力密度を60%向上。その結果、セル数を30%削減し、セル単体の薄型化と合わせ、容積比33%の小型化を達成。

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燃料電池の小型化には、電動ターボエアコンプレッサーの採用による空気(酸素)システムの供給システムもあるとしています。
小さな燃料電池スタックで大きな電力を得るには、エンジン車におけるターボのように圧力を高めて空気の供給量を増やす必要があり、「クラリティ FUEL CELL」には高圧縮比・高流量、軽量・コンパクト、静粛性などに優れた新開発の電動ターボ型エアコンプレッサーが搭載されています。

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小型ながら従来モデルに対し1.7倍の供給圧力を発揮し、燃料電池スタックの発電性能向上に貢献しているそう。

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小型化ではそのほかにも、駆動ユニットの高出力化、コンパクト化も大きく、ボンネットフード下の格納に利いています。

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場所を取る高圧水素タンクには、70MPaの充填圧力に対応し、水素透過ゼロを達成したアルミライナー製水素タンクを採用され、従来の約4.0kgから約5.0kgに水素貯蔵量が増加。

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そのほかにも、ホンダらしい鋭さを感じさせるエクステリアや「ぬくもりと落ち着き」を演出したというインテリアなど「見た目はスポーティ、中は快適」という内・外装もアピールポイントといえそうです。

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パッケージングでは、5人乗りのほか9.5型ゴルフバッグが3セット積載できるトランクも自慢。394Lの荷室容量はCセグメント並ですが、日常ユースなら大きな不満はなさそう。

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安全装備では、ミリ波レーダーと単眼カメラによるホンダ最新の「Honda Sensing」が搭載され、衝突軽減ブレーキや渋滞追従機能付ACCのほか、車線維持支援システム、誤発進抑制機能などを用意。

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給電関連では、一般家庭のおよそ 7日分の電力を供給できる可搬型外部給電器の「POWER EXPORTER 9000」を、118万円(参考価格、消費税込み)で設定しているのも特徴です。

(文/塚田勝弘・写真/小林和久)

FCVを2030年までに80万台普及!エネ庁が戦略改定

一昨年12月、トヨタ自動車が世界に先駆けて水素燃料で発電しながらモーターで走行する燃料電池車(FCV)「MIRAI」の量産をスタートさせました。

TOYOTA_MIRAI(出展 TOYOTA )

今年3月10日にはホンダが独自開発したFCV「クラリティ」のリース販売を開始するとともに、17日に第1号車を経産省に納車、来秋には一般販売を開始するとしています。

HONDA_CLARITY(出展 HONDA)

こうした状況を受け、経産省資源エネルギー庁が自動車メーカーや水素を供給するエネルギー業界、学識者などを交えた有識者会議を開催、「水素・燃料電池戦略ロードマップ」の改定内容をまとめました。

国内で500台程度の普及に留まっているFCVについて、2020年までに約4万台、2025年までに約20万台、2030年までに約80万台に増やす数値目標を設定したそうです。

また今年の3月末時点で目標(100ヵ所)の8割に留まっている水素ステーションについても2020年度までに約160カ所、2025年度には約320カ所まで拡大する計画。

TOYOTA_MIRAI(出展 TOYOTA)

加えて、FCVの車両価格が現状700万円台と高額なことから、燃料電池のコストを2020年までに半減、2025年までには25%に圧縮することで、普及価格帯(200万円台)にまで引き下げる考えのようです。

これにより販売台数が増えることで、水素の使用量が増え、水素ステーションの稼働率が上がり、ステーション数についても更なる拡大が期待できそうです。

Avanti Yasunori
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ホンダのスマート水素ステーションは燃料電池車の普及を後押しする

ホンダが新しい燃料電池車「クラリティ フューエルセル」を発表しました。

初年度は200台程度のリース販売を目標としているこのクルマは、過去にホンダがリース販売していきた燃料電池車(FCX、FCXクラリティ)よりも高圧な70MPaの圧縮水素タンクを採用しているのもニュースのひとつ。

