Motor Fan's YEAR 2016

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従来の約2倍「形状が復元しやすいゴム」を作り出す材料技術を豊田合成が確立

豊田合成は、車載用電池のシール材に最適な、高温で長時間の力を加えても形状が復元しやすいゴムを作り出す材料技術を確立したと発表しました。

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このゴム材料の新技術によって、長期にわたって安定した耐久性が求められる次世代自動車(EV、PHV、FCVなど)用の車載バッテリーユニット等に用いられるシール部品の薄型化、軽量化、長寿命化を達成することができます。

一般に、ゴムは高温で長時間にわたって圧縮し続けると弾性が衰え、「永久ひずみ」が生じるという性質があります。この「永久ひずみ」が発生すると、ゴムのシール性能が低下します。

「永久ひずみ」を防止するためにゴムの弾性を強くした場合、伸びにくい硬いゴムになってしまい、組み立てが難しくなるなど、ゴムのシール部品として不具合が発生します。

そこで同社は、ゴムに配合する複数の薬品に熱に対する耐久性を向上させる薬品を新たに選定。ゴムの配合設計を最適化することで、元の形状から4倍以上伸びる大きな弾性を持ちながら、圧縮永久ひずみが従来比で約2分の1(同社調べ)となる材料配合技術を確立することに成功しました。

これにより、従来品と比較して形状が約2倍復元しやすいゴムを製造することができます。

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この技術は日本ゴム協会の「第71回ゴム技術進歩賞」を受賞しています。同社では、このゴム材料の新技術を利用して、次世代車の車載電池用シール部品のグローバルサプライヤーとして展開することを目指しています。

(山内 博・画像:豊田合成)

BMWが米・テスラへの対抗で全モデルにEVを設定?

昨年あたりから、EV普及のネックになっているバッテリー容量拡大に関する情報が流れ始め、それに連動してEVの航続距離拡大が注目されるようになってきました。

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BMWは今年3月、電動車両と自動運転車の拡大を柱とする2025年までの経営戦略「NUMBER ONE NEXT」を発表。

ハラルド・クルーガーCEOによれば、今後PHVやBMW「i3」に続くピュアEVなど7モデルを投入するそうで、年内にバッテリー性能の向上により、航続距離を200km(+40%超)に拡大した「i3」を発売する計画とか。

一方、米テスラは年間8万台のペースでセダンやSUV系のEVを生産しており、2018年までに年間50万台を生産できる体制を着々と準備中。来年には従来モデルよりも低価格なセダン「モデル3」の投入を予定しているようです。

こうした状況を受け、同CEOは10月11日、米WSJの取材に対して「全てのブランドとモデルのEV化を組織的に進める」と述べたそうです。

BMWでは既存モデルのハイテク化に取り組んでおり、先月には「MINI」のピュアEVを2019年に、BMW「X3」のピュアEVを2020年にそれぞれ投入すると発表。

10月16日には同社のHP上でMINIのPHVバージョンを紹介するなど、電動化をアピールしています。

しかし米国では、昨年来からの原油価格低下によりガソリン価格が低下しており、従来のように低燃費車よりも大型SUVへの人気が高まっており、HVやPHVも含め、電動車へのニーズが低減しているのが実情。

調査会社オートデータによると、「i3」の2015年の世界販売台数は約2万5000台でしたが、今年9月の米国における同車の販売台数は、前年同月比で77%減の391台と低迷しています。

こうした状況から、米市場でのEV展開に際しては、やはりリーズナブルな価格帯のSUV系ラインナップから充実させる必要性がありそうです。

Avanti Yasunori・画像:BMW)

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トヨタのハイブリッド車向け補修用バッテリーをGSユアサ バッテリーが新発売

GSユアサグループのジーエス・ユアサ バッテリーは、トヨタの最新ハイブリッド車に搭載されているEN(European Norm:欧州規格)規格の補機用鉛蓄電池の補修用に最適な「ECO.R ENJ」(エコ.アール イー・エヌ・ジェイ)シリーズを6月下旬に新発売すると発表しました。

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GSユアサのEN規格鉛蓄電池は、通常の補機用鉛蓄電池より全高が低く、JISの安全性にも合致した「日本仕様のEN規格鉛蓄電池」です。

このGSユアサ製のEN規格鉛蓄電池は、トヨタのアルファード・ヴェルファイアのハイブリッド車、シエンタのハイブリッド車、新型プリウスに搭載されています。

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今回発売した「ECO.R ENJ 」シリーズは、トヨタ系ハイブリッド車専用の補機用鉛蓄電池として、今後見込まれる取り替え需要の増加を見据えて補修市場に投入されます。

