Motor Fan's YEAR 2016

三栄書房

サンプル

モトチャンプ

まるで雑技団!? BMWミニに乗って中国人ドライバーがニュル世界最速タイムを樹立!?

ドイツのニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ。一周20.8kmという世界一長くサーキットで、コンパクトカーのミニクーパーが「ある方法」で世界最速タイムを樹立し、ギネス記録に登録されました。

mini_nur_2wheels-all10

そのミニクーパーは

・エンジンや直接パフォーマンスを向上させるような改造は一切していない
・記録アタック中に万が一に備えた安全装備(6点シートベルト、ロールバー等)を装着

という、とても世界最速タイムを樹立できるような性能を備えているようには思えません。

ちなみにニュルブルクリンク・ノルドシュライフェの最速ラップを持っているのは、ポルシェ918スパイダー ヴァイザッハパッケージで6分58秒です。

mini_nur_2wheels-all4

この世界最速記録とは、長いニュルブルクリンクを『片輪走行』で1周したという、前代未聞の記録なのです。

タイムは45分。恐らく今後誰も挑戦することはないだろうとんでもない記録を樹立したのは中国のプロカースタントドライバーであるハン・ユエさん。

今回の記録を樹立するためにハンさんがドライブしたミニは、左側のタイヤがオフロード用に交換されています。これは、片輪走行で接地面積が著しく狭いところに1トン以上の重量がのしかかるため、通常のタイヤでは柔らかすぎて20km強のコースを走りきるには耐えられないため。

mini_nur_2wheels-all5

ほかにサーキットを走行するための安全装備などを施した片輪走行専用ミニは、前後にカメラカーと万が一に備えたサポートカーに挟まれながら20〜30km/h前後のゆっくりとした速度で走行。サーキットとしても道路環境がよくないニュルブルクリンクを無事に完走しました。

なぜこんな記録に挑戦することに至ったのかを考えるのは野暮な話。ただ単純に「誰も考えたことがないことをやってみよう」、ただそれだけではないかと思います。

ニュルブルクリンクの公式Youtubeチャンネルには、ミニの前方を走っていたカメラカーからの1周分の映像が公開されていますのでお時間がある時にゆっくりご覧ください……

(栗原 淳)

スバルの2016年ニュル挑戦のキーポイント“あの瞬間”を本人が語る

5月29日にチェッカーを迎えた2016年ニュルブルクリンク24時間。難攻不落のコースで一昼夜走るだけでも厳しいレースだが、今シーズンさらに輪をかけてレースを難しいものにしたのが、開始1時間ほどに突然降りはじめた雷雨と雹だ。

003

このレースはテレビやインターネットでライブ中継を見ていたファンも多いと思うが、この雷雨によって、多数のマシンがコースアウトし、クラッシュ。また、雹によって最高峰のSP9クラス=GT3のレーシングカーが、コースの坂道を登れず立ち往生する衝撃のシーンが映し出された。

001

強い雨と雹に巻き込まれたレーシングカーのなかで、唯一と言っていいほど大きな損害を受けなかったのが、今シーズンSP3Tクラスで優勝を飾った、スバルWRX STI。

カルロ・ヴァン・ダムのドライブ中に雷雨に見舞われ、クラッシュ車両が多発するなか、いったんはコースアウトするものの危機一髪回避するシーンは、SNS上でも「あぶねえええ」「神回避」「さすがAWD」という声であふれていた。

そんな“神回避”の瞬間を、7月に来日していたヴァン・ダム本人に語ってもらった。まずは、下記の動画の2分20秒あたりからをご覧頂きたい。

突然降り出した雨、そしてコースアウト、危機一髪の回避……。映像で見ると簡単そうだが「もしスティーブン・スピルバーグがモータースポーツの映画を作るとしたら、こんな嵐にするんじゃないかな」とヴァン・ダムが語るほどの状況だったのだ。

NY2_5064

本人に振り返ってもらおう。

「スタートして1時間くらいだったかな。コースで言うと、スタートラインから6〜7kmくらいのあたりだったと思うんだけど、それまではまったくのドライだった。200km/hくらいで走っていたんだけど、前に何かスモッグのようなものが見えたんだ。「いったいなんだ!?」と思って、ひょっとして雨なのかもしれないと思った」

とヴァン・ダム。

「ブレーキングポイントでブレーキを普通に踏んだんだけど、その瞬間、ドライから一気にものすごい雨になったんだ。信じられなかったよ! そこからはロケットに乗ってしまったみたいに止まらなかった。もうクルマはどうしようもない状況で、流れていくままになってしまったんだ」

「当然、ワイパーに触る余裕もないから、すごい雨で何も見えなくなってしまった。ブレーキングしているので車速は落ちていたので、前に1台クルマがいるのが見えたんだ。そして、そのクルマがガードレールにぶつかって、跳ね返されるのが見えた。そして僕もグラベルに入っていってしまったんだけど、その瞬間、辰巳さんやチームメイトの顔が一瞬頭をよぎったよ(笑)