20160310Honda Clarity Fuel Cell001

これにより、トヨタMIRAIと同じ70MPaとなり、水素ステーションの設備としては共通化したわけですが、いずれにしても高圧水素のインフラ整備はまだまだ普及フェイズというには程遠い状況です。

電気自動車であれば、急速充電器がなくとも普通充電用のコンセントを設置すれば使う場所を選ばないといえますが、燃料電池車では水素インフラがなくては動かすことができません。

事実、常設の水素ステーションは北は埼玉県から南は福岡(移動式を除く)まで80か所程度しかなく、燃料電池車を運用できるエリアは限られます。

20160310Honda Clarity Fuel Cell006

そこで、ホンダは燃料電池車「クラリティ フューエルセル」の発売にあわせて、「SHS(スマート水素ステーション)」を発表しています。

水素製造大手の岩谷産業と共同開発したというSHSは、高圧水電解システムを搭載した小型のパッケージ型水素ステーション。一日の製造能力は3~4台分といいますから、商用ステーションとしては能力不足だということですが、現在の普及台数であれば十分にカバーできるともいえます。

設置場所は許可の面から用途地域を選ぶといいますが、たとえば複数台を運用する企業が自社敷地内に設置するだとか、ディーラー(販売店)に設置するといった使い方を想定している水素供給ソリューションなのです。

いわゆる商業ステーションの隙間を埋めることで、燃料電池車の運用に困らないよう、ユーザーをインフラ面からサポートするというわけです。

もともと、ホンダは燃料電池車を開発している初期段階から、こうしたパーソナルな水素ステーションの研究に熱心で、太陽光発電を利用した水素ステーションの実験もしていました。

今回発表されたSHSについても、再生可能エネルギーを使うことで、燃料電池車の運用レベルでゼロ・エミッションとすることが期待されています。

(写真:小林和久 文:山本晋也)

ホンダが燃料電池車「クラリティ フューエル セル 」を発売開始! 価格は766万円

ホンダが3月10日、独自開発した燃料電池車「クラリティ フューエル セル」の国内リース販売を開始しました。価格は766万円です。

HONDA_CLARITY

ガソリン車と同等の使い勝手とFCVならではの魅力を高次元で融合、搭載している燃料電池スタックは、従来に比べて33%の小型化を図りながら、出力は従来比で約60%の向上を実現しています。

トヨタ「MIRAI」との違いは、パワートレインをV6エンジン並みにコンパクト化してフード内に集約した点で、大人5人が快適に座れるキャビンスペースを確保しています。

HONDA_CLARITY

これにより、一つのプラットフォームでクーペや5ドアハッチバック、SUVなど多彩なバリエーション展開が容易になるという訳です。

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バッテリーはボディー中央下部、高圧水素タンクは後部座席の下とトランク部分に収納、FCスタックのスペックは「MIRAI」とほぼ同等ながら、モーターの最高出力は113kWに対して130kWに高められています。

HONDA_CLARITY

1回当たりの水素充填時間は3分程度と、ガソリン車と変わらない使い勝手を実現しており、航続距離はJC08モードで「MIIRAI」の650kmを上回る750km以上を誇ります。

 

また、一般家庭のおよそ7日分の電力を供給することができる外部給電器「Power Exporter 9000」を組み合わせることで、「走る電源」として災害時などにクルマが作る電力をコミュニティに提供することが可能。

HONDA_CLARITY

「クラリティ」フューエル セルは自治体や企業などにむけてリース販売を行い、市場における製品の使用状態やユーザーの多様な意見・要望を収集した後に一般販売を開始する予定です。

年内には米国などでも月額500ドル以下でリース販売を開始する模様です。

トヨタ、ホンダの両社からFCVが販売開始されたことで、政府が目指す水素社会実現に向けた動きに拍車がかかりそうです。

Avanti Yasunori

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