「ECO.R ENJ 」シリーズの機種と適合車種は次の通りです。

ENJ-LN0:シエンタ HV
ENJ-LN1:プリウス(W50系)
ENJ-LN2:ノア HV、ヴォクシー HV、エスクァイア HV、アルファード HV(H30系)、ヴェルファイア HV(H30系)

製品情報:ジーエス・ユアサ バッテリー|製品情報|ECO.R ENJ

(山内 博・画像:GSユアサ)

日立化成、耐久性が1.5倍のアイドリングストップ車用鉛バッテリー「Tuflong G3」を発売

日立化成は、アイドリングストップシステム(ISS)車向けに、耐久性を同社従来品と比べ1.5倍(同社従来ISS車用バッテリーとの比較)に高めた鉛バッテリーの新製品「Tuflong G3」を発売すると発表しました。

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軽自動車向けM-44サイズを先行して6月に発売し、乗用車向けは秋に発売する予定としています。

最近のISSの普及は目覚しく、一旦停止する軽自動車のほとんどは、ISSのセルモーターの音を響かせています。

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ISS車のバッテリーは、通常車に搭載するバッテリーと比較して頻繁に充電と放電を繰り返すので、バッテリーの劣化が生じやすいという事情があります。

そのため、これまで以上に耐久性および充電受入性能を向上させたISS車用鉛バッテリーが求められています。

「Tuflong G3」は、次の特長により同社の従来ISS車用バッテリーと比較して、耐久性を1.5倍に高めた、ということです。

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「Tuflong G3」の特長は、

1.ISS車に搭載するバッテリーには、劣化の原因となる電解液の成層化現象が起こりやすく耐久性が低下するので、成層化を抑制し、耐久性を高めることができる新型セパレータ(G3セパレータ)を採用し、耐久性1.5倍を実現

2.製品保証期間を、ISS車用鉛バッテリーとしては業界初(同社調べ)の38カ月(距離無制限)に延長

3.車両搭載時の経年劣化が少なく、エンジン始動を数万回分繰り返した状態でも同社従来ISS対応品と比較して車両の燃費低減効果が高いことを実証

(山内 博・画像:日立化成)

トヨタと米スタンフォード大、駆動用バッテリーのコストを半分に!

米スタンフォード大学とトヨタグループの豊田中央研究所が共同で、EVやPHVに使用する駆動用2次バッテリーの価格をリチウムイオン電池の半分以下にできる技術を開発したそうです。

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日経新聞によると、使い切りタイプの「亜鉛電池」をベースに従来の弱点を克服、蓄電池化に成功した模様。

これまでの亜鉛を使う電池には「デンドライト」(樹状析出)と呼ばれる充電時に樹氷のような形状に成長する針状結晶がセパレーターを貫通してショートが発生するなど、蓄電池には応用しにくい課題がありました。

そこで、充電時に発生する針状の亜鉛が電池を破壊しない方向に伸びるよう設計を工夫し、繰り返し充電できるようにしたそうです。

亜鉛を使った電池は電解液を使っているため発火リスクが無く、製造、維持コストを抑制でき、既存設備が使用できることから追加投資も抑えられます。

現行のリチウムイオン電池と同等の性能を維持した上で、価格を半分以下に抑えることができるそうなので、電動車のように大量に電力を使う用途向けに普及しそう。

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一方、リチウムイオン電池にもまだ伸びる余地があり、亜鉛の蓄電池との間で棲み分けが進みそうです。

Avanti Yasunori ・画像:トヨタ自動車、豊田中研)

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走行距離500km超! 日産のリチウムイオン電池がお披露目【人とくるまのテクノロジー展】

2016年5月25日〜27日にかけてパシフィコ横浜にて開催されている自動車関連の展示会・企画会議「人とくるまのテクノロジー展2016 横浜」において、まさに地元企業といえる日産自動車が、話題のバッテリーを公開しています。

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電気自動車の航続可能距離は、バッテリーの電力量に大きく左右されます。空力やマネージメントなどにより電費を改善することも重要ですが、満充電時の総電力量が大きいほど航続距離が伸びるというのは大原則です。

すでに2015年秋のマイナーチェンジによって、30kWh(それまでは24kWh)のリチウムイオン電池を載せた新グレードを設定している日産の電気自動車「リーフ」ですが、人とくるまのテクノロジー展にて公開された次世代バッテリーの総電力量は60kWhと倍増。

パッケージ状態の展示を見る限り、総電力量は倍増しても、十分に既存のプラットフォームに載せることが可能と思えるものでした。

バッテリーを増やすと車重が重くなってしまうという電費のネガティブ要素が出てくるため、単純に総電力量だけで航続可能距離を試算することはできませんが、30kWhでの航続可能距離(JC08モード)が280kmというリーフ、その総電力量が60kWhともなれば満充電からのスタートで500kmを超えるドライブも不可能ではなくなるかもしれません。