制御できないスバルWRX STIはコースアウトしていく。このままでは、前のマシンにぶつかってしまう……! しかし、ここからがヴァン・ダムの本領発揮だ。

NY2_5025 NY2_5108

「『どうする!?』と思ったんだけど、グラベルに出たときに、前のクルマに本当にギリギリのスペースが見えた。そこをなんとか通過して、ひょっとするとわずかにぶつかったのかもしれないけど、なんとか抜け出すことができたんだ。ラッキーだったよね」

「その後の2〜3kmは、ずっとクルマが問題ないことを確認しながら、『クレイジー! クレイジー!』とラジオで叫びながら走っていたんだ。そうしたらピットからは『テレビで見えてるよ』って(笑)」

なんとかクラッシュを回避したヴァン・ダムだが、その先も雹のなかでなんとかピットまで帰り着く。

「クラッシュを避けたあと、3〜4kmくらいはすさまじい嵐が襲ってきたんだ。雨と、ゴルフボールくらいの大きさの雹が襲ってきた。運転席側は閉まっているんだけど、助手席側の窓は開いていて(注:レーシングカーのサイドウインドウは、窓のなかにスライド式の小窓が設けられており、そこを開けていることがある)、そこから雹が飛び込んできたり大変だったよ!」

「クルマはAWDだししっかり走ることはできたけど、とにかく気をつけながら走っていた。その先、いきなり今度はドライになったんだよ! お日様は出ているしね(笑)。そうしてメインストレートに戻ることができたんだ」

なんとかコース上にマシンを留めたヴァン・ダムだが、

「あとで車載を見てみると、カルロは最後までシフトダウンしているんです。そして何事もなかったように曲がっている。すごいことですよ」

と辰巳英治総監督もこの“神回避”がクラス優勝に繋がったと絶賛していた。

NY2_5207

(クリッカー編集部)

世界に7台、7億円のスーパーカーがニュルで大クラッシュ! 衝撃の一部始終!

スウェーデンにある世界屈指のスーパーカーメーカー『ケーニグセグ・オートモーティブAB』社が誇る、全世界限定7台、約7億円の『ケーニグセグ ONE 1』がニュルの高速テストで大クラッシュ、ボディが大破しました。

SB2_7746

場所はニュルブルクリンクサーキット、高速テストでお馴染みの「北コース」に存在する「アーデナウアー・フォレスト」と呼ばれる、北コースでも有数のS字カーブです。

SB2_7779

コースのみを写した画像を見ると、S字カーブに直線状に引かれたタイヤ痕が確認できます。

SB2_7677

「ケーニグセグ ONE1」は今回、北コースの世界最速ラップに挑戦していたと見られ、減速必至のコーナーで、最高馬力1360psというモンスターパワーがコントロール不能になったようです。

ドライバーは大怪我を負ったものの、幸いにも命に別条はなかったとといいます。

(APOLLO)

「ニュルブルクリンク24時間レース」でFALKEN勢2チームが好成績。総合9位とクラス優勝

住友ゴム工業は、5月26日(木)〜29日(日)に開催された世界最大級のツーリングカーレース「第44回ADACチューリッヒ ニュルブルクリンク24時間耐久レース」で、FALKEN(ファルケン)勢2チームが好成績を収めたと発表しました。

2016_047_02

まず、ファルケンタイヤヨーロッパがタイヤを供給しているFALKEN Motorsportsチームの「ポルシェ 911 GT3 R (991)」は、同レースでポルシェ勢最上位となる総合9位で完走しました。

2016_047_01

また、住友ゴム工業がタイヤを供給している「SUBARU WRX STI」は、同レースのSP3Tクラスにおいて昨年に続き2年連続でクラス優勝を果たしました。

2016_048_01

ニュルブルクリンク24時間レースは、自動車メーカー、タイヤメーカーが開発テストを行うサーキットとしても有名なニュルブルクリンクで行われる24時間レースです。

2016_048_02

ニュルブルクリンク24時間レースは、高低差300m、ブラインドコーナーを含め約170カ所のコーナーを持つ北コース(オールドコース)と、F1も開催される近代的なGPコースをつなげた1周約25kmのフルコースを使用し、世界一過酷なレースとも言われています。

(山内 博・画像:住友ゴム工業)

WRX STIがクラス2連覇!今年も恵比寿でファンと感動の瞬間を共有!【ニュルブルクリンク24時間レース】

ニュルブルクリンク24時間レースが5月28日と29日の2日間にわたり開催されました。

今年もスバルはWRX STIでSP3Tクラスに参戦。2008年から続くスバルのニュルブルクリンク24時間レースへのチャレンジは初参戦から毎年欠かさず参戦し、今年で9回目となります。

_MG_9850

昨年も東京・渋谷にある富士重工業本社ビル内にあるショールーム「スバル スタースクエア」にてパブリックビューイングが開催され、クラス優勝奪還の瞬間をクリッカーでも紹介しました。

0322_NBR24Shakedown15_800

今年のニュルブルクリンク24時間レースはスバルにとって、レース開催前から波乱続きでした。

3月22日に富士スピードウェイで行われたシェイクダウンテストでは、午後のテスト走行の際にクラッシュ。山内選手は肋骨にひびが入るけがを負い、マシンも深刻なダメージを受けました。

当初はニュル24時間レースの前哨戦ともいえるVLN(ニュルブルクリンク耐久レース)への参戦はおろか、ニュル24時間レースそのものへの参戦も危ぶまれましたが、急ピッチでマシンを製作。5月14日に開催されたVLN第3戦へも出場し、見事クラス2位を獲得しました。

VLNでの結果から、ニュル24時間レースへの期待も高まりました。

しかし、VLNでクラス首位を獲得したのは最大のライバルともいえるアウディTT。もちろん24時間レースにも参戦することもあり、ファンも気が抜けない状況で5月27日の予選を迎えました。

VLN Langstreckenmeisterschaft Nuerburgring 2016, 58. ADAC ACAS H&R-Cup

予選でもクラス2位という結果で、期待と不安が入り交じり、ファンの気持ちは決勝での走りに集中します。

REPLAY

決勝レースは28日22時30分(日本時間)スタート!開始早々45分で激しい降雨に見舞われ赤旗中断。アレンベルクと呼ばれるコーナーでは次々とマシンがスピンやクラッシュするも、WRX STIはカルロ・ヴァンダム選手のドライブで、グラベル上でクラッシュしていたマシンを回避!

16NB2265RaceGa12

ツイッターなどでは「カルロ神回避!」といったツイートが飛び交い、USTREAM配信などでも神がかり的な回避が何度もリピートされ、多くのスバルファンが歓喜しました。

レースは赤旗中断後も雨に見舞われていましたが、スバルが誇るシンメトリカルAWDが威力を発揮!山内英輝選手のアタックでライバルアウディTT RS 2.0を上回るラップタイムを重ね、ついにクラストップに躍り出ます。

_MG_9508

その後は安定したペースでスティントを重ね、じりじりと2位以下を引き離していきます。残り3時間を切るころ、エビススバルビルにはパブリックビューイング参加者が続々と集まり始めます。

このイベントに参加するファンは、イベント開始前からスマホなどでレースの様子をしっかりチェックしている方が多く見受けられました。

_MG_9527

そして、午後8時からニュル24時間レースでも長きにわたりスバルチームのドライバーとして活躍した吉田寿博選手をゲストに迎えスバルのイベントMCとしてお馴染みの濱田恵梨子さんとともに、トークショーがスタートしました。

_MG_9552

昨年のパブリックビューイングでも吉田選手の解説がおこなわれましたが、やはり実際にニュル24時間レースに参戦したドライバーのトークは現地での様子や休憩時間の話など、スバルチームにいたからこそわかる裏話は実に面白く、大画面の中継とともに実際にその場にいるような感覚になります。

_MG_9587

パブリックビューイング中は吉田選手の解説のほか、来場者からの質問を受けるコーナーも設けられ、過酷な24時間を乗り切るための技なども飛び出しました。

また、現地とネット回線を使いレーシングドライバーの松田晃司選手のレポートや山内選手の生の声が届けられ、モニター越しに会場のファンからエールが送られました。

_MG_9726

そして待ちに待ったゴールの瞬間!会場では来場者が一斉にクラッカーで祝福!日本にいるファンとニュルブルクリンクがひとつになった瞬間でもありました。

_MG_9783

昨年、男泣きを見せた山内選手は、事前に今年は泣きません!といっていたものの、シェイクダウンテストでのクラッシュというアクシデントから見事連覇を成し遂げたこともあり、感極まっていた模様。

予定を変更し、地元でもあるマセール選手にアンカーを譲ったものの、結局男泣きしてしまう山内選手のレースに懸ける思いが強く伝わりました。

_MG_9815

イベントの方は、締めくくりに豪華賞品を懸けたじゃんけん大会を開催。連覇の感動とともに、賞品をゲットした参加者は、一層忘れられないレースとなったことでしょう。

_MG_9652

解説を担当した吉田選手によると「連覇できたことが率直に嬉しいです。スバルファンとみんなが一つになって優勝を祝おう!というイベントは大事なことだと思います。スバルのユーザーやファンとともにコミュニケーションのとれるイベントがいろいろ開催できるよう、スバルの方へも提案していきたいと思います。たとえば山内選手などを迎えて凱旋ツアーなんかもいいですよね!」と語りました。

また、勝因については「個人的にはチームが強くなったことだと思います。やるべきことが明確になり、粗削りながらもディーラーメカニックさんをはじめチームが自信をもってレースに挑んでいたことが結果に結びついたと思います。まだまだスバルチームは強くなると思います!」と語りました。

0322_NBR24Shakedown25_800

来年はいよいよ悲願の3連覇を目指し、スバルチームにはより強く、より心をひとつに勝利を目指してほしいと感じました。

(井元 貴幸)