(撮影・文 山本晋也)

日立オートモティブ、欧州の「48V化」に対応する「48Vリチウムイオン電池パック」を開発

日立オートモティブシステムズ(以下、日立オートモティブ)は、欧州で開発が進む「48V」化したマイルド・ハイブリッド車(マイルドHEV)向けに高出力の「48Vリチウムイオン電池パック」を開発したと発表しました。

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同社では今夏以降、自動車メーカーへサンプル製品を出荷し、2018年度の量産開始をめざす、としています。

新開発の「48Vリチウムイオン電池パック」は、BMS基板、セルに加え、リレー、ヒューズを 一体実装した、オールインワンパッケージの電池パックで、積載性に優れています。

48V化マイルドHEVでの加速アシストにおいて、充分なトルク性能が発揮できる最大出力10kW以上、最大入力13kW以上(いずれも10秒間)を実現している、ということです。

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近年、日本の自動車メーカーが先行している高電圧のストロング・ハイブリッド車に対抗して、欧州・中国では「48V」化したマイルドHEVの開発が進んでいます。

今後48Vリチウムイオン電池を用いたマイルド・HEVが、比較的安価に燃費を改善できる技術として急速に普及すると見られています。2023年のマイルドHEVの生産台数は、欧州で200万台、中国でも400万台を超えると予測され(日立調べ)、今後の市場拡大が見込まれています。

また日立オートモティブは近日開催される「2016北京モーターショー」および「人とくるまのテクノリジー展2016横浜」に新開発の「48Vリチウムイオン電池パック」を出展する予定です。

今回の日立オートモティブによる48Vリチウムイオン電池の開発は、このような動きに対応したもので、「48V」化の波が国内の自動車部品メーカーにも波及したかたちです。今後の「48V」化の動向に注目が集まります。

(山内 博・画像:日立オートモティブシステズ)

「新型プリウス」に日本仕様のEN規格鉛蓄電池を採用~JIS規格より高さが低い

GSユアサは、同社のEN規格(欧州統一規格)鉛蓄電池「LN1」が、4代目新型プリウスの補機用鉛蓄電池に採用された、と発表しました。

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EN規格鉛蓄電池は、日本で一般的なJIS規格の鉛蓄電池よりも高さが低いため、車高を低くした車両に向くという特長があり、重心を低くして走行性能を高めることを目指した4代目新型プリウスに採用されたものと考えられます。

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ただし、EN規格は欧州の寒冷な気候に合わせた規格であり、温暖化が進む日本での使用するには改良の必要があります。

今回の「LN1」は、日本の気候風土に合わせて、かつJIS規格の安全性にも合致した「日本仕様のEN規格鉛蓄電池」として同社が開発した、ということです。

また、2015年発売のシエンタHVには「LN0」、アルファード・ヴェルファイアHVには「LN2」が採用され、「日本仕様のEN規格鉛蓄電池」の採用が増えており、同社では、EN規格鉛蓄電池のラインアップを拡充する予定です。

(山内 博・画像:GSユアサ)

日産が次期「リーフ」で航続距離500km超えを達成する?

「第7回国際二次電池展」にて、電動車向けバッテリーの開発、製造、販売を手掛ける「AESC」(オートモーティブエナジーサプライ)社がリチウムイオン電池の最新動向をプレゼンテーションしました。

AESCは日産自動車とNECが共同で設立したバッテリーサプライヤーで、展示会では今後の電動車の航続距離拡大の鍵を握る革新技術を紹介。

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それによると同社はEVの航続距離を倍増させる技術に目処を付けているようです。

おりしも昨年6月、日産自動車が株主総会で株主に対してガソリン車並みの航続距離を実現したEV(実検車両)の存在を明らかにしており、日産に電池を供給する「AESC」の出展内容が注目されていました。

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「AESC」はエネルギー密度を1.3倍以上に向上させたリチウムイオン電池を2018年に製品化する考えのようで、EVの航続距離を現行比で1.5倍から2倍近くにまで伸ばせる見込みとしています。

具体的には正極材に使用している“マンガン酸リチウム”を三元系材料に置き換えることでエネルギー密度を200Wh/kgにまで高める模様。

日産リーフは2010年12月の発売以降、航続距離を年々伸ばしており、発売当初の160km(JC08モード)から5年後の昨年12月には大容量(30kWh)化の実現により、約1.8倍となる280km(JC08モード)にまで拡大しています。

日産が製作した動画の中にも航続距離“544km”という数値が示されており、次期リーフでは500km超えが期待できそうです。

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また三菱自動車も2020年までにエネルギー密度を200Wh/kgにまで高めるとしており、これまでEV普及の足かせになっていた“航続距離”問題も2018年を目処に解消されそうな状況に向かいつつあるようです。

Avanti Yasunori

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