実は薄氷の勝利だった!? ── ニュル24時間スバルSTIチーム・辰己英治総監督に訊く

2016年のニュルブルクリンク24時間レースが終わりました。スバルSTIチームは、SUBARU WRX STI NBRチャレンジ 2016を投入し、見事SP3Tクラス2連覇を達成したことは皆さんもご存じのことでしょう。

2016-05-27 16 41 56

完走することでも、いや、1周を無事に帰ってくることすら困難なことでも知られる、世界屈指の難コース。そこで24時間レースを2年連続で制することの素晴らしさ! 心から賛辞を送らせていただきます。

DSC_1197 2016-05-29 16 33 27

レース開始直後45分に降り出した大雨、そして雹がアレンベルクコーナーを埋め尽くす状況となり、コースアウトするマシンが続出。WRX STIもコースオフしてあわや接触という状況で、なんとかそれを回避したカルロ・ヴァン・ダム選手のドライビングテクニックに『神回避』というネットでの命名もありました。

さて、ネットでの皆さんのリアクションを見ると、賛辞の一方で、終盤になにも起こらなかったからか、その戦いぶりを「退屈だった」と表現する方もいらっしゃるようでしたが、果たして実際はどうだったのでしょうか。

ゴール直後の辰己英治総監督にお話しを伺いました。

2016-05-27 17 29 37

── 辰己総監督、優勝おめでとうございます!

「ありがとうございます。いやぁ、今年も大変でした」

── 勝因は?

「今年は・・・運かな? 運ですね。あとは、スバルのグループの人たち、ディーラーメカとかスバルの人たち、そしてスバルファンの皆さんに、なんとかみんなに喜んでもらいたい。そのためにはなにがなんでもゴールさせるぞ! という執念がありましたよね」

── ここまでの道のり、大変だったですね。

「去年から、このクルマづくりおいては(シェイクダウンでのクラッシュなど)大変なことがあった。そういうことを乗り越えて、とにかく出るんだという執念はものすごいものがあったんじゃないかと思いますね。そういう執念がありながら、現地に来ると、もう運でしたね」

── レース序盤、ヒヤッとするシーンがありました。

「これだけ天気に翻弄されたのは初めてですよ。そのせいか、自分で勝ち取った感は、正直、いまいちなんですよ」

2016-05-29 4 12 49

── WRX STIに不利になるようなレギュレーション変更がありましたが、これも対応は大変だったのでは?

「レギュレーション変更が公表されたのが、実は今年に入ってからだったんです。今年に入って急に変えられてれても、実は間に合わない。アウディ勢は、変更されるレギュレーションにのっとって去年からクルマづくりをしている。そういうところでアウェイだなぁと感じましたね。それがわかったのが、実はけっこう最近でした

うちは2月か3月にはクルマをドイツに送らなければならない。そうなると、エンジンに関しては小さくなったレギュレーションに仕様に合わせて開発ができない。昨年仕様にそのままリストリクターを小さくして臨むしかないわけです。そして、日本で事故をして(船便で)送れなくなった。そうしたことにエネルギーを使われてしまいました」

── アウディはしっかり対応できていたと。

「アウディは、リストリクターが大きくなって、タイヤも太くなって、タンク容量も大きくなって、そういうレギュレーションのなかでクルマづくりをしている。でも、レギュレーションについて我々のほうが理解が低かったということですよね。ルールはヨーロッパで作られています。ドイツで勉強が必要だということを痛感しました」

── そういうマシンの状況下、トップを走るアウディTT RS2を追いかけているとき、また、トップに立った後にアウディTT RS2を引き離そうとしても、なかなかその差が変わらず、我慢比べのような展開が続きましたね。

「完全にクルマ作りで負けたなと思いました。有利な展開なはずなのに、逃げられない。蛇ににらまれたカエル状態。まだまだ力が及んでないなと思いましたね。真っ当に戦ったら追いつけないと思いましたね」

2016-05-29 11 13 15

── いっとき差がついても、また戻ったりという展開はなんだったのでしょうか?

「アウディのドライバーのレベルの差だと思いますね。1人はめちゃめちゃ速い選手がいました。彼が走っているときは、うちはかなわなかった。ほかの2人はまあまあ、1人はあまり速くない。そのドライバーのときにうちは追いつくんだけど、そのあとがうまくいかなかったですね」

── その点、STIチームの4人は全員が総じて高いレベルで走れていますしたね。

「そうですね。4人が、うちのクルマのすべてを出してくれました。雹がふったときにグラベルに飛び出して当たりそうになったときも、よく避けられたよね。あれはカルロの執念でした。普通だったら終わっていましたよ。壁とクルマの間に入っていった。パッと切ってすぐ戻した。だから、リアバンパーをかすったくらいで済んだんです。フロントが当たっていたら、クルマが回転してしまって足がやられて、多分終わりだった。直後に来た車にも挟まれて、絶対に終わっていたと思います」

思うようなマシン開発が進まず、レギュレーションにも邪魔をされた今年のニュル。

それをカバーしたのは『運』であり、それを呼び込んだチーム全体の『執念』であり、ドライバー全員の『実力』だったという辰己総監督。

DSC_1197

勝った嬉しさはもちろんですが、マシン開発に関する困難さ、それがゆえに「スパッと勝ちきれなかった」ことに、どこか『悔しさ』が滲んでいるようにも見えました。

「でもね、我々は勝つために出ているわけですから。やっぱり、勝たないといけない。みんなにきっとしばらくの間は喜んでもらえるんだろうなと思いますよ」

そう語って、辰己総監督はチームの輪のなかに入って行きました。

スバルSTIチームは、すぐにスーパーGTへの戦いに集中するとともに、来年に向けたクルマと体制づくりに入るものと思われます。

スバルSTIチームの戦いは、まだまだ続きます。

(写真・文 ハイパーレブ/86&BRZ WORLD編集長 渡辺文緒)

【ニュル24時間レース・2016】悪天候の中、トヨタ「C-HR」がクラス3位で完走!

5月28日、29日の2日間に渡って独ニュルブルクリンク24時間耐久レースの決勝レースが開催され、TOYOTA GAZOO Racingチームの3台中、2台が完走しました。

今回完走を果たしたのは、トヨタ自動車が今秋の発売を予定している「C-HR」をベースにした「TOYOTA C-HR Racing(♯326)」と「LEXUS RC-F(♯36)」。

TOYOTA_C-HR_22

初日の15時30分(現地時間)にドライコンディションでスタートした決勝戦でしたが、約40分後には天候が一転、アーデナウ付近で雹(ひょう)が混じるゲリラ豪雨に見舞われ、路面が白く氷結。

TOYOTA_GAZOO

コーナーでスリップによるクラッシュが多発する大混乱のレース展開となりました。

そうしたなか、影山正彦選手、佐藤久実選手、片山智之選手、H.Daenens選手の4名が交代で駆る「TOYOTA C-HR Racing」は無事混乱を切り抜け、車高高めのSUVモデルにも拘わらず、終始安定した走りで快走。

TOYOTA_GAZOO

途中、クラス2位まで浮上するほどの快調な走りを見せていましたが、ガス欠が発生、コース上でストップしたため、ピットまで牽引されるハプニングも。

TOYOTA_C-HR

しかしながら、燃料補給後は何事も無かったかのように快走。SP2Tクラス(排気量1,620ccまでのターボエンジン搭載クラス)3位・総合84位でゴールしました。

TOYOTA_C-HR_21

同車の開発責任者であり、レースへの出場経験も豊富な古場(こば)主査を中心に、決勝までにマイナートラブルを潰し込んだのが奏功、初出場ながらも幸先の良い成績を残す結果となりました。

TOYOTA_C-HR

一方の「LEXUS RC-F」も決勝戦では安定した走りを見せ、SP-PROクラス(排気量3,000cc以上で広い改造範囲が認められたクラス)1位、総合24位で完走。

TOYOTA_GAZOO

しかし、もう一台の木下隆之選手らが駆るSP3Tクラス(排気量2,000ccまでのターボエンジン搭載クラス)で出場した「LEXUS RC(♯188)」は原因不明の駆動系トラブルに見舞われ、チームが夜を徹して懸命の復旧を試みるもコースに戻る事は無くリタイアに追い込まれました。

TOYOTA_GAZOO

GAZOO代表のモリゾウこと豊田章男社長は、「ニュルへのチャレンジも10年目を迎え、改めて現実を物凄く思い起こさせてくれた」「天候やクルマの状態など、もっといいクルマ作りと人材育成には色々な課題を残したが、多くの人にバッターボックスに立つ機会を与え、各々がナイススイングをしてくれたニュル24時間だったと思う」とコメントしています。

TOYOTA_C-HR_20

ちなみにモリゾウ選手は決勝戦でステアリングを握ることはありませんでしたが、予選に出走し、「LEXUS RC」でニュルとの対話を行ったようです。

TOYOTA_C-HR

トヨタは「今回の結果がゴールではなく、いいクルマ作りのためのスタートであることは、初挑戦の2007年以来変わらないテーマ」としています。

Avanti Yasunori ・画像:トヨタ自動車)

【関連記事】

レーシングドライバー・モリゾウ選手とトヨタ自動車・豊田章男社長がいる現場
http://clicccar.com/2016/05/31/375504/

ファルケンが今年も「ニュルブルクリンク24時間レース」に挑戦
http://clicccar.com/2016/05/22/373091/

私をニュルに連れてって!ブリヂストン、ニュル24H耐久参戦10周年!!
http://clicccar.com/2016/05/12/371655/

ニュルブルクリンクのFF最速マシンの座をVWゴルフが奪還!
http://clicccar.com/2016/05/08/370800/

トヨタがニュルブルクリンク24Hレースに「C-HR」投入!
http://clicccar.com/2016/01/16/348415/

レーシングドライバー・モリゾウ選手とトヨタ自動車・豊田章男社長がいる現場

2016年のニュルブルクリンク24時間レースが終了しました。レースレポートはAUTSPORT WEBなどの詳報に譲りますが、今年も最終ラップまで目が離せない、白熱したレースを楽しむことができました。

1

かつては「世界最大の草レース」と呼ばれ、それこそワゴンでも大衆車でもポルシェでも参戦できたこのレース。

近年は、多くの自動車メーカーがワークスもしくはそれに準ずる体制で参戦し、最先端の市販レース用マシン規格を満たしたGT3車両が多く参戦しています。

車両のバリエーションは、今の日本のスーパー耐久に各種ワンメイクレース車両が混走しているようなイメージです。

B

さて、今年はTOYOTA GAZOO RACINGがアルテッツァで参戦してから10年目の区切りを迎えました。

そういうこともあってか、トヨタ自動車の関係者そして関連企業の重役クラスの方々の来場が非常に多く、トヨタ自動車社内外でこのレースのプレゼンスが大変高まっていることがよくわかります。

そして、今年もドライバーのラインアップにモリゾウ選手、つまりトヨタ自動車の豊田章男社長がエントリーされていました。世界の豊田社長が重視するイベントとあっては、周囲の方々も見逃すわけにはいきません。

レースウイークの木曜日には「今年は走らない」とこれまで言ってきたモリゾウ選手がレーシングスーツを着て予選1回目の現場に登場しました。

実際のところは、現場の皆を驚かせてやろうと、サプライズでレーシングスーツを着たのだといいますが、いざモリゾウ選手が現場に到着してみると、チームの誰もが「マシン、準備できています」と、予選出場が当然だという対応をしたのだそうです。

「断ることもできなくなってしまってね。乗らないわけにはいられなくなっちゃったんですよ」と笑いながら、そのときの様子を語ってくれたモリゾウ選手。

でも、本当は走る気満々だったのだと、勝手に思っています。

2

先にも書きましたが、世界の豊田章男社長です。

当然ガードも厳しく、やすやすとお話できるような雰囲気ではありませんし、新聞経済系記者はまだしも自動車メディアの端くれがおいそれと話しかけられるような状況にはとてもなりません。

しかし、決勝レース中、空が白んできた日曜朝、GAZOO RACINGのピットで取材をしていると、朝の陣中見舞いでしょうか、豊田社長が現れました。

そして、気軽に話かけてきてくれたのです。

「朝から大変だね〜。記者のみんなもメカニックみたいだね。私は寝ましたよ。でもあまり寝られないんだよ。年だからね〜。体力がない(ワハハハ)」と、そんな世間話をしてくれました。

トヨタ自動車の代表取締役豊田章男ではなくひとりのクルマ好き、レース好きのモリゾウ選手の素顔と接することができました。

マシンにトラブルが続く現場の様子を、そして必死に対応する現場の面々の姿を、自分の目で見に来たのでしょう。

そして、早朝からピットでうろうろしているレースが好きそうな取材陣をちょとからかってやろうと思ったのだと思います。

3

こちらも調子に乗って、モリゾウ選手に聞いてみました。

GAZOO RACINGのニュル24時間レース活動において、これまで重要な役割を担ってきたトヨタ86の存在が今年はないことが非常に気になっていたのです。多くの86オーナーの皆さんの、今年のニュルに86が出ないことが残念だという声を聞いていたのです。

「86は、ここ(ニュル)でなければ生まれなかったクルマです。そしてここでの走りをベースとしたGRMNを発売し、それをある程度盛り込んだマイナーチェンジを迎えようとしています。
あるひとつのところまでは、やりきったというふうに、私は見ています。これから次の86に対してのいろいろなヒントを、ここから盛り込んでいくのではないかと思います。未来を向いていると思っていただいていいと思いますよ」

とモリゾウ選手。

モリゾウさんのコメントは、決して86オーナーに対するリップサービスや宣伝文句ではありません。

真摯に来年の参戦車両を検討し、それを市販車にいかに直結させるのか考え、そして現場に指示する方向性を考えているのだろうと感じました。

ニュルブルクリンクで自分という人を鍛え上げ、自らがステアリングを握ることで86も鍛え、ついに86GRMNを世に送り出した人物たからこそ言える言葉です。

一番楽しそうに応えてくれたのは、86のマイナーチェンジ版の乗り味をお聞きしたときです。

「ええ、乗りました乗りました。ほんと、良いクルマに仕上がってますよ。エンジンもいい感じです。ほんと86・BRZは素晴らしい」

と。

4

さて、GAZOO RACINGからはエントリーした、LEXUS RC、TOYOTA C-HR、そしてTOM’Sの協力により出走となるLEXUS RC-F、そしてLEXUS IS-F CCS-R。

それぞれ、レース中のトラブルで厳しいレースとなりました。

特にRCは電気系統に起因する駆動系のトラブルで、エンジン、トランスミッションを夜通しかけて交換する状況でした。

「大変でしょうが、仕方ないですね。頑張るしかない」とモリゾウ選手。

本当はそんな作業を続ける現場でメカニックに檄を飛ばし、不具合があるというクルマを自分で乗って確かめて、ニュルのコースに出ていきたいのではなかったのでしょうか。

でも、豊田章男社長という存在が、そんなことを許してはくれません。

ニュルに来ても、世界の豊田章男社長でいなければならないモリゾウ選手が、少しだけかわいそうに思いました。

しかし、レーシングドライバーとしてのモリゾウ選手の存在を薄く消しながらも、クルマづくりに対するモリゾウ選手のポリシーを、強く表現されているように見えました。

現場ありき。道が人を鍛え、クルマを鍛える。

今年のニュルブルクリンク24時間レースでモリゾウ選手とお話をしてその言葉の意味が、少しわかったような気がします。

(ハイパーレブ/86&BRZ WORLD 編集長・渡辺)

ファルケンが今年も「ニュルブルクリンク24時間レース」に挑戦

住友ゴムグループのファルケンタイヤヨーロッパと日本の住友ゴムは、5月26日(木)〜29日(日)にドイツで開催される世界最大級のツーリングカーレース「第44回ADACチューリッヒ ニュルブルクリンク24時間耐久レース」に、今年もファルケンタイヤで挑戦すると発表しました。

2016_040_01

また、昨年に続きFALKENは同レースの公式パートナーとして協賛。ブースを出展するなど各種イベントでファルケンタイヤをアピールします。

ファルケンタイヤヨーロッパは、1999年の初参戦以来、連続出場を続けて今年で17回目の挑戦にとなります。今年は、昨年総合3位入賞を果たしたドライバーが新型車両「Porsche 911 GT3 R (991)」で参戦。必勝のチーム体制で総合優勝を目指します。

2016_040_02

FALKENブースではタイヤ展示に加え、レースのバーチャル体験コーナーやドライバーによるサイン会などを開催するほか、会場内ではドリフトショーを繰り広げて、FALKENブランドをアピールします。

logo_falken

一方、日本からも住友ゴムのSUBARU Tecnica Internationalチームが「SUBARU WRX STI」で同レースに挑戦します。

「SUBARU WRX STI」は昨年SP3Tクラスでクラス優勝を達成した強豪で、ドライバーには日本人ドライバーの山内英輝が起用されています。

2016_041_01

SUBARU Tecnica Internationalチームでは、今年はさらに車両の走行性能を高め、装着するファルケンタイヤのグリップ性能や耐久性も一層向上しているとのことで、同クラス2年連続優勝を目標としています。

(山内 博・画像:住友ゴム)

ブリヂストンが「ニュルブルクリンク24時間レース」で「POTENZA」をアピール

ブリヂストンは、2016年5月26日(木)〜29日(日)の4日間、ドイツのニュルブルクリンク・サーキットで開催されるニュルブルクリンク24時間耐久レースの会場内に、コミュニケーションブースを初出展すると発表しました。

20160510_01

今回ブリヂストンは、同ブースにプレミアムタイヤブランド「POTENZA」とランフラット技術「DRIVEGUARD」を展示して、同社のモータースポーツ活動への想いを伝えたい、としています。

2014102302_01

ニュルブルクリンク・サーキットは、過酷な車両開発用の走行路として世界で有名なコース。同社では、1980年代に国内タイヤメーカーとして初めてポルシェやフェラーリに新車装着されたタイヤの開発を行ったことに始まり、以降、ニュルブルクリンク・サーキットは様々なタイヤ開発やモータースポーツ活動の重要な拠点となっています。

img_figure03

また、ニュル24時間レースは毎年約20万人が来場する世界最大級の参加型モータースポーツイベントで、ブリヂストンとしては、同レースに参戦するトヨタチームにタイヤをサポートして今年で10年目の節目を迎えます。

ニュル24時間レースのブースでは、ニュルブルクリンクをはじめとするサーキットを基盤に鍛え上げられたグローバル・プレミアム商品ブランド「POTENZA」を「ブリヂストンモータースポーツ×POTENZAヒストリーコーナー」として紹介することを狙っています。

(山内 博・画像:ブリヂストン)

ニュルブルクリンクのFF最速マシンの座をVWゴルフが奪還!

メガーヌ・ルノースポール、シビック・タイプRなど、世界中のFF(前輪駆動)車が競うニュルブルクリンク北コースの最速レコードを、フォルクスワーゲン・ゴルフが塗り替えました。

世界400台限定、310馬力(228kW)の強心臓にチューンナップされた「ゴルフGTI クラブスポーツS」が、7分49秒21という量産FF車の歴代トップタイムを叩き出したと発表があったのです。

golf_gti_clubsport_s_6073

ゴルフGTI史上、最強エンジンを得ただけでなく、軽量化のため断熱材はもちろん2シーターとされているほど速さにこだわっています。ボディ形状も2ドア(ゴルフは伝統的に3ドアとは呼びません)とし、トランスミッションは6速MTとしています。

さらにミシュランのセミスリックタイヤ(235/35R19)を履くことにより、GTI クラブスポーツSはゴルフGTIの潜在能力を引き出した一台に仕上がったということです。

ボディカラーはトルネードレッド、ピュアホワイト、ディープブラックパールエフェクトの3色を設定するということです。

(山本晋也)

【関連記事】

VWゴルフの40周年記念車・GTIクラブスポーツに310馬力の「S」が!
http://clicccar.com/2016/05/06/370052/

日本向け限定30台、価格1950万円のBMW M4 GTSはニュルで7分27秒88

2015年の東京モーターショーにおいて世界初公開された、BMWのハイパフォーマンスクーペ「M4 GTS」の価格が正式発表。日本向けは30台限定で、メーカー希望小売価格が1950万円となることもアナウンスされました。

P90215756_lowRes_m4-gts-04-2016

3リッター直列6気筒ターボに、ウォーターインジェクションシステムを組み合わせた専用エンジンの最高出力は368kW(500馬力!)、最大トルクは600Nm。7速DCTを介して、後輪を駆動します。

サーキットユースを前提に、バケットシートや6点式シートベルト、ロールバーを備えたM4 GTSは、CFRP(カーボンファイバー)製の調整式リヤ・ウィング、リヤ・ディフューザー、フロント・スプリッターといった専用エアロパーツによる外観も特徴となっています。

パワーウエイトレシオ3.2kg/PS、0-100km/h加速が3.8秒というピュアスポーツクーペは、また世界のスポーツカーにとって欠かすことのできないニュルブルクリンク北コースもアタックしています。

そのフルアタックのインカー映像によればラップタイムは7分27秒88。6気筒FR車としては驚異的なタイムを記録しています。

(山本晋也)

20馬力ダウンは軽量化でカバー!STIのNBRチャレンジ、連覇目指しシェイクダウン!

3月22日、スバルテクニカインターナショナル(STI)は、富士スピードウェイで第44回ニュルブルクリンク24時間レースに参戦するSUBARU WRX STI参戦車両のシェイクダウンを行いました。

115

昨年のニュルブルクリンク24時間レースでST3Pクラスのクラス優勝を果たしたSTI。今年は連覇をかけての出場となります。

103

今年はリストリクターを1mm小さく設定されてしまったための対応を詰めていったおかげで、当初2月に行われる予定であったシェイクダウンが3月22日にズレこんだとのこと。

このリストリクターの件はSTIの平川社長曰く「アウディに勝ってしまったので厳しくされた」とのこと。

109

昼ごろに行われた記者会見で辰巳英治総監督は「リストリクターを1mm小さくされたことで20馬力のパワーダウンとなっています。300馬力そこそこのマシンで20馬力ダウンはかなり厳しく、我々以外にも協賛各社、サプライヤーの皆様のご尽力とご協力で軽量化と空力を徹底的に見直し、昨年並みの競争力を持てるようになったという手ごたえを得ました」と語ります。

106 107

ドライバーはカルロ・バンダム、マルセル・ラッセー、ティム・シュリック、そして山内英輝という、辰巳総監督の言うところの「昨年の優勝を勝ち取った信頼を置く4名のドライバー」が採用されています。

111

その山内選手がシェイクダウンを担当。記者会見では「昨年初めてニュルに挑戦しましたが、夜、雨が降っている時にスリックタイヤで走っていたときは生きた心地がしませんでした。でも、それを乗り越えて優勝を飾ることができた時は、人生でいちばん感動しました。ぜひその感動を今年も分かち合いたいと思います」と語っています。

113

個別のインタビューでも「とにかくサプライヤーさんの協力のおかげで参戦できるようになった」と語る辰巳総監督。それだけパワーダウン分の戦闘力確保には苦労があったようです。

104 104_02

特に軽量化と空力面では各部の見直しが0.01グラム以下、0.01ミリ以下の単位で行われ、見た目で大きく変わるのはフロントグリルがふさがれたことで、エンジンルーム内の空気の流れまで厳密に検証しているとのこと。また日中の走行では補助ライトを無くすなど、慣性モーメントを最小限に抑える努力も惜しみません。

なお、補助ライト付のグリルに交換するための時間は、ルーティーンピットワークで充分間に合うとのことです。

101

だからこそ、スタッフが並ぶ記念写真では協力企業、サプライヤー各社のみなさんも一緒に写ります。

102

またレースメカニックには今年も販売ディーラーから6名の方が参加し、NBRチャレンジの経験を各々の販売ディーラーに持ち帰り、お客様に接していくとのことです

122

今年のNBRチャレンジはクラス優勝が目標であることは変わりませんが、それにもまして、予選9分切りという新たな目標を掲げての参戦となります。それだけマシンに大きな自信があるということでしょう。

123

ただひとつ、心残りなのは午後のセッションで単独クラッシュを喫してしまったこと。ドライブした山内選手に大事はありませんでしたが、マシンはかなりダメージを負ってしまったようです。

しかしながらリストリクター制限によるパワーダウンを一丸となって克服したSTIと協力企業のみなさんですから、きっと不死鳥のごとく復活することは間違いないでしょう。

118

2016年5月28日〜29日の決勝では、晴れやかな姿を期待します。

(写真・文:松永和浩)